「DOMANI・明日展 2013」 国立新美術館

国立新美術館
「DOMANI・明日展 2013 文化庁芸術家在外研修の成果」 
1/12-2/3



国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展 2013 文化庁芸術家在外研修の成果」へ行って来ました。

毎年、文化庁により海外派遣された作家の成果を披露する場として設けられる展覧会、DOMANI(ドマーニ)。今年はいわゆる中堅、若手を中心に12名の作家が登場。(出品作家一覧)絵画に写真、そしてインスタレーションと、様々な展示が繰り広げられています。

なお今回は会場の半数以上の写真撮影が可能でした。以下、簡単に印象に残った展示を挙げておきます。

まずは日本画の神彌佐子から。重厚、古風な日本画が展示されているのかと思いきや、意外や意外。新美の広いホワイトキューブの壁面を利用してのポップな大作が設置されています。


神彌佐子「stride2012」2012年 麻製蚊帳、楮紙、墨、顔料、箔、他

素材は古い蚊帳に紙。そこに箔や顔料をさながらコラージュ的に展開。ピンクを基調とした色鮮やかな作品に仕上がっていました。


青野千穂 展示室風景

続いての青野千穂は陶、セラミック。その造形はまさしく有機的。何やら蜘蛛が脚を広げたようなオブジェが空間を支配しているではありませんか。


行武治美「パラサイト」、「縁起」2012年 鏡

さらに進むとガラス造形の行武治美が。こちらも新美の空間を天井から活かしてのインスタレーションです。目の覚めるような赤にキラキラ光るガラス素材。爽快感がありました。


平野薫 展示室風景

さて古着を素材に刺繍を吊るすのは平野薫。これがまたモチーフに素材と繊細です。古着から糸を紡いで生まれるインスタレーション。まさに抜け殻とも幻とも映る、どこか儚げな印象を与えられないでしょうか。

また糸といえばお馴染み塩田千春が圧巻。


塩田千春「大陸を越えて」2013年 糸、靴

靴から繋がる無数な赤い糸が一点に集約。もちろんこの靴は何れも使い古されたもの。それを塩田は一つ一つ収集、また記憶や歴史を呼び込んだ上で、作品を制作しています。


塩田千春「大陸を越えて」2013年 糸、靴

かつてのDOMANI展の会場は手狭な損保ジャパン東郷青児美術館。こうしたインスタレーションは殆どありませんでしたが、これぞまさに新美の空間だから叶う展示。実に見応えありました。

また撮影不可の作家からいくつかポイントを。まずは写真の澤田知子。ともかく自らを被写体とした変身シリーズで知られていますが、今回は一変、何とモノに商品。世界各地の言語で示されたハインツのケチャップなどの商品ラベルの写真などを展示しています。

「MASQUERADE/澤田知子/赤々舎」

ちなみにこの作品を制作したのはウォーホル美術館主催のプロジェクトに参加したからだとか。確かに一目でウォーホルと思わせる要素が。ともかく澤田と言うと「自画像」のイメージが強かったので、この変化には強く驚かされました。

また変化と言えばラストの池田学も忘れられません。

「池田学画集/羽鳥書店」

90年代から近作まで、お馴染みの超絶細密画が大小合わせて25点も揃うことからして圧巻。一枚の絵画に潜む作家の「学」サインを見つけるのにも苦労するほどの精緻な描写が光りますが、今回は震災後の一枚に若干の作風の変化が。池田の今の心境を伺うことも出来ます。

DOMANIというと、どちらかと言えば旧作の展示という印象がありますが、いくつかの作家において近作、最新作を見られたのは嬉しいところでした。


米正万也 展示室風景

今年はなかなか面白かったのではないかと思います。

2月3日までの開催です。

「DOMANI・明日展 2013 文化庁芸術家在外研修の成果」 国立新美術館
会期:1月12日(土)~2月3日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。*プリントアウト用割引引換券
 * ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「貴志真生也 ストーブからはなれる寂しさ、扇風機からはなれる切なさ」 児玉画廊 東京

児玉画廊 東京
「貴志真生也 ストーブからはなれる寂しさ、扇風機からはなれる切なさ」
1/19-2/23



児玉画廊東京で開催中の貴志真生也個展、「ストーブからはなれる寂しさ、扇風機からはなれる切なさ」へ行って来ました。

ビニールシートや発泡スチロールなどの資材を用い、構造的なインスタレーションを展開する貴志真生也。昨年には大阪の国立国際美術館での「リアルジャパネスク」にも出品、最近の制作も注目されているところかもしれません。

私が初めて貴志の作品を知ったのは2010年の同ギャラリーでの個展。蛍光ランプや布に木材を一見、無機的に組み合わせ、結果生まれる謎めいた空間に奇妙なほど惹かれたものでした。

インスタレーションビュー(展示風景が掲載されています。)

それ以来の貴志の個展。一体どのように進化、また深化したのか。期待に胸を踊らせながら会場へと足を踏み入れてみました。

さて結論から申し上げると、その結果は、悪い意味でも、そして良い意味でも裏切られたと言えるかもしれません。

とするのも、今回の貴志の新たなる展開として、立体ではなく平面へのアプローチが見られたこと。

これはいずれもテレビに写ったものを描き出し、それを絵画に起こしたものだそうですが、時にうねる線が人型をなぞるペイントはこれまでとは全く異なるもの。

また素材もキャンバスに紙に合板と様々。また表現もニスを削り取って立体的に仕立てたりと多様です。

それに立体にも何やら無数の指をニョキニョキを生やして束ねたようなグロテスクとも有機的ともとれるモチーフが。

風に揺れて動く花やひたすら回転する監視カメラを捉えた映像作品も、言ってみればとても動的。カメラなどはまるで体操する人の姿にも見えて来ます。

これまでの抽象的、また空間をどこか冷ますようなインスタレーションとは異なる展開。率直なところかなり面食らいましたが、この意外性はむしろ次に繋がるステップと考えると興味深いのではないでしょうか。


貴志真生也「銀座エルメス ウィンドウ・ディスプレイ」(2011年)

かつての児玉画廊以来、エルメスのウィンドウと追っかけてきたつもりでしたが、これからの表現にも期待したいと思いました。


貴志真生也「銀座エルメス ウィンドウ・ディスプレイ」(2011年)

2月23日まで開催されています。

「貴志真生也 ストーブからはなれる寂しさ、扇風機からはなれる切なさ」 児玉画廊 東京
会期:1月19日(土)~2月23日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス1階
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅3番出口より徒歩10分。東京メトロ日比谷線広尾駅1番出口より徒歩15分。
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「飛騨の円空」 東京国立博物館

東京国立博物館
「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」 
1/12-4/7



東京国立博物館の本館特別5室で開催中の「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」へ行ってきました。

江戸時代、修験者として諸国を渡り歩きながら、仏像を造り続けた円空(1632-95)。どこか微笑みを浮かべたような表情や親しみやすい造形からも人気、2008年の「対決 巨匠たちの日本美術」展でも大いに注目を集めました。


「両面宿儺坐像」江戸時代・17世紀 千光寺

以来5年。再び東博に円空仏が集結。その数100体、まさに円空の森。仏像はいずれも出生の地、岐阜は飛騨・千光寺を中心とする高山市所在のものです。

高さ2メートルから5センチまでの仏像はまさに姿形も多種多様。にっこり楽しい円空仏を堪能することが出来ました。


「八大龍王像」江戸時代・17世紀 千光寺

さて印象に深い仏像をいくつか。まずは水神である龍のモチーフ、例えば「跋難陀龍王像」や「善女龍王立像」などです。

これらはいずれも龍が雨を操るとされていたことから、水害や日照りの際に祈願されることが多かったとか。円空も積極的に制作しました。


「三十三観音立像」江戸時代・17世紀 千光寺

また病気治癒のために作られたという「三十三観音立像」も見事。何と会場にずらりと31体が一同に会しています。

ちなみにこれらは元々50体以上あったものの、治癒のために貸出したりしたことで、戻ってこなかったとのこと。円空仏がいかに庶民の生活と関わっていたのかを伺い知るエピソードでした。


