2013年 私が観た展覧会 ベスト10

私的ベスト企画。展覧会編です。今年観た展覧会のベスト10をピックアップしてみました。

2013年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「アンドレアス・グルスキー展」 国立新美術館



この一位は不動です。人はどこまで貪欲にモノを捉えようとするのか。広がる景色に遍在する神の視点を見る。そして時にトリッキー。グルスキーの意図による展示空間も面白い。今年一番刺激的な展覧会でした。

2.「貴婦人と一角獣」 国立新美術館



クリュニー中世美術館のタペスリー「貴婦人と一角獣」が初めて日本へやって来ました。触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚、そして謎めいた「わが唯一の望み」。行き来しながら前に後ろにと美しきタペスリーに酔いしれる。また作品がすっぽりと収まった国立新美術館のスペースも効果的でした。

3.「ル・コルビュジエと20世紀美術」 国立西洋美術館



これほど建築以外に関するコルビュジエの業績を追った展覧会はなかったかもしれません。冒頭のスロープに映し出されるのは「電子の詩」。彼の関心はアフリカのプリミティブな彫刻にもあった。タピスリーやブックデザインの仕事も紹介する。コルビュジエの設計した空間で見るコルビュジエの絵画。これが意外なほどに魅力的でした。

4.「夏目漱石の美術世界展」 東京藝術大学大学美術館



親和性があるようでなかなか展覧会として取り上げられて来なかった文学と美術との関係。それを漱石という存在を通して読み解こうとする試みです。漱石文学に登場する美術作品だけでなく、漱石が同時代に見て批評した日本近代絵画までを網羅する。さらには漱石自筆の書画も。足りないところがありません。まさに好企画でした。

5.「モローとルオー」 パナソニック汐留ミュージアム



師弟関係だったモローとルオーの交流を通して辿っていく。モローがルオーに与えたいくつかの影響。また一見、異なって見える両者の共通点と何だろうか。モロー美術館より大作も来日しました。練られた構成に良質な作品群。確かに小さなスペースではありましたが、非常に見応えのある展覧会に仕上がっていました。

6.「坂茂 建築の考え方と作り方」 水戸芸術館



私の尊敬する建築家である坂茂さんの個展。意外にも美術館では初めてだったそうです。初期作から近年特に知られる災害復興支援のプロジェクトまで。モック多数で坂さんの業績を体感的に知ることも出来る。屋外に展示されていた女川町仮設住宅のコンテナも印象に残りました。

7.「カイユボット展」 ブリヂストン美術館



ブルジョワに生き、ボートを愛して止まなかった、カイユボット。やはり比較的早い段階のパリの街や日常の室内風景を描いた古典的な作風が心にとまります。また複数の視点を取り込んだようなパノラマ的な構図感も特異的。国内初の回顧展でしたが、以後もこのクラスの展示は望めないのではと思うほどに充実していました。

8.「米田知子 暗なきところで逢えれば」 東京都写真美術館



写真をどう『読ませるか』という点において意味深い展覧会だったのではないでしょうか。現実の向うにある記憶や歴史が米田の強いメッセージとともに浮かび上がる。作家の世界観が会場全体を余すことなく支配していました。

9.「生誕130年 川瀬巴水展」 千葉市美術館



巴水はこれまでにも追っかけてきましたが、単独でかつ網羅的、さらにスケールにおいてこれを超える展覧会はそう滅多にありません。また巴水に関しては所縁の大田区博でも回顧展を開催中。(もちろん中・後期も見に行きます。)巴水好きにはたまらない年でもありました。

10.「MOTアニュアル2012 風が吹けば桶屋が儲かる」 東京都現代美術館



昨年末から年を跨いで行われた都現美恒例の企画展。想像力なり感性が作品を通して拡張していくような体験。グループ展ながらも一つのストーリーを追うような流れがあった。賛否もあったと耳にしましたが、私が今年で一番、都現美で面白かったのは他ならぬ風桶展でした。

次点 「会田誠展 天才でごめんなさい」 森美術館

去年のベストに挙げた方も多いかもしれません。待望の会田さんの個展です。何と言っても衝撃的なのは「電信柱、カラス、その他」。思わず息をのむような凄惨な景色です。ただ美術館ということもあるのでしょうか。全体としてはやや大人しい印象も受けましたが、考えさせるものは多々ある。貫禄の内容でした。

またベストには入れなかったものの、特に印象深かった展覧会は以下の通りです。(順不同)

「光の賛歌 印象派展」 東京富士美術館
「ジョセフ・クーデルカ展」 東京国立近代美術館
「描かれた都  開封・杭州・京都・江戸」 大倉集古館
「五線譜に描いた夢ー日本近代音楽の150年」 東京オペラシティアートギャラリー
「印象派を超えてー点描の画家たち」 国立新美術館
「六本木クロッシング2013」 森美術館
「特別展 京都」 東京国立博物館
「山口晃展 画業ほぼ総覧」 群馬県立館林美術館
「光悦ー桃山の古典」 五島美術館
「スペイン・アンフォルメル絵画の二つの『顔』」 国立西洋美術館
「Drinking Glassー酒器のある情景」 サントリー美術館
「興福寺仏頭展」 東京藝術大学大学美術館
「竹内栖鳳展」 東京国立近代美術館
「引込線 2013」 旧所沢市立第2学校給食センター
「日本の絵 三瀬夏之介展」 平塚市美術館
「第19回 秘蔵の名品アートコレクション展」 ホテルオークラ東京
「アメリカン・ポップ・アート展」 国立新美術館
「和様の書」 東京国立博物館
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」 東京ステーションギャラリー
「千紫万紅ーいつも現代」 セゾン現代美術館
「梅佳代展」 東京オペラシティアートギャラリー
「仏像半島」 千葉市美術館
「アーウィン・ブルーメンフェルド展」 東京都写真美術館
「魔性の女」 弥生美術館
「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー
「アーティスト・ファイル2013」 国立新美術館
「飛騨の円空」 東京国立博物館
「勝坂縄文展」 神奈川県立歴史博物館
「井戸茶碗」 根津美術館
「ターナー展」 東京都美術館
「川合玉堂展」 山種美術館
「アントニオ・ロペス展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「牧野邦夫ー写実の精髄」 練馬区立美術館
「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館
「ミュシャ展」 森アーツセンターギャラリー
「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館
「若冲が来てくれました」 仙台市博物館
「エル・グレコ展」 東京都美術館
「白隠展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

如何でしょうか。今年のベスト10には去年から開催されていた展覧会を2つランクインしています。また最後まで悩んだのはベーコンです。言わば歴史的な展示ではありましたが、さて強く惹かれたのかどうかと問われると、答えに窮するのも事実。最終的には入れませんでした。

西洋絵画展の充実した一年でした。ランクにも入れた「モローとルオー」や「カイユボット」をはじめ、都美館の「グレコ」に「ターナー」、新美の「点描画家展」、ステーションギャラリーの「クラウス」、シスレー祭りの「光の賛歌」、そして森美の「ミュシャ」など、いずれも見応えのある展覧会でした。

美術館の常設展にも見るべき企画が多かったように思います。そもそも西美のコルビュジエもアンフォルメルも常設での展開です。その他にも例えば今、ともに開催中の都現美のMOTコレクション(特に2部のつくる、つかう、つかまえる)や、東近美の所蔵作品展の「何かがおこってる:1907-1945の軌跡」。半ば見慣れたコレクションも切り口を変えると驚きをもって見ることが出来る。美術館の「顔」でもある常設展。これからも追いかけたいです。

遠方では仙台の「プライス展」やセゾン美術館の「先紫万紅」が今も強く記憶に残っています。とりわけセゾンの充実した現代美術コレクションは目を見張るものがありました。ただ西日本方面に全く行けませんでした。それゆえに評判の良い愛知の応挙展や京博の山楽山雪展を見られなかったのが心残りです。

さてみなさんは今年どのような美術や音楽との出会いがありましたでしょうか。印象深かった展覧会などについてコメントやTBをいただけると嬉しいです。

本エントリで年内のブログの更新を終わります。振り返れば一年も早いもの。今年もこの拙い「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それでは良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)

