「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 森アーツセンターギャラリー 

森アーツセンターギャラリー
「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」
2019/9/21~11/17



森アーツセンターギャラリーで開催中の「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」を見てきました。

1960年にニューヨークで生まれ、80年代に「アートシーンで旋風を巻き起こす」(公式サイトより)も、薬物の過剰摂取により27歳で死を遂げたジャン=ミシェル・バスキアは、近年さらに評価され、「黒いピカソ」(カタログより)と称されるほどの地位を獲得しました。


ジャン=ミシェル・バスキア「メイド・イン・ジャパン1 2」 1982年 Private Collection

そのバスキアの作品が世界各地より約130点ほど日本へやって来ました。またバスキアも生前、複数回来日し、日本の文化などを取り込んだ作品を制作していて、タイトルの「MADE IN JAPAN」ならぬ、日本との影響関係にある作品も出展されていました。


ジャン=ミシェル・バスキア「フーイー」 1982年 高知県立美術館

僅か10年間に2000点を超えるドローイングと1000点以上の絵画を残したバスキアですが、よく指摘されるように、確かに作品には熱気とも呼びうる強烈なエネルギーが渦巻いていました。またモダニズム美術を踏まえつつも、ジャズやヒップホップ、アフリカの民俗や人種問題などの主題を扱っていて、どこか1980年代のアメリカ社会に対しての批判的態度も見受けられました。


ジャン=ミシェル・バスキア「炭素/酸素」 1984年 Hall Collection

既に多くの人々を虜にし、多様に語られるバスキアについて、私が付け加える言葉も見つかりませんが、あえて1つあげるとしたら、主に絵画における重層的な質感に大いな魅力があることでした。

とするのも、時に塗り固めるように塗られた絵具は、想像以上に激しく躍動感があり、ダイレクトに身振りをキャンバスへぶつけたかのような、振幅のある生々しい画面が築き上げられていたからでした。


ジャン=ミシェル・バスキア「無題」 1982年 Yusaku Maezawa Collection

そして「無題」の口や目の中の空間など、画面には奥行きも感じられて、さもレイヤーを重ねたような複雑な空間も表現されていました。かつてのブリヂストン美術館で回顧展のあった、デ・クーニングの筆触を思い起こさせる面もあるかもしれません。


ジャン=ミシェル・バスキア「プラスティックのサックス」 1984年 agnés b. Collection

一方で絵画を特徴づける文字は、極めて断片的な引っ掻き傷のような線で示されていて、それこそジャズのような即興性と、バスキア自身の何らかの叫びというような強いメッセージが表れているようにも思えました。なお線に関しては、バスキアの敬愛したトゥオンブリーに近いとも言われているそうです。


ジャン=ミシェル・バスキア「自画像」 1985年 Private Collection

これほど熱量のある作品をどこまで受け止められたかどうか自信がありませんが、事前に図版などで見知っていたグラフィックなイメージとは異なり、生の迫力という観点からしても、相当に見応えのある内容ではなかったでしょうか。しばらく作品を前にしていると、頭を殴られるかのような衝撃を感じました。


ジャン=ミシェル・バスキア「消防士」 1983年 北九州市立美術館

さて9月下旬からスタートしたバスキア展ですが、早くも今週末、11月17日をもって終了します。実のところ、私自身、会期初めと11月上旬の計2回、展覧会へ行きました。


ジャン=ミシェル・バスキア「ナポレオン」 1982年 Private Collection

今回の展覧会では「二度楽しめる!」と題して、11月1日までに入場し、出口にて所定の写真撮影をすると、11月8日までの平日17時から20時の間に限り、無料で再入場出来るキャンペーンが行われていました。

ちょうど2度目に出かけたのは、キャンペーンの終了間際、11月6日(木)の17時頃でした。入館に際しての待ち時間は特になく、会場内も撮影可の作品を中心に賑わっていたものの、おおむねスムーズに見られました。


ジャン=ミシェル・バスキア「無題(ドローイング)」 1986年 Collection of Larry Warsh

とはいえ、会期末が迫り、現在はチケットカウンターを中心にかなり混み合っているそうです。ラストの土日も大変な混雑が予想さるため、もしこれからお出かけの際は、予めコンビニなどでチケットを購入しておくことをおすすめします。


