「2019年 見逃せない美術展」 日経おとなのOFF

年の瀬も近づき、今年の展覧会の振り返りとともに、来年を見据えた記事も目立つようになってきました。

「日経おとなのOFF/2019年見逃せない美術展/日経BP社」

そのうち、毎年恒例と化しているのが、雑誌「日経おとなのOFF」の「絶対見逃せない美術展」特集で、2019年の展覧会の開催情報を多く掲載していました。



まず冒頭を飾るのが、カラヴァッジョの「ホロフェルネスの首を斬るユディト」と、クリムトの「ユディトI」、それに同じくクリムトの「パラス・アテナ」などで、いずれも2019年に開催される「カラヴァッジョ展」、「クリムト展 ウィーンと日本1900」、それに「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」で出展される作品でした。実際のところ、クリムトに関しては、大型の展覧会が2件も続くだけに、2019年で最も注目される西洋美術展になるのではないでしょうか。


つい先だっても、「クリムト展 ウィーンと日本1900」に、クリムトの最大規模の作品となる「女の三世代」(ローマ国立近代美術館)の追加出品も決まりました。

また全国3会場を巡回する「カラヴァッジョ展」は、約10点の作品が来日するものの、会場で一部の出展作が異なるため、どこで見るのか悩ましく思う方も多いかもしれません。

「カラヴァッジョ展」 北海道立近代美術館(8月10日~10月14日)
 *名古屋市美術館(10月26日~12月15日)ほか、あべのハルカス美術館へ巡回。
「クリムト展 ウィーンと日本1900」 東京都美術館(4月23日~7月10日)
 *豊田市美術館(7月23日~10月14日)へ巡回。
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」 国立新美術館(4月24日~8月25日)
 *国立国際美術館(8月27日~12月8日)へ巡回。



そして続くのが、雑誌表紙も飾ったマネの「フォリー=ベルジェールのバー」の出展される「コートールド美術館展」、「ギュスターヴ・モロー展」、「ラファエル前派の軌跡展」、「ゴッホ展」などで、今年の「フェルメール展」、「ムンク展」と同様、2019年も西洋絵画に関した展覧会に人気が集まりそうです。

「コートールド美術館展」 東京都美術館(9月10日〜12月15日)
 *愛知県美術館(2020年1月3日〜3月15日)ほか、神戸市立博物館へ巡回。
「ギュスターブ・モロー展 サロメと宿命の女たち」 パナソニック汐留ミュージアム(4月16日〜6月23日)
 *あべのハルカス美術館(7月13日〜9月23日)ほか、福岡市美術館へ巡回。
「ラファエル前派の軌跡展」 三菱一号館美術館(3月14日〜6月9日)
 *あべのハルカス美術館(10月5日〜12月15日)へ巡回。
「ゴッホ展」 上野の森美術館(10月11日〜2020年1月13日)
 *兵庫県立美術館(2020年1月25日〜3月29日)へ巡回。

一方の日本美術で大きく取り上げられていたのは、若冲、蘆雪、蕭白、国芳らに加え、白隠や其一の作品が一堂に会する「奇想の系譜展 江戸絵画 ミラクルワールド」でした。奇想と言えば、一昨年、東京都美術館で開催された「若冲展」が、連日、凄まじい行列となり、社会現象となるほどに話題を呼びました。ひょっとすると「奇想の系譜展」でも、美術ファンの垣根を超えたムーブメントがおきるのかもしれません。


「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」 東京都美術館(2月9日〜4月7日)

「絶対見逃せない 2019年 美術展」は読み物としても充実していました。冒頭のカラヴァッジョやクリムトも、「2019年に見るべきスキャンダラスな美女たち」と題した、作家の中野京子さんのガイドで、ほかにも美術史家の山下裕二先生と、画家の山口晃さんの「奇想の系譜展 Special対談」も読み応えがありました。



そもそも単に特集は、「噂のポートレイト」や「数寄者達の事件簿」、それに「名僧の至宝」など、テーマをもって構成されていて、単なる展覧会の紹介ではありませんでした。さらに各記事も、例えば「カラヴァッジョの濃すぎる人生」ではバロック美術が専門の宮下規久朗先生、また「スター絵師たちのヒットの法則」では北斎館の安村敏信館長がアドバイザーとしてコメントを寄せるなど、専門家の見地も加わっていました。



「2019年に見られる名画でつづる 西洋美術史入門」も有用で、来年に見られる西洋絵画を参照しながら、大まかな西洋美術史を俯瞰していました。また雑誌の本編以外にも、美術館の広告が多いのが特徴で、各館の展示情報を得ることも出来ました。心なしか、年々、美術館の広告が増しているかもしれません。

日本美術でほかに着目しているのが、「佐竹本三十六歌仙と王朝の美」で、いわゆる絵巻切断事件で37幅に切り分けられた佐竹本三十六歌仙絵のうち、少なくとも21幅(以上)が京都国立博物館で公開されます。一部の佐竹本は、単発的に見る機会も少なくありませんが、これほどまとまって紹介されるのは稀で、実際にも過去最大のスケールの展示となります。

「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」 京都国立博物館(4月13日〜6月9日)
「佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」 京都国立博物館(10月12日〜11月24日)


さらに同じく京都国立博物館では、「一遍聖絵」の12巻、130メートル超が公開される「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」も開催されます。ともに同館の単独の展覧会で、巡回はありません。



特別付録の「美術展100ハンドブック」も情報が満載でした。年間を通した100の美術展をカレンダー形式で掲載されている上、各展覧会の情報を、開催館、会期、見どころなどに分けて紹介していました。その中より、私が特に注目したい展覧会をいくつかピックアップしてみました。(上に掲載した展覧会を除く)

「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」 愛媛県美術館(2018年12月19日~3月24日)
 *Bunkamura ザ・ミュージアム(4月27日~6月30日)ほか、静岡市美術館、広島県立美術館へ巡回。
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」 ひろしま美術館(1月3日~3月24日)
 *東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(4月20日~6月30日)へ巡回。
「世紀末ウィーンのグラフィック」 京都国立近代美術館(1月12日~2月24日)
 *目黒区美術館(4月13日~6月9日)へ巡回。
「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」 国立新美術館(1月18日~4月1日)
「クリスチャン・ボルタンスキー」 国立国際美術館(2月9日~5月6日)
 *国立新美術館(6月12日~9月2日)ほか、長崎県美術館へ巡回。
「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ」 国立西洋美術館(2月19日~5月19日)
「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」 国立新美術館(3月20日~5月20日)
 *京都国立近代美術館(6月14日~7月28日)へ巡回。
「国宝 東寺 空海と密教曼荼羅」 東京国立博物館(3月26日~6月2日)
「百年の編み手たち 流動する日本の近現代美術」「MOTコレクション ただいま/はじめまして」 東京都現代美術館(3月29日~6月16日)
「アイチアートクロニクル 1919-2019」(仮) 愛知県美術館(4月2日~6月23日)
「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」 千葉市美術館(4月13日~5月26日)
 *静岡市美術館(6月8日~7月28日)へ巡回。
「塩田千春展:魂がふるえる」 森美術館(6月15日〜10月27日)
「メスキータ展」 東京ステーションギャラリー(6月29日〜8月18日)
「原三渓の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館(7月13日〜9月1日)
「円山応挙から近代京都画壇へ」 東京藝術大学大学美術館(8月3日〜9月29日)
 *京都国立近代美術館(11月2日〜12月15日)へ巡回。
「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(8月31日〜10月20日)
 *山口県立美術館(11月2日〜12月22日)へ巡回。
「美濃の作陶」 サントリー美術館(9月4日〜11月10日)
「バスキア展」 森アーツセンターギャラリー(9月21日〜11月17日)
「大浮世絵展〜五人の絵師の競演」 江戸東京博物館(11月19日〜2020年1月19日)

2019年は改修工事などを終え、再開館する美術館が幾つかあります。うち東京では、都現代美術館が3年の休館を挟み、2019年3月にリニューアルオープンします。それを記念したのが、「百年の編み手たち 流動する日本の近現代美術」と「MOTコレクション ただいま/はじめまして」で、全館規模でコレクションが公開されます。また愛知でも4月に県美術館がリニューアルを終え、「アイチアートクロニクル 1919-2019」で再開し、愛知県の地域コレクションが紹介されます。ともに美術館の核である、コレクションに目を向ける良い機会となりそうです。


現代美術では「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」(国立新美術館)に、「クリスチャン・ボルタンスキー」(国立国際美術館・国立新美術館・長崎県美術館)、「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館)のほか、「バスキア展」(森アーツセンターギャラリー)などに関心が集まるのではないでしょうか。また誌面には記載がありませんが、2019年は、「瀬戸内国際芸術祭」、「あいちトリエンナーレ2019」、「岡山芸術交流2019」などの芸術祭も予定されています。



基本的に掲載情報は、関東、関西の美術館や博物館の大型展が中心です。それ以外の地域や小さな美術館の展覧会は、あまり網羅していません。とは言え、「美術展100ハンドブック」、「2019年美術展・名画カレンダー」、「クリムト・クリアファイル」の付録もついていて、税込820円とはなかなかお得ではないでしょうか。来年の展覧会のスケジュールを大まかに把握するのに、最適な一冊と言えそうです。


「日経おとなのOFF」の美術展特集は、毎年、人気があり、去年も一時、書店で品切れとなったこともありました。まずはお早めに手にとってご覧下さい。

「日経おとなのOFF 2019年1月号 絶対見逃せない 2019年 美術展」
出版社:日経BP社
発売日:2018/12/6
価格:820円(税込)
内容:「絶対見逃せない2019年美術展」。フェルメール、クリムト、マネ、ベラスケス、カラヴァッジョ、ゴーギャン、ゴッホ、若冲、蕭白、北斎---。中野京子と読み解く恐い! ?名画美女。60年ぶりの帰還行方不明だった モネ「睡蓮」。他
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「近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」 求龍堂

求龍堂より刊行された「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」を読んでみました。

「生誕130年 佐藤玄々/求龍堂」

明治21年に福島県の相馬で生まれた佐藤玄々(朝山)は、宮彫師の父や伯父に木彫を学んでは上京し、山崎朝雲に入門すると、野菜や小動物などの小像から、大型の歴史人物像など、多様な木彫を制作しました。



