「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 
8/31-12/24



DIC川村記念美術館で開催中の「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を見て来ました。

1969年に生まれ、近年では主にアメリカで注目を集めるペインター、五木田智央。何でも美術館では初めての個展だそうです。出品は本年の最新作11点を含む90点。アクリルの平面から未発表の素描シリーズまで、五木田の多様な制作を見ることが出来ます。

会場内、撮影が可能でした。

さてはじめの展示室、右から奥へ順に並ぶのが本年に描かれた新作、全11点です。うち10点は僅か一ヶ月足らずで描かれたものです。


右:「私のマネキン人形」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
左:「新しい義足」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス


正方形のフォーマットに即興的な筆致でモチーフが象られる。どうでしょうか。かつての作品よりもどこか揺らぎがあり、また動的でもある。いわゆる抽象と言えるのかもしれませんが、何らかの情景が浮かび上がってくるかのようです。その何とも言い難い幻影、もしくは立ち上がる現象を捉えたようなモチーフも魅惑的と言えるかもしれません。


「串焼き同窓会」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス

タイトルに驚きました。上の一枚は「串焼き同窓会」です。言われてみれば中央に連なる球体が串焼きのようにも見えます。しかしながらタイトルを伏せればやはり抽象的、何ら具体的なものを表していないようにも映ります。その狭間は意図的なのか曖昧です。ちなみにタイトルは五木田自身がどこかふざけたいと思いながら名付けたそうです。にやりとさせられます。

それにしてもラフなストロークです。作家の中では細かに描き込みたい場合とそうでない時があるそうですが、今はこうしたラフな筆致で描く方が楽しいと感じているとか。言葉が相応しいか分かりませんが、アクロバチックでさえあります。


左:「週末は暗雲低迷」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァ

「週末は暗雲低迷」はどうでしょうか。またまた謎めいたタイトル、脚を露にした女性がソファに腰掛けて寛ぐ姿が描かれているようにも見えます。そう言えば全体として女性のモチーフが多いのも特徴です。さも映画のワンシーンのような臨場感。必ずしも明らかではありませんが、画中に何らかの物語が進行しているかのようでもあります。


中央:「ハーフ・ネルソン・コートシッフ」 2012年 アクリルグワッシュ、カンヴァス カウズ氏(ニューヨーク)蔵

奥へ進むと2008~2013年頃の近作が並んでいました。いずれも大作です。大きいものでは縦2メートル50センチを超えるものもある。川村記念の広い展示室にも負けない存在感、いずれも本年にNYのギャラリーで行われた個展で好評を博した作品だそうです。


「スラッシュ・アンド・スラスト」 2008年 アクリル、カンヴァス カウズ氏 (ニューヨーク) 蔵

モノクロームによる人物表現、例えればキュビズムを連想させはしないでしょうか。ただもちろん単純にそれだけでは語れません。まるで内蔵が飛び出したような顔面に幾何学的なギザギザ模様が交錯する。モチーフは謎めき、時に不穏ですらありますが、不思議と形自体は危ういまでのバランス感覚をもって静止、言わば見事なまでにキマっています。

硬軟使いわける五木田の筆致、時に塗り残しを活かしてまで質感を追求しています。水に溶けるように形がゆがみ、蒸気が噴き出すようにして崩れていく。白と黒のアクリルというシンプルな素材ながらも作品は雄弁です。色々な表情を見せてくれます。


「カイロ #1-#20」(一部) 2013年 アクリル、紙

そのほかステンシルの作品や2003年の未発表の素描シリーズ、それに2013年のペーパーワークの「CAIRO」なども出展。これが思いがけないほどに美しい。ニュアンスに富んだ色彩です。アクリル画とは異なった魅力をたたえていました。


「無題」 2008-2014年 グワッシュ、鉛筆、紙 サン・ギョーム蔵

私が五木田智央の作品を初めて見知ったのは、ここ川村、現代美術作家7名を紹介するグループ展、「抽象と形態」(2012年)のことでした。


右:「150 ビューティフル・ガールズ・イン・アクション・トゥナイト」 2000年 エナメル、テントシート 協力:タカ・イシイギャラリー

率直なところその時は強く印象に残るまでに至りませんでしたが、今回はやや違います。特に最新作を中心とする多彩な画風に心惹かれました。


「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」会場風景

お出かけには千葉市美術館と行き来する無料直行送迎バスも便利かもしれません。土日限定、両館を無料で送迎しています。

千葉市美術館「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」展との連携(DIC川村記念美術館)

「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」

12月24日まで開催されています。

「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:8月31日(日)~12月24日(水)
休館:月曜日。但し9/15、10/13、11/3、11/24は開館。9/16、10/14、11/4、11/25は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

12月の展覧会・ギャラリーetc

いよいよ年の瀬が近づいて来ました。12月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「小林孝亘展 私たちを夢見る夢」 横須賀美術館(~12/23)
・「アール・デコ建築をみる/内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館(~12/25)
・「リー・ミンウェイとその関係展」 森美術館(~2015/1/4)
・「ミシェル・ゴンドリーの世界一周展/東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめて」 東京都現代美術館(~2015/1/4)
・「開館35周年記念 原美術館コレクション展」 原美術館(~2015/1/12)
・「八木良太展」 神奈川県民ホールギャラリー(12/21~2015/1/17)
・「雪と月と花 『雪松図』と四季の草花」 三井記念美術館(12/11~2015/1/24)
・「未来を担う美術家たち 17th DOMANI・明日展」 国立新美術館(12/13~2015/1/25)
・「没後15年記念 東山魁夷と日本の四季」 山種美術館(~2015/2/1)
・「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 水戸芸術館(~2015/2/1)
・「難波田史男の世界 イメージの冒険」 世田谷美術館(12/6~2015/2/8)
・「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」 日本科学未来館(~2015/3/1)
・「高松次郎ミステリーズ」 東京国立近代美術館(12/2~2015/3/1)
・「ホイッスラー展」 横浜美術館(12/6~2015/3/1)

ギャラリー

・「パランプセストー重ね書きされた記憶 vol.5 志村信裕」 ギャラリーαM(~12/13)
・「浅井裕介」 ARATANIURANO(~12/13)
・「秋山幸 密林の絨毯」 実家JIKKA(~12/14)
・「人間になるための内転、外転」 児玉画廊東京(~12/20)
・「4人の絵画」 ツァイト・フォト・サロン(~12/20)
・「荒木経惟 往生写集」 資生堂ギャラリー(~12/25)
・「りこうなハンス」 TALION GALLERY(~12/28)
・「森淳一 tetany」 ミヅマアートギャラリー(12/3~2015/1/10)

毎年のことながら年末年始の端境期、12月に始まる展覧会はあまり多くありません。

その中でまず挙げたいのは八木良太の個展。場所は神奈川県民ホールギャラリーです。



「八木良太展」@神奈川県民ホールギャラリー(12/21~2015/1/17)

同ギャラリーといえばホール裏階段の大展示室など、大小様々に個性的なスペースがあるのが特徴です。その空間を例えば2012年のさわひらきの個展で効果的に活かしていました。

今回も「八木が巧みに仕掛け、作り上げた空間」(ギャラリーサイトより)になるとのことです。会期は年末、クリスマス前から年を跨いで1月17日まで。そう長くありません。出来れば年内に見に行きたいと思います。

没後40年です。画家、難波田史男の回顧展が世田谷美術館で始まります。



「難波田史男の世界 イメージの冒険」@世田谷美術館(12/6~2015/2/8)

難波田の大きな展覧会はつい2年前、初台のオペラシティでもありました。それから数えるとあまり間隔が空いてるとは言えませんが、そこは私も大好きな難波田の回顧展です。やはり見ないわけにはいきません。

そもそも世田谷美術館は難波田作品を800点も所蔵しています。いわゆる常設でも目にする機会は少なくありません。

今回はうち300点余が出品されるそうです。展示はもちろんのこと、カタログを含め期待したいと思います。

東京国立近代美術館に「MOMATサポーターズ」の制度が始まりました。



東京国立近代美術館友の会 MOMAT サポーターズ【12/2(火)より受付開始】

東京国立近代美術館はもちろん、国立西洋美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館の各所蔵作品展が何回でも無料で観覧出来る上、東近美の企画展が各展1回ずつフリーで見られるパスポートです。

また東近美のミュージアムショップでの5%割引の特典もあります。さらに所蔵作品展の無料観覧券が5枚も付いている。これで年間5000円です。しかも12月27日(土)までは割引入会期間として4000円で購入出来ます。*受付開始は12月2日(火)より。

同様のパスポートといえば東博の年パス(4100円)もありますが、それにも勝るとも劣らないほどにお得な内容。これは「買い」ではないでしょうか。

それでは12月も宜しくお願いします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「祈りの道へー四国遍路と土佐のほとけ」 多摩美術大学美術館

多摩美術大学美術館
「四国霊場開創1200年記念 祈りの道へー四国遍路と土佐のほとけ」
2014/11/22-2015/1/18



多摩美術大学美術館で開催中の「四国霊場開創1200年記念 祈りの道へー四国遍路と土佐のほとけ」を見て来ました。

空海ゆかりの寺院こと「四国八十八箇所」。言うまでもなくお遍路で良く知られた巡礼地です。毎年多くの人々の信仰を集めています。

うち土佐、つまり高知県を中心としたお遍路の資料を紹介する展覧会です。またあわせて同地に関する仏像、仏画といった仏教美術ほか、土器や瓦などの考古遺物も展示。高知に培われた仏教文化を多角的に見定めています。