ジャン=ミシェル・バスキア「オニオンガム」 1983年 Courtesy Van de Weghe Fine Art

チラシ表紙に掲載された「無題」しかり、このところ何かとメディア等に露出も多かったバスキアでしたが、少なくとも近年、国内で今回ほど網羅的に紹介されたことはありません。


バスキアの作品は幾つかの公立美術館にも所蔵されているものの、100点超のスケールで見られる機会は、次、いつのことになるのでしょうか。その意味では一期一会の展覧会とも言えそうです。


ジャン=ミシェル・バスキア「自画像」(部分) 1985年 Private Collection

一部作品の撮影も出来ました。本エントリの写真も撮影可能な作品を掲載しています。



11月17日まで開催されています。遅れに遅れてしまいましたが、おすすめします。

「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」@fujitvart) 森アーツセンターギャラリー 
会期:2019年9月21日(土)~11月17日(日)
休館:9月24日。
時間:10:00~20:00
 *9月25日、26日、10月21日は17時まで。
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般2100(1900)円、大学・高校生1600(1400)円、中学・小学生1100(900)円
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
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「現在地:未来の地図を描くために」 金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館
「現在地:未来の地図を描くために」
第1期:2019/9/14〜12/19、第2期:2019/10/12〜2020/4/12



金沢21世紀美術館で開催中の「現在地:未来の地図を描くために」を見てきました。

2004年に開館し、今年で15周年を迎えた金沢21世紀美術館は、これまで1980年以降の現代美術を中心に、約4000点にも及ぶコレクションを蒐集してきました。

その一端を紹介するのが「現在地:未来の地図を描くために」と題した展覧会で、「エコロジー」、「エネルギーの伝播」、「抽象的な価値」、「身体」、「KOGEI」など、複数のテーマに沿って多様な作品を展示していました。

何やらワオーンと狼の遠吠えのような声が聞こえてきました。それが泉太郎の「30」で、2つの映像の少年と複数の大人たちが、狼の鳴き声を真似て呼びかける作品でした。


泉太郎「30」 2017年 金沢21世紀美術館

人が狼の声で互いに呼び合う様からして奇怪と言えるかもしれませんが、ここで泉はSNSなどの言語によらないことの多い、現代のコミュニケーションについて問いを投げかけているのかもしれません。


ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「驚異の小部屋」 2017年 金沢21世紀美術館

同じく一部に音を取り込んだのが、ジャネット・カーディフ & ジョージ・ビュレス・ミラーの「驚異の小部屋」でした。


ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「驚異の小部屋」 2017年 金沢21世紀美術館

展示室の中央には一台の古いキャビネットが置かれていて、引出しを開けると、カストラートの歌声やカーディフ自身の朗読など、作家のアーカイブより抽出された様々な音が鳴り響きました。またここでは引出しの開け閉めによって音が変化することから、キャビネットを楽器に見立て、鑑賞者を演奏家としても捉えているそうです。


エリアス・シメ「綱渡り:音を立てずに5」 2019年 作家蔵

エチオピア出身のエリアス・シメの「綱渡り:音を立てずに5」も興味深い作品ではないでしょうか。幾つかに区切られた長方形の平面には、主に曲線によってまだらな紋様が描かれていて、いわゆる抽象的なパターンが広がっていました。


エリアス・シメ「綱渡り:音を立てずに5」 2019年 作家蔵

もはや遠目では一体、何で作られているか分かりませんが、実のところ素材は携帯やパソコンなどから剥ぎ取られたワイヤーなどで、確かに近づくと無数の線の束で紋様が築かれていることが見て取れました。エリアス・シメは約25年以上も渡り、糸やボタン、プラスチック、動物の皮や布地、それに廃材などを用い、コラージュを制作してきました。


ペドロ・レイエス 「人々の国際連合 武装解除時計」 2013年 金沢21世紀美術館

メキシコのペドロ・レイエスは「人々の国際連合 武器解除時計」にて、不法所持から回収された銃を組み合わせて楽器にした作品を制作しました。また時計は中から解放される社会を目指すべく時を刻んでいて、約15分おきに作品は自動で動き、バチによって金属音が鳴りました。


