新・サントリー美術館は来年3月30日に開業

来春に予定されている東京ミッドタウンの開業にあわせ、サントリー美術館の移転オープンの日付(2007年3月30日)が正式にアナウンスされました。

サントリー美術館、新天地で3月末に新装オープン(yomiuri online)
新「サントリー美術館」の詳細発表-展示面積2倍に(ライブドア・ニュース)
新美術館、2007年3月30日に開館いたします(サントリー美術館公式HP)



まずは開館記念の展覧会として、同美術館の誇る日本美術コレクションの一部を紹介する「日本を祝う」展(2007/3/30-6/3)と「水と生きる」展(2007/6/16-8/19)の決定が詳細にリリースされています。以下、その概要を転載します。

開館記念展1 「日本を祝う」 2007/3/30-6/3
 展示作品 狩野探幽「桐鳳凰図屏風」、伝狩野山楽「南蛮屏風」(重文)、「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」(国宝)など。

開館記念展2 「水と生きる」 2007/6/16-8/19
 展示作品 円山応挙「青楓瀑布図」、「佐竹本三十六歌仙絵 源順」(重文)、伝俵屋宗達「伊勢物語図色紙 水鏡」など。

開館時間 10:00-18:00(日・月・祝日) 10:00-20:00(水-土)
休館日 火曜日
料金 一般1000円 学生800円
(ともに前、中、後期の展示替えあり。)



またこの二つの展覧会のあとは、さらに強烈な、「屏風 日本の美」展と「鳥獣戯画がやってきた!」展)という企画展が予告されています。ともにまだ詳しい内容は未定のようですが、特に後者は今年京博の大絵巻展で公開され大変な話題となった、「鳥獣人物戯画絵巻」の公開される展覧会です。これは見逃せません。



1961年に丸の内に開館し、その後赤坂にて活動を続けていたサントリー美術館は、日本美術(特に古美術。残念ながらマイブームの酒井抱一は所蔵してないようですが。)に強い美術館です。実は旧館へ一度も足を運んだことがなかったのですが、過去を辿ると、今なら是非見に行きたくなるような興味深い展覧会がいくつも開催されていました。単純に展示室面積も旧館の2倍になるということのなので、またパワーアップする今後の企画展に期待したいと思います。

サントリー美術館のこれまでの展覧会(一例)

 1971年 「奇想の画家・歌川国芳」
 1981年 「酒井抱一と江戸琳派」
 1984年 「異色の江戸絵画 プライス・コレクション」
 1986年 「三十六歌仙絵-佐竹本を中心に」
 1997年 「桃山百双-近世屏風絵の世界」
 1998年 「東洋絵画の精華 クリーヴランド美術館のコレクションから」
 1999年 「光悦と宗達」 「国宝 信貴山縁起絵巻」

*サントリー美術館のオンラインショップで期間限定のセールが開催されています。ご興味があれば一度試してみては如何でしょうか。

*関連エントリ
国立新美術館の開館記念展覧会
国立新美術館が完成
「21/21 DESIGN SIGHT」と「サントリー美術館」 東京ミッドタウン
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「クリーブランド美術館展」 森アーツセンターギャラリー

森アーツセンターギャラリー港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階)
「クリーブランド美術館展 - 女性美の肖像 モネ、ルノワール、モディリアーニ、ピカソ」
9/9-11/26(会期終了)



森アーツセンターギャラリーにて、先日まで開催されていた「グリーブランド美術館」展です。この手の名画展に相応しいような印象派の名品はもちろんのこと、最後の「北ヨーロッパの光」(セクション5)で紹介されていた作品にも見応えがありました。

 

印象派ではモネが目立ちます。特に、透き通るような水色の空とサーモンピンクの屋根が眩しい「アンティーブの庭師の家」(1888)と、くすんだ灰色の窓から赤いスカーフが浮かび出す「赤いスカーフ、モネ夫人の肖像」(1868-78)の二点が心に残りました。画中の色遣いなどは対照的ですが、ともにモネならではとも言える柔らかで、またマチエールに温もりのあるタッチが絶品です。「庭師の家」では、その燦々と降り注ぐ陽の光に大自然の恵みすら感じさせます。前景の木の淡い緑と、家の控えめなピンク、それに空と山の抜け行くような青が美しいコントラストを描いていました。



後期印象派は僅か4点ほど紹介されているのみですが、その中でもやはりゴッホの存在感は抜きんでいています。「サン=レミのポプラ」(1889)は、今にもガタガタと音を立てて崩れそうな危うい構図感に、ゴッホの独特な心象風景を思わせる作品です。まるで木枠を描くように分厚く塗り込まれた白い丘には、ポプラがまるで浮いているかのように描かれていました。(特に右のポプラはもはや地面から離れてしまっているように見えます。)また空を覆う深い青もゴッホの手にかかると何やら不穏な雰囲気です。晴れ渡っているはずの空が、それこそ暗雲漂う嵐のように思えるのがとても不思議でした。



殆ど唐突に登場するロダンの彫刻を抜け、ブラック風のピカソ(「扇子、塩入れ、メロン」)などを横目に見やると、この展覧会で最も特徴的な北ヨーロッパ絵画を紹介するコーナーに到着します。ここではバルラハやニコルソン、それにヘンリー・ムーアらが一緒に展示されていましたが、私はモンドリアンの三作が一番印象に残りました。まだ抽象に進むの前の段階の「前景に若い木のある野原」(1907)と、後の「赤と黄色、青のコンポジション」(1927)を同列で拝見するのはなかなか興味深いことです。それまでの流れからするとやや違和感のある展示ではありますが、このセクションだけを拡大した展覧会があればまた面白いのではないかと思いました。そろそろ表現主義あたりをターゲットとした大規模な展覧会が見たいものです。

一つの展覧会として考えるとかなりコストパフォーマンスが悪いようにも感じましたが、サブタイトルにある「女性美の肖像」のイメージとは似ても似つかないような面白い作品に出会うことも出来ました。また、グリーブランド美術館には充実した日本美術コレクションがあるそうです。そちらもまたいつか拝見出来ればと思います。(11/19鑑賞)
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「アルベルト・ジャコメッティ 矢内原伊作とともに」 川村記念美術館

