5G、電波の健康被害は大丈夫❓ 導入中止の申し入れも (2020年1月28日 中日新聞)

2020-01-28 09:23:09 | 桜ヶ丘9条の会

5G、電波の健康被害は大丈夫? 導入中止の申し入れも 

2020/1/28 朝刊


 携帯電話の新たな通信サービス「第五世代移動通信システム(5G)」を巡り、市民団体が今春からの導入を中止するよう政府に申し入れた。「5Gで用いる電波の安全性が十分確認できていない」という訴えだが、首相が先頭に立って5Gの推進に旗を振る中、政府は耳を貸す様子を見せていない。

 申し入れをしたのは、市民団体「いのち環境ネットワーク」(札幌市)のメンバーら約三十人。東京・永田町の参院議員会館で総務省や内閣府の職員らと面会した。

 問題視したのは、5Gで使われ始める高い周波数帯の電波。大容量の高速通信を可能にする特徴がある一方、団体側は、健康影響があると懸念する海外の研究事例などを挙げ、「エネルギーが強く、皮膚がんや失明などの増加、生態系へのダメージが指摘されている」「5Gの中止や健康被害の周知、環境と健康を守る基準の設定を求める」と申し入れた。

 団体の代表で環境ジャーナリストの加藤やすこさんは、総務省の職員らに対して「安全性が確認されていないのに導入しようとするのか」と疑問を呈した。

 今回の申し入れは、各国の団体と連携した運動の一環だった。米国の研究者が二〇一八年末に5G廃止を求めるアピール文を公表すると、十九万筆の署名が集まったため、今月二十五日前後に約三十カ国の政府に働きかける運びになったという。

 こうした懸念とは裏腹に、日本政府は5G導入のメリットを強調してきた。総務省の資料には、日本の携帯電話の通信サービスは一九八〇年代の「第一世代(1G)」から始まり、現在の第四世代(4G)では最大通信速度が当初の十万倍となったが、5Gは「現在より百倍速い」「二時間の映画を三秒でダウンロード」と記されている。

 その上で、データを送受信する際の通信時間の遅れが千分の一秒程度と短くなり、動画のやりとりをしてもタイムラグがほぼ生じないことも踏まえ、遠隔地にあるロボットを用いた手術や災害対応、土木工事なども可能になるとアピール。狭い空間で多くの通信機器を同時接続できる特性も記され「身の回りのあらゆる機器がネット接続できる」と打ち出している。

 今春の導入を控え、安倍晋三首相は二十日の施政方針演説で「第四次産業革命の基盤インフラは通信」「5Gやその先を見据えながらイノベーションを後押しする」と訴えたほか、二〇二〇年度の与党税制改正大綱でも5Gの基地局整備の支援が盛り込まれた。

 そこでは、健康への影響については基本的に問題ないとの立場だ。

 今回、申し入れ書を受け取った総務省電波環境課の渡辺修宏課長補佐は「国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインに準拠した『電波防護指針』を策定し、電波塔や携帯電話端末から出る電波が悪影響を及ぼさないよう、規制をかけている」「人体に悪影響が生じることはない」と回答した。

 これに対し、前出の加藤さんは「5Gの推進も規制も総務省が担っている。きちんとした規制ができるのか。かつて経産省が原発の推進と規制の両方を担当したのと同じ構図になっている」と疑問を投げかける。

 「基準作りで国際的な団体に頼るところもそう。原子力行政が依存してきたのが推進寄りのICRP(国際放射線防護委員会)だった。ICNIRPも産業界べったりではないのか。結局は産業振興ありき。安全性がないがしろにされている」

 (榊原崇仁)