平岡町をゆく(5) 印南野台地(5) 文学にみる印南野
私たちの生活の舞台である印南野(いなみの)はしばしば文学にも登場します。
清少納言は『枕草子』で、印南野を嵯峨野についで二番目にあげています。
野は、嵯峨野さらなり。
印南野。
交野(かたの)。
飛火野(とぶひの)。
しめ野。
春日野。
そうけ野こそ、すずろにおかしけれ・・・・
*すずろにおかしけれ・・・・・心ひかれて、趣がある
清少納言が、野について述べているところで、印南野を二番目に取り上げた理由は分かりません。
特別な個人的なつながりや思い出があったとも考えられません。
とすれば、印南は中央(京都)でも広く知られていた地名であったようです。
印南野がもっとも多く登場するのは、なんと言っても『万葉集』です。
(山部赤人)
印南野の 浅茅押しなべ さねる夜の けながくしあれば 家し偲はゆ (巻六ー九四○)
《いなみ野の短い茅(ちがや)を押しなびかせて寝る夜の日数がつもったので、家が恋しくなった》