その玄々の制作の全貌を紹介するのが、「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」(求龍堂)で、時間を追って足跡を辿りつつ、日本彫刻と西洋彫刻を半ば融合した、玄々の独自に辿り着いた木彫の魅力について明らかにしていました。



玄々といえば、日本橋三越本店の1階のホールにそびえ立つ「天女(まごころ)」が圧倒的に知られていますが、何も当初から巨大な木彫を手がけていたわけではありませんでした。日本美術院の同人に参加し、奈良で仏像を研究したのち、1年半パリに留学した玄々は、ブルーデルの美術研究所に通い、ジャコメッティと交流するなど、幅広い分野の彫刻を吸収しては、制作に活かしていました。



また帰国後に取り込んだ動物の作品も可愛らしく、玄々は馬込の自宅周辺にあった牧場で、鶏やウサギ、それに牛などの動物をよく観察していたこともあったそうです。一連の動物彫刻はフランソワ・ポンポンとの類似性も指摘されていて、筍や白菜などの野菜彫刻は、中国の宋元画の蔬菜図に関連性を見る向きもあるそうです。玄々は「東西のイメージを自在に翻案」(解説より)した彫刻家でもありました。



鳩や鳥、それに蜥蜴なども魅惑的ではないでしょうか。極めて写実的に表された蜥蜴の一方、鳩などはかなり形を大胆に捉えていて、振り幅の広い作風も、玄々の面白いところかもしれません。



はじめに朝山と称していた佐藤が、玄々と号を改めたのは、戦後、昭和23年になってからのことでした。昭和26年に三越の社長より、日本橋本店に設置するための記念像を依頼された玄々は、例の「天女(まごころ)」を構想し、弟子たちとともに制作をはじめました。何せ10メートルにも及ぶ超大作だけに、2年の予定で完成するはずが、結果的に10年の歳月が費やされたそうです。本書においても、「天女(まごころ)」の制作プロセス、そして賛否入り混じった評価などについて、細かに触れていました。



なおまた戦前、戦中に関しては、震災や戦争でアトリエを焼失するなどして、多くの作品が失われました。それも、玄々の評価が定まらない一因と言えるのかもしれません。



「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」(求龍堂)には、図版はもとより、複数の論考や資料写真、さらに年譜、文献目録など、玄々の全てが記されていると言っても良いかもしれません。また玄々は過去の展覧会のカタログが完売しているため、現時点で手に入れやすい資料は、この本しかありません。また酒豪であった玄々の酒にまつわるエピソードも記載されるなど、作家の知られざる生き様も伺うことが出来ました。

最後に玄々の展覧会の情報です。現在、生地である福島県の県立美術館にて、「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」が開催されています。



「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」 (福島県立美術館)
会期:2018年10月27日(土)~12月16日(日)
https://art-museum.fcs.ed.jp

同県では初の大規模な展覧会で、木彫、ブロンズ、石膏原型、墨画など、約100点の作品が公開されています。そして本書も、玄々展の公式図録兼書籍として発売されました。

また展覧会は福島会場終了後、来年1月から3月にかけ、愛知県と東京都に巡回し、計3つの会場で行われます。

「生誕130年 佐藤玄々<朝山>展」 巡回スケジュール
碧南市藤井達吉現代美術館:2019年1月12日(土)~2019年2月24日(日)
日本橋三越本店: 2019年3月6日(水)~2019年3月12日(火)



東京会場は「天女(まごころ)」で有名な日本橋三越本店です。おそらく新館7階の催物会場で開かれます。福島で見るのがベストかもしれませんが、玄々畢竟の大作である「天女(まごころ)」は、当然ながら他会場では公開されません。



来春に東京へやって来る展覧会を前にして、一通り玄々について知っておくためにも、有用な一冊となりそうです。

「生誕130年 佐藤玄々/求龍堂」

「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」は求龍堂より刊行されました。

「生誕130年 近代彫刻の天才 佐藤玄々(朝山)」
出版社:求龍堂
発売日:2018/10/31
価格:2484円(税込)
内容:福島県相馬市に生まれた彫刻家佐藤玄々(朝山)は、抜群の写生力と官能性のある生命力、彫刻の枠を超えたスケールの大きい造形が特徴的な近代木彫の大家。大正から昭和にかけて、平櫛田中、石井鶴三、戸張孤雁、中原悌二郎らとともに活躍。「宮彫師」としての日本伝統の彫刻と、「ブールデル」に学んだ西洋彫刻を融合し、近代彫刻として独自のスタイルを築く。あの巨匠横山大観をして天才と言わしめた玄々の知られざる全貌がわかる初めての作品集。
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「超おさらい!日本美術史。」 Pen(2018/11/15号)

縄文時代から戦前へと至る日本美術の歴史を、一挙におさらい出来る特集が、雑誌「Pen」11月15日号に掲載されています。



「完全保存版 超おさらい!日本美術史。」 Pen(ペン) 2018年11/15号
https://www.pen-online.jp/magazine/pen/463-nihonbijyutsushi/

それが「完全保存版 超おさらい!日本美術史。」で、縄文、飛鳥、平安、桃山、江戸(前〜中期、後期)、明治、そして戦前の順に、各時代の核となる作品を参照しながら、美術の大まかな通史を紹介していました。



はじまりは縄文時代で、東京国立博物館での「特別展 縄文」でも記憶に新しい十日町の「火炎型土器」のほか、有名な「遮光器土偶」を見比べながら、土器の文様の変遷、また土偶における造形美を踏まえ、縄文人の生活などについて触れていました。



また、基本的に通史ながらも、利休の「わび」や南蛮美術、それに若冲や蕭白、蘆雪などの18世紀の京都の絵師に着目したコーナーもあり、それぞれの特質や各絵師の個性を見比べることも出来ました。



私として特に面白かったのは、「美人」や「かわいい」などをキーワードに、時代を横断して作品をピップアップしていることで、「美人」では奈良時代の「鳥毛立女屏風」に起源を辿りつつ、平安時代の「源氏物語」、さらには清長や歌麿の美人画から、黒田清輝の「智・感・情」などを取り上げ、時代ごとに移り変わる「美」の様相、ないしトレンドを追っていました。

現代美術に関しては、「現代のアートシーンに現れた、日本美術のDNA」と題し、美術史家の山下裕二先生のインタビュー記事が掲載されていました。ここでは山下先生が注目する現代アーティストを取り上げ、それぞれの作品から見られる、日本美術の影響について触れていました。

来年2月より開催予定の「奇想の系譜」展にも関した特集、「奇想をキーワードに、非凡なる美を再発見」も興味深いのではないでしょうか。ここでは奇想を「奇なる発想に基づく、既知や諧謔、エンターテイメント性に富んだ芸術表現」と捉え、奈良から明治時代までの奇想的な作品を紐解いていました。また各時代の監修者が作品を選出しているのも特徴で、推薦コメントならぬ、解説も付されていました。新たな視点で作品を理解することができるかも知れません。

さらに「日本画の味わいをつくり出す、伝統的な画材」では、顔料、筆、また絹や和紙など日本画の画材の特徴についても踏み込んでいて、時代を経て、どのように使われていたのかを紹介していました。



【縄文時代から戦前までの日本美術史を、各時代の出来事とともに学ぶ】(特集より一部紹介)
縄文時代:1万年もの定住生活から生まれ出た、美の原点。「火焔型土器」「遮光器土偶」etc.
飛鳥時代:仏教が伝来し、日本で初めて仏像がつくられた。「法隆寺 釈迦三尊像」「中宮寺菩薩半跏像」etc.
平安時代:往生を切望する貴族が欲した、華麗なる仏画。/スクロールする絵巻の楽しさ。『仏涅槃図』『伴大納言絵巻』(常盤光長)etc.
桃山時代:天下人に愛された、永徳と等伯がしのぎを削る。『檜図屏風』(狩野永徳)『松林図屏風』(長谷川等伯)etc.
江戸時代(前~中期):美意識の継承によって、育まれていった琳派。『風神雷神図屏風』(俵屋宗達)『風神雷神図屏風』(尾形光琳)etc.
江戸時代(後期):江戸の風俗を生き生きと描いた、浮世絵の盛栄。『高島おひさ』(喜多川歌麿)『三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛』(東洲斎写楽)etc.
明治時代~戦前:西洋の写実表現に学びを得た、近代の日本画。『班猫』(竹内栖鳳)『落葉』(菱田春草)etc.



見開きの図版が精細でかつ大きく、それを見るだけでも楽しめますが、テキストの記述が詳細で、かなり読み応えがありました。しばらく楽しめそうです。

「Pen 2018年11/15号[超おさらい! 日本美術史。]CCCメディアハウス

雑誌「Pen」、特集「超おさらい!日本美術史。」は、11月1日に発売されました。

「Pen(ペン) 2018年11/15号 [超おさらい! 日本美術史。]」(@Pen_magazine
出版社:CCCメディアハウス
発売日:2018/11/1
価格:700円(税込)
内容:燃え盛る炎のような模様の縄文土器、力強い肉体を表した仏像、金を貼った豪華な屏風……。誰もが知る名作でも、なぜそれが生まれ、どんな意味をもったかを案外知らないものだ。今回Penの誌上には、縄文時代から現代まで、日本美術史上の傑作が勢揃いした。パリやモスクワで日本美術の展覧会が相次ぐなど、海外からも注目される日本の美。その歴史を作品誕生のエピソードや背景となる当時の情勢を交えながら、時代別に振り返ろう。
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「ルーベンスぴあ」 ぴあMOOK

2018年10月16日より国立西洋美術館ではじまった「ルーベンス展 バロックの誕生」。ルーベンスを40点を含む、全70点の作品にて、ルーベンスとイタリア・バロック美術の影響関係について紹介しています。

「ルーベンスぴあ/ぴあMOOK」

その「ルーベンス展」の開催を記念し、新たなルーベンス本、「ルーベンスぴあ」が刊行されました。

【ルーベンスぴあ CONTENTS】
・「ルーベンス展―バロックの誕生」へようこそ
・ルーベンスLOVE~著名人が語るルーベンスの魅力
・<大特集>超入門 ルーベンスってどんな人?
・<大特集>絶対に見逃せない! ルーベンス作品BEST20
・<展覧会紹介>ここを見よ! 「ルーベンス展―バロックの誕生」
・<美術館紹介>国立西洋美術館 見どころガイド
・ルーベンスと『フランダースの犬』の物語
・ルーベンスの故郷 ベルギー・アントウェルペンを歩く



