中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

労働者のメンタルヘルス不調を予防する「ストレスチェック制度」

2022年12月14日 | 情報

ストレスチェック制度は、一次予防が目的です。

ストレスチェック制度とは? 義務化で進む企業のメンタルヘルス対策
2022.10.31日経ビジネス まとめ記事(註;同紙の過去の記事をまとめたものです)

労働者のメンタルヘルス不調を予防する「ストレスチェック制度」
ストレスチェック制度とは事業者に「ストレスチェックの実施」と「面接指導の実施」を義務付けるものだ。2015年12月1日から実施され、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を中心に、労働者自身のストレスへの気づきを促すことや、ストレスの原因となる職場環境改善につなげることが期待されている。

背景にあるのは、仕事や生活に強い不安やストレスを感じている労働者の増加だ。全体の5割を超えるとされ、ストレスが原因で労災認定されるケースは増加傾向にあるという。

ストレスチェック制度の下では、事業者は常時雇用する労働者に対して年に1回、医師や保健師等によるストレスチェックを実施し、「高ストレス」と評価された労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を受けさせることが義務化された。加えて事業者は面談の結果に基づいて、必要に応じて就業上の措置を講じなければならない。

この記事ではストレスチェック制度を中心に、労働者とストレスの問題について扱った過去記事を紹介していく。

◎うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう 五十嵐 良雄先生

ストレスによって「うつ症状」が引き起こされるケースは少なくない。しかし、ストレスは悪い影響を与えるものばかりではなく、適度なストレスが良い状況を生むこともある。大切なのは、ストレスがどういうものかを把握することで、そのために活用されるのがストレスチェックだ。

https://business.nikkei.com/atcl/plus/00034/030900002/

◎うつ病対策で自殺者の7割は救える!?  和田 秀樹先生 

集団検診が病気の予防につながるのと同様、ストレスチェックは心の病を未然に防止することに役立つ。特にビジネスパーソンにとって、うつなどの心の病を予防することは、感情に振り回された判断で仕事に悪影響を与えるリスクを防ぐことを意味する。

https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/041100007/

◎NK細胞は「笑顔」と「乳酸菌」で活性化する 順天堂大学 奥村康先生

最近の研究によると、ストレスが増すと体内にある免疫細胞(NK細胞)の働きが低下し、体調を崩しやすくなることが分かってきた。NK細胞は「初対面のウイルスなどにも反応でき、体内をパトロールしてウイルスやがん細胞の芽といったさまざまな病原体と戦ってくれる」という。

https://business.nikkei.com/atcl/report/16/030800018/040700033/

◎家族に手紙、残業激減 そして増収増益

住友商事系のIT企業SCSK(東京・港)では、09年に就任した中井戸信英社長(当時)が自ら先頭に立って社員の健康管理に注力した。その中には幅の広い机、十分な数の快適なトイレ、社員食堂といった施策も含まれる。こうした「健康経営の実践」は、国が積極的に進めるストレスチェック制度の趣旨とも一致する。

https://business.nikkei.com/article/NBD/20150610/284129/

◎「形だけの罠」に陥るな 伊藤忠 岡藤正広社長(当時)

企業の義務となったストレスチェック制度も、ストレスチェックの結果を踏まえて職場の改善につなげなければ意味がない。「ストレスチェックは従業員個人のストレス状態を知るだけでなく、その企業がブラックかホワイトかを判定するリトマス紙にもなる」という。

https://business.nikkei.com/article/NBD/20150610/284131/

◎昼寝推奨や禁煙強制、進化する「健康経営」

健康経営への理解と実践は、さまざまな企業に広がっている。GMOインターネット、吉野家、DeNAは「睡眠の質」に注目し、KDDIや三井化学はストレスチェック制度に先行して社員によるセルフチェックや独自のストレスチェックを導入。すかいらーくレストランツやSOMPOひまわり生命保険では社員の禁煙に取り組むといった具合だ。

https://business.nikkei.com/atcl/report/15/278202/080800048/

◎心を読み、働き方を変える

 テクノロジーでストレスの程度を可視化する取り組みも進んでいる。繊維メーカーのミツフジ(京都府精華町)が開発した特殊な肌着は、着るだけでストレスを100段階で数値化できるという。計測されたデータはクラウド上で解析され、職場環境の「緊張・重圧のレベル」や「業務上の強制レベル」などが可視化される。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00109/00021/

