「炎の人 式場隆三郎」 市川市文学ミュージアム

市川市文学ミュージアム
「炎の人 式場隆三郎ー医学と芸術のはざまで」
3/14-5/31



市川市文学ミュージアムで開催中の「炎の人 式場隆三郎ー医学と芸術のはざまで」を見てきました。

師に柳宗悦を仰ぎ、自邸の設計を濱田庄司らに依頼。白樺派の文人と関わりながら民芸にも参加します。そして文筆に精を出し、とりわけゴッホを愛してやまなかったという一人の男、式場隆三郎。

本業は精神科医です。明治3年に新潟に生まれ、後に千葉の市川に式場医院を開院。医業の傍ら、芸術とも携わった文化人でもあります。

その式場の主に芸術に関する活動を紹介する展覧会です。

10代の頃から文学に強い関心を持っていたそうです。大正6年、新潟の医学専門学校を卒業した式場は、「医学の中で文学や心理学に関わるのは精神科のほかにない。」として、精神科医としての道を歩み出します。

雑誌「白樺」に触れ、エスペラント語も学んだ式場、著作活動は実に旺盛です。結果的に医学、小説、そして芸術書など、訳書を含めて250冊もの本を残しています。

中でも熱心に取り組んだのがゴッホ研究です。そもそも日本におけるゴッホ受容は「白樺」が大いに果たしていた。同誌では明治43年から大正13年にかけて、ゴッホに関する60点以上の文献や挿絵を紹介したそうです。

それに式場も触発されたのでしょう。ゴッホへの関心は年々高まっていきます。昭和4年にはオランダ、ドイツ、フランスを旅行。ゴッホにまつわる資料を収集しました。

そこで著したのが「ゴッホの生涯と精神病」です。上下巻あわせて1500頁以上もの大著、装丁をかの芹沢けい介が担当しています。また「炎の自画像ゴッホ」や、いわゆる耳切り事件に関する「ヴァン・ゴッホの耳切事件」のほか、ゴッホの手紙の翻訳なども手がけました。「ゴッホのように燃えて燃えて仕事をしていきたい。」とは式場の言葉です。いかに彼がゴッホに魅せられていたかを伺え知れる一文と言えるかもしれません。

式場によるゴッホ顕彰の最たるイベントです。昭和48年には「ゴッホ百年祭」を執り行います。会場は日本橋の丸善。150点の複製画を含む、計750点の資料でゴッホの画業を紹介した展覧会です。会期中には8000名もの人が訪れました。そもそも当時、国内でゴッホの絵画を見る機会はほぼ皆無と言って差し支えありません。ゆえに複製画でも意義があったことでしょう。大変な評判となり、後に展覧会は全国へ巡回することになりました。

民芸との関わりも重要です。式場は柳宗悦の木喰研究のための旅行に同行。芹沢の装丁による「民芸と生活」のほか、柳、式場編の「琉球の文化」などの著作を残します。また柳だけでなく、リーチらを自邸に招いては交流したことでも知られているそうです。展示ではリーチによる「式場隆三郎肖像」画のほか、濱田庄司の「掛分指描花瓶」などの陶芸も紹介されていました。

式場は市川ともゆかりの深い人物でもあります。昭和11年、市内の北西部、国府台の地に精神科の式場医院を設立。さらに戦後、式場は病院の敷地内にバラ園を整備します。いわゆる患者の行動療法のためのものですが、市内でも大いに話題となりました。

実は現在、市川市の花はバラですが、それは元々式場がバラ園を作ったことに由来しているそうです。園内ではローズフェスティバルなるイベントも催されます。さぞ賑わったのでしょう。地元の名士らも集う社交の場でもあったそうです。

昭和32年、式場医院で行われたローズカーニバルの様子を捉えた半ドキュメンタリー映像が展示されていました。タイトルは「バラ娘は馬車に乗って」。市川映像協会による約15分ほどの映像です。

バラ娘、今でいうところのミス・バラのような存在なのでしょうか。白いドレスに身を纏ったバラ娘たちが市役所から馬車に乗って市内をパレード。バラの咲き誇る式場医院内でパーティーを華やかに行います。

また式場は同じく市川の八幡学園に通っていた山下清の才能を見抜き、いわゆる後援者になったことでも知られていますが、今回、山下に関する展示は殆どありません。

と言うのも次回展が山下清展なのです。おそらくはそこで式場と山下清との関係についても触れられるのではないでしょうか。なお式場展のチケットを持参すると、次回山下展で割引が受けられます。

「山下清と、その仲間たちの作品展」@市川市文学ミュージアム 6月13日(土)~8月30日(日)

図録が一部1000円で販売されていました。また会期中、各月一回ずつ、学芸員による展示解説があります。そちらにあわせて出かけても良いかもしれません。

[担当学芸員による展示解説]
3月28日(土)、4月26日(日)、5月24日(日) 各13時30分~(申込不要)


市川市生涯学習センター「メディアパーク市川」

市川市文学ミュージアムは中央図書館のある「メディアパーク市川」の2階、総武線の本八幡駅から徒歩15~20分弱ほどの場所にあります。駅からは少し離れています。

市川に関する文学者らを紹介するとともに、年に数度、本展を含めた企画展示を行う施設です。ただし常設はほぼパネルのみの展示、企画展示室も実のところかなり手狭です。


「市川市文学ミュージアム」受付より常設展示部分

駅からのアクセスは徒歩がメインですが、本八幡駅北口ロータリーから文学ミュージアム横の商業施設、ニッケコルトンプラザ行きのシャトルバスへが往復無料で運行されています。交通事情にもよりますが、バスを利用すると概ねコルトンプラザまで5分ほどです。(そこから文学ミュージアムまでは歩いて5分ほど。)あわせてご利用下さい。

「コルトンバスのご案内」(ニッケコルトンプラザ)


「メディアパーク市川」入口

民芸展などで度々耳にする式場隆三郎、単独で取り上げられることは極めて珍しいのではないでしょうか。狭い展示室とはいえ、資料は200点超。著作のみならず、葉書や写真など盛りだくさん。先にも触れたように民芸に関する品もあります。その意味でも見ごたえのある展示でした。

5月31日まで開催されています。

「炎の人 式場隆三郎ー医学と芸術のはざまで」 市川市文学ミュージアム
会期:3月14日(土)~5月31日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。3月31日、4月30日、5月7日、5月29日。
料金:一般300(240)円、65歳以上240円、高校・大学生150(120)円、中学生以下無料。
 *( )内は25名以上の団体料金。
時間:10:00~19:30(平日)、10:00~18:00(土日祝)。最終入場は閉館の30分前まで
住所:千葉県市川市鬼高1-1-4 市川市生涯学習センター2階
交通:JR線・都営新宿線本八幡駅より徒歩15分。京成線鬼越駅より徒歩10分。
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4月の展覧会・ギャラリーetc

関東はここ数日で一気に暖かくなり、桜も一斉に咲き始めました。早くも都内では満開だそうです。今週末は最後のお花見という方も多いのではないでしょうか。

4月に開催される展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「動物絵画の250年」 府中市美術館(~5/5)
・「日常事変」 川口市立アートギャラリー・アトリア(~5/10)
・「富山県立近代美術館コレクションから ピカソと20世紀美術」 東京ステーションギャラリー(~5/17)
・「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」 東京藝術大学大学美術館(4/4~5/17)
・「没後100年 小林清親展」 練馬区立美術館(4/5~5/17)
・「生誕110年 片岡球子展」 東京国立近代美術館(4/7~5/17)
・「燕子花と紅白梅ー光琳デザインの秘密」 根津美術館(4/18~5/17)
・「イメージの魔術師と呼ばれた絵本作家 エロール・ル・カインの魔術展」 そごう美術館(4/25~5/17)
・「リニューアルオープン記念展:private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館(4/11~5/24)
・「石田尚志 渦まく光 Billowing Light」 横浜美術館(~5/31)
・「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」 東京国立博物館(4/28~6/7)
・「平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫(4/24~6/14)
・「愛される民藝のかたちー館長 深澤直人がえらぶ」 日本民藝館(3/31~6/21)
・「鎌倉からはじまった。1951-2016 PART1:1985-2016」 神奈川県立近代美術館鎌倉(4/11~6/21)
・「ルオーとフォーヴの陶磁器」 パナソニック汐留ミュージアム(4/11~6/21)
・「松園と華麗なる女性画家たち」 山種美術館(4/18~6/21)
・「日本の妖美 橘小夢展~幻の作品を初公開」 弥生美術館(4/3~6/28)
・「開館20周年記念 歴代館長が選ぶ 所蔵名品展」 千葉市美術館(4/10~6/28)
・「他人の時間/山口小夜子 未来を着る人」 東京都現代美術館(4/11~6/28)
・「高橋コレクション展」 東京オペラシティ アートギャラリー(4/18~6/28)
・「大英博物館展ー100のモノが語る世界の歴史」 東京都美術館(4/18~6/28)
・「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」 損保ジャパン日本興亜美術館(4/18~6/28)
・「フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展」 東京都庭園美術館(4/25~6/30)
・「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」 森美術館(4/25~7/5)
・「あの歌麿が帰ってきた!ー『深川の雪』再公開」 岡田美術館(4/3~8/31)
・「セザンヌー近代絵画の父になるまで」 ポーラ美術館(4/4~9/27)

ギャラリー

・「山本晶ーjump」 アートフロントギャラリー(4/3~4/26)
・「ポーラミュージアムアネックス展2015(後期)」 ポーラミュージアムアネックス(4/7~4/26)
・「加納俊輔 Cool Breeze On The Rocks」 Maki Fine Arts(4/4~5/2)
・「TWS-Emerging 2015 第1期 長田堅二郎・大山紗智子・村上賀子」 トーキョーワンダーサイト渋谷(4/11~5/10)
・「資本空間ースリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸 vol.1豊嶋康子」 ギャラリーαM(4/11~5/16)
・「クリエイションの未来展 第3回隈研吾監修 岡博大展」 LIXILギャラリー(~5/23)
・「和田真由子 ハムレット」 児玉画廊東京(4/11~5/23)
・「椿会2015 初心」 資生堂ギャラリー(4/4~5/24)
・「藤本壮介展 未来の未来」 TOTOギャラリー・間(4/17~6/13)

新年度、切り替えの時期です。展覧会も目白押しです。

まずは2年間にも及ぶ改修工事を終えた埼玉県立近代美術館です。オープン記念展の「private, private―わたしをひらくコレクション」が開催されます。



「リニューアルオープン記念展:private, privateーわたしをひらくコレクション」@埼玉県立近代美術館(4/11~5/24)

所蔵品によるコレクション展、通常とは異なり、比較的広い企画展示室を用いての展示です。奥の深い埼近美のコレクションを一気に楽しめるチャンスではないでしょうか。

オープンにあわせて「もますまつり」と題した記念イベントも行われるそうです。そちらにあわせて出かけても良いかもしれません。

「リニューアルオープン記念イベント もますまつり」@埼玉県立近代美術館

同じく施設改修のため3ヶ月ほど休館していた森美術館がこの4月に再始動します。



「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」@森美術館(4/25~7/5)
「六本木アートナイト2015」@六本木ヒルズ、東京ミッドタウンほか、六本木一帯(4/25~4/26)


オープン初日はちょうど恒例の「六本木アートナイト」の開催日です。年々、人出が増している感のあるアートナイト、今年も多くの方で賑わうのではないでしょうか。

千葉市美術館が開館20周年を迎えました。それを記念しての展覧会です。「歴代館長が選ぶ 所蔵名品展」が始まります。



「千葉市美術館開館20周年記念 歴代館長が選ぶ 所蔵名品展」@千葉市美術館(前期:4/10~5/10、後期:5/19~6/28)

