「ウルトラ003」(オクトーバー・サイド) スパイラルガーデン

スパイラルガーデン港区南青山5-6-23
「エマージング・ディレクターズ・アートフェア『ウルトラ』003」オクトーバー・サイド
10/28-30



スパイラルガーデンで開催中の「ウルトラ003」へ行ってきました。

エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA003」@スパイラル(出展者一覧)

いわゆる画廊ベースではなく、ディレクターという個人単位で出品するというアートフェア、「ウルトラ」も第3回を迎えましたが、今回は一段とスケールアップし、前後期の総入れ替え制にて過去最多の60名の出展者が集結しています。早速、簡単に印象に残ったブースをあげてみました。

04. 幕内政治 エックスチャンバーミュージアム(東京)
妖し気な魅力を放つ林原章矩のペインティングと須賀裕介の木彫、そしてお馴染みの山口英紀の水墨の三点が特に充実。山口の水墨は画と書が組み合わされ、幕内氏曰く「彼の本来の制作の姿がこれであるとのこと。」須賀裕介は一見ではとても一木造とはわからない。まるで一枚の木を割ったような姿が実は彫ったものだと知った時には心底驚いた。詳細はエックスチャンバーミュージアムを参照のこと。

05. 癸生川栄 エイトエイコ(東京)
日高進太郎の町並み銅版画シリーズに注目。作家と関連のある相模原の建物や道路が、版画ながらも箱庭をつくるように組み合わされている。何でも外国人の方にも人気なのだそう。携帯をコテコテにデコレートした橋本悠希も楽しかった。



08. 深澤大地 ギャラリーアートコンポジション(東京)
東北芸術工科大学出身の舩木大輔のスカルピー素材のフィギュアが魅力的。体長20センチほどのそれらの形はどことなくシュールだが、過去作はさらに性のモチーフなどを取り入れて尖っていた。他にも見たい。

10. 熱海ゆかり ギャラリー・テラ・トーキョー(東京)
岩崎宏俊のアニメーション作品に釘付け。木炭でブランコが揺れる様を見ているとケントリッジを思い出した。

13. 高原貴子 ギャラリー紅屋(東京)
縄田みのりの人形数体が異彩を放つ。少女のモチーフながらもよく見ると手にはピストルなどの武器を持っていた。細部の意匠はもちろん、髪の毛まで自身で染め上げるという力の入った作品。画像は同画廊サイトにて。

15. みつまゆかり ユカリアート・コンテンポラリー(東京)
何と言っても大畑伸太郎。線香花火をする少女のモチーフの新作が展示されている。花火から広がるオレンジ色のグラデーションは照明効果かと思うほどに巧み。ちなみに大畑は11月18日より同画廊でのグループに出品があるとのこと。これは要チェック。



「素晴らしき哉、人生。by大畑伸太郎、片山大輔、高あみ」@ユカリアート・コンテンポラリー 11/18~12/11

27. 松島英理香 カシ(東京)
カオスラウンジを壁いっぱいに再現。カオスにも関わらず、展示としての統一感はピカイチだった。

なお前期、オクトーバー・サイドは本日で終了しますが、11月1日からは出展者が入れ替わってのノヴェンバー・サイドが始まります。

オクトーバー・サイド:10.28~30
ノヴェンバー・サイド:11.01~03


スパイラルからすぐのびる小道では「青参道」と題したアートフェアも開催中です。画廊だけでなく、一般の店舗に作品が展示されていたりする、とてもカジュアルなイベントです。散策がてら楽しまれては如何でしょうか。目印は青い風船です。

2010年 青参道アートフェア 10/29-11/3

ノヴェンバー・サイドも是非伺いたいと思います。なお今年は入場料が無料でした。
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「ドミニク・ぺロー 都市というランドスケープ」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「ドミニク・ぺロー 都市というランドスケープ」
10/23-12/26



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「ドミニク・ぺロー 都市というランドスケープ」へ行ってきました。

建築家ドミニク・ぺローについては同展公式WEBサイトをご参照下さい。

ドミニク・ペロー Profile

主にヨーロッパ各地で公共建築などを手掛けている他、最近ではつい先日竣工したばかりの大阪富国生命ビルの設計を担当したそうです。梅田駅前ということでご存知の方も多いのではないでしょうか。

さて私が見に行った当日、建築家で、以前DPA(ドミニク・ペロー事務所)に在籍された前田茂樹氏のギャラリートークがありました。以下にその模様をまとめてみます。

ドミニク・ぺローの建築観について

都市と建築の双方に関わりを持つ建築家。
都市に建築がどういう形で向かいあうべきなのかという視点が重要。
アーバンランドスケープ(造園):フランスの庭園は自然であり人工でもある。人工である建築も同じように自然に関わりを持たねばならない。その両者の集合体としてのランドスケープを実現したい。

展示について

ポンピドゥーセンターからの巡回展。会場毎に内容は若干変化しているが、大きなフラットな空間でプロジェクトを見せることは共通している。
展示は主に3つに分かれている。1つ目に実際に完成した建物の風景を提示し、2つ目にそのスタディを、また3つ目に最も初めの段階で用いられるぺロー自身のスケッチを紹介している。スケッチから建物へではなく、その逆の順番になっていることに注意して欲しい。

展示1「PROJECTION」~各建築を映像から考える


テニス・センター、マドリッド 2009

オリンピック・テニス・センター、マドリッド 2009

スポーツ公園の中で昨年実現したプロジェクト。メタルメッシュを外壁に使っている。
まず池をつくって正方形の箱を置き、その屋根を開閉させた。
風景の中へ溶け込むような設計であり、イベントがない時などはそのまま通り抜けられるような建物をイメージした。


梨花女子大学、ソウル 2008

梨花女子大学キャンパス・センター、ソウル 2008

韓国で最も有名な女子大。広大なキャンパスの中核をつくる。
ぺローは始めにセンターを都市の延長であれば良いと考えていた。そのため外の大通りの賑わいを取り入れる工夫がなされている。
元々のくぼ地の地形をそのまま利用して地下空間を大胆に用いた。
地上から空気を取り入れる管を地下に長くのばしている。それによって冬は空気が温められ、また夏は冷されている。