最後に

心の病や身体の病につながる「ストレス」。労働者が感じているストレスを把握し、それによって病の予防につなげるのがストレスチェック制度だ。制度の開始から7年近くが経過しているが、ストレスチェック制度がすべての職場で十分に生かされているわけではない。ビジネスの質を高く保つためにも、ストレスチェック制度が正しく浸透していくことを期待したい。

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助言や面談などの取り組み広がる

2022年12月13日 | 情報

教員のことだからと無視しないでください。
全国の各企業においても同様な事態になっていると推測します。
ただ、表沙汰になっていないだけでしょう。他山の石は大切です。

増える若手教員の心の病、助言や面談などの取り組み広がる…文科省がメンタルヘルス対策支援へ
22.12.9 読売

20代の休職 深刻

心の病で休職する20代の教員が増えるなか、若手教員の悩みや心の不調にいち早く気づける環境作りに学校現場が取り組んでいる。先輩教員が若手に助言する「メンター制度」を導入する学校や、新任教員にカウンセラーとの面談を義務づけた自治体もある。文部科学省は来年度から、教員のメンタルヘルス対策を進める自治体を支援する方針だ。(佐々木伶)

気軽に相談
「部活動に顔を出せなくて心苦しいんです」

京都市立京都工学院高校の一室で、1年目の伊藤汐里教諭(24)は、悩みを口にした。伊藤教諭は陸上部の副顧問だが、授業の準備や初任者研修の課題に追われ、1学期中は部活動にあまり足を運べなかった。後ろめたく感じ、メンターの高橋健教諭(39)に相談した。

体育担当で強豪ラグビー部の顧問を務める高橋教諭は「仕事に慣れるまでは授業準備を優先した方が良いね」と助言。その上で、「部活には曜日を決めて行けば、生徒は『何曜日に来る先生』と認識してくれるようになる」と提案した。

伊藤教諭は「経験豊富な先輩教員に相談して気持ちが軽くなった。比較的時間のある曜日を見つけて顔を出したい」と笑顔で語った。

同校では2018年から、若手教員が仕事上の悩みを気軽に相談できるよう、学年や教科などが重ならない先輩教員をメンターとする制度を導入している。船越康平教頭(49)は「多忙化により職場でのコミュニケーションが取りにくくなるなか、若手が相談しやすい仕組みを作ることが重要だと考えた」と話す。

文科省の調査によると、20年度にうつ病などの「心の病」が原因で、1か月以上休んだ公立小中高校などの教員は9452人に上る。このうち、20代の休職者らは16年度の1286人から、20年度は2140人へと増加。20代の全教員に占める割合はこの5年間で1・5倍に増えた。

埼玉県川口市で長年、教員のカウンセリングに取り組む順天堂大の土井一博客員教授(63)は「若手教員は経験が少なく、特に授業の準備や部活動などで長時間労働に陥りやすい。自分の限界が分からずに取り組んでしまう教員もおり、管理職は無理していないか目配りすることが必要だ」と話す。

学校に派遣

 川崎市では今年度から保健師や看護師らを各校に派遣し、1年目の教員に15分程度の個別面談を義務づけた。同市教育委員会は「本人の自覚がない心の変化も察知できれば」とする。

大分県教委では10年度から、OB教員が1年目や転勤初年度の教員と面談している。当初悩みがないと話していた教員が「欠かしたことのない朝食を食べなくなった」と漏らしたことをきっかけに、精神的に疲弊していることがわかったケースもあったという。