「箱車」 大正12年 徳島・平等寺

さてスペースは全部で4つ。うち1階入口左手がお遍路の展示です。民俗写真家、田辺寿男の撮影した土佐の写真が並びます。中央に大きなカゴのような乗り物がありました。「箱車」です。大正期に作られた介助用の車いす、脚の不自由な人が回復を祈念すべく巡礼に用いたとか。人力車のように引いて使ったそうです。

頭上を見上げると俵がぶら下がっていました。これは「納札俵」と呼ばれるもの。地域の人々が遍路行者を接待する際に受けた納札をおさめる入れ物です。小さいもので数十年、大きいものでは100年分の札をおさめることが出来ます。

ちなみに現在は紙の納札、かつては木製だったそうです。そして巡礼者が木の札を寺社に打ちつけていた。ゆえに札所と呼ばれるようになったそうです。

天明から昭和期に至る納札、また行者の着る白衣や道具もある。遍路の道標の拓本なども目を引きました。


「六地蔵(笑い地蔵)」 鎌倉時代 定福寺

2階が仏教美術です。中でも一推しなのが定福寺の「木造地蔵菩薩立像」。全6体、つまり六地蔵です。しかも類例の少ない木造、そしてこれが皆にこにこ笑みをたたえているのです。

何でも地元では笑い地蔵として親しまれているとか。鎌倉期の作ですが、状態も良い。まるで「こんにちわ」と話しかけてくるかのように親し気でもあります。思わずこちらも笑ってしまいました。

笹野大日堂の「木造大日如来坐像」も興味深い仏像です。運慶周辺の作、かの真如苑の像とも一部構造に共通する面があるとも言われています。痩せていて腕も細い。引き締まっています。


「天部形立像」 平安時代 馬路村・金林寺

破損仏が目立ちました。例えば歓喜寺の「如来形坐像」です。左肩がざっくりと抉られていて痛々しい。甲冑を付けていたという豊来寺の「天部形立像」もあまり原型を留めていません。平安期の作ですが、虫食いの跡でしょうか。身体中に無数の小さな穴があいています。

高知県内の古墳から出土した瓦や須恵器などの考古品も重要です。うち特に面白かったのが一宮神社の「七星剣」です。真鍮で北斗七星の紋様を象った剣、同様の作品は現在、法隆寺や四天王寺など数点しか確認されていません。ただし制作年代に関しては諸説あり、古墳から飛鳥時代の作とする説と、それを否定する(さらに後世のもの)説に分かれているそうです。


「文殊菩薩像」 鎌倉時代 金剛頂寺

ほか仏画も10点弱ほど出ています。関東ではなかなか馴染みの薄い四国の仏教美術、派手さはありませんが、民俗・考古学的な視点を含め、かなり丹念に紹介している印象を受けました。


「十一面観音立像」 平安時代 椎名観音堂

カタログが立派でした。論文も豊富、図版も美しい。2000円で販売されています。

2015年1月18日まで開催されています。

「四国霊場開創1200年記念 祈りの道へー四国遍路と土佐のほとけ」 多摩美術大学美術館
会期:2014年11月22日(土)~2015年1月18日(日)
休館:火曜日。但し12/23(火・祝)は開館、12/24(水)は休館。年末年始(12/28~1/6)。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般300(200)円、大学・高校生200(100)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:東京都多摩市落合1-33-1
交通:京王相模原線・小田急多摩線・多摩都市モノレール線多摩センター駅から徒歩7分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」 新宿中村屋サロン美術館

新宿中村屋サロン美術館
「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」
2014/10/29~2015/2/15



新宿中村屋サロン美術館で開催中の「中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」を見て来ました。

1909年より新宿の地にて本店を構える老舗食品メーカーの中村屋。開店当時、明治末から大正にかけ、同店にあったアトリエには彫刻家の荻原守衛や画家の中村彝らが集っていた。それが後に「中村屋サロン」と呼ばれたそうです。

ずばり本展では「中村屋サロン」の動向を紹介。中村屋に関する芸術家たちの軌跡を辿っています。

まず場所のおさらいです。新宿の中村屋。言うまでもなく東口、メインストリートの新宿通り沿い。JR駅から2分とかかりません。新宿高野の隣、真新しいビルが新宿中村屋ビルです。つい今秋、10月末に全面新装オープンしました。


「中村屋サロン美術館」入口

ビルは地下2階、地上8階。全10フロアです。いわゆる複合商業施設、一階はコーチの新宿です。ほかはカフェやサロンなどがテナントとして入居しています。お馴染みのカレーなどをいただける中村屋直営のレストランもありました。

サロン美術館はビルの3階です。エレベーターを降りると目の前が近畿日本ツーリスト。「おや美術館はどこに?」と思ってしまいますが、左を向けば美術館の表記があります。言ってしまえばビル内の僅かな一角、計2室ほどの小さなスペースです。


荻原守衛「坑夫」 1954年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋

さて展示です。始まりは荻原守衛でした。1899年に上京、その後フランスへ渡り、ロダンに衝撃を受け、彫刻家へと転向する。中村屋との繋がりは上京以前のことです。創業者の相馬愛蔵・黒光がまだ安曇野にいた頃に遡ります。

この時、荻原は黒光の所有していた長尾杢太郎の「亀戸風景」を見て芸術家の道を志した。パリから帰国した後も相馬夫妻のそばで制作を続けます。そして言うまでもなく愛蔵・黒光夫妻こそが最大のキーパーソン。二人なくして中村屋サロンは成り立ち得ません。


荻原守衛「女」 1978年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋

繰り返しになりますが、中村屋サロンは夫妻を囲んだ芸術家たちの集まりを指す言葉。店の裏にアトリエをつくっては制作の場に提供していたそうです。そして荻原の絶作、「女」もアトリエで制作されました。後ろ手で跪く女、残された型から鋳造されたブロンズは、第4回文展で文部省の買上を受けます。会場には近年鋳造された作品が展示されていました。(重文指定の石膏原型は東博の所蔵です。)


高村光太郎「自画像」 1913年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋

高村光太郎が4点残した自画像のうちの1点が出ています。そして目を引くのが彫刻の「手」です。彼が中村屋へ出入りするようになったのは荻原の縁。あくまでもサロンの中核は荻原です。ただし萩原は30歳の若さで亡くなってしまいます。その後にサロンへ頻繁に出入りするようになったのは画家の中村彝でした。


中村彝「少女」 1914年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋

「少女」のモデルは相馬家の長女、俊子です。ソファでしょうか。腕を組み合わせては前屈みになって座る女、長い髪を垂らしている。引き締まった口元と大きな瞳が印象的な作品でもあります。

エロシェンコが出ていました。実は彼も彝が利用していた中村屋のアトリエに出入りしていた詩人。ただし作品は良く知られた東近美所蔵の彝の作ではなく、鶴田吾郎によるもの。実は鶴田が先にエロシェンコを見かけてモデルを頼み込んだ。その後、黒光の承諾を得て、友人の彝と一緒に描いた肖像画なのです。


中原悌二郎「若きカフカス人」 1919年 ブロンズ 碌山美術館

中原悌二郎の「若きカフカス人」に惹かれました。かの芥川をして「この若者はまだ生きている」と言わしめた彫像、モデルはアトリエに居候していたロシア人のニンツァです。後頭部は未完ながらも正面を向いた風貌は威圧感すらある。くっきりとした目鼻立ち、その威容は堂々たるエジプトのファラオのようです。迫力がありました。


會津八一「那可無楽也」 1949年 墨、紙 株式会社中村屋

そのほかかつて相馬夫妻の長男の教師でもあった書家で歌人の會津八一に関する資料もある。會津の揮毫した中村屋の看板なども出ていました。


新宿中村屋ビル1階(美術館へはエレベーターであがります)

新しく誕生した小さな小さな美術館。しかしながら店と場所の歴史を踏まえた企画です。出品は平面、彫刻をあわせ50点(一部展示替えあり)。今後は新進作家を紹介する企画なども行うそうです。新宿で立ち寄るスポットがまた一つ増えました。

料金は300円です。気軽に楽しめます。


新宿中村屋ビル全景

2015年2月15日まで開催されています。

「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」 新宿中村屋サロン美術館
会期:2014年10月29日(水)~2015年2月15日(日)
休館:毎週火曜日。(火曜が祝祭日の場合は開館、翌日旧館。)1月1日。
時間:10:00~19:00 *入場は18:40まで。
料金:一般300円。高校生以下無料。
住所:新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル3階
交通:東京メトロ丸ノ内線新宿駅A6出口直結。JR線新宿駅東口より徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「CITIZEN LIGHT is TIME ミラノサローネ2014凱旋展」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン
「CITIZEN LIGHT is TIME ミラノサローネ2014凱旋展」
11/14-28



スパイラルガーデンで開催中の「CITIZEN LIGHT is TIME ミラノサローネ2014凱旋展」を見て来ました。

日本を代表する時計、精密機器メーカーのシチズン。今年春にミラノで行われたデザインの祭典「ミラノサローネ」に出展し、計2部門の賞を受賞。現地では高い評価を受けたそうです。