*関連エントリ
2013年 私が観たギャラリー ベスト10
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2013年 私が観たギャラリー ベスト10

年末恒例、私的ベスト10企画です。今年観たギャラリーから特に印象深かった展示をあげてみました。

「2013年 私が観たギャラリー ベスト10」

1.「生成のヴィジュアル」 TSCA柏



淺井裕介、大山エンリコイサム、村山悟郎の三名によるグループ展です。増殖し生成するイメージ。平面表現の可能性。各々が時に対峙して緊張感を生み出す。TSCA柏の広いスペースだからこそなし得た企画ではなかったでしょうか。圧巻でした。

2.「鎌田友介展」 水戸芸術館現代美術ギャラリー



児玉画廊、アートエッグとはまた一味も二味も違う展開を見せた個展。アルミサッシが半ば暴力的なまでに組み上がる。そこへ今回は物語が加わった。表現の世界観を広げるような展開に感心しました。

3.「竹村文宏ー真空」 児玉画廊東京



都市のランドスケープなどを絵画平面上に起こしていく。立体化する線描。マチエールが高速道路なり建物になる瞬間。独特な手法です。感想に書き損ねてしまいましたが、非常に魅力を感じました。

4.「楽園創造(パラダイス)ー芸術と日常の新地平 vol.5 佐藤雅晴」 ギャラリーαM



毎年充実した企画を繰り広げるαMのシリーズ展。今年は残念ながら全てを見られませんでした。うち印象深かったのがこの佐藤雅晴の個展です。伊達巻きの製造工程をアニメーションで描く。αMの空間にもハマった展示。また作家は1/11から神奈川芸術劇場での「日常/オフレコ」展にも参加します。そちらも注目したいです。

5.「椛田ちひろー影をおりたたむ」 アートフロントギャラリー



お馴染みの椛田さんの個展です。ここ数年、都内での展示は追っかけているつもりでしたが、何と言っても今回は色の導入。深遠な宇宙に星々が瞬いた。その進化は半ば衝撃的でした。

6.「江川純太 選択が迫る。後ろはみえない。僕は掴んだ右手を眺める。」 eitoeiko



鍵穴にオールオーヴァー的な展開。半ば複雑怪奇なまでの多様な平面。転じて絵具の繊細な用い方も魅力ではないでしょうか。近作から新作までを網羅的に見せた展示でした。

7.「野村在ーadditional fugitive 増刷する刹那」 アルマスギャラリー



頂戴したDMでは今ひとつイメージがわかず、実際に足を運んでみて驚いた展示です。物質の現象を彫刻として捉える。コンセプトの面白さと作品そのものの美しさが両立。魅惑的でした。

8.「原田郁 ひとつの窓と醒める庭」 アートフロントギャラリー



鮮やかな色面によるCGのような田園風景。コンピューター上で生み出した架空の世界を絵画に置き換える。アートフロントの空間全体へ三次元的に再現するような仕掛けも効果的でした。

9.「利部志穂 タマがわ、たった火ーよき眠りの家ー」 実家 JIKKA



今年のアーティストファイルや引込線にも出品のあった利部の個展です。一番に挙げたいのはアーティストファイルの展示ですが、こじんまりとしたJIKKAもまた美しかった。針金にアルミにビニールの連環。それらがどこか有機的に連なっていく。愛おしい。パフォーマンスイベントに参加出来なかったのだけは心残りでした。

10.「鈴木基真:Cinematic Orchestra」 LIXILギャラリー



かつてTSCAで見て一目惚れした木彫作家、鈴木のリクシルでの展示です。木彫によるアメリカのジオラマ風景。視点の高い位置で展開していたのも印象的でした。ここ最近の集大成的な内容と言えるかもしれません。

次点 「MOBILIS IN MOBILI」 GALLERY MoMo Project/CASHI

大阪から巡回してきたグループ展。六本木のGALLERY MoMoと浅草橋のCASHIの二会場での開催でした。特に惹かれたのはモモの方。初めて見る作家の作品も少なくなく、発見の多い展示でもありました。

以上です。なお順位に関してですが、あくまでも今、振り返ってみて、より強い印象が残っているか。また初めて見た際にどれほど感心し、考えさせられたのか。その辺を踏まえての並びになっています。特に深い意味はありません。

それにしても今年は例年以上に見た展示を感想にあげられませんでした。もちろんブログでの記事は単なる雑感に過ぎませんが、それでも面白かった展示をもっと紹介出来れば良かったと反省することしきりです。またこのところ前から見知っている作家さんの展示を追っかける傾向が強くなっているような気もします。来年はもう少し視野を広げたいです。

最後になりましたが、今年一年、素晴らしい作品を見せてくださった全ての作家の方に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

それでは展覧会編に続きます。

*過去のギャラリー・ベスト10
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お正月は美術館と博物館 2014

クリスマスも過ぎ、街の様相も様変わり。もう間もなくお正月を迎えます。そこで2014年、都内近辺の主な美術館や博物館の新春イベント情報をリストアップしてみました。

東京国立博物館 博物館に初もうで]1月2日~



新春特別公開(1月2日~13日)
 所蔵の名作を期間限定で公開。国宝「松林図屏風」は1月26日まで展示。

・特集陳列「博物館に初もうでー午年によせて」(1月2日~26日)
 「うま」に関連した絵画、彫刻、工芸品などを展示。本館特別1、2室。

・新春イベント(1月2日、3日)
 和太鼓、獅子舞、江戸の遊芸、クラリネットコンサートなど。スケジュール

・お正月限定クイズラリー「トーハクうま三昧」(1月2日、3日)
 東洋館エントランスにてワークシートを配布。11時から。先着3000名。 

・お年玉・プレゼント(1月2日、3日)
 ミュージアムグッズプレゼント、美術図書バーゲンセール(5日まで)など。

・TNM&TOPPANミュージアムシアター無料上演(1月2日、3日)
 「よみがえる江戸城ー本丸御殿・松の廊下から天守閣へ」を無料で上演。各回定員90名。

*特別展「クリーブランド美術館展」と「人間国宝展」は1月15日より開催。

[東京都写真美術館 写美のお正月2014/植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ/路上から世界を変えていく/高谷史郎展]1月2日~



・1月2日は全展示無料。1月3日は入場料2割引。

・しゃび雅楽(1月2日、3日。各日13時、15時から。)

・おめでとう写美クイズ(1月2日、3日)
 2階総合カウンターにて受付。グッズプレゼント。

・ナディッフ バイテン
 福袋を3000円で販売。限定30個。

・カフェ・ビス(1月2日、3日)
 新春特製メニューを販売。個数限定。

・新春フロアレクチャー(1月3日)
 「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ」にて担当学芸員のレクチャーあり。11:15、16:00の2回。

・特別アーティストトーク(1月3日)
 「高谷史郎 明るい部屋」にて出品作家を交えてトークイベント。16:00~17:30。当日10時より整理券配布。

江戸東京博物館 えどはくでお正月/大浮世絵展]1月2日~



・1月2日、3日は常設展観覧無料。

・双六絵はがきプレゼント。先着入場200名。(1月2日~4日)

・「山駕籠が東京にやってくる!」(1月2日、1月13日)
 3階江戸東京ひろばの他、両国駅から博物館への道にて山駕籠イベントを開催。

・夢からくり(1月2日~5日)
 からくり人形の実演。5階常設中村座前。11時、13時、15時スタート。

・獅子舞(1月2日~5日)
 常設展示室内の獅子舞の練り歩き。10時半、12時半、14時半、16時半スタート。

・筝の演奏(1月2日~5日)

・書き初め体験(1月2日、3日)

・正月寄席(1月11日~13日)
 5階常設展示室中村座前。13時、15時の2回。

・ギボちゃん(@edohakugibochan)との記念撮影会。

日本科学未来館 2014年新春イベント/THE 世界一展]1月2日~



・毛利衛館長からの挨拶と記念写真撮影(1月2日 10:00~10:15)