自転車競技場、ベルリン 1999

自転車競技場/オリンピック・プール、ベルリン 1999

旧東ベルリンの荒廃した地域のプロジェクト。五輪誘致のためのスポーツ施設をつくり、周囲を再開発した。
建物と地域を一体化させて公園にすることを提案。5~6階建ての集合住宅が多いなかで、市民に開かれた広場を作った。
競技場やプールなどは普通に設計するとあまりにも巨大な容積になってしまうが、そうした周囲を分断するような建物はつくりたくない。
リンゴの木を5000本植樹して出来た林を抜け、池のような面を降りていくと競技場に辿り着くようなアプローチにした。(地下を利用している。)


フランス国立図書館、パリ 1995

フランス国立図書館、パリ 1995

パリ郊外の13区でのプロジェクト。荒れた場所を再開発で蘇らせる。
図書館という大きな容積が必要な建物だが、地下に地上の4倍の空間をつくることで、建物としてなるべく大きくならないように配慮した。建物で地域を分断したくない。
パリには歴史的に広場が多いが13区には少ない。空間を地上部の4つの建物で囲むことで広場のイメージを呼び起こそうとした。
中の庭にはノルマンディーから移した木が大量に植えられている。ただしこの庭には入れない。
インテリアもペローがデザイン。天井のメッシュもメンテナンスがなるべく少ないような素材にした。

ぺローにとってのメタルメッシュとは何か

素材と素材がシームレスにつながるための重要なアイテム。
最初、フランスの国立図書館で天井にナイロン地を使ったことがあったが、不燃の関係でなかなか他では利用出来ない。そのかわりのものとしてメタルメッシュに行き着いた。
ある程度の透明性が確保され色も様々に展開出来る。
半透明であることから建物の内と外が明確に区別されず、パブリックとプライベートな空間を融合出来るようにした。
メッシュによって建築が都市へ広がっていくようなイメージをつくる。

展示2 「TABLE」~5つのテーブル毎にテーマを設けて各プロジェクトを紹介する

1 都市の地形~タワープロジェクト~大阪富国生命ビル


大阪富国生命ビル 、大阪 2010

大阪駅前の高層オフィスビルの建て替え計画。2006年にコンペがあった。
大阪の駅前は決して明確な都市設計に基づいて構築されているわけではないが、地下の発達したネットワークに大きな特徴がある。人の流れの大半は地下街を経由している。
ビルから地下に自然光が差し込むような工夫を凝らした。=地下を非地下化
この手のビルは容積率の関係で、どうしても分厚い低層部と長細い高層部を組み合わせた墓石のような形になりがちだが、ぺローは低層から高層へスムーズに形がつながるように工夫した。
下から見上げると幹から徐々に細くなる樹木のような印象を受けるかもしれない。外壁の構造や色にも木のイメージを取り入れた。

3 場の発見~都市の公共空間を皆で使おうとする発想~マリインスキー劇場(サンクトペテルブルグ)

古い建物を残してその真横に新劇場を建てるプロジェクト。
ペローはオペラ座はブルジョワ的で閉鎖的なものだと批判し、それを打破するために街や人々へ開かれた建物をつくることを考えた。
建物の周囲にもう一つ、皮か幕のような構造物で全体を覆っている。建物と外部との間に中間領域をつくった。
ホワイエは金色のメッシュで覆い、内部と外部の双方から見通すことが出来る。
建物自体の形も地形的な要素を取り込む。大きなボリュームの上へ登っていけるようなイメージ。場と建築を融合させた。

5 地形の変容~建物を地中へ埋め込んでいくプロジェクト~ドブリー博物館(ナント)


ドブリー博物館

歴史的に古い地域にある博物館。建物は保存して地下空間を開発する。
ボリュームを沈めて存在を消す試み。そもそも近代建築は壁を地上にたてることからはじまるが、ペローは逆に地面と一体化させることで、これまでの建築が考慮してこなかった地形との関わりを追求した。=近代建築に対する批判精神
地下に埋めることで建物の新たな可能性を考える。

展示3 ペローのスケッチ~アイデアの源泉

ペローは敷地を見ないでそのままデザインをはじめることがある。まずは自身の持っているイメージを大切にしている。
スタッフのレポートからスケッチを描くこともある。またそのまま建物の模型をつくることもある。
おおまかなランドスケープを見取ったスケッチが多い。
簡略な平面図に建物とその周囲における人の流れを書き込んでいる。建物がどう街と関わり、また人の流れを生み出すかということに関心をもっている。

以上です。質疑応答を含み、約2時間弱にもわたってトークが続きました。なおギャラリー・トークは会期中もう一回開催されます。とても丁寧な説明で、建築の知識に乏しい私でも興味を持って聞くことが出来ました。そちらに参加されてみるのも良いのではないでしょうか。

ウィークエンド・ギャラリートーク 前田茂樹[建築家、DPA元チーフアーキテクト]
日時:11月7日(日)14:00~
会場:東京オペラシティアートギャラリー

展覧会は12月16日まで開催されています。
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「わくわくJOBAN-KASHIWAプロジェクト」を開催

千葉県北西部随一の商業都市、柏市の中心部である柏駅周辺にて一大アートプロジェクト、「わくわくJOBAN-KASHIWAプロジェクト」が開催されます。



「わくわくJOBAN-KASHIWAプロジェクト」
期間:2010年11月3日(水・祝)~28日(日)



*柏駅東口

メイン会場は今年、オープンしたばかりの「island」です。かつて新富町へ移転したTSCA(Takuro Someya Contemporary Art)がありましたが、最近ほぼ居抜きでこのギャラリーが入りました。なお400平米もの広さがあります。都内の画廊では得難いスケールでもあるので、今回もまた華やかな展示になるのかもしれません。

わくわくislandハウス 11月3日(水・祝)~28日(日) 12:00~20:00 火・水曜休
「island」がこの期間、柏のアートセンターになります!!参加作家の滞在制作や展覧会が開かれ、作家と市民が交流できる開かれた場所(オープンスペース)となります。

さらにそれに先立ち、駅周辺のアーケード街とショッピングセンターにて本イベントによせる「幕」を制作するというプロジェクトがあります。

わくわくアートフラッグ 10月21日(木)~30日(土) 10:00~21:00 (豚星なつみ)/10月16日(土)~11月15日(月)(遠藤一郎)
象書家 豚星なつみと未来美術家 遠藤一郎が、「アートラインかしわ」及び「わくわくJOBAN-KASHIWAプロジェクト」によせた幕を制作し柏の街を盛り上げます!

