2008年 私が観た美術展 ベスト10

自分の心の中に深く残った展示の順に並べています。美術館、博物館での展覧会「ベスト10」です。

「2008年 私が観た美術展 ベスト10」

1 「大琳派展 - 継承と変奏 - 」(其一+まとめ/酒井抱一/光琳、乾山/宗達、光悦/波対決/風神雷神図/中期展示/平常展琳派/おすすめ作品/展示替え/レクチャー/会場写真
   東京国立博物館 10/7-11/16
2 「対決 - 巨匠たちの日本美術」
   東京国立博物館 7/8-8/17
3 「ライオネル・ファイニンガー展 - 光の結晶 - 」
   横須賀美術館 8/2-10/5
4 「觀海庵落成記念コレクション展 - まなざしはときをこえて - 」
   ハラミュージアムアーク 7/27-9/23
5 「速水御舟 - 新たなる魅力 - 」
   平塚市美術館 10/4-11/8
6 「マティスとボナール - 地中海の光の中へ - 」
   川村記念美術館 3/15-5/25
7 「コロー 光と追憶の変奏曲」
   国立西洋美術館 6/14-8/31
8 「ジュリアン・オピー」
   水戸芸術館 7/19-10/5
9 「モーリス・ド・ヴラマンク展」
   損保ジャパン東郷青児美術館 4/19-6/29
10 「線の巨匠たち」 
   東京藝術大学大学美術館 10/11-11/24
次点 「フェルメール展」 東京都美術館



今年は私の勝手な入れ込み様にお付き合い下さいまして本当にありがとうございました。お約束感はありますが、やはりベスト1は大琳派展以外にありえません。いくら対決展に出ていた個々の作品の方が重量感、もしくは見応えがあったとはしても、展示全体に一貫したストーリーがあり、また好きな抱一がぞろぞろ出ていた本展示にかなうものではありませんでした。堂々の一位、ランクインです。



首都圏郊外の美術館に出かける機会が増えましたが、その中でもファイニンガーとハラミュージアムアークコレクション展は、抜群のロケーションの力も借りてか、ともに深い感銘を受けた展覧会でした。ナチスに消された一人の画家、ファイニンガーの回顧展は、氏の孤高の画業を国内で初めて知らしめた企画として賞賛されるべきではないでしょうか。またハラミュージアムの觀海庵は、出来過ぎと思ってしまうほどに「作品を見せる。」という点において抜群の完成度を誇った展示です。芝生に浮かぶ建物自体の存在感をはじめ、サファイアの如く輝くクラインを永徳の虎が睨む構成は日本のどこを探しても見つかりそうもありません。息をのむかのような緊張感さえたたえていました。



速水御舟、コロー、ヴラマンクはそれぞれ私の偏愛の画家の回顧展です。何を見ても傑作に写ってしまう御舟、そして風景に激情を見るヴラマンクについてはともかく作品を愛でるばかりですが、コローに関しては秀逸な展示構成にも深く感心するものがありました。叙情的な風景画詩人コローだけではなく、初期作や肖像など、知られざる画家の魅力を知ったのは私だけではないでしょう。また秀逸な構成の点にかけては、作風に共感出来なかったとは言え、話題のハンマースホイも非常に見応えのある展覧会でした。こちらで一位であるのにも全く異論はありません。

現代美術系では水戸のオピーが別格です。実のところ世評のイマイチな宮島展も私は楽しめましたが、展示空間を巧みに利用してその世界感を披露したオピーの力量には改めて脱帽させられました。この展示を見てオピーを好きになった方も多そうです。



企画力には定評のある芸大美術館のヒット企画「線の迷宮」を外すことは出来ません。また同美術館ではベスト10に入らなかったものの、狩野芳崖展も非常に充実していました。一枚の大作、悲母観音へと至る軌跡がダイレクトに伝わってくる見事な構成であったと思います。

さて昨年同様、ベスト10とは無関係に今年特に印象深かった作品を以下に羅列します。如何でしょうか。(順不同)

ビュッフェ「コーヒー沸かしのある静物」/丸紅コレクション(損保)
ネト「リヴァイアサン」/ネオ・トロピカリア(MOT)
ピカソ「海辺を走る二人の女」/巨匠ピカソ(サントリー)
フェルメール「小路」/フェルメール展(都美)
ハンマースホイ「イーダ・ハンマースホイの肖像」/ハンマースホイ展(西美)
ルイス「ヌン」/モーリス・ルイス展(川村)
抱一、光琳「波図屏風」/大琳派(東博)
ポン(膨よりつきへんを取る)禹「老人ホーム」/アヴァンギャルド・チャイナ(新美)
クールベ「石割りの少年」/ピサロ展(大丸東京)
デイヴィス「ディスロケーション」/トレース・エレメンツ(オペラシティ)
狩野芳崖「悲母観音」/狩野芳崖展(芸大)
喜多川歌麿「高名美人見立て忠臣蔵 十二段つづき」/ベルギーロイヤルコレクション(太田)
ファイニンガー「魔狼フェンリル」/ファイニンガー展(横須賀市美)
岩佐又兵衛「須磨」、「浮舟」/源氏物語の1000年(横浜美)
コロー「青い服の婦人」/コロー展(西美)
伊藤晴雨「怪談乳房榎図」/円朝幽霊画展(全生庵)
宗達「蔦の細道図屏風」、蕪村「夜色楼台図」、廬雪「虎図襖」、若冲「石灯籠図屏風」/対決展(東博)
束芋「真夜中の海」/まなざしはときをこえて(ハラミュージアムアーク)
喜多川歌麿「寒泉浴図」/「NIPPONの夏」(三井)
ボーシャン「田舎の寓意、またはゼウスの誕生」/ボーシャンとモーゼス(損保)
須田国太郎「ヴァイオリン」/名作展(中野美)
セザンヌの「聖アントワーヌの誘惑」/芸術都市パリの100年展(都美)
ハディド「モバイルアートパビリオン」/モバイルアート(代々木)
ボナール「陽のあたるテラス」/マティスとボナール(川村)
薬師寺「日光・月光菩薩立像」/薬師寺展(東博)
ヴラマンク「下草と太陽」/ヴラマンク展(損保)
宮島達男「HOTO」/宮島達男|Art in You(水戸芸)
佐伯祐三「扉」/佐伯祐三展(笠間日動)
小川芋銭「狐隊行」/所蔵作品選(茨城県美)
熊谷守一「宵月」/熊谷守一展(埼玉県美)
川俣正「通路」/川俣正展(MOT)
ロートレック「サロンにて、ソファ」/ロートレック展(サントリー)
河鍋暁斎「新富座妖怪引幕」/酔うて候(成田市書道美)
岡村桂三郎「迦楼羅」/ニュー・ヴィジョン・サイタマ(埼玉県美)
狩野芳崖「寿老人」/吉祥のかたち(泉屋分館)

