「近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館

三井記念美術館
「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
9/8-11/25



三井記念美術館で開催中の「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」へ行ってきました。

東京ではあまり紹介されない近江地方の仏教美術。琵琶湖を取り巻く社寺には貴重な仏像が数多く存在するそうですが、この度、滋賀県内の42の社寺より約100点ほどの仏像、また仏教絵画などが三井記念美術館へとやってきました。

それが「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」です。

早速、惹かれた作品をつらつらと。


「誕生釈迦仏立像」 善水寺 奈良時代

まずはお馴染みの茶道具展示室に集められた比較的小ぶりの仏様、特にやや太めの胴回りでどっしりとした体躯の「誕生釈迦仏立像」(奈良時代)と、琵琶湖の中から出現したという謂れもある「薬師如来立像」(奈良時代・前期展示)は印象深かった方も多いのではないでしょうか。

特に後者の薬師如来は右手で衣の端をきゅっと握っているという変わった出立ち、その可愛らしくもある姿には心奪われました。

また仏具にも注目すべき作品があります。

圧巻なのは延暦寺に伝わる「金銅経箱」(平安時代)です。道長の娘が自ら記した経典を納めた小箱ですが、ともかく周囲を象る華唐草文の線刻の細かさと言ったら比類がありません。


「金銅経箱」 延暦寺 平安時代

平安金工の最高傑作としても名高い作品とのことですが、あまりにも精緻な紋様は単眼鏡が必要なほどでした。

さて一番広いスペースを用いての仏像展示、これが実に壮観です。

まずは石山寺の「如意輪観音半跏像」(平安時代)、仏像本体はもとより、ざっくりと象られた蓮華座も一木造りで出来ているとは俄に信じられないかもしれません。


「千手観音立像」 葛川明王院 平安時代

また多くの装身具を身につけた「千手観音立像」(平安時代)は華麗の一言。手に持つ仏具類の保存状態も良く、その造りをじっくりと味わうことが出来ます。

そしてチラシ表紙も飾った快慶作の「大日如来坐像」(鎌倉時代)も忘れられません。

うっすらと笑みをたたえているかのような顔立ち、そして頭部から足を結ぶ二等辺三角形の安定的なフォルムなど、まさに生気に溢れた堂々たる姿で鎮座していました。

ちなみにこの快慶に由来する慶派は鎌倉期、近江の仏像制作の中心に位置していたそうです。また展示では近江仏で人気の十一面観音立像も4躯ほど出品されていました。

さて展覧会の一つのハイライトと言えるのが土佐光茂筆による「桑実寺縁起」(室町時代)に他なりません。

室町幕府12代将軍足利義晴が発願して描かれたという上下二巻の巻物、ともかく精緻な描写と極彩色の鮮やかな色味に惹かれるのではないでしょうか。

それに琵琶湖に薬師如来が出現したという縁起物的な主題にも興味をそそられます。特に華やかな舞楽のシーンと、その後に琵琶湖に如来が登場するドラマテックな様子、またそれを驚きをもって受け止める人々の生き生きとした描写は目に焼き付きます。もちろん展示ではパネルで物語を解説、ストーリーを追いながら楽しむことが出来ました。

ラストは仏画です。ここではともかく聖衆来迎寺の「六道絵」から「畜生道図」(鎌倉時代)が一推しです。


「六道絵 等活地獄図」 聖衆来迎寺 鎌倉時代 展示期間:10/30~11/25

いわゆる輪廻転生の様子を描いた一幅の作品ですが、その流麗な描き込みは特筆に値するのではないでしょうか。

ただし細部の細部、例えば鬼が猟師を狙い、その猟師が今度は猪を、さらに猪が蛇、また蛇が蛙を口にしている様子などは、余程目を凝らさないと分からないかもしれません。

実はこの日は単眼鏡を忘れてしまったのですが、やはり準備した方が賢明だったと思いました。

なお三井の決して広いとは言えないスペースです。展示替えがあります。会期は前(9/8~9/30)・中(10/2~10/28)・後期(10/30~11/25)の三期制です。特に仏画類はほぼ全作品入れ替わります。

「近江路の神と仏 名宝展」出品目録(PDF)

先ほど挙げた「桑実寺縁起」も途中に巻替え(上巻:9/8-9/30、下巻:10/2-11/25)がある上、「六道絵」も3幅が全て別の会期で展示されます。十分にご注意下さい。


「透彫華籠」 神照寺 平安~鎌倉時代

なお会期中、半券を提示すると、2回目以降は団体割引料金で観覧出来ます。半券は要保存ではないでしょうか。

「十一面観音巡礼/白洲正子/新潮社

11月25日まで開催されています。

「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館
会期:9月8日(土)~11月25日(日)
休館:月曜日。但し10月8日は開館、翌10月9日は休館。
時間:9:30~17:30  *毎週土曜日は19:30まで。 
料金:一般1200(1000)円、大学・高生700(600)円、中学生以下無料、70歳以上900円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅より徒歩5分。
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「小林史子、横山奈美:扉を開けたり閉めたり」 TALION GALLERY

TALION GALLERY
「小林史子、横山奈美:扉を開けたり閉めたり」
9/15-10/13



TALION GALLERYで開催中の小林史子、横山奈美二人展、「扉を開けたり閉めたり」へ行ってきました。

昨年10月のINAX(現リクシル)ギャラリーでの個展の印象も未だ強く残る小林史子。

家具や日用品などを用いたインスタレーションでも知られた作家ですが、今、ここ西日暮里のタリオンギャラリーでも展示を行っています。



ギャラリーの扉を開けて見るとそれこそびっくり、あたかも増殖するかのように群れているのは、白と黒の無数の丸パイプ椅子に他なりません。

おそらくは自転車のホイールを基点に、天井からピンと張られたロープには、全て座面方が内側を向いた椅子が絡まって、一つのボリューム、ようは立体物を築き上げています。



その中を鋭く貫くのが一本の蛍光灯です。そして下部には脚の部分に紙くず類を挟んだ木製の椅子が、今にも倒れそうなほど傾きながら静止しています。このエッジの効いたフォルムと重力を無視したかのような構成、まさに曲芸、アクロバティックでした。

さて本展ではもう一方、1986年のペインター、横山奈美の作品も見逃せません。

例えば「もやしが二本ある」と名付けられた小品、いずれも確かにもやしが二本描かれているに過ぎませんが、その強く塗りこめられた色味、そして濃厚な画肌は、思いの外に味わい深いのではないでしょうか。

その姿はまるで地面を這うナメクジです。食材としてはあまりにも身近で、普段気にもとめないようなもやしを、これほど生々しく描いた作品を見たのは初めてでした。

10月13日まで開催されています。

「小林史子、横山奈美:扉を開けたり閉めたり」 TALION GALLERY@TALION_GALLERY
会期:9月15日(土)~10月13日(土)
休廊:日、月、祝日。
時間:11:00~19:00
住所:台東区谷中3-23-9
交通:JR線、東京メトロ千代田線西日暮里駅より徒歩4分。
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「田中武 ー隠/暗ー展」 日本橋高島屋美術画廊X