また同じく駅周辺の商店街内では11月3日、参加作家の公開制作イベントがあるそうです。

わくわくハウディモールハプニング 11月3日(水・祝)13:00~17:00 雨天中止
参加作家が街に出て、公開制作を行います。制作の過程には、街の人たちにも参加していただき、完成作品は、「わくわくislandハウス」に展示します。


*写真は昨年にTSCA Kashiwaで開催された「山下麻衣+小林直人 The Small Mountain」展。

私事ながら以前、柏に隣接するエリアに住んでいたことがあり、よくTSCAに通ったことがありましたが、その後に引っ越してからやや疎遠になってしまいました。元々、柏はとても活気のある街です。ぶらっと商店街を歩くだけでも楽しめるので、このイベントを機会にまた久々に出かけたいと思いました。

なお同プロジェクトにはツイッターアカウントもあります。情報はそちらで随時更新されているようです。是非フォローしてみて下さい。

wakuwakukashiwa@twitter アートラインかしわ
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「ネイチャー・センス展:吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆」 森美術館

森美術館港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
「ネイチャー・センス展:吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆」
7/24-11/7



「自然を知覚する潜在的な力」(ネイチャー・センス)を問いただします。森美術館で開催中の「ネイチャー・センス展:吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆」へ行って来ました。

本展に登場する3名のアーティスト、デザイナーは以下の通りです。

吉岡徳仁(1967~)
篠田太郎(1964~)
栗林隆(1968~)

活躍中のジャンルこそ異なるものの、ほぼ同世代の彼らが、森美の巨大空間を利用しての多様なインスタレーションを展開していました。なお今回も会場内の撮影が可能です。順に展示の様子を振り返ってみます。


作家:吉岡徳仁
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

冒頭の吉岡徳仁の「スノー」こそいきなり到来する展覧会のハイライトとしても過言ではありません。


作家:吉岡徳仁
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

横15メートルにも及ぶ透明ケースの内で風に吹かれ舞い上がり、そして静かに降りるのは雪の言わば精霊たちです。実際には数百キロの羽毛がファンで撹拌されているわけですが、その様子はまさにタイトルの「スノー」に相応しく、雄大な大自然の雪山の景色を彷彿させました。


作家:吉岡徳仁
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

裏へ回り込んた時や人が作品の前に立った時など、内部だけでなく外部との関わりによって変化していく光景も魅力ではないでしょうか。ここは立ち位置を変えながら楽しみました。


作家:吉岡徳仁
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

また吉岡では結晶や光学ガラスを使った「ライト」や「ウォーターフォール」も見逃せません。


作家:吉岡徳仁
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

ガラスのベンチは空間を一変させます。神秘的な場を生み出していました。

続いて登場するのが、造園を学び、最近では都市の環境と人間の関係などを問いただしているという篠田太郎です。


作家:篠田太郎
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

キューブ状の3面スクリーンには、どこか見慣れた都市の郊外の雑多な景色が映し出されます。


作家:篠田太郎
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

また何やらグロテスクにも見えるのが古代中国の宇宙観に由来するという「忘却の模型」です。白い大地に滴る赤い液体はまるで体内を循環する血液のようでした。


作家:篠田太郎
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

多数の水滴が星屑のように落下する「銀河」は東福寺東庭に着想を得ているのだそうです。率直なところコンセプトはよく分かりませんが、ただぼんやりとぴちゃぴちゃと音を立てては消える水の行く末を追う体験も悪くありませんでした。

ラストは美術館内に壮大な一種の地形を作り出した栗林隆です。


作家:栗林隆
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

「ヴァルト・アウス・ヴァルト(林による林)」では天然素材由来の和紙が、地上と地下に分かれたダイナミックな森林を出現させます。


作家:栗林隆
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

もぐらになった気持ちで随所に空いた穴から顔を出し、また地下へと戻って相互の空間を見渡しました。


作家:栗林隆
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

森を抜け出すと高さ4メートルの山、「インゼルン2010」が出現します。そのあとは栗林自身が一種の旅を続けて制作したインスタレーション、「ヤタイトリップ」を迎えて終了しました。

ともかく吉岡の「スノー」の視覚イメージが強烈なので忘れがちですが、全体を通して見るとかなりコンセプチャルな要素の強い展覧会です。大作が殆どだからか点数は少なく、意外にさらっと見終えてしまいました。ただ欲を言えばもう少し展示の意図が掴みやすい仕掛けなどがあって良かったかもしれません。その意味で各作家のトークイベントなどに参加すれば良かったと今更ながらに思いました。

同時開催中の「MAM PROJECT012:トロマラマ」が楽しめました。こちらもお見逃しなきようご注意下さい。

11月7日まで開催されています。
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「没後120年 ゴッホ展」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「没後120年 ゴッホ展 - こうして私はゴッホになった」
10/1-12/20



主にオランダのファン・ゴッホ美術館、及びクレラー=ミュラー美術館の所蔵品にてゴッホの画業を明らかにします。国立新美術館で開催中の「没後120年 ゴッホ展」へ行って来ました。

ゴッホというと2005年に東近美で開催された大回顧展を思い出しますが、改めて今回接してまた新たな発見や魅力を見出だされた方も多いかもしれません。単刀直入に言うと私はゴッホがかなり苦手ですが、それでもこの展覧会には大いに感心させられるものがありました。サブタイトルの「こうして私はゴッホになった」に偽りはありません。周辺の画家との関係から、ゴッホの全貌を解き明かす巧みな構成には舌を巻くほどでした。

展示の章立ては以下の通りです。

1 伝統 ファン・ゴッホに対する最初期の影響
2 若き芸術家の誕生
3 色彩理論と人体の研究、ニューネン
4 パリのモダニズム
5 真のモダン・アーティストの誕生 - アルル
6 さらなる探求と様式の展開 - サン=レミやオーヴェール=シュル=オワーズ


基本的には時系列でゴッホの作品を追っていましたが、特に前半部において彼に影響を与えた画家を丹念に紹介していました。


ジョルジュ・スーラ「オンフルールの港の入口」1886年 クレラー=ミュラー美術館

そして今回の最大の見所は、そうしたゴッホとゴッホ以下の画家の作品との比較に他なりません。実際、全出品作120点のうちゴッホが70点、そして他の画家が約40点(資料含む)を占めています。

