都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
都電・都バス・都営地下鉄一日乗車券の美術館割引
以前のエントリにて、東京メトロの一日乗車券の特典(美術館の割引入場。)をご紹介したことがありますが、都電・都バス・都営地下鉄の一日乗車券(700円)でも割引となる施設がありました。前と同じように、パンフレットから抜き出してみることにします。
松下電工汐留ミュージアム(大江戸線汐留駅) 入場料100円引き
三井記念美術館(浅草線日本橋駅) 入場料100円引き
森美術館(大江戸線六本木駅) 入場料200円引き
江戸東京博物館(大江戸線両国駅) 常設展2割引き/特別展100円引き
一日乗車券は、都営地下鉄だけでなく都バスも対象です。と言うことで、優待施設も、都内を網羅する都バス沿線などに多く点在するのかと期待しましたが、実際には4カ所だけでした。都営線の沿線で、なおかつ都の施設でもある東京都現代美術館や、真ん前を都バスが通る庭園美術館も対象外です。ただ、この企画そのものが、ついこの間始まったばかりだそうです。まずは、より一層の特典拡充をお願いしたいと思いました。

当然ながら4カ所のみの割引なので、メトロの一日乗車券と比べるとかなり見劣りします。ただ、あえてメリットを挙げれば、江戸東京博物館の割引は都営だけです。その他、都立8庭園(浜離宮、向島百花園など。)の入場割引や、メトロと同じような、コレドや丸ビルなどの商業施設の特典も付いていました。ちなみに都交通局のウェブサイトには、これらの特典の情報が掲載されていません。詳しくは各駅にて配布中の「いっとく」(上に画像をアップしました。)をご覧下さい。
*関連エントリ
東京メトロ一日乗車券で美術館巡り
松下電工汐留ミュージアム(大江戸線汐留駅) 入場料100円引き
三井記念美術館(浅草線日本橋駅) 入場料100円引き
森美術館(大江戸線六本木駅) 入場料200円引き
江戸東京博物館(大江戸線両国駅) 常設展2割引き/特別展100円引き
一日乗車券は、都営地下鉄だけでなく都バスも対象です。と言うことで、優待施設も、都内を網羅する都バス沿線などに多く点在するのかと期待しましたが、実際には4カ所だけでした。都営線の沿線で、なおかつ都の施設でもある東京都現代美術館や、真ん前を都バスが通る庭園美術館も対象外です。ただ、この企画そのものが、ついこの間始まったばかりだそうです。まずは、より一層の特典拡充をお願いしたいと思いました。

当然ながら4カ所のみの割引なので、メトロの一日乗車券と比べるとかなり見劣りします。ただ、あえてメリットを挙げれば、江戸東京博物館の割引は都営だけです。その他、都立8庭園(浜離宮、向島百花園など。)の入場割引や、メトロと同じような、コレドや丸ビルなどの商業施設の特典も付いていました。ちなみに都交通局のウェブサイトには、これらの特典の情報が掲載されていません。詳しくは各駅にて配布中の「いっとく」(上に画像をアップしました。)をご覧下さい。
*関連エントリ
東京メトロ一日乗車券で美術館巡り
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
「エルネスト・ネト」展 ギャラリー小柳+小山登美夫ギャラリー 8/12
ギャラリー小柳(中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
小山登美夫ギャラリー(江東区清澄1-3-2 7階)
「エルネスト・ネト」展
8/1-31(小山登美夫ギャラリーは26日まで)
ポリウレタン繊維の布を用いたインスタレーションを手がけるブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトの個展です。銀座一丁目のギャラリー小柳と、清澄にある小山登美夫ギャラリーの両方で開催されています。

ギャラリー小柳では、まるで天幕のような布状の立体作品が待ち構えています。もちろんその中へと入ることも可能です。少し狭い入口から奥へと進むと、意外なほど広い空間が待ち構えている。そして床にはフカフカのクッション。その上で無造作に転がっているのは人形でしょうか。どれも中に小さなビーズが入っています。握ってみるとどれも弾力感があって、なかなか手触りが良い。天幕全体を含めて、思わず頬ずりしたくなるような質感があるのも興味深いと思いました。
天幕の中では、まるで重しのようなオブジェがいくつもぶら下がっています。空間全体を鍾乳洞と見立てれば、ちょうどこれは上から垂れ下がる石筍です。また、オブジェの中には強く香るものがありました。ハーブでも入っているのでしょうか。ピンク色をした薄い半透明の布地から差し込んでくる淡い光。胎児が母親の体内で守られているイメージがわいてきます。中にいるのが心地良いインスタレーションです。
小山登美夫ギャラリーでは、布製のオブジェが、まるでアメーバのように四方八方へ伸びながら吊り下がっています。生き物の触覚のような生々しさ。布が皮膚となり、全体が大きな未知の生命体にも見えてくる。実に奇妙な格好をしています。
ギャラリー小柳では8月いっぱいまで、また小山登美夫ギャラリーでは今月26日まで開催されています。どちらか一方をと問われれば、小柳の方をおすすめしたいです。
小山登美夫ギャラリー(江東区清澄1-3-2 7階)
「エルネスト・ネト」展
8/1-31(小山登美夫ギャラリーは26日まで)
ポリウレタン繊維の布を用いたインスタレーションを手がけるブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトの個展です。銀座一丁目のギャラリー小柳と、清澄にある小山登美夫ギャラリーの両方で開催されています。

ギャラリー小柳では、まるで天幕のような布状の立体作品が待ち構えています。もちろんその中へと入ることも可能です。少し狭い入口から奥へと進むと、意外なほど広い空間が待ち構えている。そして床にはフカフカのクッション。その上で無造作に転がっているのは人形でしょうか。どれも中に小さなビーズが入っています。握ってみるとどれも弾力感があって、なかなか手触りが良い。天幕全体を含めて、思わず頬ずりしたくなるような質感があるのも興味深いと思いました。
天幕の中では、まるで重しのようなオブジェがいくつもぶら下がっています。空間全体を鍾乳洞と見立てれば、ちょうどこれは上から垂れ下がる石筍です。また、オブジェの中には強く香るものがありました。ハーブでも入っているのでしょうか。ピンク色をした薄い半透明の布地から差し込んでくる淡い光。胎児が母親の体内で守られているイメージがわいてきます。中にいるのが心地良いインスタレーションです。
小山登美夫ギャラリーでは、布製のオブジェが、まるでアメーバのように四方八方へ伸びながら吊り下がっています。生き物の触覚のような生々しさ。布が皮膚となり、全体が大きな未知の生命体にも見えてくる。実に奇妙な格好をしています。
ギャラリー小柳では8月いっぱいまで、また小山登美夫ギャラリーでは今月26日まで開催されています。どちらか一方をと問われれば、小柳の方をおすすめしたいです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
「森山大道」展 タカ・イシイギャラリー 8/12
タカ・イシイギャラリー(江東区清澄1-3-2 5階)
「森山大道展『25時 shinjuku, 1973』」
7/25-8/26
タカ・イシイギャラリーで開催中の「森山大道」展です。30年以上も前に森山が撮影した映像作品、「25時 shinjuku, 1973」が展示されています。

ともかくパッと見ただけでは、いや恐らく最後まで見通したとしても、このモノクロ映像が新宿を捉えたものだとは分からないでしょう。ノイズの飛び交う暗がりの画面に、終始ビカビカと点滅する白い明かり。それが目まぐるしく右へ左へ移動しながら、ぐるぐると回っている。BGMは、バイクのけたたましいエンジン音や、時折いきなり鳴らされるクラクションの乾いた音だけです。それが約17分間。こんなにブレ、またボケている映像を見たのも初めてだと思うほどでした。
この作品は、当時の新宿区が、街のプロモーションのために森山へ依頼して出来たものだそうです。区の頼み込んだ映像に、このようなぶっ飛んだ作品を作ってしまうところがいかにも森山らしいとも思いますが、これを見た区の担当者はきっと仰天したことでしょう。結局ボツとなり、未公開のまま30年以上も眠ることとなりました。もちろん見方によっては、モノクロ画面で無造作に瞬くネオンの光や喧しいバイク音が、夜の街新宿の混沌さ、または猥雑さを表現していると言えるのかもしれません。もう一点展示されていた女性のヌード(スライドの作品です。)と合わせると、とてもカッコ良く見えるのが何とも不思議でした。
今月26日までの開催です。
「森山大道展『25時 shinjuku, 1973』」
7/25-8/26
タカ・イシイギャラリーで開催中の「森山大道」展です。30年以上も前に森山が撮影した映像作品、「25時 shinjuku, 1973」が展示されています。