日本橋高島屋美術画廊X
「田中武 ー隠/暗ー展」
9/19-10/8



日本橋高島屋美術画廊Xで開催中の田中武個展、「ー隠/暗ー」へ行ってきました。

不純であろうがなかろうが、人が必ず持っている欲望。

時に向き合うことすら避けて、あたかもないものとして隠そうとしながも、やはり心の中には終始ふつふつと沸き起こっている、そんな言い方も出来るかもしれません。

1982年生まれの画家、田中武は、そうした邪な欲望や恥を、日本画の伝統に則りながら、それでいてどこかシュールなイメージで描き起こしています。

まず目に飛び込んで来るのは、「十六恥漢図」シリーズの5点、言うまでもなく十六羅漢図になぞらえた作品ですが、そこには悟りではなく、女性の姿を借りた人間の煩悩が表されています。


「初紅 十六恥漢図シリーズ」(2012)

ともかくまず驚かされるのは、その精緻な描写による女性のリアルな表情ですが、細部に目を凝らすと、例えばスカートから茸が生えていたりするなど、奇妙な姿をとっていることが分かるのではないでしょうか。

また重要なのはモザイクのモチーフです。時に性的で、はしたないとも受け取れる行為は、まさに他者に接している時には決して見せられないようなものばかり。

その前に立つと、今度はこちら側の方がむしろ恥ずかしくなってしまう、言わば見てはならないものを見てしまったような印象すら与えられます。


「霞 十六恥漢図シリーズ」(2012)

さらにいずれの女性も手には印の結びがあり、時にはその結びのまま顔のパックを取っているという様子も。

身近な例を挙げれるとすれば、電車内で化粧をしている女性を前にすると、目のやり場に困ることがありますが、そうした感覚に近いものもあるのではないでしょうか。

恥を感じつつ、何かつい見てしまうような世界。立ち去りたいような居心地の悪さと、その一方でモザイクの向こうを想像して覗きたくなる気持ちの同居する、実に奇異な感覚を覚えました。

さて突如、会場内に現れた「煩悩襖」を開けると一転、今度は細かく白い石の敷き詰められた暗がりの空間が待ち構えています。

その向こうで聳えるのが、縦横おおそよ横2メートルにも及ぶ大作、「Return of a desire」(2012)です。


「Return of a desire」(2012年)

前景には写真のネガに写り込んだような青白い人物が大きく表され、そのたもとには葉ならぬおみくじを付けた大きな木が、さらに彼方にはゴジラによって炎上する国会議事堂が描かれています。

この国会議事堂こそ、権力という、ある意味での欲望の頂点に君臨するものに他なりませんが、それを第五福竜丸事件、つまりは放射能汚染にも由来するゴジラが破壊する様は、まさに震災後の日本の状況とも重なり合うのではないでしょうか。

またここで興味深いのは前景の人々です。

いずれも事件に関与することなく、そまた有効な手立てを打つこともなく、おみくじにすがりながら、傍観者に成り切っています。

果たして今、我々はこの傍観者であって良いのか、そうしたことも問いただしているのではないのかと思いました。

さて動物をモチーフにした何点かの迫力ある作品も忘れられません。


「何も見えていない」(2012年)

その一つが白内障の馬を描いたという「何も見えていない」(2012)ですが、白眼を剥いてこちらを見やる姿には思わず後ずさりしてしまいます。

また血管の浮き出た身体の表面の細かな描きこみも目を見張るばかり。

元々、田中は応挙に魅せられ、そこから若冲などの江戸絵画、また源流となる宋元期の中国絵画を経由して、このような表現に至ったそうですが、それを裏打ちする高い画力もまた注目すべきポイントだと言えそうです。


「香鳥図」(2011年)

先の「十六恥漢図」は狩野派の粉本から、また「Return of a desire」は釈迦をモチーフにした下村観山の「闍維」を下敷きにしています。

伝統的な日本画表現の中へ現代にも渦巻く欲望を介在させた絵画世界、非常に錯綜していますが、久しぶりにただならぬものを感じました。

途中の襖の存在など、建築家、佐野文彦に依頼したという空間自体も見るべきものがあります。

会期中にトークイベントも行われます。

「ギャラリートーク」
野地耕一郎(練馬区立美術館主任学芸員)×田中武 9/23(日)15:00~
小金沢智(世田谷美術館学芸員)×佐竹龍蔵(美術家)×田中武 9/30(日)15:00~


田中の東京初個展、お見逃しなきようおすすめします。10月8日までの開催です。

「田中武 ー隠/暗ー展」 日本橋高島屋美術画廊X(アッと@ART
会期:9月19日(水)~10月8日(月・祝)
休廊:会期中無休。
時間:10:00~20:00
住所:中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋6階
交通:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩5分。JR東京駅八重洲北口から徒歩5分。
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「川村清雄展・ブロガー特別鑑賞会」を開催します!

もう間もなく江戸東京博物館で始まる「維新の洋画家 川村清雄」展。



いわゆる「幻の洋画家」ということもあり、知名度こそ高くはありませんが、最近では日本の洋画界を切り開いた人物としても大いに注目されているところ。


川村清雄「静物写生」明治8年(1875年) 静岡県立美術館 *10/8-11/4展示

まだ日本人が海外へ行くこともままならぬ明治初期、若き川村は約11年にも渡ってパリやヴェネツィアで西洋画を学んだという筋金入りの洋画研究家でもあります。

そのような川村清雄の回顧展の内覧会に、関係各位のご好意を得て、このブログをご覧いただいている方100名をご招待することになりました!(「青い日記帳」さんとの共同企画です!)

【川村清雄展 記念式典・特別鑑賞会・レセプション特別ご招待&図録プレゼント】
日時:2012年10月9日(火)16:00~18:00(受付開始15:30より)
会場:江戸東京博物館(東京都墨田区横網1-4-1)
タイムスケジュール:15:30~    受付開始
          16:00~16:30 記念式典・竹内誠館長ご挨拶(1階ホール)
          16:30~18:00 特別鑑賞会(1階展示室)
          16:45~18:00 レセプション(1階会議室)
定員:先着100名
記念品:本展図録(当日来場者に限り、招待状と引き換え。)
参加資格:ブログ、Facebookのアカウントをお持ちの方で展覧会を自身のブログで紹介出来る方。(Facebookの場合は公開記事として掲載が可能な方。)

日時はオープン翌日の10月9日(火)の夕方16時から。ホールでの記念式典の他、1時間半ほどの鑑賞会、さらにはレセプションにご参加いただける上、図録までプレゼントされるという盛りだくさんな内容。

対象は川村清雄展の記事を書いて下さるブロガーさんですが、今回は公開記事で掲載可能な場合、Facebookアカウントでも参加出来ます!


川村清雄「江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)」明治18年(1885年) 江戸東京博物館

申込方法は以下の通り。お名前、ご住所、ブログタイトルとURL、Facebookアカウントを記載の上、下記リンク先のフォームからお申込みください。

「『維新の洋画家 川村清雄』鑑賞会 ご招待&図録プレゼント企画」申込フォーム

締切は10月4日(木)の午前9時まで。先着順での受付です!