クリス・バーデン「メトロポリス」 2004年 金沢21世紀美術館

クリス・バーデンの「メトロポロス」も目立っていました。一部にレゴブロックが用いられた大きなオブジェには、鋼鉄などによってビルが築かれていて、道路やモノレールが複雑に行き来していました。まさに横と縦へ広がり、終始、車や電車の目まぐるしく行き来する、現代の大都市のネットワークを表した作品と言えるのかもしれません。


オラファー・エリアソン「水の彩るあなたの水平線」 2009年 金沢21世紀美術館

光を用いたインスタレーションで知られた、オラファー・エリアソンの「水の彩るあなたの水平線」も見逃せません。ここでは暗室に水の張った器が置かれていて、ランプとプリズムによる波紋が壁に光の帯を作り上げていました。また光の帯は、鑑賞者が踏む入口の板の動きと連動していて、インタラクティブな仕掛けも取り込まれていました。

この他、ネトの体験型の「身体・宇宙船・精神」など、一連の大規模なインスタレーションも、展覧会の見どころと言えそうです。


ジュディ・ワトソン「グレートアーテジアン盆地の泉、湾(泉、水)」 2019年 作家蔵

やや駆け足気味の観覧になってしまいましたが、社会の問題意識を提起するようなテーマ設定はもとより、単に見栄え云々ではなく、コンセプトに重きを置いた作品が多く、思いの外に考えさせられる展示でした。また工芸の街、金沢だけあるのか、現代の工芸作家の作品を展示した「KOGEI」のコーナーも見応え十分でした。



さて繰り返しになりますが、金沢21世紀美術館は開館15周年を迎えました。


パトリック・ブラン「緑の橋」 2004年 恒久展示作品

もはや金沢を代表する観光スポットと化した美術館だけに、この日は平日にも関わらず、大勢の観光客で賑わっていて、チケットブースには待機列も生じていました。


フロリアン・クラール「アリーナのためのクランクフェルト・ ナンバー3」 2004年 恒久展示作品

ガイド本でも案内されていますが、金沢21世紀美術館はチケット購入の際に時間がかかることがあります。あらかじめコンビニのプレイガイドなどで前売り券を手配しておくことをおすすめします。


レアンドロ・エルリッヒ「スイミング・プール」 2004年 恒久展示作品

美術館の中で特に人気を集めていたのは、あまりにも有名なエルリッヒの「スイミングプール」で、プールの上から覗き込みつつ、下へフロアへと進んでは、またプールの上の写真を撮って楽しむ方がたくさん見受けられました。


レアンドロ・エルリッヒ「スイミング・プール」 2004年 恒久展示作品

実は私は今回、遅ればせながら初めて金沢21世紀美術館に行ってきました。



市中心部の香林坊や兼六園にも近い抜群のロケーションの上、SANAAによる360度ガラス張りの円形の建物など、明らかに目を引く施設で、全方位が正面ともいうべき開かれた動線も含め、いかに街のシンボルになっているのかが良く分かりました。



一方、館内は思いの外に複雑で、個々に独立した展示スペースを移動していると、時にどの場所にいるのかが分からなくなることもありました。ただそれも21世紀美術館の建物の1つの個性と言えるのかもしれません。


オラファー・エリアソン「カラー・アクティヴィティ・ハウス」 2010年 恒久展示作品

屋外に設置されたエリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」やフロリアン・クラールのチューバ状のオブジェなども、子どもたちやファミリーが入れ替わり立ち替わり見学、ないし遊んでいて、人が途切れることはほぼありませんでした。


ヤン・ファーブル「雲を測る男」 1998年 恒久展示作品

一通り、観覧を終えると、ちょうど日没が迫っていたため、タレルの部屋こと、「ブルー・プラネット・スカイ」へと足を運んでみました。


ジェームズ・タレル「ブルー・プラネット・スカイ」 2004年 恒久展示作品

この空間では、天井の中央部分が正方形に切り取られていて、壁際の椅子から雲などの靡く空を眺めることが出来ます。


ジェームズ・タレル「ブルー・プラネット・スカイ」 2004年 恒久展示作品

ほぼ快晴に近い晴天でした。ここではかつて旅した越後妻有の「光の館」のようなライトプログラムは行われませんが、しばし時間を忘れ、日が暮れるに従って移ろう空の光にぼんやりと見入りました。


