アメリカザリガニの規制強化へ 輸入、放出、販売を禁止 (2022年3月25日 中日新聞)

2022-03-26 14:33:05 | 桜ヶ丘9条の会

アメリカザリガニの規制強化へ 輸入、放出、販売を禁止

2022年3月25日 
 
今国会に提出されている外来生物法改正案で、生態系への影響が深刻な特定外来生物に、アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)が新たに指定される見込みだ。特に多くの子どもが夢中になったアメリカザリガニは、レジャーや食材としても浸透している。規制強化でどうなるのか−。
 「アメリカザリガニは繁殖力が強く、はさみで水生植物を切ってしまう。水質悪化や他の動植物に非常に大きな影響を与えている」。宮城県大崎市で自然保護活動に取り組んでいるNPO法人「シナイモツゴ郷(さと)の会」の高橋清孝理事長(70)が説明する。高橋さんらは3カ所のため池に捕獲装置を設置し、毎年5〜11月に計1万〜3万匹のアメリカザリガニを捕獲する。それでも地域からの完全駆除は難しいという。
 環境省の担当者は、「アメリカザリガニは既に広い範囲に生息しているが、未侵入の地も残されている。既に駆除して水草などが戻りつつあるところもある。指定により、環境を戻す活動がしやすくなる効果も期待できる」と指定を目指す理由を説明する。
 だが、規制は限定的なようだ。既に飼育している個体が大量に遺棄されるなどの事態が想定されるため、アメリカザリガニの場合は飼養や譲渡を規制せず、輸入、放出、販売などが禁じられる方針。例えば自宅で飼育することは可能で、自然の池などで釣った場合は、同じ場所に戻すか、持ち帰って飼育することになる。持ち帰ってから別の場所に放つことは禁じられる。
 東京都北区の浮間つり堀公園は、毎年7〜10月に有料でザリガニ釣りができる。管轄する同区道路公園課によると、子どもでも比較的簡単に釣ることができ、人気だという。担当者は「現在も釣ったザリガニは持ち帰りができないので指定後も問題ない」とするが不安もある。「病気や水質悪化などで個体の数が減ると購入して補充している。今後、購入できないとなれば、影響が出る」。2021年度は45キロを購入し、池に追加したという。
 アメリカザリガニは、日本料理やフランス料理、中華料理の食材としても利用されている。
 「まだ仕入れ先と話していないが、どうなるか気にしている」と話すのは、千葉県成田市の印旛沼に近い料理店「錦谷」の谷芳紀支配人(60)。例年、5月中旬から、地元漁師から仕入れたザリガニを塩ゆでなどにして提供している。
 印旛沼周辺では、ザリガニは夏の定番食材といい、「ザリガニ目当てのお客さんも多い」と話す。「今後も生きたザリガニの購入ができるのか不透明。シーズンが始まるので、方針が早く知りたい」と気をもむ。
 これに対し、環境省の担当者は「料理として提供すること自体は問題ない。漁師が捕獲したザリガニを料理店に販売する場合も、『生業の維持』として許可を受ければ可能となるのではないか」と見通す。具体的な規制内容は政令で定めるという。
 先のNPO法人「シナイモツゴ郷の会」では、地元の中華料理店とメニューを開発。駆除した大量のアメリカザリガニを提供して有効活用している。高橋理事長は「今後も有償で提供できれば、活動を継続するための経費にもなる」と柔軟な対応を求める。
 許可を受ければ販売も可能では、これまでの状況は改善しない気がするが、高橋さんは「長年、子どもに親しまれてきたが、害や影響はあまり周知されてこなかった。急に規制できない面も理解できる。このタイミングで広く知ってもらうことが第一だ」と話す。
 (山田祐一郎)