まずはじめは「超入門 ルーベンスってどんな人?」で、「バロックの巨匠」、「誰もが魅了される超イケメン」、「王の画家にして画家の王」、「家族愛に溢れた教養人」など6つのキーワードを元に、作品の図版を踏まえながら、ルーベンスを画業を読み解いていました。



それぞれ漫画が掲載されているのも特徴で、親しみやすく接することが出来ますが、テキストは美術ジャーナリストの藤原えりみさんが担当されているので、専門的な見地を十分に踏まえた内容になっていました。



そして「ルーベンス 名作ギャラリー」では、ルーベンスの年譜とともに、代表的な作品を図版で紹介し、肖像画から風景画、祭壇画までを幅広く描いた、ルーベンスの名画を一覧することも可能でした。



続く「絶対に見逃せない!ルーベンス作品BEST20」では、特に見逃せない20点の作品をピックアップしていて、単に作品を羅列するだけでなく、「イタリア」、「聖書」、「神話」、「家族」のテーマ別に掲載していました。作品の背景やモチーフについても細かく触れていて、1点1点への理解を深めることが出来ました。また20点は全て「ルーベンス展」の出展作でもあるので、展覧会の予習をしたり、振り返ったりするのに重宝するかもしれません。



さらに「ルーベンス展」の4つの特徴や、会場となる国立西洋美術館の見どころガイドがあり、ここでも「ルーベンス展」にも準拠するように構成されていました。



ルーベンスの画業を追いかけつつ、作品の多面的な魅力に迫り、なおかつ「ルーベンス展」の見どころも紹介する「ルーベンスぴあ」。実のところ現在、ルーベンスに関する一般向けの本は必ずしも多くありません。私もまだ読み進めている段階ですが、内容は想像以上に充実していました。



「ルーベンス展 バロックの誕生」@国立西洋美術館
会期:2018年10月16日(火)〜2019年1月20日(日)
https://www.tbs.co.jp/rubens2018/

巻頭の「ルーベンスLOVE」に、私こと「はろるど」の選んだ、ルーベンスの魅力や一押し作品についてのコメントを載せていただきました。

ほかにもお馴染みの「青い日記帳」のたけさん、そして美術ジャーナリストの藤原えりみさんや、作家の平野啓一郎さんなどもコメントを寄せておられます。私のコメントの内容はともかくも、皆さん、大変に示唆に富むコメントばかりです。是非、ご覧下さい。



帯の裏には「ルーベンス展」の入場割引券(100円引)もついています。「ルーベンスぴあ」は、ルーベンス展会場のショップでも販売されていますが、先に本誌を手にして、割引券を切り取って、展覧会に行くのも良さそうです。


「ルーベンスぴあ」はぴあより10月11日に発売されました。

「ルーベンスぴあ」 (ぴあMOOK)
出版社:ぴあ
ムック:98ページ
発売日:2018/10/11
価格:1404円(税込)
内容:2018年秋、史上最大級の「ルーベンス展」がやってくる! 「ルーベンス展―バロックの誕生」開催記念MOOK『ルーベンスぴあ』は、バロック美術の大巨匠・ルーベンスの魅力と展覧会の見どころをわかりやすく解説したガイドブックです。
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「週刊ニッポンの国宝100」が完結しました

小学館ウィークリーブック、「週間ニッポンの国宝100」が、第50号に達し、全ての刊行が終了しました。



「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/
国宝応援団twitter:https://twitter.com/kokuhou_project
国宝応援プロジェクトFBページ:https://www.facebook.com/kokuhouproject/



第50巻の特集は、「深大寺 釈迦如来/大浦天主堂」で、白鳳時代の仏像の優品として知られた、東京・深大寺の釈迦如来が表紙を飾っていました。丸みを帯びたお顔立ちも特徴的で、口元には僅かな笑みも浮かべていました。



さらに「名作ギャラリー」では全身像をピックアップし、「原寸美術館」では顔の正面と横の姿を紹介していました。いつもながらの高精細な図版で、顔の平彫りの鑿の痕までも確認することが出来ました。



もう一方の大浦天主堂は、ちょうど今年の7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する文化財として、世界遺産に登録された長崎の教会で、八角錐の尖塔の建つ外観も目を引きました。内部のアーチ天井も美しく、荘厳な空間を臨場感のある写真で味わえました。



「くらべる大図鑑」では、長崎に点在する教会をいくつか掲載していて、各々に個性的な建物を一覧することも出来ました。さらに「行こう!国宝への旅へ!」でも、大浦天主堂をはじめとした長崎の教会を紹介していて、旅情気分も楽しめました。このように「週刊ニッポンの国宝100」は、単に国宝文化財を紹介するだけでなく、現地への旅を誘うようなガイド本としても有用でした。



山下先生の連載、「未来の国宝・MY国宝」の最終回では、現代美術家の池田学による「誕生」取り上げられていました。同コーナーは、山下先生が、未来を見据え、将来の国宝となるべき作品を紹介するもので、今回のように現代美術を網羅するなど、従来にはない観点が際立っていました。

さて、初めにも触れましたが、今号で「週間ニッポンの国宝100」の刊行が全て終わりました。昨年の9月の発刊以来、実に一年をかけての完結でした。


刊行時に「国宝応援プロジェクト」が誕生し、JR東海が「国宝新幹線」を走らせたほか、日清食品が国宝の土器をモチーフとした「縄文DOKI★DOKIクッカー」を発売するなど、各社を巻き込んでの派手なプロモーションも行われました。もちろん京都国立博物館の「国宝展」との記事の連動もありました。



「国宝検定公式サイト」(2018年10月28日開催)
https://www.kentei-uketsuke.com/kokuhou/

さらに今年に入っても、10月28日に第1回の「国宝検定」の開催が決まっていて、9月20日の申込の締め切りが迫っています。


私も「週刊ニッポンの国宝100」を毎号を追いかけていましたが、漠然と捉えていた文化財が、いかに貴重であり、また何故に国宝となり、そして魅力的であるのかを、誌面を通してよく学べました。ともかく毎号、高いクオリティーを維持していて、読み応えがあり、毎週の刊行を楽しみにしていました。



全号が終了したことにより、以後、新たな「週間ニッポンの国宝100」を読むことは叶いませんが、9月末より「ザ・極み」と題した別冊が、「刀剣」、「仏像」、「絵画」と3冊続けて発売されます。



また「週刊ニッポンの国宝100」の全50号の完結を記念し、日本橋三越本店の「はじまりのカフェ」では、国宝の魅力を伝えるイベント、「国宝応援団2018」が開催されます。ここでは「週刊ニッポンの国宝100」のバックナンバーをはじめ、国宝に関したグッズの販売のほか、「洛中洛外図屏風 舟木本」の高精細な複製品の展示も行われます。

特別イベント『国宝応援団2018』を日本橋三越本店で開催します~(サライ.jp)
会期:9月19日(水)~10月8日(月)
会場:日本橋三越本店本館7階「はじまりのカフェ」



「週間ニッポンの国宝100」を通して、実際に見たい、また訪ね歩きたい国宝をたくさん見つけました。これからも国宝を鑑賞する際、折に触れては「週間ニッポンの国宝100」を見返したいと思います。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。電子版は別価格。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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「いちばんやさしい美術鑑賞」 青い日記帳

アートブロガーの草分け的存在で、いつもお世話になっている「青い日記帳」のTak(@taktwi)さんが、8月6日、ちくま新書より「いちばんやさしい美術鑑賞」を上梓されました。

「いちばんやさしい美術鑑賞/青い日記帳/筑摩書房」

「いちばんやさしい美術鑑賞」は、年間、数百の展覧会をご覧になり、日々、ブログ「青い日記帳」を更新されているTakさんが、「美術の骨の髄まで味わいつくす」べく、書かれたもので、構想から2年越し、全250ページにも及ぶ、大変な労作になっています。



内容は、大きく「西洋美術を見る」と、「日本美術を見る」の二本立てで、グエルチーノ、フェルメール、モネ、セザンヌ、ピカソ、それに雪舟、光琳、若冲、松園など、各作家の作品を引用し、Takさんならではの鑑賞のコツ、ないし楽しみ方をまとめていました。全ての作品が、国内の美術館のコレクションであるのも特徴で、本を読んだ上、実際の作品を鑑賞するのにも、あまり障壁はありません。また、おおまかに年代順に取り上げられているため、美術の流れを掴み取ることも出来ました。



はじまりの第1章は、グエルチーノでした。2015年の春に国立西洋美術館で回顧展が開催され、Takさんの言われるように、一般的に「聞いたこともない画家」でありながらも、作品の第一印象を大切して見る点や、キャプションの読み方などについて触れ、画中の「手」こそ、鑑賞のポイントであると書かれています。



いわゆる美術の解説本ではないのが、最大の特徴と言えるかもしれません。前書きに、「素人による素人のための指南書」と記されているように、Takさん独自の視点から、美術の見かたのヒント、ないしコツについてのアドバイスをされています。筑摩書房の編集者である大山悦子さんも、「美術史家の書くことはか書かなくて良い。あくまでも鑑賞術を書いて欲しい。」として、Takさんに執筆を依頼されました。よって、編集の段階で、Takさんの書かれた専門的な内容の部分を、あえて削ることもあったそうです。



そもそも執筆の切っ掛けになったは、先に三菱一号館美術館の高橋明也館長が上梓した「美術館の舞台裏」にありました。ここで、打ち上げと題し、Takさんを交えた飲み会的な会合で、大山さんから新書執筆への依頼がなされました。当初、Takさんも社交辞令と思っていたものの、その後、正式にメールでお願いがあり、書くことを決めたそうです。

元々、大山さんはTakさんのブログを読んでいましたが、「美術館の舞台裏」が、「青い日記帳」に取り上げられたことにより、爆発的に本が売れたと言います。そこで、「青い日記帳」の勢いを目の当たりにした大山さんは、ブロガーでもあるTakさんのような、プロではない視線による美術の本があれば面白いのではないかと思い、筆をとってもらうことになりました。ブログで、「アート好き」が前面に出ていることに、とても好感を持たれていたそうです。



執筆に際しては、まず第1章、すなわちグエルチーノの章から書かれ、一部に構成上の入れ替えがあったものの、順番通りに15章まで書き進められました。第1章が完成した際、大山さんは、率直に面白いと感じられたそうです。また、写真作品(グルスキー)や浮世絵を入れるのかについて、色々と議論があったものの、最終的にはTakさんが書きたい作品で、章立てが決まりました。

