中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

是正勧告+行政指導

2019年04月03日 | 情報

以下、感想です。
(1)時系列に並べると
2015年9月 入社2年目の20歳代の社員が自死
2017年9月 労働基準法に基づく是正勧告
              (社内の実態調査)
2017年11月 未払い残業代計約6億7000万円を支払う
2018年5月 社員の労災認定
2018年6月 労働時間管理・メンタルヘルス対策の改善についての行政指導
2019年3月 会社が事実を公表(遺族との話し合いなどを踏まえて)
15年当時の田中孝司社長(現会長)ら役員7人は今後受け取る報酬の一部を3か月間返納
となります。労災認定まで、2年8か月余り、公表までに3年6か月余り、
時間が掛かりすぎではないでしょうか。

(2)因果関係は、長時間労働+担当業務の大幅な変更+上司とのトラブル⇒強い心理的負荷⇒自死、
となります。やはり長時間労働だけでは、人間は簡単にへこたれないのですが、
それに担当業務の大幅な変更や上司とのトラブルが重なると耐えられないというのが、
小職の経験からの持論です。

(3)ストレスチェック制度の施行は2015年12月ですから、報道や広報から推定すると当該企業は、
未だにストレスチェックを実施していない
または、実施していても結果を有効に活用していなかったのではないかとの疑問を持ちます。

(4)通常、労基署の是正勧告だけでも、当該企業内では関係者がおろおろして、対応に苦慮するものですが、
さらに「行政指導」ですから、今後も行政からは厳しい追跡調査が入りますね。

 KDDI社員自殺 労災…労基署認定 残業代4600人未払い
19.3.30 読売

KDDI(au)は29日、入社2年目の20歳代の社員が2015年9月に自殺し、
労働基準監督署から長時間労働などの強い心理的負荷が原因として、労災と認定されたと発表した。
認定は18年5月だった。KDDIは「遺族との話し合いを踏まえて公表を決めた」としている。
KDDIは自殺した社員の性別や仕事の内容などは、遺族の意向として明らかにしていない。
労基署は、月90時間を超える時間外労働や、仕事の内容や量が変わる担当変更、
上司とのトラブルがあったと認定したという。
このほか、社員の長時間労働やサービス残業について労働基準法に基づく是正勧告を
17年9月に受けたことも明らかにした。
15~16年度に社員4613人に対する残業代の未払いがあり、
17年11月に計約6億7000万円を支払った。
15年当時の田中孝司社長(現会長)ら役員7人は今後受け取る報酬の一部を3か月間返納するという。

KDDI、4613人に残業代未払い 社員自殺後に判明
19.3.29 朝日

携帯電話大手のKDDI(au)は29日、社員4613人に対して
未払いの残業代が計約6億7千万円あったと発表した。
社員が過労自殺した後、労働基準監督署から長時間労働などについて是正勧告を受け、
社内調査した結果判明したという。
同社によると、2015年9月に入社2年目の20代社員が自殺し、
18年5月に労働基準監督署から労災と認定された。
1カ月あたり90時間を超える時間外労働が確認された。
また、担当の変更で勤務内容や量が大きく変わったことや、
上司からの指導をめぐるトラブルが強い心理的な負担になったと判断された。
同社は社員が自殺した後の17年9月、労基署から長時間労働やサービス残業について是正勧告を受け、
全社員を対象に未払い残業代の有無を調査。未払いが判明した4613人に、
15~16年度分の未払い残業代計約6億7千万円を17年11月に支払った。
社員からの申請と上司の承認により残業代を払っていたが、
承認なしで残業していた分などが未払いだったという。
個別の理由は「答えられない」(広報)としている。
18年6月には自殺した社員について、労基署からサービス残業についての是正勧告と
メンタルヘルス対策の改善などについての行政指導も受けた。
同社はこれまでこうした事実を公表しておらず、遺族と話し合い、
29日に高橋誠社長が社内向けに説明したのに合わせて公表したとしている。
同社は「お亡くなりになられた社員のご冥福を深くお祈りするとともに、
ご遺族の皆様には心よりおわびとお悔やみを申し上げます」と謝罪した。
長時間労働の解決に取り組む意識が薄かったとして、改善に取り組むとしている。
当時の関係役員は報酬を自主返上するという。

(参考)働き方改革の実行と健康経営の推進について
KDDI社HPより転載(太線とアンダーラインは、小職)