「金剛力士(仁王)立像」江戸時代・17世紀 千光寺

そして円空仏と言えば、ともかく木そのものの持つ物質感もポイントですが、それを特に思わせるのが「金剛力士(仁王)立像」。何とおそらくは地面に生えていた木へそのままノミを入れて制作されたという巨木(高さ220センチ!)の仏像です。

木の生命と仏の魂の宿る仏像。一概にプリミティブという言葉で片付けられないただならぬ何かが感じられました。

とはいえ、円空仏にも比較的、精緻な造形をとる作品があるのも見逃せないところです。


「千手観音菩薩立像」江戸時代・17世紀 清峰寺

ちらし表紙を飾る「両面宿儺坐像」や「千手観音菩薩立像」などは、荒々しくも丹精に彫り込まれたノミの跡が、簡素ながらも着衣や顔を巧みに象っています。

また秘仏の「歓喜天立像」も興味深いもの。頭が象で身体が人、それが抱き合う様子が表現されています。ちなみにこのモチーフはインドの密教に由来するとか。また現地でも7年に1度しか展示されません。

それを東京で拝めるだけでも有難いもの。また他にも初めてお寺から出た仏像もあるそうです。

「円空 微笑みの謎/長谷川公茂/新人物往来社」

会場は本館の特別5室のみ。平成館ではありません。言うまでもなく手狭であるのは事実です。しかしながら円空仏を一定のスケールで見られる展示。会場の造作も台座、照明を含めて良く出来ています。

仏像の向こうにある木の温もり、さらに飛騨の森の気配を感じながら、じっくりと円空仏に向き合えました。

「美術手帖2013年2月号/円空/美術出版社」

館内は相当に賑わっていました。前回の出雲展しかり、最近の特別5室の特別展は後半にかけてかなり混雑します。早めの観覧がおすすめです。

4月7日まで開催されています。

「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」 東京国立博物館
会期:1月12日(土)~4月7日(日)
休館:月曜日。但し1/14(月・祝)、2/11(月・祝)は開館。1/15(火)、2/12(火)は休館。
料金:一般900(800)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円、中学生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00。但し3・4月の金曜日は20時まで。4/6(土)、4/7(日)は18時まで。(入館は閉館の30分前まで) 
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「勝坂縄文展」 神奈川県立歴史博物館

神奈川県立歴史博物館
「勝坂縄文展」
2012/12/15-2013/2/7



神奈川県立歴史博物館で開催中の「勝坂縄文展」へ行ってきました。

東博の土偶展しかり、近年改めて美術の観点からも注目の集まる縄文時代の遺物。荒々しい火焔土器を含め、力強く生命感に溢れた造形美に惹かれる方も多いかもしれません。

そうした縄文土器を通して、縄文人の生活に思いを馳せようとするのが本展の趣旨。ただ単純に縄文土器の優品なりを紹介する展覧会ではありません。

注)展示室内の写真の撮影、および掲載については、事前に県立博物館の許可を得ています。


勝坂縄文展展示室風景

一見、土器が整然と並ぶ会場の各所には、「見て楽しめる」仕掛けが満載。私自身、縄文土器を今回ほど面白く、また興味深く見たのは初めてでした。

縄文の熱気に飲まれて少し熱くなりました。まずは勝坂遺跡、勝坂土器とは何ぞやというお話を簡単に。

これは神奈川県相模原市南区にある縄文時代中期の大集落跡で、そこから出土した土器(厳密には一定の様式。)を勝坂式と呼んでいます。また特徴としては立体的でかつ豪胆な装飾が多く、把手に動物や人物のモチーフを付けているものも珍しくないそうです。

では早速、展示の様子を。冒頭で出迎えてくれるのは可愛らしい「縄文の貴公子」くん。


手前:「縄文の貴公子」

あどけない少年のような表情、やはり土偶の一部かと思いきや意外。縦横20センチもの大きさは日本の縄文時代の「あたま」としては異例の大きさ。類例はありません。とすると土器の把手、いわゆる人面把手の一種なのか。実のところよく分かってないのだそうです。

そしてこの展示では「分からない」ことをさも分かったように説明せず、みんなで考えてみようというのが一つのスタンス。


「縄文土器に描かれた、なぞの生き物」

例えば勝坂土器の模様でよく見られる謎めいた模様、これは一体何が描かれているのかをアンケートで集約。ヘビなのかカエルのか人間なのかそれとも宇宙人なのか。その結果をWEB上で公開(しかも随時更新!)する試みも実施されているのです。

「これは、なんだ!?縄文時代は、なぞだらけ」(アンケート結果集計)

また口縁の下に小さな孔と鍔のような粘土の巡る「有孔鍔付土器」と呼ばれる土器も登場しますが、これもまた用途不明。楽器の太鼓なのか、はたまた酒造りに使ったのか。諸説ありますが、詳しいことはよく分かっていません。


「有孔鍔付土器」

もちろんこちらもアンケートを実施。太鼓説と酒造り説、さらには新説として虫かご説などなど。会場には太鼓に復元した土器を実際に叩くことも可能ですが、それにしても用途を考えながら土器を見るという体験自体が驚くほど新鮮です。


「人間としての縄文人(うまい?へた?)」コーナー

さらにうまい下手の観点で土器を見比べようとする大胆なコーナーも。

さらに内側の見えない場所にドングリが埋め込まれている土器も展示し、一体何のために縄文人たちがそのようなことを行ったのかを問いただす試みも行っています。(焼く時に割れるように仕掛けた陰謀ではないかというお話が。)


「縄文人のゴマカシ」コーナー
*回転台で土器が動き、「ゴマカシ」た部分が現れます。


極めつけは文様の崩れた失敗作(?)です。そしてそれを縄文人が一生懸命にごまかして取り繕うとしようとしていたのではないか、ということも合わせて紹介。


「土偶」

ともかく縄文の作り手たちがどのように土器を作り、また使ったのかを考えていくような展示が繰り広げられているわけです。

また特徴としては岡本太郎の引用があること。彼の撮影した縄文土器の写真の他、絵画や立体作品も出品。いわゆる縄文を発見した岡本太郎を通して、現代の我々が如何に縄文に向き合い、また何を引き出すのか。そうしたことにも目を向けさせられます。


勝坂土器の標式資料

ラストには勝坂遺跡を最初に調査した大山柏の業績と、勝坂土器の標式資料(型式の基準となる土器)も展示。実は勝坂土器の標式資料の多くは二次大戦で焼失したとも言われていましたが、この度、改めて調査研究。標本の15点のうち10点を確認することに成功しました。


縄文土器との撮影スポット

入口では本物の縄文土器との撮影スポットも。何と写真は無料でいただけるという太っ腹サービス、さらに入場料でいただける解説冊子も豪華。また会場にはムササビの標本が飛んでいたり、手書きのキャプションがあったりと、ともかく至れり尽くせりのおもてなしです。


縄文土器類タッチコーナー

なお本展企画で神奈川県埋蔵文化財センターの千葉毅さんのギャラリートークが抜群に面白い!(この日も聞きました。)参加されることをおすすめします。

「ギャラリートーク・親子向けギャラリートーク」
日程:1月6日(日)、1月19日(土)、1月26日(土)、2月3日(日)
ギャラリートーク 14:00~14:45
親子向けトーク  11:00~11:30


歴史博物館で千葉さんのトークを聞けるチャンスはあと一回、2/3(日)だけです!