・「THE 世界一展」関連イベント(1月2日~5日)
 世界一かるた、世界一すごろく、モノづくり体験会など。

・ミュージアムショップ新春特別企画
 地図福袋の販売やプレゼント企画など。

東京都現代美術館 2014年お正月特別開館/うさぎスマッシュ/吉岡徳仁展]1月2日~



・1月2日、3日はMOTコレクションの観覧無料。

・両日先着50名に美術館オリジナルグッズをプレゼント。

東京国立近代美術館 MOMATコレクション/クーデルカ展]1月2日~



・1月2日、5日は所蔵作品展観覧無料。(クーデルカ展は有料。)

国立科学博物館 2014新春サイエンススクエア/大恐竜展]1月2日~

・新春サイエンススクエア(1月2日~5日)
 各種ワークショップあり。主に小中高生を対象。

・科博 干支シリーズ「午」
 所蔵のシマウマの剥製など干支に因んだ展示。(12月17日~1月26日) 

ポーラ美術館 お正月のイベント/ルノワール礼讃]1月1日~

・大福引会(1月1日)
 ミュージアムグッズや箱根のホテル宿泊券などの当たる福引会を実施。

・ポーラ美術館カレンダープレゼント(1月1日~3日)
 各日先着30名様にカレンダーをプレゼント。

・ギャラリートーク駅伝(1月12日 10:00~16:00)
 6名の学芸員が10時から連続してギャラリートークを開催。

*2012年まで実施していた無料入館デーは終了。


「大浮世絵展」@江戸東京博物館(2014/1/2~3/2)

如何でしょうか。なお江戸博に関しては2日から「大浮世絵」展もスタートします。そして現在、三井記念美術館で開催中の「楽茶碗と新春の雪松図」では1月4日より応挙の「雪松図屏風」を公開。恒例の展示です。楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。

また川瀬巴水展開催中の千葉市美術館では1月4日の開館時に獅子舞が登場するそうです。

なお年末年始の美術館の休館情報は月猫さんがまとめて下さいました。ありがとうございます。

「美術館の年末年始休館情報(東京・関東編)」@月猫ツーリスト

森美術館、森アーツセンター、ニューオータニ美術館、及びポーラ美術館は元日から開館するようです。

この他にもイベントを行う美術館があるかもしれません。情報を寄せていただけば幸いです。
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「16th DOMANI・明日展」 国立新美術館

国立新美術館
「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」
2013/12/14-2014/1/26



国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」を見てきました。

今年で第16回目を迎えたドマーニ展。文化庁の新進芸術家海外研修制度の成果発表の場でもある展覧会。今年も絵画に彫刻にインスタレーションなど。多様な表現をとる作家が紹介されています。

会場内、一部作品を除いて撮影が可能でした。というわけで印象深かった展示を挙げてみたいと思います。


小笠原美環 展示室風景

まずは1973年生まれの小笠原美環。2002年にハンブルグの芸術大学を卒業。2011年にドイツに派遣された画家です。


小笠原美環「Bildung/学」2008年 油彩、キャンバス 個人蔵

出品は10点の油彩画。グレーやブラックなどの落ち着いた色合いによって表された窓や廊下。シンプルな室内空間です。しかしながら何かを惹き付けるような存在感がある。その静謐感と清潔感。光の仄かな陰影もまた美しい。


小笠原美環「Living/生」2010年 油彩、キャンバス

それに作品とホワイトキューブの相性も良いのではないでしょうか。思わず長居してしまいました。

そして川上りえ。1989年に東京藝術大学院工芸科の鍛金を修了。2006年にニューヨークに派遣された彫刻家です。


川上りえ「Zero Gravity」2013年 金属線

写真ではうまく伝わらないかもしれませんが、こちらも新美の広いスペースを活かしてのインスタレーション。素材は細い金属線です。それが天井から吊るされて、筒や梯子のように連なっている。中央部はサークルです。何やらカーテンにでも包まれているような感覚。観客は頭上に気をつけながら、その合間を縫うようにして進みます。


大野由美子「home」2013年 パズルピース

大野由美子の展示はインタラクティブです。タイトルは「home」。床面に広がるのは無数のパズルピース。家の象徴というパズルを観客が組み合わせていく。所々に見られるのは文字によるメッセージ。観客の手で作られたのでしょうか。しゃがんでパズルピースと向き合いました。


吉本直子「鼓動の庭」2009-2013年他 古着の白い衣類、椅子

ロンドンに派遣されたのは吉本直子です。作家はビクトリア&アルバート美術館のテキスタイルにインスピレーションを受けます。素材は何と白い古着のシャツです。それを数千枚も収集し、糊で固めてオブジェと化していく。遠目では古着とは分からないかもしれません。まるで紙のような質感。一枚一枚のシャツに蓄積された記憶や歴史。さながら本の堆く積もれた図書館の如く展開していました。

さて最後に私の一推しの展示を挙げましょう。それが榊原澄人。1980年生まれの比較的若い世代の作家です。ジャンルとしてはメディア芸術。2面の大型スクリーンによるアニメーション作品を展示しています。


榊原澄人「E in Motion No.7 /No.5」、「E in Motion No.2」2013年 ヴィデオインスタレーション、デジタルドローイング

これが実に魅せます。それこそヒエロニムス・ボスと現代世界を行き交うような世界観。悪魔的なモチーフに機動隊に原爆ドーム。さらには糾弾しあう人々と遊園地で遊ぶ人々。火山に地が裂けて稲妻が光る。この世の終わりと再生。雪原で淡々と進む刹那的なストーリー。渾然一体、摩訶不思議。ブリューゲルを彷彿させるような展開も。ともかくうまく言葉に表せませんが、次から次へと展開する魑魅魍魎のワンダーランド。アニメーションの動きも独特。細やかで微妙な動きです。ミニマル的とも言えるのではないでしょうか。ともかく時間を忘れて見入ってしまいます。

ちなみに榊原は2006年の文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で大賞を受賞しています。久々に強く惹かれる映像作家と出会いました。

さてここまではいわゆるアート部門です。実は今回のドマーニ展、これまでとは全く異なる仕掛けがあります。というのもタイトルにあるように「建築」が加わったこと。テーマは「未来の家」。43名の建築家が各ブースにて作品を提示する。これが展覧会に言わば厚みを与えています。


「16th DOMANI・明日展」建築家スペース

ベニヤ板で区切られた個々のブースは非常に狭く、一人当たりの展示はかなり小規模ですが、中身はバリエーション豊富です。一つ一つ追いかけると結構時間がかかりました。

最後は休館の情報です。年末年始は国立新美術館のメンテナンス休館に入るため、ドマーニ展もしばらくお休みとなります。休館期間は12月24日から1月7日まで。年内は既にお休みです。年始は1月8日(水)からオープンします。


土橋素子「Shells」/「Fence」2013年 布にアクリル絵具、壁にアクリル絵具、ポスター

「建築×アート」の新機軸のドマーニ。なかなか面白いのではないでしょうか。

2014年1月26日まで開催されています。

「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」@DOMANI_ten) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2013年12月14日(土)~2014年1月26日(日)
休館:火曜日。年末年始(12/24~1/7)。
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
 *プリントアウト用割引引換券(各200円引)
 * ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「日高理恵子展」 小山登美夫ギャラリー

小山登美夫ギャラリー
「日高理恵子展」 
2013/12/14-2014/1/25



小山登美夫ギャラリーで開催中の「日高理恵子展」を見てきました。

空を見上げ、また樹木を見ては描き続ける画家、日高理恵子。最近では東京国立近代美術館の「プレイバック展」やアサヒビール大山崎山荘美術館の「山荘美学」などに参加。作品を発表しています。

その日高が小山登美夫ギャラリーとしては数年ぶりとなる個展を開催。空と樹木と見上げる作家の関係。お馴染みのモノクロームの樹木の絵画を展示しています。

さてまず会場へ。通路に並ぶ三点の小品、いずれも樹木を描いたものですが、それを経由して進むとメインの広いスペース。正面には上記DMの三幅対の作品が並んでいる。麻紙に岩絵具。言わば日本画の手法によって描かれた樹木の絵画です。