それにしてもこの川村清雄、既にアップされた展覧会の概要を一読するだけでもただならぬ画家ではないかと。

例の10年超に及ぶ洋行しかり、勝海舟との交流、それに聖徳記念絵画館設立に際しての壁画制作の栄誉を受けたエピソードなどはもちろん、作品も江戸趣味的なものからコロー風など、実に幅広い画風を持ち得ています。


川村清雄「建国」昭和4年(1929年) オルセー美術館
RMN (Musee d'Orsay) / Jean Schormans / distributed by AMF


また興味深いのが、晩年の代表作であるオルセー所蔵の「建国」が日本初公開であるということです。何でもパリの美術館のために川村が日本建国神話に着想を得て描いた作品なのだとか。


ジャンバッティスタ・ティエポロ「聖ガエタヌスに現れる聖家族」1735-36年 ヴェネツィア、アッカデミア美術館
Giambattista Tiepolo, "Apparizione della Sacra Famiglia a San Gaetano",Venezia, Gallerie dell'Accademia,


また川村が敬愛したティエポロの「聖ガエタヌスに現れる聖家族」も江戸博会場限定でヴェネツィアからやって来ます。

まさに過去最大規模、日本洋画界の先駆者である川村清雄の画業を100点超の作品で辿る展覧会、ここは大いに楽しめそうです。

「福沢諭吉を描いた絵師―川村清雄伝/Keio UP選書」

それでは改めて特別鑑賞会&図録プレゼント企画「申込フォーム」、申し込みお待ちしております。先着100名です!

「維新の洋画家 川村清雄」 江戸東京博物館
会期:10月8日(月・祝)~12月2日(日)
休館:月曜日。但し10月8日は開館、翌10月9日は休館。
時間:9:30~17:30  *毎週土曜日は19:30まで。 
料金:一般1300(1040)円、大学・専門学校生1040(830)円、小・中・高校生・65歳以上650(520)円
 *( )内は20名以上の団体料金。常設展との共通券あり。
場所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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「ロシア音楽でたどるレーピン展」 Bunkamuraザ・ミュージアム

Bunkamuraザ・ミュージアム
「ロシア音楽でたどるレーピン展」
9月23日(日) 19:30~



Bunkamuraザ・ミュージアムでの「ロシア音楽でたどるレーピン展」に参加してきました。

あえて「魂の肖像画家」と申し上げたい、迫力ある肖像画を数多く残したロシアの画家、イリヤ・レーピン(1844~1930)。


「レーピン展」展示室風景

そのレーピンの画業を辿る展覧会が今、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中ですが、彼の生きた19世紀末から20世紀前半のロシアは、音楽においても錚々たる作曲家を輩出した黄金時代であったことをご存知でしょうか。

この「ロシア音楽でたどるレーピン展」は、まさにレーピンと同時代の音楽を生の弦楽四重奏で楽しめるというイベント。

出演は主にN響の他、ソリストでもご活躍中の4名の演奏家。

斎藤真知亜(ヴァイオリン)
森田昌弘(ヴァイオリン)
村松龍(ヴィオラ)
村井将(チェロ)


レーピンも肖像を描いたムソルグスキーの「展覧会の絵」(プロムナード)をオープニングに、以下のプログラムが演奏されました。

ボロディン「スペイン風セレナード」
ボロディン「弦楽四重奏曲第2番より夜想曲」
チャイコフスキー「弦楽四重奏曲第1番よりアンダンテ・カンタービレ」
ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏のための2つの小品よりエレジー」
ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第2番第4楽章」


さて絵画を前にしての息のあった演奏はもちろんのこと、もう一つ充実していたのがヴァイオリンの斎藤さんのトーク。

ご自身のロシアでの体験を交え、ロシア音楽とは何かといった内容などについてを分かりやすく語って下さいました。


「レーピン展」展示室風景(ちょうどこのスペースでコンサートが行われました。)

その中で印象深かったのが、冬はすこぶる寒く、雪に閉ざされたロシアにおいて、南方、つまり暖かい地方に対する憧憬もあるのではないかということ。それは今回のプログラムのチャイコフスキーの音楽から感じられるとのお話でした。

またロシア音楽にはある意味での二面性、つまり土着的でかつ誰もが共感し得るような民謡の要素と、もう一つ、全体主義体制下におけるどこか抑圧された苦悩のようなものが平行してあるのではないかという鋭いご指摘も。

そしてその二面性こそが、ショスタコーヴィチの音楽に顕著ではないでしょうか。

どちらかと言うと彼の活躍した時代はレーピンより後ですが、例えば演奏された比較的初期の「弦楽四重奏曲第2番」における明と暗、また美しい旋律の中に潜む暗鬱で重々しい表情には、確かにそうした面があるのかもしれません。


左:イリヤ・レーピン「作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像」1881年 国立トレチャコフ美術館

さてレーピン展もいよいよ佳境。会期も10月8日までと残り2週間ほどです。

「レーピン展」 Bunkamura ザ・ミュージアム(拙ブログ・プレビュー記事)

幸いにして鑑賞環境は抜群、土日でもゆったりと見ることが出来ます。

ザ・ミュージアム「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」館内紹介


ロシアの雄大な自然とドラマテックな人間模様を描いたレーピンの一大回顧展、是非ともお見逃しなきようおすすめします。

「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:8月4日(火)~10月8日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。
料金:一般1400(1200)円、大学・高校生1000(800)円、中学・小学生700(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「棚田康司 たちのぼる。展」 練馬区立美術館

練馬区立美術館
「棚田康司 たちのぼる。展」
9/16-11/25



練馬区立美術館で開催中の「棚田康司 たちのぼる。展」の特別鑑賞会に参加してきました。

ミヅマアートギャラリーの個展の他、スパイラルでの「○と一(らせんとえんてい)」など、このところ意欲的に展示を続けている彫刻家、棚田康司。

人間、特に最近ではどこか中性的な子どもを象った木彫、またその潤んだ瞳などに心つかまされる方も多いかもしれません。


手前:「生える少年」2011年 樟材の一木造りに彩色

そうした棚田康司の東京では初めてとなる大規模な個展です。

出品は旧作から最新作の木彫の他、スケッチなども多数。棚田の制作の今と昔、言わば全貌を知ることの出来る展示となっていました。

さてエントランスからして意表を突かれた方も多いのではないでしょうか。

天井から吊るされたロープに絡まり、すらっとした身体をあたかも無重力空間において靡かせているような作品こそが、今回のタイトルにもなった「たちのぼる 少年の場合」。


「たちのぼる 少年の場合」2012年 樟材の一木造りに彩色、晒、絹糸

まさに煙のようにたちのぼる、その子どもから大人へとなっていくイメージを表したそうですが、単に上へ向かっているのではなく、あくまでも反対になっている点も興味深いポイントです。

上昇と下降、その動きを思考や人生とも重ね合わせたという本作からは、棚田の子どもへの視点はもとより、制作全般に対するデリケートな意識を感じてなりませんでした。

さて展覧会全体が一つのインスタレーションとして完成している点も重要です。

例えば明と暗、ようは明るく白い空間と、暗くまた黒い空間を作り、そこへ様々な彫刻を緊張感をもって配置しています。


左:「現れた少年」2011年 樟材の一木造りに彩色、絹糸

この作品同士の関係、言ってしまえば「場所性」や「共鳴」も大きなキーワードです。


右:「少年」2006年 樟材の一木造りに彩色、毛糸

強い意思を放つかのように上目遣いで彼方を見やり、また時に物憂げに、さらには無邪気に面持ちで視線を多方に向ける子どもたち。

そうした視線はまさに見えない糸のように作品同士を繋ぎあわせていますが、さらにそこへ我々の視線が加わることで、作品と鑑賞者の見る見られる関係が曖昧、ようはより対等で近しい関係に変化してはいないでしょうか。