こちらも埼近美同様のコレクション展、前後期で展示内容が異なるそうです。定評のある浮世絵や江戸絵画のみならず、現代美術にも意外な作品が多い千葉市美術館のコレクション。ひょっとすると普段あまり出ない作品がお目見えするかもしれません。ともに追いかけたいと思います。

美術館・博物館情報フリーマガジンの「ミュージアムカフェマガジン」が最新4月号をもって休刊します。


ミュージアムカフェマガジン4月号 特集「やきものに蘇る、フォーヴィズムの輝き」

2013年10月、第1号の仏頭展特集よりほぼ毎月、展覧会とタイアップしながら、独自の切り口や読み物で楽しませてくれたフリーマガジン。鑑賞の参考になったことも少なくありません。


ミュージアムカフェマガジンVol.15 辛酸なめ子「ホイッスラーのモテアート」

例えば最近のホイッスラー展です。辛酸なめ子さんの「ホイッスラーのモテアート」、展覧会ではなかなか読み取りにくいホイッスラーの人となりなどを分かりやすく伝えてくれました。モテアートがなければ展覧会にあれほど関心が持てなかったような気さえします。

また今年の2月にはマガジン主催初のトークイベントもあったばかり。巻末の展覧会カレンダーにもよくお世話になりました。

博物館・美術館情報サイト「ミュージアムカフェ」

率直なところかなり残念ですが、あくまでも休刊です。その言葉を信じて、いつかはマガジンが復刊することに期待したいと思います。

それでは4月も宜しくお願いします。
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「大ニセモノ博覧会」 国立歴史民俗博物館

国立歴史民俗博物館
「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史」
3/10-5/6



国立歴史民俗博物館で開催中の「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史」を見てきました。

いきなりですが、ベトナムでつくられ、日本では室町から江戸時代にかけて茶道具として重宝された安南陶器、つまり安南焼という焼き物をご存知でしょうか。


「安南陶器ニセモノ事件」

ご覧の通り、見るも色に眩しい陶器群。大皿から壺まで絵付けも鮮やかです。露出展示に効果的な照明も冴えます。誰もが目を引く器、思わず「美しい。」と口に出した方も多いかもしれません。

私もそう思いました。そして騙されました。ようは全てニセモノ。1980年から1990年にかけて、主に京都の縁日などで出回った模造品なのです。

ホンモノは300万円ほどですが、ニセモノは20~30分の1、おおよそ3万から10万ほどで売られていたとか。比較すればホンモノより模様に繊細さがなく、焼きもあまい。今となってはニセモノであることは明らかですが、当時はかなり出回り、騙された人も少なくなかったそうです。

ちなみに業者は焼物が発掘される経緯までをでっち上げます。何と発掘のニセ映像までを作成しました。いわゆる尾ひれはひれ、ありそうな逸話を付けては、いかに本物であるかと訴えていたそうです。当然ながら後に警察沙汰となりましたが、結局犯人はドロン。現在もその行方は分かっていません。


「暮らしの中のフェイク」

ずばり本展では、人々が作り続け、また必要に応じては使い、さらには時に騙されてもきた、考古品や美術品などのニセモノを紹介しています。

館内の撮影の許可を特別にいただきました。

かつて石器発掘において「ゴッドハンド」と呼ばれた人物がいたことを覚えておられるでしょうか。

いわゆる「前・中期旧石器時代遺跡捏造問題」です。とある考古研究家が次々と発見した前・中期旧石器時代の遺物が、実は全て捏造だったと分かった事件。手口はあまりにも大胆です。自らが一度埋めた石器を、改めて掘り出していた。しかし当時は見抜けず、「発見」として讃えられたこともありました。当然ながら捏造発覚後は大変なスキャンダルとなり、教科書も書き換えに追い込みました。

そして歴博も出土品のレプリカを前・中期旧石器時代の遺物として紹介していたそうです。事件発覚後はすぐに出品を停止、お詫びをしたそうですが、今回改めて展示に至った経緯を紹介しています。もちろん詳細に検討しなかった歴博への批判もあるでしょう。しかしながらどういう形であれニセモノが歴博を巻き込んでいたことがあったのです。

結果的に安南陶器や捏造石器は人を騙したもの。悪意があったとしてもやむを得ません。こうした例も少なくないせいか、当然ながらニセモノには否定的なイメージが付きまとっているのも事実です。

しかしながらニセモノの存在にも意義があった。さらに一歩踏み込んでニセモノがホンモノよりも価値を持ちうることすらある。それが本展のスタンスです。単にニセモノを悪者に仕立てあげて糾弾するわけではありません。


「なぜ偽文書は作られたのか」(武田信玄・徳川家康の偽文書)

古文書です。ニセモノに歴史的な価値を見出します。一例が戦国の武将、武田信玄の偽文書です。何でも甲斐の国では武田家由来の書状、証文を所持していると、年貢の税率が軽減されることがあったとか。よって市井の人々はこぞって証文のニセモノを作成、中には木版刷りでニセ証文を大量に生産します。そしてそれを役人が来る度に見せては、いかに武田家の恩恵を受けていたかとアピールしていました。

また武田の浪人たちも戦功をたたえる書を偽造していたことがあったそうです。権威付けに見せびらかす必要があったのでしょう。ゆえにニセ書状は使い古してぼろぼろのものが少なくありません。


「元亀三年武田家恩借証文」(偽文書) 江戸時代 個人蔵

ニセモノを見分ける方法の一つとして署名の筆跡に注目することがあるそうです。本文が何やら達筆で判読不能であっても、署名は妙に平明ではっきりと読めることが多い。それがニセモノです。これはともかく内容よりも署名が重要、つまりは誰の文書のニセモノを作るのかということが一番大切だからなのです。


伝酒井抱一「柳に鶯図」 個人蔵 ほか

江戸絵画のニセモノもたくさん出ていました。うち抱一は4点、中でも「柳に鶯図」は何と印章のサイン、抱の旁の部分が、包ではなく宮になっています。明らかな偽印です。

ほかにも雪舟や池大雅などのニセモノもザクザク。ちなみに雪舟の真筆は20数点確認されていますが、いわゆる雪舟の作と称されるものは300点ほどあるそうです。いかにニセモノが出回っていたのか。それを伺い知れるエピソードでもあります。

それにしてもこうしたニセモノ絵画、何故に必要とされたのでしょうか。そこでポイントとなるの威信財、そして見栄というキーワードです。


伝狩野元信「寿老人鶴亀図」 富里市

威信財とはまさに格式ある書画を所有することで、家や個人の格を高めること。例えば雪舟、江戸時代には画聖として重要視されますが、人々の雪舟への憧憬への念がむしろニセモノの需要を高めます。特に手本として雪舟作を習得していた狩野派の絵師が、「伝雪舟」を描くことはそう難しくなかったとも考えられています。


「ニセモノの地域性」(山口県 M家)

そして威信財としてのニセモノを披露しては宴を催すこともありました。まさに見栄の世界です。ニセ書画をずらり並べては人々を招きます。酒を飲んでしまえばホンモノ云々も分からないかもしれません。

ただしニセモノのセレクトは重要です。格式付けのために家の歴史や地域と関係のある絵師の作品が必要となります。例えば兵庫県の旧家には抱一、山口にはゆかりの雪舟の偽作が多い。実際にこの展示でもニセモノ絵画を「千葉県・牧士家」や「山口M家」といった地域の名家の括りで紹介しています。

これがすこぶる面白い。ニセモノ展に秘蔵の作品を出すことには躊躇もあったでしょう。実際に貸出交渉は相当に難儀したそうです。しかし歴博はさらに一歩踏み込みました。何と会場でニセモノによる宴の様子を再現して見せているのです。


「見栄と宴会の世界」宴会再現セット

ずばり兵庫県N家の昭和10年代の宴会風景をそのまま再現したセット。畳敷きの広間には膳が並び、さもこれより宴会が始まるかのような臨場感です。そして奥には大雅や狩野永岳の屏風などが飾られる。器は安南焼でしょうか。ここまで来ればもう説明は入りません。もちろん全てニセモノです。実に圧巻でした。

さてニセモノ展、領域を少し広げたニセモノ、広義のニセモノを提示しているのも大きな特徴と言えるかもしれません。


「縄文時代のイミテーション」

例えば縄文時代の装飾品です。一般的には貝による腕飾りなどが知られていますが、よく考えれば全ての人が貝を簡単に採れたわけではありません。つまり内陸の人々は土で作ったものを貝飾りの代用として身につけていました。


「瓦当模様の模倣と創造」(瓦の模様の地方的展開)

また古代の瓦も興味深いもの。7世紀後半頃、地方では中央、ようは畿内で用いられる紋を模した瓦が次々と作られます。瓦の模様のコピーとも言えるでしょう。その意味ではニセモノなのかもしれません。もちろん地方で独自の意匠が加えられることもありましたが、中央と地方の瓦を比較することで、その意匠が全国へどのように伝播していったのかを知ることが出来ます。


「葬儀のなかの欧米文化」展示コーナー

極めつけが葬儀のための花輪です。起源は明治時代に入ってきた欧米のリースです。当初は生花を利用していたものの、そのうち造花、さらにはタオル地や果物や缶詰で作った花輪などが登場します。つまり生花ではないニセモノとしての花輪が、半ば発展しては一つの花輪文化を作り上げていくわけです。ここではニセモノ自体にも価値を見出せるのではないでしょうか。

それにしてもニセモノ展にかける歴博の力の入れようと言ったら並大抵ではありません。何せ今回の展示のために「ニセモノ」のホンモノをつくってしまったのです。


「人魚のミイラ」展示室風景

ずばり「人魚のミイラ」です。上半身は猿で下半身は鮭。ただしこのニセミイラには古い歴史があります。と言うのも江戸時代において人魚は無病息災の守り神として摺物に出回ったこともありました。また「人魚の骨」には、血を止める働きがあると医学書に書かれていたこともあったそうです。

さらに幕末になると人魚の存在が人々の好奇心をあおります。すると登場したのが見せ物、ようは人魚のミイラを見せる興行です。来日したペリーも「日本遠征記」に日本人が人魚を制作していると記しています。実際に興行で見せたであろう人魚のミイラの写真まで残っています。

しかもミイラは輸出されました。今でもイギリスの大英博物館には日本製の「人魚」の標本が保管されているそうです。


「人魚のミイラ 制作工程」パネル

それを今になって改めて歴博が制作したわけです。21世紀の現代に改めて人魚のミイラを甦らせます。何でもミイラの制作法を知る人物の協力を得て造ったそうです。しかも展示は見せ物小屋を意識したもの。覗き窓があったりするなどして臨場感を高めます。また制作工程のパネルもありました。これが実に興味深い。何せミイラの製造法を知る機会などまずありません。


「ホンモノはどれだ!」小判比較コーナー

また眩い小判が積もるチラシ表紙、実は殆どニセモノで、本物の小判が僅か二枚混じるのみですが、会場でも小判の真贋比べの展示があります。


伝雪舟「山水図」。右は「教授のつぶやき」キャプション。

これが簡単なようでいて難しいもの。答えはその場にはなく、順路最後にあるアンケート用紙の裏に記載されています。さらに随所にある「教授のつぶやき」のキャプションも楽しい。またさり気なくホンモノがあったりするなど、展示にもどこかトリッキーな部分もあります。ともかく親しみやすくなるような切り口が目白押しです。