しかし、さすがに紆余曲折あり、当初の期日であった2017年の8月末に間に合いませんでした。中でも、第12章の曜変天目は時間がかかり、最後の最後まで取り掛かっていたそうです。しかし、そもそも大山さんは、腰を据えて書くのであれば、新書は2年ほどかかると言い、結果的に、7~8回は熟読の上、校閲へのチェックがなされました。編集に際しては、内容を縮小するよりも、節を入れ替えるなどの、再構成が多かったそうです。

Takさんが、15作品にて、特に好きに書いたのが、第11章の若冲で、セザンヌも積極的に進めたものの、大山さんは面白さを伝えるのが難しいと考えておられたそうです。また、第9章の永徳も楽しく筆が進み、第13章の並河靖之は、当初、大山さんは不要と考えたものの、東京都庭園美術館での展覧会を見て、書いてもらうことが決まりました。元は224ページで構想され、最終的には250ページに達しました。



現代美術では、美人画で有名な池永康晟さんが取り上げられました。ここでTakさんは、池永さんについて、「昔の浮世絵につながる(美人画の伝統や系譜)を現代版にアレンジされている」と言い、美人画に新しい流れが生まれていると指摘されました。第11章の上村松園から、最終、第12章の池永康晟さんへの展開は、美人画の系譜を追う点でも、興味深いかもしれません。

本書の核心は鑑賞のアドバイスにありました。「美術鑑賞は妄想のラビリンス」、「モネ絵画の抜け感」、「たくさん見ることこそ面白さに繋がる」、「複眼的な視点で立体的に鑑賞する」、またあえて「好きか嫌いかで見る」や、「作品の一つの色に着目して見る」、「分からない作品はとことん付き合って見る」、などは、長年、ファンとして美術に接してきた、Takさんならでのオリジナルな視点ではないでしょうか。また、曜変天目には炊きたての白米を盛り付けたいとされるなど、作品から様々なイメージを膨らませて見る点も、面白く感じられました。



また「WEBで一目惚れ」し、実際の作品を見ることの意味を書かれるなど、美術とWEBとの関係にも踏み込まれていました。この辺りは、常日頃、ブログで、美術について書きとめられているTakさんの姿勢が現れているのかもしれません。

本編とあわせて、2つのコラム、「便利な美術鑑賞必需品」と、「美術館の年間パスポート」も、エンタメとしての美術の見かたを知る際に有用でした。クリアファイル、単眼鏡などは、私も常に持ち歩くようにしています。

たまにTakさんと展覧会をご一緒していると、初めから漫然ではなく、要点を絞って見ておられる印象があります。この「いちばんやさしい美術鑑賞」も同様で、温和な語り口ながらも、時に熱が入り、かと思えば、さり気なく脱線的なエピソードを交えるなど、実にメリハリのある内容になっていました。ブログ同様に、読み手を引き込む文章で、相当の量ながらも、最初から最後まで、一気に読むことが出来ました。

編集の大山さんは、本書を読み、やはり「アート鑑賞は作品への愛がないと駄目だということをよく学んだ。」とし、改めて作品を見る面白さを学んだと語っています。そして、新書という形態を取ることで、美術に関心が薄い人にも、気軽に読まれることを望まれました。



なお、内容は前後しますが、本の刊行に際し、「青い日記帳」のTakさんと、編集を担当された筑摩書房の大山悦子さんに、書籍の内容や、刊行へ至った経緯、さらにはTakさんの個人的な美術への関心などについてインタビューしました。

その詳細は、同じくインタビューを行った、@karub_imaliveさんの「あいむあらいぶ」に前後編へ記載されています。

ブログ「青い日記帳」Takさんにいろいろインタビューしてみた!~新書『いちばんやさしい美術鑑賞』出版によせて~(前編)
ブログ「青い日記帳」Takさんにいろいろインタビューしてみた!~新書『いちばんやさしい美術鑑賞』出版によせて~(後編)

2時間以上のロングインタビューとなりましたが、たくさんの興味深いお話をお聞きすることが出来ました。あわせてご覧下さい。(本エントリでもインタビューを反映してあります。)


なお、刊行に合わせ、Takさんのトークショーも、各種、開催されます。

【『いちばんやさしい美術鑑賞』×美術書カタログ『defrag2』ダブル刊行記念トークイベント カリスマ美術ブロガーが語る《もっと美術が好きになる!》】
日時:2018年08月17日(金) 19:30~
出演:中村剛士(アートブログ「青い日記帳」主宰)、ナカムラクニオ( 「6次元」店主・アートディレクター)
会場:ジュンク堂書店池袋本店 9Fギャラリースペース
住所:東京都豊島区南池袋2-15-5
参加費:無料
申込み:要予約。ジュンク堂書店池袋本店1階サービスコーナーもしくは電話(03-5956-6111)にて。
URL:https://honto.jp/store/news/detail_041000026934.html

まずは、ジュンク堂書店池袋本店でのトークで、6次元のナカムラクニオさんを迎え、「いちばんやさしい美術鑑賞」と美術書カタログ「defrag2」について語られます。事前の予約が必要です。(無料)*本イベントは定員に達したため、受付が締め切られました。

【美術館に出かけてみよう! ~いちばんやさしい美術鑑賞~】
日時:2018年8月29日 19:00~20:30
出演:『青い日記帳』Tak氏(中村剛士氏)、株式会社筑摩書房 編集局第一編集室 大山悦子氏
会場:DNPプラザ(市ヶ谷)セミナー会場
住所:東京都新宿区市谷田町1丁目14-1 DNP市谷田町ビル
集客人数:100名(先着順)
参加費:無料
URL:https://rakukatsu.jp/maruzen-event-20180806/

申込みは下記のURLから↓↓
https://peatix.com/event/416560/view

続くのが、「いちばんやさしい美術鑑賞」の編集者である大山悦子さんを迎えてのトークで、本の内容に触れながら、西洋、日本美術を問わず、Takさんおすすめのアート鑑賞法などについて語られます。出版に際しての苦労話などがお聞き出来そうです。


インタビューに際し、Takさんから読者の皆さんへのメッセージを頂戴しました。

takさん:一つのきっかけになってくれればいいなと。これの見方は、正しいとか、正しくないとか、これをしなくちゃいけないと強制的なものではなくて、こんなふうにしたらいいんだよ的な感じで書いてあるので、真似する必要は全然ないんですけど、この本を読んで、もし面白いなと思ったら、実際に絵の前に立って見て下さいね。

まさに、美術鑑賞の見かたを楽しく学び、新たなヒントを与えてくれる「いちばんやさしい美術鑑賞」。私も改めて熟読の上、作品や絵の前に立ってみたいと思いました。

「いちばんやさしい美術鑑賞」(ちくま新書)「青い日記帳」著 
内容:「わからない」にさようなら! 1年に300以上の展覧会を見るカリスマアートブロガーが目からウロコの美術の楽しみ方を教えます。アート鑑賞の質が変わる必読の書。
新書:全256ページ
出版社:筑摩書房
価格:994円(税込)
発売日:2018年8月6日
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「国宝の解剖図鑑」 エクスナレッジ

エクスナレッジの「国宝の解剖図鑑」を読んでみました。

昨年、京都国立博物館の特別展として過去最多の入場者を記録した「国宝展」は、国宝に対しての関心を集めただけでなく、国宝が多様な出版物やメディアに取り上げられる契機ともなりました。



その1つが、私も毎号追っている、「週間ニッポンの国宝100」(小学館)で、全50号のうち、既に39号に達し、いよいよ完結を迎えようとしています。

「国宝の解剖図鑑/佐藤晃子/エクスナレッジ」

新たな国宝本が登場しました。それがエクスナレッジの「国宝の解剖図鑑」で、日本、西洋の美術に関する数々の書籍を刊行されている、美術ライターの佐藤晃子さんが執筆されました。



現在、国宝として指定されている文化財は、全1110件あり、うち「国宝の解剖図鑑」では、考古・工芸、絵画、彫刻、建造物・歴史資料の4つのジャンルより、93件の国宝をピックアップしていました。

「国宝の解剖図鑑」の最大の特徴は、全ての国宝をイラストで紹介していることでした。そしてこのイラストが、国宝を理解するのに大いに重要で、ほかに多くある国宝本の中でも、殆ど唯一の「完全イラスト版」と言っても差し支えないかもしれません。



例えば、先だっての「名作誕生」(東京国立博物館)でも出品された「彦根屏風」では、登場人物をイラストで表すだけでなく、一体、それぞれがどういう人物で、何をしているのかについても、細かに触れていました。また、人物の配置、つまり構図にも言及していて、画題や描写など、「彦根屏風」の見方を、専門的な見地を交えて紹介していました。



三佛寺奥院の「投入堂」も、イラストによって、お堂の位置関係が分かるように工夫されていました。また、参拝に際しては、2人以上で行く決まりがあることや、実際に辿り着ける場所、さらには往復の所要時間(90〜120分)についても触れていて、観覧に際して便利な情報も多く記載されていました。さらに、法隆寺の「救世観音」や浄土寺の「阿弥陀三尊像」などでも、公開日時や、おすすめの拝観時間を記していて、豆知識的な要素も盛り込まれていました。

千利休作とされる現存唯一の茶室、「待庵」では、人を交えたイラストにより、建物のスケール感を一目で理解することが出来ました。また「厳島神社」の見取り図も、社殿の配置関係が良く分かるかもしれません。干潮時のおすすめ写真スポットも記されていました。



絵師などの制作者も登場します。例えば雪舟の「慧可断臂図」では、達磨と神光の描写自体をイラストで細かく見ている一方、長谷川等伯の「楓図襖」では、襖絵と合わせて、当時の等伯と狩野派の動向や関係を、年表形式で比較していました。このように、国宝を取り巻く人や歴史も踏まえていて、単なる国宝を紹介するだけに留まっていませんでした。

国宝に因む焼き物や絵画、それに仏像の見方などのコラムも読み応えがあるのではないでしょうか。特に、国宝に関する数字を集めた「数で読む国宝」は、国宝の基礎的知識を得るのに、大いに参考になりました。

【Column】
国宝の基礎知識:選定基準、全国分布、日本にあったら即国宝?!etc.
ジャンル別国宝の見かた:絵、やきもの、仏像、寺と神社etc.
数で読む国宝:件数、サイズ、歴史・保存編etc.