川村記念美術館千葉県佐倉市坂戸631
「アルベルト・ジャコメッティ 矢内原伊作とともに」
10/10-12/3



スイス生まれの彫刻家、アルベルト・ジャコメッティ(1902-1966)の作品を概観しながら、彼と交流のあった哲学者、矢内原伊作(1918-1989)との関係を探る展覧会です。ジャコメッティの彫刻や絵画、それに資料など、約140点の作品で構成されています。

「ジャコメッティ/矢内原伊作/みすず書房」

既に名高い彫刻家として知られているジャコメッティはともかく、表題にも登場する日本人哲学者、矢内原伊作については若干の説明が必要かもしれません。1918年生まれの矢内原は、後にサルトル研究のためフランスへと渡り、今からちょうど50年前にあたる1956年にジャコメッティと出会います。それ以来彼は毎年のようにパリへ渡り、ジャコメッティの彫像制作のモデルを務めました。(矢内原がモデルとなった作品は、何とも約230点にも及ぶのだそうです。)この展覧会では、そんな二人の親交を特に第三章「ヤナイハラとともに」で詳しく辿っていきます。矢内原をモデルとする作品は2点ほど展示されているだけですが、展覧会の核心はあくまでも彼らの関係を示す部分でした。



キャリア初期の作品は、どれもジャコメッティのものとは到底思えません。北斎やベラスケスの模写に始まり、ヘンリー・ムーア風とも思えるようなオブジェをいくつも制作しています。それがいつの間にやら、あの細く、またどこか無骨なフォルムの特徴的な彫像を生み出していきました。特に、凹凸の激しい表面の味わいは極めて個性的です。細い線が無数に顔を切り刻み、指先の形をそのまま残したような面がまるで衣服のように体を纏っています。また、彫像に近づいた際に感じられる強い生気は並大抵のものではありませんでした。遠目では、それこそ侘び寂びの境地のような儚い味わいすら感じさせますが、彫りの深い顔のフォルムと、その鋭い眼差しはとても力強いオーラを放っています。思わず後ずさりしてしまうほどの迫力です。

 

まるで針金細工のような人の彫像によるオブジェも心に残りました。特に、まさに人が檻に閉じ込められているようにも見える「檻」(1950)や、ピノキオのように鼻がのびて柵状の囲いから飛び出している「鼻」(1947)は、殆ど不可思議に思えるほど奇異なフォルムです。また「台上の4つの小彫像」(1950)では、あたかもイースター島もモアイ像のように、ただひたすらに、また寂しく像が佇んでいます。大きくて堅牢な台座部分と、極小の人間のアンバランスさが異様な姿を見せつけていました。



矢内原との関係についてかなり割いていますが、事実上のジャコメッティの回顧展です。なかなかまとまって拝見出来る機会がなかったので、作風の変遷などを中心に興味深く見ることが出来ました。12月3日まで開催されています。(11/5鑑賞)
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オーチャードホール舞台裏探索ツアーと東京フィルハーモニーゲネプロ公開

超高倍率(40倍!?)の抽選を見事パスされた、「弐代目・青い日記帳」のTakさんのお誘いで行ってきました。Bunkamuraオーチャードホールのバックステージツアーと、東フィルのゲネプロ見学がセットになったイベントです。

「Bunkamuraをより楽しむ、オーチャードホール音の秘密探索ツアー」(公式サイト)

バックステージツアーについてはTakさんの詳細な記事を参照していただきたいのですが、一番意外に感じたのは、てっきり音響反射板と思いこんでいたオブジェ風の吊り板が、とあるデザイナーの手がけた照明だということでした。しかもそれは、あまりにも維持管理に時間や労力がかかるため、開場時などのごく僅かな時間だけしか使用されていないのだそうです。ホール天井から吊るされた照明と言うと、サントリーホールにある泡をイメージしたものが印象的ですが、この階段状の照明もかなり独特な形をしています。私はこの照明が灯っているのを見た記憶がないのですが、次回ホールへ出向いた際には是非確認してみたいと思ました。(いつもステージばかりに目が向いてしまって、天井部分にまでには殆ど頭が回りません。)



ツアーに参加させていただいて申し上げるのも恐縮ですが、オーチャードホールの音響はあまり好きでありません。(ごく一部の座席を除くと、どうしても音圧感に乏しく、音像がぼやけるように感じます。)ただしホール自体は、広いステージやピットなどがあって、様々な形態の公演にも使用可能です。現に例えば、外来オペラの引っ越し公演でここを素通りすることはまずないでしょう。ただその中でも一部、建物の形状の都合上、舞台裏のエレベーター(奥へ向って狭まる形をしています。)などに使い勝手の悪い部分もあると聞きました。そのために、舞台セットなどは小さく解体して搬入するか、時には正面玄関からも運び込むことがあるそうです。ちなみに何年か前のモネ劇場の公演では、一連の「解体+搬入+設置」の作業が現地よりも上手くいったとの評判だったとのことでした。またこれまでのあらゆる公演の中で最も舞台搬入等の工程が大変だったのは、ホールのオープンの際に行われた世界初のバイロイト引っ越し公演なのだそうです。1989年のことです。



オケピットへの入口部分(ステージ側地下より。)にも案内していただきました。このホールは奈落部分が約2メートル程度しかなく、天井の低い空間を這うように進んだ先に入口がありましたが、いつも客席側からしか見たこのない場所を反対から望むのはとても新鮮な感覚がします。残念ながらステージ上から客席を望むことは叶いませんでしたが、ピット部分の衝立てからチラリと見える赤い客席が印象に残りました。まだまだこれからもこのホールのピッドは活躍しそうです。