その凱旋展です。ミラノで公開したインスタレーションの日本バージョンを展示しています。



さてかの特徴的なスパイラルの空間、今回ほど華やいで見えたこともなかったかもしれません。



百聞は一見にしかずです。ともかくは黄金色に煌めく作品、その名は「LIGHT is TIME」。吊るされているのは時計の基盤装置である「地板」です。全部で何と65000個。端的に美しい。照明の効果もあってかキラキラと瞬く。金の地板が空から降り注ぎます。まるで金のシャワー、そしてイルミネーションです。思わず空間にのまれてしまいました。



近くに寄ってみると確かに地板。直径数センチほどに過ぎません。(ちなみにミラノ展では地板を8万個使ったそうです。)



ちょうど中に渦巻くように吊るされているからか、金のカーテンが幾重にも透けているように見えます。また床材もポイントです。ツヤのある黒い床、これが光を反射させています。だからでしょうか。独特の浮遊感もある。宇宙空間に瞬く星を連想しました。プラネタリウムのようとも言えるかもしれません。



コアの部分には1924年製のシチズン第一号時計がかかる。もちろん本物です。また中央の床には時計のムーブメントのデザインも描かれていました。



なお展示は「LIGHT is TIME」のみに留まりません。いわゆる企業プロモーションということでしょう。そのほかにもシチズンの時計の変遷や最新モデルの展示、さらには時計の製造現場の映像を紹介するコーナーなどもあります。



シチズンの歴史や活動を体感的に知ることが出来ました。



土曜の夕方に出かけましたが大変に混んでいました。そして殆どの方がカメラを熱心にインスタレーションへ向けては撮影を楽しんでいるようでした。(私もその一人です。)



人気のゆえか当初の会期が4日間ほど延長されたようです。



入場は無料です。11月28日まで開催されています。

「CITIZEN LIGHT is TIME ミラノサローネ2014凱旋展」 スパイラルガーデン@SPIRAL_jp
会期:11月14日(金)~11月28日(金)
休館:無休
時間:11:00~20:00(最終日は23時まで)
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 1 )

「国宝青不動御開帳」(後編・将軍塚) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿

青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」
10/8-12/23



前編(青蓮院)に続きます。青蓮院門跡・将軍塚青龍殿で行われている「国宝青不動御開帳」を見て来ました。

「国宝青不動御開帳」(前編・青蓮院) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿(はろるど)

将軍塚行きのシャトルバスは青蓮院の入口前から発着しています。そして将軍塚の場所は門跡の裏手の東山山頂です。直線で結べば距離もありませんが、そこは意外と急な東山、一気に登ることは出来ません。ゆえにバスは蹴上方面に一度あがり、三条通を少し下ってから山道へと入る。ぐるっと廻る形でしょうか。バスに揺られること約15分、将軍塚に到着しました。


将軍塚大日堂。シャトルバス降り場の目の前です。

まずは将軍塚大日堂が構えます。一般的に知られた市の駐車場のさらに奥です。そして門をくぐれば青蓮院の境内、新たに完成した青龍殿が建っていました。


大日堂から青龍殿方向

ところで青龍殿をてっきり新築だと勘違いしていた私にとって、建物を見た時に少々驚いてしまいました。というのも古い。何故なら新築ではなく移築だったのです。では何を移築したのでしょうか。答えはかつて京都府警の武道場として使われていた平安道場。それを2012年に解体、護摩堂として東山の山頂に移したというわけなのです。


将軍塚青龍殿(旧平安道場)

ちなみに道場と言えどもここは京都。竣工は古く大正3年です。もちろん木造で総檜造り。大正天皇の御大典の記念に建てられました。面積は160坪。幅は奈良の大仏殿の横半分ほどです。高さが5階建てビルとほぼ同じ15メートル。高い。まるで大きな吹き抜けのように天井が彼方にある。中に入ると思わず上を見上げてしまいます。


青龍殿内部

道場は一時、老朽化のために取り壊されることになったものの、保存運動が勃発。その後、紆余曲折あり、青蓮院が移築を前提に譲渡を受けた。しかしそれからも必ずしもスムーズにはいきません。移築に際して青蓮院が京都府や市の認可を受けるのに通算5年11ヶ月も要したそうです。


青龍殿の天井を見上げる

また移設とはいえ、法的には新築の扱いになり、建物の高さが基準を超えてしまうなど、諸々の制約があったとか。(建築基準法では高さ13メートルを超える木造建築は新築出来ないそうです。ただし耐火など一定の要件を満たせば、その限りではありません。)それを一から解決しては実現にこぎ着けた。当然ながら移築自体はもちろん、補強等の費用も多大です。そのため多くの信徒や支援者による寄進も重要になりました。多大な苦労があったことが伺えます。


「国宝青不動明王と東伏見慈晃門主」*お寺より写真を拝借しました。

移築した平安道場の奥に内陣と青不動を安置する奥殿があります。こちらは新築です。奥殿に入ると目の前には堂々たる国宝の「青不動」、正式には「不動明王二童子像」が控えていました。ここは近くに寄れませんが、修復の結果なのか、遠目でも平安時代の作とは思えないほど鮮やかに見える。そして何と言っても力強い。火焔を背にしての不動明王のお姿。まさに畏怖の念を感じさせます。

その「青不動」を前にして行われた慈晃門主による護摩祈祷に参加しました。


国宝「不動明王二童子像(青不動明王)」 平安時代 青蓮院門跡

何よりも信仰の対象である「青不動」、実際に長らく秘仏でした。もちろんあわせて貴重な文化財、国宝でもある。それに向かって門主が護摩木で炎を焼べるわけです。防火に際しては間違いないように作られていることでしょう。ただそれでも端的に凄みがある。めらめらと揺らめく実際の炎と「青不動」に描かれた炎が重なりあいます。この体験、ほかではなかなか出来ません。正直なところかなり感動的でした。


青龍殿大舞台

護摩を受けた後は青龍殿の裏へ廻りました。見晴らしのよいスペースが広がります。大舞台です。何と面積は清水寺の舞台の5倍、1046平方メートルです。収容人数は2000名。ここから京都市内を一望出来ます。


大舞台より京都市内

北に目を向ければ「妙」に「法」、そして「船形」と「左大文字」も見える。右手には比叡山、眼下には鴨川が流れています。下鴨神社や御所の杜も望めました。


将軍塚枯山水庭園

大日堂の北側には枯山水庭園が広がっていました。新設です。もちろんこの時期は紅葉が美しいもの。一際目立つ大きなモミジは造園に際して移されたものです。周囲の地面を掘っては根を痛まないように養生し、クレーンで吊り上げ、現在の位置に移植しました。


枯山水庭園内の大紅葉

実のところこれまで将軍塚は夜景スポットという程度しか認識していませんでしたが、今回、訪ねて考えを改めました。ここまで変化したことはおそらく京都の方にもあまり知られていないのではないでしょうか。大護摩堂の青龍殿に「青不動」、そして庭園に大舞台。まさかこれほど見るべき場所だとは思いませんでした。


将軍塚庭園にて

「青不動」の前での護摩祈祷は御開帳中(~12/23)、連日行われるそうです。是非とも参加されることをおすすめします。(参加は基本的に無料です。拝観料に含まれます。)

シャトルバスは主に土日を中心に混み合うことがあるそうです。(実際、私が出向いた日は行きも帰りもほぼ満員でした。)なおバスの混雑情報については特設サイトに案内があります。参考になりそうです。

「国宝青不動明王御開帳」拝観のご案内とアクセス(青蓮院門跡)

秋の京都、紅葉のベストシーンです。各地に見どころも多いかもしれませんが、この御開帳もやはり外せないもの。そもそも創建以来、青蓮院で「青不動」が初めて公開されたのはただの一度、平成21年のことに過ぎません。(それまで寺外でも3度しか公開されなかったそうです。)そして今回が修復後の初公開。ようは僅か2回しかないわけです。



また時間の関係で見ることは叶いませんでしたが、御開帳中は連日、門跡と将軍塚の双方でライトアップ(夜間特別拝観)も行われています。先にも触れたように将軍塚は京都一の夜景スポットでもあります。こちらにあわせて出かけても良さそうです。


展望台より将軍塚青龍殿全景

青蓮院青龍殿落慶記念、「国宝青不動御開帳」は12月23日まで行われています。

「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
会期:10月8日(水)~12月23日(火・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:00~21:30 *受付終了は21時まで。
料金:一般1300円、ライトアップ1500円。
 *ライトアップは青龍殿が17時、青蓮院が18時より開始。
 *上記は青蓮院・青龍殿共通拝観券。(青龍殿、将軍塚の個別拝観券あり。)
 *シャトルバスは片道100円。(8:00~20:30まで30分間隔にて運行。共通拝観券を提示すると無料。)
住所:青蓮院門跡(京都市東山区粟田口三条坊町69-1)、将軍塚青龍殿(京都市山科区厨子奥花鳥町28
交通:青蓮院門跡(地下鉄東西線東山駅下車徒歩5分、京都市営バス5・46・100系統神宮道下車徒歩3分。)、将軍塚青龍殿(青蓮院よりシャトルバスで15分。地下鉄東西線蹴上駅よりタクシー5分。)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「国宝青不動御開帳」(前編・青蓮院) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿

