◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「全く気にしていないで」って?

2015-01-11 11:26:58 | 気になる言葉、具体例
                                  野菜は国産です

 「○の数値が高かったのに全く気にしていないで大量に食べます」という記述を見付けました。これを書いた人は、「~ずに(~ないで)」と「~ず(~なくて)」はもちろん、いろいろなことを区別できなくなっています。でも、「気にしていなく」と書いてないだけ幾らかましかなぁ。いや、ましとかいう問題では・・・。
 「幾らかかったか全然知らなく、(中略)連絡してもつながらなく、(中略)帰っても◇はいなく」という、何とも気持ち悪い「~なく」連発の文章を見たことがあります。「サイズが合わなく」は「報道ステーション」で聞いたナレーションですが、落ち着いた声のナレーターが、これはない、ものすごくバカっぽい。
 もはやだれも区別していないのですから、言いたいことをはっきりこうだと意識しないで書いていますよね。それでも、「全く気にしていないで」は何となく変だと感じるでしょう? 感じますよね? ねっ? では、「全く気にしていないで」をちゃんとした日本語にするとどうなるでしょうか。考えてみてください。
 どうですか? 考えろと言っておいてすみませんが、「全く気にしておらず」「全く気にしていないようで」「全く気にしないで」「全く気にせずに」「全く気にすることなく」「全く気にしてなくて」「全く気にしていないので」「全く気にせず」など、どうとでも書けます。そもそも書いた本人が意識していませんし、意識しようにもちゃんとした日本語を知らないから意識できませんよねぇ┐( ̄д ̄)г。
 あ! ひょっとして、「全く気にしていない、なので」が縮まったのでしょうか。2007年に「なので」について書いたことを思い出しました。「今は梅雨だ」+「ので」→「今は梅雨なので」、「な」は助動詞。「健康だ」+「ので」→「健康なので」、「な」は形容動詞の連体形。こういう「な」に接続助詞「ので」が続いて初めて「なので」なのですが、「なので」という形で独立して用いられ、接続詞のようになっているというわけです。
 すっかり定着したとはいえ、場合によっては不適切だと感じることがあります。改まった席での会話や文書には「なので」は合いません。「自然災害と対策」がテーマの番組を見ていたとき、緊迫感のある映像、低めの声、である体のナレーション、怖いなぁと真剣に聞いていたら「川沿いの道はすぐに冠水する。なので」などと言ったものですから、思いっきりずっこけました。こういう「なので」の「で」?
 「原因が分からないで治療が遅れた」は、はっきり誤りだと分かる例です。原因をなかなか特定できなかったから適切な治療ができなかった、それは「原因が分からなくて治療が遅れた」「原因が分からず、治療が遅れた」です。当たり前ですが、いつもどうとでも書けるわけではないのですよ。意味がはっきりしていたら書き方も明確に決まります。多くの人がその決まりを無視しているだけなのです。
 「そういうことは心配しなくて修行に励んでほしい」は誤りで、「そういうことは心配しないで修行に励んでほしい」もしくは「そういうことは心配せずに修行に励んでほしい」と言わなければいけないのです。「そんなこと心配しないで!」と言いますよね、だれも「そんなこと心配しなくて!」なんて言いませんよね?! なのに、なぜ「心配しなくて」なんて言うのでしょうか。ちょっと考えれば分かることなのですから、ちょっと考えてほしいなぁ(^^)。
 それから、これは余談ですが、「くりぃむvs林修!」とかいう番組で聞いたいいかげんなナレーション、説明が正しいかどうかなんて全く気にしておらず、どうせだれも知らないだろうと思っているのがばればれ。「相棒」で冷凍イカが凶器として使われたことがあるという話をしていたとき、被害者のことを料理研究家だの料理評論家だの言っていましたが、違うから! インスペクターだから!
コメント
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