「織田信長黒印状」 天正元年(1573) 個人蔵 *ホンモノです。

なお今回、展示代表である歴博の西谷大先生のお話を聞く機会を得ましたが、ともかく笑いあり、苦労話あり、もちろん専門的なお話ありと、お話上手で全く飽きさせません。

本展WEBの担当者インタビューにて「ニセモノにも愛を!!」と笑顔で主張される西谷先生ですが、幸いなことにお話を伺うチャンスはかなりあります。つまりギャラリートークです。会期中、何と毎週末の土曜のギャラリートークの全てを担当されています。

「担当者インタビュー:大ニセモノ博覧会ー贋造と模倣の文化史編」(第1回)@国立歴史民俗博物館 

土曜日のギャラリートークにあわせて観覧されることをおすすめします。

ところで佐倉の歴博ですが、私自身もおおよそ10年ぶりに出かけました。

旧佐倉城址を用いた敷地が広大であれば建物も巨大。日本の歴史を旧石器時代に遡って、現代、1970年までを辿る総合展示(常設展示)のスケールも並大抵ではありません。


「国立歴史民俗博物館」総合展示室風景

常設を廻るとなるとゆうに半日はかかるのではないでしょうか。時間に余裕をもってお出かけください。


「大ニセモノ博覧会」会場入口

週末の14時頃に観覧しましたが、大ニセモノ博の展示室は思いの外に賑わっていました。ともかく目を引く広告、さらには意欲的な展示内容です。ひょっとすると会期末に向けて混み合うかもしれません。

なお歴博のある佐倉城址公園は桜の名所でもあります。3月27日(金)より4月5日(日)までは連日18時まで延長開館。さらには20時まで「歴博夜桜鑑賞の夕べ」と題した桜のライトアップの企画も行われます。桜見物とあわせて出かけられるのも良いかもしれません。

「歴博夜桜観賞の夕べ」@国立歴史民俗博物館

5月6日まで開催されています。ずばりおすすめします。

「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史」 国立歴史民俗博物館
会期:3月10日(火)~5月6日(水・振休)
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般830(560)円、高校生・大学生450(250)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *毎週土曜日は高校生が無料。
 *総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)

注)写真は博物館の特別な許可を得て撮影したものです。
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「笑う芸術」 茨城県立近代美術館

茨城県立近代美術館
「笑う芸術」
2/21-4/19



茨城県立近代美術館で開催中の「笑う芸術」を見てきました。

振り返ってみれば笑わない日は殆どありませんが、これほど「笑い」が多様で複雑であったとは思いもよりません。

はじまりは「すたすた坊主」です。笹を手にして歩く坊主、裸でさも楽しそうに笑みを浮かべています。白隠の自画像とも言われていますが、思わずもらい笑いしてしまうような作品でもあります。そして若冲の伏見人形に北斎漫画と続く展開です。国芳の「寄せ絵」もありました。江戸絵画で笑いを掴もうとする導入。まずは気軽に楽しめます。


仙がい「鯛釣恵比寿画賛」 江戸時代 出光美術館 *半期展示:2/21~3/20

しかしながら「笑う芸術」展、何も江戸絵画のみに焦点を当てた展覧会というわけではありません。

というのも、以降は日本、西洋の近代美術、そして20世紀から現代美術までをピックアップしているのです。


小川芋銭「肉案」 1917年 茨城県立近代美術館

高らかに、そして底抜けに笑っています。小川芋銭の「肉案」です。何でも中国の故事に由来する一枚、和尚が両手を振り上げて大笑いしています。おそらくは「ワハハ」とでも言い放っていることでしょう。口は大きく開く。笑いに一点の曇りもありません。


小林古径「壺」 1950年 茨城県立近代美術館

一方で古径の「壺」はどうでしょうか。テーブルの上に置かれた大きな壺、鮮やかな彩色にて金魚が描かれています。それを見やるのが和装の女性です。壺に視線をあわせながら、やや口を横にひろげ、あくまでも控え目に笑っています。まさしく上品。何か音を発するわけでもありません。あえて言えば解説シートにもあった「おほほ」なのかもしれません。

さらに鏑木昌弥の「誰でもない私」の笑いも全然異なります。薄いグレー、あるいは黒を背景に浮かび上がるのは一人の人間の顔です。線は緻密ながらも、雰囲気はあくまでも朧げ、言い換えれば幻想的です。必ずしも人間そのものに強い存在感があるとは言えません。

口は確かに開いています。ただし息を深く吸い込むように開く。まさに息をのむとでも言えるかもしれません。何かに怯えているのでしょうか。笑いなのかもしれないし、笑いでないのかもしれない。判別は困難です。ただこれが笑いだとしたら、驚くほどに深みがある。悲しい時に何故か笑ってしまう。ひょっとするとそうした表情を描いているのかもしれません。

こうした笑い。初めにも触れましたが、何と多様で複雑なのでしょうか。豪快な笑いにニヒル、またブラックな笑い。そして何気ない笑いに、ほっこり、また和むような笑い。美術作品を通しても様々な笑いがあることに気がつきます。

ちなみに近代美術で目立つのはご当地の画家、小川芋銭でした。作品は20点ほどです。実際のところ芋銭のミニ特集展と呼んでも差し支えないほど充実しています。芋銭ファンにとっても嬉しい展示でした。


森村泰昌「たぶらかしE」 1987-90年 京都国立近代美術館

され後半はやや様変わりします。現代美術です。引用や見立て、言葉遊びなども笑いの一要素と見定め、さらには笑いの「ひねり」としてマンレイやデュシャンまでを網羅します。福田美蘭や森村泰昌らといった作家も登場しました。


右:山口晃「厩圖」 2004年 滋賀県立近代美術館
左:山口晃「百貨店圖(日本橋)」 1995年 作家蔵


山口晃が4点ほど出ています。作品は有名な「百貨店圖(日本橋)」に「厩圖2004」、そしてアクリルの連作の「絵はこんなに役に立つ」。うちやはり面白いのは「絵はこんなに役に立つ」です。


山口晃「絵はこんなに役に立つ」 2007年 作家蔵

一枚のキャンバスを日常生活に引き付けて使ってみましょう。キャンバスは分解され、例えば骨折の時の副え木と化します。はかなくも飯盒炊飯の薪となったキャンバス枠、さらには食卓でのお盆となり、日めくりカレンダーとなったキャンバスもありました。一瞬、河原温の作品が頭をよぎりました。思わずにやりとしてしまいます。


山口晃「リヒターシステム」 2013年 作家蔵

「リヒターシステム」も出ていました。モーターを動かしてはぶるぶると震える絵画、何か揶揄しているようで、また端的な面白さも持ち合わせています。含みをもった笑い。山口晃ならでの世界に引込まれました。


福田美蘭「大津絵ー雷公」 2014年 作家蔵

ほか靉嘔、フジイフランソワ、浜田知明なども目を引きます。ともすると普段、なかなか「笑い」というキーワードでは見る機会のアーティストも少なくありません。その意味では新鮮味もありました。

最後に木村太陽のインスタレーション、これが笑いというよりも、あっと驚かされるような作品です。ともに触れたり、参加することが可能です。是非、会場で試して下さい。


「笑い成分表」投票パネルコーナー

出口には「笑い成分表」なるパネルがありました。ずばり投票コーナーです。作品の笑い成分を「なるほ度」や「ピリリ度」などに分解、一枚ずつシールを貼って投票することが出来ます。


「伏見人形」立体パネル撮影コーナー

展覧会自体はかなり硬派ですが、ほか「笑いのツボ押し」ガイドシートなど、展覧会を気軽に楽しめる仕掛けも少なくありません。また一部の作品に限り、撮影も出来ました。


茨城県立近代美術館。梅はほぼ終わっていました。

水戸芸術館の山口晃展(5/17まで)とあわせて観覧すると面白いのではないでしょうか。

4月19日まで開催されています。

「笑う芸術」 茨城県立近代美術館
会期:2月21日(土)~4月19日(日)
休館:4月6日(月)、4月13日(月)。*梅祭り期間中(2/20~3/31)は無休。
時間:9:30~17:00 *入館は16:30まで。
料金:一般850(720)円、大学・高校生600(480)円、中学・小学生360(240)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *70歳以上、及び春休み期間を除く土曜日のみ高校生以下無料。
 *入館料割引券
住所:水戸市千波町東久保666-1
交通:JR線水戸駅南口より徒歩20分。水戸駅北口8番のりばから払沢方面、または本郷方面行きのバスに乗車し「文化センター入り口」。徒歩5分。
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ヨハネス・フェルメール(帰属)「聖プラクセディス」 国立西洋美術館

2014年7月、ロンドンのクリスティーズで競売にかけられたヨハネス・フェルメール(帰属)の「聖プラクセディス」。



「フェルメールの油彩画に11億円 ロンドンで競売」(日本経済新聞)

現存するフェルメールの絵画はおおよそ37作品。うち本作を含め2点のみが民間、個人の所蔵です。よってそもそも競売にかけられること自体が極めて稀。オークションも大いに話題となりました。結果的に作品は日本円で約11億円(約624万ポンド)で落札されました。

「フェルメール作?『聖プラクセディス』西洋美術館に常設展示」(産経ニュース)

どうやら落札者は日本人のコレクターだったようです。昨秋に国立西洋美術館が寄託の依頼を受けます。そしてこの春、3月17日より常設展示室での公開が始まりました。

さて本作、美術館が「帰属」と表明しているように、そもそもフェルメールの真筆かどうか議論が分かれています。


フェリーチェ・フィケレッリ「聖プラクセディス」 1640年代 フェルニャーニ・コレクション

元になるのはイタリア人画家のフェリーチェ・フィケレッリ。本作に先立つこと約15年前に描かれた「聖プラクセディス」をフェルメールが模写したと考えられています。

競売時の科学調査では、顔料の成分が、初期のフェルメール作と極めて類似していることが確認されたそうです。それはフランドル絵画に特徴的な顔料のため、オランダで描かれたことはほぼ確実。また署名と年記の解釈から、フェルメールの23歳の時の作品とも言われています。


ヨハネス・フェルメールに帰属「聖プラクセディス」 1655年 国立西洋美術館(寄託)

2点の作品を比較すれば明らかなように、両作は単純なコピーではなく、一部に改変が加えられています。一番分かりやすいのは聖人の手です。フェルメールと考えられる作品には元の絵にはない十字架が握られています。

そもそも本作をフェルメールの真筆と唱えたのは、フェルメール研究の権威の一人であるアーサー・ウィーロックです。ただしウィーロックの説に対しては反論も多く、現在では彼を除いた「多くの美術史研究者」が「フェルメールへの帰属を疑問視」しているそうです。(カッコ内は解説シートより。)

ちなみに本作が日本国内で公開されるのは2000年に大阪で行われた「フェルメールとその時代」展以来のこと。ちなみに私自身はまだ美術に関心を持つ以前のことであり、展覧会そのものを見ていません。

率直なところ素人の私には真筆云々の件は全く分かりません。しかしながら実際に見ると絵自体はすこぶる美しいもの。初期作ということでやはり思い浮かぶのは「ディアナとニンフたち」です。2008年の東京都美術館でのフェルメール展で出品がありました。先の顔料成分の類似も「ディアナとニンフたち」と比較されたそうです。ラピスラズリを用いたという空の深い青と、やや明るいワイン色の衣服のコントラストが際立ちます。また下を向いたプラクセディスの甘美な表情も魅惑的です。

なお3月から国立西洋美術館の常設展示に加わったのは、「聖プラクセディス」を含め、以下の3点の作品です。

「常設展新規展示作品のお知らせ」(国立西洋美術館)
・ヨハネス・フェルメールに帰属「聖プラクセディス」 1655年 油彩/カンヴァス 101.6x82cm(寄託作品)
・フアン・バン・デル・アメン「果物籠と猟鳥のある静物」 1621年頃 油彩/カンヴァス 75.4x144.5cm(2014年度購入)
・ドメニコ・プリーゴ「アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像」 1520年代 油彩/板 76.8x55.2cm(2014年度寄贈)

