中日春秋 (2021年8月13日 雨)

2021-08-13 11:37:16 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋

2021年8月13日 中日新聞
 「猫のノミ取り」「耳のあか取り」など江戸時代には現在では考えられぬ珍商売がいくつもあったそうだが、これもそうだろう。「作り雨」
▼「飴(あめ)」の間違いではなく「雨」。雨を作る。『雨のことば辞典』(講談社学術文庫)にあった。もちろん、今の人工降雨の技術などあるはずもなく、夏の暑い盛りにただ、屋根に上って庭へジョウロで水をまく。客の方は夕立を見た気分になり、いっときの清涼感を味わったそうだ。風情におあしをだしたのだろうが、今ではなかなかやっていけぬ商売である
▼「作り雨」が必要かもしれない。帰省や旅行を楽しみにしている方には意地悪く聞こえるだろうが、作り雨で雨、しかも大雨が降っているのだと想像し、やはり、外出は控えるべきなのだろう。このお盆の夏季休暇期間である
▼新型コロナウイルスの感染拡大は深刻で東京ではもはや「制御不能の状況」という。その勢いは地方にも向かっている。コロナという目に見えない雨が今、極めて強まっている
▼腰の定まらぬ政府のやり方に腹を立て、逆らうように外出をためらわぬ方もいる。五輪が開催できたのだからと気を緩めたくもなる。気持ちは分かるが、この大雨の中、外へ出て行くのは危険と考えたい
▼<ままよ、このまま濡(ぬ)れていこ>。江戸端唄「夕立のあまり」にそんな文句があったが、「ままよ」の帰省は勧められぬ。