いつもながらに遠近感のある空間構成。まさに樹木を地面から見上げた時の光景です。バックは白。やはり寒空でしょうか。そう見ると樹木には殆ど葉っぱが付いていない。葉を落とした冬の木々。まさに今の季節ならどこでも見られるような光景が広がっています。

それにしてもシンプルな画面。空間における距離感は別として、木そのものの描写は一見、フラットも映りますが、近づくと幹には凹凸感がある。時に隆々と太る幹。色をざっくりと削り取るような筆致も。塗り残しを活かしての立体感もあります。また空の白は胡粉によって描かれているそうです。さながら彫刻のような趣きさえたたえていました。

さて絵画の手前には平置きの2点の小品、同じく樹木を描いた作品が展示されています。こちらは下絵です。そして実は初めに触れた廊下の3点もDM作の下絵なのです。

何でも日高は制作の際、まず実際に木を見上げながら手元に下絵としてのドローイングを描き、その後、大きな麻紙に同構図のペインティングを表すとか。つまりこの展示では下絵と本画を見比べられます。

ちなみに今回は描写する時の視点をより高く設定したのだそうです。言われてみると旧作よりも空へ吸い込まれるような感覚がある。彼方は無限でした。

2014年1月25日まで開催されています。*年末年始(12/29~1/6)は休廊。

「日高理恵子展」 小山登美夫ギャラリー・東京(@tomiokoyama
会期:2013年12月14日(土)~2014年1月25日(土)
休廊:日・月・祝日。年末年始(12/29~1/6)
時間:12:00~19:00
住所:江東区清澄1-3-2 7階
交通:東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩7分。
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「阪本トクロウ 背景」 GALLERY MoMo 両国

GALLERY MoMo 両国
「阪本トクロウ 背景」 
12/7~12/28



GALLERY MoMo 両国で開催中の阪本トクロウ個展、「背景」を見てきました。

何気ない都市の光景を絶妙な構図感で描く阪本トクロウ。これまでにも同ギャラリーでも度々個展を開催。また近年では国内外のグループ展などにも参加してきました。

さて見る度にスタイルをどこか変化させてもいく阪本。ひょっとすると今回ほど強い変化を見せたことはなかったかもしれません。

ではそれは何か。突き詰めてしまえば純化した景色。もはや抽象画ともいえる展開です。

もちろん例えばモモでの前回展、「交差点」においても、水の波紋を描いた作品などは半ば抽象的でしたが、今回はよりそれが強まっている。星空に水の景色。そして煌めく光の粒。また星空の作品については一部、ドロッピングの技法を用いているのだそうです。驚きました。

象徴的なのは月をモチーフとした2枚の作品です。グレーの夜空に浮かぶ月。背景にはビルも家々も山々も何もない。ただ広がるのは空。そこに丸い月だけが浮かんでいる。ギャラリーのスペースの手前と最奥部と向かい合うように置かれています。

もちろんこれまでと同様、例えば電柱越しのアパートであったり、高速道路に並ぶ照明灯などを描いた作品もありましたが、ともかく印象深いのはこうした抽象的なまでの作品。寡黙でかつ匿名的な景色がより不在性を帯びていく。作家は本展へのコメントで「無」という言葉を使っています。星空や月夜の前に立った時の感覚、今までの阪本作品とはかなり異なりました。

得意とする道路の白線を描いた作品も幾何学的、より抽象性が高まっているように見えました。阪本の次の展開、その行方を指し示すような展示と言えるかもしれません。

12月28日まで開催されています。

「阪本トクロウ 背景」 GALLERY MoMo 両国@GalleryMoMo
会期:12月7日(土)~12月28日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
場所:墨田区亀沢1-7-15
交通:都営大江戸線両国駅A3出口より徒歩1分。JR両国駅東口より徒歩約5分。
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「光の賛歌 印象派展」 東京富士美術館

東京富士美術館
「光の賛歌 印象派展ーパリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」
2013/10/22-2014/1/5



東京富士美術館で開催中の「光の賛歌 印象派展ーパリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」を見てきました。

今年も数多く開催された印象派関連の展覧会。例えば都内では西洋美術館の「モネ、風景をみる眼」に国立新美術館の「点描の画家」など。いずれも大規模。それぞれに個性があり、また見応えがあった。さて一方で「光の賛歌」。会場は都心から離れた八王子の東京富士美術館です。ともすると埋没してしまう感があるかもしれません。

しかしながら実際に足を運んで驚くばかり。まさかこれほど充実していたとは思いもよらない。それこそ上記の展覧会と比べても遜色ない内容となっていました。


アルフレッド・シスレー「モレの橋」1893年 オルセー美術館

さて充実の「光の賛歌」、まず際立つ個性とは何か。それはシスレーです。本展はサブタイトルにもあるようにセーヌやノルマンディの景色、つまり印象派画家の描いた「水辺」に着目していますが、その中でも重要なのがシスレーの扱い。全80点弱中、シスレーが17点を占めている。近年の印象派展においてこれほどまとまって出ているのを見たことがありません。

しかも作品は粒揃い。所蔵はテート、フィラデルフィア、オルセー、ボストン、オランジュリー美術館など。また申し遅れましたが、本展出品の絵画の大半は海外の美術館のものです。

何も常に海外館の作品が良いと言うわけではありませんが、やはりここはポイントではないかと。私が印象派で一番好きな画家はシスレー。次から次へと続くシスレーの作品群。それを前にしただけでも感無量でした。


アルフレッド・シスレー「春の小さな草地」1880年 テート

いくつか簡単に例を挙げましょう。まずはテート所蔵の「春の小さな草地」(1880)。シスレー一流の明るい色遣いが目に染みる一枚。セーヌの川沿いの小路。軽やかな筆致による樹木がリズミカルに並ぶ。青い服の少女は画家の娘ジャンヌ。11歳の頃の姿だと言われています。

またシスレーといえばモチーフに洪水を取り込んだ画家でもありますが、中でも一推しは「モレの洪水」(1879)。ブルックリン美術館の作品です。色を散らすかのような動きのある筆致が全体を象っている。オルセー所蔵の傑作「ポール=マルリーの洪水と小舟」とはまた異なった印象を与えます。

さらには晩年に描かれた作品も。富士美術館の「レディース・コーヴ」(1897)です。岩のゴロゴロした海岸線。海辺には水と戯れる人々の姿。シスレーが実際に南イングランドを訪れ、現地で制作したという作品。時は死の2年前。既に病に冒されていたそうです。それでも意外なほどに筆致は力強い。エメラルドグリーンに染まる海の色が際立っていました。

ボストン美術館からやって来た「サン=マメスのロワン川」に惹かれました。鱗雲の靡く大きな空に縦へとのびる樹木。そして手前へと蛇行して流れる河。水面には小舟も。また木々の緑と空の青みが写り込んでいる。彼方には鉄道のアーチ橋を見て取ることも出来る。あくまでも穏やかでかつ趣き深い水辺の景色。これぞシスレーの醍醐味とも言えるような作品でした。

さてシスレーと並び主役を構えるのがモネです。こちらは点数としてはシスレーを上回る26点。睡蓮にアルジャントゥイユ。またプールヴィルやディエップを描いた作品は複数枚展示。見比べることが可能です。


クロード・モネ「荒天のエトルタ」1883年 ビクトリア美術館

あえて挙げるとしたらビクトリア美術館の「荒天のエトルタ」(1883)でしょうか。ノルマンディの岸壁を襲う大波。波濤は割れて白く輝く。時に靄のようにも見える表現はモネらしい。手前の海岸線に立つのは二人の人物。海を前にするとあまりにも小さい。自然の力強さ、雄大さを表しています。


ギュスターヴ・カイユボット「トルーヴィルのレガッタ」1884年 トリード美術館

その他で目につくのはピサロ、ブータン。ともに8点と6点。またカイユボットの「トルーヴィルのレガッタ」(1884)も印象的です。紫色に染まる空。彼の別荘の奥に広がる海にはカイユボットの愛したボートが多数浮かんでいます。