年内の更新は本エントリで終わりです。最後になりましたが、今年一年もこの拙い「はろるど・わーど」をご覧下さりどうもありがとうございました。それでは皆さま良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)

*関連エントリ
2008年 私が観たギャラリー ベスト10
2008年 私が聴いたコンサート ベスト5
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2008年 私が観たギャラリー ベスト10

コンサート編に引き続き、昨年より始めたギャラリーの展示「ベスト10」を挙げてみました。今年は未だかつてないほど画廊を巡り歩いていたような気がします。10点並べるだけでもかなり迷いました。

「2008年 私が観たギャラリー ベスト10」

1 「鴻池朋子 『私の作品は他者のもの』」 高橋コレクション 白金
2 「塩保朋子 - Cutting Insights」 SCAI
3 「町田久美 Snow Day」 西村画廊
4 「池田学展」 ミヅマアートギャラリー
5 「藤田桃子 - トネリコ・ユッグドラシル - 」 高橋コレクション 白金
6 「サラ・ジー展」 メゾンエルメス
7 「大西伸明 - 無明の輪郭 - 」 INAXギャラリー2
8 「大畑伸太郎 - さよなら三角」 YUKARI ART CONTEMPORARY
9 「桑島秀樹 - Vertical/Horizontal - 」 ラディウム
10 「雨宮庸介 ムチウチニューロン」 TWS渋谷
次点 「山下美幸 - ノンシャラン - 」 TSCA Kashiwa



目に焼き付くほどに眩しいガラスの狼の登場した鴻池展が不動の一位にランクインです。画廊に入った瞬間、暗室に浮遊するかの如く佇むその姿に心打たれたのは私だけではないでしょう。彼女の魅力を再確認し得るような展覧会でした。

2番に挙げた塩保展も、美しさという点においては決して鴻池展に見劣りするわけではありません。鴻池のオブジェが見せる美しさが破滅的だとしたら、塩保の紙のインスタレーションが瞬くそれは神秘的でした。またインスタレーション系として挙げたサラ・ジーも大変に魅力ある展示ではなかったでしょうか。チープな素材が空間の力も借り、一つの巨大な都市自然空間へと転化する様は圧巻の一言に尽きます。ついつい長居してしまいました。



町田、池田、そして藤田の各絵画展は、まさに描かれたものに漲る力感こそが全てです。ストイックな線描で艶やかでかつシュールな光景を生む町田に対し、細密でかつ濃厚な風景を一大パノラマに仕立てる池田、さらには妖気すら漂わせる大木に魂をこめる藤田と、どれもが唸らされるほどの高い完成度を誇っています。また町田久美に関しては、同画廊で偶然にお会いした画家本人とお話出来たのも良い思い出です。同時期に開催されていた高崎への展示も本個展がなければ行かなかったかもしれません。

浅草橋へ移転したレントゲンは相変わらずヒット続出です。上には桑島展だけを挙げましたが、その他にもカンノサカン、藤芳、佐藤良彦と見応えのある展示が続きました。またレントゲンの他、タロウナスの新スペース、そして近隣の両国へと移ったモモと、隅田川の東岸の新たなアートシーンに脚光が集まった一年ではなかったと思います。



残念ながらベスト10には入れませんでしたが、その他にもVOCAで印象深かった安田悠の登場したTWS本郷のグループ展、また見せることでは定評のあるMA2よりの「ゼロの庭」、さらには古美術と現代アートを融合させたオオタファインアーツの「アニマル・ガーデン」、そして走るレコードプレイヤーが断絶した音を紡ぐ無人島の「八木良太」なども深く印象に残りました。

展覧会編へと続きます。

*関連エントリ
2007年 私が観たギャラリー ベスト10
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2008年 私が聴いたコンサート ベスト5