「聖プラクセディス」の撮影は寄託作品のために出来ませんが、他2点は撮影が可能でした。


ドメニコ・プリーゴ「アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像」 1520年代 国立西洋美術館

うち特に惹かれたのはドメニコ・プリーゴの「アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像」です。16世紀初頭のフィレンツェで活動した画家の一枚、カタリナと推測される女性の肖像画ですが、胸元で透けた水色の衣服がこれまた美しいもの。白い肌にやや赤らんだ頬の質感も富んでいます。


フアン・バン・デル・アメン「果物籠と猟鳥のある静物」 1621年頃 国立西洋美術館

フェルメールといえば全作品を見るために世界各地を「巡礼」するファンも少なくありません。それを考えると、確かに議論あるとはいえ、一部ではフェルメールと考えられる作品を常に上野で気軽に見られるのも、なかなか贅沢、また興味深いことではあります。


国立西洋美術館常設展示室。一番右はカルロ・ドルチの「悲しみの聖母」。「聖プラクセディス」はこのすぐ右の壁に展示されています。

なお西洋美術館では現在、企画展としてグエルチーノ展を開催中です。もちろんグエルチーノ展のチケットでも「聖プラクセディス」を観覧することが出来ます。

「グエルチーノ展」 国立西洋美術館(はろるど)

ヨハネス・フェルメールに帰属する「聖プラクセディス」は国立西洋美術館の常設展示で公開されています。

「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」@guercino2015)  国立西洋美術館
会期:3月3日(火)~5月31日(日)
休館:月曜日。但し3月30日、5月4日、5月18日は開館。
時間:9:30~17:30 (毎週金曜日は20時まで開館)
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学生1300(1100)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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チームラボ展にてトークイベント「ウィスット・ポンニミット×猪子寿之」が開催されます

日本科学未来館で開催中の「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」。



「チームラボ展」 日本科学未来館(はろるど)

大変な盛況のため、当初の会期を約二ヶ月も大幅に延長。3月7日から後期展示が始まっています。(5月10日まで)

そのチームラボ展にてトークショー、「ウィスット・ポンニミット×猪子寿之ー楽しくて、やさしくて、幸せな未来」が行われます。

スペシャルトーク「ウィスット・ポンニミット×猪子寿之―楽しくて、やさしくて、幸せな未来」
日時:3月28日(土)17:00~18:30
場所:日本科学未来館7階イノベーションホール
登壇:ウィスット・ポンニミット(マンガ家)、猪子寿之(チームラボ代表)
モデレーター:内田まほろ(日本科学未来館 展示企画開発課長)
定員:170名(先着順)
参加費:無料
申込方法:「イベント申込フォーム」(上記リンク先)による申込み。3月27日(金)締切。

開催日時は3月28日(土)の17時から。会場は日本科学未来館の7階のイノベーションホールです。

参加費は無料。定員は170名。先着順です。所定の専用WEBサイトで受付中です。

「hesheit ウィスット・ポンニミット作品集/アップリン」

登壇するのはチームラボ代表の猪子寿之と、タイ生まれの漫画家、ウィスット・ポンニミット。2009年には「ヒーシーイットアクア」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞を受賞。少し前になりますが、2005年の横浜トリエンナーレにも参加したアーティストです。

演題は「楽しくて、やさしくて、幸せな未来」。二人がトークを行うのは初めてだそうですが、マンガやアートの側面から二人の考える未来像を掘り下げるという企画。モデレーターは日本科学未来館の内田まほろさんです。とてもお話好きな猪子さん。おそらくは楽しいトークになると予想されます。


「Nirvana」 2013年 デジタルワーク 6分20秒(ループ)

なおチームラボ展は後期に入り、一部の作品が新設されるなど、内容が若干リニューアルされました。

申込専用サイト→スペシャルトーク「ウィスット・ポンニミット×猪子寿之 ―楽しくて、やさしくて、幸せな未来」

「チームラボって、何者?/マガジンハウス」

申込締切はイベント前日の3月27日までです。興味のある方は申込まれては如何でしょうか。

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」 日本科学未来館@miraikan
会期:2014年11月29日(土)~2015年5月10日(日)*会期延長。
休館:毎週火曜日。但し12/23(火・祝)、及び2015/1/6(火)は開館。年末年始(12/28~1/1)。展示替え期間(3/2~3/6)。
時間:10:00~17:00
 *3/7以降の土・日・祝日は19時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人1800円、中人(小学生~18歳)1200円、小人(3歳~小学生未満)900円。
 *中人は土曜のみ1100円。
 *リピーター割引あり。
住所:江東区青海2-3-6
交通:新交通ゆりかもめテレコムセンター駅下車徒歩約4分。船の科学館駅下車徒歩約5分。東京臨海高速鉄道りんかい線東京テレポート駅下車徒歩約15分。
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「没後50年 小杉放菴」 出光美術館

出光美術館
「没後50年 小杉放菴ー東洋への愛」
2/21-3/29



出光美術館で開催中の「没後50年 小杉放菴 東洋への愛」を見てきました。

同美術館での放菴展というと、2009年に行われた「小杉放菴と大観」展以来のことかもしれません。

初めは洋画家を志し、文展の最高賞を受賞。しかしヨーロッパ留学で大雅画に出会ったことから、いわゆる「東洋回帰」として後に日本画家として活動した小杉放菴。

没後50年を期しての回顧展です。作品はほぼ放菴のみ80点。出光美術館のコレクションを中心に、東京国立近代美術館、また小杉放菴記念日光美術館などからも作品がやって来ています。

日光生まれの放菴、最初期、10代の頃は同地の洋画家、五百城文哉に弟子入りしたそうです。

18歳で上京。その画才を買われてか、日露戦争では国木田独歩とともに従軍記者として戦地へ出向き、数多くのスケッチを残します。

展示の出発点も日光です。放菴と五百城の描いた「日光東照宮」。雪の積もった東照宮の威容、静まりかえっています。俯瞰した構図が目を引きました。

時代は下りますが、昭和5年、放菴50歳の頃の自画像も面白いのではないでしょうか。酒好きで奔放な性格だったともされる放菴、ともかく厳つい面持ちです。決して取っつきやすいとは言えません。眉間に皺を寄せては、鋭い視線を向けています。何やら見る者を威嚇せんとばかりに構えていました。

二年連続で文展の最高賞を受賞したのは30歳の頃です。一つは出品作の「水郷」です。おそらくは彼の愛した茨城の景色でしょう。一人の漁撈が仕事を終えて漁具を片付ける姿を描いたのかもしれません。ほぼ直立で作業をしています。日焼けした肌に深い皺。年季が入っています。

放菴はこの後、洋画家としての将来を嘱望され、ヨーロッパへと留学。憧れていたシャヴァンヌの影響を受けた作品を描きますが、本作においても、例えば西洋美術館にある「貧しき漁夫」を思わせなくもありません。放菴にとってシャヴァンヌがどれ程の存在だったのか。その影響関係の一端を伺い知れる作品と言えそうです。

なお留学先での「スペイングラナダ娘」はマティスの影響も指摘されています。さらに真横から馬が水を飲む様子を描いた「飲馬」も、確かにシャヴァンヌ的と言えなくもありません。

シャヴァンヌ同様、放菴が洋画家として頂点を極めたのも壁画の仕事でした。

東大の安田講堂を飾る大壁画です。うち壁画のための習作、「源泉」などが展示されています。ちなみに源泉とは入学を意味するとか。興味深いのは画肌、表面の質感表現です。まさに壁画を志向するかのごとく、フレスコ画のような色調が生み出されています。

放菴が日本画に転向したのは、パリで偶然に池大雅の画帖を見たことが切っ掛けだそうです。

帰国後は大雅を研究しつつ、中国にも旅行。宋元画を学び、文人画の世界へと入ります。当初は「文人の精神性がない。」という批判も受けたそうです。

2点の「瀟湘八景図」、これがともに大雅と放菴の作品が並んで展示されていました。うち「瀟湘夜雨」では雨に濡れる柳の木を描きます。夜の闇に柳が溶け、湿潤な大気が染み渡る。何とも情緒的な世界が広がっています。

「竹裏館」と「竹裡館」も同一モチーフです。ここでも主題は竹、放菴の方がやや緻密とも言えるでしょうか。2点を比較することにより、両者の絵の個性なども浮かび上がってきます。

さらに放菴は青木木米や浦上玉堂も参照していたそうです。江戸の絵師と放菴の関係。彼の東洋回帰を考える上で重要なポイントと言えそうです。

放菴はこの頃、大正末期に復元に成功した、平安時代の麻紙に虜となります。

「帰院」はどうでしょうか。古くからの山水表現を示す丸い点で描いた一枚、3人の人物が白い壁を背にして歩きます。構図はシンプルです。しかしながら質感のニュアンスにも富んでいる。物静かながらも、美しい作品です。

「黄初平」には驚きました。羊に鞭を振るう男。中国の仙人の話だそうです。手を大きく振り上げては力強い。指を指す姿はキリスト教絵画の影響も指摘されてます。背景の上部はまるで金箔を貼ったようですが、実際は油絵具で表現しています。それにしても人物のポーズ、まるでホドラーの描いた作品のようでもありました。

チラシ表紙を飾る「天のうづめの命」は出光興産のタンカーの船長室に飾られていたそうです。軽やかなステップ、モデルはブギの女王とも称された女優の笠置シヅ子です。色彩の感触はフレスコのようで、やはり独特です。朱色の衣と金色の陽。色に明るく、主題も華やかである。船に乗り込む多くの人たちの目を引いたに違いありません。


小杉放菴「金太郎遊行」 昭和17年 泉屋博古館

なお出光美術館の初代館長である出光佐三と放菴との関係を示す展示もありました。それによれば佐三は放菴の描いた画帖を見て、あの仙がいと共通する魅力があると感じたそうです。以来の出光の放菴コレクション、日本有数です。現在までに300点余を数えるに至りました。

「さんたくろうす」も面白い作品ではないでしょうか。言うまでもなくサンタクロースを描いた一枚ですが、雪山をえらく難儀に歩く老人の姿は、もはや山にこもる仙人のようでもあります。橇もありません。山の下には煙突のある家が建ち並んでいました。おそらくはこれから山を降り、プレゼント入れに行くことでしょう。

ラストの花鳥画、これが何とも趣深い味わいではないでしょうか。

「春昼」は猫が昼寝をしている姿です。毛の質感が思いの外に写実的、筆致は緻密です。しかしながら画面はのんびりした雰囲気が漂っています。

「春禽・秋渓」は双幅の軸画です。春は桜でしょうか。枝には番いの小鳥、江戸琳派を思わせるように瀟洒です。可愛らしい姿を見せています。


小杉放菴「梅花小禽」 昭和時代 出光美術館

「梅花小禽」も独特な構図感が際立つ作品です。大きく屈曲する老いた梅の木。花は可憐であまり目立ちません。麻紙の質感もまた趣深いもの。なお屏風の「梅花小禽」も同じ主題の作品ですが、ここでは石の手水鉢を描くため、乾いた筆を麻紙に擦り付けてゴツゴツとした感触を引き出しているとか。放菴の筆の技が冴えます。