ともかくパッと見ただけでは、いや恐らく最後まで見通したとしても、このモノクロ映像が新宿を捉えたものだとは分からないでしょう。ノイズの飛び交う暗がりの画面に、終始ビカビカと点滅する白い明かり。それが目まぐるしく右へ左へ移動しながら、ぐるぐると回っている。BGMは、バイクのけたたましいエンジン音や、時折いきなり鳴らされるクラクションの乾いた音だけです。それが約17分間。こんなにブレ、またボケている映像を見たのも初めてだと思うほどでした。
この作品は、当時の新宿区が、街のプロモーションのために森山へ依頼して出来たものだそうです。区の頼み込んだ映像に、このようなぶっ飛んだ作品を作ってしまうところがいかにも森山らしいとも思いますが、これを見た区の担当者はきっと仰天したことでしょう。結局ボツとなり、未公開のまま30年以上も眠ることとなりました。もちろん見方によっては、モノクロ画面で無造作に瞬くネオンの光や喧しいバイク音が、夜の街新宿の混沌さ、または猥雑さを表現していると言えるのかもしれません。もう一点展示されていた女性のヌード(スライドの作品です。)と合わせると、とてもカッコ良く見えるのが何とも不思議でした。
今月26日までの開催です。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
「新版画と川瀬巴水の魅力」 ニューオータニ美術館 8/5
ニューオータニ美術館
「新版画と川瀬巴水の魅力」
8/5 14:00~
講師 渡辺章一郎(渡辺木版美術画舖株式会社 代表取締役)
少し前のことになりますが、ニューオータニ美術館で開催された「新版画と川瀬巴水の魅力」という講演会を聞いてきました。講師は、巴水の版元である渡辺木版美術画舖の社長、渡辺章一郎氏です。実際に川瀬と交流があった庄三郎氏の孫にあたります。講演は、新版画と創作版画という版画界の2つの潮流、及びにそこにおける巴水の地位、またはその魅力などを語っていく内容でした。いつもの通り、以下、講演全体の流れを追う形でまとめたいと思います。
渡辺版画店と「新作版画」
・新版画と創作版画
新版画:浮世絵の伝統から。絵師、彫師、摺師の共作。新しい創作版画への対抗心も。
創作版画:西洋の影響。全工程を一人で行う。いわゆる芸術性の追求。
・浮世絵の衰退
国内の西洋美術の隆盛とともに、日露戦争以降衰退。(海外では人気を保持。)
写真の勃興。(=写実性では写真にかなわない。)
→浮世絵師の激減
・渡辺庄三郎と渡辺版画店の成功
版画店の創立者、渡辺庄三郎
浮世絵衰退への危機感。
復刻版として海外マーケットを拡大。
=1906年、名作浮世絵の復刻を手がける。(浮世絵風「新作版画」)
→外国人に売れた。(=手頃なサイズ。買いやすい。)
↓
事業成功
「創作版画」の誕生
・創作版画とは
浮世絵の没落とともに、洋画家を中心に隆盛。
自画、自刻、自摺の原則。
・創作版画の発展
山本鼎:創作版画の父。仏留学中に島崎藤村と交流。「漁夫(1904)」は創作版画の元祖。
戸張孤雁:錦絵と近代版画をつなぐ。やや浮世絵的な作風。
恩地孝四郎:抽象画の先駆け。詩や文学を版画で表現。
外国人の浮世絵師と「新版画」の誕生
・カペラリーと渡辺章一郎
カペラリーの水彩画を見た章一郎が彼を版画の世界へと誘う。
→章一郎と意気投合し新版画を制作し始める。(一説)
・バートレット
大英帝国全盛期のイギリス人。莫大な経済力。
→その資本を版画へ投下。
↓
摺師の意欲向上。新版画の隆盛時代へ。
初期の「新版画」
・新版画の制作
橋口五葉
渡辺の新版画熱に打たれて制作を始める。13点。自ら工房を持ち独立。
伊東深水
外国では美人画の浮世絵師として名高い。キャリア初期は新版画制作。100点以上。
巴水との厚い交流。
・役者絵と風景画(川瀬巴水)のモチーフ
役者絵:名取春仙、山本耕花(「大正の写楽」と呼ばれた。)
風景画:川瀬巴水
「塩原おかね路(1918)」:初期作。
「東京十二ヶ月」シリーズ
「三十間堀の暮雪(1920)」:銀座界隈を捉えた2作のうちの1つ。現在の三原橋。
「月島の渡船場(1921)」:3点ある自画像のうちの1つ。
関東大震災(1923)とその時代
・関東大震災の大被害
渡辺版画店焼失。灰燼に帰す。作品も多く失われた。
→経済的苦境へ。=売れ筋の追求。「分かり易いもの、売れるもの。」
・この時代の創作版画
都市文化、近代的生活の主題。
前川千帆「地下鉄(1924)」:地下鉄開通。美男子を雇って女性客を集めたという車掌の姿を捉える。
深沢索一:百景の考案者。「新東京百景 神宮球場早慶戦ノ日(1931)」
小泉葵巳男:9年かけて「明治大東京百図絵版画」を完成。
・新版画の変化
外国では大変に人気。(現在も巴水を初めとする新版画は国外の方が高評価。)
アメリカ、ポーランドでの展覧会。数千枚、数万枚が輸出。大量生産へ。
国内では「所詮、浮世絵の延長。」と見られていた部分もあった。
二次大戦前には輸出激減。資材不足により制作も低調に。
震災以降、二次大戦前の川瀬巴水
・「東京二十景」シリーズ
「芝増上寺(1925)」:三千枚(?)が売れた。海賊版も出回る。

「馬込の月(1930)」:巴水の移り住んだ馬込の地。現在も記念プレートが設置されている。

・「新東京百景」シリーズ
百景と言いながら、僅か6点でやめてしまった。「弁慶橋の春雨(1936)」など。
・「東海道風景選集 日本橋 夜明(1940)」:五本の指に入る名作。高速道路のない日本橋の姿。
渡辺版以外の巴水作品
・酒井川口版
赤と青が強い。派手。アメリカ人好み。
「上野清水堂の雪(1929)」や「雪の宮島(1929)」など。
・東京尚美堂版、土井版
渡辺版と殆ど変わらない。
・芳寿堂版
巴水を4点だけ刷った謎の版元。「雪の夜 浦安(1932)」など。
第二次大戦後の「新版画」と巴水
・新版画の一大ブーム
進駐軍の手頃な土産物。「版画大国日本」として認知。
新版画のさらなる大衆的傾向。まさしく土産物的な作品を売り出す。
・風景版画、巴水
「愛子(あやし)の月(1946)」
宮城県に残る何もない原風景。
→巴水はこうした無名の光景を美しく版画に仕立てるのが巧かった。
名所も構図などを工夫。
「平泉金色堂(1957)」

絶筆。9割がた完成。この年の11月に没する。背を向けてとぼとぼと歩む僧侶。寂し気な作品。
現代の「創作版画」
・芸術性の高まり
抽象的作風と多様な技法。(←その反面での伝統的技法の衰退。技師の減少。)
・斉藤清:現在、最も人気の高い創作版画家。「会津の冬50柳津(1981)」など。
質疑応答
Q 一度にどのくらい刷るのか。
A 大抵は200枚程度。(但し数千枚は刷ることが出来る。)巴水は、当然ながら売れたものとそうでないものに差があった。売れたもので3千枚(?)、少ないもので大戦中の6枚など。
Q 巴水作品を多く所有している美術館は何処か。
A 巴水専門の美術館はない。作品は江戸東京博物館が多く持っている。(作品の約半数?)来年には、常設展示にて出品予定(展示替えにて。)も。
Q 版元の役割とは
A まず作品を刷ること。その他、画商、同業他社への卸販売など。創作版画のような場合は、作家からの委託販売を請け負う。画廊形式。
以上です。講演では、スライドによる100点以上の作品解説も行われました。総じて、近代日本の版画史を理解出来るような、とても分かり易い講演会だったと思います。
*関連エントリ
「川瀬巴水展」 ニューオータニ美術館 8/27:展覧会の感想です。
「新版画と川瀬巴水の魅力」
8/5 14:00~
講師 渡辺章一郎(渡辺木版美術画舖株式会社 代表取締役)
少し前のことになりますが、ニューオータニ美術館で開催された「新版画と川瀬巴水の魅力」という講演会を聞いてきました。講師は、巴水の版元である渡辺木版美術画舖の社長、渡辺章一郎氏です。実際に川瀬と交流があった庄三郎氏の孫にあたります。講演は、新版画と創作版画という版画界の2つの潮流、及びにそこにおける巴水の地位、またはその魅力などを語っていく内容でした。いつもの通り、以下、講演全体の流れを追う形でまとめたいと思います。
渡辺版画店と「新作版画」
・新版画と創作版画
新版画:浮世絵の伝統から。絵師、彫師、摺師の共作。新しい創作版画への対抗心も。
創作版画:西洋の影響。全工程を一人で行う。いわゆる芸術性の追求。
・浮世絵の衰退
国内の西洋美術の隆盛とともに、日露戦争以降衰退。(海外では人気を保持。)
写真の勃興。(=写実性では写真にかなわない。)
→浮世絵師の激減
・渡辺庄三郎と渡辺版画店の成功
版画店の創立者、渡辺庄三郎
浮世絵衰退への危機感。
復刻版として海外マーケットを拡大。
=1906年、名作浮世絵の復刻を手がける。(浮世絵風「新作版画」)
→外国人に売れた。(=手頃なサイズ。買いやすい。)
↓
事業成功
「創作版画」の誕生
・創作版画とは
浮世絵の没落とともに、洋画家を中心に隆盛。
自画、自刻、自摺の原則。
・創作版画の発展
山本鼎:創作版画の父。仏留学中に島崎藤村と交流。「漁夫(1904)」は創作版画の元祖。
戸張孤雁:錦絵と近代版画をつなぐ。やや浮世絵的な作風。
恩地孝四郎:抽象画の先駆け。詩や文学を版画で表現。
外国人の浮世絵師と「新版画」の誕生
・カペラリーと渡辺章一郎
カペラリーの水彩画を見た章一郎が彼を版画の世界へと誘う。
→章一郎と意気投合し新版画を制作し始める。(一説)
・バートレット
大英帝国全盛期のイギリス人。莫大な経済力。
→その資本を版画へ投下。
↓
摺師の意欲向上。新版画の隆盛時代へ。
初期の「新版画」
・新版画の制作
橋口五葉
渡辺の新版画熱に打たれて制作を始める。13点。自ら工房を持ち独立。
伊東深水
外国では美人画の浮世絵師として名高い。キャリア初期は新版画制作。100点以上。
巴水との厚い交流。
・役者絵と風景画(川瀬巴水)のモチーフ
役者絵:名取春仙、山本耕花(「大正の写楽」と呼ばれた。)
風景画:川瀬巴水
「塩原おかね路(1918)」:初期作。
「東京十二ヶ月」シリーズ
「三十間堀の暮雪(1920)」:銀座界隈を捉えた2作のうちの1つ。現在の三原橋。
「月島の渡船場(1921)」:3点ある自画像のうちの1つ。
関東大震災(1923)とその時代
・関東大震災の大被害
渡辺版画店焼失。灰燼に帰す。作品も多く失われた。
→経済的苦境へ。=売れ筋の追求。「分かり易いもの、売れるもの。」
・この時代の創作版画
都市文化、近代的生活の主題。
前川千帆「地下鉄(1924)」:地下鉄開通。美男子を雇って女性客を集めたという車掌の姿を捉える。
深沢索一:百景の考案者。「新東京百景 神宮球場早慶戦ノ日(1931)」
小泉葵巳男:9年かけて「明治大東京百図絵版画」を完成。
・新版画の変化
外国では大変に人気。(現在も巴水を初めとする新版画は国外の方が高評価。)
アメリカ、ポーランドでの展覧会。数千枚、数万枚が輸出。大量生産へ。
国内では「所詮、浮世絵の延長。」と見られていた部分もあった。
二次大戦前には輸出激減。資材不足により制作も低調に。
震災以降、二次大戦前の川瀬巴水
・「東京二十景」シリーズ
「芝増上寺(1925)」:三千枚(?)が売れた。海賊版も出回る。