年の瀬の恒例企画をはじめます。まずは音楽編から、独断と偏見によるコンサートのベスト5を挙げてみました。

「2008年 私が聴いたコンサート ベスト5」

1 コンポージアム2008 スティーヴ・ライヒの音楽 5/21
 ライヒ「18人の音楽家のための音楽」他 ライヒ/アンサンブルモデルン
2 ウィーン国立歌劇場 2008年来日公演 11/4
 ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」 グルベローヴァ/ハイダー
3 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008 5/4
 シューベルト「ピアノソナタ第21番」 ぺヌティエ
4 NHK交響楽団第1634回定期公演(Aプロ) 12/7
 ストラヴィンスキー 「エディプス王」 デュトワ
5 東京交響楽団第560回定期演奏会 10/17
 チャイコフスキー「交響曲第5番」他 キタエンコ/モーザー(17日)



率直なところ、一期一会のグルベローヴァを差し置くのも悩まないわけではありませんが、やはり今年一番心に残ったのは、ホールを熱狂の渦に巻き込んだライヒの実演、「18人の音楽家のための音楽」でした。音楽が耳だけでなく体の全身を駆け巡るかのように運動し、意識と感覚を麻痺させたという経験は後にも先にもこの公演だけです。ともかくミニマルがあれほど活気に満ちたものだとは思いませんでした。あの興奮はまだ体の中にしっかりととどまっています。

『女王陛下』グルベローヴァが希有な歌声を披露したロベルトも、当然ながら素晴らしい公演であったのは言うまでもありません。女王としての威厳はもちろんのこと、一転しての人としての悲しみや苦しみを吐露するピアニッシモの美しさは言葉になりませんでした。また好きなドニゼッティをこれほどのキャスティングで聴くチャンスもそう滅多にないでしょう。演奏会方式ながら劇の展開にぐいぐいと引き込まれました。

年間のコンサートの回数こそ減っていますが、ゴールデンウィークの風物詩、LFJだけは別です。結果、10程度聴いた公演の中では、物静かな語り口がシューベルトの夢幻的な調べを醸し出したペヌティエのソロが最も印象に残りました。技術面では難も感じられましたが、それを通り越した『何か』をあの時間で共有出来たような気がします。生演奏の醍醐味がそこにありました。

4、5は国内オーケストラのコンサートです。デュトワ、キタエンコといった実力派指揮者たちの好演を楽しむことが出来ました。在京オケの定期は私がクラシックを聴きた原点でもあるので、毎年同じことを言っているような気もしますが、来年こそはもう少し回数を増やして接したいと思います。

最後になりましたが、素晴らしい音楽を聴かせて下さる全ての音楽家の方に改めて感謝申し上げたいと思います。本当にどうもありがとうございました。

*関連エントリ
2007年 私が聴いたコンサート ベスト5
2006年 私が聴いたコンサート ベスト5
2005年 私が聴いたコンサート ベスト5
2004年 私が聴いたコンサート ベスト3(2003年の「ベスト10」を含む。)
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今月の記録 2008年12月

ベスト10を挙げる前に整理しておきます。恒例の見聞録です。今月中に見て聞いた展示、コンサートをリストアップしてみました。

展覧会

「石内都展」 目黒区美術館
「丸紅コレクション展」 損保ジャパン東郷青児美術館
「蜷川実花展」 東京オペラシティアートギャラリー
「ネオ・トロピカリア - ブラジルの創造力」 東京都現代美術館
「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ 写真展」 東京都現代美術館
「山口薫 展」 世田谷美術館
「所蔵琳派展 - 装飾美の世界 - 」 MOA美術館
「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」 国立西洋美術館
「フェルメール展」 東京都美術館
・「沖縄プリズム」 東京国立近代美術館

ギャラリー

「池田学展」 ミヅマアートギャラリー
「カンノサカン spread」 ラディウム
「杉田陽平 - プラトニック・ペインティング - 」 GALLERY MoMo Ryogoku
「八木良太 - 回路」 無人島プロダクション
「白 展」 MA2 Galley
「ダレン・アーモンド個展」 SCAI
「Something Sweet 4 Girls」  ギャラリー・ショウ
「小林孝亘 - 遠い光 - 」 西村画廊
「阿部未奈子展」 BASE GALLERY
「野又穫展 - SKYGLOW 遠景 - 」 高島屋東京店 美術画廊X

コンサート

「NHK交響楽団第1634回定期公演」 「ストラヴィンスキー:エディプス王」他 デュトワ(7日)

以下は、感想にまとめきれなかった展示です。前回と同じくコメント付きです。(石田徹也展は先月に鑑賞しました。また目黒の石内展は年明けに感想を書きます。)



「石田徹也展」@練馬区立美術館
 都内で全70点にも及ぶ石田作品を見ることなどもうしばらくないのではなかろうか。確かな写実に裏打ちされた具象的なモチーフがシュールに組み立てられることで、世の中の奥底に潜むドラマがあっけらかんとするほど見事につかみ取られている。やや斜めに社会を見つめた前半に反して、自身の生き様を丹念に振り返るような画業後半の作品が特に興味深い。余韻がずしりと残る展覧会だった。



「オン・ユア・ボディ」@東京都写真美術館
 少なくともこれまで見て来た新進作家シリーズではダントツに面白くなかった。失礼ながらもキュレーションに問題があったのではと思ってしまう。澤田や朝海などの力のある作家が気の毒。出来ることなら別の形で再度作品に接したい。



「沖縄プリズム」@東京国立近代美術館
 沖縄を見つめ、また当地で展開された多様なアートを多角的にひも解こうとする意欲的な展覧会。分かっていたとは言え、私には場所性が強すぎて消化しきれなかったが、こうした展示を世に問おうとする美術館の姿勢は買いたい。ただし沖縄の海はいつもあのようにして美しいのだろうか。もっと暗部や問題点へ切り込む作品があっても良かった。

