一票の不平等 最高裁は厳しい姿勢で(2016年11月9日中日新聞)

2016-11-09 09:17:00 | 桜ヶ丘9条の会
一票の不平等 最高裁は厳しい姿勢で 

2016/11/9 中日新聞
 参院選の一票の不平等をめぐる高裁レベルの判決は違憲状態十件、合憲六件だった。二年前に都道府県単位の制度改革を求めた最高裁は、二つの「合区」にとどめた是正策を厳しく審査すべきだ。

 国会議員とは「全国民の代表」であると憲法に定めがある。だから選挙区や後援団体などの選挙母体の代表ではない。自己の信念に基づいてのみ発言する-、憲法学の泰斗・芦部信喜著「憲法」(岩波書店)はそう記している。

 原発や沖縄の問題は、選挙区にかかわらず、国会議員がみな考えるべき重要テーマである。「全国民の代表」なのだから…。一票の不平等問題は、この憲法規定と密接にかかわる。しかも憲法前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」で始まる。

 正当な選挙とは、一票の価値が平等でなければ成立しない。なぜなら国会議員を選ぶのは、われわれ国民である。国民の多数意見が、国会議員の多数意見と食い違っては、主権者の意見が国政に正しく反映されないからだ。

 だが、夏の参院選の最大格差は三・〇八倍。「一人一票」の人と「一人〇・三票」の人がいる。このゆがみによって、有権者約40%で全選挙区議員の過半数を獲得する現象が生まれている。「鳥取・島根」「徳島・高知」を統合する二つの「合区」をしても、著しい不平等は解消されなかった。

 最高裁はこの点を十分に吟味してほしい。二〇一四年に自ら「都道府県単位の方式を改め、速やかに不平等状態を解消する必要がある」と述べた。本当に最高裁の要求に応じた改革だったか疑う。

 次の参院選までに抜本改正するという政治の約束をうのみにしてはいけない。自民党幹部から「合区解消のための憲法改正案」が浮上しているからだ。これは国会議員を「全国民の代表」ではなく、「都道府県の代表」にするのと、ほぼ同義である。

 選挙制度は時代により大選挙区制、中選挙区制、小選挙区制、比例代表制など変遷してきた。

 参院についても、全国九つのブロック制が検討されたことがある。

 法律でこなしてきた。憲法をいじることでない。都道府県を単位に固定すれば身動きがとれなくなる。時代に即した柔軟な選挙制度を封じる。何よりこの改憲案には自党に有利との打算があるのではないか。最高裁が厳格でないと、こんな極論まで飛び出す。