「馬込の月(1930)」:巴水の移り住んだ馬込の地。現在も記念プレートが設置されている。

・「新東京百景」シリーズ
百景と言いながら、僅か6点でやめてしまった。「弁慶橋の春雨(1936)」など。
・「東海道風景選集 日本橋 夜明(1940)」:五本の指に入る名作。高速道路のない日本橋の姿。
渡辺版以外の巴水作品
・酒井川口版
赤と青が強い。派手。アメリカ人好み。
「上野清水堂の雪(1929)」や「雪の宮島(1929)」など。
・東京尚美堂版、土井版
渡辺版と殆ど変わらない。
・芳寿堂版
巴水を4点だけ刷った謎の版元。「雪の夜 浦安(1932)」など。
第二次大戦後の「新版画」と巴水
・新版画の一大ブーム
進駐軍の手頃な土産物。「版画大国日本」として認知。
新版画のさらなる大衆的傾向。まさしく土産物的な作品を売り出す。
・風景版画、巴水
「愛子(あやし)の月(1946)」
宮城県に残る何もない原風景。
→巴水はこうした無名の光景を美しく版画に仕立てるのが巧かった。
名所も構図などを工夫。
「平泉金色堂(1957)」

絶筆。9割がた完成。この年の11月に没する。背を向けてとぼとぼと歩む僧侶。寂し気な作品。
現代の「創作版画」
・芸術性の高まり
抽象的作風と多様な技法。(←その反面での伝統的技法の衰退。技師の減少。)
・斉藤清:現在、最も人気の高い創作版画家。「会津の冬50柳津(1981)」など。
質疑応答
Q 一度にどのくらい刷るのか。
A 大抵は200枚程度。(但し数千枚は刷ることが出来る。)巴水は、当然ながら売れたものとそうでないものに差があった。売れたもので3千枚(?)、少ないもので大戦中の6枚など。
Q 巴水作品を多く所有している美術館は何処か。
A 巴水専門の美術館はない。作品は江戸東京博物館が多く持っている。(作品の約半数?)来年には、常設展示にて出品予定(展示替えにて。)も。
Q 版元の役割とは
A まず作品を刷ること。その他、画商、同業他社への卸販売など。創作版画のような場合は、作家からの委託販売を請け負う。画廊形式。
以上です。講演では、スライドによる100点以上の作品解説も行われました。総じて、近代日本の版画史を理解出来るような、とても分かり易い講演会だったと思います。
*関連エントリ
「川瀬巴水展」 ニューオータニ美術館 8/27:展覧会の感想です。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
酒井抱一 「夏秋草図屏風」 東京国立博物館
東京国立博物館
平常展(本館2階 第7室) 8/8-9/18
「酒井抱一 - 夏秋草図屏風 - 」
東京国立博物館の平常展では、今、酒井抱一(1761-1829)の代表作として名高い「夏秋草図屏風」(1821)が展示されています。展示期間は今月8日から来月18日まで。立秋を過ぎた今の時候にもぴったりな素晴らしい作品です。


夏の激しい雨に打たれた夏草と、風に気持ち良さそうにそよぐ秋草。それぞれが、抱一ならでは生き生きとした線の描写によって見事に表現されています。たっぷりと水を浴びて生い茂る夏草のしなやかさ。その影に隠れた白百合が美しく映えていました。また秋草では、まるで水の中でゆらゆらと揺れているようなツタの描写が絶品です。風に吹かれて空へと舞う葉と、これを描かせたら抱一の右に出る者はいないススキの描写。それらが銀地の上で冴え渡るツタと絡み合う。朱の交わる葉の色は秋の匂いを漂わせています。もう見事としか言い様がありません。
抱一は、この作品を尾形光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に描きました。ちょうど雷神の後ろには夏草が、そして風神の裏には秋草が描かれていたそうです。それぞれ、雷神の雷雨に襲われた夏草と、風神の風に吹かれた秋草を表現しているのでしょう。また、表の金地と裏の銀地。衝立てとして置かれていたなら、その眩いばかりの輝きにさぞ贅沢な空間が形成されていたと思います。ちなみに抱一は、風神雷神図の構図を取り入れることで、結果的にその原作者である俵屋宗達へ敬意を示しました。江戸にて琳派を志し、見事それを成し遂げた抱一と、その師としての光琳と宗達が繋がっている。時空を超えた琳派の巨匠たちのコラボレーション。まさに記念碑的作品です。
私はこの作品を、二年前に東京国立近代美術館で開催された「RIMPA」展で初めて見ました。その時の衝撃に近い感動は今も忘れられません。(酒井抱一の名が強く記憶に残ったのもその展覧会でした。それ以来、琳派の中では彼が一番好きです。)これを機会に是非ご覧になることをおすすめ致します。
平常展(本館2階 第7室) 8/8-9/18
「酒井抱一 - 夏秋草図屏風 - 」
東京国立博物館の平常展では、今、酒井抱一(1761-1829)の代表作として名高い「夏秋草図屏風」(1821)が展示されています。展示期間は今月8日から来月18日まで。立秋を過ぎた今の時候にもぴったりな素晴らしい作品です。


夏の激しい雨に打たれた夏草と、風に気持ち良さそうにそよぐ秋草。それぞれが、抱一ならでは生き生きとした線の描写によって見事に表現されています。たっぷりと水を浴びて生い茂る夏草のしなやかさ。その影に隠れた白百合が美しく映えていました。また秋草では、まるで水の中でゆらゆらと揺れているようなツタの描写が絶品です。風に吹かれて空へと舞う葉と、これを描かせたら抱一の右に出る者はいないススキの描写。それらが銀地の上で冴え渡るツタと絡み合う。朱の交わる葉の色は秋の匂いを漂わせています。もう見事としか言い様がありません。
抱一は、この作品を尾形光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に描きました。ちょうど雷神の後ろには夏草が、そして風神の裏には秋草が描かれていたそうです。それぞれ、雷神の雷雨に襲われた夏草と、風神の風に吹かれた秋草を表現しているのでしょう。また、表の金地と裏の銀地。衝立てとして置かれていたなら、その眩いばかりの輝きにさぞ贅沢な空間が形成されていたと思います。ちなみに抱一は、風神雷神図の構図を取り入れることで、結果的にその原作者である俵屋宗達へ敬意を示しました。江戸にて琳派を志し、見事それを成し遂げた抱一と、その師としての光琳と宗達が繋がっている。時空を超えた琳派の巨匠たちのコラボレーション。まさに記念碑的作品です。
私はこの作品を、二年前に東京国立近代美術館で開催された「RIMPA」展で初めて見ました。その時の衝撃に近い感動は今も忘れられません。(酒井抱一の名が強く記憶に残ったのもその展覧会でした。それ以来、琳派の中では彼が一番好きです。)これを機会に是非ご覧になることをおすすめ致します。
コメント ( 15 ) | Trackback ( 0 )
「発見、クラシック音楽。」 Esquire(エスクァイア)9月号
これまで殆ど手に取って見たことのない雑誌でしたが、「庭は夏の日ざかり」のSonnenfleckさんのエントリを拝見して買ってみました。一見、クラシック音楽をカジュアルに紹介しているようで、実は随分とマニアックに纏められています。「エスクァイア」の9月号です。700円でした。
Esquire (エスクァイア)2006年09月号
まずはアーノンクールのインタビューから特集が始まります。今年の来日の宣伝を兼ねた企画なのかもしれません。いやに畏まった鈴木淳史の文章が、演奏界におけるアーノンクールの地位を手堅く纏めていました。その後はロシアピアニズムからチュルリョーニス(かなりマニアック?画家としても活躍したそうです。)、そして古楽へ。その間に、モーツァルトがお好きだと仰る杉本博司のインタビュー(私は、むしろマイルスがアドリブをやっているようなところが好きです!)や、お手軽なイラストとともに紹介されるバロック作曲家の一覧、または著名作曲家(プッチーニがあってヴェルディがない!これは残念…。)の実にオーソドックスな推薦CD(フルヴェンの第9から、藤井一興の武満ピアノ集まで。)などの記事が挟まれていました。また古楽では、ナイーブなどのレーベルも丁寧に紹介されています。ともかく、あれもこれもとでも言うようなごった煮状態です。(良い意味で。)全く焦点を絞らない構成がかえって新鮮なのかもしれません。時にかなりマニア路線へ傾きながらも、専門誌に有りがちな近寄り難い雰囲気がない。マニア心をオシャレな感覚で包み込んでくれました。
ごった煮と言うことで、最後にはクラシックの花形でもあるオペラが紹介されています。美しい写真とともに紹介されるグラインドボーン(見ているだけでくつろげる?)の他に、ワーグナーはパルジファルから聞くべしと宣う黒田恭一氏の記事、そして先日、新国立劇場にて鮮烈な「ティート」を見てくれたコンヴィチュニーのインタビューなどが掲載されていました。そして最後に忘れてはならないのが付録のCDです。ここではそれまでのごった煮状態が鳴りを潜め、「ALPHA」の専門的なセンスの良さが光っています。いつもあまりにも長く、もしくはあまりにもてんでバラバラな選曲なので聞き通すのが疲れてしまうレコ芸の付録CDよりは魅力的です。CDの欲しくなるようなサンプラー。これはとっておこうかと思います。
一体どのような方を想定して記事を纏めたのかが非常に謎めいていますが、価格を鑑みれば十分に楽しめると思います。ちなみにロシアピアニズムについては全く知りませんでした。これからじっくり読んでみたいです。