青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」
10/8-12/23



青蓮院門跡・将軍塚青龍殿で行われている「国宝青不動御開帳」を見て来ました。

いわゆる天台宗の三門跡寺院の一つとして知られる青蓮院。門跡寺院となったのは平安末期の頃。第一世の門主は行玄です。以来、特に鎌倉時代にかけては隆盛を極め、かの親鸞も得度を受けたと言われています。

また江戸時代の天明の大火の際で内裏が失われた際、後桜町上皇が、ここ青蓮院を仮御所にされたとか。建物の大部分は明治期に一度焼失してしまったゆえ、古いものではありませんが、言うまでもなく由緒ある門跡であります。


青蓮院門跡前

場所は東山の神宮道沿い、ちょうど知恩院の北側、東西線の東山駅からもほど近い粟田口です。そして現在、同門跡飛地の将軍塚内にある青龍殿にて国宝「青不動」の御開帳が行われています。期間は限定、12月23日までです。

ちなみに「青不動」は文化庁による3年間の修復を経て以来の初めてのお出まし。さらに青龍殿も今秋、「青不動」の公開にあわせて新たに落慶しました。まさに満を持しての御開帳と言うわけです。


門跡前の楠。大変に立派です。天然記念物だそうです。

さて御開帳は青龍殿、場所は将軍塚です。同門跡の飛地とありますが、考えるまでもなく将軍塚は京都市内を一望出来る山の上。車がないと簡単には行き来は出来ません。


青蓮院門跡入口

ゆえに今回は青蓮院から将軍塚までを送迎するシャトルバスが出ています。というわけでまずは青蓮院から拝観することにしました。


青蓮院門跡内

着いたのは10時前、まだ時間が早いからか、そう多くの人はいませんでした。スムーズです。ふと見やると紅葉が色づいていました。


華頂殿から庭園方向

入口をあがって華頂殿へ進みます。ほか小御所、本堂、宸殿と続く。殿舎は渡り廊下で繋がっています。お庭は池泉回遊式。皇室とも所縁の深い門跡ということもあるのか、どこか優雅な雰囲気が漂う。思わず長居したくなるような造りでもあります。


華頂殿内部。襖絵。奉納は木村英輝氏です。

華頂殿は蓮の襖絵(60面)が特徴的な客殿です。上には三十六歌仙額絵が飾られていました。


華頂殿より庭園方向

障子越しにお庭が見えました。このお庭については後述しますが、相阿弥の作と伝えられるもの。殿舎から降りて散歩することも出来ます。


華頂殿より小御所を望む

小御所は後桜町上皇が仮御所として使われた建物です。ただしその建物は明治に焼失したため、後に江戸中期の建築を移しました。


青蓮院門跡内にて

それにしても写真でも映える庭園です。私の拙い写真ではうまく伝わらないかもしれませんが、ともかく目に飛び込んでくる景色がどこも美しい。鮮やかな紅葉もお庭をより引き立てます。


宸殿と前庭。杉苔に覆われていますが、かつては白砂だったそうです。

宸殿へ進みました。実は「青不動」、はじめにも触れたように国宝の原本は将軍塚で披露されていますが、ここ青蓮院でも忘れてはならない「青不動」があります。つまり模写です。しかも初公開。何でも原本の修復に際して、平安時代に描かれていたであろう姿を再現すべく、2年越しで復元したものだそうです。


復元模写「不動明王二童子像(青不動明王)」2014年 青蓮院門跡

復元模写に際しては原本修理の際に撮影された写真などが参照されています。また地の絹は国宝作の欠落を補うために使用されたものと同じものを用いています。原本と同じ糸の太さを西陣で織っているそうです。

そして何よりも模写とあって色や形が際立って見えます。例えば火焔の中の迦楼羅も見つけやすい。貧困や愚痴を喰う火の鳥です。全部で7羽います。また原本の科学調査では頭髪から銀も検出されました。よって当初の頭髪は金色だということも分かったそうです。


宸殿内部より前庭方向

宸殿内には重文の「濱松図」が襖絵としておさまっていました。金地に立ち並ぶ赤松の姿、必ずしも状態は良くありませんが、それでも見事な出来映えではないでしょうか。ちなみにこの宸殿こそ門跡寺院に特有の施設、青蓮院最大の建物でもあります。


孝明天皇所用「板輿」

そのほか孝明天皇所用の板輿なども展示され、この門跡が皇室と所縁の深いことを改めて示していました。


相阿弥の庭

お庭に降りてみました。まずは相阿弥作と伝えられる主庭、粟田山をそのまま借景に利用しています。


相阿弥の庭「龍心池」

広がるのは龍心池、半円の石橋が架かり、中央には平べったい石が横たわる。見る者の視線を山裾から低い水面へと誘います。なお石は沐浴する龍の背を示しているそうです。


霧島の庭

奥へと進みました。「霧島の庭」です。小堀遠州の作と伝わる庭、木々が視界を遮る。鬱蒼としていました。相阿弥の庭とは趣きが異なります。


門跡裏手の竹林

さらに背後には竹林もあり、進む度にがらりと景色が変わる。そう広い境内ではないかもしれませんが、お庭に建物と密度が濃い。そうした印象を受けました。


大玄関と紅葉

この後は入口前から発着するシャトルバスに乗り、国宝「青不動」の待つ、将軍塚の青龍殿へと向かいました。

「国宝青不動御開帳」(後編・将軍塚) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿(はろるど)

後編(将軍塚)へと続きます。

「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
会期:10月8日(水)~12月23日(火・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:00~21:30 *受付終了は21時まで。
料金:一般1300円、ライトアップ1500円。
 *ライトアップは青龍殿が17時、青蓮院が18時より開始。
 *上記は青蓮院・青龍殿共通拝観券。(青龍殿、将軍塚の個別拝観券あり。)
 *シャトルバスは片道100円。(8:00~20:30まで30分間隔にて運行。共通拝観券を提示すると無料。)
住所:青蓮院門跡(京都市東山区粟田口三条坊町69-1)、将軍塚青龍殿(京都市山科区厨子奥花鳥町28
交通:青蓮院門跡(地下鉄東西線東山駅下車徒歩5分、京都市営バス5・46・100系統神宮道下車徒歩3分。)、将軍塚青龍殿(青蓮院よりシャトルバスで15分。地下鉄東西線蹴上駅よりタクシー5分。)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「平成知新館」(オープン記念展 京へのいざない) 京都国立博物館・平成知新館

京都国立博物館・平成知新館
「平成知新館オープン記念展 京へのいざない」
9/13-11/16(会期終了)



「オープン記念展 京へのいざない」が開催されていた京都国立博物館の平成知新館を見て来ました。

今秋、約5年間の休館を経て全面新築オープンした平常展示館こと平成知新館。設計はMoMAや法隆寺宝物館でもお馴染みの谷口吉生です。

そのお披露目として行われたのが「京へのいざない」展です。京の都をテーマに主に平安から桃山時代までの文化財を紹介。国宝50点余に重文110点余。絵画に書跡に彫刻から考古まで、総計400点もの作品が一堂に会しました。(途中、展示替えがありました。)



私は会期末日の観覧となってしまいました。建物の印象を簡単にまとめたいと思います。(展示室以外の撮影が可能でした。)



まずは外観です。京町家をイメージしたとも言われる建物、ともかく横に長い。直線を活かし、とてもシンプルに見えます。庇が大きく飛び出していました。



前に広がるのが水盤です。実は行く前に「法隆寺宝物館に似ている。」との話を耳にしていましたが、確かに建物と水盤との関係は法隆寺館を思わせます。そういえば入口の造りはそっくりです。ここだけ切り取って写せば、法隆寺館と見間違えてしまうかもしれません。



旧館との配置が特徴的です。直角に向き合うように建っています。また入口は三十三間堂の南大門と博物館の南門を直線で結んだ先に位置しています。



ちなみに知新館自体がかつての方広寺の境内南側に当たるそうです。そして知新館の水盤は寺の回廊の部分と重なります。その遺構を示す金属の円環が水盤の中に置かれていました。



薄い水盤に柱梁の整った外観、水平の庇。建物は左右対称ではありません。ボリュームはありますが、主張過ぎることもない。言葉は相応しくないかもしれませんが、どこか中庸的な印象を受けました。

館内に入ってみました。



入口は狭いものの開放的なエントランスです。前面のガラスから採られた光が空間を満たす。水盤に面したスペースが吹き抜け状の回廊となっています。椅子に腰掛けると博物館の敷地から三十三間堂を見渡すことが出来ました。



建物は地上3階に地下1階です。展示面積は3587平方メートル。かつての旧平常展示館は2761平方メートルです。面積は拡大しています。



地下は講堂です。1階から3階部分に展示室があります。ただ両サイドに階段などのスペースがあるからか、不思議と展示室自体は広く感じませんでした。そして興味深いのは吹き抜けです。そこにある格子越しに3階から2階が透け、2階から1階が見える。もちろん逆の場合もあります。つまり歩く度に、この先に進むであろう展示室が視界に飛び込んでくるのです。