右:「父を待つ少年」2004年 樟材の一木造りに彩色

こうした作品との近い距離感、全体の一体感こそ、この展覧会の大きな魅力でした。

また一体と言えば、作品と素材の木との関係も重要なところ。「たかおかみ」と「くらおかみ」では巨木がそのまま作品と合わせ重なり、木の圧倒的な物質感と正気溢れる作品の存在感が互いにぶつかって昇華しています。


手前:「ナギ」、「ナミ」2011年 樟材の一木造りに彩色
奥:「たかおかみ」、「くらおかみ」2012年 樟材の一木造りに彩色


また最近の救済を思わせるイメージの作品とは一転、初期の言わば荒削りで時に激しく暴力的な彫刻があるのも見入るポイントです。


右手前:「Go Go」2000年 木

終始、一木造りに拘って木へ魂を吹き込み、人間と向き合ってきた棚田の表現の変遷も伺わせる展示となっていました。

なお本展にあわせて作品集も刊行されました。図版に付けられた棚田のテキストが簡潔ながらも心に響きます。こちらも是非お手にとってご覧ください。

「棚田康司作品集 たちのぼる。/青幻舎」

会期中、棚田さんのトーク他、ワークショップも開催されます。

「アーティスト・トーク」:棚田氏によるギャラリー・トーク
日時:9月22日(土)、10月27日(土) 午後3時から1時間程度。申込不要。
*10月27日はミヅマアートギャラリーのディレクター三潴末雄氏との対談。
            
「ワークショップ」:棚田氏と一緒に木彫に挑戦!
日時:10月20日(土)、10月21日(日) 午前10時30分から午後4時
料金:1500円(材料費)
対象:2日間とも参加可能な小学5年生~大人
定員:15名。
申込:往復ハガキで10月5日(金曜)必着。もしくは美術館へEメールにて。


特別内覧時に挨拶される棚田さん。右は若林館長。

11月25日までの開催です。おすすめします。

「棚田康司 たちのぼる。展」 練馬区立美術館
会期:9月16日(日)~11月25日(日)
休館:月曜日 *但し9月17日、10月8日は開館、翌日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:大人500円、大・高校生・64~74歳300円、中学生以下・75歳以上無料。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。

注)写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展、ブログ告知キャンペーン!

10月6日よりパナソニック汐留ミュージアムで始まる「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展。



ルオーが終生テーマとした「サーカス」をキーワードに、国内外のルオー作品が一堂に集結。またルオー財団の全面協力により、本邦初公開作品がやって来るのも大いに注目すべきところかもしれません。

そうした「ルオー アイ・ラブ・サーカス」展、プログ対象の事前告知キャンペーンが始まりました。

参加方法は至って簡単。まずは下記の申込サイトへアクセスし、必要事項を入力した上、チラシ画像を取得。あとはその画像と「紹介していただきたい内容」を踏まえて、展覧会の告知をブログにアップするだけ。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス PR企画 お申込フォーム」@ウィンダム

すると抽選で100名に本展の招待券がペアでプレゼント。

*追加募集が始まりました!さらに先着20名にペアでプレゼントされます!

さて告知記事というと「どうすれば?」と難しく考えてしまうかもしれませんが、そこは「紹介していただきたい内容」さえ記載すればあくまでも自由。

【紹介していただきたい内容】 ◯印(青字)、及びチラシ画像は必須項目
◯展覧会名:「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」展
◯開会期日:2012年10月6日(土)~2012年12月16日(日)

開館時間:午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日:毎週水曜日
入館料一般:800円 大学生:600円 中・高校生:200円 小学生以下無料
 *65歳以上の方で年齢のわかるもの提示:700円、20名以上の団体は各100円引(65歳以上は除く)
 *障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名までは無料
◯会場:パナソニック汐留ミュージアム
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
◯公式サイト:http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/121006/

公式サイトには既に展覧会の詳細な構成もアップされているだけに、そちらを見ながら「こんな作品が来る!」や「この作品が見たい!」から、「ルオーが好き!」というのでもOK。

またアートブログに限らず、ジャンルは一切問いません。初めてルオーを見るという方でももちろん大丈夫です。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス 展覧会見どころ」@パナソニック汐留ミュージアム

ちなみに私がルオーを初めてまとまった見たのは、今から遡ること7~8年前の都現美での「出光コレクションによる ルオー展」のこと。



あの濃厚な画肌の質感にそれはもう圧倒されて以来、いつ何処でルオーを見ても、常に立ち止まってしまうほどの存在感。



またルオーと言えばやはりここ汐留のパナソニックミュージアム。ルオーと音楽の関係をボードレールを交えてひも解いた「ルオーと音楽」展などは強く印象に残りました。

そうした同ミュージアムが満を持して行う今回の「ルオー アイ・ラブ・サーカス」展、色に光に煌めくルオーの作品と久々にじっくり向き合えそうです。

「ルオー/新潮美術文庫/新潮社」

なおキャンペーン対象はブログのみです。TwitterやFacebookなどのSNS、ミニブログは対象となりません。ご注意下さい。

掲載締切は10月8日(月)。(9月30日から延長されました!)それではブログに告知記事を書いて招待券をいただきましょう!
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「ポール・デルヴォー展」 府中市美術館

府中市美術館
「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」
9/12-11/11



府中市美術館へ開催中の「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」へ行って来ました。

いつぞや埼玉県立近代美術館所蔵の「森」を見て以来、虜となった画家ポール・デルヴォー(1897-1994)。

作品を断片的に見る機会こそあれども、その画業の全てを網羅する形での展覧会はこれまで見たことがありませんでした。


「ローの婦人」(1969年) ポール・デルヴォー財団

まさにファン待望、国内では10年ぶりとなる本格的なデルヴォー回顧展です。

しかも日本では殆ど紹介されなかった初期作も充実。ベルギーのデルヴォー財団より出品された油絵、素描など約80点にて、その業績を時間軸で辿っていました。

さて先に「初期作も充実」と書きましたが、初めに展示されたいくつかの作品、キャプションがなければ、おおよそデルヴォーとは気がつかないかもしれません。

と言うのも、デルヴォーの初期作はまさしく印象派風。

例えば生家近くのワロン地方を描いた「グラン・マラドの水門」(1921)、明るい光の射し込む水辺の風景は、それこそシスレー画を連想させはしないでしょうか。


「森の小径」(1921年) ポール・デルヴォー財団

また縦長の平面に木漏れ日に包まれた木立を表した「森の小径」(1921)はまるでコローです。

もちろん「窓辺の若い娘」(1920)における髪の長いすらっとした女性像などには、後のデルヴォー画の片鱗もありますが、これら印象派風の作品は一般的に知られたデルヴォーとは似ても似つきません。


「森の中の裸体群」(1927~28年) 個人蔵

それに最初期に印象派を摂取したデルヴォーはその後、表現主義からセザンヌ、ピカソらの作風に学んで試行錯誤するという経過も。

例えば「若い娘のトルソ」(1933)はピカソに瓜二つ。こうしたデルヴォーの20~30代の作品を知ることが出来ることも、今回の回顧展の大きな見どころというわけでした。

そうした印象派や表現主義を行き来したデルヴォーが転機を迎えたのは30代も半ば、言うまでもなくシュルレアリスムと出会ってからのことです。


「訪問5」(1944年) ポール・デルヴォー財団

1934年にマグリットやキリコの作品が展示された「ミノトール展」を見たデルヴォーは、画風を大きく変化させていきます。

ここでより顕著となるのが、デルヴォー画に頻出する甘美な女性、言わばヴィーナス的なモチーフ。

デルヴォーは裸婦像でも有名な新古典主義のアングルにも影響を受けたそうですが、より密接な女性、後には生涯の伴侶となるアンヌ=マリー・ド・マルトラールこと『タム』のイメージを絵に取り込んでいきます。