まずはアーノンクールのインタビューから特集が始まります。今年の来日の宣伝を兼ねた企画なのかもしれません。いやに畏まった鈴木淳史の文章が、演奏界におけるアーノンクールの地位を手堅く纏めていました。その後はロシアピアニズムからチュルリョーニス(かなりマニアック?画家としても活躍したそうです。)、そして古楽へ。その間に、モーツァルトがお好きだと仰る杉本博司のインタビュー(私は、むしろマイルスがアドリブをやっているようなところが好きです!)や、お手軽なイラストとともに紹介されるバロック作曲家の一覧、または著名作曲家(プッチーニがあってヴェルディがない!これは残念…。)の実にオーソドックスな推薦CD(フルヴェンの第9から、藤井一興の武満ピアノ集まで。)などの記事が挟まれていました。また古楽では、ナイーブなどのレーベルも丁寧に紹介されています。ともかく、あれもこれもとでも言うようなごった煮状態です。(良い意味で。)全く焦点を絞らない構成がかえって新鮮なのかもしれません。時にかなりマニア路線へ傾きながらも、専門誌に有りがちな近寄り難い雰囲気がない。マニア心をオシャレな感覚で包み込んでくれました。
ごった煮と言うことで、最後にはクラシックの花形でもあるオペラが紹介されています。美しい写真とともに紹介されるグラインドボーン(見ているだけでくつろげる?)の他に、ワーグナーはパルジファルから聞くべしと宣う黒田恭一氏の記事、そして先日、新国立劇場にて鮮烈な「ティート」を見てくれたコンヴィチュニーのインタビューなどが掲載されていました。そして最後に忘れてはならないのが付録のCDです。ここではそれまでのごった煮状態が鳴りを潜め、「ALPHA」の専門的なセンスの良さが光っています。いつもあまりにも長く、もしくはあまりにもてんでバラバラな選曲なので聞き通すのが疲れてしまうレコ芸の付録CDよりは魅力的です。CDの欲しくなるようなサンプラー。これはとっておこうかと思います。
一体どのような方を想定して記事を纏めたのかが非常に謎めいていますが、価格を鑑みれば十分に楽しめると思います。ちなみにロシアピアニズムについては全く知りませんでした。これからじっくり読んでみたいです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
「ポップアート 1960’s→2000’s」 損保ジャパン東郷青児美術館 8/7
損保ジャパン東郷青児美術館(新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「ポップアート 1960’s→2000’s - リキテンスタイン、ウォーホルから最新の若手まで - 」
7/8-9/3
ポップアートには苦手意識がありましたが、この展覧会で少しぬぐい去ることが出来たかもしれません。表題にもあるリキテンスタイン近辺のポップアートを中心に、ミニマルアートからムニーズ、さらにはスゥ・ドー=ホーらの近作までを展示します。全32作家、約80点。とてもコンパクトによくまとまっていました。

まず出迎えてくれたのは大御所のリキテンスタインです。彼の作品はあちこちの美術館でもよく見かけますが、こうして10点以上の作品に囲まれると、改めてそのアメリカン・コミックスから取り入れられたというカジュアルな感覚が新鮮に思えてきます。19世紀後半に考案されたというドットが画面の最小単位として活躍し、さらに赤や黄色の派手な原色が刷り込まれている。一見、どれも似たような雰囲気がありますが、木版や油彩、それにスクリーンプリントなど、様々な技法で表現されていることが分かります。そんな彼の作品の中で一番惹かれたのは「ふたつのかたち」(1978)という、ただ一点だけ展示されていた油彩画でした。斜めに伸びた青と白のストライプに、線で構築された二点の抽象的な模様。画面右奥の部分が扉とすれば、全体が部屋、そして右が人で、左がその姿を映し出す鏡でしょうか。リキテンスタインはこれまであまり良いと思ったことがありませんが、今回はその魅力を味わうことが出来たような気がしました。アニメ的な構図のものよりも、抽象的な作品の方がより好みのようです。
ミニマルアートではソル・ルウィットの「四隅からの弧形」(1986)と、リチャード・セラの「クララ・クララ」(1985)が面白い作品です。形や面の幾何学的組み合わせ、またはその素材の質感だけの直球勝負。美感さえ伴えば全く古びることがありません。デザインとしての魅力もある。ミニマルは元々好きなジャンルだったので、ここは素直に楽しむことが出来ました。

パンフレットでも紹介されていたピーター・ハリーの「ジョイ・ポップ」(1988)も印象的です。キャンバスにて何層も重なり合う四角形。灰色の二つの部分は何やら窓のようにも見えてきます。都市の光景、家やビル群の連なり、さらには箱の組み合わせ。カラフルに映えるオレンジや黄色は、アクリルの他、ディドロという工業用塗料などによって表現されています。なかなか美しい質感を見せていました。

盗作、もしくは引用という、何ともタイムリー(?)なテーマでは、まさしく偉大な画家たちから構図を取り入れたムニーズが見応え十分です。それぞれ、チョコレートや雑誌(穴あけパンチの残りかす!)などによって描かれたセザンヌやマネの名作。彼が借り入れたのは名画だけではありません。ダイヤモンドのマリリン・モンロー、真っ黒なインクによるコマネチなど、思いもかけない素材にて器用に絵を生み出していきます。ちなみにセザンヌの静物画は、この美術館ご自慢の常設展でも拝見出来るところです。二つを見比べるのも面白いのではないでしょうか。その他、小さなアニメキャラクターの玩具で象られた「自画像」(2003)も楽しめます。日本でもお馴染みのあるキャラクターがいくつも使われていました。さて何でしょう。

スゥ・ドー=ホーと言えば、ナイロンによる家などのインスタレーションを思い出しますが、今回は小さな人物の顔を集合させて一枚の面に仕立てた「私たちは誰?」(1998)が展示されています。確かに目を凝らして見ると無数の肖像写真が整然と並んでいる。全て男性でしょうか。各々の生き様を背負う人の顔が画面のドットとなり、その集合体がまるで社会を築き上げるように絵画全体を構成する。視覚トリック的な面白さもまた、この手のアートの良さなのかもしれません。
300円で販売されていたジュニア版のブックレットがとても良く出来ていました。(500円の一般向けはかなりイマイチでしたが。)期待以上です。9月3日までの開催です。
「ポップアート 1960’s→2000’s - リキテンスタイン、ウォーホルから最新の若手まで - 」
7/8-9/3
ポップアートには苦手意識がありましたが、この展覧会で少しぬぐい去ることが出来たかもしれません。表題にもあるリキテンスタイン近辺のポップアートを中心に、ミニマルアートからムニーズ、さらにはスゥ・ドー=ホーらの近作までを展示します。全32作家、約80点。とてもコンパクトによくまとまっていました。

まず出迎えてくれたのは大御所のリキテンスタインです。彼の作品はあちこちの美術館でもよく見かけますが、こうして10点以上の作品に囲まれると、改めてそのアメリカン・コミックスから取り入れられたというカジュアルな感覚が新鮮に思えてきます。19世紀後半に考案されたというドットが画面の最小単位として活躍し、さらに赤や黄色の派手な原色が刷り込まれている。一見、どれも似たような雰囲気がありますが、木版や油彩、それにスクリーンプリントなど、様々な技法で表現されていることが分かります。そんな彼の作品の中で一番惹かれたのは「ふたつのかたち」(1978)という、ただ一点だけ展示されていた油彩画でした。斜めに伸びた青と白のストライプに、線で構築された二点の抽象的な模様。画面右奥の部分が扉とすれば、全体が部屋、そして右が人で、左がその姿を映し出す鏡でしょうか。リキテンスタインはこれまであまり良いと思ったことがありませんが、今回はその魅力を味わうことが出来たような気がしました。アニメ的な構図のものよりも、抽象的な作品の方がより好みのようです。
ミニマルアートではソル・ルウィットの「四隅からの弧形」(1986)と、リチャード・セラの「クララ・クララ」(1985)が面白い作品です。形や面の幾何学的組み合わせ、またはその素材の質感だけの直球勝負。美感さえ伴えば全く古びることがありません。デザインとしての魅力もある。ミニマルは元々好きなジャンルだったので、ここは素直に楽しむことが出来ました。

パンフレットでも紹介されていたピーター・ハリーの「ジョイ・ポップ」(1988)も印象的です。キャンバスにて何層も重なり合う四角形。灰色の二つの部分は何やら窓のようにも見えてきます。都市の光景、家やビル群の連なり、さらには箱の組み合わせ。カラフルに映えるオレンジや黄色は、アクリルの他、ディドロという工業用塗料などによって表現されています。なかなか美しい質感を見せていました。

盗作、もしくは引用という、何ともタイムリー(?)なテーマでは、まさしく偉大な画家たちから構図を取り入れたムニーズが見応え十分です。それぞれ、チョコレートや雑誌(穴あけパンチの残りかす!)などによって描かれたセザンヌやマネの名作。彼が借り入れたのは名画だけではありません。ダイヤモンドのマリリン・モンロー、真っ黒なインクによるコマネチなど、思いもかけない素材にて器用に絵を生み出していきます。ちなみにセザンヌの静物画は、この美術館ご自慢の常設展でも拝見出来るところです。二つを見比べるのも面白いのではないでしょうか。その他、小さなアニメキャラクターの玩具で象られた「自画像」(2003)も楽しめます。日本でもお馴染みのあるキャラクターがいくつも使われていました。さて何でしょう。

スゥ・ドー=ホーと言えば、ナイロンによる家などのインスタレーションを思い出しますが、今回は小さな人物の顔を集合させて一枚の面に仕立てた「私たちは誰?」(1998)が展示されています。確かに目を凝らして見ると無数の肖像写真が整然と並んでいる。全て男性でしょうか。各々の生き様を背負う人の顔が画面のドットとなり、その集合体がまるで社会を築き上げるように絵画全体を構成する。視覚トリック的な面白さもまた、この手のアートの良さなのかもしれません。
300円で販売されていたジュニア版のブックレットがとても良く出来ていました。(500円の一般向けはかなりイマイチでしたが。)期待以上です。9月3日までの開催です。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
「旅と画家」 山種美術館 8/6
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「旅と画家」
7/1-8/13
山種美術館で開催中の「旅と画家」展へ行ってきました。奥村土牛、速水御舟、荻須高徳、佐伯祐三らの風景画から、特に旅情溢れた作品の集う展覧会です。行く先々で筆をとった画家たちの、まさしく旅を追体験するような内容でした。