舞台裏のツアーのあとは、いよいよ東フィルのゲネプロの見学にうつります。曲はこの日公演のプログラムから、メインのバルトークの「管弦楽のための協奏曲」でした。指揮はもちろんチョン・ミュンフンです。ゲネプロということで、楽章の合間などに簡単な指示を与えた以外は、殆ど本番と同じように通して曲が演奏されました。それにしても非常に力強い、まるで大波の押し寄せるような熱い(やや粗さもありましたが。)バルトークです。特に第三楽章の旋律美と、疾走する心地良いフィナーレの部分が耳に残りました。細部の見通しこそやや望めませんが、チョンらしいダイナミクスに長けた音楽だったと思います。(個人的には、カットにはもう目をつぶるしかないセルや、ショルティあたりの冷めながらも激しいバルトークが好きです。)

一通り曲を演奏した後、いくつかの旋律(コントラバス主導?)を丁寧に繰り返してゲネプロ見学は終了しました。約1時間弱ほどです。

見慣れたホールの知らない裏側へ潜り込み、普段着姿のオーケストラメンバーの奏でる音楽に耳を傾けるというのは、とても贅沢な経験です。他のオーケストラ&ホールもこのような企画をやっていただければ、是非参加したいと思います。
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東京都交響楽団 「R.シュトラウス:アルプス交響曲」他

東京都交響楽団 第634回定期演奏会Aシリーズ

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 作品58
R.シュトラウス アルプス交響曲 作品64

指揮 エリアフ・インバル
ピアノ エリソ・ヴィルサラーゼ
演奏 東京都交響楽団

2006/11/24 19:00 東京文化会館5階

99年の都響スペシャルでのワルキューレが忘れられないエリアフ・インバルが、何と7年ぶりに都響の指揮台に登場しました。プログラムは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲と、R.シュトラウスのアルプス交響曲です。特に後者においてインバルの至芸を楽しむことが出来ました。再共演はまずまずのスタートです。



初めのベートーヴェンのピアノ協奏曲では、ソリストのエリソ・ヴィルサラーゼが今ひとつ冴えません。第一楽章のカデンツァこそさすがに力強く、ホールいっぱいにその逞しい音を響かせていましたが、中音域のニュアンスの変化にやや乏しく、全体として一本調子に聴こえてしまいます。また、思いの外に柔らかい響きを醸し出しながらも、やはり颯爽と音楽を進めていくインバルに対して、何かと足を引き摺るような、重々しいピアノであったのも違和感を感じました。ただだからと言って、それぞれの表現がぶつかり合うような、手に汗握るスリリングな展開になるわけでもない。行進曲風の主題が心地良い三楽章において、ようやくインバルの棒に食いつくかのようにテンポをあげていきましたが、総じて消化不良気味です。もちろん、訥々と話しかけるようなピアニズムに素朴な味わいがあったのも事実ですが、それ以前に曲との相性に問題があったのかもしれません。もう一歩、踏み込んだ表現が欲しかったと思いました。

アルプス交響曲では、インバルの漲る力感が音楽へと乗り移ります。細部にオーケストラとの齟齬があったようにも感じられましたが、木管から弦を中心に美しい音を奏でる都響を盛り上げ、聞かせどころでは圧倒的なクライマックスを作り上げていました。特に、ホール全体を揺らすかのようなフォルテッシモは強烈です。音の響きが渦を巻き、あちこちに反射してぶつかりながら、激しく飛沫をあげているような感触が耳を突き刺します。もちろんそれでいながら、例えば「日没」から「夜」へ至る箇所のように、沈み行く音の囁きにもゾクゾクするような美感を与えている。ホルンやティンパニを丁寧に鳴らしながらも、全体として生み出されるダイナミズムは非常に快活です。総じて、この曲の持つ交響詩的な部分よりも、純粋に響きの力を表したような、言い換えればアルプス交響曲を抽象化して提示したような演奏かと思いました。この手のアプローチでは、その情景描写の美しさに思いを馳せるというよりも、素直に響きの面白さを味わうことが出来ます。説得力がありました。

次回、都響とは、来年の12月に十八番でもあるマーラーの「悲劇的」と「夜の歌」が予定されています。今後も是非定期的に客演していただきたいです。
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「美術館ボランティアが選ぶ千葉市美術館コレクション展」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「美術館ボランティアが選ぶ千葉市美術館コレクション展」
10/17-12/3



略称「美ボ展」です。千葉市美術館の誇る約7000点の所蔵作品の中から、ボランティアスタッフの選んだ57点が展示されています。応挙、歌麿らの江戸絵画から、堂本尚郎や李禹煥などの現代アートまでを楽しむことが出来ました。



展示は現代美術から始まります。ここでは私が以前、初めて拝見してとても惹かれた勅使河原蒼風の「萬木千草」や、お馴染みの李禹煥の「With Winds」が一際目立っていました。特に李の「風と共に」は印象的です。巨大な4面のキャンバスに、線と点が自由な感覚で配されています。その様子は、まるで白い砂利の上に石の並ぶ日本庭園のようです。白地に伸び、またどっしりと置かれたストロークは、砂利を僅かに巻き込み、静寂の中に佇んでいます。そして刷毛の跡が生々しいクリーム色のざわめき。まるでその庭に降りた鳥のさえずりのようにも聞こえてきました。「風と共に」シリーズらしい、静と動の間が興味深い作品です。



そびえ立つ富士の凛々しい北斎の「富嶽三十六景 凱風快晴」や、広重、巴水などのコーナーを過ぎると、お目当て(?)の酒井抱一の「老子図」が登場です。まるで足を泳がせているような牛の背中に跨がる、軽やかな老子の姿。流麗な線と、牛の顔などにみる微笑ましい描写は、抱一ならでは気品すら感じさせました。また江戸絵画では、春章や歌麿の浮世絵も多く並んでいます。千葉市美術館の浮世絵コレクションも相当なレベルです。



白霞に覆われた野山を幻想的に描いた円山応挙の「秋月雪峽図」も見事でした。この美術館の応挙と言えば、以前の「海に生きる」の展覧会にて出品されていた「富士三保松原図」がすぐに思いつきますが、この作品の方がはるかに重厚な味わいです。金箔の交じる雪景色が、広がる山々や湖にある種の神々しさを演出していました。その巧みな空間構成には思わず引き込まれます。