全160頁とボリュームがありながらも、持ち運びにも便利なA5サイズのため、実際の国宝鑑賞の際に持ち歩くのも楽しいのではないでしょうか。佐藤晃子さんによる「国宝の解剖図鑑」。好評のために2刷となったそうです。まずは書店でご覧になることをおすすめします。

「国宝の解剖図鑑/佐藤晃子/エクスナレッジ」

「国宝の解剖図鑑」
内容:「国宝の、どこがすごい?」がマルわかり。一度は見たことのある仏像、建築、日本画も、見かたがわかると100倍楽しい!国宝約100件の、すごさ・見どころ・知られざる人間模様まで大解剖
著者:佐藤晃子。美術ライター。日本、西洋の絵画をやさしく紹介する書籍を多数執筆する。明治学院大学文学部芸術学科卒業。学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程修了(美術史専攻)。
価格:1728円
単行本(ソフトカバー)160ページ
出版社:エクスナレッジ
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「週刊ニッポンの国宝100」が第30号に達しました

小学館の「週間ニッポンの国宝100」が、第30号に達しました。



「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/
国宝応援団twitter:https://twitter.com/kokuhou_project
国宝応援プロジェクトFBページ:https://www.facebook.com/kokuhouproject/

「週刊ニッポンの国宝100」は、昨年9月より刊行がはじまったウィークリーブックで、おおむね週に1度、2件の国宝が特集されてきました。これまでにも「阿修羅」や「松林図屏風」をはじめ、「厳島神社」や「瓢鮎図」、それに「向源寺 十一面観音」など、彫刻、絵画、建築の名だたる国宝が登場しました。全50号の刊行が予定されています。

「週刊ニッポンの国宝100 30 醍醐寺/信貴山縁起絵巻/小学館」

節目の第30号は、「醍醐寺/信貴山縁起絵巻」で、表紙には、火炎を従えた醍醐寺の不動明王の姿が捉えられていました。赤々とした炎も鮮やかではないでしょうか。



まず「国宝名作ギャラリー」では、醍醐寺の建築物を鮮やかな写真図版で紹介し、「国宝鑑賞術」において、同寺の境内を俯瞰しつつ、建物や美術品の見どころを取り上げていました。醍醐寺は真言宗の大寺であることから、密教関係の名品が特に目立っているそうです。また醍醐天皇の御願寺でもあり、のちの天皇にも庇護されたことから、朝廷との結びつきが深く、華麗な密教美術が多く残されてきました。



そのうちの1つが「文殊渡海図」で、誌面では、全図から文殊の姿を原寸で掲載していました。獅子に乗る文殊の着衣や装身具も実に鮮やかで、いつもながらの高精細な図版により、細部の細部まで手に取るように見ることが出来ました。鎌倉時代後期の制作で、「文殊渡海図」の最高傑作でもあります。



さらに「国宝ワンモアミステリー」では、かの有名な秀吉の花見のエピソードにも触れ、当時の様子を描いた「醍醐花見図屏風」を引用していました。秀吉は花見のために畿内各地から700本の桜を取り寄せ、山道の両側に埋め込んでは花見を楽しみました。応仁・文明の乱にて荒廃していた醍醐寺を、座主のために再興しようとする秀吉の熱意が込められていたそうです。醍醐寺の座主、義演は、関白就任の際などで、秀吉と密接な関係にありました。



一連の密教壁画も、見応えがあるのではないでしょうか。これは醍醐天皇の冥福を祈るために建てられた、五重塔内部に描かれたもので、951年に完成した、作例の少ない平安期の貴重な壁画資料でもあります。また五重塔は、京都に残る最古の木造建築として知られています。



後半の「信貴山縁起絵巻」も読み応えありました。同絵巻は信貴山上の朝護孫子寺を中興した僧、命蓮にまつわる3つの奇跡を描いた作品で、細かい線描により、臨場感のある人物表現などを特徴としています。



驚いたのは、「国宝名作ギャラリー」における「延喜加持の巻」で、命蓮の加持祈祷により派遣された護法童子が、清涼殿の醍醐天皇の枕元へ到達する場面でした。通常、絵巻は右から左へ時間が進みますが、ここでは逆に童子が左から現れ、右の清涼殿へと至る光景を描いていました。



また「尼公の巻」には、日本最古ともされる猫の絵が登場していて、それも「国宝名作ギャラリー」で確認することが出来ました。猫は奈良時代に中国から渡来し、平安時代にはペットとして飼われていました。



さらに東大寺大仏殿に参詣する尼公の場面を原寸で掲載し、南都焼討以前の大仏の姿の様子を見ることも出来ました。創建当初の大仏の姿を知る資料としても、「信貴山縁起絵巻」は重要であるそうです。

「信貴山縁起絵巻」の現状模写プロジェクトについて触れた、「国宝ジャーナル」も興味深いのではないでしょうか。現状模写とは、人の想像力を排した純然たる模写で、東京藝術大学では2004年より国宝三大絵巻の現状模写を行って来ました。既に「源氏物語絵巻」と「伴大納言絵巻」が完成し、2017年より「信貴山縁起絵巻」の制作に取り掛かりました。おおよそ11年後の完成を目指しています。



そのほか、山下裕二先生の名物コラム、「未来の国宝・MY国宝」では、長沢芦雪の「虎図襖」が取り上げられていました。つい昨年、愛知県美術館の回顧展でも人気を集めたのは、記憶に新しいところかもしれません。

[第30号以降の週刊ニッポンの国宝のラインナップ]

30:醍醐寺/信貴山縁起絵巻
31:仏涅槃図/出雲大社
32:浄土寺/彦根屏風
33:明恵上人像/仁和寺
34:四天王寺扇面法華経冊子/法隆寺釈迦三尊像
35:葛井寺千手観音/薬師寺吉祥天像
36:志野茶碗 銘卯花墻/東大寺伽藍
37:羽黒山五重塔/聚光院花鳥図襖
38:辟邪絵/色絵雉香炉
39:勝常寺薬師三尊像/夕顔棚納涼図屏風
40:天燈鬼・龍燈鬼/金剛峯寺
41:浄瑠璃寺九体阿弥陀/二条城
42:東大寺不空羂索観音/観音猿鶴図
43:普賢菩薩/三佛寺投入堂
44:神護寺薬師如来/十便図・十宜図
45:玉虫厨子/臼杵磨崖仏
46:唐招提寺/火焔型土器
47:本願寺/鷹見泉石像
48:中宮寺菩薩半跏像/崇福寺
49:青不動/赤糸威鎧
50:深大寺釈迦如来/大浦天主堂

「週刊ニッポンの国宝100 31 仏涅槃図/出雲大社/小学館」

第30号に続き、第31号の「仏涅槃図/出雲大社」も発売されました。以降も「彦根屏風」、先の仁和寺展で話題を集めた「葛井寺千手観音」、また縄文展にも出展予定の「火焔型土器」、さらに「青不動」に「大浦天主堂」など、興味深い国宝が次々と登場する予定です。



これからも定期的に「週刊ニッポンの国宝100」を追っていきたいと思います。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。電子版は別価格。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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「ニッポンの国宝100」第25号(東寺両界曼荼羅図/法隆寺伽藍) 小学館

小学館のウィークリーブック「ニッポンの国宝100」が、全50号のうちの半数に当たる第25号に到達しました。



「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

それが「東寺 両界曼荼羅」と「法隆寺伽藍」の特集で、ともに京都・奈良を代表する仏教美術、および建築が取り上げられていました。なお、東寺、法隆寺とも、既に別の国宝が掲載済みで、東寺では第8号で「立体曼荼羅」、そして法隆寺では第7号で「救世観音」、第13号で「百済観音」が特集されました。特に法隆寺の両観音像は、私も好きな仏像だけに、ともに追いかけました。



いつもの高精細な図版は、東寺の「両界曼荼羅」を鑑賞するのに有用でした。現存最古の彩色の両界曼荼羅である「金剛界曼荼羅」が原寸で掲載されているため、成身会を囲んだ、賢劫千仏の細かな姿までを確認することが出来ました。もちろん実際の作品に当たるのが一番かもしれませんが、おそらく肉眼ではここまで鮮明に見えません。



「国宝鑑賞術」では、5つの観点から両界曼荼羅の世界を解き明かし、作品の見方を分かりやすく紹介していました。また「国宝くらべる大図鑑」の視点もユニークで、ともすると見落とされがちな、両界曼荼羅の細部の菩薩や珍獣などを抜き出して見せていました。



後半の「法隆寺伽藍」も充実していました。まず目を引いたのは、世界最古の木造建築とされる西域伽藍を上空から捉えて掲載した写真で、おそらく現地でも、この高さから鑑賞することは叶いません。また若草伽藍と西院伽藍の古代瓦を比較しながら、長らく論争の続いてきた法隆寺の再建・非再建論争についても触れていました。1939年、焼土ともに若草伽藍が発掘されたことから、再建説が広く支持されました。

しかし近年、五重塔や金堂の天井壁画に、火災前の木材が使用されていたことが判明したため、非再建の可能性もあるとして、再び論争が沸き起こっているそうです。また2017年には、おおよそ50年ぶりに、若草伽藍の発掘調査も行われました。いずれ何らかの形で、一定の見解がまとめるのかもしれません。



国宝への旅をテーマとした「行こう国宝への旅」は、法隆寺へのガイドでした。私も昨年春、「救世観音菩薩立像」を拝むため、春の特別公開の際に法隆寺へいきましたが、その時の記憶も蘇りました。



「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿(はろるど)

ちょうど折り返しに達した「週刊ニッポンの国宝100」は、これ以降も、来年の9月に向けて、残りの25号が刊行されます。(刊行予定一覧

26:室生寺/洛中洛外図屏風 舟木本
27:東大寺伝日光・伝月光菩薩/浮線綾螺鈿蒔絵手箱
28:早来迎/清水寺
29:向源寺十一面観音/紅白芙蓉図
30:醍醐寺/信貴山縁起絵巻
31:仏涅槃図/出雲大社
32:浄土寺/彦根屏風
33:明恵上人像/仁和寺
34:四天王寺扇面法華経冊子/法隆寺釈迦三尊像
35:葛井寺千手観音/薬師寺吉祥天像
36:志野茶碗 銘卯花墻/東大寺伽藍
37:羽黒山五重塔/聚光院花鳥図襖
38:辟邪絵/色絵雉香炉
39:勝常寺薬師三尊像/夕顔棚納涼図屏風
40:天燈鬼・龍燈鬼/金剛峯寺
41:浄瑠璃寺九体阿弥陀/二条城
42:東大寺不空羂索観音/観音猿鶴図
43:普賢菩薩/三佛寺投入堂
44:神護寺薬師如来/十便図・十宜図
45:玉虫厨子/臼杵磨崖仏
46:唐招提寺/火焔型土器
47:本願寺/鷹見泉石像
48:中宮寺菩薩半跏像/崇福寺
49:青不動/赤糸威鎧
50:深大寺釈迦如来/大浦天主堂