文科省は来年度、都道府県などに教員のメンタルヘルス対策の調査を委託。教委が病気休職の原因分析や相談体制の充実などを検討する。効果があれば全国に普及させたい考えだ。

教育研究家の妹尾昌俊さんは「教員のメンタル対策に本格的に取り組む自治体はまだ少なく、教員の休職者数に歯止めがかからない。職場の内外を問わず、若手教員が常に相談できる体制を作るなど、悩みが深刻化する前に対応することが重要だ」と話している。

長時間労働 見直し進む

長時間労働により心を病む教員は少なくない。文部科学省は教員の働き方の見直しを進めている。

同省は2019年に1か月の残業時間が45時間を超えないなど勤務時間の上限に関するガイドラインを公表。勤務時間の記録や、自宅への持ち帰りをなくすことを求めた。部活動では、外部の「部活動指導員」を導入し、休日の部活動を地域のスポーツ団体に移行することを促す。

学校内の働き方を見直す動きもある。鹿児島県奄美市立金久中では今年2学期から月1回、校長や教頭、養護教諭らで月ごとの労働時間を分析し、何を具体的に減らすべきかを考える。主導する黒木健史教諭(47)は、前任校でも中間テストを廃止し、忙しい学期末は授業を5時間に減らす改革を手がけた。

岐阜市立岐阜中央中では昨年度から、生徒や保護者への日常的なアンケートを紙からウェブアプリに変更し、集計の手間を減らした。

文科省の担当者は「働き方の見直しで、教員が子供と向き合う時間を増やし、授業の質向上にもつなげられれば」と話している。

 

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12日は、休載です

2022年12月09日 | 情報

12日は、出張しますので当ブログを休載します。
再開は、13日(火)です。よろしくお願いします。

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心にも「栄養」を与えよう

2022年12月09日 | 情報

メンタルヘルスにとって大切なのは、「食事、睡眠、運動」と云われています。
当たり前のことなのですが、できない、できていないのが現代人の悩みです。


楽しい食事の効用 心にも「栄養」を与えよう
元気の処方箋(神田東クリニック院長 高野知樹さん)
日経 2022年11月28日

冬野菜やタラ、カキなどの食材がおいしい季節になってきた。人間にとって食べる行為にはエネルギー源の摂取という役割のほか、
食を楽しむという側面もある。煮る、炒める、焼くなど様々な調理法があり、味付けも無数にあるのはそのためだ。

人間にとって「食う・寝る・遊ぶ」はカメラの三脚のようなもので、そのひとつが崩れると心身の安定に影響が及ぶ。
悩みごとが深いときには眠りも浅く、食欲も湧かず、気分転換しようという気にもなれず、
さらに不調になるという悪循環も起きてしまう。このように「食」はメンタルヘルスにも関連が深い。

メンタルヘルスに関連の深いセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった脳内の神経伝達物質はたんぱく質を摂取して作られる。

また朝食をとり日光を浴びることで、脳内のセロトニンの分泌が促され、脳を覚醒させている。
規則的な食生活は生体のリズムも整えてくれる。
毎日朝食を食べる子どもほど学力や体力テストの点数が高い傾向にあるという調査結果もある。

農林水産省は生涯を通じた心身の健康を支える食育を重視し「食育推進基本計画」を定期的に公表している。
また学術的にも食からメンタルヘルスを考えることを目的に、国際栄養精神医学会が2013年に創設されている。
そこでは地中海式、ノルウェー式、日本式など植物や魚が中心の伝統的な食習慣がうつ病発症のリスクを低くする研究報告がされている。

食は食べる行為そのものがリラックスとリフレッシュをもたらしている。
コロナ下のビジネスマンの昼食は黙食が広がった影響か、スマートフォンをテーブルに置いて、
画面を動かしながら黙々と食す姿が増えた気がする。
楽しい情報に触れているのだとしても、いま食べているものの外観、食感、味など五感を使って楽しんでいるだろうか。
少なくとも1日3回、メンタルヘルスにも「栄養」を与える機会になるはずだ。