その結実が「行列」(1963)だと言えるかもしれません。


「行列」(1963年) ポール・デルヴォー財団

上半身を露わにした女性たちが昼とも夜とも付かぬ空間を歩いている姿、まさしくこれらの女性こそがタムの写しだと言えるのではないでしょうか。

展覧会ではタムを描いたデッサンなどもいくつか紹介。実のところデルヴォーはタムとの結婚は一度、両親の反対を受けたために叶いませんが、その20年後に偶然再開し、そして生活を共にしたというくらいタムにぞっこん。

ともかくデルヴォー画にはこうしたエロティックな女性も多数登場しますが、それは彼が想っていた人物を投影したものだとは知りませんでした。

さてこうした女性に代表されるデルヴォー画のモチーフ、何も女性だけではありません。もう一つよく目にするのが汽車、これも彼が子どもの時に住んでいた家の窓から見えていたものだそうです。


「チョコレート色のトラム」(1933年) ポール・デルヴォー財団

先に挙げた「行列」など、デルヴォーは油絵の大作にも汽車を描きこんでいますが、「チョコレート色のトラム」(1933)のように汽車の細かなスケッチも残しています。

またさらに挙げておきたいのが、作品における物語的な要素と建築への関心です。

デルヴォーは若い頃から古典文学、特に「オデュッセイア」に夢中となり、それに由来するイメージを後の「エペソスの集い2」(1973)などに結実させました。(ちなみにこの作品、右手の鏡をよくよくご覧になって下さい。とあるものが写り込んでいます。)


「エペソスの集い2」(1973年) ポール・デルヴォー財団

またこの作品にも見られるアルテミス神殿の的確な描写ですが、それは彼がギリシャやイタリアへの旅行を経験しているだけでなく、もっと根底な部分、そもそもキャリア当初は画家でなく建築の勉強をしていたことにも関係しているのではないでしょうか。

もちろんデルヴォーが建築を勉強したのは両親の勧めであり、必ずしも自身の志した道ではありませんでしたが、タムに代表されるヴィーナス的な女性像、そして古典文学、また汽車や建築など、デルヴォーが人生において求め、経験したイメージが、彼の絵画にいくつも取り込まれているというわけでした。

展覧会のラストはベルギー国外では初めて展示された晩年、デルヴォーが89歳の時に描いた「カリュプソー」(1986)。


「カリュプソー」(1986年) ポール・デルヴォー財団

これこそ彼が人生において最後に完成させた油絵に他なりませんが、カリュプソーこそオデュッセイアにおいて主人公を誘惑する女神の役割。やはりここでもおそらくはタムの姿を見ていたのに違いありません。

画家の人生と夢の旅を縦軸で追いながら、そこに現れる様々なモチーフを横軸で切り取るデルヴォー回顧展。実に見応えがありました。

本展担当の音ゆみ子学芸員のスライドレクチャーの様子をまとめてあります。

「デルヴォー展スライドレクチャー」 府中市美術館(拙ブログ)

また会期中、関連の講演会も予定されています。

[デルヴォー展 展覧会講座]

「デルヴォー前夜 ベルギー象徴主義絵画」
日時:10月21日(日)
講師:井出洋一郎(府中市美術館館長)

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」
日時:11月4日(日曜日)
講師:音ゆみ子(府中市美術館学芸員)


ちなみに今回デルヴォー展の出品作80点のうち50点は日本初公開。印象派風の初期作はもちろん、フレスコ壁画や晩年の作品など、知られざるデルヴォーも満喫出来ました。

「ポール・デルヴォー/シュルレアリスムと画家叢書/河出書房新社」

11月11日までの開催です。もちろんおすすめします。

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 府中市美術館
会期:9月12日(水)~11月11日(日)
休館:月曜日(但し9月17日、10月8日を除く。)、9月18日(火)、10月9日(火)。
時間:11:00~17:00
料金:一般900(720)円、高校生・大学生450(360)円、小学生・中学生200(160)円。
 *( )内は20人以上の団体料金。
住所:府中市浅間町1-3
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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iPhoneアプリ「MAU M&L 博物図譜」がリリース!

美術・デザイン関連をはじめ、民族学、また映像など幅広い資料を収蔵する武蔵野美術大学美術館・図書館。



その所蔵する多くの博物図譜や貴重書などを、iPad、もしくはiPhoneでも楽しめることをご存知でしょうか。

それが今回iPhoneにも対応した「MAU M&L 博物図譜」

操作は簡単。アプリをダウンロードした後、タイトル、カテゴリ、年代の順に分けられたメニューをタッチするだけ。



すると17世紀から19世紀の様々な貴重書が表紙はおろか、中の図版、さらにはテキストまで、実に精密な画像にて閲覧することが出来ます。



もちろんそのいずれもが拡大可能です。先に「精密」と紹介しましたが、率直なところ、これほど細部の細部までがくっきりと鮮明に見えるとは思いません。この画質は殆ど驚異とすら言えるのではないでしょうか。



また同大学の客員教授で、メディアの各方面でも活躍中の荒俣宏氏旧蔵の貴重な植物図譜も数多く収められています。



それにアプリと連動し荒俣氏の解説動画もyoutubeで閲覧可能。こちらはホーム画面から左にスライドすることで表示されます。



また博物図譜とあるように、ジャンルも植物図譜から解剖集、それに航海記など多種多様です。今後コンテンツはさらに追加されるとのことで、そちらもまた注目ではないでしょうか。



なお嬉しいことにこのアプリは無料です。また閲覧時は言うまでもなく超・高解像度画像を取得します。アプリのダウンロードや閲覧の際は、3G回線ではやや厳しい印象も。なるべくWi-fi回線を利用した方がストレスなく楽しめそうです。

ちなみに本アプリとも関連し、武蔵野美術大学美術館では現在、「博物図譜とデジタルアーカイブ 5」展を開催中です。



「博物図譜とデジタルアーカイブ 5」 武蔵野美術大学美術館
会期:9月3日(月)~10月6日(土)
休館:日曜日、祝日。但し9月17日(月・祝)は特別開館
時間:10:00~18:00(土曜日、特別開館日は17時にて閉館)
料金:無料
住所:小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅から徒歩約20分。JR線国分寺駅北口徒歩3分「国分寺駅北入口」バス停より「武蔵野美術大学」または「小平営業所」行に乗車、「武蔵野美術大学」下車(バス所要時間: 約20分)

こちらは荒俣氏旧蔵の植物図譜と博物学の貴重本をデジタルアーカイブを交えて紹介する展示だとか。何とか伺いたいと思います。



ポケットのiPhoneに美しい植物図譜をおさめることの出来る「MAU M&L 博物図譜」アプリ、まずは是非ともダウンロードしてみて下さい!