大岩オスカール「壁面ドローイング 森」 2019年

なお「現在地:未来の地図を描くために」は、基本的に[1]と[2]に分かれた2会期制の展覧会です。

「現在地:未来の地図を描くために」
[1]2019年9月14日(土) 〜12月19日(木)
[2]2019年10月12日(土) 〜2020年4月12日(日)

第1期で45作家による約70点、第2期は会期中に展示替えがあり、トータルで75作家、約140点の作品が紹介されるそうです。そして[1]と[2]を同時に見られるのは、10月12日から12月19日の間になります。



また[2]の会期中のうち12月20日から翌年2月3日にかけては、館内設備の改修工事のため、全館休館します。お出かけの際はご注意下さい。



一部作品の撮影も可能でした。



「現在地:未来の地図を描くために」は2020年4月12日まで開催されています。

「現在地:未来の地図を描くために」 金沢21世紀美術館@Kanazawa_21
会期:[1]2019年9月14日(土) 〜12月19日(木)、[2]2019年10月12日(土) 〜2020年4月12日(日)
休館:月曜日。但し9月16日、9月23日、10月14日、10月28日、11月4日、2月24日は開館。9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)、12月20日(金)〜2月3日(月)、2月25日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 
 *金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1200(1000)円、大学生800(600)円、小・中・高生400(300)円、65歳以上1000円。
 *現在地[2](会期:2019年10月12日〜12月19日)にも入場可。
 *現在地[2]は一般450(360)円、大学生310(240)円、65歳以上360円。高校生以下無料。
  *( )内は20名以上の団体料金。
場所:石川県金沢市広坂1-2-1
交通:JR金沢駅兼六園口(東口)3番、6番乗り場よりバスにて約10分「広坂・21世紀美術館」下車すぐ。JR金沢駅兼六園口(東口)7番乗り場より城下まち金沢周遊バス約20分「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車すぐ。JR金沢駅兼六園口(東口)6番乗り場から兼六園シャトル約10分「広坂・21世紀美術館」下車すぐ。
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「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」 東京国立近代美術館工芸館

東京国立近代美術館工芸館
「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」
2019/9/13〜12/8



東京国立近代美術館工芸館で開催中の「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」を見てきました。


田辺竹雲斎(初代)「柳里恭式釣置花籃」 1900-1920年頃 アビー・コレクション

日本の竹籠や竹の造形作品に魅せられ、約20年以上も収集してきたニューヨークのダイアン&アーサー・アビー夫妻の竹工芸コレクションが、再び海を渡って日本へと里帰りしてきました。


右:飯塚琅かん齋「手付花籃」 1936-1949年頃 アビー・コレクション
左:藤井達吉「銅切透七宝巻雲紋手箱」 1920年 東京国立近代美術館

その数は約200点を超えるコレクションのうちの75点で、竹工芸に限らず、近代美術館所蔵の染織や花瓶などの工芸作品と合わせて紹介されていました。


飯塚琅かん齋「花籃 日朗」 1940年代頃 アビー・コレクション 他

まず会場で興味深いのは、竹工芸作家の作品を東日本と西日本、それに九州といった地域別に展示していたことでした。そもそも日本には600種類以上の竹や笹が存在していて、特に竹は主に日本の南の地方に生育してきました。大分県や山口県、それに栃木県が主な産地として知られています。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

また西日本の竹は柔らかく、しなり、東日本は固く、九州の竹は水分の含有量が多いという特徴を持っています。こうした竹の性質や、地域によって異なる竹工芸の史的展開などについても解説のパネルなど知ることが出来ました。


藤塚松星「潮」 1978年 アビー・コレクション

現代における竹工芸についても見逃すことは出来ません。ここ十数年、竹工芸は技法や構想においてより多彩である一方、歴史や地域性に対して敬意も示され、伝統と革新の双方を踏まえながら多面的に展開してきました。


生野祥雲斎「竹華器 怒涛」 1956年 東京国立近代美術館

そして近年は美術の素養を持つ作家だけでなく、美術との無関係の分野から竹工芸の道へと飛び込む人物もいるそうです。とはいえ、基礎から技を学ぶには5年から10年、さらに様式を発展させるには「十数年」(解説より)も要するとしています。その精緻でかつ、時に量感のある竹工芸を目にすれば、到底、一朝一夕に作られるとは思えませんが、やはり熟練の手仕事が重要になってくるのかもしれません。