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「孤立・孤独」時代の上司のあり方

2022年12月08日 | 情報

デジタルの便利さに走り、アナログを無視した結果でしょう。
小職は、何度も強調します。アナログを「意識的に」重用しましょう。
小職の身の回りでも垣間見られる現象があります。「顔をそむける、挨拶をしない、ありがとうが言えない」。

産業医が見る「孤立・孤独」時代の上司のあり方 
22.10.19 日経ビジネス 江口尚氏

現役の産業医として、企業の現場にも立つ江口尚・産業医科大学教授は、企業の中で孤立・孤独感が強くなっている一因は、
上司と部下のコミュニケーションの質が悪くなっていることにあると説明する。
効率や生産性が厳しく問われる一方で、従業員は非正規や女性、外国人など立場も価値観も多様化し、上司のケアは難しくなるばかり。
職場に今、孤立・孤独感を強めるどんな問題が起きているのか。上司はどう対応すればいいのかを聞いた。

【今こそ「孤独解消」 孤立する社員を救う処方箋】記事ラインアップ

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00504/101700008/

(1)リモートワークは理想的な働き方か 増幅する孤独
(2)すれ違う上司と部下 なぜ組織の中に孤独が生まれたか
(3)「国民8割に孤独感 みんな孤独予備軍」 小倉担当相の危機意識
(4)人付き合いある? 孤立してない? 「あなたの孤独度」を診断
(5)SOMPO、SCSK、NTTコム…社員の幸福度向上、経営の中心に
(6)昭和の社内行事・運動会が再評価 若手ベンチャーで結束感爆上がり
(7)「脳トレ」川島隆太氏が警鐘、リモート社会の行き着くディストピア
(8)産業医が見る「孤立・孤独」時代の上司のあり方 江口尚氏(今回)
(9)労基署立ち入りから人材重視へ転換 すし銚子丸の「社員の幸福度」
(10)日本の孤独をなくすには「あなたのいばしょ」理事長大空幸星氏
(11)楽天、アステリアのウェルビーイング 「CWO」を置く理由
(12)「脱PDCAで幸福度をもう一度上げよう」慶応大学・前野隆司教授
(13)テクノロジーで幸福度を上げる ハピネスプラネット矢野社長
(動画)10月10日号特集「孤独が会社を蝕む」を担当編集委員が解説

江口 尚(えぐち・ひさし)氏
2001年3月、産業医科大学医学部卒業。01年5月、福岡徳洲会病院で医師となる。
04年6月、産業医科大学 産業生態科学研究所・産業保健経済学研究室専門修練医。
20年7月、同大学産業生態科学研究所・産業精神保健学研究室教授就任

―企業内で孤立・孤独感を強める従業員が増えています。江口先生は、現役の産業医でもあります。どう対応しているのですか。

(江口氏)新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務の急増の中で、まず新入社員や中途入社の人たちが、
どうやって仕事を教わればいいのかすごく戸惑い、職場で孤立感を抱きました。
スキルは高まらず、元からいるメンバー、つまり以前のままなら隣の席にいたはずの社員が、
何をしているのかも分からないまま、孤独感を強めているのです。

これは、新型コロナの感染拡大が始まった2020年の途中からいわれてきたことで、企業はいろいろな取り組みをしてきました。
新入社員をオンラインで集めて、みんなでわいわいガヤガヤと話をしてみようとか、
コミュニケーションの機会を作ることにとにかく取り組んできました。それを勧めたのは、多くは産業医や保健師ですね。

それと面談です。上司とのコミュニケーションは、リモートワークの時代は特にですが、近年とても重要になっています。
私も3社で産業医をしており、従業員と面談をするときには必ず「孤立・孤独感はありますか」とか
「上司とコミュニケーションは取れていますか」というようなことを聞くようにしています。

註;ここから先は、有料配信でした。

 

 

 

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