展示はこのように殆どが風景画。人物画は僅かですが、その中ではチラシ表紙を飾るルノワールの「プージヴァルのダンス」(1883)が傑作です。ボストン美術館からの作品。縦1.8m。縦長の構図感でカップルの全身を捉えて背景にはおそらくは酒を交わす人の様子も。地面に落ちたタバコの吸い殻がカフェの雑踏をも示しています。


クロード・モネ「アルジャントゥイユのセーヌ川」1873年 グルノーブル美術館

ともかく感想を連ねていくとキリがありません。シスレーを筆頭に印象派の魅力を伝える展覧会。実のところ、諸々の事情もあって、行くかどうか迷っていたのですが、見終えた後は大変な充足感を得ることが出来ました。

さて印象派展。これだけでも十分に満足し得るものですが、もう一つ嬉しいのは常設の西洋絵画コレクションも観覧出来ること。そもそも順路からして先に常設、次に印象派展です。ルネサンス、バロック、ロココに新古典主義、そしてアカデミスム絵画から印象派まで。あわせて63点の西洋絵画が展示されています。


アンリ・ル・シダネル「森の小憩、ジェルブロワ」1925年 東京富士美術館

同美術館のコレクション。例えば西美ラトゥール展に出ていた「煙草を吸う男」や、埼近美のシダネル展での「森の小憩」など、他館の企画展で目にすることもありますが、当然ながらまとまって見る機会はないもの。これがまた充実しています。

例えばクロード・ロランの「小川のある森の風景」。雄大な自然の景色の中で戯れる人々。何でも古代ギリシア神話のモチーフを取り込んでいるとか。筆致も実に繊細です。またブリューゲル(子)の「農民の結婚式」やロイスダールの「宿の前での休息」、そしてターナーの「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」も魅力的でした。


カミーユ・ピサロ「ルーアンのボワエルデュー橋、日没」1896年 バーミンガム美術館

バロックから西洋絵画の系譜を辿りながら印象派へと至る。実際に「光の讃歌」展の冒頭においてもターナーが出ているなど、言わばコレクション展と連動するような形がとられています。コレクション展から企画展への流れも効果的でした。

東京富士美術館へは初めて行きました。最寄り駅はJR線、及び京王線の八王子駅です。ともに駅前から出ている西東京バスの「創価大正門東京富士美術館」行きに乗車して約15~20分ほど。土日は毎時4本程度の運行。なおJRの八王子駅からは直行バス(土日には臨時バスも)も出ています。

現地はちょうど創価大学の正門の真ん前、大学構内ではなく別の施設です。それにしても立派な建物。館内にはカフェの他、広々とした休憩スペースなどもあります。ファミリーで来られている方も目立ちました。

また無料の駐車場もあります。車なら村内美術館もすぐです。そちらとハシゴするのも面白いかもしれません。

「シスレー (アート・ライブラリー)/リチャード ショーン/西村書店」

2014年1月5日までの開催です。ずばりおすすめします。

*東京展終了後、福岡(福岡市博物館:2014/1/15~3/2)と京都(京都文化博物館:2014/3/11~5/11)へ巡回します。

「光の賛歌 印象派展ーパリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅」 東京富士美術館
会期:2013年10月22日(火)~2014年1月5日(日)
休館:毎週月曜日(祝日の場合は開館。翌火曜日休館。)。及び年末年始(12/27~1/1)。
時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで。)
料金:一般1200円(1000円)、大学・高校生800円(700円)、中学・小学生400円(300円)
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *毎週土曜日は小中生無料。
 *誕生日当日に来館すると無料。
住所:八王子市谷野町492-1
交通:京王線八王子駅西東京バス4番のりば、及びJR八王子駅北口西東京バス12番のりばより創価大正門東京富士美術館行、もしくは創価大学循環にて約15~20分。無料駐車場あり。
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「前田哲明 recent work」 EARTH+ gallery / gallery COEXIST-TOKYO

EARTH+ gallery / gallery COEXIST-TOKYO
「前田哲明 recent work」
2013/12/7~2014/1/26



EARTH+ gallery / gallery COEXIST-TOKYOで開催中の前田哲明個展、「recent work」を見てきました。

1961年に東京で生まれ、主に鉄を素材にした彫刻作品を展開する作家、前田哲明。その個展が木場のギャラリーで行われています。

さて素材の鉄。ともすると力強いまでの重量感。もちろん前田の彫刻も確かに重厚ではある。しかしながら単にそれだけではない魅力が存在しています。

と言うのも意外な軽やかさがあるのです。何やら皮のように薄い鉄。筒状にも丸められている。それがちょうど大樹のように縦に伸びている。そう見ると表面は樹皮のようです。独特の質感があります。

また時には海の中で水に靡く海藻のようにも。さらには羽を休めて止まる鳥のような姿にも見えます。無機的な鉄が有機的なフォルムへ変化していました。


「前田哲明 recent work」会場風景

ちなみにこれらのオブジェは鉄を溶接して組み立てたとか。アトリエからパーツをギャラリーへ持ち込んで床面から設置したのだそうです。

鉄の重厚感と意外なまでの言わば脆さが同居している。また表面の凹凸のあるテクスチャーは溶接材でつけられた断片だそうです。表情は多様です。

前田の作品は「水と土の芸術祭」など、国内各地でパブリックアートとしても展示されているそうです。他にはどのような作品があるのでしょうか。実のところ殆ど偶然に立ち寄った展示でしたが、思いの外に惹かれました。


前田哲明「Untitled2008」*参考図版

なお会場は2つのギャラリーの同居するEARTH+ gallery / gallery COEXIST-TOKYO。以前もご紹介(東北、うごめく鼓動展)したことがありましたが、東西線の木場駅近くにあるスペースです。1階と2階、さらに中2階の計3層フロア。普通のギャラリーよりは広めの空間が持ち味。またちょっとしたカフェやBARコーナーもあります。

少しかかりますが、都現美からも歩けます。展覧会帰りにご覧になっては如何でしょうか。(但し清澄白河駅からはかなりあります。)

2014年1月26日までの開催です。*年末年始(12/26~1/6)は休廊。

「前田哲明 recent work」 EARTH+ gallery / gallery COEXIST-TOKYO@EartH_plus)(@coexist_tokyo
会期:2013年12月7日(土)~2014年1月26日(日)
休廊:毎週月曜日。年末年始(12/26~1/6)。
時間:11:00~19:00
住所:江東区木場3-18-17
交通:東京メトロ東西線木場駅3番出口から徒歩6分。
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「クインテットー五つ星の作家たち」展でWEB内覧会が開催されます

1月11日(土)より損保ジャパン東郷青児美術館にて開催される「クインテットー五つ星の作家たち」展。



国内の現代美術作家5名(児玉靖枝、川田祐子、金田実生、森川美紀、浅見貴子)の制作を紹介。テーマは「風景」。各作家がいかにして表現するのか。その響きあう様を五重奏、ようはクインテットになぞらえて見る展覧会でもあります。

その「クインテット」展にてSNSユーザー向けに内覧会が開催されます。

[損保ジャパン東郷青児美術館「クインテットー五つ星の作家たち」WEB内覧会 開催概要] 
・日時:2014年1月10日(金) 18:00~20:30
・会場:損保ジャパン東郷青児美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
・スケジュール
 18:00~ 受付開始
 18:30~ 内覧会
 19:00~ ギャラリートーク
 20:30  内覧会終了
・定員:30名
・参加資格:ブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方。ブログの内容は問いません。
・参加費:無料
・申込方法:専用申込フォームより→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=5
・申込締切:1月6日(月) 18時まで。応募者多数の場合は抽選。当選者には1月8日(水)までにメールで通知。(落選者への通知はありません。)


浅見貴子「Trees 0903」2009年 墨、胡粉・白麻紙

日時は展覧会開幕前日の2014年1月10日(金)の夜6時より。参加資格はブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方で、展示の感想なり魅力をご紹介いただける方です。