「MAU M&L 博物図譜」
動作環境:iPhone、iPod touchおよびiPad iOS 4以上
利用料金:無料
カテゴリ:教育
販売元:Musashino Art University
入手方法:App Storeからダウンロード
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「デルヴォー展スライドレクチャー」 府中市美術館

いよいよ府中市美術館へと巡回してきたポール・デルヴォー展。



早速、私も出向いてきましたが、デルヴォー好きの私にとってはまさに夢見心地の世界で終始うっとりと。

もちろんそれだけではなく珍しい初期作やモチーフ毎の展開比較など、見応えのある内容となっていました。

さて感想はまた後日に挙げるとして、このエントリでは取り急ぎスライドレクチャーの様子を。

講師は本展ご担当の学芸員、音ゆみこ氏。正味20分ほどでしたが、展覧会の準拠しつつ、デルヴォーの芸術について触れていく密度の濃い内容でした。



はじめは展覧会の概要から。日本人にも人気のデルヴォー、作品を見る機会は決して少なくない画家ですが、国内での本格的な回顧展としては約10年ぶりだとか。そして章立てについての紹介があり、いくつかの作品をスライドに写しながら、デルヴォーについての解説が行われました。



さてまず面白いのが、比較的紹介されることのない画業初期の作品も展示されていること。ベルギーの典型的なブルジョワ一家に生まれたデルヴォーは画家を志しながらも両親の反対にあい、一度は建築家を目指します。

しかしながらそこでは数学の点数が足りずに挫折。ところが偶然知り合った王室の画家がデルヴォーの水彩画を激賞。ひょんなことから画家の道が切り開かれることになりました。



当初のデルヴォーはまさしく印象派風。目に見える通りの景色を有り体に描きます。

ところが30代になると一変、いわゆる『模索の時代』に突入し、表現主義からセザンヌにピカソと、多様な画家の表現を試行錯誤に取り込んでいきます。



この「若き娘のトルソ」(1925年)などピカソ風。



それに風景画「ボワフォールの風景」(1925年)などはセザンヌにも学んでいます。

またベルギーのペルネークという画家にも強い影響を受け、いわゆる印象派的な表現から脱出することに成功しました。



ちなみにこの時代のデルヴォーは私生活でも挫折。後に将来の伴侶となるタムに出会うも、再び両親の反対のために結婚は叶いません。彼に特徴的な裸婦のモチーフはこの時代から描かれますが、これはタムと母のイメージが複雑に入り交じっているという説もあるとのことでした。

さてそのようなデルヴォーが自身の確固たる道を開いたのがシュルレアリスムとの出会いです。

1934年、37歳の時にデルヴォーはブリュッセルでシュルレアリスムの展覧会を見て、その新奇でかつ強いイメージに衝撃を受けます。(但しシュルレアリスムに影響を受けたとはいえ、背景にある理論や思想には興味を示さなかったそうです。)



その一例が「レースの行列」(1936年)。本展では習作が出ていますが、女性からランプが門に向かってあたかも行進するような光景は、どこか現実にはありえないような夢の世界だと言えるのではないでしょうか。



そして時代は飛びますが、この「行列」(1963年)も同様。数多く登場する女性たちは皆、似通った様子で、表情がよく分かりません。そしてこの女性こそデルヴォーが追い求め、結局は再会して結婚したタム(駆け落ちだったとか!)とのことでしたが、まさに彼女こそデルヴォーの制作の大きな力の源泉になっていたのかもしれません。



さてデルヴォーといえばもう一つは汽車のモチーフ。ギリシャ神話の物語に主題をとった「エペソスの集い」(1973年)にも描かれています。



そしてこの古代神話、特にオデュッセイアの叙事詩と、汽車、とりわけ路面電車こそ、デルヴォーが子どもの頃から好きであったものなのです。

何とデルヴォーが子ども時代に暮らした家の窓から路面電車が見えていたとのこと。

こうした物語的な要素、そして子どもの時から見ていた現実の事物(例えば汽車や建築。)、さらには最愛の女性タムといった多様なイメージを組み合わせ、全体を幻想で包み込んだ世界こそ、デルヴォーが確立した絵画表現であるというわけでした。



ラストにはデルヴォーが89歳の時に描いた「カリュプソー」(1986年)も登場。ちなみにこの作品はベルギーから出たのが今回が初めてです。

デルヴォーの夢の世界、スライドレクチャーでも堪能することが出来ました。

さてスライドレクチャーは会期中、以下の日程で行われます。

「デルヴォー展 20分スライドレクチャー」
日程:9月16日(日)、9月22日(土)、9月30日(日)、10月6日(土)、10月14日(日)、10月20日(土)、10月28日(日)、11月3日(土)、11月11日(日)
時間:午後2時と3時の2回(内容は同一。)
会場:講座室
費用:無料


なお一度、会場内へ入ってしまった後も、受付の方に申し出れば途中で退出してレクチャーを聞くことが出来ます。

さらに展覧会講座も予定されています。

[デルヴォー展 展覧会講座]

「デルヴォー前夜 ベルギー象徴主義絵画」
日時:10月21日(日)
講師:井出洋一郎(府中市美術館館長)

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」
日時:11月4日(日曜日)
講師:音ゆみ子(府中市美術館学芸員)


ともにいずれも午後2時から講座室にて、予約不要で無料です。館長と音学芸員の二本立て。象徴派からデルヴォーへの流れをチェック出来るまたとない機会になるのではないでしょうか。私も是非伺いたいと思います。

それではデルヴォー展についてはまた別エントリでまとめたいと思います。

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 府中市美術館
会期:9月12日(水)~11月11日(日)
休館:月曜日(但し9月17日、10月8日を除く。)、9月18日(火)、10月9日(火)。
時間:11:00~17:00
料金:一般900(720)円、高校生・大学生450(360)円、小学生・中学生200(160)円。
 *( )内は20人以上の団体料金。
住所:府中市浅間町1-3
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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「ミューぽん」動員25000名突破!

「Tokyo Art Beat」の美術館割引アプリ「ミューぽん」。



現在、期間限定で全国へも展開中。というわけでさらに活躍の場が増えている美術ファン必携のアプリですが、この度、動員件数が25000名を突破しました。

美術館の割引アプリ「ミューぽん」動員25,000人を突破!@「Tokyo Art Beat

まずはおめでとうございます!

ちなみにこの動員件数、単純なアプリのダウンロード数ではなく、実際にアプリを用いて美術館へ出向いた入場者数を指すのだそうです。



そして25000名突破記念としてアプリの割引セールも実施中。

[特別記念セール]
日程:9/15(土)~9/17(月)
価格:特別割引価格185円


期間はこの三連休の3日間のみ。まだまだ暑いながらもそろそろ秋の行楽シーズンだけに、またアプリで各地の美術館へご旅行という方も多いのではないでしょうか。

ちなみに私な残念ながら諸事情あり完全な3連休とはならず。都内の美術館をいくつか廻ることになりそうです。

さてその「ミューぽん」からあえて挙げたい展示を1つ。

それは日本民藝館での「琉球の紅型」展に他なりません。



紅型と言えば実はつい先だってサントリー美術館でも展覧会が行われたばかり。もちろんその時も同美術館の見事なライティングに映える紅型に魅了されたわけですが、きっと趣きある民藝館の空間で見る紅型も素晴らしいはず。

館蔵135点のうち70点余、しかも日頃あまり公開されない作品も出るとか。大いに期待出来るのではないでしょうか。

また当然ながら「ミューぽん」は随時更新中です。この三連休に始まった練馬区立美術館の棚田康司展も割引対象になりました。



それでは改めて17日(月)までの「ミューぽん」動員25000名達成記念セール、まずは是非ともチェックしてみてください!