1月の予定は年明けに廻します。
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「池田学展」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2階)
「池田学展」
11/26-1/17



約二年ぶりとなる待望の新作個展です。細密な空想世界がカオスを伴った『グレート・ウエーブ』へと繋がりました。ミヅマアートギャラリーで開催中の池田学展へ行ってきました。

前作「興亡史」も圧巻と言う他ありませんでしたが、横3メートル超、縦2メートルにも及ぶ今回の新作「予兆」も、まさに言葉を失うほどにテクスチャに濃密でかつ、イメージに無尽蔵なSF的世界が破壊的スケールで展開されています。おおよそ二年をかけて完成に至ったというその画面の中は、時に武者が合戦し、また氷河上でスキーヤーが滑り出し、そして地下の巨大大根が引き抜かれ、さらには重力地場の転換した空間に列車や飛行機が突っ込むという摩訶不思議なパワレルワールドが現出していました。この画中世界に入るには虫眼鏡が必要です。登場人物はおろか、描かれた生き物や乗り物を数えるだけでもゆうに日が暮れてしまうのではないでしょうか。まさに限界を超えた細密画でした。

細部に注視すると、モチーフが言わばダブルイメージ風に変化していくのも見逃せません。一見、木の枝葉だと思っていたものが実は兵士であり、また雪であったものが骸骨だったりと、目を凝らすと半ば顕微鏡を拡大するかのように未知の景色が次々と開けてきます。それに随所に隠された図像を暴くのも醍醐味の一つではないでしょうか。波頭の部分にとある地図が潜んでいます。また秘められたと言えば、毎作見つけるのにも困難な作家本人のサインですが、今作では計二箇所記されていました。実のところ発見出来ずに教えていただきましたが、「学」を探し出すのも面白いかもしれません。

あくまでも細部より積み重なれた全体に北斎が重なるからかもしれません。かつてないほどに激しい動きを伴っているように感じられました。池田の細密画は生きています。ドラマは眼前で今繰り広げられているのです。

1月17日まで開催されています。(年内は休廊。新年は8日より。)もちろんおすすめです。
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「丸紅コレクション展」 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「丸紅コレクション展 - 衣装から絵画へ 美の競演 - 」
11/22-12/28(本日終了)



丸紅のコレクション展は京都でも拝見しましたが、行き慣れた美術館で再度楽しむのも悪くありません。損保ジャパン東郷青児美術館で今日まで開催されていた「丸紅コレクション展 - 衣装から絵画へ 美の競演 - 」へ行ってきました。



ルーツの呉服商に由来する染め物にも優品が多くありますが、今回とりわけ惹かれたのはそれらの衣装図案、ようは下絵でした。縦縞に十字をあしらった竹内栖鳳の「磯つづれ玉」の他、造形的なもみじを色とりどりの蝶とともに並べる藤島武二の「もみじ、蝶」、さらには同美術館との縁も深い東郷青児による可愛らしい紺色の一羽の鳩を描いた「鳩」などは、どれもが甲乙付け難い魅力をたたえた一枚と言えるのではないでしょうか。そして白眉は朝倉文夫の「春雨」です。格子越しには梅の花びらがひらひらと舞い、その上下には傘がぱっと華やかに開いています。制作年は昭和(2年)に入っていますが、まさに大正ロマンの世界と言えそうです。



衣装、下絵の次には、丸紅がかつて収集してきた洋画、及び西洋絵画がズラリと揃っています。洋画で印象深いのは梅原龍三郎の「桜島」です。率直なところ梅原のタッチ、もしくは独特な朱色はやや苦手ですが、この藍色に染まる山々の景色は素直に見入るものがありました。セザンヌのサント・ヴィクトワールを連想します。広がる夕景もまた長閑でした。



西洋画で是非挙げておきたいのは、抜けるように烈しい赤が目に焼き付くビュッフェの「コーヒー沸かしのある静物」です。熱情すら感じさせる一面の赤を背景に、塔の如く起立する青い沸かし器、そして重厚感のある白の食器が、から恐ろしいまでの力強さをたたえながら敢然と並んでいます。いわゆる静物画にも関わらず、この事物の重み、そして迫力は一体何に由来しているのでしょうか。今回の展示で最も惹かれた一枚は間違いなくこれです。

最終日には入場のための待ち時間も発生していたそうです。盛況の展覧会でした。

本日で終了しています。
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「蜷川実花展」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「蜷川実花展 - 地上の花、天上の色 - 」
11/1-12/28



極彩色がオペラシティを奔放に乱舞します。蜷川実花の個展へ行ってきました。

原色の渦巻く蜷川作品を目にする機会は少なくありませんが、さすがにこれほど(450点超)の数をまとめて見ると、その眩しさに目がくらみ、また色の洪水に溺れるような感覚を与えられるのは致し方ないのかもしれません。展示されているのは、お馴染みのモチーフ、ようは造花や金魚、そして著名人をポートレートとして捉えた写真の数々です。どれもが対象の存在感、もしくは質感の全てを一切に排除し、シアンやマゼンタなどの原色にのみ包まれた人工美の世界へと還元しています。その選択に迷いはありません。色こそ命です。アプローチは愚直なほどにストレートでした。