最後に、会場出口付近に掲載されていた、ボランティアと来場者によるトップ10を挙げておきます。やはり特定の作品に人気が集中しているようです。



トップ10 来場者

喜多川歌麿 「納涼美人図」
鏑木清方  「薫風」
円山応挙  「秋月雪峽図」
葛飾北斎  「富嶽三十六景 凱風快晴」
歌川広重  「東海道五拾三次之内 庄野」
関主税   「刻」
酒井抱一  「老子図」
浜口陽三  「19と1つのさくらんぼ」
磯辺行久  「WORK65-60」
棟方志功  「二菩薩釈迦十六弟子」

ボランティア

喜多川歌麿 「納涼美人図」
棟方志功  「二菩薩釈迦十六弟子」
円山応挙  「秋月雪峽図」
鏑木清方  「薫風」
浜口陽三  「19と1つのさくらんぼ」
北代省三  「蝕る日の軌跡」
窪俊満   「砧打ち図」
歌川広重  「東海道五拾三次之内 庄野」
葛飾北斎  「富嶽三十六景 凱風快晴」
酒井抱一  「老子図」

現在も、「みんなで選ぼうわたしの1点」と題する人気投票が行われています。同美術館の良質なコレクションを一覧出来る良い機会でした。12月3日までの開催です。(11/5鑑賞)

*関連エントリ
「浦上玉堂展」 千葉市美術館
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「浦上玉堂展」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「浦上玉堂展」
11/3-12-3



詩や音楽、それに書や水墨画などに才能を発揮した、江戸時代後期の文人画家、浦上玉堂(1745-1820)の大回顧展です。主に彼の書画、約230点にて画業を振り返ります。関東では35年ぶりとなる本格的な展覧会です。充実していました。



玉堂の山水画は非常に独創的です。岩が地面からまるで筍のように伸び、また泡の如く膨らんで、断崖絶壁の荒々しい光景を支えています。岩はまさに奇岩怪石という言葉がピッタリです。何ら迷いのない即興的なタッチにて、まるで命が宿っているかのような岩が描かれています。そして米点を思わせる筆遣いが、風に揺れる林を表していました。荒涼とした大地です。ただならぬ気配が漂っています。



特に縦長の構図に描かれた岩の連なる光景は威圧的でした。玉堂の作品はどれも基本的に上方向へのベクトル(それこそ下から盛り上がる岩のように。)を感じさせますが、時折横線を交えて、まるで霞のかかったような表現が加わると、実に情緒的な光景へと変化します。そして画面にただ一人だけ登場する旅人(?)の趣きです。やや背中を曲げて、トボトボと歩く光景が描かれています。背景の巨大な天険要害と、殆ど無力なほどに小さい人の立ち姿。ここには、諸国を遊歴したという玉堂の、ある種の寂しさが表現されているようにも思えました。どこか儚い雰囲気です。



マルチな才能を発揮した玉堂は音楽家でもあります。展示では、彼の制作した「七絃琴」や、「玉堂琴譜」と呼ばれる楽譜が紹介されていました。音楽家としての玉堂を絵に見出すのは難しくありません。それこそ岩がミシミシときしむ音や、森のざわめき、そして急流のせせらぎや風の音までが、颯爽たる筆のタッチの一つ一つから奏でられているのです。サッと描かれた軽やかな墨線が、あたかも篠笛となったかのように音を紡ぎます。玉堂の水墨画は、耳でも楽しめる作品です。

細かく分かれた展示構成にやや戸惑う部分もありましたが、江戸絵画に強い千葉市美術館ならではの良い展覧会でした。会期が短いのが残念ですが、おすすめしたいと思います。12月3日までの開催です。(11/5鑑賞)
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新国立劇場が「愛称」を募集

来年で誕生10周年を迎える新国立劇場が、オペラ劇場の愛称を募集しています。一人5点まで、インターネットでも応募出来るようです。

新国立劇場が愛称募集 オペラ・バレエの拠点、認知を(asahi.com)

「新国立劇場オペラ劇場」愛称募集(応募フォームあり)


新国立劇場では、2007年10月に迎える開場10周年を記念し、わが国で唯一の国立オペラ・バレエ専用劇場である「新国立劇場オペラ劇場」について、皆様から親しみやすくわかりやすい愛称を2006年11月20日より募集いたします(締切:2007年1月31日)。今回この当劇場の愛称募集は、国民の皆様からよりいっそう愛され、親しまれ、また世界への発信力の更なる向上を目指し、今年度より「新国立劇場の活性化計画」を策定し、取り組んでいる活動の一環として展開するものです。(公式サイトより。)



私など、新国立劇場には既に立派な「新国」(しんこく)という愛称があるのではないかと思ってしまいますが、もちろんそれは劇場公認の愛称ではありません。一例として挙げられているMETに倣って「NNT」(?)、ロイヤルオペラハウスより「初台」(ただし実際の所在地は本町でしたが…。)などというのも出てくるかもしれませんが、やはり平凡過ぎる(?)のでしょう。そもそも「新国立劇場」という正式名自体が、何やら正体不明で、とても親しみにくいのですが、そのイメージを覆すような愛称が求められるのかと思います。

まだ何も浮かんで来ませんが、締め切りは来年の1月末日とのことです。気長に考えてみたいと思います。皆さんもどうでしょうか。
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「斉藤邦彦個展 『現像中』」 ヴァイスフェルト

ヴァイスフェルト港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3階)
「斉藤邦彦個展 『現像中』」
11/2-25

マクロな展望とミクロな世界が同居しています。印画紙上の化学反応によって作り出された(HPより。)というパターンが、見ているうちに様々なイメージを広げてくれました。見応え十分です。



作品へ限りなく近づくと、まるで地図上の等高線のような曲がりくねった線が、画面を縦横無尽に駆け巡っていることに気がつきます。そしてそれは、ある一定の秩序をとっているように見えながらも、その奥にてまるで生きているかのように動き、またひしめき合っていました。要は、この線によって出来た模様が、フィルムの現像中に発見されたという抽象パターンなのです。種明かしがないと、これが何に由来するのかは到底分からないと思います。