この美術館の展覧会の感想では、いつも奥村土牛の魅力について触れているかと思いますが、今回もまた素晴らしい作品が何点か展示されています。ともかく、土牛はたっぷりと配された顔料の瑞々しい質感と、それによる面の安定的な構成感が非常に優れているようです。中でも私がこれまでに見た作品で最も大きい「那智の滝」(1958)は圧巻としか言い様がありません。陽の光を鮮やかに受けて黄金色に輝く岩盤の表面に、轟々と、またゆったりと落ちて行く白い滝。特に滝の広がる画面の下側では、まるで顔料がリアルに上から下へと垂れているかように表現されています。岩にぶつかって砕ける水の音が聞こえてくる。滝の姿を神々しく捉えた、実に堂々とした作品でした。

また、この黄金色は「大和路」(1970)でも大胆に使われています。こちらは土壁や茅葺き屋根を描いているせいか、全体的にやや黄土色がかっていますが、特に、白と仄かに交じり合う土塀の表現が見事です。そしてそこへちょこんとのった灰色の瓦。朧げに浮き出す石垣の質感や、黄土色を引き立たせるかのような白い空などもまた魅力的でした。そして、白と言えば「雪の山」(1946)も忘れられません。ざっくりと刻まれた山肌へ丁寧に塗り込まれた白い雪。手前で凛と立つ杉の木が画面を引き締めています。その濃い芝色にも惹かれました。

速水御舟の見慣れないスケッチも展示されています。西洋にて描かれたという数点のペン画や水彩画。脆く崩れ去りそうな線による建物の群れ。その上には水彩が薄く配されています。これは一見しただけで御舟と分かりません。またその他、逆に一目見てそれだと分かるほど個性的な佐伯祐三の風景画や、横長の画面にて豪快に渦巻く渦潮を捉えた「鳴門海峡」(1992)なども印象的でした。ちなみに鳴門の景色は、土牛の描いた「鳴門」もこの美術館で見た記憶があります。二つ並べて展示しても興味深いのではないかと思いました。
国内外の美しき旅情を、九段下でいっぺんに味わうことが出来ます。今月13日までの開催です。
「旅と画家」
7/1-8/13
山種美術館で開催中の「旅と画家」展へ行ってきました。奥村土牛、速水御舟、荻須高徳、佐伯祐三らの風景画から、特に旅情溢れた作品の集う展覧会です。行く先々で筆をとった画家たちの、まさしく旅を追体験するような内容でした。

この美術館の展覧会の感想では、いつも奥村土牛の魅力について触れているかと思いますが、今回もまた素晴らしい作品が何点か展示されています。ともかく、土牛はたっぷりと配された顔料の瑞々しい質感と、それによる面の安定的な構成感が非常に優れているようです。中でも私がこれまでに見た作品で最も大きい「那智の滝」(1958)は圧巻としか言い様がありません。陽の光を鮮やかに受けて黄金色に輝く岩盤の表面に、轟々と、またゆったりと落ちて行く白い滝。特に滝の広がる画面の下側では、まるで顔料がリアルに上から下へと垂れているかように表現されています。岩にぶつかって砕ける水の音が聞こえてくる。滝の姿を神々しく捉えた、実に堂々とした作品でした。


また、この黄金色は「大和路」(1970)でも大胆に使われています。こちらは土壁や茅葺き屋根を描いているせいか、全体的にやや黄土色がかっていますが、特に、白と仄かに交じり合う土塀の表現が見事です。そしてそこへちょこんとのった灰色の瓦。朧げに浮き出す石垣の質感や、黄土色を引き立たせるかのような白い空などもまた魅力的でした。そして、白と言えば「雪の山」(1946)も忘れられません。ざっくりと刻まれた山肌へ丁寧に塗り込まれた白い雪。手前で凛と立つ杉の木が画面を引き締めています。その濃い芝色にも惹かれました。

