矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

診療の質: カルバペネムの適正使用

2020-08-09 12:58:22 | 感染症関連
日常の診療現場で、これまで国内で帰国後15年間、経験させていただいたことから
まず、言えること。

その病院の診療の質のひとつに、「カルバペネム系薬」の適正使用があがります。

抗菌薬は、「無駄に」広域抗菌薬を使っても、患者の状態はよくなることは多いです。
しかしながら、診療として、「精緻さ」や「医学的な美しさ」には欠けます。
そして、公共の利益である、「耐性菌の予防」には反する診療になります。

レジデントやフェローをしている時に、精緻なカルテやとても行き届いた
oral case presentationに触れた時、「衝撃的に」感動していました。

毎週のケースカンファレンスで、いつかあの指導医のように、スラスラと体系的な鑑別診断をあげられるようになりたい、あのレジデントのように包括的かつ漏れのない「完璧な」カルテ記載やcase presentationを目指したい、と思いながら、日々の研修をしていました。

日常的に触れる診療に「美しさ」がある研修環境は、とても恵まれています。
「環境」から学ぶことが多いからです。

「診療水準」が、暗黙的に提示されているからです。

カルバペネム系薬が、ほぼ全例?の重症患者に投与されている状況は、15年前と比べると改善していることを体感しますが、まだまだ、と思います。

血液培養2セットの採取は、研修病院ではほぼルーティンになってきていると思います。 血液培養さえも採取していない病院もまだまだ多いことは把握しております。
どうやって、生涯教育を届けることができるか、みんなで考えたい点です。

カルバペネム系薬を「あえて」使用する場面は、とても限られています。

「病態」と「微生物」を考えることができれば、
「全ての重症患者 or CRP高値」= カルバペネム系薬投与 にはならない。

重症デング熱や、マラリアや、ニューモシスティス肺炎や、リケッチア、血管炎, Hemophyagocytic sydrome (HPS)など、カルバペネム系薬は投与不要な疾患です。
病態と微生物が考慮されない場合、診断も遅れたり、見逃してしまいます。

医療面接(=病歴)のみで、8-9割の診断はつきます。
病態を想定したら、感染症が想定されれば、臓器と次は、原因微生物。

微生物を考えましょう!!! これにはトレーニングが必要です。
Hands-onの、現場での思考レニーニングが必要です。

これまで以上に、Virtualで、思考フレームを届ける教育ストラテジーを構築したいと感じております。