全て国宝を扱うだけに、有名な作品や建築も目立ちますが、中には一般的な書籍で細かく扱われないような国宝もあり、「ニッポンの国宝」ならではの多角的な視点での解説も期待出来ます。



昨年は京都国立博物館の「国宝展」を筆頭に、ともかく国宝に関する企画や展覧会も続き、「国宝イヤー」とも言われました。実際、「国宝展」は、同博物館の特別展史上最多となる、約62万名もの入場者を記録しました。

「週刊ニッポンの国宝100/東寺両界曼荼羅図・法隆寺伽藍/小学館」

さすがに今年は国宝がムーブメントになることはなさそうですが、今後とも「ニッポンの国宝」で国宝に親しんでいければと思いました。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。電子版は別価格。
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「かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪」 新潮社

奇想の絵師、長沢芦雪の画業を知るための、最適な書籍と言えるかもしれません。新潮社のとんぼの本、「かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪」を読んでみました。

「かわいいこわいおもしろい 長沢芦雪/とんぼの本」

実のところ芦雪本は少なくなく、東京美術の「もっと知りたい長沢蘆雪」や、別冊太陽(平凡社)の「長沢芦雪」などもありますが、江戸絵画を専門とする岡田秀之氏が新たな知見を交え、芦雪の魅力を余すことなく紹介していました。



まず冒頭の図版で目を引くのは、「虎図・龍図襖」の虎でした。芦雪に縁のある和歌山の無量寺の所蔵で、さも襖から虎が飛び出そうとする姿を描いています。芦雪の代表作と呼んでも良いかもしれません。

「芦雪ワールド 千変万化」とあるように、芦雪の世界を13の切り口から分析しているのも面白いところです。しかも「かわいいものを描く」や「妖しきものを描く」、それに「指で描く」などの親しみやすい切り口ばかりでした。また酒好きとも伝えられる芦雪です。中には「酔って描く」もありました。



かわいいと言えば、師でもある応挙の犬が有名ですが、芦雪も負けてはいません。より大胆に、言い換えれば、よりゆるく犬を描いています。現代の「ゆるキャラ」にも通じる要素があるかもしれません。



美術史家の辻惟雄氏と河野元昭氏の対談が充実しています。芦雪を、師の応挙の型を破るべく、意識的に奇想的な絵を描いた「人工の奇想」の絵師と位置づけています。また各氏が「この1点」を挙げ、芦雪の魅力について語っていました。

芦雪の生涯を追うのが「芦雪ものがたり」でした。ここでは謎に包まれた出自から、応挙への入門、さらに南紀での制作プロセスを、図版とテキストで丹念に紐解いています。



特に南紀での活動について細かに触れていました。また作品の解説だけでなく、無量寺、草堂寺、成就寺の間取り図も詳しい上、かの地の風景写真を交えた巡礼地図までも掲載されています。芦雪の足跡を辿るべく、南紀に出かけたくなるほどでした。

いわゆる新知見ということかもしれません。一般的な芦雪観の再検討を促しているのも特徴です。岡田氏は、残された書簡を読み解くことで、諸々伝えられる芦雪の奔放な逸話は、後世に脚色された可能性があるのではないかと指摘しています。また毒殺説についても懐疑的な見方をしていました。真相は如何なるところでしょうか。

さて、この秋に愛知県美術館で開催予定の「長澤芦雪展」も、あと1カ月弱に迫りました。



「長沢芦雪展 京のエンターテイナー」@愛知県美術館
会期:10月6日(金)〜11月19日(日)
公式サイト:http://www.chunichi.co.jp/event/rosetsu/

既に特設サイトがオープンし、開催概要や見どころ、イベントなどが記載されています。本書の岡田氏の記念講演会も行われます。

「長沢芦雪入門」
講師:岡田秀之氏(嵯峨嵐山日本美術研究所学芸課長)
日時:11月4日(土) 13:30~15:00 *申込方法は公式サイトまで。

注目すべきは無量寺の空間再現展示ではないでしょうか。本来、「虎図襖」と「龍図襖」は向かい合わせに描かれていたそうです。それを展覧会の会場としては初めて再現します。


巡回なしの芦雪展です。本書の言葉を借りれば「応挙よりウマイ 若冲よりスゴイ」。おそらく秋の日本美術展の中でも人気を集めるに違いありません。私もこの本を片手に愛知へ見に行きたいと思います。

「かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪」 新潮社
内容:愛らしい仔犬から不気味な山姥まで、一寸四方の五百羅漢図から、襖全面の虎図まで。超絶技巧の写実力に、酔いにまかせた一気描き。「かわいい」「こわい」「おもしろい」幅広い画風で、人々を驚かせ、楽しませ続けた江戸中期の画家・長沢芦雪(1754~99)。新出作品もたっぷりと、「奇想派」の一人として注目を集める絵師のびっくり絵画と短くも波瀾万丈の人生を新進の研究者がご案内します。また、日本美術史界の泰斗、辻惟雄氏×河野元昭氏がその魅力を語り尽くした「芦雪放談」も必読。画布に現された千変万化の「奇想」を目撃せよ。
価格:1600円(税別)。
仕様:126ページ。
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「ニッポンの国宝100」創刊号 小学館

小学館より刊行された「週刊 ニッポンの国宝100」創刊号を読んでみました。

「週刊 ニッポンの国宝100 1 阿修羅/風神雷神図屏風/小学館」

文化財保護法により「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」として規定された国宝。現在、1108件の建造物と美術工芸品が指定されています。


「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

その国宝から選りすぐりの100件を紹介するのが「ニッポンの国宝」です。各巻2件での展開です。毎週火曜日に発売され、来年の9月までの1年間、全50巻が刊行されます。

創刊号を飾るのが阿修羅と風神雷神図屏風でした。かつて話題となった阿修羅展や大琳派展の例を挙げるまでもなく、ともに美術工芸品の国宝として人気を集めています。



まず目を引いたのは誌面の写真が美しいことでした。特に名作ギャラリーが充実しています。阿修羅では顔や両手の細部までを見事に捉えていました。私もかつて阿修羅展でこの仏像を見ましたが、さすがに肉眼ではここまで迫ることは出来ません。



国宝を掘り下げるのが国宝鑑賞術です。阿修羅、風神雷神図屏風ともに5つのポイントをピックアップし、造形の特徴などを解説しています。なお阿修羅では背面の写真もありましたが、これも興福寺で見ることは叶いません。まさに書籍ならでは鑑賞と言えるのではないでしょうか。



原寸も一つのキーワードです。「ニッポンの国宝100」では、阿修羅はもとより、風神雷神図屏風の一部を、原寸大のサイズで見せています。阿修羅の顔が思いの外に小さく感じたのは私だけでしょうか。また風神雷神の雷神も原寸で見ると、細部の線描の豊かなニュアンスなどが良く分かります。墨線の滲みや塗り残しも一目瞭然でした。



対決や比較のコーナーは国宝へ新たな視点をもたらします。例えば阿修羅では「国宝 世界VS日本」としてミケランジェロのダビデ像と比べていました。当然ながら時代も地域もまるで異なる両像です。見比べることなど思いもつきませんが、マニアックな部分にまで踏み込んでいるからか、かなり読み応えがありました。東西の美意識の違いなども浮かび上がっていたかもしれません。



一方の風神雷神屏風では、琳派三変奏こと、宗達、光琳、抱一画を比較しています。時代が下るにつれて、より人間味を増すような両神の姿を見ることが出来ました。また風神雷神を襖へ描いた其一に触れているのも嬉しいところでした。



専門性を持ち得ながらも、全体的にかなり親しみやすい構成となっているのも特徴です。より斬新なのが国宝解体新書でした。阿修羅では6本の腕のみに着目し、その造形や印相、はたまた動きを3面に連なるページで紹介しています。いわばページには腕しか載っていません。こうした取り上げられ方はいまだかつてあったのでしょうか。先のダビデ比較ならぬ、「ニッポンの国宝」ならではのコンテンツだと感心しました。



「行こう国宝の旅」などの旅に関するページも思いの外に充実しています。宗達や海北友松に縁のある建仁寺が見開きで特集されていたほか、国宝を有する東寺や薬師寺などの寺院も紹介されていました。拝観や作品の公開情報も記載されているので、京都や奈良への旅行を組むのにも有用かもしれません。

「未来の国宝・MY国宝」の連載も面白いのではないでしょうか。第一回では美術史家の山下裕二先生が、大阪の金剛寺の「日月山水図屏風」(重要文化財)を「未来の国宝」として取り上げています。コラムを参照しながら、国宝の行く末について考えるのも面白いかもしれません。



さて約40ページの「ニッポンの国宝100」ですが、手にした際、予想以上に分厚いのに驚きました。理由は付録です。創刊号のみの特別付録として「鳥獣人物戯画柄トラベルケース」が付いています。



これがかなり実用的でした。ハードカバーで耐久性もあり、中にはポケットやホルダーがたくさん付いています。チケットやメモ帳はもちろん、スマートフォンやパスポートも収納出来るのではないでしょうか。旅行云々ではなく、普段使いにも問題ありません。


これほど盛りだくさんで500円です。(創刊号特別価格。2巻以降は680円。)端的に安い。お得感がありました。

それにしても国宝イヤー、秋の国宝展のみならず、「ニッポンの国宝」を含め、様々な企業や団体が、国宝に関するタイアップやイベントを行っています。

「ニッポンの国宝」を中心とした「国宝応援プロジェクト」については、下記のエントリにまとめました。

「国宝応援プロジェクト」が進行中です(はろるど)

今後、国宝への関心は高まっていくのでしょうか。と、当時に国宝から広がる多様な展開についても注目したいところです。



小学館「ニッポンの国宝100」の創刊号、「阿修羅/風神雷神図屏風」は、9月5日に刊行されました。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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「国宝応援プロジェクト」が進行中です