ゴッホは最初期、精神的導き手としてミレーを挙げ、例えば「掘る人」のモチーフなどを多数描きましたが、展示でも彼とミレーの素描が等しく並べられ、ゴッホの研究の経過を知ることが出来ました。

また同じく若きゴッホ時代で重要なのが、唯一の師である風景画家アントン・モーグとの関係です。モーグによる農村の一コマを描いた「オランダ風納屋と差し掛け」などが展示されるのと同時に、絵画技術についてゴッホが指導を受けたことなどが紹介されていました。


トゥールーズ=ロートレック「テーブルの若い女」1887年 ファン・ゴッホ美術館

またさらに中期、パリへ移住後のゴッホにおいても同時代の印象派やロートレックなどから様々な技法を取り入れたことについても触れられています。一見、似つかないゴッホとモネがその色彩において、そしてシスレーやシニャックらがタッチなどにおいて類似性を見せているのには驚かされた方も多いのではないでしょうか。


「カフェにて」1887年 ファン・ゴッホ美術館

また静物においてもファンタン=ラトゥールの「プリムラ、梨、ザクロ」やフランソワ・ラファエリの「野の花」と、ゴッホの「バラとシャクヤク」が、表現上において一つの軸で繋がっていることが示されています。同時代との画家の対比によってゴッホは決して単なる『孤高の天才』でないことか良くわかる展開となっていました。

また勿論、有名な浮世絵との関連についても言及があります。頻繁に指摘される部分ではありますが、広重などの作品も展示されていました。


「アイリス」1890年 ファン・ゴッホ美術館

アルル以降についてはゴッホの独擅場です。後半部は鮮烈でかつ暗鬱な色彩とタッチによる、言わばゴッホをゴッホたらしめた作品が続きます。アルル以降の作品に殆ど共感出来ない私にとっては何とも申し上げようがありませんが、先に触れたまだ同時代と関連付け得る花の絵画が叫び悶える「アイリス」へと変化したのを見ると、そこから感じられる痛々しいまでのある種の苦悩に押し潰され、会場を後にする他ありませんでした。


「アルルの寝室」1888年 ファン・ゴッホ美術館

展示中にはかの有名なアルルの寝室が主催のTBSによって再現されています。ハリボテと非難するのは容易いかもしれませんが、近くに展示されていた実際の絵画と見比べた時、ゴッホの生活の息吹きが伝わってくるような気がしました。効果的な演出です。


「サン=レミの療養院の庭」1889年 クレラー=ミュラー美術館

大人気のゴッホ展ということでさすがに会場は大にぎわいでした。なお混雑の具合ですが、土日でも朝一番か夕方以降は比較的余裕があるそうです。(一方、最混雑時間帯は3時頃で、これまでに最長30分程度の待ち時間が発生しているとのことでした。)また金曜日夜間なども狙い目かもしれません。ともかくこの手の展覧会の会期末の混雑は尋常ではないので、なるべく早く出かけられることをおすすめします。

NHK日曜美術館「ゴッホ 模倣から生まれた天才」 11月28日(日)朝9:00~放送予定

「もっと知りたいゴッホ/圀府寺司/東京美術」

12月20日までの開催です。なお東京展終了後、九州国立博物館(2011年1月1日~ 2月13日)と名古屋市美術館(2011年2月22日~4月10日)へと巡回します。
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「複合回路 - アクティヴィズムの詩学 - 第四回 羽山まり子」 ギャラリーαM

ギャラリーαM千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F)
「複合回路 - アクティヴィズムの詩学 - 第四回 羽山まり子」
9/25-10/30

本年の連続シリーズ展「複合回路」も折り返し地点を迎えました。ギャラリーαMで開催中の「複合回路 - アクティヴィズムの詩学 Vol.4 羽山まり子」へ行ってきました。

作家プロフィールについては画廊WEBサイトをご覧ください。

第四回 羽山まり子 Mariko HAYAMA@ギャラリーαM

今年、女子美術大学の大学院を修了されたばかりの方です。またいわゆるホワイトキューブでの個展はほぼ初めてとのことでした。



そんな新鋭、羽山の生み出した空間は、一見するところでは奇妙なまでに落ち着き払ったプライベートな「部屋」に他なりません。壁こそ通常通りの白を剥き出しにしながらも、床のコンクリートには青い絨毯が敷かれ、随所にはソファや机、それにベットを連想させるような家具が配置されています。αMの様相はいつもと大きく変わっていました。



しかしながら家具へ近づいた途端、執拗なまでの言わば作為が加わっていることが良くわかるのではないでしょうか。家具は責苦を受けるように縛り上げられ、無理な体勢で吊られているばかりか、所々ナイフでズタズタに切り刻まれて元の形を止めていません。その傷の痕跡は痛々しいまでに露となり、それこそ「死」すら連想させるような無惨でかつから恐ろしいまでの姿を見せていました。



これらはいわゆる「家族」を主題として、そこに見られる「暴力」な様相を表現しようとして展開されたものなのだそうです。温かいはずの家庭の裏側にある憎悪が家具という身近な素材を通して巧みに引き出されていました。

カーテンの向こうにある「ベット」はもはや死の床にしか見えません。その青色は頭の中で血の赤色に変化していました。

10月30日まで開催されています。
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「風間サチコ - 平成博2010」 無人島プロダクション

無人島プロダクション江東区三好2-12-6
「風間サチコ - 平成博2010」
10/7-11/27



無人島プロダクションで開催中の風間サチコ個展、「平成博2010」へ行ってきました。

スペースを拡張としての移転後、初となる風間の個展ということで、大きな作品が展示されるかと思いきや、意外にも比較的小さなサイズのものが殆どでした。とは言え、昭和の記憶を呼び覚まし、そこを時にアイロニカルな眼差しで見つめる風間の視点は変わりません。見応えは十分でした。

今回のテーマはそれこそちょうどお隣の国でタイムリーな話題を提供している「博覧会」そのものです。「戦前・戦中の地方博覧会の国策・啓蒙パビリオンを下敷き」(プレスリリースより引用)に、この平成における様々な事件や社会現象などを引き出して、版画上に疑似博覧会を繰り広げていました。