「ミューぽん 美術館割引クーポン 2012年版」(@mupon_app
対応機種、動作環境:iPhone、iPod touchおよびiPad iOS 3.1.3以上
利用料金:変動有り、App Storeにて要確認。
有効期限:2012年末まで
カテゴリ:ライフスタイル
入手方法:App Store http://itunes.apple.com/jp/app/mupon/id483088671?mt=8
公式URL:Tokyo Art Beat http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon
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「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」
8/18~9/15



ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」へ行ってきました。

αMのホワイトキューブに映える光の溜まったモノトーンの木立。

仄かな濃淡と変化、そして滲みやかすれ、さらには書の留めや跳ねのような筆致を巧みに生かして絵画を展開しているのが浅見貴子です。

言うまでもなく素材は和紙や墨、そして胡粉などの日本画のもの。群れて散らばる斑紋や自在な線は、あたかもポロックのドロッピングのような動きすら獲得してはいないでしょうか。


左:「柿の木2012」2012年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル
右:「景 muison-so」2010年 墨、胡粉、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル


また画面いっぱいに広がる木と枝葉、その姿を見ていると、先に練馬区美で回顧展のあった船田玉樹の「花の夕」を思い起こします。モチーフはあくまでも樹木に他なりませんが、生み出されたイメージは半抽象とも言えるかもしれません。

さて浅見の絵画、今触れたように、一目見ただけでも、その美しさに惹かれますが、実は技法そのものにも重要な要素があるのを見逃してはなりません。

と言うのも、その斑点や線、よくよく目を凝らして見て下さい。色なり線がかなり複層的に合わさっているにも関わらず、何故か絵具の層が浮き上がっていない、つまりフラットな平面が広がっていることが分かるのではないでしょうか。

実は浅見はかねてより制作に際して画面の裏から筆を重ねているのです。つまり表に現れた絵具はあくまでも裏から筆を置いた故の滲みであるわけです。


「梅1101」(一部)2011年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル

ここに浅見の絵画の特異性が見て取れます。ようは通常、絵画において絵具とは、塗りに際して一番最後の層が残っているわけですが、裏から押し込めることで、一番初めの層、言わばフレッシュな絵具のみが現れるように仕立て上げているのです。

だからこそ一見、表で交錯しているように思える墨線、また胡粉の膜も、たとえどれほど複雑になろうとも決して重々しくなりません。

絵具を盛って質感を追求することとは日本画のみならず、絵画表現の一つの伝統とも言えるかもしれませんが、それをあえて排して獲得した新たなイメージ、驚くほどに魅力的でした。

なお一際目立つ最奥部の「双松図」、同じ松を右から左、朝と夕の異なった時間で描いた作品ですが、通常は下の写真にあるような形で展示されています。


「双松図」2012年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル

実はこれ、本来的には交互に折重なる屏風仕立てで展示する予定だったものの、スペースの都合からそれが叶わなかったのだそうです。

とは言え、浅見さんご自身はこの形も気に入っておられるそうですが、会期最終日、9月15日の15時からは特別に屏風仕立てでも展示されます。そちらもまた面白いのではないでしょうか。

「浅見の筆遣いは、時に雄潭と言ってよいほど力強く鮮烈だが、墨色を通じて立ち現われる光に満ちた確固たる空間構造の秩序は失われていない。」 高階秀爾(ARKO 2010 大原美術館)

光を纏い時に風を感じる自在な浅見の自然への眼差し、是非とも感じとって見てください。



9月15日まで開催されています。ご紹介がおくれましたが、おすすめします。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM(@gallery_alpham
会期:8月18日(土)~9月15日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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ドビュッシー展が「日曜美術館」のアートシーンで紹介されます!

ブリヂストン美術館で開催中の「ドビュッシー、音楽と美術展」。



これまで意外なことにも美術番組の雄、Eテレ「日曜美術館」で紹介されたことは一度もありませんでした。

それがようやく次の日曜、9月16日の本放送と再放送で紹介されます。

番組名:Eテレ「日曜美術館/アートシーン」
放映日:9月16日(日)朝9:45~10:00(本放送) 夜8:45~9:00(再放送)


放送は本編ではなくアートシーン、ようは番組の最後に全国各地の様々な美術展を紹介するミニコーナーです。


ドビュッシー展会場内風景

時間などの制約もあり、この膨大な内容のドビュッシー展のごく一部分が取り上げられることになりそうですが、それでも美術館のお知らせによれば「沢山の作品と学芸員のコメントを撮影しました。」とのこと。

「NHK日曜美術館のアートシーンで紹介されます!」@ブリヂストン美術館ブログ

実際に美術館ブログには撮影シーンとしてご担当された学芸の方、言うまでもなく先日のドビュッシーナイトにもご出演いただいた新畑学芸課長のお姿も見られます。

これはもう新畑さんの展覧会にかける熱いトークをお聞き出来ること間違いありません。ここは期待しましょう!

さてそのようなドビュッシー展、ここで私のオススメの作品を。

それがウィンスロー・ホーマーの「夏の夜」(1890年)、オルセーからやって来た一枚です。


右:ウィンスロー・ホーマーの「夏の夜」(1890年) オルセー美術館

ホーマーと言えば去年の国立新美術館の「モダンアート、アメリカン」にも出品のあったアメリカのロマン主義の画家。

制作年の1890年を年譜とあわせるとドビュッシーは28歳。ちょうど「ベルガマスク組曲」の作曲を始めた頃。また後に10年ほど付き合い続け、破局時には自殺未遂騒動を起こした通称ギャビーと出会った頃でもあります。

「ドビュッシー : 月の光、亜麻色の髪の乙女」

暗がりの岩場を背に踊るカップルの姿はドラマチック。また背景の大海原を照らす月明かりはどこか神々しいまでに瞬いています。そう言えば「ベルガマスク組曲」にも「月の光」という超名曲が含まれていました。


ドビュッシー展会場内風景

それはともかくこの景色からはドビュッシーの如何なる音楽が響いてくるでしょうか。その幻想的までの美しさに心打たれました。

それでは9月16日(日)のアートシーンをお見逃しなきようご注意下さい。

「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」 ブリヂストン美術館
会期:7月14日(土)~10月14日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般1500円、シニア(65歳以上)1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *団体(15名以上)は各200円引き。
住所:中央区京橋1-10-1
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

注)ドビュッシー展会場写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「美術館で旅行!」(後期展示) 山種美術館

山種美術館
「美術館で旅行!~東海道からパリまで~」(後期展示)
8/28~9/23(後期) *前期:7/28~8/26



山種美術館で開催中の「美術館で旅行!~東海道からパリまで」の後期展示へ行ってきました。

前期ではプレス内覧にお邪魔した「美術館で旅行!展」。

「美術館で旅行!」展 山種美術館(拙ブログ)

その際は近代日本画の充実したコレクションに改めて感心する一方、初摺も多いという広重の「東海道五拾三次」の美しさにも見惚れました。

8月末からの後期展示ではその「東海道五拾三次」ががらっと入れ替わっています。

前期:扉、日本橋・朝之景~掛川・秋葉山遠望
後期:袋井・出茶屋之図~京師・三條大橋


と言うわけで嬉しかったのが、内覧時の山下裕二先生のレクチャーで絶賛推奨の「御油・旅人留女」を拝見出来たこと。


歌川広重(初代)「東海道五拾三次之内 御油・旅人留女」1833-36(天保4-7)年頃 大判錦絵 山種美術館

実はこの御油、現在の愛知県豊川市に位置する宿駅ですが、当時は旅籠の客引きが非常に執拗なことでも有名で、その様子は十辺舎一九の作品にも登場するほどだったそうです。

広重はそうした客引きの様子を得意とする生き生きとした人物描写で描いています。夕景の街道、比較的静かな中を繰り広げられる客引き劇、おそらく客はこのまま旅籠へ引っ張られたに違いありませんが、それこそ押し問答の声までが聞こえてくるようなリアルな姿には思わず見入ってしまいました。