次の展示室が景色として見渡せる仕掛け。先への期待感を高める演出かもしれません。もちろん美しい。ただあえて言えば目の前の作品よりも、景色の方が気になってしまい、あまり落ち着かなかったのも事実でした。(慣れれば別かもしれません。)

一階の仏像は圧巻です。天井高があって初めて出来得る展示。照明もドラマチックです。大きな仏様が露出で並んでいます。旧平常展示館ではこうはいきません。

一方で特に工芸の展示に関しては控えめな印象を受けました。例えば蒔絵、これも東博のリニューアルされた展示室(12室)の趣きとはかなり異なっている。そもそもあれほど暗室ではありません。それゆえに心なしか照明も朧げに映りました。

作品として一番惹かれたのは、近世の絵画、「桃山画壇の巨匠たち」でした。永徳の「花鳥図襖」に等伯の「枯木猿猴図」が並ぶ。また「京焼」のセクションも興味深いもの。なおオープン記念自体展は終了しましたが、現在はいわゆる常設に当たる「名品ギャラリー」を開催中です。一部、「京へのいざない」と同じ作品も展示されています。



完全に一新した平成知新館。旧平常展示館の面影はありません。間もなく会期末を迎える特別展の「鳥獣戯画と高台寺展」は凄まじい混雑(この日も120分待ちでした。)でしたが、知新館に関しては思っていたよりもスムーズでした。むろん行列もありません。当然ながら作品は見ごたえがある。新たな谷口建築を味わいつつ、常設のみをじっくり歩いて回るのも良さそうです。



11月27日の「関西文化の日」は無料で観覧出来るそうです。



「京へのいざない」は終了しました。

「平成知新館オープン記念展 京へのいざない」 京都国立博物館・平成知新館
会期:9月13日(土)~11月16日(日)
時間:9:30~17:00。但し毎週金曜日、及び11/1(土)、2(日)は20時まで。土・日・祝休日は18時まで開館。
休館:月曜日。但し9/15、10/13、11/3は開館。翌9/16、10/14、11/4は休館。
料金:一般520(410)円、大学生260(210)円、高校生以下、及び70歳以上無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:京都市東山区茶屋町527
交通:京阪電車七条駅より徒歩7分。JR京都駅より市バスD1のりばから100号、D2のりばから206・208号系統にて博物館・三十三間堂前下車。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」にてWEB内覧会が開催されます

11月29日(土)から日本未来科学館で始まる「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」。



主にデジタルの領域で様々な活動を展開するウルトラテクノロジスト集団チームラボ。そのうちデジタルアートと、子どもたちを対象に全国各地を巡った「学ぶ!未来の遊園地」プロジェクトが一堂に集結します。老若男女を問わずチームラボの魅力を体感的に味わえる展覧会です。

その「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」にてSNSユーザー向けにWEB内覧会が開催されます。

[日本科学未来館「チームラボ展」WEB内覧会 開催概要]
・日時:2014年11月29日(土) 16:30~19:00
・会場:日本科学未来館(東京都江東区青海2-3-6)
・スケジュール
 16:30~ 受付開始
 17:00~ 見どころレクチャー
 17:20~ 特別観覧会
 19:00  観覧会終了
 *途中でシンボル展示Geo-Cosmosの特別実演も行います。
・定員:150名
・参加資格:ブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方。ブログの内容は問いません。
・参加費:無料
・申込方法:専用申込みフォームより→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=4
・申込締切:先着順にて受け付けます。定員に達し次第、申し込みを締め切りとさせていただきます。詳細については、返信メールでお知らせいたします。 

開催日時は11月29日(土)の17時より。(受付開始は16時半)展覧会の開幕する土曜日、閉館後の貸し切りでの観覧です。参加資格はブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方で、展示の感想なり魅力をご紹介いただける方です。

[参加の特典]
1. 開幕日(11月29日)当日の夜間貸切観覧会です。
2. 参加の皆様に「チームラボ特製ステッカー」をプレゼント。
3. 未来館キュレーターによる見どころレクチャーを開催します。
4. 10:00~17:00は常設展もご覧いただけます。(当日限り有効)
5. Miraikan Shop(企画展グッズ等)の営業を19時まで延長します。
6. 会場内の撮影が行えます。(注意事項あり)

定員は150名。先着順での受付です。定員の達し次第、締切となります。詳細については事務局より返信メールでお知らせがあるそうです。

当日は未来館キュレーターによるレクチャーのほか、オリジナルステッカーのプレゼントもあります。また内覧会前の好きな時間に常設展を観覧することも出来るそうです。


チームラボ「憑依する滝、人工衛星の重力」2014年 *「宇宙×芸術」展にて

チームラボは現代美術云々で語らなくても楽しめる作品が多いもの。若冲の「鳥獣花木図屏風」にモチーフをとったアニメーションの「Nirvana」をご存知の方も多いのではないでしょうか。また先だっての東京都現代美術館の「宇宙×芸術」展では、アトリウムを活かしての圧巻のインスタレーションを披露してくれました。

infinity of flowers


それに秋にはグッチ新宿でも新作「Infinity of flowers」の展示がありました。活躍の場はいわゆる美術館などに留まりません。

タイトルに「遊園地」ともあるように、きっとわくわくするような展示が待っているのではないでしょうか。

11月29日(土)の17時スタートです。お時間に余裕のある方は申込まれては如何でしょうか。

専用申込みフォーム→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=4

なお特設サイトがかなり充実しています。こちらもあわせてご覧下さい。

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」 日本科学未来館@miraikan
会期:2014年11月29日(土)~2015年3月1日(日)
休館:毎週火曜日。但し12/23(火・祝)、及び2015/1/6(火)は開館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:10:00~17:00 *入場は17時半まで。
料金:大人1800円、中人(小学生~18歳)1200円、小人(3歳~小学生未満)900円。
 *中人は土曜のみ1100円。
住所:江東区青海2-3-6
交通:新交通ゆりかもめテレコムセンター駅下車徒歩約4分。船の科学館駅下車徒歩約5分。東京臨海高速鉄道りんかい線東京テレポート駅下車徒歩約15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「河北秀也 iichikoデザイン30年」  東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館
「河北秀也 東京藝術大学退任記念 地下鉄10年を走りぬけて iichikoデザイン30年」
11/13-11/26



大分の酒造メーカー三和酒類製造の麦焼酎、いいちこ。発売は1979年。以来、焼酎市場を牽引すべく販売され続けてきた。私も大の酒好き、しかも焼酎党です。これまでにも大いにいいちこのお世話になったものでした。

そのいいちこの広告制作を1983年から手がけているのが河北秀也です。長らく東北芸術工科大学で教鞭を振るった後、東京藝術大学のデザイン科の教授をつとめたアートディレクターでもあります。



河北の退任を祝しての展覧会です。彼がこれまでに制作した広告デザインがずらり。ポスター、パッケージ、雑誌やテレビCMなどと様々です。よく考えればいいちこのポスター、都内の電車内などで見かける機会も少なくない。かなり身近な広告です。まずは楽しめました。

さてタイトルに「地下鉄10年を走りぬけて」とありますが、それにはもちろん理由があります。ようは河北の制作したポスターは長年、東京メトロ(営団地下鉄時代を含む)で掲載されてきた。メトロと切っても切れぬ縁が存在するのです。

会場内撮影が出来ました。



というわけでいきなり地下鉄です。入口正面から奥に連なるのは電車内を模した空間、上に吊り広告、そして天井の縁の部分には歴代のポスターがぎっしりと並ぶ。しかもご丁寧に地下鉄のBGM付きです。実際にメトロで録音されたものでしょう。発車のアナウンスや電車の走行音が会場に流れています。



元々いいちこポスターは丸ノ内線と銀座線から始まりました。それから駅ばりのポスターは30年間、年13枚ずつ制作されています。作られなかった月は僅か計3ヶ月、1984年の5月と7月、そして2011年の4月に過ぎません。(後者は震災の影響だと思われます。)



何でもはじめは予算が少なく、制作や掲示などに難儀したとか。また東京地下鉄の路線図が目を引きました。これも河北が東京芸大在学中時代に制作したもの。時代は1972年です。南北線や大江戸線が開業していないのはもちろん、半蔵門線も永田町どまり。時代を感じます。そしてこのスタイルを基本に改良が繰り返され、以来約20年間、年1000万枚も発行されました。



また同じく営団地下鉄のマナーポスターも手がけています。これがウイットにとんでいて面白い。野球のユニフォームを着た少年がヘッドスライディングで電車に飛び込もうとし、それを駅員がアウトとコールする。下段には「かけ込み乗車は危険です。」との文言。1978年のポスターです。ともすると現在ではアイデアそのものが見送られるかもしれないほどに鮮烈。思わずにやりとしてしまいます。



大判の駅ばりのポスターもたくさん展示されています。時に美しき風景を背景にしながら、言わば決め台詞とも言える簡潔なコピーがのり、iichikoのロゴが刻まれる。基本的なスタイルは驚くほど変わっていません。それゆえの魅力でしょう。誰が見てもいいちこだと分かるような個性が確立しています。



それにしてもロケ地が広範囲です。ハワイにオーストラリアにウクライナにタヒチ、そしてポルトガル。世界各国です。ポスターを見ているだけで世界一周旅行気分を味わえます。