ふるさと創生一億円から出来た実際のモニュメントを組み合わせた「ふるさと創生館」をはじめ、当時社会を震撼させた宮崎事件の「僕の部屋館」、さらにはまだ記憶も生々しい9.11からの「9.11館」と、どれも記憶に深い歴史の一ページから、驚くべきほどの多様なイメージを作り上げています。パビリオンはさながら平成の歴史絵巻でした。

戦中・戦前の博覧会の様子は、風間自身のコレクションだという当時の絵葉書から知ることが出来ます。仰々しいまでのスローガン、建物の奇想天外でかつどこか悪趣味な様相は、平成博から見透かされた様々な「現在」の事象と共通するものがありました。

「くるくる総理(コドモの国)」がまた強烈です。平成における混沌とした日本の政治状況を、それを生み出した我々を含めて痛烈に皮肉っていました。



代々木八幡のラムフロムでも同時に個展が開催中です。そちらも是非伺いたいです。

「風間サチコ展 ドジョ戦記:水がヌルくて死にそうです。」@GALLERY at lammfromm 10/8-11/23

今回の一連の作品は今後、シリーズ化していくという構想もあるのだそうです。その展開にも注目したいと思います。

11月27日まで開催されています。
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「流麻二果 - 湧々(わくわく) - 」 ギャルリー東京ユマニテ

ギャルリー東京ユマニテ中央区京橋2-8-18 昭和ビルB1F)
「流麻二果 - 湧々(わくわく) - 」 
10/4-10/23

ギャルリー東京ユマニテで開催中の流麻二果個展、「湧々(わくわく) - 」へ行って来ました。

作家、流麻二果のプロフィールについては以下の~をご参照下さい。

流麻二果 『湧々(わくわく)』 NAGARE Manika

色と形の織り成す様々なイメージは見る者の心象風景を呼び起こしてやみません。透明感のある青や赤、それにグレーなどの混じる色面は美しく響き、またある時には反目し合うかのように流れ出しながら、なだらかな山々の様子とも無限に広がる海岸にも見えるような独特の景色を生み出していました。

その一方で緩やかに何らかの図形を描くような様は、もっと抽象的なものを引き出しているのかもしれません。色に時間や意識の流れを重ね合わせることも出来ました。

「さえずり」や「静音」などのシンプルながらも詩的なタイトルも魅力の一つかもしれません。じっと眺めているといつしかイメージが自律的に変化していくような錯覚さえ覚えました。



なお本展にあわせ、江戸川橋のYUKA CONTEMPORARYでも新作個展が開催されているそうです。

流麻二果 Manika Nagare 「浮々(うきうき)」@YUKA CONTEMPORARY 2010.10.9 (Sat) - 10.30 (Sat)

また年末年始に国立新美術館で開催される「DOMANI・明日展2010」にも出品の予定があります。

DOMANI・明日展2010@国立新美術館 2010年12月11日(土)~2011年1月23日(日)

10月23日まで開催されています。
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「明治神宮鎮座90年記念展 横山大観」(前期展示) 明治神宮文化館

明治神宮文化館 宝物展示室(渋谷区代々木神園町1-1
「明治神宮鎮座90年記念展 横山大観」
10/2-11/28(前期:10/2-10/27、後期:10/29-11/28)



明治神宮文化館宝物展示室で開催中の「明治神宮鎮座90年記念展 横山大観」(前期展示)へ行って来ました。

美術展では馴染みの薄い明治神宮ですが、昨年の春草展しかり、時おり小規模ながらも充実した展示があるのは嬉しいところです。今回も主に明治から昭和前期まで、大観の比較的早い段階の作品が一堂に紹介されていました。

すばり明治神宮の景色を描いた作品に目が止まります。大観は昭和5年、三度に渡って神宮内で写生を行ったことがあるそうですが、その結果生み出されたのが墨画の「明治神宮図」でした。下から上へ向かって鳥居や本殿などが連なる様子が、思いの他に精緻な筆にて表されています。

またそれらを取り囲む木々にも要注目です。今でこそ鬱蒼と生い茂る森も当時は松が主体で、まだ疎らであることを見て取ることを出来ました。神宮の森は明治の創建時から植えられた人工林であることは知られていますが、そうした歴史も感じられるような作品かもしれません。

もう一点、歴史との繋がりを思わせるのが勅題画です。これは宮中歌会始のお題にモチーフをとった絵画のことで、大観はかの細川護立の求めに応じて何点かの作品を描きました。


「旭光照波」永青文庫

中でも見事なのは「旭光照波」です。大観ブルーならぬ水面の青みが、おそらくは金の効果によってうっすらと煌めいています。ハッとさせられるほどに美しいさざ波が広がっていました。


「飛天・霊峯不二(小杉未醒、大観合作)」個人蔵

東近美で毎年公開される長大絵巻、「生々流転」の習作を見たのははじめてかもしれません。また出光の二人展の記憶も新しい小杉放庵との合作なども展示されていました。

他にも大観が絵付けをした茶碗や皿なども数点出ています。とりわけ器を五代清水六兵衛が手掛けた「絵御本茶碗魚」の可愛らしい姿には目を見張るものがありました。

公開機会の少ない個人蔵や企業コレクションも多く出品されています。ちらしの「まだ、大観を知らない。」という謳い文句もあながち誇張ではありませんでした。


「八幡緑雨」滋賀県立近代美術館

いかんせん手狭なスペースです。出品全70点ほどのうち大半は途中で入れ替わります。もちろん後期も出かけるつもりです。

【前期】10月2日(土)~10月27日(水)
【後期】10月29日(金)~11月28日(日)


先日開催された山下先生の講演会を伺えなかったのだけは心残りでした。

閉館時間が10月中は16時半と早めです。(11月は16時閉館。ともに入場は30分前まで。)ご注意下さい。

前期展示は10月27日まで開催されています。
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「石塚沙矢香 - かけらはただよひ - 」 INAXギャラリー

INAXギャラリー2中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA2階)
「石塚沙矢香 - かけらはただよひ - 」
10/9-10/28