それにしてもこのパターンからわいているイメージは無限大です。ちりちりとした線の集合体が、時に布地を手で切り裂いた跡の裂け目のようにも見え、また木の表面の模様、さらには砂紋、はたまた衛星写真で撮影した大地のようにも見えてくる。展示されていた作品の中で一番大きかった「Other1」は、堂々たる杉が迫力満点にうねっている狩野派の屏風絵を連想させました。ところがそれを近づいて見ると、大波に洗われている崖や岸辺が事細かに描かれているようにも思えてくるのです。マクロ的な展望にたった時のイメージと、ミクロな視点で見たそれが殆ど奇異なほど違って見えてきます。まるで一種の騙し絵です。

作者のとった技法云々よりも、結果生じた世界にこそ惹かれる作品だと思いました。今月25日までの開催です。(11/11鑑賞)
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「齋木克裕 『Suspension』」 SCAI×SCAI

SCAI×SCAI港区六本木6-8-14 Patata六本木203)
「齋木克裕 『Suspension』」
11/10-12/9(木・金・土のみオープン)

ニューヨークを拠点にする写真家、齋木克裕の個展です。コバルトブルーの海が目に染みました。



海の中を漂うクラゲを下から見上げて捉えたような作品が印象的です。海は光と闇がせめぎ合って、コバルトブルーに黒が混じり始めています。ちょうど陽の光の差し込む臨界点かもしれません。そしてそこを気持ちよさそうに浮かぶクラゲたち。深い海の底から、微かな光を求めて上へと向い、ゆらゆらと靡いています。海を見下すのではなく、ちょうど空の深い青を地面から見上げるようにして捉えているのでしょうか。波に揺れるそのクラゲが、あたかも夜にのまれていく星のように煌めいています。切ないほど儚く弱い光です。

写真を素材とした彫刻作品はあまり良いと思えなかったのですが、一切の装飾を排して構成された写真は、やや無機質である反面、純度の高い冴えた美を生み出すことに成功しています。12月9日までの開催です。(11/11鑑賞)
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NHK交響楽団 「ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第5番」他

NHK交響楽団 第1581回定期公演Cプログラム2日目

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 作品61
ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第5番

指揮 ロジャー・ノリントン
ヴァイオリン 庄司紗矢香
演奏 NHK交響楽団

2006/11/11 15:00 NHKホール3階

古楽(的)演奏で名高いノリントンが初めてN響に登場しました。プログラムは、有名な割には演奏頻度の低いベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と、ノリントンが得意としているというヴォーン・ウィリアムズから第5交響曲です。お馴染みのノン・ヴィブラート奏法が、何かと重厚なN響のサウンドをピュアなものへと変化させました。これは新鮮です。



庄司紗矢香のヴァイオリンはいつも以上に冴え渡っていました。ノリントンのアプローチに合わせたのでしょう。技巧に優れた庄司のヴァイオリンが、ノン・ヴィブラートの鋭角的な響きをまとうことで、さらに鋭く、また力強く表現されていきます。細かいパッセージでも音が全く潰れないのはもちろんのこと、あのデッドなNHKホールでもオーケストラに力負けすることがありません。ピアニッシモでは、まるで鋼で出来た細い芯が音を支えているような、冷たく、また硬質な響きが、それこそ耳をつんざくように鳴り渡ります。一種の怖さを感じるほどの緊張感です。そしてフォルテでの大迫力。全体的にやや腰の重かったN響を、庄司のヴァイオリンはいとも簡単に突き破っていきました。もちろんレンジも懐が深く、実に幅広い。音楽を変幻自在に操っています。終始、遅めのテンポで曲を丁寧に描いていたノリントンのサポートにも迷うことがありません。これほど自信の感じられる演奏を聴いたのも久しぶりです。ノリントンの古楽アプローチによるベートーヴェンを聴くつもりだったのが、いつも間にやら庄司のヴァイオリンに聞き惚れてしまいました。素晴らしい演奏です。

ノリントンについてはヴォーン・ウィリアムズで楽しむことが出来ました。この曲は、ノリントンの師でもあるボールトの演奏をCDでしか聴いたことがありませんが、実演とCDを比較するのはナンセンスであるにしろ、私はノリントンの方を支持します。(名盤に畏れ多いことではありますが、ボールトの演奏はあまり感ずるものがありません。)適当なたとえではないかもしれませんが、彼のアプローチによって生まれた音楽は、あたかも組み合わされたパズルのようです。音楽を一度、各パーツ毎に切り分けて、それを一つずつはめ込みながら丁寧に組み上げる。各フレーズ毎の弦や木管が、あたかもそれぞれの同じパーツとなったように、並列的に、実に収まりよく重なっていきます。結果、生まれる音楽はとても見通しが良い。またパズルピース同士の切れ目も、しっかりと残して示されていました。部分と全体が幾何学的な平面図形で示されています。残念ながら、N響はノリントンのアプローチを十全に受け止められていなかったようですが、それでも数式の羅列を見ているような音楽の組み立てにはとても斬新な印象を与えてくれます。曲の牧歌的な、また情緒的な部分も、殆ど何の情感も見せずにただひたすらに美しく聴こえて来る。ノリントンが即物的な音楽を作り上げるとは少々意外です。私の中では、いわゆる古楽器系の指揮者の連なりよりも、例えばブーレーズのとるアプローチに近いようにも思えました。如何でしょうか。

今のN響には、まさにノリントンのように響きを磨き上げてくれる指揮者が一番相応しいかと思います。是非、再度共演していただきたいです。
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「仏像 一木にこめられた祈り」展 東京国立博物館

東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9
「仏像 一木にこめられた祈り」展
10/3-12/3



一本の木材から像を造り出す(パンフレットより。)という、いわゆる一木彫の仏像を紹介した展覧会です。主に「十一面観音菩薩立像」を中心とする奈良・平安期の仏像と、それより大きく時代の下った江戸時代の円空(1632-1695)、木喰(1718-1810)の制作した仏像が展示されています。