そうした彼女の『らしさ』が一番出ているのはやはり金魚シリーズではないでしょうか。一種の人工物である金魚の様子を、愛くるしい眼差しでなめ回すほどひたすらに撮り続けています。ともかく蜷川の「可愛くないものでも可愛らしく、また可愛いものはより可愛らしく。」という姿勢は徹底しています。尾を靡かせ、くりくりした目を輝かせて水槽を駆け回る金魚はもちろん後者です。彼女にとっての関心のある事物は全てペット化していますが、まさに色に形として望みうる最高のそれが金魚なのでしょう。確かにこれほど金魚を可愛らしく撮れる作家を他に知りません。脱帽です。



常に対象をペットを愛でるような眼差しで捉えることは、どうしてもそれ自体に意思のある人間に関する限り、ある種モデルを冒涜するかのように作為の世界へと誘ってしまうのは当然のことではないでしょうか。蜷川の撮るポートレートにモデルの息づかいは皆無です。そんな彼女のアプローチに対抗していたのは唯一たけしのニヒルな表情でした。またモデルの草間が、ゆうに蜷川を上回る『カラリスト』であるのは皮肉めいています。ファインダーは跳ね返されていました。

エスカレーターでさえ彼女の目を通すとメルヘンチックになってしまうのには驚かされました。写真の一側面である虚構性を知り尽くしています。



会期末のせいか大変に混雑していました。(チケット購入のための行列あり。)なお本展示は明日で終了しますが、年明け以降、岩手、鹿児島、兵庫、高知の各美術館へと巡回します。(詳細は公式サイトをご覧下さい。)
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「カンノサカン spread」 ラディウム

ラディウム-レントゲンヴェルケ中央区日本橋馬喰町2-5-17
「カンノサカン spread」
12/5-27



眩い『三面金屏風』に、お馴染みの極細のチェーンが乱舞します。カンノサカンの新作個展へ行ってきました。

白と赤、黒と白と、これまでにも色の多様な組み合わせで意表を突いたカンノサカンですが、今回登場したのはまさに上記の通り、金屏風を連想させるゴールドそのものでした。磨き抜かれた光沢感のある金を背景に、絡み合う蔦とも、また燃え上がる炎とでも言えるような線が猛々しく舞い上がり、それがある瞬間にピタリと静止して独特な図像を描いています。またカンノサカンの線は、一見するとグラフィカルですが、今作は妖しい金の力を借りたのか、どこか艶やかでかつエロチックでした。ミクロに縮まる細部を凝視しつつ、全体へと広がる有機的な線描を追いかけるのはやはり痛快です。

明日まで開催されています。
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「ネオ・トロピカリア - ブラジルの創造力」 東京都現代美術館

東京都現代美術館江東区三好4-1-1
「ネオ・トロピカリア - ブラジルの創造力」
10/22-2009/1/12



失礼ながら森山展のついでに見るつもりでしたが、縁もないブラジルの現代アートが意外なほど楽しめました。「90年代後半に活躍する27組のアーティストでブラジルの創造力を紹介します。」(ちらしより引用。)東京都現代美術館での「ネオ・トロピカリア」へ行ってきました。



突っ込んだ面を抜きにして、視覚的に面白い作品が目立つのも本展示の特徴の一つかもしれません。メインはもちろん、最近、他の展示でも見せ場の多いネトの巨大インスタレーションです。高さ19メートルの吹き抜け空間を濃密に埋め尽くすお馴染みの布のオブジェは、MOTの箱でも全く見劣りすることがありませんでした。またネトの作品に包まれていると、胎内のイメージに由来する母性愛を連想するのは私だけでしょうか。かの伸縮性と丸みを帯びた造形物によって、優しく抱かれているかのような、異物を排除した安住の住処が生み出されています。この空間を味わうだけでも行った価値がありました。

視覚の面白さという点でもう一点挙げたいのは、暗室で金糸を組み合わせて仄かな光の織りなす『ショー』を見せたパペの「Tteia」です。細い金色の糸をちょうどハープの弦のように並べ、それを長い立方体状に交差させて、見るも珍しい光のカーテンを見事に作り出しています。立ち位置によって金糸が輝きだし、また時に陰る様子は、光を造形化して手に取れる物質にしたかのような錯覚さえ受けました。神秘的な金色の光の筋が美しく煌めいています。これは新鮮です。



その他では、迷路状になったウォークインのオブジェ内にて、色とりどりのカーテンを通過しながら、最後にはマンゴージュースを飲むことで色自体を体内へ取り込むというオイチシカの「フィルター・プロジェクト」、または花瓶をクラゲに見立てたマレッペのズバリ「クラゲ」、また多様なビーズなどで全面を覆うタペストリー、カペトの「ルチャ・リブレ」なども印象に残りました。結局、ブラジルの創造力が如何なるものかは分かりませんでしたが、それぞれの感性に見合う作品を見つけるにはさほど時間はかからないのではないでしょうか。

森山・ミゲル展と同じく、来年12日までの開催です。
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「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ 写真展」 東京都現代美術館

東京都現代美術館江東区三好4-1-1
「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ 写真展 - 共鳴する静かな眼差し - 」
10/22-2009/1/12