割れた陶器のカケラは儚き蓮池の景色を生み出します。INAXギャラリー2で開催中の「石塚沙矢香 - かけらはただよひ - 」展へ行ってきました。

本展の概要、作家プロフィールなどは同画廊WEBサイトをご覧ください。

現代美術個展>石塚沙矢香 - かけらはただよひ - 展@INAXギャラリー

昨年には妻有のトリエンナーレで作品を発表されています。古民家でのインスタレーションということでご記憶の方も多いのではないでしょうか。

さて今回の個展もインスタレーション形式で作品を展開していますが、素材の簡素な組み合わせから生じるイメージはどこか詩的な響きをたたえてはいないでしょうか。天井から無数に吊るされた透明の円形の板の上に無造作に並ぶのは、お茶碗から急須、それに洋食器などの様々な陶器の破片でした。それらはまさに色とりどりに咲く花々です。その間を縫うように歩き、また屈んで見ると、カケラにまとわりつく水色や青の糸の効果もあってか、例えばモネの描く蓮池の光景を思い起こさせました。

また巧みなライティングの効果なのか、作品の影も美しく映っていました。見立ての妙味です。

リーフレットにこれまでの作品の図版がたくさん紹介されていましたが、借景を用いた展示がまた断然良く見えました。そういう場所でも拝見したいものです。

10月28日まで開催されています。

*関連エントリ(同時開催中の展覧会)
「夢みる家具 森谷延雄の世界」 INAXギャラリー
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「円山応挙 空間の創造」 三井記念美術館

三井記念美術館中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
「円山応挙 空間の創造」
10/9-11/28



三井での本格的な応挙展は、平成12年に前身の三井文庫別館で開催された「円山応挙と三井家」以来のことだそうです。三井記念美術館で開催中の「円山応挙 空間の創造」へ行ってきました。

同館の応挙といえば毎年お正月に華々しく公開される国宝の「雪松図屏風」が有名ですが、今回展も目玉はそうした応挙の大作屏風、または襖絵でした。同屏風と何と全16面に及ぶ「松に孔雀図襖」の「二大最高傑作」(ちらしより引用)の対決をはじめ「雲龍図屏風」、さらには普段見る機会の少ない和歌山の草堂寺所蔵の「雪梅図襖」などと、応挙の代表作がピックアップされています。点数こそ少ないものの、なかなか見ごたえがありました。

構成は以下の通りです。

展示室1 空間法の習得(眼鏡絵)
展示室2 応挙の絵画空間理論「遠見の絵」
展示室3 応挙の茶掛け(茶室如庵)
展示室4 応挙様式の確立 絵画の向こうに広がる世界
展示室5-6 淀川両岸図巻と小画面の中の空間
展示室7 応挙の二大最高傑作 松の競演


前半に眼鏡絵と呼ばれる風景画を紹介した上で、代表作の図巻、屏風、襖などで応挙の空間認識を把握する流れになっていました。

冒頭、ご自慢の立体展示室に並ぶのは、若き応挙が主に京都近辺を描いた眼鏡絵と呼ばれる小品です。これらは遠近法を用いた風景画で、覗き眼鏡を通すと立体的に見えることから、当時の日本で人気を博していました。


眼鏡絵 三十三間堂通し矢

ここで興味深いのは、やはり応挙によるそうした技術への関心です。応挙の作品は常に全体として考え抜かれた空間構成、ようはパースペクティブに整った理知的な構図が見られますが、それもこの眼鏡絵を学ぶことで初めて実現したのかもしれません。またもう一点感心したのが、ともかく事物を細やかに表す筆さばきです。

その他、例えば「眼鏡絵 清水寺舞台図」における人物描写のシルエットや、「眼鏡絵 北野天満宮図」の銅版画的な影の構築など、絵画空間を効果的に演出する仕掛けも随所に見られました。

さてその繊細さにおいて重要なのが中盤のハイライト、「淀川両岸絵巻」かもしれません。これは伏見城から大阪城までの淀川の両岸を表した絵巻ですが、豆粒より小さな人物など、一体どうやって描いたのかと思ってしまうほどに細密極まりない筆が全編を支配しています。ここは単眼鏡で楽しまれる方も多いのではないでしょうか。私も食い入るように見てしまいました。


淀川両岸図巻(部分) 1765年(明和2年) アルカンシェール美術財団

ところでこの作品、当然ながら単に美しい風景がつらつらと描かれているわけではありません。伏見から左岸に沿ってしばらく下ってみてください。突如木立や家屋が逆さまになっていることが分かるのではないでしょうか。応挙は何と画中で川の左岸を上下反転させ、川の中央から両岸を眺めても同じ方向に見えるように工夫しました。空間に対する挑戦は、もはやだまし絵とも言えるようなトリッキーな方法まで生み出しています。これには驚かされました。

一方、メインの大作の屏風と襖絵ですが、如何せん手狭なスペースということもあって量は望めません。一度ここで主な作品を整理してみます。

松鶴図屏風10/9 ~ 11/7
雲龍図屏風10/9 ~ 11/7
老梅図襖10/9 ~ 11/7
雪梅図襖・壁貼付10/9 ~ 11/7
竹雀図屏風10/9 ~ 11/7
雪松図屏風10/9 ~ 11/28
松に孔雀図襖10/9 ~ 11/28
山水図屏風11/9 ~ 11/14
波濤図11/9 ~ 11/28
雨竹風竹図屏風11/9 ~ 11/28
蘭亭曲水図襖・壁貼付11/9~11/28
藤花図屏風11/16 ~ 11/28


記載したように展示替えがあります。よって一度に公開されているのは約5、6点ほどです。会期等には十分ご注意下さい。 (出品リスト


雲龍図屏風 1773年(安永2年)

さてどれも甲乙つけがたいものばかりでしたが、まず迫力満点なのは「雲龍図屏風」です。轟く雷雲は荒れ狂う海原と渾然一体となり、そこを二頭の龍が相互に睨みをきかせながらもどこか飄々とした様子で身体をくねらせています。右の龍が手前から奥へと進んでいるとすれば、左はその逆に空間を裂いているのではないでしょうか。また随所の金は雷鳴の灯火を表しているのかもしれません。これから両者が戦いでもはじめるのではないかと思ってしまうような激しい動きのある作品でした。


雪梅図襖(部分) 1785年(天明5年) 草堂寺

この「雲龍図」を動とすれば、一転して静の境地を開いたのが「雪梅図襖・壁貼付」です。雪に覆われた孤高の梅を描いた襖部分はかの「雪松図」を彷彿させますが、いわゆる余白の美をとる障壁部もまた重要ではないでしょうか。特に下に伸びる枝にひょいととまった一羽の小禽より広がる上部の虚空の様子は、弟子の芦雪の「蛙図」の構図を連想するものがあります。実際にこの作品は京都で応挙が制作し、芦雪が現地へ運んだという逸話もあるそうですが、余白に意味を与え、画中にとってなくてならない空間に仕上げた応挙の技には心底感銘しました。