私自身、このスケールで放菴を見たのは初めてです。彼の画業を知るまたとない機会となりました。

館内には余裕がありました。間もなく会期末を迎えますが、ゆっくり観覧出来ると思います。

3月29日まで開催されています。

「没後50年 小杉放菴ー東洋への愛」 出光美術館
会期:2月21日(土)~3月29日(日)
休館:月曜日。但し月曜日が祝日および振替休日の場合は開館。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜日は19時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ有楽町線有楽町駅、都営三田線日比谷駅B3出口より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・千代田線日比谷駅から地下連絡通路を経由しB3出口より徒歩3分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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「1462days~アートするジャーナリズム」 河北ビル5~9F(銀座)

河北ビル5~9F(銀座)
「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days~アートするジャーナリズム」
3/10~22



銀座河北ビルで開催中の「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days ~アートするジャーナリズム~」を見てきました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災。河北新報社のある宮城県も甚大な被害を受けました。地震、ないし津波によって多くの方々が亡くなられ、深い傷を負われました。

あれから4年。「河北新報も伝え続けてきた被災地の1462日を、アートはどう捉えたのか。」(チラシより)東北で活動する9組の現代アーティストらによる様々な表現、取り組みを紹介しています。

さて会場は銀座8丁目。かつて河北新報の東京支社として使われていたオフィスビルの5~9階です。受付は5階。まずは1階からエレベーターであがりました。



すると目の前に飛び込んできたのが、巨大な新聞のパネル。地震のあった日の翌日、津波の惨状を伝える河北新報の記事です。M8.8。まだ地震の規模すら確かでありません。死者・不明者多数、そして「原子力緊急事態を宣言」の文字。あの日から起こった一連の災害が否応無しに思い起こされます。

タイトルに「1462days」とあるのもポイントです。と言うのも、キャプションに「day1」や「day365」などと記されていますが、それは震災から数えた日数を指しています。つまり新聞の記事の日を「day1」、そして4年目を「day1462」と捉え、被災地がどのように変化してきたのか、またアーティストらがどのような活動をしていたのかを、日を追う形で見ることが出来るのです。(但し展示の順はその限りではありません。)


佐藤香「私の故郷、福島」 day365

「day365」、佐藤香の「私の故郷、福島」です。天井から垂れ下がるのは壁画、何メートルあるのでしょうか。大きい。表面には凹凸があります。素材は土です。元々、作家は国内各地で採取した土で絵を描いていたそうですが、今回は故郷の福島県田村町で集めたもの。いずれも実家から200メートル圏内です。サンプルには腐葉土や地層の中から採られた土もあります。質感は様々です。


佐藤香「私の故郷、福島」 day365

田村市は福島第一原子力発電所から40キロ。原発事故により放射線物質の検査や除染を余儀なくされた地域でもあります。ただ必ずしも「原発問題」を意識したものではなく、「故郷自慢のようなもの」(キャプションより)を志向したとか。見た目では変わらぬ土。もちろん汚染の問題は今もなお重要ですが、作家の故郷、あるいは自然を改めて讃えるようなメッセージも感じられました。


木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2

部屋が無数の緩衝材によって満たされています。「day2」、木村剛士の「関係なく、ずっと歩く」。中に立ち入ることが出来ます。細かな緩衝材、天井にも繭のようにびっしり貼り付く。前へ進むと足や身体にまとわりつきます。ちょうど水の中を歩く感覚に近いかもしれません。


木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2

ざっざっとかき分けては進む。白一色、一見、美しいインスタレーションですが、おそらくは瓦礫で埋め尽くされた泥流を意識したのでしょう。「できることは、無力さを胸に歩きつづけることだけだった。」とは作家の言葉です。重くのりかかります。


森田梢「太陽をつくる夢」 day302

「day302」、津波で被害を受けても伸びるヨシを描くのは森田梢、「太陽をつくる夢」です。


尾崎森平「林檎の木」 day2

尾崎森平は被災地の農園に佇む一本のリンゴを表しました。ずばり「林檎の木」です。実は全て落ち、木は殆ど朽ち果てています。背景に広がるのは薄暗がりのグレーです。不穏な気配が漂います。



作品と関連した震災記事の展示も重要です。アートの表現だけでなく、ジャーナリズムは何を伝えたのか。その両面から震災を問い直しています。


アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)

会場内、各階を行き来する階段の壁の部分に絵が描かれていました。制作したのはアートユニットのうわばみです。

5階から9階、はじめはかの大津波です。青く黒い波が船がのみ、地上を襲います。建物の屋上に避難しては途方に暮れる人々の姿もありました。


アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)

その後はいわゆる「復興」のプロセスです。重機が入り、整地し、新たな建物を造る。地域のお祭りでしょうか。楽器を鳴らしては踊る人たちがいる。再び賑わいが生まれました。


佐藤俊一×伊興田千恵「こぼれていく記憶」 day1

「記憶の風化は、アートが止める。」と訴える「1462days~アートするジャーナリズム」展。ずばり風化をテーマとした砂の新聞、「おぼれていく記憶」も胸に迫ります。砂は吹き飛ばされても記憶は飛ばされません。そもそも何も災害は終わったわけではないのです。


「1462days~アートするジャーナリズム」会場入口

ご紹介が遅れました。明日、3月22日(日)まで開催されています。入場は無料でした。

「1462days~アートするジャーナリズム~」 河北ビル5~9F(銀座)
会期:3月10日(火)~3月22日(日)
休館:3月20日(金)、21日(土)。
時間:13:00~20:00
 *土日は11時から。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-6-25 河北ビル5~9F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2、B6出口から徒歩5分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩5分。
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「ポーラ ミュージアム アネックス展2015(前期) 凝縮と拡充」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「ポーラ ミュージアム アネックス展2015(前期) 凝縮と拡充」
3/13-4/5



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「ポーラ ミュージアム アネックス展2015(前期) 凝縮と拡充」を見て来ました。

毎年春恒例、ポーラ美術振興財団によって助成された現代美術家を紹介する「ポーラ ミュージアム アネックス展」。数えること今回で6回目です。

テーマは「凝縮と拡充」。監修は木島俊介氏です。以下の4名の作家が選定されました。

吉本直子、長谷川友紀、白木麻子、瀬山葉子


長谷川友紀「namida」 2015年 リトグラフ ほか

遠目では一瞬、青いタイル画のようにも映ります。長谷川友紀です。作品はタイルではなくリトグラフ、等間隔で並ぶ円や三角の面など、図形的なモチーフが目を引きます。

ちなみにリトグラフ、近年ではアルミ板が用いられることが多いそうですが、今回は主に石板、しかもジュラ紀の石灰石層から切り出した厚い石を用いているとか。一つ一つの円の中にも何層もの色があわせ重なっています。表面のテクスチャーにも深みがありました。

一昨年の川口市立アートギャラリー以来の展示かもしれません。白木麻子です。いわゆる木彫、椅子や机などは家具を思わせますが、必ずしもそうではありません。そもそも彫刻は全て作家のオリジナル。あくまでも家具的に見えるのに過ぎません。


白木麻子「In the grid floor windows」 2014年 ナラ、布

天板のない机、そして底の抜けた椅子。もちろん座ることもモノを置くことも出来ません。そこに布やロープのような紐が組合わさります。構造は思いの外に複雑です。一方で木の温もり、例えば湾曲のある面の仕上げなど、作品自体の質感も魅力的であります。

「光に惹かれ」(キャプションより)ているという作家です。瀬山葉子は、鏡や光を組み合わせたインスタレーションを展開しています。


瀬山葉子「Saiyah 光の色彩コンポジション #2」 2015年 ダイクロイックグラス、鏡、HMI照明、アルミニウム、モーター、制御装置

さも七色に輝く光の軌跡、鏡に反射しては空間を照らします。光源はモーターによる可動式です。一つとして同じ地点を照らすことはありません。なお光は太陽光に近い光源に分光ガラスを通して映しているそうです。

色を分解しては混ぜる。そういえばビーム状の色は絵具のストロークのようにも見えます。まるで絵具の調合です。「光の彫刻」とありましたが、空間自体がパレットのようでもあります。

なお瀬山は昨年、スウェーデンのオペラ劇場で上演された舞台の美術を担当しています。その名は「光の色彩のコンポジション」。全75分です。そのうち4分ほどの映像がダイジェスト版で紹介されていました。


「ポーラ ミュージアム アネックス展2015 凝縮と拡充」会場風景

ほかには故人の遺品を取り込んだ吉本直子の作品も興味深い。三者三様ならぬ四者四様の表現。私としては川口で印象深かった白木麻子の作品に再度接することが出来たのも収穫でした。

本年の「ポーラ ミュージアム アネックス展」は前後期の二期制です。

現在の前期終了後、4月7日(火)より作家を入れ替えての後期展示が始まります。

「ポーラミュージアムアネックス展2015(後期) ザ・ニュー・ヴィジョン」
会期:4月7日(火)~4月26日(日)
出品作家:石塚まこ、内田亜里、越後正志、飯沼珠実

4月5日まで開催されています。

「ポーラ ミュージアム アネックス展2015(前期) 凝縮と拡充」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:3月13日(金)~4月5日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「名和晃平 FORCE」 SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSE
「名和晃平 FORCE」
3/7-4/18



SCAI THE BATHHOUSEで開催中の「名和晃平 FORCE」を見てきました。

物体の表面をガラスビーズで覆った「PixCell」などでお馴染みの現代アーティスト、名和晃平。都内でのいわゆる新作の展示は、昨年秋の「THE MIRROR」以来のことかもしれません。

タイトルは「FORCE」。テーマは「液体と重力の関係性」(ギャラリーサイトより)です。会場は二部構成でした。手前のカウンターのあるスペースには平面の「Direction」シリーズなどが並び、奥の展示室には立体、インスタレーションの「Force」が設置されています。

さてメインの「Force」、これが思いの外に魅惑的でした。

天井高のあるホワイトキューブを効果的に活かしています。まず中に入ると、床には長方形の薄い水盤、つまり黒い液体で満たされたプールがあることが分かります。そして正面を見やればシャワーの如く滴るオイルの雨。かなり速いスピードです。天井付近から下のプールへ向かって黒いオイルがひたすらに流れ落ちていました。

プールの上では当然ながらオイルがぴちゃぴちゃと音をたてて跳ねています。ただし粘度が高いゆえでしょう。跳ねるというよりも、のめり込むようでもあります。視点を変えれば、下からふつふつと湧き出ているようにも見えました。

それにしてもオイルの雨、一筋一筋が驚くほど細い。天井を見上げてみました。吹き出し口がほぼ直列で何個も出ています。ただしオイルが出ていないものがあるのもポイントです。ギャラリーの方に伺うと、日によって出る位置が微妙に異なるとか。とするとプールに出来る波紋も日々違っているのかもしれません。

滴り落ちるオイルによってプールには波紋が出来ています。何らかの文字のようにも見えました。またシャワーのオイルと同様、波紋自体も液化した彫刻のようです。そして落下するオイルはプールから溢れることも、飛び出すこともありません。あくまでもプールの中のみで跳ねています。オイルの量や落下速度を綿密に計算したに違いありません。

オイルのシャワーカーテン、液体が空間を横切っては、無数の言わば線を描きます。少し離れて正面から眺めると、後ろの白い壁を背景に、細い線が縦に連なる絵画のようにも見えました。そしてそれに気づいた時、ふと手前の展示室に戻り、改めて「Direction」と向き合ってみました。

こちらは上のDMにあるような黒いストライプを描く絵画です。そしてその姿がいかにも「FORCE」のシャワー、ようはオイルの流れる様子と重なって見えるわけです。結論からすれば「Direction」もキャンバスを垂直に立てかけ、上から顔料を垂らしたもの。ともに重力なくしては成り立ち得ない作品とも言えます。