森山大道がサンパウロで、そしてミゲル・リオ=ブランコが東京で撮った作品を一堂に展示します。東京都現代美術館での二人展へ行ってきました。



被写体をモノクロームの中へ訥々と収める森山は、喧噪に包まれるサンパウロを前してやや押されてしまった面があったのかもしれません。いつもはざっくばらんに人々の息づかいはおろか、当地の臭いや湿り気まで切り込む彼の写真も、熱気に漲るかの地を手中とするには少々引っ込み過ぎて、かつ控えめであり過ぎるように思えました。とは言え、そうした外国における『異邦人』としての寂しさを感じさせる点は魅力の一つかもしれません。溢れんばかりに男女のひしめく街の奥底までを突っ込むには至りませんが、消失点へ向かって景色が消えゆくかのような作品では、例えば場末の空気感とその汚れまでを掴み取ることに成功していました。変わらないアプローチはいつもながらに健在のようです。



一方、ブラジル人写真家であるミゲル・リオ=ブランコは、それこそ東京を解体し、その奥に散らばる各パーツのみを抉りだして見せることに長けています。おおよそ見慣れたはずのトラックやサインネオンが、彼の手にかかると色の溢れ出す、実景を超越したカオスになってしまうには驚かされました。そしてそのカオスを示すのにより効果的なのが、彼独自のコラージュの技法でしょう。建物などの対象が持ち得ていた意味はおろか、場所性すら喪失した景色は、もはや街全体をズタズタに切り刻むかのようにして解体されていました。ミゲルのレンズを通した東京は、我々にとっての知る場所ではありません。知られざる東京を『異邦人』に教えてもらいました。

サブタイトルに「共鳴する」とありますが、実際には『共鳴』どころか『対決』も超え、言葉は悪いながらも、各々が明後日の方を向くかのようにバラバラに表現しています。その辺の奇妙なすれ違いも裏を返せば見所の一つです。

冊数が少なかったのでしょうか。図録は既に完売していました。

年明け12日までの開催です。
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「山口薫 展」 世田谷美術館

世田谷美術館世田谷区砧公園1-2
「山口薫 展 - 都市と田園のはざまで - 」
11/3-12/23(会期終了)



縁あって巡回前の群馬と二度見ることが出来ました。「都市と田園、そして抽象と具象のはざまで揺れ動いた」(美術館HPより)という昭和の画家、山口薫の業績を振り返ります。世田谷美術館での回顧展へ行ってきました。



群馬の寒村に生まれ、上京ののち世田谷に住んで絵に取り組み続けた山口の作風は、ともかく一概に捉えられないほどに多様ですが、渡欧して西洋画の影響を強く受けた初期作からして素朴な魅力をたたえています。透明感に満ちた深緑色の衣服を纏う女性を描いた「緑衣の女」(1931)は、はっきりとした目鼻立ちにモデルの強靭な意思が表れていますが、その肉感的でかつ力強い造形美は、さながらピカソの絵を連想させる部分があるのではないでしょうか。また延々と続く石造りの建物をテラス越しに眺めた「巴里の街」(1931)も、キュビズムを思わせるような構成を見て取れます。後に山口は、独特な菱形模様を用いる『抽象』を多く描きますが、それがたとえ彼の見た田舎の景色に由来しているとしても、この時期の西洋画受容の経験が何らかの形で作用していたのではないでしょうか。変わり続けた彼の画業の原点はここに見いだせそうです。



帰国後の山口は戦争下にあった世情にも関係してか、暗鬱な色彩に包まれた物静かな絵画を多く手がけていますが、中でも「蛸壺など」(1939)における寂寞感は私の心を深く捉えてなりません。彼の色と言える茶褐色を背景に、壷や杯などがあたかもトマソンのようにいくつも立ち並んでいます。また、須田のサーモンインクのような薄ピンク色に沈む果実を描いた「桃」(1938-40)も印象に残りました。青や赤など、様々に色を変える桃の枝が横たわっています。対比的に上方に広がる闇もまた不気味な雰囲気を感じさせていました。



菱形の抽象面を超えた晩年は、もはやイメージが水に溶けるかのように拡散しています。「沼面春の雨」(1960)や「水田を飛ぶカーチス式軽飛行機」(1964)は、田舎の実景を元にしながらも、山口の過去への追憶の念が現れた一種の心象風景です。景色が作家の体験と記憶の中へと入り込み、そこから孤高の詩情が滲みだしています。率直なところ、これらを『抽象』とするには相当の抵抗感がありました。詩が絵になって紡がれる瞬間がキャンバスに記録されているわけです。



展示は本日で終了しています。なお年明け1月より三重県立美術館(1/4-2/22)へと巡回します。

*関連エントリ
群馬県立近代美術館@群馬の森公園 2008/9
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「所蔵琳派展 - 装飾美の世界 - 」 MOA美術館

MOA美術館静岡県熱海市桃山町26-2
「所蔵琳派展 - 装飾美の世界 - 」
12/6-24



定評のある館蔵の琳派作品、約60点を概観します。MOA美術館の「所蔵琳派展」へ行ってきました。



「装飾美の世界」と題されていますが、別に何か特段のテーマ性を持って企画されている展示というわけではありません。言ってしまえば、宗達、光琳、抱一らの琳派の絵師が一括りになって紹介されている優品展です。気軽に楽しめます。以下、印象深かった作品を抜き出してみました。(出品リスト

