熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

安野光雅作画「繪本 平家物語」

2020年06月22日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   平成平家物語絵巻とも言うべき、詩情豊かな安野光雅画伯の繪の魅力は、計り知れない。
   素晴らしい絵本画家としての業績のみならず、ヨーロッパ各地の風景画や、時には、シェイクスピアの戯曲繪などにも、人々を感動させてやまない作品を残すなど、画業のジャンルは限りなく、これまでに、多くの絵画展に通ったり、本を読んだり、津和野の「安野光雅美術館」を訪れたりして、その魅力を感じさせて貰って来た。
   展示会で、写真を撮らせて頂いたり、このブルログでも、書評など、結構書かせて頂いている。
   今回は、改めて、日本の誇る最高の古典文学平家物語の世界を、安野平家のビジュアル化の展開であるから、一気に源平の盛衰を浮き彫りにした平安末期の歴史が、彷彿として蘇ってきて、何重にも文学の世界を堪能できる喜びを味わう事ができる。
   

   昔の時は帰らない。しかし、故郷という空間に帰ることによって、時間を遡る感にふけるか、もしくは昔に帰ったと同じことだと考えてみることができる。700年前の「平家物語」の世界には時間を遡れないが、旧跡を尋ねてみれば、昔の時間が帰ってくるかも知れないと考えて、
   安野画伯は、この繪本を描くために、京都や壇ノ浦は勿論太宰府にも、八島や倶利伽羅峠、鵯峠から一ノ谷、「平家物語」に出てくる殆どの場所を踏査したという。
   旧跡へ行けば、地霊の有無に拘わらず、平家の情景を思い描くことが楽になると言う思いで、源平の盛衰を追いながら構想を膨らませて、こんなに素晴らしい絵巻を描くことができたのである。
   子供の頃、和田神社の近くで一夏を過ごし、和田岬や、須磨、六甲、湊川などは思い出の地であり、平家の雑兵よりも酷かった一兵卒での戦中の苦難を源平の合戦に重ね合わせたり、思い出を語って尽きない。

   私も、これに似た想いを経験しており、この平家物語で、福原遷都の時に、候補に挙がった「播磨の印南野か摂津の昆陽野に都を造るべきか」とされた昆陽に、子供の頃、住んでいて、能にも結構登場しており、近くに、奈良時代の名僧行基が建立した古刹昆陽寺があり、西国街道が走っていたので、歴史を感じていた。
   それに、阪神間が故郷であり、宇治と京都で学生時代を送り、上方の古社寺散策など歴史散歩に明け暮れていたのであるから、良く分からないままに、歌舞伎や文楽、能狂言など、古典芸能鑑賞には、随分、助けになったと感謝している。
   
   さて、安野光雅画伯は、最初に「平家物語」に接したのは、厳島神社への遠足だとしながら良く分かっていなかったので、小学唱歌の「青葉の笛」だと言って、敦盛の話を語っている。
   私の場合には、大学生になって平家物語が愛読書にはなったが、平家への傾倒への切っ掛けは、全く記憶にないので、高校の国語の授業か受験勉強の教材からの影響だと思う。
   余談だが、この平家物語のケースも同様だが、受験科目8科目、すなわち、英数2国の他に、社会2科目、理科2科目を突破しなければならず、幅広く勉強したのが、その後、非常に、役に立ったので、受験勉強も捨てたものではなく、良かったと思っている。

   さて、この安野光雅画伯の「繪本 平家物語」だが、79枚の絵画シーンと共に、巻を追って、143章の文章で、安野平家物語が、語られていて、これを読むだけでも、「平家物語」をショートカットで味わうことができて面白い。

   さて、私だが、伊丹から、京都の東一条の大学まで電車と市電で通っていた。
   天気が良くて気持ちの良い日には、途中の桂で嵐山線に乗り換えて、嵐山や嵯峨野へ沈没していた。
   あっちこっち気の向くままに散策するのだが、先の東京オリンピック前後の頃であるから、当時は、観光客も少なくて、嵯峨野の祇王寺や滝口寺など、鬱蒼とした山間の草深い庵と言った風情で、まさに、鄙びた平家物語の世界であった。
   私の好きであった平家物語の舞台、嵐山と嵯峨野を舞台にした「祇王」「小督」「横笛」
   ”峰の嵐か松風か、尋ぬる人の琴の音か・・・” 夕闇迫る頃の嵐山は、無性に人恋しくなる。
   安野光雅画伯の絵を紹介しておきたい。
   
   
   
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