さて後期、その他はほぼ前期と同じですが、それでもいくつかの作品については展示替えや巻替えが行われています。

中でも重要なのが前期でも印象深かった横山大観の「楚水の巻」です。巻替えによって場面が変わっています。


横山大観「楚水の巻」 1910(明治43)年 紙本・墨画 山種美術館 *写真は前期展示部分

前半では揚子江流域の町並みの精緻な描き込みが充実していましたが、後半部分は一転、川へ迫る山々の雄大な姿が大胆に表されています。

また巻中で天気が変化するのも面白いところ。後半部には霧も立ちこめ、幻想的な風景が広がっています。まさに大観ならではの瑞々しい筆致を味わうことができました。

それに同じ展覧会でも時間を経て見るとまた印象が異なるのではないでしょうか。好きな土牛も前期では代表作の「那智」と「鳴門」にぞっこんでしたが、今回は一見するところ目立たない「輪島の夕照」の情緒に惹かれました。


結城素明「巴里風俗」大正14年 山種美術館

なお怒濤の更新が光る山種美術館のフェイスブックでは、何点かの作品の解説が図版とともに掲載されています。

山種美術館 Yamatane Museum of Art フェイスブックページ

また巻替え作業の様子など、普段見ることの出来ない美術館の「裏」を紹介する記事も登場。是非ともご覧になって下さい。



そして次回は注目の「竹内栖鳳と京都画壇の画家たち。」です!

講演会:「教科書に載らない実力派・竹内栖鳳について」
講師:山下裕二氏(明治学院大学教授、山種美術館顧問)
日時:2012年10月13日(土)14:00~15:30
費用:無料。但し要観覧券。
定員:200名。
会場:國學院大學院友会館(山種美術館より徒歩3分。)
*事前予約制。申込要項は同館WEBサイトへ。(期限は10/9)

「美術館で旅行!」は9月23日まで開催されています。

「美術館で旅行!~東海道からパリまで~」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:7月28日(土)~9月23日(日) 前期:7/28-8/26 後期:8/28-9/23
休館:月曜日(但し9/17は開館、翌火曜日は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真は前期の報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「中西夏之展」(DIC川村記念美術館)開催情報

現在、「コレクションViewpoint」を開催中のDIC川村記念美術館ですが、次回は「日本の現代美術においても重要な存在」(同館WEBサイトより転載)である画家、中西夏之(1935~)の個展が行われます。先日、リリースをいただいたので、こちらに情報をまとめてみました。


「擦れ違い/S字型還元」 2012年 油彩、カンヴァス 個人蔵

「中西夏之展」 DIC川村記念美術館
会期:2012年10月13日(土)~2013年1月14日(月・祝)
休館:月曜日(但し12/24、1/14は開館。)、年末年始(12/25~1/1)
時間:9:30~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1200円(1000円)、学生・65歳以上1000円(800円)、小・中・高生500円(400円)。*( )は20名以上の団体料金。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)

中西夏之は1950年代より主に平面をベースに表現活動を行っていますが、展示でもその絵画の変遷に着目し、以下の3つの時期の作品を踏まえながら、時間軸に沿って画業を紹介するものになるそうです。

「韻」シリーズ(1959-60)
「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」(1963/1993)
「擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑」連作(2010-12)



「韻」1959年 ペイント・エナメル・砂、合板 東京都現代美術館

[展覧会概要](プレスリリースより転載)

1959年から60年にかけて制作された《韻》シリーズは、砂を混ぜた塗料による画面をスプレーガンと筆で二重に描かれたT字型が膜面のように覆う作品です。1963年に読売アンデパンダン展に出品され た《洗濯バサミは攪拌行動を主張する》は、キャンバスから出た紙ひもに無数のアルミ製の洗濯バサミがつけられ、それぞれが光をはらんで筆触による頂点を想起させます(出品作は1993年制作)。また最新作《擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑》連作は、相異なる方向へ向かう人が接近しすれ違う、その瞬間に薄膜の平面が認識できないだろうかという考えから絵画の垂直面が問い直されており、紫と白の色班が絵画自体の生成や時間の集積を我々に知覚させます。これらの作品は、制作時期は異なりますが、「光」「時間」「反復」「拡散」といった絵画への問いにおける重要な要素を示しています。 本展では、各々の作品が他の作品と共振する、光あふれる「場」において、新たな時間性による絵画体験を提示いたします。

続いて関連のイベントです。講演会は2本だて、また学芸員によるギャラリートークなども開催されます。

[講演会]
演目:「中西夏之の初期と現在の絵画を中心に―その共通性と特異な絵画志向―」
日時:11月17日(土) 14:00~16:00
講師:谷新氏 (美術評論家/宇都宮美術館館長)

演目:「未定」
日時:12月8日(土) 14:00~16:00
講師:林道郎氏 (美術史家/上智大学教授)

*受付はそれぞれ当日12:00から館内で整理券を配布(先着60名)。入館料のみ。

[学芸員によるギャラリー・トーク]
日時:10月20日(土)、11月3日(土)、1月12 日(土) 14:00~15:00
*本展担当学芸員が展覧会を解説。 予約不要/エントランスホール集合

[ガイドツアー]
日時:講演会、トーク開催日を除く毎日 14:00~15:00
*ガイドスタッフがコレクション展示と展覧会を案内。予約不要/エントランスホール集合

[音声ガイド]
1台500円。 当館収蔵品と展覧会の解説。


「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」1963/93年 カンヴァス、紐、洗濯バサミ 個人蔵

また嬉しいのは近い会期で行われる千葉市美術館の須田悦弘展との連動企画があること。入館料の相互割引の他、毎回重宝する無料シャトルバスも運行されます。

[千葉市美術館「須田悦弘展」(10/30-12/16)との連携]
チケット半券(有料券)を提示すると入場料を割引。
千葉市美術館:一般1000円→700円、大学生700円→490円
DIC川村記念美術館:一般1200円→1000円、学生・65歳以上 1000円→800円

[DIC川村記念美術館~千葉市美術館無料シャトルバス]
運行日:11/3(土)~12/16(日)までの毎週土・日曜日。
時刻表:千葉市美術館発12:00/14:00 → DIC川村記念美術館着、DIC川村記念美術館発13:00/15:00→千葉市美術館着

バスの所要時間が記されていませんが、かつてシャトルバスに乗った経験からすると、おおよそ30~40分で到着するのではないでしょうか。実は両館、電車を利用するとかなり時間がかかりますが、車であれば意外とスムーズ、思われているほど遠くありません。

ファンの多い須田さんの展示にも注目が集まりそうなだけに、この無料バスを利用してさらに川村へ足を伸ばされる方も多そうです。


2009年SCAIでの個展時のDM

私自身、中西の作品は横浜トリエンナーレの他、何年か前のSCAIでの個展など、断片的にしか追っかけられていません。こうした形式での一大個展、ここは大いに期待したいと思います。

なおリリース内容は変更される場合もあります。最新の情報については同館のWEBサイトをご参照下さい。
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