そのほかにはいいちこのオリジナルグッズや季刊誌「iichiko」の紹介もある。さらにTVCMの動画も流れていました。



帰りがけに受付で「iichiko design 2015」なるカタログをいただきました。青き水面をカヌーが進むデザイン、中身は展示に準拠しています。いいちこのポスターが美しい図版で掲載されていました。



なおカタログにはTVCMのDVDが付いています。しかもこれが何と無料です。そもそもこの展示も無料ですが、カタログまでが付いてのこの内容。かなり充実していました。



これからしばらくはカタログをめくりながら「いいちこ」で晩酌を楽しもうと思います。



会期中無休、入場は無料です。11月26日まで開催されています。

「河北秀也 東京藝術大学退任記念 地下鉄10年を走りぬけて iichikoデザイン30年」  東京藝術大学大学美術館
会期:11月13日(木)~11月26日(水)
休館:会期中無休。
時間:10:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:無料
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

都内4美術館 2015年開催企画展 展示スケジュール

10月27日、損保ジャパン日本興亜本社ビル内会議室にて、都内4館(泉屋博古館、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館、パナソニック汐留ミュージアム、 三菱一号館美術館)の来年度の展示スケジュールが発表されました。

リリースを頂戴致しました。ここに改めて情報を掲載します。(美術館はあいうえお順)

[泉屋博古館 東京分館]



「特別展 小川千甕展 縦横無尽に生きる」
会期:3月7日(土)~5月10日(日) 
明治末から昭和戦後の画家、小川千甕の回顧展。小川は当初、洋画を学び、漫画家としても知られ、日本画家や文人画家としても活動した。その幅広い業績を150点の作品で紹介する。

「特別展 フランス絵画の贈り物ーとっておいた名画」
会期:5月30日(土)~8月2日(日)
住友家およびグループ各社の収集してきたフランス絵画を展示する。ポールローランスからミレー、コロー、モネにブラマンクなど約50点。

「特別展 須坂クラシック美術館創設20周年記念 きもの モダニズム」
会期:9月26日(土)~12月6日(日) 
須坂クラシック美術館所蔵の実用的絹織物、いわゆる銘仙をまとめて紹介する展覧会。大胆なデザイン性を見る。

*京都本館
3月21日(土)~5月17日(日) 「特別展 フランス絵画の贈り物ーとっておいた名画」
5月23日(土)~7月12日(日) 「企画展 住友コレクションの明清書画」
9月5日(土)~10月12日(月祝)/10月20日(火)~11月29日(日) 「生誕150年記念特別展 住友春翠ー清雅なる美の世界」

[東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館]



「クインテット2 五つ星の画家たち」
会期:1月10日(土)~2月15日(日)
5人の現代作家を紹介するシリーズ企画第2弾。富岡直子、平体文枝、岩尾恵都子、水村綾子、山本晶の近作・新作約70点を展示する。

「FACE展2015」
会期:2月21日(土)~3月29日(日)
第3回目となる公募コンクール展。入選した作品70点を展示。オーディエンス賞も授与する。

「ユトリロ&ヴァラドン展:母と子の物語」(仮称)
会期:4月18日(土)~6月28日(日)
ユトリロ、及びユトリロの母で画家でもあるスュザンヌ・ヴァラドンの作品を紹介する。ユトリロ40~45点、ヴァラドン25~30点の作品を展示。

「安野光雅展:ヨーロッパ周遊旅行」(仮称)
会期:7月7日(火)~8月23日(日)
画家や絵本作家として活動する安野光雅の主に風景を描いた作品に着目する展覧会。津和野町立安野光雅美術館コレクションの風景画や「旅の絵本」などの水彩原画113点を展示する。

「ベル・エポックの時代の画家たち~カリエール、ル・シダネル、アマン・ジャン」(仮称)
会期:9月5日(土)~11月8日(日) 
20世紀初頭のフランスにおいて結成された「画家彫刻家新協会」の画家を紹介する。カリエール、クラウス、ローラン、マルタン、シダネル、コッテなど。全60~70点を予定。

[パナソニック汐留ミュージアム]



「生誕130年 ジュール・パスキン展」
会期:1月17日(土)~3月29日(日)
日本では16年ぶりの回顧展。ポンピドゥーやパリ市立近代美術館のコレクションのほか、コミテ・パスキンの協力を得て、パスキンの資料もあわせて紹介する。全120点余。

「ルオーとフォーヴの陶磁器」
会期:4月11日(日)~6月21日(日) 
ルオーとフォーブの画家の陶磁器作品を紹介する日本で初めての展覧会。フランスから出品の60点の陶磁器の殆どが日本初公開。知られざる陶芸家アンドレ・メテにも着目する。

「アール・ヌーヴォーのガラス展」
会期:7月4日(土)~9月6日(日)
アール・ヌーヴォーのガラス作品では第一級コレクションとされるゲルダ・ケプフ・コレクションを日本で初めてまとめて紹介する。

「ゴーギャンとポン・タヴァンの画家たち」 
会期:10月29日(木)~12月20日(日)
ドニ、ベルナール、セルジェなどポン=タヴァンの画家を紹介する展覧会。ゴーギャンのポン=タヴァン時代の貴重な作品も公開される。監修はフランス・カンペール美術館アンブロワーズ館長。全70点。

[三菱一号館美術館]



「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展ーアメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから」
会期:2月7日(土)~5月24日(日) 
ナショナル・ギャラリーの改修を機に、同館のコレクションをまとめて紹介する展覧会。ルノワール、マネ、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホなど68点。うち38点は日本初公開。

「画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」
会期:6月27日(土)~9月6日(日)
一号館を設計したコンドルの業績と、彼の敬愛し、作品を海外に紹介した暁斎の画業を辿る展覧会。日本画、浮世絵、戯画、日記等120点を展示。

「プラド美術館展ースペイン王室を虜にした巨匠たち」
会期:10月10日(土)~2016年1月31日(日)*予定
プラドコレクションから主にスペインの三大画家といわれるグレコ、ベラスケス、ゴヤのほか、ボスやルーベンス、ムリーリョらの作品を紹介する。

如何でしょうか。なお上記情報は10月27日の発表時点のものです。今後、会期や名称などに変更が生じるかもしれません。詳しくは美術館までお問い合わせ下さい。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「ジョルジョ・デ・キリコ展」 パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム
「ジョルジョ・デ・キリコー変遷と回帰」
10/25-12/26



パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「ジョルジョ・デ・キリコー変遷と回帰」を見て来ました。

いわゆる「形而上絵画」を描いたことで知られる画家、ジョルジョ・デ・キリコ。東京では約10年ぶりの回顧展だそうです。出品数は100点。その殆どが海外の所蔵品、とりわけキリコ未亡人のイザベッラがパリ市立近代美術館へ寄贈した作品が目立ちます。

そして作品の8割が日本初公開でもある。個性的なキリコ画のこと、どこか受け手に作品のイメージなりが出来上がっている感があるやもしれませんが、おそらくはキリコに詳しい方でも新鮮味のある展覧会だと言えるのではないでしょうか。それに想像して見て下さい。あの汐留ミュージアムの空間に100点の作品です。絵画は所狭しと並ぶ。実に濃密な展示でした。

会場にて本展担当の萩原敦子学芸員のお話を伺うことが出来ました。

冒頭は1910年代、早くも画風を確立したということかもしれません。いきなりキリコをキリコたらしめる形而上絵画が登場する。目立つのは「謎めいた憂鬱」です。ギリシャ神話のヘルメスの像をモチーフにした一枚、独特の歪んだ遠近法による室内風景を描いたものです。

イタリア人のキリコの生まれは意外にもギリシャです。17歳で父を亡くし、母と弟でミュンへンへ向かいます。そこで美術を学び、初期はドイツのベックリンやスクリンガーの影響を受けます。またニーチェやショーペンハウアーを読み、後にドイツのロマン神秘主義に引かれていきました。

そして本作においてのヘルメス像は手前の室内からすれば大きすぎ、一種異様です。また右の箱の中にはキリコ画によく出てくるビスケットが描かれています。そして一説によるとヘルメスは友人アポリネールを表すとか。彼の死を追悼して描いた作品とも言われているそうです。

ところがです。キリコは早くもこの頃から古典主義への回帰を志向します。きっかけは一次大戦中に兵役のために訪れたイタリアです。そこで各地の美術館を渡り歩いては古典的な絵画を鑑賞した。ボルゲーゼ美術館ではルネサンス絵画に大いに感心したそうです。

その経験を踏まえての回帰。例えば「母親のいる自画像」です。まるで聖母子でも思わせる画家の親子の姿、母と画家自身は手を取り合って寄り添う。血管の浮き出た腕や顔の皺、さらには髪の毛などの質感もかなり細かく描かれています。ある意味では現実的でかつ写実的。先の「謎めいた憂鬱」の画風とは一変しています。

とはいえ何も形而上的なエッセンスを放棄したわけではありません。「剣闘士の休息」では剣闘士を中心に、特徴的な室内、さらにはお馴染みのマネキンのような人物を描いている。古典に回帰しつつも、じょじょにモチーフを増やしては、表現の幅を広げていきます。

