ストレスチェック制度は、一次予防が目的です。
ストレスチェック制度とは? 義務化で進む企業のメンタルヘルス対策
2022.10.31日経ビジネス まとめ記事(註;同紙の過去の記事をまとめたものです)
労働者のメンタルヘルス不調を予防する「ストレスチェック制度」
ストレスチェック制度とは事業者に「ストレスチェックの実施」と「面接指導の実施」を義務付けるものだ。2015年12月1日から実施され、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を中心に、労働者自身のストレスへの気づきを促すことや、ストレスの原因となる職場環境改善につなげることが期待されている。
背景にあるのは、仕事や生活に強い不安やストレスを感じている労働者の増加だ。全体の5割を超えるとされ、ストレスが原因で労災認定されるケースは増加傾向にあるという。
ストレスチェック制度の下では、事業者は常時雇用する労働者に対して年に1回、医師や保健師等によるストレスチェックを実施し、「高ストレス」と評価された労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を受けさせることが義務化された。加えて事業者は面談の結果に基づいて、必要に応じて就業上の措置を講じなければならない。
この記事ではストレスチェック制度を中心に、労働者とストレスの問題について扱った過去記事を紹介していく。
◎うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう 五十嵐 良雄先生
ストレスによって「うつ症状」が引き起こされるケースは少なくない。しかし、ストレスは悪い影響を与えるものばかりではなく、適度なストレスが良い状況を生むこともある。大切なのは、ストレスがどういうものかを把握することで、そのために活用されるのがストレスチェックだ。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00034/030900002/
◎うつ病対策で自殺者の7割は救える!? 和田 秀樹先生
集団検診が病気の予防につながるのと同様、ストレスチェックは心の病を未然に防止することに役立つ。特にビジネスパーソンにとって、うつなどの心の病を予防することは、感情に振り回された判断で仕事に悪影響を与えるリスクを防ぐことを意味する。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/041100007/
◎NK細胞は「笑顔」と「乳酸菌」で活性化する 順天堂大学 奥村康先生
最近の研究によると、ストレスが増すと体内にある免疫細胞(NK細胞)の働きが低下し、体調を崩しやすくなることが分かってきた。NK細胞は「初対面のウイルスなどにも反応でき、体内をパトロールしてウイルスやがん細胞の芽といったさまざまな病原体と戦ってくれる」という。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/030800018/040700033/
◎家族に手紙、残業激減 そして増収増益
住友商事系のIT企業SCSK(東京・港)では、09年に就任した中井戸信英社長(当時)が自ら先頭に立って社員の健康管理に注力した。その中には幅の広い机、十分な数の快適なトイレ、社員食堂といった施策も含まれる。こうした「健康経営の実践」は、国が積極的に進めるストレスチェック制度の趣旨とも一致する。
https://business.nikkei.com/article/NBD/20150610/284129/
◎「形だけの罠」に陥るな 伊藤忠 岡藤正広社長(当時)
企業の義務となったストレスチェック制度も、ストレスチェックの結果を踏まえて職場の改善につなげなければ意味がない。「ストレスチェックは従業員個人のストレス状態を知るだけでなく、その企業がブラックかホワイトかを判定するリトマス紙にもなる」という。
https://business.nikkei.com/article/NBD/20150610/284131/
◎昼寝推奨や禁煙強制、進化する「健康経営」
健康経営への理解と実践は、さまざまな企業に広がっている。GMOインターネット、吉野家、DeNAは「睡眠の質」に注目し、KDDIや三井化学はストレスチェック制度に先行して社員によるセルフチェックや独自のストレスチェックを導入。すかいらーくレストランツやSOMPOひまわり生命保険では社員の禁煙に取り組むといった具合だ。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/278202/080800048/
◎心を読み、働き方を変える
テクノロジーでストレスの程度を可視化する取り組みも進んでいる。繊維メーカーのミツフジ(京都府精華町)が開発した特殊な肌着は、着るだけでストレスを100段階で数値化できるという。計測されたデータはクラウド上で解析され、職場環境の「緊張・重圧のレベル」や「業務上の強制レベル」などが可視化される。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00109/00021/
最後に
心の病や身体の病につながる「ストレス」。労働者が感じているストレスを把握し、それによって病の予防につなげるのがストレスチェック制度だ。制度の開始から7年近くが経過しているが、ストレスチェック制度がすべての職場で十分に生かされているわけではない。ビジネスの質を高く保つためにも、ストレスチェック制度が正しく浸透していくことを期待したい。