中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

配偶者の心疾患で自身のうつ病リスクが上昇 

2024年08月01日 | 情報
配偶者の心疾患で自身のうつ病リスクが上昇 日本の夫婦27万7,000組超で検討
2024年5月8日 読売

米・Boston UniversityのToshiaki Komura氏らは、
配偶者の心血管疾患(CVD)がその後の自分自身のメンタルヘルスに影響を及ぼし、
うつ病リスクを上昇させるかについて検討するため、日本の夫婦27万7,000組超を対象としたコホート研究を実施。
配偶者がCVDを発症した人は、そうでない人に比べうつ病リスクが13%高かったと
JAMA Netw Open( 2024;7:e244602 )に報告した。

配偶者のCVD発症が家族のストレスに
CVDは炎症と関連しており、うつ病のリスクを高めることが知られているが、
本人だけでなく、その家族もさまざまなストレスや不安を抱えやすい。
Komura氏らは今回、配偶者のCVD発症と自身のうつ病との関連を検討するため、
全国健康保険協会の大規模データベースを用いてコホート研究を実施した。
対象は、日本で2015~22年度に健康保険に加入していた被保険者27万7,142例
(就労世代の約40%、平均年齢58.2±10.2歳、男性95.1%)と
その配偶者(被扶養者)。2016~22年度に配偶者がCVD(脳卒中、心不全、心筋梗塞)を発症した被保険者13万8,571例を曝露群とし、
年齢、性、所得、配偶者のCVD発症日を1:1でマッチングした配偶者がCVDを発症していない被保険者13万8,571例を非曝露群とした。
CVDの発症は、国際疾病分類第10版(ICD-10)のコードを用いて同定した。データの解析は2016年4月~22年3月に実施した。
主要評価項目は、2016~21年度における被保険者のうつ病発症。
被保険者および配偶者の社会人口統計学的特徴(年齢、性、所得)および併存疾患(糖尿病、高血圧、CVD、うつ病の既往)を
調整後、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、配偶者のCVD発症と被保険者のうつ病発症との関連を解析した。
また、性、年齢、所得水準、CVD既往歴によるサブグループ解析を行った。

循環器専門医と精神科医の連携による予防ケアが必要
 中央値30カ月の追跡期間中に、被保険者のうち4,876例(1.8%)が新規にうつ病を発症した。
曝露群では配偶者がCVDを発症した後に被保険者がうつ病を発症する傾向が示され、
うつ病の累積罹患率は非曝露群に比べ曝露群で高かった(3.4%vs.3.8%)。
解析の結果、非曝露群と比べ曝露群でうつ病のリスクが有意に高かった(ハザード比1.13、95%CI 1.07~1.20)。
サブグループ解析では、性、年齢、所得、CVD既往歴における異質性のエビデンスは認められなかった。
健康的な行動(喫煙状況、飲酒状況、運動、降圧薬使用の有無)
および客観的な健康状態(肥満度、血圧、コレステロール値、グルコース値、推算糸球体濾過量)を調整後も、
一貫して曝露群ではうつ病リスクが高かった(ハザード比1.16 95%CI 1.06~1.28)。
研究の限界としてKomura氏らは、被保険者世帯の社会経済状況や生活習慣に関する情報の不足による残留交絡の可能性や、
2015年度以降のデータを使用しているため、
配偶者における新規CVD発症と被保険者におけるうつ病を正確に特定できていない可能性があることなどを挙げている。
その上で、同氏は「配偶者のCVD発症により自身のうつ病リスクは13%有意に上昇する」とし、
「循環器専門医と精神科医の連携や、地域レベルでの支援体制の拡充など、
配偶者がCVDを発症した人に対するメンタルヘルスについての包括的な予防ケアが必要だ」と述べている。
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