秋元議員逮捕 カジノの闇はどこまで

2019-12-26 21:13:18 | 桜ヶ丘9条の会

秋元議員逮捕 カジノの闇はどこまで 

2019/12/26 紙面から

 カジノ汚職だ。統合型リゾート施設(IR)参入に絡み、自民党の秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検に逮捕された。成長戦略が利権にまみれていた証左だ。IRは立ち止まって再考すべきだ。

 IRを所管する内閣府副大臣と観光施策を所管する国土交通副大臣を二〇一八年十月まで兼務した。さかのぼれば秋元容疑者は超党派の国際観光産業振興議員連盟にも加わり、IR整備推進法案の審議を取り仕切る衆院内閣委員会の委員長でもあった。

 つまり安倍晋三政権が成長戦略として描いたカジノ法を作り上げた立役者なのだ。その人物が中国企業側から便宜を図ってほしいとの趣旨で計三百七十万円相当の利益供与を受けた。それが容疑だ。

 東京地検による国会議員の逮捕は約十年ぶり。汚職事件では二〇〇二年の鈴木宗男衆院議員(現在は参院議員)以来となる。大阪地検の証拠改ざん事件などで信頼が崩れていた検察だけに、カジノ参入をめぐる闇を徹底的に解明してもらいたい。

 首相自ら「新たなビジネスの起爆剤」「観光先進国へ引き上げる原動力」と位置付けている事業である。これまでに横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の四地域が誘致を表明しており、自治体側の準備が進んでいる最中だった。二十四日には運営事業者の公募手続きを開始したばかりだ。

 さらに国の意向調査では東京都、千葉市、名古屋市なども前向きな回答をしており、さながら“カジノ列島”の熱気さえ感じる。だが、日本にはもともとノウハウがない分野で、結局は米国など海外資本の進出が見込まれる。

 それだけに政・官との癒着が起きるのは中国企業ばかりではあるまい。東京地検は推進派の議員を含め、カジノ汚職の捜査の視野を広く持ってもらいたい。

 何より誘致表明の自治体では住民の反対運動が起きている。もともとギャンブル依存症の比率が高い日本であるし、生活環境の悪化も懸念される。マネーロンダリング(資金洗浄)の場になる心配もある。そんな住民の不安が解消されたわけではない。

 雇用創出などのプラス面ばかりを強調せず、この際、政府は住民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、考え直すべきなのではないか。

 日本では古くから、民間の賭博を禁じてきた歴史がある。この禁を破り、ギャンブルで経済成長しようという発想自体が、どこかおかしい。


I R汚職、でも政権固執 成長戦略の目玉 (2019年12月26日 中日新聞)

2019-12-26 13:31:17 | 桜ヶ丘9条の会

IR汚職、でも政権固執 成長戦略の目玉 

2019/12/26 紙面から

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を担当する副大臣だった自民党の秋元司衆院議員(48)が二十五日に収賄容疑で逮捕され、IRが汚職や犯罪行為の温床になりかねないとの懸念が現実味を増した。それでも、安倍政権はIR整備を予定通り進める姿勢を崩さない。IRを成長戦略の目玉に位置付けているからだ。

 

◆「影響なし」

 

 菅義偉官房長官は二十五日の記者会見で、秋元議員逮捕がIR推進に与える影響を問われ「できるだけ早期にIRの整備による効果が実現できるよう着実に進めたい」と言明。自民党の二階俊博幹事長も「安倍政権そのものが関与したわけではない」と記者団に事件の影響を否定した。

 安倍政権は、カジノを主な収益源にホテルや会議場を兼ね備えたIRの整備で、訪日外国人客の増加による経済効果が期待できると主張。汚職や治安の悪化、ギャンブル依存症の増加といった懸念が拭えない中、昨年七月にIR整備法を成立させ、早ければ二〇二〇年代半ばに開業させるスケジュールを描く。

 日本のIRには、トランプ米大統領に大口献金をしているカジノ大手ラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長らが進出を熱望。安倍晋三首相は一七年二月の訪米時にアデルソン氏らにIRに関する方針を説明した経緯もあり、米側の意向を酌んだ「政治案件」の性格も帯びる。

 IRには、菅氏の地元・横浜市、二階氏の地元・和歌山県、大阪府・市、長崎県が誘致を表明。千葉市や東京都、愛知県、名古屋市も誘致の必要性を検討している。政府は年明け早々に自治体や事業者の選定基準を含む基本方針を決定して準備を急ぐ。

 

◆一体化

 

 今回の収賄容疑は、IR整備に向けて最も危惧された政治家と企業の癒着の典型だ。にもかかわらず、菅氏はIR事業に関わる政治家、官僚と企業の接触に関し「一概に禁止されるものではない」と規制に消極的な考えを表明。政治家、官僚と企業の不適切な関係が繰り返される恐れが残る。

 政府はカジノの規制や監督を担う「カジノ管理委員会」を一月に設置する。その設立準備はIR推進本部事務局が兼務しており、現段階ではカジノの「推進」と「規制」を担う部局が一体化している。カジノ管理委が事業者の健全性を客観的な立場でチェックできるのか疑念は消えない。

 菅氏はカジノ管理委について「独立した職権の行使が保障される。カジノ規制の公正性・中立性は確保される」と言い切る。だが、担当副大臣と特定事業者の癒着に捜査のメスが入った以上、説得力は乏しい。

 (中根政人)