松に孔雀図襖(部分) 1795年(寛政7年)大乗寺

最後の展示室ラストでは同館自慢の「雪松図」と「松に孔雀図襖」が対決しています。実のところ両者はサイズはもとより、画面構成からタッチに至るまでかなり異なり、同じ場所で比較するのは後者にとって酷なような気もしましたが、ここは今回のために特別に演出された稀有な共演を素直に楽しむことにしました。

展示では祐常の記した「萬誌」から応挙の言葉が紹介されていました。

「掛軸、屏風、襖絵などは絵画と間をとって鑑賞した時に効果があるように描かねばならない。近寄ってみると筆が連続していないところがあっても、遠見には真のごとく見えるおもむきを心得るべきである。」(引用)


雪松図屏風 三井記念美術館

そしてその言葉を踏まえれば踏まえるほど、「雪松図屏風」が昇華した地位にあることを感じてなりません。改めてその効果的な空間の妙味に感心させられました。

会期初日に伺いましたが思っていたよりも人出がありました。ひょっとすると後半に向けて若干混雑してくるかもしれません。なお「引き」の構図で見ようとすると作品から離れる必要がありますが、如何せんあの展示室なので、うっかりしていると反対側の作品を見ている方にぶつかってしまいます。今回の応挙展を実現させた三井記念美術館には感謝しつつも、いつかは空間に制約の少ない東博のような大きな箱で回顧展を見られればとは思いました。

11月28日までの開催です。まずはおすすめします。
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「貴志真生也 - バクロニム - 」 児玉画廊 東京

児玉画廊 東京港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス1階)
「貴志真生也 - バクロニム - 」 
9/25-10/30



児玉画廊東京で開催中の貴志真生也個展、「バクロニム」へ行って来ました。

作家貴志真生也のプロフィールについては同画廊WEBサイトをご参照下さい。

貴志真生也「バクロニム」プレスリリース

昨年に京都市立芸術大学を卒業し、その後も京都でグループ展などの活動を続けているそうです。

言わば個人マンションの一室のような独特の雰囲気を持つ同画廊ですが、そのホワイトキューブに置かれたのは光る箱やビニールに蛍光管、それに布や木材を組み合わせた『事物』、数点でした。それは何らかの作為が加えられ、いわゆるオブジェのようにも思えますが、それでも単なる素材、もしくはそのものでしかないように見えるかもしれません。蛍光管はただひたすらに灯り、木材はあたかも機械パーツの一部でも形成するかのように無造作に転がっていました。

確かに見たことあるものから「見たことないものを作りだす」(リリースより引用)アプローチは実現しているのかもしれません。その間の紙一重な様子、また危うさ、言い換えれば少し異なればまた見たことあるものに戻ってしまうようなスリリングなせめぎあいにも魅力があるように思えました。

タイトルの「バクロニム」とはいわゆる頭字語(リリースには一例としてV.I.Pがあげられていました、)とは逆に、何らかの文字列を先に準備して後で単語を当てはめることを指す言葉だそうです。個々の作品とタイトルの関連は、果たしてあるのかそれともないのかを問いただすような仕掛けもまた興味深いものがありました。

画廊の照明を落とすとどう見えるのかが気になりました。ひょっとするとさらに「見たことのないもの」が幻のように立ち上がってくるのではないでしょうか。

10月30日まで開催されています。
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「バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き」 府中市美術館

府中市美術館府中市浅間町1-3
「府中市美術館開館10周年記念展 バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き」
9/17-11/23



府中市美術館で開催中の「バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き」へ行ってきました。


ジョルジュ・ガシ「水辺の鴨」ラ・フォンテーヌ企画

日本では露出機会の多いバルビゾン派とはいえ、関連の国内の近代絵画とあわせて紹介する企画はそう滅多になかったかもしれません。ここ武蔵野の地、府中の杜に集ったのは、コローやルソーをはじめとするバルビゾン派絵画と、彼らにシンパシーを覚えて日本の風景を表した浅井忠や和田英作らの国内の画家の作品、全約120点でした。

展示冒頭、一際目立つクールべの「女羊番、サントンジュ地方の風景」の木立を抜けるとまず登場するのは、主にフォンテーヌブローの森に集まったバルビゾン派の画家たちです。

彼らは今より150年前、自然を求めて屋外へと繰り出し、美しい野山の景色を次々と描きましたが、それを良く伝えているのが、エルンスト・ルヌーの「野外写生用具一式」でした。

ここでは当時、実際に使われていたであろう絵の具箱や椅子などが、風景のパネルを背景に『再現展示』として紹介されています。大きなパラソルと絵画セット一式を見ると、写生に勤しむバルビゾン派画家たちのイメージが浮かび上がってくるのではないでしょうか。掴みは抜群でした。


ジャン・フランソワ・ミレー「鵞鳥番の少女」 東京富士美術館

ミレーが4点ほど出ていましたが、中でも印象深いのが「鵞鳥番の少女」でした。水辺に集う白い鵞鳥たちと木に手をかけて立つ少女の様子はまさに牧歌的です。まるでパステルのように繊細なタッチによる水の透明感、また鳥の羽の軽やかな実感などには目を奪われました。


テオドール・ルソー「夕暮れのバルビゾン村」 村内美術館

ミレーと並んでもう一人のバルビゾン派の雄、ルソーの中では「夕暮れのバルビゾン村」を是非とも挙げて置かなければなりません。この展示でもいわゆる夕景を描いた作品群は一つのハイライトを形成していますが、まさに空を焦がすように赤々と燃えて沈みゆく太陽は、単に一日の終わりを告げるだけに留まらず、夕暮れの何分間だけ見せるこの世ならざる神秘的なまでの美しさをたたえています。何度か見たことのある作品でしたが、ここは思わずぐっときてしまいました。

どちらかというと前半がバルビゾン派、そして後半が近代日本絵画という展開になっていますが、単に両者を別々に並べているだけでないのが重要なポイントです。その最たる例として挙げられるのが、ラファエル・コラン「荒地」と和田英作の「三保の松原」の比較ではないでしょうか。モデルの場所も異なる二枚の作品が、その構図の取り方において驚くべきほどに類似していました。