「竹蒔絵硯箱」 伝本阿弥光悦
朽ちた竹が蒔絵としてあしらわれている。光悦らしからぬ寂寥感が感じられた。

「芍薬摺絵古今集和歌巻」 本阿弥光悦
雲母による芍薬が透き通るように浮かび上がる。和歌の書は実に流麗。

「忍草摺絵古今集序書巻」 本阿弥光悦
伸びやかに靡く忍草が金銀泥で描かれている。仮名に見る躍動感は見事だった。



「軍鶏図」 俵屋宗達
宗達の水墨画。「蓮池水禽図」のような繊細な表現は見られず、むしろ大胆なたらし込みを用いての弛みのある線や面が美しい。足下に生える草花はどこか健気に映る。



「佐野渡図」 尾形光琳
琳派ではお馴染みのモチーフをとる一枚。貴人と従者がともに手を頭上にそえ、慌てて雪中を進みゆく様子が描かれている。(ただし抱一の作と異なり、雪が舞う様子を殆ど確認出来ない。)着衣の鮮やかな色遣いに目を奪われた。

「色絵十二ヶ月歌絵皿」 尾形乾山
大琳派展の「和歌花鳥図角皿」を連想させる十二点揃いの作品。この手の作品はいつ見ても楽しい。十二ヶ月花鳥図の器バージョン。

「白蓮図扇面」 尾形乾山
扇面に白い蓮が二輪ほど描かれている。一つは花開き、もう一つは小さな蕾である構図が、抱一の「白蓮図」に類似していた。何らかの関係があるのだろうか。

「灑水観音図」 酒井抱一
図版で一度も見たことがない珍しい仏画。細密な線描は「水月観音図」を連想させる。着衣の装飾まで神経が通っていた。

「雪月花図」 酒井抱一
大琳派展でも出ていた抱一の代表作の一つ。雪の重みにしなる松の表現はいつ見ても美しい。



「藤蓮楓図」 酒井抱一
左から楓、蓮、藤の描かれた三幅の軸画。抱一にしてはなまめかしい白蓮が印象深い。一枚一枚、丁寧に描かれた藤の花びらもまた美しかった。山種の琳派展で出ていた光甫の作を模したものだろうか。



ちなみに今回、MOAと聞けば誰しもが期待してしまう光琳の至宝、「紅白梅図屏風」の展観はありません。今更文句を言っても仕方ありませんが、琳派を銘打ったのであれば、たとえ期間を限定してでも展示するべきだったのではないでしょうか。ましては今年は光琳の記念年でもあったわけです。分かっていたとはいえ、こればかりは極めて残念でした。



クリスマスイブ、明後日の24日まで開催されています。

*関連エントリ
MOA美術館@熱海 2008/12
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MOA美術館@熱海 2008/12

近場なので『旅』とまではいかないかもしれませんが、実のところ熱海へ行ったのは今回が初めてでした。もちろん目当ては、所蔵琳派展を開催中(24日まで)のMOA美術館です。



出るのが遅かったので着いたのはお昼を過ぎていました。はじめは18きっぷを使うつもりでいましたが、よく考えるとこの年末年始に5回分をとても消化出来そうもありません。よって、新宿から小田急線の急行に乗り、小田原を経由して東海道線で向かうことにしました。所要時間は東京駅から東海道線を使うのとほぼ同じです。急ぐわけでもないのでのんびりと進みます。



熱海駅前は足湯の他、ロータリーも整備されていて、何とか観光地の雰囲気を保っていました。いつもは通過するばかりの場所に降り立つのはやはり新鮮です。美術館へはバス便が意外と充実しています。(休日の昼間は10分に1本。)エンジンを唸らせながら、とても歩けないような超絶の坂を登ること約10分、あたかも熱海を支配するかのような山上の最高のロケーションに美術館は建っていました。これは想像以上の荘厳な門構えです。

  

入口で購入済のチケット(ぴあを通すと会期中も前売価格で購入可能です。コンビニ端末を操作すれば手数料もかかりません。)を提示し、中へ入るとすぐに見えてきました。MOA美術館でもとりわけ有名な七色に光るエスカレーターです。途中、ホールを一回経由し、計4基のそれを乗り継ぐこと数分、いつの間にか眺めも爽快な本館前にたどり着いていました。まさに絶景です。熱海より広がる相模灘が一望出来ました。





ともかく館内を歩いて感じたのは、黄金の茶室や能楽堂の他、計10にも及ぶ展示室の連なる建物の重厚感と、係の方の親切な対応です。気持ち良く作品を見られる環境としては、この手の施設でも群を抜いているのではないでしょうか。(ただし団体客が多いため静粛とはいきません。)もちろん所蔵品も充実しています。仁清、鍋島から隋や宋、明、それに高麗の中国、朝鮮の陶磁器、また海北友松の「四季山水図屏風」などの名品をじっくり楽しむことが出来ました。(出品リスト



  

  

裏手に廻ると竹林の横に、「光琳屋敷」をはじめとする日本家屋が建ち並んでいます。これは光琳自らが書いたという図面を元に復元された、数寄屋造りの建物です。隣接する茶屋を合わせ、ちょっとしたテーマパーク気分を味わいました。



鑑賞を終えて駅へ戻った後、少し時間が空いたので、市内を散歩してみることにしました。商店街を抜け、昭和ムードにくたびれた市街地を降りると、こじんまりとした砂浜の海岸線が広がっています。駅からは結構距離がありました。



かねてより苦戦の伝えられる熱海ですが、確かにそぞろ歩きするのには街が猥雑な上、車の交通量も多く、温泉地特有ののんびりとした風情はまるでありません。結局、たどり着いたのは「お宮の松」でした。何故かここだけはカメラを片手にした方が多く集っています。

  