1940年代からはネオ・バロックの時代です。時にドラクロワを思わせるような世界を描く。キリコの得意とした馬のモチーフ、そして妻イザベッラをモデルとした作品を次々と生み出します。

このセクションの展示が秀逸です。向かって左が馬、そして右が妻のモチーフをとった作品が並ぶ仕掛け。それぞれが向かい合うように並んでいました。

「エーゲ海岸の古代の馬」はどうでしょうか。二頭の馬が海岸を歩く姿を描いた作品、前脚を振り上げては力強く進む。とはいえ馬の表情はさも擬人化したかのように哀愁に満ちていて、いささか奇妙でもある。水面や地面の上に突如置かれたのはギリシャの神殿の円柱です。時代や場所を暗示するかのような仕掛け、過去と現在を一つの作品の中へ同時に表しています。

「赤と黄色の布をつけて座る裸婦」のモデルはもちろん妻イザベッラです。豊満な裸体を露わにしては座っています。バラ色と黄色の布からバロック絵画を連想しました。

それにしてもここでは妻という現実のモチーフを、まるで古代ギリシャのような海岸線を背にして描いています。イザベッラが過去に降り立ってモデルを務めているような作品、もはや時間を超えていると言えるのかもしれません。

さて何よりもキリコの画業で特異であるのが、過去の作品、とりわけ1920年代の形而上絵画を繰り返し複製して描いていることです。

うち何枚もあるとされるのが「吟遊詩人」、極めて特徴的なマネキンを中央に配した作品、キリコが1910年代後半から頻繁に描いたモチーフでもあります。

また「不安を与えるミューズたち」もキリコお得意のモチーフ、本作も1917年に描かれた作品の言わば複製ですが、それゆえか贋作が多いことでも知られるとか。実は本展でも事前に別の作品が選定されていたももの、贋作の可能性があったため、急遽この作品に入れ替わったそうです。

ミューズと同じモチーフのブロンズの彫刻も展示されています。キリコは1940年代からミューズや吟遊詩人などのモチーフを立体化しました。ちなみに彫刻の展示にはとある仕掛けがなされています。ヒントは影です。これは是非会場で確かめてみて下さい。

晩年になると作風はまた変化します。と言うのも形而上絵画に見られた不穏な気配は薄れ、色に筆致により明瞭になっていく。またパリの街への思い出を見る作品も少なくない。かつてコクトーやアポリネールの詩集のために制作した挿絵から再びモチーフを取り出しています。

「神秘的な動物の頭部」が目を引きました。背景には古代の神殿などが浮かぶ海が広がり、手前には馬の頭部が大きく描かれている。しかしその馬は同じく古代的な建物の破片で象られています。まるでアルチンボルドです。そして馬は寂しそうな眼差しで彼方を見やっている。何でもこれはキリコの最後の自画像でもあるのだそうです。

最初期の1910年代に早くも成功を収め、画風を変えながらも、終始「回帰」しては作品を描き続けたキリコ。到達点というのは果たしてあったのでしょうか。非常に長い画業です。亡くなったのは1978年のこと。90歳で生涯を閉じました。



さてさすがに人気のキリコの回顧展ということもあってか、会期早々より土日を中心に館内は大勢の人で賑わっているそうです。

その上にかの汐留の手狭なスペースです。今後の状況如何では入場規制もあり得るとのことでした。早めの観覧が良さそうです。

ちなみにキリコ展の公式ツイッターアカウント(@ChiricoShiodome)が混雑情報をこまめにつぶやいています。こちらも参考になりそうです。

NHK日曜美術館 11月23日(日)9:00~
「謎以外の何を愛せようか ジョルジョ・デ・キリコ」

率直なところキリコを今回ほどまとめて見たのは初めてでしたが、例の「回帰」しかり、時間軸で追えば追うほど、むしろ全体像を捉え難く、逆に画家にはぐらかされるように思えてなりませんでした。



それゆえの謎めいた魅力ということなのかもしれません。知れば知るほど、見れば見るほど深まる謎の奥深さ。この展覧会を通して改めてキリコの魔力にはまった気がしました。



12月26日まで開催されています。おすすめ出来ると思います。

「ジョルジョ・デ・キリコー変遷と回帰」(@ChiricoShiodome) パナソニック汐留ミュージアム
会期:10月25日(土)~12月26日(金)
休館:水曜日。但し12月3日、10日、17日、24日は開館。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生900円、中・高校生500円、小学生以下無料。
 *65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
 *ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「リギョン展 逆転移」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「リギョン展 逆転移」 
2014/10/31-2015/1/7



メゾンエルメスで開催中のリギョン個展、「逆転移」を見てきました。

1969年に韓国の全州で生まれ、ソウルに在住、以来「一貫して光をテーマ」(チラシより)に制作を続けるアーティスト、リギョン。

エルメスの空間を光で演出します。大小2つの展示室を用いてのインスタレーション個展が始まりました。

ちなみにタイトルは「蛇の口づけ」に「善悪の知恵の木」。いわばともに聖書の原罪を連想させるもの。それをどのようにして表現しているのか。実のところ殆ど予備知識なく会場に足を運びました。

とするといきなり驚かされる面があります。何故ならお馴染みの銀座エルメス8階フォーラム、ガラスブロックの壁面と柱の数本連なる特徴的なスペースですが、今回ほど言わば「一見」するだけでは空間に変化がなかったからです。


「蛇の口づけ」

ようはご覧の通り、スペースはさも元のまま。「蛇の口づけ」です。あくまでもガランとした展示室が広がる。そこに何か凝った装置なりがあるようにも見えない。言い換えればないもない空っぽとしても差し支えありません。


「蛇の口づけ」

しかしながらそれはあくまでも「一見」したところに過ぎませんでした。観覧には靴を脱いで上がる必要があります。係りの方の「滑りやすいのでお気をつけ下さい。」との言葉をしかと聞きながら、まずは展示室へと入ってみました。

すると足裏に何か独特の感触がある。それでいて危ういほどに滑りやすい。何やら床に細工されていることが足から感じられるのです。


「蛇の口づけ」(床面)

結論から言えば床に敷き詰められたのは光るパネル。その質感はまさに螺鈿です。展示室内の照明はもとより、時にガラスを通しての屋外からの光を受けてはきらめく。七色の光を放っているわけです。

この全身で七色の光を受け止め、また足先で何かを感じる感覚。シンプルな仕掛けかもしれませんが、体験は意外と新鮮でもあります。ひたすら滑りやすい床に注意しながら、まるで氷の上を恐る恐る歩くように進みました。

さてもう一つの「善悪の知恵の木」、こちらは輝かしくまた力強い光が空間の隅々まで満ち溢れていました。


「善悪の知恵の木」(*カメラではこの色になってしまいますが、実際は白です。)

煌々と明かりに照らされた真っ白い空間、同じく靴を脱いで進むわけですが、まさしく光に目を眩ませられるからか、もはやどこが壁なのかすら分からなくなるほど危ういもの。自分が立っている位置までも判然としません。まさにハレーション。もはやカメラでは光を収めきれません。知覚を大きく揺さぶります。

生まれた赤ん坊が初めて光を見た時の感覚はひょっとしてこのようなものではないか。そうも感じながら会場を後にしました。

螺鈿の床のインスタレーションは外光の変化、つまり時間によって見え方が変わるのではないでしょうか。私が出向いた際は既に日没後でしたが、次回は明るいうちに行きたいと思いました。

2015年1月7日まで開催されています。

「リギョン展 逆転移」 メゾンエルメス
会期:2014年10月31日(金)~2015年1月7日(水)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「エスプリ ディオール - ディオールの世界」 玉屋ASビル(銀座)

玉屋ASビル
「エスプリ ディオール - ディオールの世界」
2014/10/30-2015/1/4



玉屋ASビルで開催中の「エスプリ ディオール - ディオールの世界」を見て来ました。

フランスのファッションデザイナーことクリスチャン・ディオール。1940年代後半のディオールの時代から現在までの展開を辿ることの出来る展覧会です。



会場内にはアーカイブドレスのほか、バック、香水瓶、写真に映像などがずらり。それらが12のテーマのもとで実にきらびやかに展示されています。

撮影が出来ました。(フラッシュ不可)



冒頭はクリスチャン・ディオールの紹介です。そして幅広い友人たちとの交流なども示される。またディオールはシュルレアリスムに関する展覧会を開くなど、芸術に対して強い関心を抱いていた人物でもあります。ピカソのデザイン画やシャガールのメッセージ、またデュフィに因む資料、それにウォーホルのかばんなどがありました。



ディオール自身が惹かれていたという日本との関わりを見るコーナーも興味深いもの。日本の型紙や生地を利用してドレスを制作したこともあったそうです。また1959年の皇太子殿下(当時)とのご成婚の際に美智子さまが着られたローブデコルテはディオール製でもあります。



それにしても端的に見栄えのする展示です。モデルたちとの美しき響宴。パトリック・デマルシェリエによる写真も雰囲気を盛り上げます。また随所で目につくのが花のモチーフです。何でもディオールは幼少期を過ごした自身の家の庭の花のイメージを大切にしていた。それをドレスのデザインに取り入れます。「花冠のように開くスカート」を志向していたそうです。