速水御舟の見慣れないスケッチも展示されています。西洋にて描かれたという数点のペン画や水彩画。脆く崩れ去りそうな線による建物の群れ。その上には水彩が薄く配されています。これは一見しただけで御舟と分かりません。またその他、逆に一目見てそれだと分かるほど個性的な佐伯祐三の風景画や、横長の画面にて豪快に渦巻く渦潮を捉えた「鳴門海峡」(1992)なども印象的でした。ちなみに鳴門の景色は、土牛の描いた「鳴門」もこの美術館で見た記憶があります。二つ並べて展示しても興味深いのではないかと思いました。
国内外の美しき旅情を、九段下でいっぺんに味わうことが出来ます。今月13日までの開催です。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
「new acquisition」 オオタファインアーツ 8/5
オオタファインアーツ(港区六本木6-8-14 1階)
「new acquisition」
7/11-8/26
オオタファインアーツの新しいコレクション(acquisition:コレクションなどの新たな一品)にて構成された展覧会です。お馴染みのさわひらきや草間彌生、それに照屋勇賢などの最新作が並んでいました。
さわひらきの「Hako」(2006)は、擬人化された木が、細かい石に覆われた海岸線を歩く映像作品です。突如、二本足を生やしててくてくと歩く小さな木。とりわけ何かを運んでいるわけでも、また作業をしているわけでもありませんが、あたかも明確な目的意識を持っているかのようにしっかりとした足取りで歩んでいます。そして海岸線には、無造作に置かれ、野ざらしとなったリビングセット。それらがまるで廃墟のように点々と佇んでいます。僅か4分ほどですが、相変わらずの静けさと儚さに満ちた作品でした。
グレーと白に覆われた大きなアクリル画は、草間彌生の新作「無限の網」(2006)です。灰色のキャンバスの上へ丁寧にのせられた白のアクリル絵具。それがまるで魚の鱗のように曲線を描いています。所々、絵具が隆起している。もちろん全体はドットの集合体です。奥行き感もなく、ただひたすらフラットにひしめき合うドットたち。時に草間の作品には生々しさを感じることがあるのですが、これに関しては、その配列が機械的で画面も乾いていました。うごめくドットも止まりかけているのでしょうか。非常に抽象的です。
さわひらきの新作を拝見出来たのが一番の収穫でした。今月26日までの開催です。
「new acquisition」
7/11-8/26
オオタファインアーツの新しいコレクション(acquisition:コレクションなどの新たな一品)にて構成された展覧会です。お馴染みのさわひらきや草間彌生、それに照屋勇賢などの最新作が並んでいました。
さわひらきの「Hako」(2006)は、擬人化された木が、細かい石に覆われた海岸線を歩く映像作品です。突如、二本足を生やしててくてくと歩く小さな木。とりわけ何かを運んでいるわけでも、また作業をしているわけでもありませんが、あたかも明確な目的意識を持っているかのようにしっかりとした足取りで歩んでいます。そして海岸線には、無造作に置かれ、野ざらしとなったリビングセット。それらがまるで廃墟のように点々と佇んでいます。僅か4分ほどですが、相変わらずの静けさと儚さに満ちた作品でした。
グレーと白に覆われた大きなアクリル画は、草間彌生の新作「無限の網」(2006)です。灰色のキャンバスの上へ丁寧にのせられた白のアクリル絵具。それがまるで魚の鱗のように曲線を描いています。所々、絵具が隆起している。もちろん全体はドットの集合体です。奥行き感もなく、ただひたすらフラットにひしめき合うドットたち。時に草間の作品には生々しさを感じることがあるのですが、これに関しては、その配列が機械的で画面も乾いていました。うごめくドットも止まりかけているのでしょうか。非常に抽象的です。
さわひらきの新作を拝見出来たのが一番の収穫でした。今月26日までの開催です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
「'Swimming Pool' 藤芳あい」 ヴァイスフェルト 8/5
ヴァイスフェルト(港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3階)
「'Swimming Pool' 藤芳あい」
7/21-8/19
これぞ真夏にぴったりの展示かもしれません。展示室の中央に、まるでベッドのように横たわった樹脂製の真っ青なプール。そこへ飛び込むことこそかないませんが、思わずその涼し気な水面へ手をかざし、頬を触れたくなるような作品でした。
*作品の画像はヴァイスフェルトへ。
プールのサイズはやや小さめです。まるでゼリーをかじったようにその一部が欠けています。厚さは30センチほどでしょうか。うねうねと波打つ水面が、10本以上の脚にのせられて宙に浮かんでいます。そして鮮やかに透き通った青み。強いスポットライトに当てられてキラキラと輝いていました。プールと言うよりも南国の海のイメージです。底抜けの晴天の下でうねる透明な海を想像します。まさしくオーシャンブルーです。
思っていたよりも小さな作品でした。もう少し大きければ、なおその存在感が増したのではないかと感じます。このプールが展示室の床いっぱいに広がり、そして波打っていれば、またインスタレーションとしての面白さも出ていたのではないでしょうか。今月19日までの開催です。
「'Swimming Pool' 藤芳あい」
7/21-8/19
これぞ真夏にぴったりの展示かもしれません。展示室の中央に、まるでベッドのように横たわった樹脂製の真っ青なプール。そこへ飛び込むことこそかないませんが、思わずその涼し気な水面へ手をかざし、頬を触れたくなるような作品でした。
*作品の画像はヴァイスフェルトへ。
プールのサイズはやや小さめです。まるでゼリーをかじったようにその一部が欠けています。厚さは30センチほどでしょうか。うねうねと波打つ水面が、10本以上の脚にのせられて宙に浮かんでいます。そして鮮やかに透き通った青み。強いスポットライトに当てられてキラキラと輝いていました。プールと言うよりも南国の海のイメージです。底抜けの晴天の下でうねる透明な海を想像します。まさしくオーシャンブルーです。
思っていたよりも小さな作品でした。もう少し大きければ、なおその存在感が増したのではないかと感じます。このプールが展示室の床いっぱいに広がり、そして波打っていれば、またインスタレーションとしての面白さも出ていたのではないでしょうか。今月19日までの開催です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
8月の予定と7月の記録
ジメジメと長く続いた梅雨も明け、ようやく関東にも晴天と猛暑がやって来ました。夏本番です。太陽もこれまでの遅れを取り戻すかのようにギラギラと輝いています。それでは毎月恒例の「予定と振り返り」です。
8月の予定
展覧会
「旅と画家」 山種美術館(8/13まで)
「カミーユ・クロデール展」 府中市美術館(8/20まで)
「第12回秘蔵の名品アートコレクション展 『日本とヨーロッパ』」 ホテルオークラ東京(8/24まで)
「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」 東京国立博物館(8/27まで)
「ヨロヨロン 束芋」 原美術館(8/27まで)
「アフリカ・リミックス:多様化するアフリカの現代美術」 森美術館(8/31まで)
「川瀬巴水展」 ニューオータニ美術館(9/3まで)
「ポップアート1960’s→2000’s」 損保ジャパン東郷青児美術館(9/3まで)
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第5期」 三の丸尚蔵館(9/10まで)
「Gold 金色の織りなす異空間」 大倉集古館(10/1まで)
「近代洋画の巨匠たち」 泉屋博古館分館(10/9まで)
7月の記録(リンクは私の感想です。)
展覧会
2日 「近代工芸の百年/ルーシー・リーとハンス・コパー」 東京国立近代美術館工芸館
2日 「坂本繁二郎展」 ブリヂストン美術館
2日 「エコール・ド・パリ展」 松岡美術館
2日 「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」 目黒区美術館
8日 「ルオーとローランサン展」 松下電工汐留ミュージアム
8日 「Emerging Artist Support Program 2006 vol.2」 トーキョーワンダーサイト
16日 「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第4期」 三の丸尚蔵館
17日 「海に生きる・海を描く展」 千葉市美術館
17日 「パウル・クレー 創造の物語」 川村記念美術館
22日 「国宝『随身庭騎絵巻』と男の美術」 大倉集古館
22日 「吉原治良展/持続・切断(小企画展)」 東京国立近代美術館
29日 「C-DEPOT 2006 ナチュラル」 横浜赤レンガ倉庫1号館
29日 「Bamboo Bank(松本秋則展)/地球展」 BankART 1929
29日 「日本×画展」 横浜美術館
ギャラリー
8日 「林靖子展」 ギャラリー悠玄
8日 「ロビン・ロード個展」 資生堂ギャラリー
8日 「照屋勇賢 - 水に浮かぶ島展」 すみだリバーサイドホール
15日 「京橋界隈2006(服部知佳展/菅木志雄展)
15日 「4人展」 シュウゴアーツ
15日 「畠山直哉展」 タカ・イシイギャラリー
15日 「畑絢子展 -ツキノハナの陶景-」 INAXガレリアセラミカ
映画
16日 「異国の肌」(ドイツ映画祭2006) 有楽町朝日ホール
16日 「コーカサスの虜」(ロシア・ソビエト映画祭2006) 東京国立近代美術館フィルムセンター
今月は展覧会のみ11件の予定を立ててみました。(コンサートは秋までお休みします。)この中では、ホテルオークラと大倉集古館、そして泉屋博古館分館の展覧会が共催の企画です。共通入場券が発売されています。ただ、その共通券には期間の制限があるようです。期限の切れる前にまとめて拝見したいと思います。(アートコレクション展の共通チケットでは、今月24日までしか泉屋博古館に入場出来ません。)
束芋さんはそんなに大ファンと言うわけではないのですが、暗くなってからしか拝見出来ない作品があるそうなので、水曜日の夜間開館を狙って行きます。また、全く予備知識のない森美術館の「アフリカ・リミックス」や、逆にとても苦手意識のあるポップ・アートを集めた損保ジャパンの展覧会も楽しみです。これらの展覧会を見ることで、その印象がガラリと変わるやも知れません。
ニューオータニ美術館の展覧会の川瀬巴水とは、私が先日の千葉市美術館で初めて見て惹かれた、大正、昭和期の版画家です。今回、ちょうど良いタイミングで回顧展が開催されます。ニューオータニ美術館自体も初めてなので、これはとても期待したいです。
東博の若冲展は既に二回ほど足を伸ばしていますが、まだ感想が何も書けていません。もう一度出向くつもりなので、その時にでもまとめて書ければと思います。また、尚蔵館での「動植綵絵」が早くも最後の第5期を迎えてしまいます。こちらも行きそびれないように見るつもりです。
先月は大好きなクレーをたくさん見ることが出来た川村のクレー展と、先ほども触れた川瀬巴水に初めて触れた千葉市美術館の海の展覧会がとても印象に残りました。また尚蔵館の第4期も、若冲の鳳凰と酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」の対決がたまりません。これまででも一番の内容だったかと思います。
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
*ブログリンクを一部更新しました。
8月の予定
展覧会
「旅と画家」 山種美術館(8/13まで)
「カミーユ・クロデール展」 府中市美術館(8/20まで)
「第12回秘蔵の名品アートコレクション展 『日本とヨーロッパ』」 ホテルオークラ東京(8/24まで)
「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」 東京国立博物館(8/27まで)
「ヨロヨロン 束芋」 原美術館(8/27まで)
「アフリカ・リミックス:多様化するアフリカの現代美術」 森美術館(8/31まで)
「川瀬巴水展」 ニューオータニ美術館(9/3まで)
「ポップアート1960’s→2000’s」 損保ジャパン東郷青児美術館(9/3まで)
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第5期」 三の丸尚蔵館(9/10まで)
「Gold 金色の織りなす異空間」 大倉集古館(10/1まで)
「近代洋画の巨匠たち」 泉屋博古館分館(10/9まで)
7月の記録(リンクは私の感想です。)
展覧会
2日 「近代工芸の百年/ルーシー・リーとハンス・コパー」 東京国立近代美術館工芸館
2日 「坂本繁二郎展」 ブリヂストン美術館
2日 「エコール・ド・パリ展」 松岡美術館
2日 「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」 目黒区美術館
8日 「ルオーとローランサン展」 松下電工汐留ミュージアム
8日 「Emerging Artist Support Program 2006 vol.2」 トーキョーワンダーサイト
16日 「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第4期」 三の丸尚蔵館
17日 「海に生きる・海を描く展」 千葉市美術館
17日 「パウル・クレー 創造の物語」 川村記念美術館
22日 「国宝『随身庭騎絵巻』と男の美術」 大倉集古館
22日 「吉原治良展/持続・切断(小企画展)」 東京国立近代美術館
29日 「C-DEPOT 2006 ナチュラル」 横浜赤レンガ倉庫1号館
29日 「Bamboo Bank(松本秋則展)/地球展」 BankART 1929
29日 「日本×画展」 横浜美術館
ギャラリー
8日 「林靖子展」 ギャラリー悠玄
8日 「ロビン・ロード個展」 資生堂ギャラリー
8日 「照屋勇賢 - 水に浮かぶ島展」 すみだリバーサイドホール
15日 「京橋界隈2006(服部知佳展/菅木志雄展)
15日 「4人展」 シュウゴアーツ
15日 「畠山直哉展」 タカ・イシイギャラリー
15日 「畑絢子展 -ツキノハナの陶景-」 INAXガレリアセラミカ
映画
16日 「異国の肌」(ドイツ映画祭2006) 有楽町朝日ホール
16日 「コーカサスの虜」(ロシア・ソビエト映画祭2006) 東京国立近代美術館フィルムセンター
今月は展覧会のみ11件の予定を立ててみました。(コンサートは秋までお休みします。)この中では、ホテルオークラと大倉集古館、そして泉屋博古館分館の展覧会が共催の企画です。共通入場券が発売されています。ただ、その共通券には期間の制限があるようです。期限の切れる前にまとめて拝見したいと思います。(アートコレクション展の共通チケットでは、今月24日までしか泉屋博古館に入場出来ません。)
束芋さんはそんなに大ファンと言うわけではないのですが、暗くなってからしか拝見出来ない作品があるそうなので、水曜日の夜間開館を狙って行きます。また、全く予備知識のない森美術館の「アフリカ・リミックス」や、逆にとても苦手意識のあるポップ・アートを集めた損保ジャパンの展覧会も楽しみです。これらの展覧会を見ることで、その印象がガラリと変わるやも知れません。
ニューオータニ美術館の展覧会の川瀬巴水とは、私が先日の千葉市美術館で初めて見て惹かれた、大正、昭和期の版画家です。今回、ちょうど良いタイミングで回顧展が開催されます。ニューオータニ美術館自体も初めてなので、これはとても期待したいです。
東博の若冲展は既に二回ほど足を伸ばしていますが、まだ感想が何も書けていません。もう一度出向くつもりなので、その時にでもまとめて書ければと思います。また、尚蔵館での「動植綵絵」が早くも最後の第5期を迎えてしまいます。こちらも行きそびれないように見るつもりです。
先月は大好きなクレーをたくさん見ることが出来た川村のクレー展と、先ほども触れた川瀬巴水に初めて触れた千葉市美術館の海の展覧会がとても印象に残りました。また尚蔵館の第4期も、若冲の鳳凰と酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」の対決がたまりません。これまででも一番の内容だったかと思います。
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
*ブログリンクを一部更新しました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
「パウル・クレー 創造の物語」 川村記念美術館 7/17
川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
「パウル・クレー 創造の物語」
6/14-8/20

しばらく前のことですが、川村記念美術館で開催中の「パウル・クレー 創造の物語」展を見てきました。ともかく好きな画家の作品ならいくら見ていても飽きません。ただ気の向くままに絵をじっくり楽しむこと。久々に何も考えないで絵を見る喜びを味わうことが出来ました。

展示作品は約150点です。その内の60点あまりが国内の美術館から、残りはドイツの3つの美術館(ノルトライン=ヴェストファーレン美術館、シュプレンゲル美術館、フォン・デア・ハイト美術館)から出品されています。展示の構成はやや思弁的です。時系列に作品を並べるのではなく、「光の絵」や「イメージの遊び場」などという観点からまとめられています。ただ私はもうクレーを頭ではなく心で見ることにしました。無心でその絵の前に立つこと。質の良いものが多いからなのか、どの作品からもたまらない魅力が溢れ出ていました。

クレーには、どれを見ても一目で彼だと分かるような強い個性がありますが、その一つ一つの作品は、主題や構成、または画肌や線の動きをとっても実に多様な表現を見せています。まるでノルデのような透明感溢れる絵具の質感に心を惹かれつつ、時に原初的なパワーを見せる、ちょうどピカソやミロの抽象画のような画面に見入っていく。そして音楽のリズム。クレーほど作品に音が鳴っている画家もいません。子どもの落書きのような奔放な表現と、その反面での計算され尽くした画面構成。無限の可能性すら感じさせるクレーの作品からは、たくさんの音楽や詩が紡ぎ出されていきます。ともかく一枚の絵から驚くほど多くのイメージがわいてくる。それを自由に楽しめば私には満足なのです。