シャッターも目立つ古い町並みも、よく見るといくつか趣ある建物があることが分かります。結局、土産物屋などをひやかしながら、1~2時間近くはウロウロとしていました。



  

帰りは往路と同じく、小田原まではJRで戻りましたが、その先はもう一つの目当てでもあった、フェルメールブルーに輝く小田急線特急、その名も「青いロマンスカー」に乗りました。このブルーが果たしてフェルメールカラーなのかはともかく、シートからデッキ部分までに至る総木目調の内装、またLEDも用いた間接照明の美しい丸みを帯びた天井など、まさに伝統のロマンスカーの名に恥じない際立った上質感があります。小田原から終点の北千住まで約2時間弱、何かとスローな小田急と、追い越し設備のない千代田線を走るので速達効果はありませんが、都心を通過して千葉方面まで一本で行くのは大変に快適でした。その居住性を鑑みれば特急料金の1070円はかなりお得です。



琳派展の感想は次回に書きたいと思います。

*関連エントリ
「所蔵琳派展 - 装飾美の世界 - 」 MOA美術館
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伊藤若冲の「象鯨図屏風」が発見される

若冲が晩年になって描いたとされる水墨の大作「象鯨図屏風」が、このほど北陸の旧家より発見されました。

「白い象と黒い鯨、大胆に描く 伊藤若冲、晩年の屏風」(朝日新聞)
 *屏風の写真図版が拡大可能です。

「伊藤若冲の大作「象鯨図屏風」、北陸の旧家で見つかる」(読売新聞)
 *河野元昭氏のコメントが付いています。

「若冲、最晩年の大作屏風 北陸の旧家で『象鯨図』発見」(東京新聞)
 *辻惟雄氏による鑑定内容の概略が記載されています。





上の発見作を見て思い起こすのは、1928年、大阪美術倶楽部にて3100円という値を付けられて以来、長らく行方不明になっていたという同名の屏風(下図版)です。同作品については「異能の画家 伊藤若冲」(新潮社とんぼの本)の91頁、もしくは「週刊日本の美をめぐる - 脅威のまなざし 伊藤若冲」(小学館ウィークリーブック)の27頁などに記載がありましたが、Web上でもお馴染み、弐代目・青い日記帳の「ゾウとクジラが観たい」で丁寧に紹介されています。図像を見て、その奇抜な構図感に圧倒されたのは私だけではなかったのではないでしょうか。一目見たいと心から思うようなインパクトがありました。





しかしながら見比べると、行方不明作と発見作には細部においてかなりの相違点があります。例えば波(発見作の方が波頭が細かい。)、鯨(行方不明作の造形は抽象的。)、象(発見作には長い尾がついている。)、また丘の植物(行方不明作には植物がない。)などを挙げても、少なくとも同一作とするには無理があると言わざるを得ません。もちろんこの点については当然ながら発見に携わった研究者にも認識されており、上記引用の記事において辻氏は「前作(行方不明作)の評判が良かったのでもう一作描いた(発見作)のではないか。」と述べていました。とても鮮明とは言えない昔の図版と、今世に出て来た実物を比較するのは困難を極めそうですが、二者の関係云々についても今後さらなる研究が必要となりそうです。

 


(若冲の描いた象。左上から白象群獣図、白象図、下、樹花鳥獣図屏風の部分。)

ちなみに発見作は落款に「米斗翁八十二歳画」と記載されていることから、若冲の最晩年にあたる1795年前後に描かれたものであることが分かっています。その頃の若冲といえば、とうに「動植綵絵」を描き終え、また対決展にも出ていた「仙人掌群鶏図」の制作も完了し、京都深草の石峰寺に隠棲して、石造の「五百羅漢像」を手がけていた時期でした。晩年、近郊の山裾にて比較的侘しい生活を送っていたはずの若冲が、何故にこのような気宇壮大な大作屏風を手がけたのでしょうか。色々と謎めいた部分もまた多くあります。

「異能の画家 伊藤若冲/狩野博幸/新潮社」

公開は早くとも2009年秋以降になるそうです。まずは実際に見られる日を心待ちにしたいと思います。
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「杉田陽平 - プラトニック・ペインティング - 」 GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo Ryogoku墨田区亀沢1-7-15
「杉田陽平 - プラトニック・ペインティング - 」
11/29-12/20



この激しきアクリルのタッチは絵画表現を超越しています。昨年のシェル美術賞展にて審査員賞を受賞した画家、杉本陽平の個展へ行ってきました。



最上段に載せたDM画像では、例えばブラマンクの熱気と、その背景に広がるリヒターの抽象面を合わせたような印象を受けますが、実際の作品を見ると、マチエールというよりも殆ど工芸と化したような質感に驚かされるのではないでしょうか。絵具がキャンバスへこびり付き、ドギツイ原色の面が、複雑に合わさることで船や人物像をかろうじて象っています。隆起し、また爛れた絵具はあたかも生き物のようです。色は目に刺さるように主張し、せめぎあっていました。強烈な個性です。



この独特な感触は、絵具を一度別の場所で抽出し、それをキャンバスへ貼付けることで生み出されています。つまり絵画というよりも一種のコラージュです。展示では、彼が絵具を混ぜ合わせて面を形作る紙パレットが紹介されていました。下地はキャンバス上へ直接絵具を絞り出していますが、主要なモチーフは全て固まった絵具の『板』を、半ばパズルのようにはめ込んでいるわけです。



展示は本日(20日土曜日)で終了します。
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