KOHEI NAWA NEW WEB SITE OPEN
http://kohei-nawa.net

三次元の「FORCE」と二次元の「Direction」。テーマの「重力」を軸に両面で楽しめる展示でした。

「美術手帖2011年8月号/特集:名和晃平/美術出版社」

4月18日まで開催されています。

「名和晃平 FORCE」 SCAI THE BATHHOUSE
会期:3月7日(土) ~4月18日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:12:00~18:00
住所:台東区谷中6-1-23
交通:JR線・京成線日暮里駅南口より徒歩6分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩7分。
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「スサノヲの到来」 DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館
「人と自然のあいだの精神と芸術 スサノヲの到来ーいのち、いかり、いのり」
1/24-3/22



DIC川村記念美術館で開催中の「人と自然のあいだの精神と芸術 スサノヲの到来ーいのち、いかり、いのり」を見てきました。

日本の古代神話に登場する神、スサノヲ。天の神から高天原(タカマノハラ)を追い出され、ヤマタノオロチを退治し、草薙の剣をアマテラスに献上。後に三種の神器とされます。またクシナダヒメを娶り、出雲の地に宮殿を建てた。そこで日本初の和歌をうたったと言われています。

「大地を揺るがし草木を枯らす荒ぶる魂と、和歌の始祖としての繊細な美意識を兼ね備えたスサノヲ」(*)

ずばり、古来より日本人の精神に働きかけてきた「スサノヲ的な表象」(*)を現代美術にまで広げて紹介する展覧会です。(*印はともに図録より)


「青面金剛像」 1712(正徳2)年 紙本着色 橋本倫蔵

出品数は膨大です。全260点にも及びます。それゆえか通常、常設展示として用いられているスペースも本企画展のために使われていました。(出品リスト

序章:日本神話と縄文の神々
第1章:神話のなかのスサノヲ
第2章:スサノヲの変容
第3章:うたとスサノヲ
第4章:マレビトたちの祈りとうた
第5章:平田篤胤
第6章:スサノヲを生きた人々ー清らかないかり
第7章:スサノヲの予感

古代、土器にはじまり、まさに近年、最新の現代美術家の作品で終わる展覧会。スサノヲを見定めるアプローチは驚くほど多様です。私の力不足はさて置き、一つ一つの作品を本エントリで追っていくと率直なところキリがありません。


「深鉢突起破片」 縄文時代中期(BC3000~2000年) 京都造形芸術大学芸術館

とは言え、多角的なアプローチだからこそ、発見の多い内容でもあります。例えば冒頭の縄文土器、そこにもスサノヲの神の原型を見ます。パネルで紹介されている「蛇を戴く土偶」、良く見ると左目下に二本の線が刻まれていますが、これを「泣きいさちる神」であるスサノヲの流した涙と捉える解釈があるとか。また神話におけるスサノヲを民俗学的資料、ないしは絵画でも辿っていきます。出雲からやってきた「大社素盞嗚尊図」や「神須佐男之命」はともに木版です。スサノヲの姿が描かれています。


狩野時信「素戔嗚神」 江戸時代(17世紀) 絹本着色 出雲大社

さらに時代を超えて狩野時信や月岡芳年の描いたスサノヲも興味深いもの。芳年は「大日本名将鑑 素戔嗚尊」において、ちょうどクシナダヒメを救おうとするスサノヲを表しました。

スサノヲ観の変容も重要です。と言うのもスサノヲの役割を日本書紀ではツクヨミが果たす。彼の荒ぶる性格は牛頭大王にも変容しました。「牛頭天王半跏像」は平安期の作品です。中世よりスサノヲと同一神とされ、今も祀られています。口を見開き、憤怒の表情を見せる顔立ちが印象に残りました。


「飛白書金毘羅大権現神号」 江戸時代(18世紀半ば) 紙本墨書 橋本倫蔵

タカマノハラから追放されたスサノヲに、異界から来訪する「マレビト」を見たのは民俗学者の折口信夫です。「マレビト」とはいわゆる来訪神、各地をめぐっては時に災をもたらします。また巡礼者も一つのキーワードです。例えば木食知足、19世紀初頭に日本各地を巡礼しては、宗教活動を展開しました。各地で託宣文を残していますが、これが実に個性的です。まるで何物かの魂が取り憑いたかの如くの書体。呪術的とも言えるかもしれません。

その折口信夫とあわせ、田中正造、南方熊楠、平田篤胤の計4名が、「スサノヲ的な心情」(解説より)を生きた人物として取り上げられているのもポイントです。


南方熊楠「菌類彩色図譜 (F.2767)」 1921年11月6日 水彩、インク、紙 国立科学博物館

詳細に立ち入りませんが、彼らに通底する一つのキーワードとして「清らかないかり」があります。また植物学者の南方熊楠は、新種を見つける際、そのいくつかを幽霊が教えてくれたとも語っているそうです。折口信夫は怒りを発することが「神の本質」と捉えていました。

なおこの項、キャプションしかり、相当読ませます。スサノヲという括りでの展示、議論はあるやもしれませんが、こういう形で田中正造や南方熊楠が紹介されているとは思いませんでした。

ラストは「スサノヲの予感」、つまり現代美術における展開です。そしてこのセクションが全体の中でも相当の割合を占めています。

三鷹での回顧展の記憶が甦りました。牧島如鳩です。「龍ヶ澤大辯才天像」、暴風雨のために流失した社殿を再建した際に生じた奇蹟を描いた一枚です。如鳩一流の神仏、あるいはキリスト教が渾然一体と化したような独特の宗教観が滲み出ています。

藤山ハンの「黄泉の花嫁シリーズ」も強いインパクトを与える作品です。花嫁の姿はまるで死者の如くおどろおどろしい。冥界です。独学で絵を学んだ作家だそうです。

細密なテクスチャーに驚かされたのは黒須信雄です。線とも点とも付かぬ筆の痕跡が画面全体を覆います。その姿はまるで天を巡る雲のようでもあり、また何か魔物の放つオーラのようでもあります。平面から「気」が立ち上がりました。

色鉛筆を用いた岡田真宏の絵画も印象に残りました。麻紙にひたすら色鉛筆で線を引いては、深い色の階層を生み出す。幾重にも連なります。波のうねり、キャプションには「波動」ともありました。見ていると心が洗われるかのようです。


佐々木誠「夜久毛多都」 2013年 木彫、彩色 作家蔵

ほかにも瞑想的でありながら、造形には力強い佐々木誠の木彫や、四季の香りを取り込んでの栃木美保のインスタレーション、「まいか」なども興味を引くもの。現代美術のセレクト、率直なところかなり独特です。

いずれもこれらは「神的」なものと結びつき、縄文に通じる息吹を感じさせるものを取り上げたそうですが、スサノヲ観をさらに拡張して、いわゆるスピリチュアリティ的な展開をも見せています。何がスサノヲかということよりも、スサノヲの与える霊感とは何かを考えさせる契機となる。そうした展示と言えるかもしれません。

[スサノヲの到来 巡回予定]
足利市立美術館:2014年10月18日~12月23日 *終了
DIC川村記念美術館:2015年1月24日(土)~3月22日(日)
北海道立函館美術館:4月11日(土)~5月24日(日)
山寺芭蕉記念館(山形):6月4日(木)~7月21日(火)
渋谷区立松濤美術館:8月8日(土)~9月21日(月・祝)


若林奮「振動尺1-4」1979年 鉄、木、グアッシュ DIC川村記念美術館
©WAKABAYASHI STUDIO 2014

途中で一部、アメリカ現代美術のコレクションを挟んでの構成です。また若林奮の彫刻と縄文の石臼の邂逅、スサノヲからロスコルームへの流れなど、川村記念美術館だからこその展開も目を引きました。

巡回先である松濤の内省的な空間で見るスサノヲ展にも興味を引かれますが、今回の出品数からすると、松濤で同等の展示(少なくとも量の面において)が出来るかどうか分かりません。まずは佐倉まで足を運んで良かったと思いました。

なお今週末ならば同じく佐倉で話題の「大ニセモノ博覧会」(国立歴史民俗博物館)とのハシゴも可能です。

「大ニセモノ博覧会ー贋造と模倣の文化史」@国立歴史民俗博物館:3月10日(火)~5月6日(水・休)

一日一便限定ではありますが、川村から歴博を経由する無料の送迎バスもあります。スサノヲとニセモノをあわせ見るのも楽しいかもしれません。

[佐倉スサノヲ展+ニセモノ博バスツアー例]
「マイタウン・ダイレクトバス」(ICカード運賃1190円)
9:55 東京駅  → 11:02 DIC川村記念美術館
「DIC川村記念美術館送迎バス」(無料)
12:50 川村記念美術館 → 13:15 国立歴史民俗博物館
「マイタウン・ダイレクトバス」(ICカード運賃1190円)
15:00 国立歴史民俗博物館 → 16:41 東京駅 
*歴博の滞在時間が短いので、帰りは徒歩で京成佐倉駅(約15分)へ出て、京成で帰京するのも良さそうです。



間もなく会期末です。3月22日まで開催されています。おすすめします。

「人と自然のあいだの精神と芸術 スサノヲの到来ーいのち、いかり、いのり」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:1月24日(土)~3月22日(日)
休館:月曜日。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1300(1100)円、学生・65歳以上1100(900)円、小・中・高生600(500)円。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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「グエルチーノ展」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」
3/3~5/31



国立西洋美術館で開催中の「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」のプレスプレビューに参加してきました。

17世紀イタリア美術、バロック絵画を代表する画家の一人であるグエルチーノ(1591-1666)。若くして名声を轟かせ、画風を変化させながら、故郷チェントをはじめ、ローマやボローニャでも活動。死後はゲーテやスタンダールが賞賛しました。またボローニャ派の礎を築くなど、後の西洋絵画にも影響を及ぼしたとも言われています。

ただ19世紀半ばには一度、「否定され」(チラシより)てしまったそうです。それゆえか特に日本での知名度は決して高いとは言えません。


グエルチーノ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」 1650年頃 国立西洋美術館

実は私もグエルチーノの名を聞いてすぐに画家のイメージが浮かびませんでした。ただどうでしょうか、上の一枚、「ゴリアテの首を持つダヴィデ」は見覚えのある方も多いかもしれません。ずばり、今回の会場でもある国立西洋美術館のコレクション。常設展でよく見かけます。神に感謝を捧げるダヴィデ、その姿はどこか感傷的です。画家晩年の優れた作品の一つでもあります。

日本初の回顧展です。出品は全44点。チェント市立絵画館をはじめ、ボローニャ国立絵画館ほか、ボルゲーゼ美術館など、主にイタリア各地の美術館などから作品がやって来ました。

さて若くして才能を開花させたグエルチーノ、まず圧巻なのは、1618年前後、まだ20代の頃に描いた一連の宗教画、中でも「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」です。


グエルチーノ「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」1618年 油彩、カンヴァス チェント市立絵画館

高さ4メートル弱、幅2メートル超の大作、跪くペテロにキリストが金と銀の鍵を渡す。マタイ書の一節に基づく作品です。

二つの鍵は天国と地上の権力を示します。右の大きな椅子は教皇のためのもの、キリストが左手で指しています。つまりペテロがこれから座ろうとするための椅子です。


グエルチーノ展 「2.才能の開花」 会場風景

それにしてもこの大きさ、写真ではなかなか伝わらないかもしれません。まさしく畏怖の念すら覚えますが、実はこの作品のあるセクション、「トラパニの聖アルベルトにスカプラリオを与えるカルミネの聖母」や「幼児キリストを崇める聖母と悔悛の聖ペテロ、聖カルロ・ボッロメーオ、天使と寄進者」など、いずれも大きく、またダイナミックな作品が多い。それこそ祭壇を仰ぐかの如く、否応無しに下から見上げざるを得ません。思わず空間にのまれます。展覧会の一種のハイライトと化していました。