日本で初めて「国宝」の言葉が使用されたのは、明治30年に制定された古社寺保存法でした。



その後、昭和4年に国宝保存法が制定され、戦後になって文化財保護法が施行されました。つまり今年は国宝誕生120年周年にあたります。いわば国宝イヤーです。京都国立博物館の「国宝展」の例を挙げるまでもなく、国宝に関する様々な企画が行われています。


「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

うち1つが、小学館による「週刊 ニッポンの国宝100」です。100件の国宝を、各巻2点ずつ紹介していく全50巻のウィークリーブックで、9月5日の創刊号から1年間、毎週火曜日に発売されます。

そのプロモーションの一環として「国宝応援プロジェクト」が始まりました。



WEB上での展開は2つです。TwitterとFacebookページにて行われています。

国宝応援団(@kokuhou_project)
https://twitter.com/kokuhou_project

「国宝応援プロジェクト」Facebookページ
https://www.facebook.com/kokuhouproject/

「国宝応援団のメンバーが国宝の魅力を発信していきます。」とあるように、複数のメンバーが記事を投稿しているのが特徴です。またプロモーション活動でありながら、ウィークリーブックの内容を離れた、国宝全般の情報も発信しています。またTwitterでは「国宝クイズ」なども行い、ユーザーを巻き込んで展開しているようです。

さて秋の国宝展も約1ヶ月後に迫ってきました。



「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」@京都国立博物館
会期:2017年10月3日(火)~11月26日(日)

美術工芸品の国宝885件のうち、実に200件もの作品が集結する、京都では約40年ぶりの国宝展となります。

雪舟の国宝が初めて同時に展示されるほか、光琳の「燕子花図屏風」が100年ぶりに京都で公開されるなど、話題には事欠きませんが、会期が4つに分かれているのが悩ましいところです。全て見るためには足繁く通う以外にありません。

既に主要作品の出展期間が公開されていますが、ともかくは出品リストが待たれます。私も会期中に1度は出かけるつもりです。

「週刊 ニッポンの国宝100」の「国宝応援プロジェクト」。まずは秋の国宝展とともに追うのが良さそうです。


9月4日(月)、丸の内オアゾにて「国宝応援プロジェクト発足式」が行われ、さらに以下のタイアップ企画、ないし関連商品が発表されました。

1.JR東海による「国宝新幹線」の運行
京都国立博物館で開催される特別展覧会「国宝」へ向かう乗客専用の貸切新幹線を運行。運行日は11月19日。各旅行会社より旅行商品として発売。車内にて山下裕二・明治学院大学教授と俳優・井浦新さんによる国宝解説アナウンス(事前収録)を放送する。利用者には「ニッポンの国宝100」の創刊号が贈呈されるほか、抽選でサイン本のプレゼントなどの特典あり。

国宝応援プロジェクト「国宝新幹線」の運行について(東海旅客鉄道株式会社)

2.日清食品が国宝「火焔型土器」をもした「縄文Doki★Doki クッカー」を発売。
「カップ麺と縄文土器には日本の食文化を変えた共通点がある」(公式ツイッターより)として、愛知に300年続く民窯「瀬戸本業窯」による「縄文Doki★Doki クッカー」を限定販売。(11月予定)

3.日本出版販売が「国宝検定」をスタート。
数多くの検定事業を手掛ける日本出版販売が「国宝検定」を開始。試験日は2018年10月28日。(2017年9月5日受付開始。)初級、上級を設定し、国宝の知識を問う。公式テキストを「ニッポンの国宝100」とする。

国宝検定公式サイト(日本出版販売)

「週刊 ニッポンの国宝100 阿修羅/風神雷神図屏風/小学館



「週刊ニッポンの国宝100」 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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「にっぽんの『奇想建築』を歩く」 サライ2017年7月号

サライ最新7月号、「にっぽんの『奇想建築』を歩く」を読んでみました。

「サライ2017年7月号/にっぽんの奇想建築を歩く/小学館」

奇想といってまず思い出すのが、若冲や蕭白、それに蘆雪らの江戸絵画ですが、何も奇想は美術だけに当てはまる概念ではありません。



建築から奇想を見出そうとするのが、サライ7月号、その名も「日本の奇想建築を歩く」でした。建築史家の藤森照信は、奇想建築を「文明の衝突時に誕生する」と述べています。



「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿(はろるど) *この春の特別公開を見てきました。

いくつか実例を見ていきましょう。最も古い形として挙げられるのが法隆寺でした。現存する最古の木造建築でもある金堂の高欄は、それまでの日本建築になかった様式であり、おそらく当時の人々は不可思議に感じたものであろうと指摘しています。

近代の日本で最も激しく文明が衝突したのが幕末明治の時代でした。西洋化のプロセスは、時に日本古来の建築様式と融合し、「擬洋風建築」と呼ばれる奇想建築が生み出されました。

表紙を飾る「旧開智学校」も典型的な擬洋風建築です。ともかく青い塔が青空に映えます。バルコニーには白い雲が浮かんでいました。さらに屋根はエンジェルがのっています。なお建物表面は石張りのように見えますが、実は漆喰でした。そこにも擬洋風の形を見出すことが出来ます。



ほかには山形市郷土館や伊豆の岩科学校なども紹介。写真、記事とも充実しています。ちなみに岩科学校はバルコニーや柱や手すりの装飾が西洋的である一方、玄関上の瓦屋根やなまこ壁に日本の伝統的な様式が見られるそうです。内部には当地の左官の名工、入江長八も腕を振り、鏝絵などを残しました。

「伊豆の長八ー幕末・明治の空前絶後の鏝絵師」 武蔵野市立吉祥寺美術館(はろるど)

この入江長八は、かつて武蔵野市立吉祥寺美術館での回顧展でも紹介されました。岩科学校の位置する松崎には、伊豆の長八美術館もあります。一度、現地を見学したいものです。



奇想建築特集の主役というべきなのが伊東忠太でした。まずすぐに思い浮かぶのが、現在、改装中の大倉集古館です。初めて見た時は、私も独特な佇まいに驚いたものでした。



忠太の建築でも特に知られるのが築地本願寺です。明治9年の竣工。伝統的な寺院建築とインドの仏教建築を合わせた建物は、一目見るだけで脳裏に焼きつくかのような強い印象を与えます。私も初めて立ち入った際は外国にでも来たかのような錯覚に陥りました。



なお現在、築地本願寺は境内整備、インフォメーションセンターなどの建設のため、一部が工事中です。白いフェンスで覆われていました。完成予定は今秋の10月だそうです。

地元の千葉にも忠太の建築があることを初めて知りました。それが市川市の中山法華経寺の聖教殿です。私も早速、見学に行ってきました。



最寄駅は京成線の中山駅です。駅前の参道を北へ進むと大きな門が見えてきます。法華経寺は日蓮宗の大本山です。広い境内を有しています。



日蓮聖人像の安置された祖師堂をはじめ、五重塔や法華堂などは国の重要文化財に指定されています。聖教殿は境内の最奥部でした。祖師堂を抜け、宝殿門を過ぎると、樹木の鬱蒼とした森が現れました。何やらひんやりとしています。その中で忽然と姿を見せるのが聖教殿でした。



一見して感じたのは異様な迫力があるということです。地盤から最上部までは約22メートル。事前に見ていた写真よりもはるかに大きく感じられました。



構造は鉄筋コンクリートです。外装に花崗岩を採用しているそうです。外観は確かにインド風ながらも、正面柱頭の霊獣などは西洋の古典主義の意匠も採られています。鉄扉を堂々と飾るのは法輪でした。

竣工は昭和6年です。国宝「立正安国論」や「観心本尊抄」をはじめとした貴重な寺宝が収められています。それゆえに内部の見学は叶いません。



ここで嬉しいのがサライの誌面です。特別に撮影した内部の写真が掲載されていました。内部は外観とは一変、何と純和風でした。厨子や簞笥も忠太自らが設計しています。ドーム型の格天井も珍しいのではないでしょうか。外も中も確かに奇想でした。

また通常、非公開の本願寺伝道院の内部も撮影を行っています。さらに京都の祇園閣や伊賀の俳聖殿などもピックアップ。かつての阪急梅田駅のコンコースをシャンデリアとともに飾ったレリーフも忠太の設計でした。

奇想建築以外にも見どころがあります。まずは巻頭の藤原新也による「沖ノ島」の特集です。ともかく写真が美しい。自然の姿が神々しくも感じられました。また美術関連では7月5日より上野の森美術館で開催される「石川九楊展」のほか、奈良国立博物館で「源信 地獄・極楽への扉」についての案内もありました。

「サライ2017年7月号/にっぽんの奇想建築を歩く/小学館」

見て、読んで楽しめるサライ7月号の「にっぽんの『奇想建築』を歩く」特集。雑誌片手に奇想建築を見て回るのも面白いのではないでしょうか。



ちなみに来月の8月号は「くらべる日本美術」です。建築、美術ファンにとって嬉しい企画が続きます。こちらも期待したいです。

「にっぽんの『奇想建築』を歩く」 サライ2017年7月号
内容:唐破風にエンジェル、築地に珍獣。こんな建物に誰がした?にっぽんの「奇想建築」を歩く。法隆寺から安土城、日光東照宮そして「伊東忠太」へ。旧開智学校、山形市郷土館、岩科学校ほか。
出版社:小学館
価格:700円(税込)
刊行:2017年6月9日
仕様:156頁
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「カフェのある美術館」 世界文化社

日本各地の美術館のカフェを巡りたくなる一冊が、世界文化社より刊行されました。

「カフェのある美術館/青い日記帳/世界文化社」

それが「カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ」です。監修はお馴染みの「青い日記帳」のTakさん(@taktwi)。美術館へ通っては、日々のブログを更新するだけでなく、展覧会に関するトーク、ないしガイドツアーなどのイベントも企画。常に精力的に活動されています。



表紙が三菱一号館美術館の「Cafe 1894」でした。2010年にかつてのコンドル建築を復元してオープン。ご覧のようにクラシカルです。都内では人気のカフェだけに、利用された方も多いかもしれません。

第1章 レトロな美術館・カフェレストラン
第2章 緑と陽だまりの美術館・カフェレストラン
第3章 一度は訪れたい個性的な美術館・カフェレストラン
第4章 料理が美味しい美術館カフェ・レストラン