[参加の特典]
1.開催前に展覧会をいち早く観覧できる貸切内覧会です。
2.参加いただいた皆様に本展図録をプレゼントいたします。
3.担当学芸員によるギャラリーツアーに参加できます。
4.展覧会会場内で写真撮影ができます。(注意事項あり。)

当日は内覧中にギャラリーツアーが行われる他、会場内の写真撮影も出来るそうです。また図録もいただけます。

定員は30名。申込の締切は直前の1月6日(月)まで。応募多数の場合は抽選となります。

それにしてもこの展覧会で私が特に期待したいのは浅見貴子。1964年に埼玉県で生まれた日本画家です。


「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM(はろるど)

繊細な墨の線と点。そして胡粉の豊かな質感。時に滲みを駆使して美しき光の織りなす風景を創り出す。一昨年には馬喰町ギャラリーαMで個展を開催。インスタレーションとしても見応えのある展示を披露してくれました。

WEBユーザー向けの貸し切りでの観覧イベント。参加費は無料です。興味のある方はご応募してはいかがでしょうか。

申込フォーム→https://admin.prius-pro.jp/m/win/form.php?f=5

「クインテットー五つ星の作家たち」 損保ジャパン東郷青児美術館
会期:2014年1月11日(土)~2月16日(日)
休館:月曜日。但し1/13日は開館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学・高校生300(200)円、中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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「大浮世絵展コラボキャンパスノート」が発売されます

年明け早々、江戸東京博物館で開催される「大浮世絵」展。


「大浮世絵展」@江戸東京博物館(2014/1/2~3/2)

国際浮世絵学会の創立50周年にあわせての企画。国内外より浮世絵が一挙350点も集結。構成はまさしく王道、通史での展開です。江戸時代前期の風俗画から錦絵を経て天明、寛政の黄金期へ。さらには幕末から近代の新版画までを辿る内容となります。

その「大浮世絵」展にて「浮世絵コラボキャンパスノート」が発売されます。



種類は全部で5つ。図柄は上段左から「相馬の古内裏」、「猫飼好 猫づくし」、「浮世絵オールスター」、また下段左から「見返り美人」、「ポッペンを吹く娘」の順。ヌッと現れる国芳の骸骨が目を引きます。価格は1冊270円。一般的なA4サイズです。



来年、発売開始から39年を迎えるというキャンパスノート。それを祝してのコクヨの「キャンパスノート39(Thank you)イヤー」キャンペーン。第1弾として大浮世絵展とのコラボが選ばれました。年間1億冊の販売。業界No.1ブランドだそうです。よく使われている方も多いのではないでしょうか。

「キャンパスノート39(Thank you)イヤー」公式サイト(コクヨ)

実際、私自身もキャンパスノートの愛用者。もちろん他のノートも使わないわけではありませんが、今に始まったことなく学生の頃から現在まで、一番使うのはやはりキャンパス。日頃も重宝しています。

例えば展覧会にメモ帳として持参する機会が多いのもA6サイズのキャンパスノートです。ともかく質実剛健。まずは書きやすい。そして気取らなく飾らないシンプルなデザイン。さらには安くて入手しやすいこと。(ここは普段使いとして重要なポイントです。)大概のコンビニでも扱っています。



ちなみに大浮世絵展では普通のキャンパスノートを持参すると入場料が割引になるそうです。チケット売場で提示すると一般、大学・専門学校生は100円引、小~高校生、もしくは65歳以上は50円引になります。

一般:1300円→1200円
大学・専門学生:1040円→940円
小・中・高校生・65歳以上:650円→600円

とは言え、現在は展覧会開催前。まだ前売券(2014/1/1まで発売中)の方がお得なわけですが、何でもコクヨS&Tのツイッターアカウントによると持参したノートに特製の割引スタンプをおしていただけるとか。こちらも少し気になります。



@kokuyo_st
大浮世絵展で使ってもらうハンコができてきました!会場でキャンパスノートユーザーの割引を受けたノートに、割引済みの印として押させてもらいます。来展の思い出になると嬉しいです。

なお大浮世絵展では他にも様々な前売券を発売中。公式サイトに情報が記載されています。あわせてご覧ください。

大浮世絵展チケット情報(東京)


国宝「風俗図(彦根屏風)」肉筆画 江戸時代前期 彦根城博物館(本展出品作)

「大浮世絵展」は江戸東京博物館にて年明け1月2日からの開催。コラボキャンパスノートは場内ミュージアムショップで発売されます。

「大浮世絵展」 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:2014年1月2日(火)~3月2日(日)
時間:9:30~17:30 *毎週土曜日は19時半まで。(入館は閉館の30分前まで。)
休館:1月6日、27日、2月3日、10日、17日、24日の各月曜日。
料金:一般1300(1040/1100)円、大学・専門学生1040(830/840)円、小・中・高校生・65歳以上650(520/450)円。
 *( )は20名以上の団体/前売料金。
 *前売券は2013/9/2~2014/1/1まで発売。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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「MOTコレクション 第2部 つくる、つかう、つかまえる」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「MOTコレクション 第2部 つくる、つかう、つかまえるーいくつかの彫刻から」
2013/10/3~2014/1/19



東京都現代美術館の常設展として年に何度か入れ替わる「MOTコレクション」。企画展の影に隠れている感は否めないものの、毎回の展示は大変に見応えがあります。

今回は「私たちの90年 1923ー2013」と「つくる、つかう、つかまえるーいくつかの彫刻から」の2つのテーマを設定。所蔵品をいくつかの切り口から紹介しています。

私がとりわけ感心したのは後半の第2部。タイトルにもあるように彫刻に焦点を当てた企画です。「使う」、「選ぶ」、「組み合わせる」。主に90年代後半の作家の制作を紹介しながら、彫刻の諸相を探るような展示となっていました。

[展示構成]
1.物について
2.行為の記録、写真をとおして
3.歌う彫刻
4.特集展示:冨井大裕
5.作られるかたち
6.特集展示:金氏徹平
7.特集展示:高柳恵里

広大な都現美ならではの展示です。冒頭のスペースを飾るのはマリオ・メルツの「加速・夢・まぼろし」とジルベルト・ゾリオの「いす」。ともにイタリアの作家。前者はずばりオートバイです。ネオン管が連なりバイクが疾走していく。それが何とほぼ天井部分に高らかに掲げられている。迫力があります。

さて今回重要なのが3名の日本人作家。冨井大裕(1973~)、金氏徹平(1978~)、高柳恵里(1962~)の制作。それぞれフロア一室。特集展示として紹介されています。


冨井大裕「鉛筆のテーブル」2010年

いわゆる既製品を用いるのは冨井大裕です。ゴムホースや木に針金、そしてアルミホイルからお馴染みの色鉛筆やスーパーボールまで。2011年度に購入された近作が展示されています。また冨井といえばご本人のツイッター(@mtomii)での「今日の彫刻」。作家の捉えた物の状態を、作品として成立し得るのかと問いかけていく。それを思わせるような写真も並んでいました。


金氏徹平「White Discharge(建物のようにつみあげたもの)#4」2009年

また身近な素材から彫刻を展開する金氏徹平も作品を展示。一定のルールによって集められたという素材に白色の石膏や樹脂をかける「White Discharge」などが目を引きます。横浜美術館の回顧展の記憶も甦りました。


高柳恵里「置物セット」2002年

ラストは高柳恵里。ハンカチにカーテンに文庫本。やはりここでも身近なモノが。相互の関係はあるのかないのか。謎解き的な面白さもある。ガランとしながらも、それぞれが緩やかに繋がっていくような感覚。空間の使い方に惹かれました。

この他にも1970年に行われた「第10回日本国際美術展」の展示記録写真や、ロンドンでともに美術を学んだギルバートとジョージの「歌う彫刻」(映像)など、言わば変化球も。単に彫刻展という先入観で見ると、良い意味で期待を裏切られます。