基本的に信仰の対象である仏像を心ではなく目で見るのはとても難しいのですが、私の趣味で語ることが許されるのであれば、今回は特に円空に強い親しみを感じました。鉈で割った木の断面をそのまま剥き出しにした、抽象的で力強いフォルム。まるで筍かトーテムポールのように伸びたその出で立ちは、どこか飄々としてながらも、素朴で人懐っこい風情を与えてくれます。目を閉じて瞑想をしながら、それでいて見る者を優しい微笑みで包んでくれる。当時、庶民に大変親しまれていたというのにも納得です。適当な言葉ではないかもしれませんが、これほど可愛らしい仏像もいないと思えるほどでした。またこの仏像には、元来、木が宿していた自然の魂がしっかりとこもっているようにも感じられます。アニミズムの近代版です。仏像から木、そしてその先の自然への信仰が存在しています。誰の祈りも分け隔てなく受け入れて下さる仏様のように見えました。



多く展示されていた奈良・平安期の「十一面観音菩薩立像」は、私には少々おどろおどろしく見えてしまったのですが、「菩薩半跏像」はさすがに圧倒されました。実に堂々とした威容です。クッキリとした鼻筋から、細く見開かれた両目、さらには引き締まった口元など、どこをとってもまさに完璧とも言えるようなフォルムを見せています。この仏様を前にすると、祈ると言うよりも、ただ頭を足れてひたすら佇むしかありません。グルリと一周、その廻りを歩くものおこがましいような威厳を感じさせました。展示のハイライトでもあります。

私は仏像に対する知識が全くありません。会場ではキャプションを横目で眺めつつ、ひたすら作品に見入るのみでありましたが、展示では一木彫の歴史やその概要なども丁寧に説明されています。私のような仏像初心者でも理解出来るような構成です。ただ率直なところ、これほど多くの仏様に囲まれると、そこに「静謐な世界」(パンフレットより。)を見出すより、むしろ戸惑い、また奇妙な胸騒ぎすら感じてしまいます。円空の微笑みに心安らぎながらも、思いの外険しい仏様の表情にいささか面食らう。私がその祈りを受け止めるのにはまだ時間がかかりそうです。展覧会自体は充実しています。12月3日までの開催です。(10/29鑑賞)


*展覧会の構成*

第一章 檀像の世界
 
 インドの伝説では初めに造られた二体の仏像の素材は、白檀(びゃくだん)と金であった。白檀はインドから東南アジアに群生する広葉樹で、幹の太さは約30センチほどである。そのため、比較的小さな仏像しか造れないが、緻密な材質であるので、細かな彫刻に向いている。
 7世紀、インドへ渡った中国の僧が、白檀の仏像を自国へもたらした。ただし中国では白檀が自生していなかったため、柏木(はくぼく)で代用した。また奈良時代の日本でも同じように、柏木をカヤとみなし、それを用いた仏像が造られることになった。十一面観音菩薩像が多い。

第二章 一木彫(いちぼくちょう)の世紀

 8世紀から9世紀の日本において、一本の木から像の出来るだけ多くの部分を彫り出そうとする一木彫の名品が造られた。
 材料はカヤである。素材自体が大きいため、仏像も等身大ほどのものが造られるようになった。

第三章 鉈彫

 10世紀から12世紀にかけれ、仏像表面にノミ目を残る一木彫が出現した。これを鉈像という。主にカツラやケヤキといった、霊木とされる木材を使用した。関東から東北地方にかけて多く制作されている。

第四章 円空と木喰

 円空(1632-1695)と木喰(1718-1810)は、ともに江戸時代に活躍した仏像制作師である。日本中を廻り、大量の仏像を制作し、庶民に親しまれるような独特の形を生み出した。
 円空は鉈で割った切断面や、ノミの痕を意図的に残しているが、木喰は表面が比較的滑らかで、丸みを帯びている。
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「絵にしか描けない美しさ - 伊藤若冲」 ギョッとする江戸の絵画(NHK教育)

NHK教育テレビで放送中の「知るを楽しむ ギョッとする江戸の絵画」から、第5回、伊藤若冲(1716-1800)です。番組の模様をメモ風にまとめてみました。

NHK教育テレビ「知るを楽しむ この人この世界」
「ギョッとする江戸の絵画」 第5回 「絵にしか描けない美しさ - 伊藤若冲」
出演 辻惟雄(美術史家)
11/6(午後10:25-10:50)


傑作「動植綵絵」

・「動植綵絵」概略
 全30幅。鳳凰、孔雀、魚、昆虫などが精緻に描かれている。
 若冲40歳の頃から、約10年以上かけて制作された。(55歳の時に完成。)
 完成後は京都・相国寺へ寄進。(明治までは年に一度公開されていた。)
 明治22年に宮内庁へ。
 →今年の春から夏にかけて、東京・三の丸尚蔵館で6点ずつ、計5回にわけて展示された。

・作品制作の背景
 若冲の仏教信仰
  相国寺禅師、大典の教えを受ける。
  晩年は深草の石峰寺で僧侶として生活。(1788年以降、約10年間。)
 「草木国土悉皆(しっかい)成仏」の世界を表現。
  =この世にある草木も鳥も動物も、皆仏そのものであるという教え。

・各作品概説

 

「群魚図」(鯛+タコ)
 一見、ありふれた構図ではあるが、一つ一つを細かく見るとただならぬ気配が存在している。
 実際に泳いでいる魚ではなく、魚屋の店頭に並べられていたものを描いた。全体的にやや硬い印象。
 油彩表現を凌駕するほど美しい鯛のうろこ。
 大タコの触手の先にくっ付いた子ダコ→若冲らしいユーモア
 ↓
 千変万化の面白さを追求



「老松孔雀図」
 まるで夜会に向う貴婦人のような孔雀。色気すらを感じる。
 Veneziaでこの作品を図柄を用いたドレスを見た。→若冲デザインの国際性
 ↓
 あり得ない世界をあり得るように描いた作品。
 「自分にはこうしか見えないのだ。」という主張。=確信犯的
 =『絵にしか描けない美しさ』←若冲の目指すところ。



「池沼群虫図」
 身近な昆虫を描いた作品。若冲の昆虫へ対する温かい眼差しが感じられる。
 


「群鶏図」
 若冲と言えば鶏とも言われるほど代表的な作品。
 自宅に鶏を放し飼いにして写生した。13羽の鶏が描かれている。
 細部は不正確。決して実物そのものを表したわけではない。
 ↓
 実物以上の美しさ=『この世ならざる美の世界』
 自分の見えるようにしか描かない=肉眼が頭と心に直結してイメージを生む。
 →一種の幻覚。(若冲にとってのリアル。)
  ↓
 「バーチャル・リアリティー」の世界