飯塚小かん齋「白錆花籃 雲龍」 1990年 アビー・コレクション

2018年に菊池寛実記念智美術館で行われた「線の造形、線の空間」、それに今年に太田市美術館の「生誕100年 飯塚小玕齋展」(2019年)でも取り上げられた、飯塚琅かん齋や田辺竹雲斎、それに飯塚小かん齋の作品が複数出ていたのにも目を引かれました。実のところ、前者の展覧会が私にとって初めての竹工芸との出会いでもあり、あまり時間をあけることなく、このような形で再び竹工芸をまとめて見られたのも嬉しいところでした。


本田聖流「舞」 2000年 アビー・コレクション

それにしても特に現代の竹工芸に関しては、実用性云々や用途を超え、いわば端的なオブジェとして斬新でかつ、極めて大胆な作品も少なくありません。


長倉健一「花入 女」 2018年 アビー・コレクション

そもそもどのように編み上げたのかすら分からないほど精巧な竹工芸もありました。竹工芸の世界は発見や驚きに満ち溢れていると言っても差し支えありません。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

アビー夫妻は長年の竹工芸の収集に際し、綿密な研究を元にすることよりも、自らの「鑑識眼と美的嗜好」(解説より)に基づいて購入の決断を下してきたそうです。とはいえ、日本の東西の作品が網羅的にコレクションされていて、竹工芸の多様な魅力に接することも出来ました。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

これまでにもアメリカ国内の美術館に貸し出されてきたアビー・レクションですが、2017年から2018年にはニューヨークのメトロポリタン美術館で「日本の竹工芸:アビー・コレクション」としてまとめて公開され、約47万名以上を動員するなどして大きな話題を集めました。そして2020年にはコレクションが一括してメトロポリタン美術館へと寄贈されます。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

作品の撮影も可能でした。(フラッシュ、三脚、動画は不可。)


12月8日まで開催されています。なお東京展終了後、大阪市立東洋陶磁美術館へと巡回(2020/12/21〜2020/4/12)します。おすすめします。

「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館@MOMAT60th
会期:2019年9月13日(金)〜12月8日(日)
休館:月曜日。但し9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館し、翌火曜日は休館。
時間:10:00~17:00 
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般900(700)円、大学生500(350)円、高校生300(200)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展の観覧料で当日に限り、本館所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
場所:千代田区北の丸公園1-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩8分。東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅2番出口より徒歩12分。
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「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」
2019/11/1~12/15



東京国立近代美術館で開催中の「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」を見てきました。

日本画家、鏑木清方の代表作とされながら、1975年のサントリー美術館での展示以来、行方不明となっていた「築地明石町」、「新富町」、「浜町河岸」の3部作が、44年ぶりに所在が確認され、東京国立近代美術館にて公開されました。

いずれも同じのサイズの軸画で、中でも「築地明石町」は1927年、清方が帝国美術院展に出品し、「審査委員の絶賛を受け」(解説より)て、同美術院賞を得た作品でした。明治時代、外国人居留地であった築地明石町(現在の中央区明石町)を舞台としていて、微かに帆船のマストを望み、朝顔の咲く垣根を背景に、黒い羽織姿の女性が、袖を合わせながら振り返る光景を描いていました。



あたりは朝霧が立ち込めているのか、すっかり白んでいて、女性もやや肩を閉じつつ、衣を引き寄せては、寒そうな様子をしていました。またやや口元を引き締め、上目で後ろを向く表情は、思いのほかに凛としていて、女性の気位の高さを感じさせるものがありました。指にきらりと光る金色の指輪も艶やかではないでしょうか。

この作品に対して当時、外国人相手の妾をモデルとしたとの解釈がありましたが、清方は上流の夫人であると反論したそうです。モデルは清方夫人の女学校時代の友人で、清方に絵を習っていた江木ませ子とされています。

一方で「新富町」と「浜町河岸」は、ともに「築地明石町」の3年後である1930年に描かれた作品でした。うち花街を舞台とした「新富町」では、雨の降る中、蛇の目傘をさして歩く芸者を表していて、先を急ぎつつも路面を気にするのか、僅かに慌てた表情で足下を見やっていました。