「カフェのある美術館」は切り口がユニークです。というのも、有りがちな地域別の分類ではありません。テーマ別でした。全部で4つです。はじめが「レトロな美術館カフェ・レストラン」でした。ここでは先の「Cafe 1894」をはじめ、アサヒビール大山崎山荘美術館 の「喫茶室」や京都文化博物館の「前田珈琲」などをピックアップ。いずれも歴史的な建造物です。各テーマを通すことで、カフェの個性がより浮き上がっていました。



「個性的な美術館」で身近なのが原美術館です。まず「カフェダール」を3ページを用いて紹介。見開きではカフェの特徴を簡単にガイドしています。もちろんイメージケーキや限定メニューのガーデンバスケットについても言及がありました。写真はフルカラーです。内観と外観の双方を掲載。人気メニューを写真とともに知ることが出来ます。



ここでガイドは終わりません。続くのがショップでした。コンセプトとともに、おすすめのアイテムを紹介しています。最後が美術館です。建築、展示、コレクションの観点から4ページにも渡って解説しています。つまり「カフェのある美術館」は単純なカフェガイドではありません。美術館の入門編としても有用ではないでしょうか。



美術館に詳しいTakさんならではの細かな観点も随所に伺えました。一例が三井記念美術館のミュージアムカフェです。美術館のチケットがなくとも入場可能とありますが、あまり周知されているとは言えません。

ほか三菱一号館美術館の「Cafe 1894」で休館中のみ提供されるアフタヌーンティーや、ホキ美術館の「はなう」の月曜限定メニュー、またポーラ美術館の「アレイ」の寄付金付きメニューなど、ともすると知られていないメニューについても触れています。さらに国立科学博物館の「ムーセイオン」は奥の席を推奨。何故でしょうか。クジラの骨格標本を見降ろせるからだそうです。実地に基づくようなマニアックな視点も見逃せません。



横須賀美術館の「アクアマーレ」が土日祝日の11時から11時半の間のみ予約出来るとは知りませんでした。海を一望する抜群のロケーションです。私も度々利用しますが、待ち時間が発生していることも少なくありません。

狙い目の時間帯についても案内があります。根津美術館の「ネヅカフェ」です。何と開館直後でした。確かに混雑とは無縁です。窓外の庭の緑を占有出来ます。先にカフェを利用するのも楽しみ方の一つです。美術館のカフェというと、鑑賞後に出向く方が多いかもしれませんが、待ち合わせでの利用など、様々なシーンで使い分けられることを改めて知りました。

掲載カフェは29か所。関東、関西の美術館だけでなく、金沢21世紀美術館や山口県立美術館、大分県立美術館なども紹介しています。全140ページ弱の余裕のある作りです。コンパクトにまとまっていました。



もちろん営業時間や休業日、問い合わせ先などの基本的情報も網羅。カフェの利用に美術館の入館料が必要か否かについても触れています。実用性も十分でした。

なおJ-wave「RADIO DONUTS」にTakさんが出演されることが決まったそうです。

J-WAVE WEBSITE : RADIO DONUTS
URL:http://www.j-wave.co.jp/original/radiodonuts/

放送予定は3月18日(土)の10時10分から40分。土曜の午前中です。おそらくは美術館のカフェなどについて楽しく話して下さると思います。


また荻窪の6次元で「カフェのある美術館ナイト」の開催も決定しました。

「カフェのある美術館ナイト」
ゲスト:中村剛士(青い日記帳主宰)  
聞き手:ナカムラクニオ(6次元)
日時:3月30日(木) 。19:30~22:00
*19:00開場
料金:1500円(ドリンク付)
会場:6次元(www.6jigen.com)
予約:件名を「カフェのある美術館ナイト」とし、 名前、人数を明記の上、rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp ナカムラまで。

青い日記帳監修の「カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ」。A5サイズで持ち運びにも便利でした。手にとっては美術館のカフェに出かけるのも良いのではないでしょうか。

「カフェのある美術館/青い日記帳/世界文化社」

「カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ」 世界文化社
内容:レトロでクラシックな内装のカフェ、大きな窓から緑と光があふれるカフェ、ユニークで個性的なカフェ、とっておきの料理が味わえるカフェなど、全29店を紹介。カフェのある美術館の建築の特徴から、コレクションの概要、ミュージアムショップまで、各美術館のこだわりと魅力がこの1冊でわかる美術館ガイド。コラムには、博物館や文学館のカフェも掲載。
監修:青い日記帳
価格:1728円
刊行:2017年2月
仕様:144頁
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「特集 河鍋暁斎」 美術手帖

いよいよ今月末、三菱一号館美術館で始まる「河鍋暁斎展」。「狂っていたのは、俺が、時代か?」とは何ともチャレンジングなサブタイトルです。楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。


「特集 河鍋暁斎」 美術手帖
http://www.bijutsu.co.jp/bt/

その展覧会を目前にしての企画です。美術手帖の最新号で「河鍋暁斎」が特集されています。



コピーは「この絵描き、天下無敵。」。全体の監修を務めるのは山下裕二先生です。冒頭、田附勝氏による写真から目を引かれるもの。暁斎画をこれでもかというほどにクローズアップ。山下先生が暁斎の特徴として挙げる「二重性」のうち、「巨大×細微」における「細微」、つまり暁斎画の細部の繊細な筆致を目の当たりにすることが出来ます。

それにしても山下先生、何とも暁斎愛に満ちてはいないでしょうか。と言うのも、かつて京博で回顧展の行われた暁斎ですが、次に例えば東博で開催すればどのような展示をするのか。その具体的なプランまでを披露しています。さらには「勝手に重文指定」として、暁斎画に重文がないのはけしからんと、全9点の作品をまさに勝手に重文に認定しているのです。

さて今回の「河鍋暁斎」特集。実に幅広い視点が盛り込まれているのも特徴です。各方面で活躍するアーティストらが暁斎の魅力を語りに語っています。

まずはしりあがり寿さんです。題して「新富座妖怪引幕が出来るまで」。暁斎畢竟の大作の「新富座妖怪引幕」の制作プロセスを漫画化しています。実は私もこの作品、かつて成田山の書道博物館で見たことがありますが、僅か4時間で描き上げたとは到底思えないほどに充実。全17メートルにも及ぶ大画面に至極圧倒された記憶があります。それをしりあがりさんは、注文主である仮名垣魯文に着目し、暁斎との2人のやり取りを軽妙洒脱、面白おかしく表しました。



暁斎に「最高の評価」を与えている山口晃さんも登場します。山下先生との対談です。河鍋暁斎記念美術館を訪ねて「放屁合戦絵巻」や「美人図」の下絵などを鑑賞。暁斎の頭に3Dとなっているはずのモチーフが、画面では平面的になっていることなどを指摘しています。時には日本美術全般に話を広げては、暁斎の魅力についてさっくばらんに語っていました。

なおここに登場する河鍋暁斎記念美術館ですが、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

場所は埼玉の西川口です。暁斎専門の美術館としても知られ、肉筆から下絵、画稿などを含め3000件も有しています。そして館長は暁斎を曽祖父に持つ河鍋楠美氏です。誌面でも暁斎が河鍋家でどのように語り継がれたのかや、美術館の設立などについてインタビュー形式で触れています。暁斎に最も近しい人物による貴重な証言として重要だと言えそうです。

読み物として私が特に面白く感じたのは、西尾康之さんによる「暁斎が本当に描きたかったものとは?」でした。



ここで西尾さんは暁斎の下絵、とりわけ線、さらには筆の太さや墨の濃さにまで言及しては、暁斎画を分析。また「女人群像」の描写から、暁斎は衣服にフェティシズムがあったのではないかとも述べています。

さらに暁斎は山姥をむしろ普通の女性として描こうとしていたのではないかも指摘。また「九相図」でも、死を死としてではなく、むしろ「華やか」であり、「自由になること」であると考えていたのではないか。そのようにも語っていました。

木下直之氏の「呑み、笑い、騒いでわかる 暁斎の時代の絵」も興味深いのではないでしょうか。



暁斎の時代にあった書画会を出発点に、現代の美術の在り方にまで引き付けて論じたテキストです。書画会の即興性が近代以降、消えてしまった一方で、現代のライブパフォーマンスに蘇っているのではないかという箇所も面白い。展示空間としての絵馬堂と美術館、さらには暁斎の春画についても踏み込んでいます。

ほかには20代の頃から暁斎が好きだったという天明屋尚さんのインタビューや、暁斎の年記に沿った「河鍋暁斎物語」なる漫画もありました。端的に展覧会に準拠した特集ではありません。

一号館での展覧会に向けても読んでおきたいのが「エシゾチズムを超えてー暁斎と外国人たち」です。



テキストは今回の企画を担当された三菱一号館美術館の野口玲一氏です。ここで暁斎と外国人、特に一号館美術館ともゆかりのあるジョサイア・コンドルに着目。海外の日本美術の受容を踏まえつつ、暁斎とコンドルの師弟関係について触れながら、相互に与えた影響などについて論じています。

またラストには一号館の暁斎展をはじめ、この夏、暁斎画を見られる展覧会もリストアップ。暁斎に関する書籍も紹介していました。



「画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」@三菱一号館美術館
URL:http://mimt.jp/kyosai/
会期:2015年6月27日(土)~9月6日(日)

なお暁斎は次号の芸術新潮でも特集(6/25発売予定)があるそうです。私も読み始めたばかりですが、この美術手帖と芸術新潮の2大美術誌での特集を経ての暁斎展。大いに期待出来るのではないでしょうか。

「美術手帖2015年7月号/河鍋暁斎/美術出版社」

美術手帖2015年7月号、「特集 河鍋暁斎」は全国の主要書店で発売中です。まずはお手に取ってご覧下さい。

「特集 河鍋暁斎」 美術手帖(美術出版社)
内容:江戸から明治へと時代が大きく転換する頃、伝統技術を駆使した仏画や美人画、妖怪や骸骨が踊るユーモラスな戯画、春画まで、あらゆるものを描ける人気絵師がいた。自己表現を超えて、庶民に寄り添い、絵師として生きた河鍋暁斎は、いかにして時代の変化と名声の浮き沈みを乗り越えて、再び評価されるに至ったのか?多才が故にとらえがたい、その実態に迫る。
価格:1728円(税込)
刊行:2015年6月17日
仕様:192頁
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