都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「広がりのある風景画」 山種美術館 6/19
山種美術館(千代田区三番町)
「広がりのある風景画」
5/14~6/26
山種美術館で開催中の「広がりのある風景画」展を見てきました。
まず、一番始めに展示されていた正井和行の「流水」(1975年)に魅せられました。悠久の時を思わせるような大きな地平線をバックに、河が大きく何度も蛇行しながら滔々と流れています。手前側にスクッと立っている一本の細い木が、奥の地平線との対比を示して、構図に安定感を与えます。モノトーンのような落ち着いた彩色も好印象でした。
出品作品の中でも一際目立っていたのは、奥村土牛の「鳴門」(1959年)でした。朧げに浮かぶ淡路島の峰を背景に、真っ白な飛沫を上げながらグッと大きく渦巻く潮の様子が、極めてダイナミックに描かれています。また、油彩画のようにたっぷりと塗られた色が、波打つ海の立体感を巧みに表現して、水の重さすら感じさせるような高い質感を見せていました。これは文句なしに素晴らしい作品だと思います。
二つの作品が展示されていた川合玉堂も、大変に見応えがあります。「遠雷春秋」(1952年)は、奥に横たわる山々の連なりと、手前側に描かれた農作業の様子が対比されていて、とても奥行きを感じさせますが、さらにその二者の間が靄でぼかされた表現となっているのが実に見事です。靄から立ち上がってくる山の急峻な頂きは、広がりと高さを美しく自然に表現していました。
以前、この美術館で作品を見てからとても気になっている菱田春草も、一点展示されていました。縦に長い構図が印象的な「月下牧童」(1910年)です。真ん丸の月が上の方の遠い彼方に描かれていて、そこから目を下へ降ろすと、牧童が精彩な描写で表現されています。牧童の後ろで風になびく草の様子がまた魅力的で、後方へ向かうに従って徐々にぼかされているのも美しく感じました。
他には加山又造の「満月光」(1973年)などが特に印象に残りました。緑深くなった千鳥が淵を散歩しながら山種美術館で美しい風景画を楽しむ。あの辺りは良い散歩コースにも恵まれています。次の日曜日までの開催です。
「広がりのある風景画」
5/14~6/26
山種美術館で開催中の「広がりのある風景画」展を見てきました。
まず、一番始めに展示されていた正井和行の「流水」(1975年)に魅せられました。悠久の時を思わせるような大きな地平線をバックに、河が大きく何度も蛇行しながら滔々と流れています。手前側にスクッと立っている一本の細い木が、奥の地平線との対比を示して、構図に安定感を与えます。モノトーンのような落ち着いた彩色も好印象でした。
出品作品の中でも一際目立っていたのは、奥村土牛の「鳴門」(1959年)でした。朧げに浮かぶ淡路島の峰を背景に、真っ白な飛沫を上げながらグッと大きく渦巻く潮の様子が、極めてダイナミックに描かれています。また、油彩画のようにたっぷりと塗られた色が、波打つ海の立体感を巧みに表現して、水の重さすら感じさせるような高い質感を見せていました。これは文句なしに素晴らしい作品だと思います。
二つの作品が展示されていた川合玉堂も、大変に見応えがあります。「遠雷春秋」(1952年)は、奥に横たわる山々の連なりと、手前側に描かれた農作業の様子が対比されていて、とても奥行きを感じさせますが、さらにその二者の間が靄でぼかされた表現となっているのが実に見事です。靄から立ち上がってくる山の急峻な頂きは、広がりと高さを美しく自然に表現していました。
以前、この美術館で作品を見てからとても気になっている菱田春草も、一点展示されていました。縦に長い構図が印象的な「月下牧童」(1910年)です。真ん丸の月が上の方の遠い彼方に描かれていて、そこから目を下へ降ろすと、牧童が精彩な描写で表現されています。牧童の後ろで風になびく草の様子がまた魅力的で、後方へ向かうに従って徐々にぼかされているのも美しく感じました。
他には加山又造の「満月光」(1973年)などが特に印象に残りました。緑深くなった千鳥が淵を散歩しながら山種美術館で美しい風景画を楽しむ。あの辺りは良い散歩コースにも恵まれています。次の日曜日までの開催です。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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奥村土牛の“鳴門”は近代日本画の傑作です。波や渦潮を描くのは難しいと思いますが、渦潮のダイナミックな動きを見事に表現してますね。日本画追っかけの参考にしている“昭和の日本画100選”でこの鳴門は4位にランクされてます。川合玉堂の“遠雷春秋”も名画ですね。
7/2から始まる展覧会には足を運ぼうとおもってます。狙いはまだ見てない光悦、宗達の“新古今集鹿下絵和歌巻断簡”です。
>奥村土牛の“鳴門”は近代日本画の傑作
いやはや、やはり有名な作品でしたか。
私は全く知らなくて初めて拝見したのですが、
あの色と渦の力感、それに海全体の質感に驚かされました。
日本画であんなに重量感のある表現が出来るなんて素晴らしいです。
以前近美で拝見した小倉遊亀の「浴女」に匹敵するぐらい感動しました。
次の展覧会も是非足を運ぼうかと思っています。
こんばんは、コメントありがとうございます。
良い作品をたくさん持ってる美術館ですから、これからの展覧会も見逃せません。それにしても、ほとんどの作品が美術館所蔵というのが凄いです。
ただこれからの季節、地下鉄の駅から美術館までたどりつけるか不安です。体力つけないと(笑)
>ほとんどの作品が美術館所蔵
そうですよね。
もっと立派な美術館でも良いくらいの収蔵品ですよね。
>地下鉄の駅から美術館までたどりつけるか
イッセーさんは九段下からでしょうか。
私は大概半蔵門からトボトボと歩きます。
さすがに空気は悪いですが、
緑も多くて散歩コースとしてはそんなに悪くないですよね。