「老松白鳳図」
 動植綵絵の中でもとりわけ美しい。
 生き生きと軽やかに佇む鳳凰。赤い鶏冠と嘴に、なめやかな切れ目。そしてクリスタルに輝く羽。まるで象牙細工のようだ。
 一際目立つ赤いハート。
 ↓
 美しさの秘密(修復時の調査にて判明)
  作品の裏に黄色い胡粉(顔料)が塗られている=『裏彩色』
   =この技法を巧みに用いて、類い稀な輝きを作り上げた。


ジョー・プライスと若冲

・若冲を愛するジョー・プライス
 アメリカ人。カリフォルニア州、ロサンゼルス郊外に邸宅を構える。
 カルフォルニア若冲のコレクターとして極めて有名。
 「鳥獣花木図屏風」をデザインした風呂を所有。
 ろうそくの明かりで所有作品を楽しむ。
 24歳の時、ニューヨークの美術商にて若冲と出会った。以後コレクターに。(現在77歳。)

・プライスの若冲観
 国内外を問わず、これまで一人もいなかった芸術家である。(「鳥獣花木図屏風」の新しさ。)
 美と自然界への愛を持っている。
 生き物をまさに生き生きと描き出し、動物たちに誇りすら与えた。


「鳥獣花木図屏風」



・プライスと「鳥獣花木図屏風」
 江戸時代のものとは思えない斬新な作品。
 プライスコレクションの中でも出色。大のお気に入り。心が安らぐ。

・「鳥獣花木図屏風」について
 当時の日本に生息しなかった動物たちも描かれている。=中国の書物より引用。
  →動物は平和の象徴として意義付けられている。
 西陣織の型紙にヒントを得た正方形の升目。 
  →升目をそのまま残して描くと言う独特のスタイル。
 画人の円熟が感じられる作品。画家として認められたというゆとりすら感じる。
 ↓
 国や時を超えた魅力
 以前はそれほど問題にしていなかった日本でも、現在では若冲の代表作として確立した。
 ↓
 動物と植物の楽園=生き物全てに仏が宿っている。→仏国の姿を示した作品


最晩年の若冲

・若冲と石峰寺
 京都・伏見の深草にある寺。
 1788年、天明の大火で市内より焼け出された若冲が移り住んだ。
 晩年の十数年を僧侶として過ごす。
 裏山に並ぶ500体の羅漢像。石工に作らせた。ユーモア溢れる表情。



・「果蔬涅槃図」
 仏画のモチーフを若冲風にアレンジしたユニークな作品。
 大根に見立てた釈迦を、野菜たちが取り囲んで悲しんでいる。
 植物の世界にも仏が宿ることを示した。


まとめ

 ここ10年ほどの若冲ブーム。
 (数十年前は極めて無関心だった。作品も海外へ。)
 ↓
 『美術作品の価値は見る人によって発見されて成り立つ。』=時代が若冲の価値をようやく発見し、近づいた。
 →奇想の系譜の画家たちの中でもとりわけ個性的であり、高い芸術性を見せている。

以上です。
 
基本的に「奇想の系譜」に則った話でしたが、やはり話題のプライス展を意識した構成がとられていました。また著書では全く言及のなかった「鳥獣花木図屏風」が、数多く登場していたのも印象的です。番組内にてかの有名なモザイク風呂を拝見すると、改めてプライス氏のこの作品へ対する愛情が感じられました。展覧会でも人気を集めていたことが思い出されます。

10月初旬から毎週放送されていた「ギョッとする江戸の絵画」も、いよいよ終盤に差し掛かりました。この後は蘆雪、北斎、そして国芳と続きます。こちらも楽しみです。(ちなみにこの回の再放送は、11/13の朝5:05-5:30です。お見逃しの方は是非どうぞ。)

*関連リンク
NHK教育 「知るを楽しむ この人この世界」 - 「ギョッとする江戸の絵画」

*関連エントリ
「ギョッとする江戸の絵画」(NHK教育)は明日(10/2)からです!
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「山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈」刊行記念トークショー 丸善丸の内本店

丸善丸の内本店
「『山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈』刊行記念トークショー」
11/4 15:00~
出演 山口晃

ご一緒させていただいた方のブログには、既にこの講演の充実したレポが掲載されていますが、一応私のメモもアップしておきます。三越での大個展の記憶も鮮やかな山口晃氏のトークショーです。内容は主に、先日出版された「山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈」(東京大学出版会)のお話でした。作品の一点一点の仕掛けを、親切丁寧に解き明かして下さいます。

「山口晃が描く東京風景―本郷東大界隈/山口晃/東京大学出版会」


「本郷東大界隈」について

・絵葉書になるような作品を依頼された。
・作品の質にはムラがある。
・出版会のオススメコースを描いた。
・東大と東京芸大(山口の出身校)の不思議な繋がり。縁を感じる。(不忍池を谷間に挟んだ、それぞれ二つの台地に建つ。)


「本郷東大界隈」の各作品解説(全24点。)



・赤門
 旧加賀藩屋敷御朱殿門。1827年建設。
 明治時代のモダンな雰囲気を出してみた。(石造りの土台。)
 赤提灯の「帝国大学」(明治中頃までは実際に掲げられていたらしい。)
 バンカラ風の東大生を歩かせる。

・百萬石(理学部2号館向い) 
 創業明治32年の老舗料亭。一度入ってみたい場所。
 籠に乗る武士とネクタイ姿の男性の組み合わせ。

・旧発電所
 明治43年建設。現存する大学内最古の建造物。
 現在は塀に囲まれていて立ち入りすることが出来ない。→写真を見て描いた。
 廃墟風にアレンジしている。(←打ち捨てられたものの悲しみを表現。)
 かつては付属病院の発電所だった。