グエルチーノ「マルシュアスの皮をはぐアポロ」 1618年 フィレンツィエ、パラティーナ美術館

「マルシュアスの皮をはぐアポロ」はどうでしょうか。画面中央に立つのがアポロ、右手には鋭いナイフを持っています。手を木に縛り付けられ、背を向けて転がるのが半身半獣のマルシュアスです。笛と竪琴の対決に勝利したアポロが罰としてマルシュアスの皮をそぐ。左手で脚を持ち上げ、先ほどのナイフを使って皮をまさに引き裂いています。痛々しい光景、だからこそマルシュアスも口を少し開けてもがき苦しんでいるのでしょう。右からあたる強い光はアポロの背中を白く照らします。実にドラマテックでした。

展示は基本的に時系列です。グエルチーノの制作を時代で追うように構成されています。

そしてここで興味深いのは、年代によって作風に変化が見られることです。とするのも前期は、動的でかつ鮮やかな明暗を特徴としているのに対し、後期、晩年の作品はどこか静的でかつ、良く言えば優美でもある。いわゆる古典主義的な画風です。全体を通して構図は基本的にシンプルですが、後期はさらに単純化します。半ば様式化しているとも言えるかもしれません。


グエルチーノ「説教する洗礼者聖ヨハネ」 1650年 チェント市立絵画館

後期の作品については今も評価が分かれているそうです。たたその中でも、はじめに挙げた「ゴリアテの首を持つダヴィデ」や「説教する洗礼者聖ヨハネ」は力作と言っても良いのではないでしょうか。とりわけ後者です。故郷チェントの礼拝堂に飾られた一枚ですが、ヨハネが説教する様子は、威圧的というよりも、どこか静謐で美しくもあります。


右:グエルチーノ「洗礼者聖ヨハネ」 1644年 ボローニャ国立絵画館

また優美といえば「洗礼者聖ヨハネ」も忘れられません。「見よ、紙の子羊」という言葉を記して紙を手にして立つヨハネ。温和な表情が目を引きました。

約15年ほど時代を遡りましょう。かのゲーテが賞したのが、「聖母のもとに現れる復活したキリスト」です。


グエルチーノ「聖母のもとに現れる復活したキリスト」 1628-30年 チェント市立絵画館

非常に明快な構図、左がキリストで右が聖母です。聖母はどこか恍惚した様子でキリストを見上げ、逆にキリストは泰然、ないしはやや慈愛に満ちた表情で母を見つめています。風に靡く旗をはじめ、キリストや聖母の纏う衣の襞のボリューム感も素晴らしいもの。画面は静的ではありますが、復活したキリストに驚いて母が寄り添った一瞬を切り取ったようにも見えなくない。中期作までに見られる躍動感を秘めた作品でもあります。

チラシ表紙を飾る「聖母被昇天」は、そのさらに5年以上前の作品です。絵が飾られていたのはチェントの礼拝堂、高さを意識してのことでしょう。会場でもかなり高い位置に展示されていました。


グエルチーノ「聖母被昇天」 1622年 チェント、サンティッシモ・ロザリオ聖堂

ちなみにグエルチーノの作風が変化したのは、1年間半あまりローマに滞在したことが契機だそうです。まさに「聖母飛昇天」はローマで制作された作品。故郷チェントからローマ、そして再びチェント、さらに晩年のボローニャ。画家の滞在した地と画風との相互に影響が見られます。その辺を追うのも面白いかもしれません。

最後に一枚、私が惹かれた作品を挙げておきます。それがまだ若きグエルチーノの一枚、初期チェント時代の「聖母子と雀」です。


右:グエルチーノ「聖母子と雀」 1615-16年頃 ボローニャ国立絵画館

おそらくは室内空間の聖母子の姿、目を引くのは聖母の人差し指の先にのる雀。イエスもやや驚いた様で雀を見やっています。

この雀はキリストの受難を象徴するごしきひわと同じ意味をなしているそうです。そして写真ではまるで分かりませんが、雀、聖母の指の下から白い糸が垂れている。その糸のもう一方の端をイエスが右手で握っています。

聖母子の密着した姿、ただしここには神々しさよりも、より家庭的な母子の日常の姿が強調されているようにも見えます。そっと子を支える母の左手、さらにはあくまでも仄かで穏やかな微笑み。非常に情感溢れた作品だとは言えないでしょうか。


グエルチーノ展 「1.名声を求めて」 会場風景

点数は西美にしては少なめかもしれませんが、一点一点の作品が大きく、また力作揃いのため、全くもって不足感はありませんでした。さも空間を圧倒せんとばかりに立ち並ぶ宗教画群、これほど西美の展示室が神々しく感じられたこともなかったかもしれません。

なおチェントは2012年5月に地震に襲われ、今回の展示作を多く出品しているチェント市立絵画館のほか、グエルチーノ作品が多く飾られている教会なども大きな被害を受けました。

うち絵画館は現在も休館中です。よって本展の収益の一部が絵画館の再建に当てられます。言わばチェントの復興支援の展覧会でもあります。

音声ガイドの原稿をバロック美術が専門で神戸大学の宮下規久朗先生が担当されています。

「芸術新潮2015年3月号/新潮社」

また芸術新潮3月号の特集、「グエルチーノ 再び脚光を浴びる イタリア・バロック絵画の立役者」のテキストも同じく宮下先生です。グエルチーノの来歴を含め、作品をどう評価していくのか。専門的でかつ非常に分かりやすい内容です。あわせて参照されることをおすすめします。

実は内覧では時間の都合で見きれなかったため、再度もう一回、会期1週目の日曜日に観覧してきました。


グエルチーノ展 「3.芸術の都ローマとの出会い」 会場風景

まだ始まったばかりだからか、館内にはかなり余裕がありました。桜の時期に入ると多少混み合うかもしれませんが、早い段階であればスムーズに楽しそうです。

3月17日(火)より常設展でヨハネス・フェルメールに帰属すると言われる「聖プラクセディス」が公開されます。

「常設展新規展示作品のお知らせ」@国立西洋美術館

西洋美術館の告知は至ってもの静かですが、こちらもまた話題となるのではないでしょうか。

巡回はありません。5月31日までの開催です。おすすめします。

「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」@guercino2015)  国立西洋美術館
会期:3月3日(火)~5月31日(日)
休館:月曜日。但し3月30日、5月4日、5月18日は開館。
時間:9:30~17:30 (毎週金曜日は20時まで開館)
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学生1300(1100)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館

川崎市岡本太郎美術館
「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」
2/3-4/12



川崎市岡本太郎美術館で開催中の「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」を見てきました。

毎年恒例、いわゆる公募形式にて現代美術家の活動を紹介する「岡本太郎現代芸術賞展」。今年で18回目です。計672点の応募から27組の作家が入選しました。

「第18回岡本太郎現代芸術賞決定」@川崎市岡本太郎美術館

会場内、撮影が出来ました。

まず入口付近で目を引くのはともかく大きな車、江頭誠の「神宮寺宮型八棟造」です。


江頭誠「神宮寺宮型八棟造」 毛布、発泡スチロール *特別賞

長いボンネット、後部には大きな櫓のような構造物が載っています。眩いのは色彩です。車を覆うのはピンクなどの花柄です。何やらデコトラックでも思わせるキッチュなスタイル、その可愛げな絵柄に騙されて気がつきませんでしたが、モチーフは何と霊柩車だとか。しかも素材は全て毛布です。またベースとなる車体も木とスチロールから出来ています。


江頭誠「神宮寺宮型八棟造」 毛布、発泡スチロール *特別賞

あの黒く、また冷たい霊柩車が、これほどキャッチーな造形へと変化している。作家はありふれた毛布を用いることで「温かい寝台車となる。」(解説冊子より)と述べていますが、もはやネオンサインでも取り付けても違和感のないような車は、死のイメージをも打ち払っています。

ちょうど身体を張ったパフォーマンスを展開中でした。藤村祥馬の「どれいちゃん号」です。

コンセプトは小学生向けの「ランドセルを持たされたくない子」です。思い出しました。集団登校時にじゃんけんで負けた人が仲間のランドセルを持つ。それをどれいちゃんが代わりに運んでくれるわけです。


藤村祥馬「どれいちゃん号」 鉄、マネキン、ランドセル、その他 *特別賞

マネキンに積まれた赤や黒のランドセル。後ろで車輪を必死に漕いでは動かすのが作家の藤村です。表情は真剣そのもの。重たいものを持たされるというどれい、つまり奴隷のような罰ゲームが、奇妙なまでに面白いアクションになる。ついつい応援したくなってしまいます。

解説冊子に「人気者になれるかもしれませんよ!!」と記されていましたが、実際のところ会場でも人気がありました。ちょうど子どもたちが寄っては楽しそうに見入っています。作家自身が子どもたちを自転車に乗せてあげていたのも印象に残りました。

ふと耳を傾けると「カーン」、「キーン」という音が聞こえてきます。同じくパフォーマンスを行っているのが山崎広樹。作品は「木・石・竹と命を『カク』祭」です。


山崎広樹「木・石・竹と命を『カク』祭」 木、石、竹、障子紙、和紙、布

打ち鳴らすのは竹筒。また小石を叩き、板を割っては音を出します。タイトルに祭とありますが、確かに原初的な儀式でも行っているような気配さえ漂っています。上から垂れるのは旗でしょうか。周囲にも白い紙が幾重にも連なっています。良く見るとおそらくは墨による文字が無数に刻まれていました。そして中央にはさも火を焼べる場のような木が積まれています。

すると山崎は突如立ち上がり、音を鳴らしながら歩いて場内を一周。この呪術的な空間を展示室全体へと広げています。何かの伝導師のような風格さえある。思わず後ろを追いかけてしまいました。

平面作品でとりわけ胸に響いたのは村井祐希です。


村井祐希「Land scape TOMIOKA」 油彩、石、セメント、キャンバス *特別賞

「Land scape TOMIOKA」、横幅6メートル近くの大作です。油彩とありましたが、目を凝らすと石や何らかの破片のようなものが塗りこめられています。上部は青、そして手前には砂色ともいうべきグレー、緑や黄色も混じります。どこかの風景なのか、それともいわゆる抽象なのか。必ずしも判然としません。

ずばりタイトルが答えでした。TOMIOKAとは福島の第2原発のある富岡町。津波で大きな被害を受けた上、かの第1原発による原子力事故のため、今も一部の立ち入りが制限された地域でもあります。


村井祐希「Land scape TOMIOKA」 油彩、石、セメント、キャンバス *特別賞

作家は富岡を訪れ、「復興の手が、全くつけられていない」状況を見た後、現地の方とコンタクトをとり、さらには「この地こそ描くべき風景だと思った」そうです。(*カッコ内はともに解説冊子より)おそらくは被災した海岸の光景でしょう。ひょっとすると手前の丸く長いものは津波で打ち寄せられた残骸かもしれません。素材、筆致自体の迫力も含め、強く訴えかけてくるものがあるのではないでしょうか。


手前:楢木野淑子「そこに立つ、存在する4」 白土、下絵具、釉薬、ラスター
奥:佐野友紀「アウラの逆襲」 キャンバス地にプリント、アクリル絵具 *特別賞


迫力といえば佐野友紀の「アウラの逆襲」も忘れられません。4メートル四方のキャンバスが3点、空間を取り囲むかのように置かれています。くわっと強く見開いた瞳は何を語るのでしょうか。まさしく魔物です。ただそれらを象るのは木や草、さらにはまさに得体のしれないアウラのようでもあります。牙を剥いた獣。視線をあわすと噛み砕かれてしまうかのようです。絵の前に立った時に緊張感さえ生じる。息をのみました。