本展企画者で神奈川県埋蔵文化財センターの千葉毅さん

まさに土器を新たな切り口で世に問う「見て楽しい」展覧会。小規模ではあるものの、それこそ従来の考古展の在り方に一石を投じた意欲的な企画ではないでしょうか。


勝坂縄文展入口

2月7日まで開催されています。ずばりおすすめします。*本展終了後、相模原市立博物館(2/16~3/20)へと巡回。

「平成24年度かながわの遺跡展・巡回展 勝坂縄文展」 神奈川県立歴史博物館
会期:2012年12月15日(土)~2013年2月7日(木)
休館:毎週月曜日。(祝日の場合は開館。)年末年始(12/28~1/4)。資料整理休館日(1/29)。
時間:9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300(250)円、学生200(150)円、高校生・65歳以上100(100)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:横浜市中区南仲通5-60
交通:みなとみらい線馬車道駅3・5番出口徒歩1分。横浜市営地下鉄関内駅9番出口より徒歩5分。JR線桜木町駅、関内駅より徒歩10分。

注)写真は受付にて博物館の許可を得て撮影したものです。
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「ミヤケマイ新作版画展 七日の猫」 村越画廊

村越画廊
「ミヤケマイ新作版画展 平成版・新七節句 七日の猫」
1/21-2/1



村越画廊で開催中の「ミヤケマイ新作版画展 平成版・新七節句 七日の猫」へ行ってきました。

日本人が古くから大切にしてきた節句。とくに人日(1/7)、上巳(3/3)、端午(5/5)、七夕(7/7)、重陽(9/9)の節句は今でも様々な習慣が残りますが、そこに今回、お花見とクリスマスを追加。気鋭の現代美術家ミヤケマイが新七節句として浮世絵に提示しました。

というわけで、展示されているのは、新七節句の浮世絵たち。しかもそこには「猫ずくし」としていずれもにゃんこの姿が。

猫の浮世絵と言えば国芳が有名ですが、ミヤケマイはそれを身近な季節のモチーフ、さらには現代の習慣や生活に引き寄せて表しているのです。


「七日の猫」睦月・弥生

いくつか作品をご紹介。まずは一年のはじまりである睦月から。「目出鯛」の語呂合わせとしてお馴染みの鯛が登場。それを猫が今にもぺろりと口にくわえようとする様子が描かれています。


「七日の猫」文月

また文月では涼し気な金魚の風鈴に七夕の短冊が。それを黒猫がじっと見やるポーズをしています。(右下には虫かごも。)

さらに長月では美しい菊の飾りとともに、スタバのコーヒーカップを側に筆を構えて座る猫の姿が。秋の夜長に文を認めたであろう昔の人々に思いを馳せています。


「七日の猫」長月・師走

そして私の一推しが師走。これぞ五節句に追加されたうちの一つであるクリスマス。


「七日の猫」師走(拡大)

何と猫の前にはサンタクロースがいるではありませんか。


「七日の猫」卯月(拡大)

またもう一つ加わった節句の卯月、つまりお花見も機知が。満開の桜に提灯を掲げる猫ちゃんたちの可愛いこと可愛いらしいこと。まさに猫ずくしです。

なお今回の浮世絵、全てミヤケマイの作画の元、アダチ版画研究所が彫師、摺師の手を経て、作品に仕上げましたが、随所にきめ出しやキラ摺といった、木版独自の技法が取り入れられているのもポイントです。

よって版画自体の高い質感も見ておきたいところ。少し角度を変えると確かにキラキラと浮き上がってきました。


「七日の猫」文月(拡大)

それに版画はもとより空間、とりわけさり気なく置かれた立体との関係にも注目。猫の前にネズミのぬいぐるみがだらりと吊るされていたりします。

ちなみに「七日の猫」とは、長生きの猫は化けたりしっぽが七本生えるという言い伝えに由来するとか。七つの季節での猫の七変化。平成版猫ずくし。ミヤケマイならではの可愛らしさとウイットに富んだ世界。是非とも体験してみて下さい。



なお作家は3月のアートフェア東京にも出品。村越画廊のブースで、聞くところによると新作の厨子もお目見えするとか。期待大です。

アートフェア東京2013
会期:2013年3月22日~24日
会場:東京国際フォーラム 展示ホール 村越画廊ブース

羽鳥書店から決定版となる作品集「膜迷路」(まくめいろ)も発売中です!

「膜迷路/ミヤケマイ/羽鳥書店」

2月1日まで開催されています。

「ミヤケマイ新作版画展 平成版・新七節句 七日の猫」 村越画廊
会期:1月21日(月)~2月1日(金)
休館:毎週日曜日
時間:10:00~19:00(土曜日は18:30まで。)
住所:中央区銀座6-7-16 岩月ビル8階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B5出口から徒歩2分。JR線有楽町駅徒歩7分。
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「エル・グレコ展」 東京都美術館

東京都美術館
「エル・グレコ展」
1/19-4/7



東京都美術館で開催中の「エル・グレコ」展のプレスプレビューに参加してきました。

16世紀から17世紀にかけてのスペイン絵画黄金期に活躍したエル・グレコ(1541~1614)。独特の劇的ともいえる宗教画、日本でも大いに人気のあるところかもしれません。


「エル・グレコ展」展示室風景

そのグレコの業績を今までにない規模で紹介する回顧展が東京都美術館で開催中。油彩50点の集結する様はまさに圧巻。実はグレコも私が美術を見始めた頃に好きになった画家の一人ですが、ともかくこのスケールの展覧会に接せられただけでも感無量でした。

構成は以下の通りです。

第1章-1 肖像画家エル・グレコ
第1章-2 肖像画としての聖人像、見えるものと見えないもの
第2章  クレタからイタリア、スペインへ
第3章  トレドでの宗教画:説話と祈り
第4章  画家にして建築家:近代的芸術家の祭壇画制作


さて冒頭は肖像画から。確かにグレコというと、あの引き伸ばされた聖人たちの登場する宗教画というイメージがありますが、そもそも彼は画業の初期から肖像画を得意としていました。


左:「燃え木で蝋燭を灯す少年」1571-72年頃 コロメール・コレクション

うち興味深いのがこちらの一枚、「燃え木で蝋燭を灯す少年」。暗がりの中に浮かび上がる蝋燭の灯りと息を吹きかける少年、例えればラトゥール画を連想させはしないでしょうか。

また肖像画の傑作として知られるのが、「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」。モデルの息遣いが伝わってきます。


右:「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」1611年 ボストン美術館

実は当時のスペインにおいて肖像画のモデルは王侯や貴族が殆どでしたが、グレコは聖職者や大学教授など、知的階級層にも着目。友人であったという修道士をグレコ一流のタッチで描きました。

さて宗教画へと進みましょう。まずはグレコに特徴的な半身聖人像、そして聖家族などのモチーフから。


左:「悔悛するマグダラのマリア」1576年頃 ブダペスト国立西洋美術館

ここではともかく「悔悛するマグダラのマリア」が圧巻です。対抗宗教改革時のスペインで好まれ、グレコも繰り返し描いたモチーフですが、マリアの姿はもとより、上へと視点を誘導する空に後方へと広がる海、そして全体を包み込む青みを帯びた表現と、実にドラマティックな情景を展開。

グレコ画というと人物に着目してしまいますが、この背景の意外なほどの広がりと奥行き感もまた、彼の作品を特徴付ける要素といえるのかもしれません。

さてグレコ、スペインの画家として知られていますが、言うまでもなく出身はギリシャ。本名はドメニコス・テオトコプーロス、グレコとは「ギリシャ人」という意味です。35歳の頃にクレタ島からヴェネツィアを経由して、スペインはトレドへと移り住みます。