右手に新大橋のシルエットが望む「浜町河岸」では、稽古帰りの娘が、扇を口にしつつ歩く姿を描いていて、髪には一輪の淡いピンク色のバラの簪をさしていました。口元に扇を当てる仕草など、どことなくあどけない表情も個性的と言えるかもしれません。


「築地明石町」、「新富町」、「浜町河岸」とも、モデルの年齢は言うまでもなく、表情、さらに季節感もが異なっていて、確かに3部作ならぬ「女三態」(解説シートより)として描いた清方のコンセプトも知ることも出来ました。また衣の模様や彩色など、図版では到底わからない繊細な描写も大いな魅力と言えそうです。

なお今回の特別公開は3部作のみに留まりません。その他にも清方の「三遊亭円朝像」や「明治風俗十二ヶ月」、それに伊東深水の描いた「清方先生寿像」など、館蔵の清方に関する作品が約15点ほど紹介されていました。いずれも優品ばかりで、スケールこそ小さいものの、粒揃いの清方展と捉えて差し支えありません。

さほど混雑していなかったものの、単眼鏡を片手にしながら、熱心に鑑賞されている方を少なからず目にしました。「築地明石町」を含む三3作は、今年6月、東京国立近代美術館が、都内の画商より計5億4000万円で購入したことでも話題となった作品でもあります。

何せ44年以上ぶりの一般向けの公開です。心待ちにしていた方も多かったのかもしれません。

最後に新たな清方展の情報です。東京国立近代美術館では、没後50年に当たる2022年、清方の大回顧展を開催するそうです。(京都国立近代美術館でも開催予定。)同館で清方展が開かれるのは、1999年の回顧展以来、2度目となります。こちらも約20年越しのため、大変な注目を集めるのではないでしょうか。

会場は、所蔵品ギャラリー第10室、つまり3階の日本画の展示室でした。通常、所蔵品ギャラリーは、コレクション展や企画展チケットで観覧出来ますが、今回の清方展は専用のチケットが必要でした。お出かけの際はご注意下さい。(企画展「窓展」とのセット券もあり。)

1つ上のフロア、4階の1室(ハイライト)では、同じく清方の「墨田河舟遊」があわせて公開されていました。


鏑木清方「墨田河舟遊」 1914年

第8回の文展で2等を受賞した6曲1双の屏風作で、左右に江戸後期の隅田川の舟遊びの情景を描いていました。


鏑木清方「墨田河舟遊」 1914年

ともかく目を引くのは右隻に表された大きな屋形船で、中では色とりどりの着物に身を包んだ女性らによって、人形の舞が艶やかに披露されていました。


鏑木清方「墨田河舟遊」 1914年

また屋形船が左隻にまで突き出すように広がる構図もダイナミックで、さも舟が画面の奥から左手前へと動くかのような臨場感もあるかもしれません。船頭の動きや風を受けた衣の表現しかり、川を進みゆく船の動きまでを巧みに示していました。

「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」の会場内の撮影は出来ません。(4階1室は撮影可。)



12月15日まで開催されています。

「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」 東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー第10室(@MOMAT60th) 
会期:2019年11月1日(金)~ 12月15日(日)
休館:月曜日。
 *但し11月4日は開館し、11月5日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般800(600)円、大学生400(300)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展の観覧料で当日に限り、「MOMATコレクション」も観覧可。
 *同時開催の「窓展」は別途観覧料が必要です。窓展とのセット券(一般1500円)あり。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「目  非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館

千葉市美術館
「目  非常にはっきりとわからない」
2019/11/2〜12/28



千葉市美術館で開催中の「目  非常にはっきりとわからない」を見てきました。

アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二を中心に活動する現代アーティストチームの「目」は、これまでにも資生堂ギャラリーでの個展(2014年)の他、さいたまトリエンナーレ(2016年)などにおいて、空間を大胆に変容させた作品を出展させては、人々の注目や関心を集めてきました。

その「目」による美術館初の個展が「非常にはっきりとわからない」で、「美術館の施設全体の状況をインスタレーション」(美術館サイトより)として展開した作品を公開していました。

*本エントリの内容は、主に美術館の公式サイトやリリースに記された情報、及び会場内撮影可能エリア(1階)の作品の感想で構成しています。メインの7階と8階の展示の具体的内容については触れていません。