ディオールにとって重要な色がローズとルージュです。先に触れた子ども時代を過ごした家の壁の色はローズ色でした。また反面に情熱的でもあるルージュの探求にも熱心に取り組みます。「ローズは最も優しい色、それは幸せと女性らしさの色」、「ルージュが好きだ、それは生命の色」という言葉を残しました。



これまでにスターたちが着たドレスも展示。ドレスは時に斬新で言わば前衛的でもある。亡くなったダイアナ妃の着た青のドレスなども目を引きました。



現代アーティストらとの協同です。1995年に誕生したディオールのアイコンバック「レディ ディオール」を元にした作品を展示しています。


鬼頭健吾「Surface of Lady Dior」2012年

日本からはお馴染みの名和晃平や宮永愛子、そして鬼頭健吾らがバックに挑戦する。うち私が一番惹かれたのは鬼頭の「Surface of Lady Dior」です。非常に色鮮やか。まるで宝石の如く煌めいていました。



そのほかには関連書籍を閲覧出来るコーナーもある。充実したリーフレットもいたただけました。これで入場は無料。かなりの充足感があります。

最後に一番興味深かった展示があります。それは「ディオールのアトリエ」です。


「ディオールのアトリエ」デモンストレーション

なんとこのセクションでは実際にパリのアトリエで働いている職人のデモンストレーションが行われている。刺繍の縫い付けの作業や香水瓶の調合の様子を間近で見学することが出来ます。


「ディオールの世界」会場の玉屋ASビル(手前)

ちなみに会場は銀座のメインストリート、中央通り沿い、アップルストア横の玉屋ASビルです。地下1階から3階までの計4フロアでの展開。非常にスタイリッシュな内容ですが、思いの外にボリュームもある展示でした。

また土日問わず、連日夜8時までオープン。銀座へのお出かけの際はもちろん、仕事帰りにも楽しめるのではないでしょうか。



2015年1月4日まで開催されています。

「エスプリ ディオール - ディオールの世界」 玉屋ASビル(銀座)
会期:2014年10月30日(木)~2015年1月4日(日)
休館:2014年12月11日、2015年1月1日。
時間:10:30~20:00 *最終入場時間は19:30。
料金:無料。
住所:中央区銀座3-5-8 玉屋ASビル(アップルストア銀座横)
交通:東京メトロ銀座線・丸の内線・日比谷線銀座駅A9出口より徒歩1分。JR線有楽町駅より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「赤瀬川原平の芸術原論」 千葉市美術館

千葉市美術館
「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」
10/28-12/23



千葉市美術館で開催中の「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」を見て来ました。

1937年に生まれ、美術の領域に留まらず、漫画や小説のほか、写真やエッセイストなどでも幅広く活動した赤瀬川原平。その多方面な業績を主に時間軸で追いかける展覧会です。

出品は全500点。最初期の絵画から近年の資生堂の椿会に出品した作品までを網羅する。もちろんハイレッド・センターや千円札裁判、またトマソンなどにも言及があります。内容は膨大です。観覧に2時間近くはかかりました。

はじまりは1952年に描いた父の肖像画です。中学の頃に美術グループに属していた赤瀬川、武蔵野美術大学へと進学する。しかし生活は苦しく、例えばサンドイッチマンなどをしてお金を稼いでいた。実家も豊かではなかったそうです。同じく50年代には「貧しき家族」と題した絵画も残しています。


「ヴァギナのシーツ(二番目のプレゼント)」1961/1994年 作家蔵(名古屋市美術館寄託)

1959年から読売アンデパンダン展に出展しました。かの東松照明が赤瀬川のパフォーマンスを写した写真も興味深い。真空管やゴムチューブ、割れたコップなど既存の素材を活かしては時に奇異なオブジェを作り上げる。巨大な「ヴァギナのシーツ」は今見ても存在感があります。また1963年のシェル美術賞で佳作を受賞した平面作品も目を引きました。


「不在の部屋」1964/1994年 名古屋市美術館

続くのはハイレッド・センターです。言うまでもなく中西夏之、高松次郎、そして赤瀬川原平によって結成された前衛美術のグループ。オブジェなどの制作から、いわゆる直接行動、つまりはイベントやハプニングへと活動の軸を移します。


「宇宙の缶詰」1964/1994年 作家蔵 協力:白石コンテンポラリーアート

梱包もこの頃です。家具や扇風機を紙で梱包しては提示します。何と第6次ミキサー計画では梱包作品を大胆にも新橋駅のホームに置いたとか。また「宇宙の缶詰」も面白い作品です。カニ缶の中身をとり外のラベルを剥がす。そして今度はラベルを内に貼ってはさらに密封する。すると缶の内側にこそ我々の宇宙が封印されるという仕掛けです。意図も簡単に世界を反転させてしまう。何たる発想でしょうか。


「首都圏清掃整理促進計画」1964年

有名な「首都圏清掃整理促進計画」は写真パネルでの展示でした。場所は銀座のど真ん中です。全身白衣に身を包んだメンバーが、縁石やマンホールを丁寧に拭き取る姿が写されている。警官が首をひねりながら見ています。


「大日本零円札」1967年 作家蔵 協力:白石コンテンポラリーアート

そして「千円札裁判」です。ここでは細かく触れませんが、摘発の背景や裁判の経過、起訴状や押収品、さらに裁判をある意味で逆手にとって行われた赤瀬川の創作などにもついても言及があります。展示全体から見てもかなりのウエイトがありました。


「『お座敷』より」1970年 作家蔵

1970年前後からイラストの仕事が増え始めます。婦人公論や朝日ジャーナルでも連載をはじめる。時に社会的な素材をパロディ化して描きました。また永山則夫の著作の装丁の仕事もしています。さらにガロで漫画も連載。うち展示では「お座敷」のペン画の原画全点を紹介。43ページの全てを読むことも出来ました。

現代思潮社を母体に開設された美術学校の教壇に立っていたこともあったそうです。そしてその講義がユニーク。例えば古典絵画はパロディにして模写させています。さらに新聞記事や紙幣に広告をそのまま写させるという取り組みもある。また一時はマッチのコレクションや、天文同好会に入って天体観測にのめり込んでいたこともあったそうです。関心の方向はもはや全方位と言って良いかもしれません。

「父が消えた/尾辻克彦/文春文庫」

赤瀬川は芥川賞受賞作家でもあります。ペンネームは尾辻克彦、受賞作は「父が消えた」です。うち展示では著作の原稿のほか、受賞記事なども紹介。それにしても類い稀な創作力です。赤瀬川は常に同じ地点に留まりません。関心は常に移り続け、新たな地点においても端から見れば易々と一定の成果を挙げてしまいます。


「トマソン黙示録真空の踊り場・四谷階段」1988年 大分市美術館

私が一番知っている赤瀬川の活動は「トマソン」や「路上観察活動」かもしれません。名付け親とも言えるゲイリー・トマソンの肖像にはじまり、赤瀬川の「トマソン黙示録」へと繋がる流れ。いわゆる不動産における美しい無用の長物を次々と写真に収めています。また添えられた赤瀬川のコメントにも思わずにやりとさせられました。街にはかくもこう面白い建築物が潜んでいたのか。今もその驚きは失われません。


「ライカIIIg」2000年 作家蔵
 
さらに80年代には印象派風の絵画を制作し、90年代には中古カメラ収集を切っ掛けにライカ同盟を結成する。1997年には路上観察学会のメンバーでもある藤森照信による自宅兼アトリエの「ニラハウス」を建設。かの有名な「老人力」がベストセラーになります。


「ハレーション」2012年 協力:ギャラリー58

以降は近年の展開です。2000年頃に美術史家の山下裕二と行った「日本美術応援団」なども紹介されています。さらにラストには未完の油画「引伸機」(2012年)が待ち構えている。そしてこの作品は今後完成することはありません。つまり赤瀬川はこの展覧会が始まるまさに直前、2日前の10月26日に77歳の生涯を閉じました。

それにしても何というタイミングなのでしょうか。そしてこの回顧展に接することで、改めて希有な方を亡くしたと残念に思えてなりません。心からのご冥福をお祈り致します。

さてDIC川村記念美術館の五木田智央展との提携の情報です。赤瀬川原平展会期中、DIC川村記念美術館との無料直通バスが運行されます。

DIC川村記念美術館「五木田智央」展(8/31~12/24)との連携(千葉市美術館)

私も実はこの日、先に川村で五木田展を見た後、バスを利用し、千葉市美術館へ向かいました。所要時間はおおよそ30分です。佐倉から千葉へ電車で移動するよりも遥かに早く行くことが出来ました。



多岐に渡るマルチな才能、氏の業績を俯瞰するにはもはや芸術家という括りでさえ足りないのかもしれません。赤瀬川は赤瀬川という存在でしか捉え得ないのかもしれない。最終的には人間・赤瀬川に大いに興味が引かれます。漠然とした印象で恐縮ですが、そのように感じました。

図録が超弩級です。内容もすこぶる充実していて2300円です。永久保存版になりそうです。

「赤瀬川原平の名画読本ー鑑賞のポイントはどこか/知恵の森文庫」

ともかく時間に余裕をもってお出かけ下さい。12月23日まで開催されています。もちろんおすすめします。

「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」 千葉市美術館
会期:10月28日(火)~ 12月23日(火・祝)
休館:11月4日(火)、12月1日(月)
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 1 )
« 前ページ