横へ並んだ線にのるいくつもの丸い粒。中央にはタイトルの「駱駝」(1920)の通り、一頭のラクダが左から右へと歩いています。線は水平線で、丸は樹木。そうして見ると、ここにはラクダが草原を歩く光景が表現されていると言えるのでしょう。ただ、私にはまずこの丸が楽譜の上で踊る音符に見えました。それぞれが右から左、または反対の方向へ、楽譜のベルトコンベアーにのって音を奏でながら流れていく。ポンポンとリズムを鳴らしながらラクダが進む。それともこの丸はちょうど線から釣下がる楽器なのかもしれません。それをラクダは体を揺さぶりながら音を立てて歩いている。そうするとラクダはこの楽器の演奏者でしょうか。そして、黄色や赤に光る樹木がラクダの足元をランプのように照らし出している。音と光に導かれ進みゆくラクダ。一体どこへ行くのでしょう。
見て感じて、美しいと思うだけでもいい。展示の構成はともかくも、見る側を縛らないクレーの世界を十二分に楽しむことの出来る展覧会でした。今月20日までの開催です。
「パウル・クレー 創造の物語」
6/14-8/20

しばらく前のことですが、川村記念美術館で開催中の「パウル・クレー 創造の物語」展を見てきました。ともかく好きな画家の作品ならいくら見ていても飽きません。ただ気の向くままに絵をじっくり楽しむこと。久々に何も考えないで絵を見る喜びを味わうことが出来ました。

展示作品は約150点です。その内の60点あまりが国内の美術館から、残りはドイツの3つの美術館(ノルトライン=ヴェストファーレン美術館、シュプレンゲル美術館、フォン・デア・ハイト美術館)から出品されています。展示の構成はやや思弁的です。時系列に作品を並べるのではなく、「光の絵」や「イメージの遊び場」などという観点からまとめられています。ただ私はもうクレーを頭ではなく心で見ることにしました。無心でその絵の前に立つこと。質の良いものが多いからなのか、どの作品からもたまらない魅力が溢れ出ていました。

クレーには、どれを見ても一目で彼だと分かるような強い個性がありますが、その一つ一つの作品は、主題や構成、または画肌や線の動きをとっても実に多様な表現を見せています。まるでノルデのような透明感溢れる絵具の質感に心を惹かれつつ、時に原初的なパワーを見せる、ちょうどピカソやミロの抽象画のような画面に見入っていく。そして音楽のリズム。クレーほど作品に音が鳴っている画家もいません。子どもの落書きのような奔放な表現と、その反面での計算され尽くした画面構成。無限の可能性すら感じさせるクレーの作品からは、たくさんの音楽や詩が紡ぎ出されていきます。ともかく一枚の絵から驚くほど多くのイメージがわいてくる。それを自由に楽しめば私には満足なのです。

横へ並んだ線にのるいくつもの丸い粒。中央にはタイトルの「駱駝」(1920)の通り、一頭のラクダが左から右へと歩いています。線は水平線で、丸は樹木。そうして見ると、ここにはラクダが草原を歩く光景が表現されていると言えるのでしょう。ただ、私にはまずこの丸が楽譜の上で踊る音符に見えました。それぞれが右から左、または反対の方向へ、楽譜のベルトコンベアーにのって音を奏でながら流れていく。ポンポンとリズムを鳴らしながらラクダが進む。それともこの丸はちょうど線から釣下がる楽器なのかもしれません。それをラクダは体を揺さぶりながら音を立てて歩いている。そうするとラクダはこの楽器の演奏者でしょうか。そして、黄色や赤に光る樹木がラクダの足元をランプのように照らし出している。音と光に導かれ進みゆくラクダ。一体どこへ行くのでしょう。
見て感じて、美しいと思うだけでもいい。展示の構成はともかくも、見る側を縛らないクレーの世界を十二分に楽しむことの出来る展覧会でした。今月20日までの開催です。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
「日本×画展」 横浜美術館 7/29
横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)
「日本×画展」
7/15-9/20

横浜美術館で開催中の「日本×画展」(にほん×ガテン!)へ行ってきました。いわゆる日本画だけではなく、それにちなむインスタレーションまでが展示されています。今年のMOTアニュアルよりもさらに手広く日本画の世界を紹介する展覧会でした。

エスカレーターをあがった先にてまず待ち構えていたのは、藤井雷の「絵手紙」シリーズです。日々の思いを文章へ綴り、絵を描いた封筒へ入れて自分宛に送るという奇妙な試み。それを5年間も続けた成果なのでしょうか。大量の「絵手紙」がズラリと直線を描いて展示室を飾り立てています。それにしても何通の「絵手紙」がここに並んでいるのでしょうか。どれも、奄美や台北などの南国の景色がカラフルに描かれていました。それぞれの絵のメッセージを汲み取って拝見したい作品ばかりです。

MOTアニュアルの日本画展でも拝見した松井冬子が二番目に登場します。アニュアル展ではその展示の雰囲気に圧倒されてしまった感がありましたが、今回は至極真っ当なガラスケースでの展示でした。照明も過度に落とされることなく、作品を良く見通すことが出来ます。(アニュアル展は少し暗過ぎたかもしれません。)「世界中の子と友達になれる」(2002)は、藤が恐ろしいほど垂れ下がる中を、純白の下着に身を包んだ一人の少女が何かを覗き込むように佇んでいる作品です。顔料のせいか、藤がほとんど潰れるかのように重々しく描かれていますが、それでも相変わらずのおどろおどろしい雰囲気は健在です。その他、「引き起こされた不足 あるいは過剰」(松井の作品のタイトルはどれも非常に謎めいています。)という二羽の鶏が墨で描かれた作品も見応えがありました。下村観山の作品(横浜美術館所蔵の日本画もいくつか展示されています。)と一緒に展示されていたせいか、もう一歩精緻に描いて欲しい部分もありましたが、ファンの方にはたまらない展示かと思います。

しりあがり寿の「オレの王国」は強烈です。まさに展示室を彼のやりたい放題の王国へと変えています。和紙に囲まれた滝壺。一面に墨で書きなぐったような人や動物、それに花々などが描かれていました。また足元には魚も泳いでいます。私には少しうるさく思えてしまうのであまり好きにはなれないのですが、ともかくそのインパクトに関してはピカイチです。しばらく展示室にいると、轟々と落ちる滝の音が聴こえてくるかのようです。奇妙に臨場感のある展示でした。

小瀬村真美のビデオ・インスタレーションは、美術館所蔵の日本画と最も器用に組み合わせた作品です。月岡芳年を元に構成された映像作品。畳の上に腰掛けて見る「呼び水」の涼し気な様は何とも格別です。気持ち良さそうに鯉が泳いでいました。日本画の世界が映像化され現代に甦った。琳派を美を映像で楽しむことの出来る内容です。
所蔵の日本画とのコラボレーションという点において最も分かり易かったのは、中村ケンゴの「スピーチバルーンズ・イン・ザ・ヒノマル」と横山大観の「霊峰不二」ではないでしょうか。セルフの吹き出しで象られた赤い丸が、ちょうど大観の富士の上に燦然と輝きます。このような組み合わせはおそらくこれが最初で最後でしょう。ちょっとしたセンスを感じる作品かと思いました。
全体を通して見ると、私自身はアニュアル展の方に軍配をあげたいのですが、展示の構成や切り口などに企画者の強い意欲が垣間みられる展覧会でした。またすっかり横浜美術館の名物(?)となった、子ども向けのワークシートも充実しています。(土曜日は中学、高校生が無料です!)9月20日までの開催です。
「日本×画展」
7/15-9/20

横浜美術館で開催中の「日本×画展」(にほん×ガテン!)へ行ってきました。いわゆる日本画だけではなく、それにちなむインスタレーションまでが展示されています。今年のMOTアニュアルよりもさらに手広く日本画の世界を紹介する展覧会でした。

エスカレーターをあがった先にてまず待ち構えていたのは、藤井雷の「絵手紙」シリーズです。日々の思いを文章へ綴り、絵を描いた封筒へ入れて自分宛に送るという奇妙な試み。それを5年間も続けた成果なのでしょうか。大量の「絵手紙」がズラリと直線を描いて展示室を飾り立てています。それにしても何通の「絵手紙」がここに並んでいるのでしょうか。どれも、奄美や台北などの南国の景色がカラフルに描かれていました。それぞれの絵のメッセージを汲み取って拝見したい作品ばかりです。

MOTアニュアルの日本画展でも拝見した松井冬子が二番目に登場します。アニュアル展ではその展示の雰囲気に圧倒されてしまった感がありましたが、今回は至極真っ当なガラスケースでの展示でした。照明も過度に落とされることなく、作品を良く見通すことが出来ます。(アニュアル展は少し暗過ぎたかもしれません。)「世界中の子と友達になれる」(2002)は、藤が恐ろしいほど垂れ下がる中を、純白の下着に身を包んだ一人の少女が何かを覗き込むように佇んでいる作品です。顔料のせいか、藤がほとんど潰れるかのように重々しく描かれていますが、それでも相変わらずのおどろおどろしい雰囲気は健在です。その他、「引き起こされた不足 あるいは過剰」(松井の作品のタイトルはどれも非常に謎めいています。)という二羽の鶏が墨で描かれた作品も見応えがありました。下村観山の作品(横浜美術館所蔵の日本画もいくつか展示されています。)と一緒に展示されていたせいか、もう一歩精緻に描いて欲しい部分もありましたが、ファンの方にはたまらない展示かと思います。

しりあがり寿の「オレの王国」は強烈です。まさに展示室を彼のやりたい放題の王国へと変えています。和紙に囲まれた滝壺。一面に墨で書きなぐったような人や動物、それに花々などが描かれていました。また足元には魚も泳いでいます。私には少しうるさく思えてしまうのであまり好きにはなれないのですが、ともかくそのインパクトに関してはピカイチです。しばらく展示室にいると、轟々と落ちる滝の音が聴こえてくるかのようです。奇妙に臨場感のある展示でした。