吉岡徳仁展は意外なほどあっさりと見終えた上、うさぎスマッシュは率直なところ殆ど入って来ませんでしたが、最後に見たこの常設展で改めて都現美の底力を感じました。簡単な感想になってしまい恐縮ですが、三つの展覧会で最も印象深かったのは、この「つくる、つかう、つかまえる」でした。

入口が美術館の最奥部ということもあるのでしょうか。都現美の常設、いつも企画展からの人の流れが少なく、どこかもどかしい思いもします。是非ともお見逃しなきようおすすめします。

2014年1月19日までの開催です。

「MOTコレクション 第2部 つくる、つかう、つかまえるーいくつかの彫刻から」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2013年10月3日(木)~2014年1月19日(日)
休館:月曜日。但し10/14、11/4、12/23、2014/1/13は開館。10/15、11/5、12/24、年末年始(12/28~1/1)、2014/1/14は休館。
時間:10:00~18:00 
料金:一般500円 、大学生・専門学校生400円、65歳以上・高校生250円、中学生以下無料。
 *企画展チケットで入場可。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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「森山大道 モノクローム」 武蔵野市立吉祥寺美術館

武蔵野市立吉祥寺美術館
「森山大道 モノクローム」
11/23~12/27



武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の「森山大道 モノクローム」を見てきました。

大都会東京の街角。場末の路上や薄汚れた地下通路、そして街頭の怪し気な看板。それらが森山のファインダーを経由すると、すぐさま目に焼き付くような力強いビジュアルとして立ち上がっていく。

本展では森山の主に近作を紹介します。東京を捉えた「モノクローム」シリーズをメインに「狩人より」などの旧作まで。約60点ほどが並んでいました。



さて「モノクローム」が撮影されたのは2008年から2012年の間。言わば最近の東京を写しているわけですが、やはりどこかノスタルジックでもある。また何故か異国の見知らぬ景色を見ているような錯覚も。まるで異邦人が見た東京です。不安感に孤独感。様々な印象を与えられます。

個々の感想をあげていくとキリがありませんが、あえて一枚だけとりわけ心にとまった作品を。それが地下鉄の通路を写したものです。



長く続く通路、彼方には階段、そして出口表示の明かりが灯る。さらにはそこへ向かって歩む女性。場所はどうやら東京メトロの池袋駅。ひょっとしたら私も通ったかもしれないような身近な場所です。

にも関わらず、通路はどことなく非現実的。階段の先はそれこそ彼岸への入口なのか。どこへ繋がっているか分からないような一種の恐怖感さえ覚えます。そして女性との距離感です。人と深く接し合わないような都会のよそよそしい人間の関係。後ろ姿はあまりにも寂し気です。何とも言い難い疎外感に押しつぶされそうにもなります。



現実にも関わらず夢を見ているような感覚。一方での写真としてのカッコ良さ。好きな写真家は誰かと問われれば、私がまず挙げるのは森山大道です。久々にある程度まとまって楽しむことが出来ました。



武蔵野市立吉祥寺美術館は旧伊勢丹、現コピス吉祥寺のA館7階に位置する美術館です。本展もフロアは僅か1室。突き詰めてしまば小さな小さな展覧会です。

とはいえ入館料は100円。また森山展にあわせて版画家の浜口陽三や萩原英雄の作品も展観出来ます。また連日19時半までの開館。仕事帰りなどに立ち寄ってみるのも良いかもしれません。

「モノクローム/森山大道/月曜社」

12月27日まで開催されています。

「森山大道 モノクローム」 武蔵野市立吉祥寺美術館
会期:11月23日(土・祝)~12月27日(金)
休館:11/27、12/25の各水曜日。
時間:10:00~19:30
料金:一般100円、小学生以下・65歳以上無料。
住所:武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 FFビル(コピス吉祥寺A館)7階
交通:JR線・京王井の頭線吉祥寺駅より徒歩5分。

*作品図版はいずれも森山大道「モノクローム」より。
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「椛田ちひろー影をおりたたむ」 アートフロントギャラリー

アートフロントギャラリー
「椛田ちひろー影をおりたたむ」 
11/29-12/22



アートフロントギャラリーで開催中の椛田ちひろ個展、「影をおりたたむ」を見てきました。

黒ボールペンを駆使して平面の他、立体、インスタレーションと多様な制作を展開する椛田ちひろ。同ギャラリーでは昨年冬にも個展を開催。ガラスにアルミ、樹脂、そしてアルミテープ。素材との関係においても表現の幅を広げています。

その椛田が本個展でさらに変化。また新たな境地を見せている。では変化とは一体何なのでしょうか。



まずは黒ボールペンによって塗りつぶされたモノクロームの深淵な世界。ここまでは基本的には同じです。しかしながらそこへある要素が加わりました。



端的に触れると色。つまり黒だけではなく別の色、金と銀が用いられているのです。一面に塗られた黒ボールペンのモノクローム面の上に、金や銀のボールペンによる細かな線が渦を巻きながら散っていく。闇の中に溶けていくのは仄かに明るい光の粒子です。鈍く照りながら重厚感のある面と、細く軽やかで動きのある線のせめぎ合い。黒と金と銀との関係。これが作品にまた新たな表情を生み出しています。



元々、黒のボールペンとはいえ、その写し出す色味は紫とも藍色とも言える深みがある。それはまるで宇宙空間のようでもありましたが、そこへ光の帯がかかるとまさに星の瞬き。天の川のように広がっているではありませんか。



一方でこれまでと同様、黒ボールペン一色で展開した作品も。一つ一つの筆致は繊細ながらも全体としてはよりダイナミックに。支持体の中を滔々と流れる姿はさながら水をたたえた大河です。思わず都現美にあるサム・フランシスの大作、「無題」(1985)を連想しました。溢れ出るエネルギーの帯。非常に動的です。

椛田は今年初旬、スイスでの個展を境にカラーのボールペンを使いはじめたそうです。近年の作家の展示をMOT、αM、あざみ野と追いかけてきた私にとっては、この色の導入、半ば衝撃的でした。



常に同じ地平に留まらない椛田の制作姿勢、改めて感じ入るものがあります。

12月22日までの開催です。おすすめします。

「椛田ちひろー影をおりたたむ」 アートフロントギャラリー@art_front
会期: 11月29日(金) ~12月22日(日)
休廊:月曜日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区猿楽町29-18ヒルサイドテラスA棟
交通:東急東横線代官山駅より徒歩5分。

*写真は全て「椛田ちひろー影をおりたたむ」展の会場風景。
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「路上から世界を変えていく 日本の新進作家vol.12」 東京都写真美術館

東京都写真美術館
「路上から世界を変えていく 日本の新進作家vol.12」 
2013/12/7~2014/1/26



東京都写真美術館で開催中の「路上から世界を変えていく 日本の新進作家vol.12」をみてきました。

比較的若い世代の写真家をグループ展形式で紹介する「日本の新進作家」シリーズ。今回で12回目。都写美ではもうお馴染み。すっかり定着してきた感があります。

キーワードは「路上」です。写真家が「路上」で何と出会うのか。ともかくも写真表現の多様な在り方を提示しています。

[出展作家]
糸崎公朗(1965~)
大森克己(1963~)
鍛治谷直記(1970~)
津田隆志(1983~)
林ナツミ(1982~)

それでは順に印象に残ったポイントを。まずはチラシ表紙にも掲げられた大森克己から。展示は「全ては初めて起こる」シリーズ。かの震災の年、2011年の春に桜の開化を追って、東京から福島への旅を写した連作です。


大森克己「すべては初めて起こる 千葉県浦安市」2011年

はじまりは東京近郊、街路には桜が咲いています。大森の写真の特徴としてはハレーションを意図的に取り入れているところです。それに由来するピンク色と桜色の煌めきが呼応する。どこか乾いた都市風景に幻想的な光を呼び込みます。

しかしながら福島はどうでしょうか。甚大な津波の被害を受けた南相馬。大地には瓦礫が散乱している。そこに浮かぶピンク色のハレーション。福島での桜を捉えた作品もあります。ここではやはり物悲しく映って見える。もちろん冒頭の浦安も被災地です。何が共通し、そして異なるのか。ハレーションを見ながら考えさせるものがありました。