ところで現在、千葉市美術館は、2020年の拡張リニューアルオープンに向けて工事中です。美術館の下の階に入居していた中央区役所は、今年の5月に複合施設「きぼーる」へ移転し、跡地にアトリエや美術図書室、常設展示室を開設すべく、整備が進められています。



よってしばらく前から建物外側にも工事用のフェンスが張られ、隣接地では拡張のための空調設備工事の準備も行われていました。



1階エントランスに到着すると、白い防炎シートが辺りを囲っていて、普段とは明らかに雰囲気が違うことが見て取れました。通常、千葉市美術館では、ビルの8階が受付に当たり、その後、8階から7階へと展示室が続いていますが、今回の「目」の個展は、1階のさや堂ホールに受付が設置されていました。



さや堂ホールとは、旧川崎銀行千葉支店の建物を復元保存したもので、8本の円柱が並ぶネオ・ルネサンス様式の天井高のあるスペースは、コンサートなどにも活用されています。



そのさや堂ホールから「目」の展示が始まっていました。受付を済ませ、ホールの内部を見渡すと、ほぼ全面が白く半透明のビニールで覆われていて、奥には高い足場も組まれていました。また雛壇には、美術館のものと思しき備品が半ば散乱するように置かれていました。



そして彫像らしきオブジェも梱包された状態にあり、足元には引越し業者の養生シートが張られるなど、さも展示の設営や準備の作業がそのままの状態で残されているようでした。



透明のビニールで囲まれたホールの出入り口を抜けると、今度は青い養生シートで覆われたエレベーターホールが姿を現しました。もはや展示を終えて、通常、観客は立ち入れない、作品の移設作業の場に立ち会っているかのような錯覚に陥るかもしれません。



この後、エレベーターにて8階、もしくは7階にあがり、「目」の展示を見ていく流れとなっていましたが、これ以上はネタバレに当たるため、伏せておきたいと思います。なお展示は、7階と8階のどちらのフロアからも自由に鑑賞出来るように作られていました。(その旨は案内にて受付されます。)



結果的に私は、7階と8階のフロアにて、約2時間近く滞在していたかもしれません。いずれのフロアも紛れもなく千葉市美術館でありながら、通常とは明らかに異なっていて、何度か上下に行き来すると、自分の立ち位置、あるいは何を見ていて、そして見ていないのかが分からなくなるほどでした。率直なところ、美術館を出た後も、何を見たのか、把握出来たのかが覚束ず、まさにタイトルの「はっきりと分からない」という言葉が強く残りました。



美術館のサイトに「様々な状況が集積されてゆく動的な展示空間」と記されていますが、私がこれまでに接した「目」の展示の中では、確かに最も動きを感じる内容でした。資生堂ギャラリーの個展の際、ギャラリー空間をホテルへと仕上げた「目」でしたが、今回はより美術館という場所や機能を強く意識しては、空間を築き上げていたのかもしれません。その意味ではたとえネタバレがあったとしても、見入る点が多いのではないかと思いました。またチバニアン、すなわち逆転地層という展示の1つのテーマも、作品に反映されているように感じられました。


怪訝な表情で場内を回っている方も少なからず目にしました。率直なところ、すぐに出てしまう方もおられるかもしれません。ともかくひたすらに「気付き」を意識させる展示でしたが、見終わると、「後から気になってきたり、もう一度確かめたくなったり」(美術館リリースより)するような内容ではありました。人の存在や時間も重要な要素でした。

千葉市美術館では初めてパスポート制のチケットが導入されました。一度、チケットを購入すると、会期中、本人に限り、何度でも入場することが出来ます。私も分からなく、見えていない部分を確かめに、改めて出向こうと思いました。



まずは体感しないことには何も始まりません。12月28日までの開催です。おすすめします。

「目  非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2019年11月2日(土)〜12月28日(日)
休館:11月5日(火)、11日(月)、18日(月)、25日(月)、12月2日(月)、9日(月)、16日(月)、23日(月)。
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
 *入場受付は閉館の30分前まで
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の19時以降は大学生無料、一般600円。
 *期間中、本人に限り何度でも展覧会へ入場可。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口よりC-bus(バスのりば16)にて「中央区役所・千葉市美術館前」下車。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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