浅井忠「収穫」 東京藝術大学大学美術館

また私が記憶に深いのは、似たような収穫のモチーフをとる二点の作品です。和田英作が詩情溢れるミレーの落穂拾いを模写した絵画が展示されていましたが、それと比べて例えば浅井忠の「収穫」はどこかもっと過酷な労働の所作が全面に出ているように思えてなりません。

さらに全く同時代の人物画表現の在り方としてジャン=ポール・ローランスの「ピエトロ」と鹿子木孟郎の「ショールをまとう女」の比較など、それこそ噛めばかむほど味が出るような展示が続いていました。ここは一巡目で田園の美しさを素直に愛でながら、二巡目で洋の東西の表現の違いなどに注意してご覧になられることをおすすめしたいと思います。


山脇信徳「雨の夕」 高知県立美術館

山脇信徳の「雨の夕」を見て巴水の版画を思い出しました。時代が重なるのは単なる偶然かもしれませんが、バルビゾン派しかり、この時代の風景画にはどこなく物悲しい情緒を感じます。


本田錦吉郎「景色」 府中市美術館

それにしてもバルビゾン美術館からプチパレ美術館、さらには吉野石膏から村内に山梨県美と、よくぞここまで幅広い美術館から作品を集められたものだと感心しました。実は今回の展示では国内の作家の方が数が多いのですが、私の中ではほとんど初めてそうした画家たちに深い共感を持って見ることが出来たことを付け加えておきます。バルビゾンと近代日本絵画の共演は間違い成功していました。


ジョルジュ・ガシ「バルビゾンの平野に沈む夕日」 県立バルビゾン派美術館

なお11月3日の午後2時より同館館長の井出洋一郎氏の講演があります。 私も伺う予定です。

講演会「バルビゾンその芸術と遺産」 講師:府中市美術館館長 井出洋一郎
日時:11月3日(水祝)午後2時~/場所:講座室/定員:60人/費用:無料/当日直接会場へ


11月23日まで開催されています。
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「山田純嗣 新作展 - 森の距離 - 」 不忍画廊

不忍画廊中央区八重洲1-5-3 不二ビル1階)
「山田純嗣 新作展 - 森の距離 - 」
10/1-23



不忍画廊で開催中の「山田純嗣 新作展 - 森の距離 - 」へ行ってきました。

作家、山田純嗣のプロフィールについては画廊WEBサイトをご参照下さい。出品作品の図版も掲載されています。

山田純嗣/Junji Yamada@不忍画廊

私自身、山田の個展を拝見するのは、昨年に同画廊で開催された「The Pure Land」以来のことでした。

おおよそ予想もつかない石膏のオブジェに由来し、「インタリオ・オン・フォト」と呼ばれる独自の版画技法によって定着した一面の雪景色のようなイメージは健在ですが、今回、以前と比べて変化しているのはいわゆる着彩、つまりは色の用い方でした。

「FLOWERS」と名付けられた二点の作品は、まるで地面から大きくのびた野山の花々がパステル色にキラキラと瞬いているかのような色味をたたえています。その効果なのか、角度、そして姿勢を変えて見入ると、通常ある奥行き、そして「距離」感がさらに開けてきました。

連なる草花は色を得て静かに呼吸しています。あたかも小人や精霊などがその下で踊るような幻想的な世界を作り上げていました。

そしてその色、また随所に用いられているドット状の輝きは、他の作品でも楽しむことが出来ます。作品の近くに「この位置からご覧ください。」のような記載がありました。外光の入る同画廊のこと、また昼と夕で雰囲気も変わってくるのかもしれません。

いつもながら目を凝らして見えてくるあたかも仏画の描線のような細かい線刻にも要注目です。イメージは何層にも展開されていました。

山田さんはツイッターアカウントもお持ちです。要フォローです。

@JunjiYamada

奥の「HANAKO 2010」には惚れました。何と健気な様子でしょうか。

10月23日まで開催されています。
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「村田朋泰 スプライシング」 ナディッフ・ギャラリー

ナディッフ・ギャラリー渋谷区恵比寿1丁目18-4
「村田朋泰 スプライシング」
10/2-10/31



ナディッフ・ギャラリーで開催中の「村田朋泰 スプライシング」へ行って来ました。

村田朋泰のプロフィールについては作家公式WEBサイトをご覧ください。

村田朋泰Profile

最近ではともかく両国のギャラリーモモの個展が圧巻でした。

そのモモでも空間を一変させた村田でしたが、今回もこのギャラリーのともすれば狭苦しいスペースを逆手にとった作品を展開しています。

螺旋階段を降り、暗室に開かれたのはどこか昔懐かしい板葺きの日本家屋のミニチュアです。そして壁際には古びた額が立てられ、そこには「調髪1800円」と記されていることが分かります。つまりこの家屋は床屋です。もちろん内部も緻密に再現され、使いふるされた赤い椅子とタイル張りの手洗い所、そして黒電話などがひしめきあうように置かれていました。

既に散らかったその様子はまさしく残骸、言ってしまえば廃墟ですが、一方でどこか営業同時の賑わいをも彷彿させていないでしょうか。じっと見つめていると今にもお客がドアをくぐって現れるかのような錯覚さえ覚えました。

ちなみにこのミニチュアは村田自身が深い記憶に残っていたという「すずらん理容店」なるもので、何と実際に60年間営業を続けたものの近年閉店し、建物も昨年に解体されてしまったそうです。1974年10月4日というカレンダーの日付が、刻まれてきた歴史を物語っていました。

なお今回の個展には作品が数点出ています。一階エントランス脇とトイレもお見逃しなきようご注意下さい。

ナディッフ・ギャラリー(B1):「スプライシング(splicing)/すずらん理容店」2010
ウィンドウ・ギャラリー(1Fエントランス):「故き森の絵本/アブレーション、私のプティング」2009
トイレ(1F):「スプライシング(splicing)/朱の路(2002-2010)」2010


キャプションに書かれた「巨大な空間よりも小さく制限された空間の方が多くを語る。」という言葉が見に染みます。一つのミニチュアは半ば歴史と化した昭和という記憶を見事に引き出していました。

*アーティスト・トーク:村田朋泰×青木淳(建築家) 2010年10月23日(土) 17:00 - 19:00

10月2日まで開催されています。
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