左:「聖母を描く聖ルカ」1563-65年頃 ベナキ美術館、アテネ

この「聖母を描く聖ルカ」は現存するグレコ最初期、クレタ島時代のもの。何とも珍しいテンペラです。


右:「受胎告知」1600年頃 ティッセン= ボルネミッサ美術館、マドリード
左:「受胎告知」1576年頃 ティッセン= ボルネミッサ美術館、マドリード


またイタリア時代とスペイン時代の画風の違いについても注目。とりわけ2点の「受胎告知」は興味深いのではないでしょうか。

まずはローマ時代の最後を飾る左の「受胎告知」。ガブリエルと対峙した安定感のある構図にはルネサンス絵画の伝統を思わせながらも、空間は聖人の背後へと広がり、荘厳かつ雄大な風景を展開しています。


右:「受胎告知」1600年頃 ティッセン= ボルネミッサ美術館、マドリード

そしてそれから時代が下り、トレド時代の「受胎告知」はグレコの真骨頂。この渦巻く雲にうごめく聖霊、そして輝ける閃光。ただならぬ気配と渾然一体とした空間。実に劇的です。

またグレコは個人が祈りを捧げるための祈念画を多く制作しましたが、展示ではそれについても紹介。何でもグレコの工房には小さめの画布に油彩で描いたオリジナルがあり、客はそれを見本として選び、自らのバージョンとして制作してもらっていたとか。


左:「十字架のキリスト」1610-14年頃 国立西洋美術館、東京

西美常設でお馴染みの「十字架のキリスト」も出品中。これこそ私のグレコ体験の一番初めの作品ですが、会場ではさらに別バージョンの同作も展示されています。


左:「十字架のキリスト」1600-10年頃 ゲッティ美術館、ロサンゼルス

先の受胎告知しかり、同テーマの作品をいくつか見比べられるのも回顧展ならではの醍醐味だと言えそうです。

さて展覧会中の最大の目玉でつ、グレコの画業の核心へと進みましょう。 堂々登場、最晩年の傑作として名高い「無原罪のお宿り」です。


「無原罪のお宿り」1607-1613年 サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)、トレド、スペイン

高さは何と約3.5メートル。まさに幻影的でありながらも、眼下にはトレドの街並みを望むなど、現実世界とも融合。そこに井戸や鏡、泉に蛇など、この画題に頻出する宗教的モチーフを配しています。

グレコはカトリックの画家としては極めて「近代的」。(本展監修者のフェルナンド・マリーアス談。)当然ながら絵画を独立した芸術として崇めながらも、空間の中にどう表現するかということにも注目しました。

そもそもこの「無原罪」の祭壇衝立自体もグレコの設計。他にも教会建築の空間設計を幾つか手がけています。


「無原罪のお宿り」1607-1613年 サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)、トレド、スペイン

やはりグレコ画は教会で祭壇を見上げるように下から眺めるのが一番。まさに天へと駆けるような上昇するエネルギーを感じはしないでしょうか。


左:「受胎告知」、中央:「聖母戴冠」、右:「キリスト降誕」1603-05年 カリダード施療院、イリェスカス

生前は名声を得ながらも、死後忘れられ、19世紀末になってようやく復活したグレコ。写実を超えて求めた劇的表現。その先取性。単体で見る機会こそあれども、これほど多面的に画業へ踏み込んだ企画もありません。 まさに一期一会。是非見ておきたい展覧会であると言えそうです。



なお会場では中学生までを対象に「スケッチボード」も貸出中。このボードを片手にグレコ画をスケッチ出来ます。お子さんと一緒に楽しんではいかがでしょうか。(中学生以下は観覧無料です。)

「もっと知りたいエル・グレコ/大高保二郎・松原典子/東京美術」

4月7日まで開催されています。おすすめします。

「エル・グレコ展」 東京都美術館@tobikan_jp
会期:1月19日(土)~ 4月7日(日)
休館:月曜日。2月12日(火)。但し2月11日(月)は開館。
時間:9:30~17:30 *金曜日は20時まで。
料金:一般1600(1300)円、学生1300(1100)円、高校生800(600)円、65歳以上1000(800)円。中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *毎月第3土・翌日曜日は「親子ふれあいデー」。18歳未満の子を同伴する保護者は一般当日料金の半額。但し都内在住に限る。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「第7回 shiseido art egg 久門剛史展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第7回 shiseido art egg 久門剛史展」 
1/8-1/31



今年もアートエッグの季節の到来です。資生堂ギャラリーで開催中の「第7回 shiseido art egg 久門剛史展」へ行って来ました。

毎年、年明けから行われる公募制の新進アーティスト紹介プログラム、資生堂アートエッグ。

今年も1月から3月末までの間、各1ヶ月毎に会期を区切り、3名のアーティストを個展形式で紹介。インスタレーションを中心とした展示が繰り広げられます。

その第一弾を飾るのが久門剛史。1981年に生まれ、2007年に京都市立芸術大学大学院を修了。音や光を素材に用いて、半ば日常に潜む美意識を拾い取るアーティストです。

というわけで、今回も音や光に注目。まずはお馴染みのギャラリーへ向かう階段を地下に降りてみましょう。

まず踊り場には紙によって出来た時計、「sumdays」が。秒針が時を刻みながら動くこの時計、一体何だろうか。そう思いながら、メインの地下フロアに降りてみました。

するとさながら舞台装置。屋根の付いた小屋が設置されているではありませんか。そしてそこにはコタツなども。また床にはおもむろにゴミ箱なども置かれています。

また空間全体には女の子のつぶやく声やセミの鳴き声などが断片的に流れています。

そして奥の展示室に目を向けましょう。そこにも同じくセット、古びた事務机などがぽつんと。またここでも目覚まし時計や電車の音などが突如、鳴り響き、それが随所に設置されたライトの灯りと呼応します。ようはセットと音で何らかのストーリーを紡ぐような仕掛けとなっているわけなのです。

いわば日常の微細な変化や出来事を、シンプルな仕掛けで気がつかせる久門。展示は全くをもって説明的ではありませんが、だからこそ喚起される微細な感覚、意識。常日頃、いかにそうしたものを切り捨てモノを見ているのかが良く分かります。

その切り捨ててしまっている何気ない普段の意識や感覚。初めの時計に戻りましょう。

あえて答えには触れませんが。文字盤の先にある小さなルーペを覗くと驚きの光景が広がっています。

これもモノがいかに見えていないかと思わせる一つの仕掛け。感覚が研ぎすまされはしないでしょうか。時を刻む秒針から、まさかこのような印象を受けるとは思いませんでした。

時間がある時にゆっくり向き合いたい展示です。



【第7回 shiseido art egg 展示スケジュール】
久門剛史展  1月8日(火)~31日(木)
ジョミ・キム展 2月5日(火)~28日(木)
川村麻純展  3月5日(火)~28日(木)

1月31日まで開催されています。

「第7回 shiseido art egg 久門剛史展」 資生堂ギャラリー
会期:1月8日(火)~31日(木)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)/11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「富田菜摘展 うれし・たのし・今日このごろ~いきものワールド」 佐藤美術館

佐藤美術館
「富田菜摘展 うれし・たのし・今日このごろ~いきものワールド」
1/11-3/3



佐藤美術館で開催中の富田菜摘個展、「うれし・たのし・今日このごろ~いきものワールド」へ行ってきました。

何やら楽し気なタイトルの「うれし・たのし」に「いきものワールド」。一体、美術館にはどのようないきものたちが待っているのか。ともかくは期待に胸を躍らせながら会場へ入ってみました。


富田菜摘展展示室風景

というわけで、まずこちらから。何やら巨大な亀やら古代の生き物とも付かぬ不思議な動物たちが闊歩しているではありませんか。

さてこれらは何で出来ているのか。いくつかの動物たちへ近づいてみましょう。


「寿晴」・「朝子と晴」2012年

こちらは夫婦親子猿?、実に可愛らしい格好をしていますが、身体の部分には扇風機のカバーなどが用いられていることが分かります。


「フランキー」2012年

また「フランキー」と名付けられた動物、頭に被っているのはオムレツの型を押す器でしょうか。また身体にもまた扇風機のカバーが。


「大洋」2012年

もっと分かりやすいのが「大洋」と呼ばれる亀。BOSS缶にKEYコーヒーの缶などパーツも。


「スイミー」(32匹)

