中日春秋 (2020年11月12日 中日新聞))

2020-11-12 10:03:55 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋

2020年11月12日 
 吹く風が日増しに冷たくなってきた。ふと寒さのゆるむ小春日和がうれしいのは、いま時分だろう。季節を忘れて咲いた花は帰り花と呼ばれる。<凩(こがらし)に匂ひやつけし帰花>芭蕉。寂しさの募る景色のなかに彩りをもたらす花であろう
▼大陸にも木枯らしが吹くのかどうかは知らないが、季節の冷たく、乾いた風や空気は一因であるらしく、コロナ禍がまた北半球で、たいへんなことになっている。東京、愛知など、わが国も感染者が多い。感染の加速を報じるニュースが連日続くなかで、小春日和か、帰り花か、ふと重苦しさがゆるむワクチン開発のニュースである
▼米製薬大手などによるワクチンの90%以上という発症予防効果はかなりの高さであるらしい。コロナ禍に終わりが見えるのではないかという期待は各市場の株価などにも表れたようである
▼ただ、慎重に、喜ぶのはまだ早いという声が世界の専門家から次々にあがる。副反応はどうか、年齢による効果の違いは−など未知数の部分は多い。中間的な結果でもある
▼トンネルの先に光はありそうだ。暗闇ばかりのころよりも勇気がわくのはたしかだが、まだわれを忘れて全力で走り始める時ではないということだろう
▼「幸せが現実になるのは、誰かと分かち合った時」。『シネマ名言集』から、映画『イントゥ・ザ・ワイルド』の言葉。分かち合えるかも重要であろう。