本日の浮遊 Today's Levitation/林ナツミ/青幻舎」

「路上」というキーワードが最もハマっているかもしれません。林ナツミからは人気の浮遊シリーズが登場。都市の一角で自らジャンプした姿を捉えた作品。もちろん本展でもひたすらにジャンプしています。

ジャンプ、そして浮遊することで、普段意識もしないような日常に一種の『異界』を持ち込む。シンプルながらも強いビジュアルです。また今回は3幅対の作品に新鮮味があります。中央には正面を向いて浮遊する林。左右ではそれぞれ画面の外へ向かって同じくジャンプしている。祭壇画を連想しました。

「おや、何故に展示室にジオラマが。」と、不思議に思われるかもしれません。異彩を放つのが糸崎公朗です。スペースの中央にはノスタルジックな街のジオラマが展開。その後ろには道頓堀の同じくジオラマ。さながら飛び出す絵本のように無数の人々が戎橋を渡っています。

「フォトモの物件 (Fotomo)/糸崎公朗/アートン」

実はこれ、作家が路上で建物なり人を撮り、その写真を立体に仕立てたもの。ジオラマの周囲には建物の写真がずらり。言わば図面です。そして建物はパーツ毎に分解可能。組み立てるための山折りや谷折り、また貼り合わせるための糊代の部分までありました。


糸崎公朗 「路上ネイチャー フタトガリコヤガ 藤沢市」2012年

なお糸崎は昆虫をモチーフとした作品も展示しています。こちらも建物や人間と同じく路上の主役、小さき虫たちへの眼差し。非常に独創的ですが、何せ現れるのは虫や鳥の死骸です。この辺は生理的に好き嫌いが分かれるかもしれません。


鍛治谷直記「JPEG five-star」2002-2013年

けばけばしいネオンサインや風俗店の艶やかなる看板。スナックにコンパニオン。歓楽街の一コマを切り取ったのは鍛冶谷直記です。タイトルは「JPEG」。2002年から本年の間に全国各地で撮りためた作品を展示しています。

面白いのは金閣寺です。おそらくは繁華街の一角か、金閣寺の写真の貼られたコインロッカーを写していますが、よく追いかけると別の作品には本物の金閣寺も登場している。言わば趣味の悪いコインロッカー。しかしながらイメージは同じく『美しき』金閣寺であるということ。何とも言い難い都市のカオスを表しています。


津田隆志「SITEより」2011年

最年少の津田隆志からはベンチを写した連作に惹かれました。都内の「寝る場所」をピックアップしたという同シリーズ。特に寝る人を排除するためのベンチ。それらが闇夜に沈んでいる。その佇まいは奇妙なほど美しく、またどこか虚しくもありました。

日頃は意識もせずただ通り過ぎるだけの路上。しかし見るべきものがたくさんあった。日常と世界。それを捉える眼差しを少し変えるような展示かもしれません。


糸崎公朗+前衛実験NETART「フォトモ 六会日大前駅」2013年

展示室外の作品の撮影が可能でした。2階エントランス部分に堂々登場するのは林ナツミです。飛び上がる脚。吹き抜けの空間を効果的に活かしていました。


林ナツミ「Today's Levitation 05/13/2011」2012年

2012年1月26日まで開催されています。*1/2は「写美のお正月」のため入場無料。

「路上から世界を変えていく 日本の新進作家vol.12」 東京都写真美術館
会期:2013年12月7日(土)~2014年1月26日(日)
休館:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館。)。及び年末年始(12/29~1/1)。
時間:10:00~18:00 *毎週木・金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで。)2014/1/2/、1/3は11:00~18:00。
料金:一般700円(560円)、学生600円(480円)、中高生・65歳以上500円(400円)
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *第3水曜日は65歳以上無料。
 *1/2は「写美のお正月」のため入場無料。
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
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「天上の舞 飛天の美」 サントリー美術館

サントリー美術館
「平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美」
2013/11/23~2014/1/13



サントリー美術館で開催中の「平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美」を見てきました。

半世紀ぶりに大規模な修理事業を展開中の平等院鳳凰堂。現在、2014年の落慶に向けて屋根の吹き替え、及び塗装工事が進んでいるところです。

その平等院から鳳凰堂内の諸天人が東京にお出まし。国宝の「阿弥陀如来坐像光背飛天」や「雲中供養菩薩像」まで。普段、堂内に安置されているため、なかなか近くで見ることの叶わない像ばかり。平等院の言わば秘仏がサントリー美術館に集まりました。

さてこう書き出しながら、本展には一つ、重要なポイントが。タイトルにも堂々と「平等院」とあるように、さも鳳凰堂の飛天のみの展示かと思いがちですが、実際は大きく異なっている。もちろん鳳凰堂の諸像がハイライトであるのは言うまでもありませんが、それ以外にも見るべき点がいくつもあるのです。

それは何か。飛天の系譜を辿っていく。インド、西域、中国、朝鮮、そして日本。ようは各地域における飛天の作例が紹介されています。


「三尊仏」飛鳥時代 7世紀 明日香村教育委員会

というわけで冒頭はガンダーラ地方の「仏伝浮彫」。時代は2世紀頃の作品です。また中国からは東魏~北魏時代、6世紀頃の飛天像も登場。そして鏡です。中でも美しいのは「飛天伽鳥八花鏡」。重文指定を受けた五島美術館の所蔵品です。


「紺紙金地一切経(大般若経 巻第十四)」平安時代 12世紀 中尊寺

また日本からは法隆寺の金堂の天蓋を飾る飛天も。像に鏡に壁画、そして曼荼羅。大和文華館や東京芸大、また奈良博に薬師寺、さらには四天王寺に中尊寺など、国内各地の美術館や寺院から文物がやって来ています。実に多様な飛天の姿を見ることが出来ました。


「阿弥陀二十五菩薩来迎図」鎌倉時代 13~14世紀 福島県立博物館 *展示期間:11/23~12/16

驚くほどに力強い来迎図に出会いました。それが「阿弥陀二十五菩薩来迎図」。福島県立博物館の所蔵、鎌倉時代の作品ですが、ともかくは群れる菩薩に飛天らの躍動感のある姿。往生を迎えた人を迎えに来ているわけですが、もはや押し掛けて来たと言った方が良いのではないと思うほどの動き。大変な迫力です。

そしてラストは平等院鳳凰堂の世界。艶やかな飛天に菩薩像。ほぼ目の高さの位置で見られます。また一部の菩薩像は独立ケースに入れられているため、横からのお姿も確認出来ます。これは貴重です。

そして飛天においては再現展示風に設営されているのもポイントです。ちなみに「阿弥陀如来坐像光背飛天」は寺外初公開とか。状態は思いの外に良好。鍍金も鮮やかです。ここはじっくり楽しみました。


「雲中供養菩薩像 南20」天喜元年 1053年 平等院 *本展非出品

「雲中供養菩薩像」の模造像に触れられるコーナーもありました。こちらは修復後にオリジナルの代役として堂内に安置されるとか。つまり結縁。もちろん像には平等院の住職によって魂が込められています。手で菩薩様を感じる仕掛け。仏像に触れられる機会などなかなかありません。ここは前もって手をきれいにして臨みたいところです。

初めにも触れたように平等院が修理を終えるのは2014年。振り返れば過去、平等院に行ったのは一回きり。しかも小学校の時だったような気がします。また出向きたいものです。

「平等院鳳凰堂ー現世と浄土のあいだ/冨島義幸/吉川弘文館」

会場内は余裕がありました。2014年1月13日まで開催されています。

「平等院鳳凰堂平成修理完成記念 天上の舞 飛天の美」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:2013年11月23日(土・祝)~2014年1月13日(月・祝)
休館:火曜日。及び年末年始(12/30~1/1)。2014/1/7(火)は開館。
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00) *12/22(日)、2014/1/12(日)は20時まで開館。12/27(金)および12/28(土)は18時で閉館。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *ホームページ限定割引券、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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