どこかで見覚えのある人物が描かれています。久松知子の「レペゼン 日本の美術」です。


久松知子「レペゼン 日本の美術」 キャンバス、パネル、岩絵具、アクリル絵具、その他 *岡本敏子賞

二点のパネル、一方はアトリエです。中央にはかの平山郁夫。天心の姿も見えます。正面奥に掲げられるのは東山魁夷の超有名作の「道」。左は丸木位里の「原爆の図」の「火」の部分でしょうか。平八郎の「雨」なども飾られています。


久松知子「レペゼン 日本の美術」 キャンバス、パネル、岩絵具、アクリル絵具、その他 *岡本敏子賞

もう一方のパネルに描かれたのは画家や美術史家、それに現代の美術家たち。勢揃いしては笑みを浮かべています。ここにも平山郁夫や天心らがいますが、前には大きな穴があり、高橋由一の「鮭」がおそらく捨てられようとしています。また地面には美術手帖も転がっていました。そして村上隆や会田誠、赤瀬川原平に高階秀爾に辻惟雄らの姿も見えます。結論から言うと、この2点の作品は何とクールベの「画家のアトリエ」と「オルナンの埋葬」を参照したそうです。日本美術の制度、また歴史に対しての様々な問いを投げかけています。


石山哲央「時空遊戯」 陶、プロジェクター、新聞紙

インスタレーションに絵画や立体、ほか映像など、一つずつ紹介するとキリがないほどに多様で見応えのある作品の多い内容です。率直なところ昨年の方が強く印象に残りましたが、それでも公募形式の現代美術展では特に面白い展覧会と言ってもおかしくありません。まずは楽しめました。

出口には昨年から始まった「お気に入りの作品を選ぼう」の投票コーナーがありました。


「お気に入りの作品を選ぼう」投票コーナー

オーディエンス賞の設定はありませんが、一人一票、ボードに赤いシールを貼っては、お気に入りの作品を選ぶというイベントです。

投票期間は3月22日までです。私が出向いた先週末の時点では、霊柩車の江頭誠とどれいちゃんの藤村祥馬がデットヒート。トップ争いの接戦を繰り広げていました。


Yotta「金時 ライブビューイング・アーカイブス」 ミクストメディア *岡本太郎賞

なおタイミングの悪いことに、この日は岡本太郎賞を受賞したYottaの焼芋販売パフォーマンスが、作家の体調不良により中止されていました。何とも残念ではありますが、まずは体調の回復をお祈りします。


「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」会場風景

ちなみに各種パフォーマンスは基本的に週末に行われます。ギャラリートークを含め、土日は作家の声や表現へ直に触れられるチャンスです。週末の観覧をおすすめします。

4月12日まで開催されています。

「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館
会期:2月3日(火)~4月12日(日)
休館:月曜日。2月12日(木)。
時間:9:30~17:00
料金:一般600(480)円、大・高生・65歳以上400(320)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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東京駅周辺美術館特別企画 「学生無料ウィーク」が開催されます

東京駅を起点に東西南北、半径1キロ圏内に位置する5つの美術館こと、ブリヂストン美術館、出光美術館、三井記念美術館、三菱一号館美術館、東京ステーションギャラリー。



5館共同での初の特別企画です。「学生無料ウィーク」が開催されます。

[東京駅周辺美術館特別企画  学生無料ウィーク]
期間:2015年3月17日(火)~3月31日(火) 各館開館日
 *休館日、展示替え休館期間は除きます。
対象:学生
 *各館で学生割引の対象としている方。美術館によって「学生」の定義は異なります。
 *詳しくはそれぞれの館にお問い合わせ下さい。

期間は3月17日(火)~3月31日(火)の間の2週間。対象は大学生までの学生です。「学生無料ウィーク」期間中は、5館全ての展示を何時でも何度でも無料で観覧出来ます。

東京駅周辺美術館特別企画 「学生無料ウィーク」@ミュージアムカフェ

事前申込や登録なども一切不要。受付で学生証を提示するだけです。なお各館により無料対象となる学生の定義が異なります。詳しくはそれぞれの館までお問い合わせください。

イベント開催中、学生が無料で入館出来る展示は以下の通りです。

[参加館および期間中の展覧会] *印は学生の通常入館料。
ブリヂストン美術館:「ベスト・オブ・ザ・ベスト」(1/31~5/17)  *500円
出光美術館:「没後50年 小杉放菴」(2/21~3/29)  *700円
三井記念美術館:「特別展 デミタス コスモス」(2/7~4/5) *800円
三菱一号館美術館:「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(2/7~5/24) *1000円
東京ステーションギャラリー:「ピカソと20世紀美術」(3/21~5/17) *800円

5館の学生の通常入館料を全てあわせると3800円。これが全て無料です。何ともお得ではないでしょうか。



「ベスト・オブ・ザ・ベスト」
ブリヂストン美術館(中央区京橋1-10-1
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/
会期:1月31日(土)~5月17日(日)

しかも有り難いのは何も各回1度のみ無料ではないということです。例えばブリヂストン美術館の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」、同館のコレクションが160点も展示されていますが、いずれも名品揃いでじっくり向き合いたいもの。それを例えば見る作品やテーマを絞るなりして何度行っても良いのです。言ってしまえば毎日通っても全て無料です。



「没後50年 小杉放菴」
出光美術館(千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/
会期:2月21日(土)~3月29日(日)

またいくら美術館同士の距離が近いとはいえ、各々の展示のボリュームを考えると、1日で全てを見て廻るのは難しいのも事実です。だからこそ期間は2週間。学生の方は春休み中ではないでしょうか。連日、東京駅へ通っては美術館に入り浸るという楽しみ方も出来ます。



「デミタス コスモス」
三井記念美術館(中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
http://www.mitsui-museum.jp/
会期:2月7日(土)~4月5日(日)

古美術から西洋絵画、そして現代美術まで。絵画に工芸とジャンルも多様。関心のある展示だけを見るのも良し、またあえて貪欲に全て見るのも良し。実に自由度の高い、使い勝手の良いイベントです。



「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」
三菱一号館美術館(千代田区丸の内2-6-2
http://mimt.jp/
会期:2月7日(土)~5月24日(日)

率直なところ素晴らしい企画だと思います。遠方の方はなかなか難しかもしれませんが、それでも学生の皆さん、この春休みは「学生無料ウィーク」で東京駅界隈の美術館へ繰り出してはいかがでしょうか。

「ピカソと20世紀美術」
東京ステーションギャラリー(千代田区丸の内1-9-1
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
会期:3月21日(土)~5月17日(日)

東京駅周辺美術館特別企画 「学生無料ウィーク」は3月17日(火)から開催されます。*3月31日(火)まで。
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「単位展」 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
「単位展ーあれくらい それくらい どれくらい?」
2/20-5/31



21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「単位展ーあれくらい それくらい どれくらい?」を見てきました。

突然ですが、私自身、日頃最も気にしている単位は、体重、すなわち重さを示すキログラムかもしれません。

身近なものやこと、あれこれを量ったり、また比べたり、さらには見定めるために用いられる単位。時間を区切る1時間も単位であり、そもそもお金も単位なくて成り立たないもの。振り返れば日々の生活はありとあらゆる単位に囲まれています。

その単位を分かりやすく、特にデザインの観点から紹介している展覧会です。サブタイトルに「あれくらい それくらい どれくらい?」とあるように、様々なモノを単位で区切っては指し示します。時にインタラクティブな仕掛けを用いて見せていました。


「ことばのおもみ」 大野友資+岡本健

例えば「ことばのおもみ」です。ひらがなの濁点を1グラムと仮定し、各面積比から重さを測ります。つまり「あ」から「ん」まで、全てのかなを重さで比べられるのです。


「ことばのおもみ」 大野友資+岡本健

会場では天秤に「いぬ」と「ねこ」、それに「しごと」と「かてい」などがかかっています。残念ながら天秤を自由に動かすことは叶いませんが、それを模したデジタル端末を試すことが出来ました。


「ことばのおもみ」 大野友資+岡本健

名前を比べている方が多いようでした。ひらがな一文字を重さに例える発想、興味を引くのではないでしょうか。ちなみに一番重いかなは「ぬ」の17グラム。一番軽い「へ」と比べると倍以上あります。


「1から100のものさし」 構成:寺山紀彦 協力:多摩美術大学環境デザイン学科

長さの比較、「1から100のものさし」も壮観です。壁一面にずらりと並ぶのはものさし。しかしそれらは実際のものさしではなく、乾電池やだるま、ペットボトルにフライパン、さらにはちりとりからカラーコーンなどです。ようは1センチから100センチまで、様々なモノをものさしになぞらえて展示しています。


「1から100のものさし」 構成:寺山紀彦 協力:多摩美術大学環境デザイン学科

一番小さな1センチは消しゴム、そして最大の1メートルはゴルフクラブでした。それにしても1センチ刻みで並べられたモノ、仕掛けはシンプルですが、よくぞこれほど揃えたものだと感心します。

長さを意識してモノを見ることの面白さ。いかに身近に単位が潜んでいるのかを改めて知ることが出来ました。


「お酒スケール」 構成:寺山紀彦 協力:有限会社大橋量器、カネ幸陶器株式会社、日樽、宮坂醸造株式会社

酒好きには「お酒スケール」も見逃せません。こちらもシンプル、ようはお酒の容器の量の比較です。大きな樽から一升瓶、そしておちょこまでが並びます。所狭しと積み上げられたおちょこ、一体いくつあるのかと思いきや、何と1600個でした。樽酒は最終的にこのようにして人々の胃袋の中におさまっていくわけです。


「無印良品の単位」 佐野文彦+無印良品

無印良品のユニットシェルフや特殊なはかりなどは、デザインの観点からの展示と言えるかもしれません。


「はかりの工夫」 構成:菅俊一

シェルフにすっぽりとおさまる無印の製品、そもそもシェルフの外寸が「日本の木造建築の基準である3尺/6尺」(キャプションより)になっているそうです。また「はかりの工夫」も面白い。見たことのないようなはかりがあります。中でも人数分のパスタを測れるパスタメジャー、一家に一台あれば便利かもしれません。


「A判とB判」 構成:岡本健 協力:株式会社竹尾

ほかには紙の「A判とB判」の比較なども興味深いもの。必ずしも内容は専門的になり過ぎません。その意味ではキャッチーな展示です。私のような文系の人間でも気軽に楽しめました。


「ボールペンと距離」 作品:椛田ちひろ 協力:菅俊一

お目当てのアーティスト、椛田ちひろさんのボールペンを使ったオブジェもいつものながらの労作でした。写真ではまるで質感も分かりません。是非会場で味わって下さい。


「単位展」会場風景

土曜日の夕方過ぎに出かけましたが、想像以上に賑わっていました。会期後半にかけてはさらに混雑してくるのではないでしょうか。


「単位展」会場風景

4月25日(土)は六本木アートナイトのため、深夜24時まで延長開館するそうです。

「単位171の新知識 読んでわかる単位のしくみ/ブルーバックス/講談社」

5月31日まで開催されています。

「単位展ーあれくらい それくらい どれくらい?」 21_21 DESIGN SIGHT@2121DESIGNSIGHT
会期:2月20日(金)~5月31日(日)
休館:火曜日。但し5/5は開館。
時間:11:00~20:00(入場は19:30まで)
 *4月25日(土)は六本木アートナイトのため、24時まで開館延長。
料金:一般1000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料。
 *15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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