さらに宙にはMAXコーヒー缶の魚が気持ち良さそうにプカプカと浮かんでいます。そうです。これらはいずれも廃材や廃品。ようは折れた傘に自転車のパーツ、家電ゴミや空き缶などで出来ているのです。

いわゆるゴミに新たな命を与えてみせる富田菜摘。生き生きとしながらも、どこかホットさせられるような表情をした動物たちからは、作家のモノに対する温かい眼差しを感じはしないでしょうか。


「家守」(100匹)

また先に触れた亀には「大洋」というタイトルが付けられていましたが、これも富田のモノといきものに対するスタンスの表れ。つまり彼女はモノをそれこそ我が子のように慈しんでいるのです。

そしてもう一つ別の廃材を使った新シリーズも。それが「さんざん待たせてごめんなさい」と呼ばれる連作です。


「さんざん待たせてごめんなさい」2008~2010年

こちらの素材は古新聞と古雑誌。まさに「今日このごろ」ならぬ、今の世相を反映した街の人々の姿を等身大で表現。さらにランダムながらも一列に並べることで、何らかの物語を喚起させるようなイメージを作り上げています。

またこの作品で面白いのは素材の紙と人物との関係です。



例えば最後尾の今時の若い女性とその手前の親子連れの二人。



女性にはおそらくファッション紙を切り抜きを使用。モデルの素材と媒体との関係が明らかにされています。



そしてドキリとさせられるのがこの母子。二人でマスクをしている姿、何故そうなのかは子どもの身体を見れば一目瞭然。かの原発事故に由来する放射能の問題を扱っているのです。

どのような雑誌や新聞でどうした人物を作るのか。そこに作家、富田の社会への視座と風刺精神を見て取ることが出来るのではないでしょうか。


「終電の総武線」2010年

小品の「終電の総武線」も傑作。酔いつぶれて寝ているサラリーマンのお腹には「働きすぎ飲みすぎ」やら「ポッコリ下腹が」の文字も。(我が身を振り返らなくては!)


「終電の総武線」(拡大)2010年

廃材を用いて広がる創造性に満ちた世界。富田は1986年生まれの若いアーティスト。作品は楽しくも機知に富んでいます。時間を忘れて見入ってしまいました。

3月3日までの開催です。ずばりおすすめします。

「富田菜摘展 うれし・たのし・今日このごろ~いきものワールド」 佐藤美術館
会期:1月11日(金)~3月3日(日)
休館:毎週月曜日。但し1/14、2/11は開館。翌日休館。
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。
料金:一般500円、大学・高校生300円。*「200円割引券」(PDF)
住所:新宿区大京町31-10
交通:JR線千駄ヶ谷駅より徒歩5分。JR線信濃町駅より徒歩6分。都営大江戸線国立競技場駅A3出口より徒歩5分。
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「福永敦 ハリーバリーコーラス」 アサヒ・アートスクエア

アサヒ・アートスクエア
「福永敦 ハリーバリーコーラス─まちなかの交響、墨田と浅草」
1/12~2/3 



アサヒ・アートスクエアで開催中のオープン・スクエア・プロジェクト、「福永敦 ハリーバリーコーラス─まちなかの交響、墨田と浅草」へ行ってきました。


会場は炎のオブジェで有名なスーパードライホール。(浅草・吾妻橋)

2011年よりアサヒ・アートスクエアが行っているアーティストサポート事業「オープン・スクエア」。公募で選ばれたアーティストが吾妻橋の同スペースを用い、作品を発表。第一弾となった昨年の北川貴好のフロアランドスケープも実に興味深いものがありました。

今回、第二弾に選ばれたのは、1980年に生まれ、ベルリン在住の福永敦。音や音声をテーマに様々な作品を展開しているアーティストです。

というわけで、本展のテーマもずばり音。演劇やダンスで利用される機会の多いというスクエア内の音響設備を駆使し、いわゆるサウンドインスタレーションを展示。これがシンプルながらも実に創造性に満ちた仕掛けとなっています。


「福永敦 ハリーバリーコーラス」展示風景

では早速、会場へ。真っ暗の空間にぽつぽつと点在するスポットライト、そして椅子に、天井から吊るされた小さなスピーカー。何とか目を凝らしても見えてくるのは、ただそれだけです。

しかしながら当然、重要なのはスピーカーから出る音。写真やテキストでは伝えにくいのですが、ともかくいずれも人の音声でブルブルやらピヨピヨやらカアカアやらガタンガタンなどの音がランダムに自在、あちこちから発せられていることが分かります。

さてこの音は一体何なのか。

種明かしをしてしまうと、それらは全て擬音語、擬態語。ようは動物なり人なり機械の発する音などを字句で模倣、それを改めて音声に吹き替えて会場に流しているのです。

しかも元ネタとなる音はいずれもタイトルにもあるように「まちなか」の音、つまり作家の福永が浅草や墨田区内で採取した音に他なりません。

それにこの音が驚くほど多種多様。犬の鳴き声のワンワンにどこかのチャイムがキンコンカンコンと鳴る音、さらには「たけやーさおだけー」に店先の「いらっしゃいませ」、そして駅の「電車が参ります」のアナウンスなど数百、あるいはそれ以上あるのではないかと思うほど。

しかもそれらがサラウンドとして空間全体でリンク。一見バラバラな音が緩やかに調和。一種のオーケストラサウンドともいうべき不思議な音響空間を作り出しています。

もちろん音場は会場内、どこに立つか座るかで変化します。ともかく歩き回って聞いていると、一度たりとも同じ音響になりません。

さらに音の源は何なのか、またどこで取られたのかと想像しながら聞くのもスリリングです。



なお別室では採取された音がマップで公開。また解説シートでは音声ファイルも紹介されています。



通常、街のノイズとなり得る騒音の一つ一つに生き生きとした表情がある。擬音、擬態語の奏でる豊かなハーモニー。思わず時間を忘れて聞き入ってしまいました。



会期中にはトーク、またダンスパフォーマンスも予定されています。

【クロストーク】
1月26日(土)15:00 ゲスト:村井啓哲(本展テクニカルアドバイザー/アーティスト)
2月1日(金)19:30 ゲスト:西野達(アーティスト)
2月2日(土)15:00 ゲスト:北川貴好(美術作家)、泉太郎(美術作家)
 *各回約90分。福永敦がゲストと一緒に展覧会について語り合います。要入場券。

ダンスパフォーマンス Dance in the dark 2013】
2月2日(土)/2月3日(日)20:00 ~
料金:予約1500円、当日1800円、学生1000円
構成演出:福永敦、畦地亜耶加
出演:斉藤栄治、兼盛雅幸、寺杣彩、畦地亜耶加
 *展覧会チケットを提示すると500円引。事前予約はアサヒ・アートスクエアまで。

一度チケットを購入すると何度でも再入場可能です。こちらに参加するのも楽しいのではないでしょうか。

Asahi Art Square Open Square Project: Atsushi Fukunaga Exhibition preview


2月3日まで開催されています。

「オープン・スクエア・プロジェクト 福永敦 ハリーバリーコーラス─まちなかの交響、墨田と浅草」 アサヒ・アートスクエア@AsahiArtSquare
会期:1月12日(土)~2月3日(日)
休館:毎週火曜日、および1月27日(日)。
時間:11:00~19:00
料金:一般500円、高校生および18歳未満無料。(会期中再入場可)
住所:墨田区吾妻橋1-23-1 スーパードライホール4階
交通:東京メトロ銀座線浅草駅4、5番出口より徒歩5分。都営浅草線本所吾妻橋駅A3出口より徒歩6分。東武線浅草駅より徒歩6分。
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「鈴木基真:Cinematic Orchestra」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「鈴木基真:Cinematic Orchestra」 
1/8-1/29