・教授の部屋(法文2号館) 
 1827年完成。
 ローマ史専門の木庭教授の研究室。中世の僧院をイメージ。
 上からの鳥瞰図。
 一度見た記憶を元に描写。
 →実際とは異なるイメージがたくさん出て来る。(流しや木彫、それにブラインドなど。)

・上部建増し(工学部2号館)
 1924年の建造物。建て増ししたのは2005年。
 旧建築を保存する形でありながらも、どこか不格好。(→帝冠様式にアレンジ。)

・三四郎池
 ごくふつうのありふれた光景。つまらない場所になってしまった。
 猫を描き入れるなどして、情緒的な味わいを表現する。

・七徳堂
 1938年建造。
 帝冠様式の立派な建物。コンクリートと瓦のミスマッチが面白い。
 中は畳敷きの武道場。

・地下街(法文2号館)
 実際にある2号館地下の様子。食堂などが軒を連ねている。
 地上の重厚な趣きとは違った面白い場所。
 地下街の下に空想の地下鉄を通してみた。(実際にもメトロという喫茶店が存在する。)

・アルムな場所(医学部3号館うらて)
 医学実験のための山羊の小屋。2、30年前から建っている。バラック風。

・仮説の庇(医学部3号館)
 シンプルな庇を大仏様のようにアレンジ。美を感じる。



・ビヤホール計画(理学部2号館北)
 殺風景な2号館を賑わうビヤホールに。
 ガラスをはめ込んだテラス。開放的。



・東大タワー
 帝冠様式の上に伸びるタワー。赤と白の着色。
 奥深い山に建つ鉄塔をイメージ。

・ラテンな清掃員
 日本人でありながら、いかにもラテン風(ちりちり頭や金時計など。)な清掃員。(←目撃情報を元にした空想の人物。)
 楽しそうに掃除をしている姿と、一仕事を終えた後の姿のギャップ。

・秘密のはなぞの(付属病院第一研究棟)
 医学部付属病院の前の光景。
 守衛(?)が養生している奇妙な植物を描く。驚くべきアイディアのガーデニング。
 ペットボトルに始まり、電話機やボーリングのトロフィーなどの廃品を使う。

・謎の建物(大講堂南側)
 給水ポンプの残骸(?)。中央のスイッチにより作動したのか?
 赤錆びてもう使われていない。

・外階段(付属病院第一研究棟)
 実際の階段をエッシャー風にアレンジ。

・S坂
 根津神社から東大へ向う坂。鴎外がS坂と名付けた。(正式には権現坂。)
 実景を元にしたはずだが、道路の舗装などは異なっている。
 清水堂を再現。

・環境安全研究センター
 実景をまったくそのまま描いた。

・ロータリー(第二食堂前)
 バスに瓦をのせる。レトロ風。



・東京大学出版会
 一番初めに描いた作品。会心作。

・グレーゾーン(旧診療棟)
 建物の迫力をそのまま表現。神社建築を思わせる建物。

・レッテルの店(いけのはた)
 両山堂光景。実際の建物に負けてしまっている。



・本郷館
 下宿屋。三階建てを四階建てに。実物よりも温かい雰囲気が出ている。

・安田講堂
 東大のシンボル。屋根に幟や大砲など。要塞をイメージ。
 正面に小競り合いの光景を描くつもりだったが、その歴史に鑑みて描くのを止めた。


質疑応答

・実際に外でデッサンをするのか
 頭の中のイメージを大切にするため、極力外では描かない。写真を参考程度に。

・原画の大きさ
 絵葉書よりも一回り大きなサイズ。

以上です。

実際の講演では、ここに記載した内容よりも、山口氏の軽妙洒脱なアドリブの方が印象に残りました。(むしろそのアドリブがメインになっていたとさえ思います。)会場は何度も笑いの渦に包まれました。こんな温かい雰囲気の講演も珍しいくらいです。

山口氏は現在、名古屋(中京大学アートギャラリー)でも個展を開催中ですが、12月からは中目黒のミヅマアートギャラリーでも同様の展覧会が予定されています。(12/7-2007/1/20)こちらも是非拝見したいです。

・講演会関連リンク
山口晃と歩く本郷東大界隈(Art & Bell by Tora/美術散歩
『山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈』刊行記念講演(弐代目・青い日記帳
山口晃講演会 (徒然と 美術と本と映画好き...

(掲載の作品画像は、著書のパンフレットから転載させていただきました。)
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祝・新「芸力」誕生!

待ちに待った全面リニューアルです。「芸力」が驚くほどパワーアップして生まれ変わりました。キャッチフレーズは「日本の「芸力」 - ArtPower - を世界へ!」。その内容は実に多岐に渡っています。かつての「芸力」をベースにしながらも、全く異なるWebサイトが誕生したと考えても良さそうです。



画廊の展覧会情報を網羅した「展力」がより一層強力になったのはもちろんのこと、以前ではまさに開店休業状態(?)であった「場力」(ギャラリーの基本情報など。)もついにオープンしました。ともに検索機能も一段と充実し、情報を手軽にピックアップすることが出来ます。数多く画廊にて、アートの最前線に接するのには最適なツールとなりそうです。

ただ今回のリニューアルの重要なポイントは、「芸力」に、「展力」と「場力」以外の強力なコンテンツが誕生したことにあるのかと思います。それは、現代アーティストたちの作品をデジタルアーカイブにて蓄積していくという「創力」や、アートを支援する人や企業の情報を蓄積する「援/縁力」、さらにはアートファンの情報を繋げる「観/感力」です。元々「芸力」の強みは、展覧会のフレッシュな情報を極めて並列的に、それこそデータベースのように載せていく部分にありました。それが今後、その強みを基本としながらも、アートを取り巻く様々な分野を「繋げる」仕掛けが誕生することになるのです。これは既存の「アート情報提供サイト」とは完全に一線を画しています。まだ一部を除いて詳細が明らかにされていませんが、大いに期待したいところです。

ともかくは新生「芸力」に注目です!画廊巡りがお好きな方はもちろんのこと、コンテンポラリーに関心がない方も一度ご覧になることをおすすめします。

*関連リンク
「芸力」
芸力活動日誌
ArtsLog
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