小瀬村真美のビデオ・インスタレーションは、美術館所蔵の日本画と最も器用に組み合わせた作品です。月岡芳年を元に構成された映像作品。畳の上に腰掛けて見る「呼び水」の涼し気な様は何とも格別です。気持ち良さそうに鯉が泳いでいました。日本画の世界が映像化され現代に甦った。琳派を美を映像で楽しむことの出来る内容です。
所蔵の日本画とのコラボレーションという点において最も分かり易かったのは、中村ケンゴの「スピーチバルーンズ・イン・ザ・ヒノマル」と横山大観の「霊峰不二」ではないでしょうか。セルフの吹き出しで象られた赤い丸が、ちょうど大観の富士の上に燦然と輝きます。このような組み合わせはおそらくこれが最初で最後でしょう。ちょっとしたセンスを感じる作品かと思いました。
全体を通して見ると、私自身はアニュアル展の方に軍配をあげたいのですが、展示の構成や切り口などに企画者の強い意欲が垣間みられる展覧会でした。またすっかり横浜美術館の名物(?)となった、子ども向けのワークシートも充実しています。(土曜日は中学、高校生が無料です!)9月20日までの開催です。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
ブルータスの若冲特集!!
私がブルータスを買ったのは、杉本博司が特集された昨年の9月以来です。表紙を鮮やかに飾ったのは、プライス・コレクション展でも人気の「鳥獣花木図屏風」に登場するあの大きな白象でした。これはかなり目立ちます。
BRUTUS (ブルータス) 2006年 8/15号
プライス展に合わせた企画なのでしょう。まずはプライス氏のインタビュー記事がメインに掲げられています。お馴染みの逸話でもあるスポーツカー云々の出来事から、「鳥獣花木図屏風」の図柄をとった、かの有名なモザイク風呂の写真(プライス氏が背中を流しているシーンも!?)まで、サッと読んでみただけでもなかなかの内容かと思いました。またその他にも、若冲への思いを語る横尾忠則や村上隆などの記事や、若冲を世に送り出した人物でもある辻惟雄のインタビュー、さらには若冲ゆかりの寺院である相国寺派の有馬管長の対談(バックには所蔵の「梅に鶏図」が!)などが掲載されています。580円という雑誌の値段を考えれば上々の充実ぶり。しばらく楽しめそうです。
また充実と言えば、見開きページを使ったカラー図版も必見です。縦30センチ弱、横70センチ強の「鳥獣花木図屏風」とその拡大版、さらには三の丸尚蔵館の図録も真っ青(?)な「動植綵絵」全30幅+「釈迦三尊像」、そしてA4サイズ弱の「白象群獣図」は、切り取って部屋に飾るのに最適(?!)ではないでしょうか。嬉しいおまけでした。
まだペラペラとめくって斜め読みしただけです。これからじっくり拝見しようかと思います。そう言えば、杉本博司の時も比較的早く売り切れました。完全にマガジンハウスの提灯を持ってしまいましたが、ご興味のある方はお早めにどうぞ!

プライス展に合わせた企画なのでしょう。まずはプライス氏のインタビュー記事がメインに掲げられています。お馴染みの逸話でもあるスポーツカー云々の出来事から、「鳥獣花木図屏風」の図柄をとった、かの有名なモザイク風呂の写真(プライス氏が背中を流しているシーンも!?)まで、サッと読んでみただけでもなかなかの内容かと思いました。またその他にも、若冲への思いを語る横尾忠則や村上隆などの記事や、若冲を世に送り出した人物でもある辻惟雄のインタビュー、さらには若冲ゆかりの寺院である相国寺派の有馬管長の対談(バックには所蔵の「梅に鶏図」が!)などが掲載されています。580円という雑誌の値段を考えれば上々の充実ぶり。しばらく楽しめそうです。
また充実と言えば、見開きページを使ったカラー図版も必見です。縦30センチ弱、横70センチ強の「鳥獣花木図屏風」とその拡大版、さらには三の丸尚蔵館の図録も真っ青(?)な「動植綵絵」全30幅+「釈迦三尊像」、そしてA4サイズ弱の「白象群獣図」は、切り取って部屋に飾るのに最適(?!)ではないでしょうか。嬉しいおまけでした。
まだペラペラとめくって斜め読みしただけです。これからじっくり拝見しようかと思います。そう言えば、杉本博司の時も比較的早く売り切れました。完全にマガジンハウスの提灯を持ってしまいましたが、ご興味のある方はお早めにどうぞ!
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
「Bamboo Bank 松本秋則展」+「地球」展 BankART 1929 7/29
BankART 1929(横浜市中区本町6-50-1)
「Bamboo Bank(緑陰銀行) 松本秋則展」
「地球」展
7/7-8/31(松本展) 7/22-30(「地球」展 会期終了)

「BankART 1929」の展覧会を拝見するのは、昨年の横浜トリエンナーレ以来のことかもしれません。先鋭的なメディア・アートで構成された「地球」展と、竹の音を涼し気に奏でるインスタレーションを展開した松本秋則の個展が開催されていました。

「地球」展では、何と言っても地下の展示室にて上映されていた「PopulouSCAPE」が圧倒的です。世界に約8400ほど存在するという5万人以上の都市を高層ビルの形に視覚化し、それを俯瞰するかのように空から漫遊する。旅はニュージーランドから始まりました。一気に赤道を超えて日本へと高速移動。東アジアでは、東京・ソウル・上海などと連なる超巨大都市が、まさにバベルの塔のように高層ビルを築いてそびえ立ちます。またその周囲にはびっしりと虫のように群がる無数の大都市。恐ろしいほどの密集度です。そしてそこからは東南アジアを経由し、これまたビッシリとビルの立ち並ぶインドを超えてヨーロッパへと向かいます。煌めく欧州を過ぎれば今度は南下です。ぽっかりと暗がりになっているサハラ砂漠を過ぎ南アフリカ、さらには大西洋を経由して南米へと進みます。ここまで来ればあとは北米大陸を残すのみ。光瞬くニューヨークがゴールでした。この間約10分。世界人口のスケール感を目と耳で味わうことが出来ます。夜景に映える高層ビルの輝きは、まさに現代文明の繁栄を示す一方、まるで今にも崩れ去るガラス細工のような脆さを体現していました。ちなみに、この作品は愛知万博でも上映されたそうで、DVDとしても販売されています。部屋を真っ暗にして、一人っきりでこの眺めを味わってみるのも良いかもしれません。
*「PopulouSCAPE」公式サイト

一階の展示ホールでは、人造の竹林にて涼し気な空間を作り出した松本秋則のインスタレーションが見応え満点でした。竹の一つずつが楽器となって、それらが時にミニマル音楽のように、またある時には武満(?)のように、ホール全体へ心地良い音響空間を生み出していく。小さな太鼓たちが群がる竹林。竹の先には、趣向を凝らしたベルやタンバリンのような可愛らしい楽器が、いくつもぶら下がっています。全てコンピューターにて制御されているのでしょうか。それぞれがゆったりと震え、また靡いていく様子。少し調子が悪いのか、いくつか動かない楽器があったのは残念ですが、椅子に腰掛けてずっと竹の音へ耳を傾けていたい作品でした。これぞ真夏にピッタリのインスタレーションでしょう。
松本秋則展は無料にて8月31日まで開催されています。みなとみらいから馬車道界隈の散策で疲れた際にでも、是非立ち寄ってみては如何でしょうか。癒しの空間があなたを待っています。(!?)
「Bamboo Bank(緑陰銀行) 松本秋則展」
「地球」展
7/7-8/31(松本展) 7/22-30(「地球」展 会期終了)


「BankART 1929」の展覧会を拝見するのは、昨年の横浜トリエンナーレ以来のことかもしれません。先鋭的なメディア・アートで構成された「地球」展と、竹の音を涼し気に奏でるインスタレーションを展開した松本秋則の個展が開催されていました。

「地球」展では、何と言っても地下の展示室にて上映されていた「PopulouSCAPE」が圧倒的です。世界に約8400ほど存在するという5万人以上の都市を高層ビルの形に視覚化し、それを俯瞰するかのように空から漫遊する。旅はニュージーランドから始まりました。一気に赤道を超えて日本へと高速移動。東アジアでは、東京・ソウル・上海などと連なる超巨大都市が、まさにバベルの塔のように高層ビルを築いてそびえ立ちます。またその周囲にはびっしりと虫のように群がる無数の大都市。恐ろしいほどの密集度です。そしてそこからは東南アジアを経由し、これまたビッシリとビルの立ち並ぶインドを超えてヨーロッパへと向かいます。煌めく欧州を過ぎれば今度は南下です。ぽっかりと暗がりになっているサハラ砂漠を過ぎ南アフリカ、さらには大西洋を経由して南米へと進みます。ここまで来ればあとは北米大陸を残すのみ。光瞬くニューヨークがゴールでした。この間約10分。世界人口のスケール感を目と耳で味わうことが出来ます。夜景に映える高層ビルの輝きは、まさに現代文明の繁栄を示す一方、まるで今にも崩れ去るガラス細工のような脆さを体現していました。ちなみに、この作品は愛知万博でも上映されたそうで、DVDとしても販売されています。部屋を真っ暗にして、一人っきりでこの眺めを味わってみるのも良いかもしれません。
*「PopulouSCAPE」公式サイト

一階の展示ホールでは、人造の竹林にて涼し気な空間を作り出した松本秋則のインスタレーションが見応え満点でした。竹の一つずつが楽器となって、それらが時にミニマル音楽のように、またある時には武満(?)のように、ホール全体へ心地良い音響空間を生み出していく。小さな太鼓たちが群がる竹林。竹の先には、趣向を凝らしたベルやタンバリンのような可愛らしい楽器が、いくつもぶら下がっています。全てコンピューターにて制御されているのでしょうか。それぞれがゆったりと震え、また靡いていく様子。少し調子が悪いのか、いくつか動かない楽器があったのは残念ですが、椅子に腰掛けてずっと竹の音へ耳を傾けていたい作品でした。これぞ真夏にピッタリのインスタレーションでしょう。
松本秋則展は無料にて8月31日まで開催されています。みなとみらいから馬車道界隈の散策で疲れた際にでも、是非立ち寄ってみては如何でしょうか。癒しの空間があなたを待っています。(!?)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
次ページ » |