LIXILギャラリーで開催中の鈴木基真個展、「Cinematic Orchestra」へ行ってきました。

1981年に静岡で生まれ、2004年に武蔵野美術大学の造形学部を卒業。2008年には岡本太郎現代美術大賞にも入選した鈴木基真。2010年のTSCA(タクロウソメヤコンテンポラリーアート)での個展をご記憶の方も多いかもしれません。

ともかく鈴木と言えば木彫、しかも風景、それをジオラマ的に展開。シンプルながらも、どこか郷愁を誘うような独特の景色を表しています。

その彼がリクシルへ。魅惑的な展示です。まさに百聞は一見に如かず。ともかくジオラマを見てみましょう。



というわけでご覧の通り。木製の台の上には樹木や家屋、そして自動車に観覧車など、都市から田園を行き来する風景が広がっています。



さて、その建物や車なりを一つ一つを追っ掛けていくもの楽しいかもしれませんが、彼のジオラマの素材には一つ、大きな特徴があります。



それはいずれもアメリカ映画に登場する風景をピックアップしていることです。そこに登場する建物なりを楠の木で表現。しかも縮尺は自在の上、作品相互の配置も全て作家の感性のおもむくままに置かれています。



さらに作品は全て高さ150センチほどの台の上に置かれているのも興味深いところ。下から見上げつつ、視線を台に平行、また上から俯瞰しながらと、景色を様々な角度、高さから楽しむことが出来ます。

また独特の距離感のある鈴木のジオラマ世界から、例えばアメリカの西部、荒野や砂漠に点在する都市を連想するのは私だけでしょうか。



広大な地平の上にぽつぽつと間隔をあけて群がる建物。いずれも人は不在ですが、ざっくりと象られた木彫に由来するのか、どこか温かみがあるのもまたポイントかもしれません。



車が柵を突破しています。風景の全体は「静」が支配していますが、時折、こうした動きが表現されているのも面白いところです。

1月29日まで開催されています。

「鈴木基真:Cinematic Orchestra」 LIXILギャラリー
会期:1月8日(火)~1月29日(火)
休廊:日・祝
時間:10:00~18:00
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分。
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「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」
2012/10/1~2013/2/24



東京ステーションギャラリーで開催中の「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」へ行ってきました。

東京駅丸の内駅舎の復原工事により2006年から休館中だった東京ステーションギャラリー。長期に渡ってのクローズとなりましたが、昨年の工事終了により再オープン。スペースを完全に一新しての新たな美術館へと生まれ変わりました。


本城直季「small planet tokyo-station」2004年

そのお披露目第一弾となるのが「始発電車を待ちながら」。意外や意外、現代アートのグループ展です。9名のアーティストが「東京駅」あるいは「鉄道」に視点を据え、インスタレーションの他、様々な表現をもって展開。体感的に楽しめるような内容となっていました。

というわけでまずは掴み抜群のパラモデルから。展示室のホワイトキューブの床面から天井、さらに壁面の全てを駆使しての、実に大胆なインスタレーションが行われています。


パラモデル「パラモデリック・グラフィティ」2011年

これが画像では何ともお伝えしにくいのですが、ともかく青いプラレールが空間を縦横無尽、雪山を縫って進み海岸線へと到達。増殖に反復、そして接続、全体として巨大なモミュメントのような空間が実現。見ているだけでワクワクさせられるような作品です。

さてそのようなワクワクな高揚感、さらにより高めてくれるのがクワクボリョウタのインスタレーション。いわゆる影絵の作品ですが、これが大変に感動ものです。


クワクボリョウタ「10番目の感傷(点・線・面)」2006年

これもまたテキストにすると分かりにくいかもしれませんが、小さな模型の鉄道が暗室を走り、そのヘッドランプで照らされた部品が驚くべき風景を映し出すというもの。

The Tenth Sentiment / 10番目の感傷(点・線・面)


実にシンプルな仕掛けながらも、幻想的でかつスピーディーに、またゆったり移りゆく影絵の美しさと言ったら比類がありません。これ一点でも来た甲斐があったというものでした。

さて東京駅の駅舎、また周辺の都市風景に着目したのは柴川敏之。様々なモノを絵画の手法を用いて化石へ。それを駅舎の煉瓦と呼応させる形で展示しています。


ヤマガミユキヒロ「Sheltering Sky」2011年

またヤマガミユキヒロも東京駅がテーマ。まず構内の風景を描き、そこに同じ場所で撮影した動画を投射。絵画と映像の双方から東京駅に新たなイリュージョンを現出させます。


廣瀬通孝「Sharelog」2006年

写真、映像、インスタレーション。多様なジャンルを東京駅や鉄道のテーマの元に集約。テーマ性と作品自体の双方で味わえる展示です。思いの外に楽しめました。

ステーションギャラリー、壁面の煉瓦を除いては、かつての面影はありませんが、今後の展開にも注目したいと思います。

【展覧会スケジュール】
「始発電車を待ちながら」       2012/10/1~2013/2/24
「木村荘八展(仮)」         2013/3/23~5/19
「エミール・クラウスと印象派展(仮)」2013/6/8~7/15


なおオープン当初は入場のために整理券が必要でしたが、現在は不要です。館内も特に混雑することなく、比較的静かな環境で見ることが出来ました。

東京ステーションギャラリー「始発電車を待ちながら」


2月24日まで開催されています。

「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー
会期:2012年10月1日(月)~2013年2月24日(日)
休館:月曜日。但し12/24、1/14、2/11を除く。(翌火曜日は休館。)年末年始(12/29~1/1)。
料金:一般500円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は100円引。
時間:平日11:00~20:00、土・日・祝10:00~18:00
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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東洋館リニューアルオープン

東京国立博物館
「東洋館リニューアルオープン」
1/2~3/31



東京国立博物館で開催中の「東洋館リニューアルオープン」へ行ってきました。

2009年より耐震補強工事のために長らく全面休館していた東京国立博物館の東洋館。かねてより国内随一の質と量の東洋美術品コレクションには定評がありましたが、展示の手法にはやや物足りなさを覚えたのも事実。大変失礼ながら東博へ行っても一番に足が向くことがありませんでした。


東洋館外観全景

しかしながらこのリニューアルで一新。谷口建築をほぼそのままながらも、全面的に入れ替わったLED照明、またケースの効果か、まさに見違えるような内容となっています。


1室「中国の仏像」(1階)

まずは1階スペースから。エントランスに東洋館関連のグッズなり書籍を扱うミュージアムショップが新設。その横の展示室は「中国の仏像」です。ここでは中国の長安の寺に祀られていた7~9世紀の仏像などがずらりと並んでいます。


1室「中国の仏像」(1階)

ともかく第一印象は明と暗、その際立ったコントラストです。空間全体の照明はかなり落としつつも、作品はぐっと明るく際立って浮かび上がっています。


「舎利容器」6-7世紀 中国・スバシあるいはクムトラ石窟 *3-2室「西域の美術」(2階)

また新たな照明は作品自体の細部だけでなく、色の美しさも巧みに引き出しています。例えば6世紀頃の中国の「舎利容器」、この細かな意匠と色の美しさと言ったら比類がありません。


3-3室「西アジア・エジプトの美術」(2階)

かつて東洋館で見ていたはずの作品が、この新たな空間の力を借りて一変。ともかくより美しく、また輝いていました。


5-1室「中国の青銅器」(3階)