 KDDI株式会社 2019年3月29日
当社で勤務されていた、入社2年目で20代の社員が2015年9月に自殺されたことにつきまして、2018年5月に労働基準監督署により労災が認定されました。
お亡くなりになられた社員には、1か月あたり90時間を超える時間外労働時間が確認されたことに加え、仕事の内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があったことおよび上司とのトラブルがあったことが認定され、これら複数の出来事から強い心理的負荷があったと判断されています。
また、当社は、長時間労働およびサービス残業に関する是正勧告ならびに行政指導を労働基準監督署から受け、これに基づく社内調査と未払い賃金の清算などの対応を行っています。
当社は、この事実を大変重く受け止めております。
お亡くなりになられた社員のご冥福を深くお祈りするとともに、ご遺族の皆様には心よりお詫びとお悔みを申し上げます。
今回の原因は、社員の労働時間の適正な管理ができておらず、抜本的な長時間労働の問題解決に取り組む意識が社内で醸成されてこなかったことによります。さらに、社員からの申告なしには社員の心身の不調を把握することが難しいという従来の体制について、さらなる改善の余地があったことを強く認識しております。
当社は、このような重大な事態を招いてしまったことを踏まえ、再び同様のことを起さないため、経営陣自らが前面に立って働き方改革を実行し、健康経営を推進していきます。
詳細は別紙をご参照ください。
該当項目へジャンプします別紙: 働き方改革の実行と健康経営の推進について

<別紙>働き方改革の実行と健康経営の推進等への取り組みについて
1. 働き方改革の実行
【働き方変革推進委員会の設置】
社員の労働時間を適切に把握する努力が不十分であったことを真摯に反省し、働き方改革についてこれまで以上に実効性のある取り組みを全社一丸となって行うべく、2017年1月に総務・人事本部長を委員長とし、全本部長を委員とする「働き方変革推進委員会」を立ち上げ、同委員会を中心として、全社で抜本的な長時間労働と過重労働の抑止に取り組んでいます。
【具体的な取り組み】
「働き方変革推進委員会」を毎月1回必ず開催し、全社における社員の労働時間と長時間労働の是正にかかる課題を共有するとともに、生産性向上にかかる提言・議論を行っています。
36協定の特別条項に定める年間所定外労働時間の上限を、2017年度までの720時間から540時間に短縮する内容で36協定を締結しました。
ビル入退館時刻および業務用PCのログオフ時刻等の客観的記録に基づき、社員の労働時間・在館時間を適切かつ正確に把握できるよう、システム開発等の環境整備を実施しました。また、部下を持つ上司に対し、部下の労働時間・在館時間を適切に把握するべく、指導・啓発を行っています。
労働時間の過少申告がなされるリスクを考慮し、勤務終了後に事業場内に留まることを、目的を問わず禁じ、業務終了から30分以内に退社することを全社でルール化しました。

2. 健康経営の推進
当社では、社員の心身の「健康」を重要な経営課題と捉え、社員一人ひとりの健康を組織で支える健康経営を推進すべく、2018年4月には社長メッセージとしての「健康経営宣言」を行い、社員の健康保持・増進の積極的支援等、健康経営に取り組んでいます。【働き方改革・健康経営推進室の設置】
労災認定の一要因となった「上司とのトラブル」に関して、当社では、従来から所属長向け研修や、申告窓口の整備、社員に対するフォロー体制の整備などを行ってきました。これらに加えて、更なる改善を図るため、不調の予兆のある社員を、申告がない段階でも発見して早期に対応すべく、本年1月に「働き方改革・健康経営推進室」という専担組織 (2019年4月時点で約60名在籍予定) を設置しました。
【働き方改革・健康経営推進室による取り組み】
社員からの申告がないと不調である社員を把握することが難しかった従来の体制から、社内カウンセラーが全社員の面談を定期的に実施するなどの取組みを進める体制を構築しました。
これにより、不調の予兆のある社員を、社員からの申告のない段階でも発見し、医療職や所属長と連携し、不調の予兆のある社員に会社側から早期に対応する体制を整備しました。
「働き方改革・健康経営推進室」は、各職場の上司とは異なる視点で、トラブルの有無を含めた職場環境を早期に把握し改善する役割を果たします。

3. 労働基準監督署からの是正勧告等への対応
当社は、労働基準監督署から、労働基準法第32条および第37条違反 (長時間労働およびサービス残業) に関する是正勧告を2017年9月に、また、亡くなられた当社社員にかかる労働基準法第37条違反 (サービス残業) についての是正勧告および労働時間管理・メンタルヘルス対策の改善についての行政指導を2018年6月に、それぞれ受けました。
これらの勧告を受け、全社員を対象に未払賃金の有無を調査し、2017年11月に、賃金の未払が判明した当社社員4,613名に対して総額約6.7億円の未払い賃金の清算を行うなど、労働基準監督署からの勧告・指導に対応しています。
当社は、このような重大な事態を招いてしまったことを踏まえ、再び同様のことを起さないため、経営陣自らが前面に立って働き方改革を実行し、今後も健康経営をより一層推進していきます。

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