さて展示のガラスケースも一新。ドイツグラスバウハーン社製、写り込みも殆どありません。


5-1室「中国の青銅器」(3階) 青銅器独立展示ケース内

その極めつけは「中国の青銅器」から扇形の独立ケース。まるでガラスの宝石箱のようではありませんか。


「揺銭樹」1-2世紀 中国四川省あるいはその周辺 *5-1室「中国の青銅器」(3階)

なお照明は作品の近くやケース内部ではなく、殆ど天井から当てられています。作品と照明との距離があるにもかかわらず、まさかこれほど美しく見えてくるとは思いもよりません。


「白磁瓶」19世紀 朝鮮 *10-3室「朝鮮の陶磁」(5階)

大好きな白磁もご覧の通り。また写真では分かりにくいかもしれませんが、さり気なく東洋館のコレクションで特に充実していた中国絵画も前の展示とは見違えます。ともかく絵画の色に形が際立っていました。


8-1室「中国の絵画」(4階)

さて東洋館、以前は1階から5階の5層での展開でしたが、リニューアル後はスペースも拡大。地下に展示室が加わりました。


12-2室「インド・東南アジアの考古」(地下1階)

こちらはクメール彫刻に東南アジアの金銅像、またインドの細密画や染織など。特にクメールと細密画はこれまで限定的にしか公開されていなかったそうです。


「ワヤン・クリ・ドゥルユドノ」他 20世紀 インドネシア *13-3室「アジアの民族文化」(地下1階)

スペースが拡大したことでより厚みを増した東洋館の展示。10世紀インドネシアのワヤンと呼ばれる絵人形の他、色鮮やかなインドの染織などにも惹かれる方が多いのではないでしょうか。

さらに地下には「TNM&TOPPANミュージアムシアター」も資料館より移設。現在はVR作品「アンコール遺跡バイヨン寺院-尊顔の記憶」と「洛中洛外にぎわい探訪 舟木本屏風を歩く」を上映中です。*有料化されました。


「官服」他 19世紀 朝鮮 *10-5室「朝鮮時代の美術」(5階)

ちなみに館内の空間こそそのままですが、設備面では一部大きく変化しています。その最たるものが新設されたシースルーエレベーターです。以前もエレベーターが設置されていましたが、全てのフロアに停車せず、時に移動に階段を必要としました。

その階段は残っていますが、シースルーエレベーターは全てのフロアに停車。エレベーターで行き来可能です。


3階屋外テラス

なお細かなことですがトイレも全面更新。また3階からは屋外テラスへも出られるようになりました。


東洋館内部全景

またお馴染み青い日記帳のTakさんが、東洋館のリニューアルの照明と展示デザインを担当された木下史青さんにインタビューをして下さいました。必読です。

「木下史青氏に聞く東洋館リニューアルのポイント」@青い日記帳

それにしても谷口建築のスペースはそのままにしながら、照明とケースを一新することで、これほど見違えるとは思いませんでした。


「柩」10世紀 カンボジア・プラサート・スララウ *11室「クメールの彫刻」(地下1階)

東博の主役はしばらく東洋館。先日スタートした円空展、そして22日からは平成館で王羲之展も始まりますが、東洋館もお見逃しなきようおすすめします。


3階屋外テラスより東京国立博物館全景

東京国立博物館の東洋館は1月2日にリニューアルオープンしました。

「東洋館リニューアルオープン」 東京国立博物館
会期:2013年1月2日(水) ~ 2013年3月31日(日)
休館:月曜日。(祝祭日の場合は開館。翌火曜日休館。)
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。特別展との共通券あり。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) 
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「WEBイベント 2013年美術展を語る」を開催しました

昨年末、当ブログ上でもご参加を受付したWEBでの美術展座談会、「WEBイベント 2013年美術展を語る」。



【史上初!のWEBイベント『2013美術展を語る』】
開催日時:2013年1月13日(日) 10:00~11:00
 *開始時間の10分前から指定したwebサイトにログインしてください。
出演:「青い日記帳」Takさん、@mikarineさん、はろるど。
内容:1. 2012年の展覧会を振り返って
   2. 2013年の展覧会について
   3. 展覧会の情報をみんなに知らせよう!

大変有り難いことに60名もの方にご参加いただき、今日、1月13日(日)、終えることが出来ました。ご参加いただきどうもありがとうございました。

イベントの趣旨はともかくWEB、しかもチャットなどを通し、限りなく双方向の形にて、昨年の展示を振り返りつつ、今年の展覧会をご紹介しようとするもの。



まずは「2012年の展覧会を振り返って」と題し、事前の申込時にしていただいたアンケートから、昨年良かった展覧会をリストアップ。



1位に同票で「ボストン美術館 日本美術の至宝」と「蕭白ショック」展が。昨年は蕭白イヤーであったお話などをさせていただきました。

また今回はクローズのイベントということで、あまり普段聞けないようなことも。思い切ってあまり印象に残らなかった展覧会もリストアップ。こちらもチャットなどを通して皆さんの忌憚なきご意見を頂戴しました。



後半は「2013年に期待している展覧会」と「あなたが好きな美術館」のコーナー。また本システムの大きな特徴としてリアルタイムでのアンケートも可能です。というわけで、トーク中も例えば「ベーコンを知っていますか。」や「フランスのクリュニー美術館へ行ったことがありますか。」などのアンケートを実施。



また東北三巡回のプライスコレクション展、「若冲が来てくれました」についても大きな期待が。やや駆け足気味だったかもしれませんが、諸々ご意見を伺うことも出来ました。

ラストの「好きな美術館」編では、あえて挙がった美術館のウィークポイントをチャットで。カフェのお話から美術館での食事についてなど、とりとめのない雑談なども。ともかくチャットで率直なご意見をいただけたのが嬉しかったです。


テレビ会議・Web会議の「ブイキューブ」

さて今回はWEB会議システムの「V-CUBE」というシステムを利用しました。スタジオの中目黒から放送。使い勝手など、ご参加された方は如何だったでしょうか。



本システムの特徴としてはユーストリームなどと違いクローズであること。また画面上に図版資料を掲載出来る上、先にも触れたアンケートやチャットがリアルタイムで行えることです。

システムとしてはかなり完成されているようでしたが、ご覧いただいている方からは、途中、回線や音声が途切れたなどというご指摘をいただきました。

折角の休日、お申込いただきながら、回線やシステムの不具合などでお聞きいただけなかった方、また何度もログインするなどの手間をかけてしまった方、本当に申し訳ありませんでした。深く深くお詫び致します。

さて最後に一つ。告知段階でもトーク中でもお話致しましたが、今回はともかく実験的な企画です。多くの改善点を踏まえて次回へ活かす。例えばこのツールを利用し、あくまでも視聴者と双方向の形にて美術家や専門家の方のお話を聞くようなWEBイベントが出来れば思っています。



なおイベントの様子は後日、アーカイブとして公開されるそうです。率直なところ「残る」となると、かなり恥ずかしいのですが、またご覧いただければ嬉しいです。

それでは「WEBイベント 2013年美術展を語る」、ご参加下さりありがとうございました!
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「川俣正 Expand BankART」 BankArt Studio NYK

BankArt Studio NYK
「川俣正 Expand BankART」
2012/11/9~2013/1/14



BankArt Studio NYKで開催中の「川俣正 Expand BankART」へ行ってきました。

かの伝説的な都現美の「通路」ならぬ、木材を用いて、建築とも、はたまた廃墟か仮設物ともつかない、摩訶不思議な構造物をインスタレーションとして展開する川俣正。

このところパリでの活動が多いそうですが、久しぶりの首都圏での個展が、横浜・馬車道「BankArt Studio NYK」にて開催されています。



というわけでまずはエントランスから。早速、組上げられたフレームがお出迎え。「通路」の時のベニヤには仰け反ってしまった私ですが、今となってはこの素材にも奇妙な安心感が。これぞ川俣流です。



建物にはまるで鱗のように木材がこびり付き、いや貼られていますが、これは荷物を載せるための木製の荷役台、通称パレットと呼ばれるものです。

なお展示は言うまでもなくワークインプログレス。何も会期当初から全て出来上がっているわけではありません。会期中にも組み立て作業は進行、12月頃におおよそ「完成」しました。



さて内部へ。こちらはパレットの洞窟。



重厚感のあるBankARTの空間にもよるのか、何やら鬱蒼とした深い森の中へ入ったような印象を与えられます。



また別のスペースでは一転してガラスの窓枠が天井付近をうねるように広がります。



この窓枠はバンクアート近くの解体中の団地のものだとか。ガラスによって屈折する照明、下から眺めているとあたかも水面の下にいるような錯覚も。



また会場ではワークインプログレスの様子を写真つきで紹介。川俣がパリと横浜を行き来しながら、スタッフの手も借り、作品を作り上げていくプロセスを知ることが出来ました。



なお世界各地での川俣のプロジェクトを紹介した映像作品も何点か登場。特に1997年にパリのサン・ルイ教会での「椅子の回廊」は強烈。必見です。


「椅子の回廊」1997.9.19-11.2 サルペトリエール病院内サン・ルイ教会 パリ

ただしこの作品しかり、館内映像の殆どはフランス語の音声で英語字幕。日本語はありません。ご注意下さい。

チケットは大人1200円でしたが、記名制で会期中何度でも利用可能です。私が出向いたのも既に会期末。もう間もなく終了してしまいますが、初めから追っかけていれば、より楽しめたような気もしました。



ちなみに3冊のカタログの付くチケットは2500円です。(全3巻配本。カタログ定価は3000円。)こちらの方がお得です。



BankARTの空間と格闘した川俣の軌跡。同時に彼の過去の業績も知ることも出来ます。意外とあっさりした内容ではありましたが、節目の展示と言えるのではないでしょうか。



会期が当初より1日延長されています。(1/14まで。)また明日からのラスト3日間は開館時間も長くなりました。(10:00~19:00)

「アートレス―マイノリティとしての現代美術/川俣正/フィルムアート」

1月14日までの開催です。

「川俣正 Expand BankART」 BankArt Studio NYK
会期:2012年11月09日 ~ 2013年01月14日
休館:1月1日。
時間:11:30~19:00 *1/12~1/14は10:00~19:00。
料金:一般1200円 、大学生600円、高校生以下65歳以上無料。
 *カタログ付観覧料:一般2500円、学生2200円。カタログ全3巻配本:11/9、11/23、1/13
住所:横浜市中区海岸通3-9
交通:横浜みなとみらい線馬車道駅6出口(赤レンガ倉庫口)より徒歩5分。
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「アートと音楽」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」
2012/10/27~2013/2/3



東京都現代美術館で開催中の「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」へ行ってきました。

アートと音楽。一見、別物のように思える両者も、昨今においては、むしろ互いに関わり合いながら、新たな表現を志向しているかもしれません。

本展ではそうしたアートと音楽の垣根を超えた地平を、国内外の気鋭のアーティストたちが追求します。

作品の殆どが視覚と聴覚の双方に訴えかけるメディアアート、インスタレーションです。あまり難しく向き合わず、感覚的に楽しむことにしました。


セレスト・ブルシエ=ムジュノ「バリエーション」2009年 *ピナコテカ(サンパウロ)での展示風景

掴みはOKです。冒頭のセレスト・ブルジェ=ムジュノの「クリナメン」に魅了された方は多いのではないでしょうか。

ホワイトキューブにぽっかりと出現した水色のプール。そこには大小様々な白い磁器のボールが浮かび、互いにぶつかり合いながら、カランコロンと音を奏でています。

ボールがぶつかるのは何も凝った仕掛けがあるわけではありません。

種はプールの水。噴き出し口から勢い良く出ることで、ちょうど流水プールのような流れが出来ているのです。

陶器の奏でる心地よい響き。プールの形にモネの描く蓮池を連想しながら、しばし耳を傾けました。

クリスティーネ・エドルンドは植物が攻撃を受けた時に分泌する物質や信号を、音やイメージへ変換します。


クリスティーネ・エドルンド「セイヨウイラクサの緊急信号」 2010年

ドローイングの他、映像が展示されていましたが、何本かの線が並行になって進む様はまるで楽譜。突き詰めれば音も一つの信号ですが、植物との接点は意外性がありました。

音とイメージとの関係をアニメーションで表現したのが大西景太です。

林立する小さな12のフレーム、そこにはモノクロームのアニメーションによって、球体が階段を駆け上がり、また小さな花火が上がるような映像が映されています。

そこに音が加わるわけです。花火はポンポン、震える箱はシャカシャカ。12のフレームから様々な音が発せられます。

どこかコミカルな動きと音。シンプルな装置でしたが、そこから引き出されるイメージはなかなか多様でした。

さて本展の核心に進みましょう。それがクレーにカンディンスキー、そして武満、ゲージ、さらには高松次郎へと進むB2フロアの展示に他なりません。


ワシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画No.4の習作(カーニバル・冬)」1914年 宮城県美術館

ここでは音楽的イメージを絵画に起こそうと試みたクレーらの20世紀絵画を筆頭に据え、武満がグラフィックデザイナーでもある杉浦康平と制作した図形楽譜、「ピアニストのためのコロナ」、そしてゲージの「4分33秒」のスコアなどが紹介されています。

中でも特に面白いのが高松次郎がデザインしたという楽器、「パロール・シンガー」です。

一言語一音階。まるでオルガンと巨大なタイプライターと合わせたような姿しているではありませんか。

また1974年には谷川俊太郎や高橋アキと共同し、この楽器を使って演奏会を行ったという記述も。残念ながら展示では演奏会の様子までは分かりませんが、まさか高松次郎がこのような楽器を作っていたとは知りませんでした。

さてゲージの4分33秒を素材に、演奏者と観客、さらには音を通して、作品と我々見る者との立ち位置を巧みに揺さぶってくるマノン・デ・ブールの「二度の4分33秒」が極めて秀逸です。

タイトルの通り、4分33秒の演奏を二度に渡って映した作品、ここで細かには触れませんが、一度目と二度目の音響世界、その変化には目を見張るならぬ耳を疑うような驚きがあります。

聴いていたはずの作品の中の音場が、いつしか今、自分のいる現代美術館への空間へと移り変わるのです。これは実にスリリング。

実は密かに4分33秒好きで、CDまで購入したこともある私にとっては、この映像に出会えただけでも良かったと思いました。

お馴染み「氷のレコード」の八木良太と、同じくレコードを用いながらも、素材に木材を取り込んだバルトロメウス・トラウベックの対比的な展示も目を引きます。

八木良太、バルトロメウス作品のデモ演奏について(MOT STAFFブログ)

アトリウムでの「大友良英リミテッド・アンサンブル」も巨大な吹き抜けを効果的に利用しています。


大友良英+青山泰知「without records」2012年 *ナムジュン・パイク・アートセンターでの展示風景

林立するポータブルレコードプレイヤーの森。機械仕掛けの紐やロープが絡み、ピアノが突如音を奏でる瞬間。しばし時間を忘れて彷徨ってしまいました。

総合アドバイザーの坂本龍一のインスタレーションが今ひとつ伝わってきませんでしたが、アートと音が行き交い、連動する場は、思いの他に魅惑的でした。

2月3日まで開催されています。

「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2012年10月27日(土) ~2013年2月3日(日)
休館:月曜日。但し12月24日、1月14日は開館。*12月25日、年末年始(12月28日~1月1日)、1月15日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般1100円 、大学生・65歳以上850円、中高生550円、小学生以下無料。
 *20名以上の団体は2割引。
 *「MOTアニュアル2012」との共通券:一般1500円、大学生・65歳以上1200円、中高生700円。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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