「中国王朝の至宝」展でブロガー特別招待会を開催!

東京国立博物館で開催中の「特別展 中国王朝の至宝」展。4000年の歴史を有する中国文明から、夏から宋への文化史を「対決」というキーワードで追いかけるという意欲的な展覧会です。



その「中国王朝の至宝展」にて、来たる11月8日(木)、ブロガーのみを対象とした特別招待会が開催されます。

【中国王朝の至宝展 ブロガー特別招待会】
日程:11月8日(木)18:30~20:00
会場:東京国立博物館平成館
スケジュール:受付 18:30~
       ギャラリートーク 19:00~
       終了 20:00
参加資格:アート、歴史、観光(美術館巡り)関連ブログをおもちの方

当日は東京国立博物館の松本伸之学芸企画部長のトークが行われるとともに、展覧会のオリジナルグッズからカプセルフィギュアを一つプレゼントいただけるという特典も。


「阿育王塔」北宋時代・1011年 南京市博物館

申込方法は簡単、メールでの受付です。件名に「ブロガー特別招待会」、本文に名前、メールアドレス、電話番号、そしてご自身のブログアドレスを明記の上、china-ocho@e-dc.jpまでご応募ください。

受付期限は11月5日(月)24時。追って案内状がメールで返送されます。なお締切日時に関わらず、一定数に達した場合は、応募を締め切る場合もあるそうです。


「仏坐像」唐時代・8世紀 龍門石窟研究院蔵

東博特別展でのブロガー内覧会は極めて異例、私の記憶では「皇室の名宝展」以来。こうしたチャンスは滅多にありません。関係の方々のご尽力に深く感謝申し上げます。


「千仏磚」北宋時代・10世紀 台州市黄岩区博物館

まずは取り急ぎ、お時間のある方はご応募されては如何でしょうか。

「中国王朝の至宝」 東京国立博物館
会期:10月10日(水)~12月24日(月・休)
休館:月曜日。但し12月24日(月・休)は開館。
料金:一般1500円(1200円)、大学生1200円(900円)、高校生700円(400円)、中学生以下無料
 * ( )内は20名以上の団体料金。本展の観覧券にて当日1回に限り「出雲 聖地の至宝」展も観覧可能。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) *毎週金曜日は20時、10/20は21時まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「お伽草子展」 サントリー美術館

サントリー美術館
「お伽草子 この国は物語にあふれている」
9/19-11/4



サントリー美術館で開催中の「お伽草子 この国は物語にあふれている」へ行って来ました。

漠然とお伽草子と言われてピンと来なくても、一寸法師や浦島太郎と聞けば、内容を良く知っているという方も多いかもしれません。


「鼠草子絵巻」(巻二 部分)16世紀 サントリー美術館

古くは室町時代から江戸初期、主に民衆、市民層で大いに親しまれた読み物、お伽草子は、現在も約400種類ほど残されています。

本展ではお伽草子の優品を80点ほど紹介。一週間毎の頻繁な展示替えのため、一度に見られる数は限定されますが、それでも笑あり涙ありの多彩な物語を堪能することが出来ました。

さてお伽草子、その特徴を簡潔に挙げれば、まずは庶民向けの短編であるということと、テーマ、ストーリーの親しみ易さ、一方での新奇性です。


「福富草紙」(巻上 部分)15世紀 春浦院

その一例として印象深いのが「福富草紙」(室町時代)、ようは、放屁の芸で身を立てた男の物語です。

ともかくそのコミカルな描写、とりわけ屁を放つ男たちの楽しそうな姿には思わず笑ってしまうものの、例えば弟子入りしたある人物は芸のために下剤までを飲むという涙ぐましい努力も。

またテーマとして頻出するのが酒伝童子の物語です。同主題としては現存最古とも呼ばれる「大江山絵詞」(南北朝時代)、まさに鬼退治ならぬ血みどろの表現が目を引きます。


「酒伝童子絵巻」(下巻 部分)狩野元信 大永2年(1522年) サントリー美術館

またお伽草子は作者が分からない作品も少なくありませんが、このテーマでは狩野元信の描いた「酒伝童子絵巻」(1522年)もお目見え。こちらは顔料も総じて鮮やかで、鎧には金泥が塗られていることが見て取れます。

そしてお伽草子で面白いのは、強者と弱者の立場が入れ替わる物語が多いということです。

展示ではそれを時代性、つまりは室町から戦国期における動乱、文字通り下克上と関係付けて紹介しています。一見他愛ないようにも映るストーリーから垣間見える庶民の逞しさ。その点もお伽草子を鑑賞する上での重要なポイントかもしれません。

さてお伽草子、作中の時代設定こそ曖昧なものの、舞台については意外と具体的であることが知られています。中でも人気は京都の清水寺。何と400編のお伽草子のうち40編に登場します。

また「異類物語」と呼ばれる、異界の世界が数多く描かれるのも特徴。草木や鳥獣、それに器物に魂を吹き込んだ百鬼夜行や付喪神の物語も。


「付喪神絵巻」(上巻 部分)16世紀 崇福寺

その名も「付喪神絵巻」(江戸時代後期)では、すす払いで捨てられてしまった古道具たちが人間に一泡吹かせてやろうと、復讐の計画を立てている姿が描かれています。


「百鬼夜行絵巻」(部分)16世紀 真珠庵

結果的に失敗し、唯一復讐に反対した僧の数珠を頼って出家するというオチまでついていましたが、まさに新奇、この発想の斬新さにも大いに感心させられました。

最後に私の一押しの作品を。それがキャプションで少女漫画のハシリとも紹介された「しぐれ絵巻」(1513年)に他なりません。

ここに登場する二重まぶた男性の言わば奇妙な「キラキラ感」、確かに現代に通じるものがあります。この一枚には思わず笑ってしまいました。

会期もあと一週間足らずということもあってか、館内はそれなりに賑わっていました。小画面の絵巻の展示、最前列で見ないと楽しめません。これからの方は時間に余裕をもってのお出かけをおすすめします。

お馴染みの「青い日記帳」のTAKさんが、本展担当の学芸員、さんに展示についてのインタビューをして下さいました。

担当学芸員に聞く「お伽草子展」の見どころ。(弐代目・青い日記帳)

このまとめが大いに参考になります。是非ご覧下さい。

11月4日まで開催されています。

「お伽草子 この国は物語にあふれている」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:9月19日(水)~11月4日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00) *10月7日は20時まで開館。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *ホームページ限定割引券、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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「印刷都市東京と近代日本」 印刷博物館

印刷博物館
「印刷都市東京と近代日本」
2012/10/20-2013/1/14



印刷博物館で開催中の「印刷都市東京と近代日本」へ行ってきました。

幕末維新期から現代に至るまで、国内最大の印刷出版都市である江戸、そして東京。その変遷はまさに近代日本の発展の歴史だとしても差し支えないかもしれません。

そうした江戸、東京の出版の様相を、とりわけ1860~1890年後に着目して紹介します。

構成は以下の通りでした。

プロローグ 東京は印刷都市
第1章 江戸で熟した印刷
第2章 印刷がつくった近代日本
第3章 東京という地場と印刷
第4章 近代日本の出版と印刷都市、東京の躍進


展示は江戸後期、早くも花開いていた出版物から始まります。


杉田玄白、前野良沢、他「解体新書」1774年

まずは1774年の「解体新書」。杉田玄白や前野良沢らが蘭訳本を三年半に渡って訳したこの力作、実は杉田は当初の出来に満足せず、しばらくしてから重訂本が出たことをご存知でしょうか。


大槻玄白「重訂解体新書」1826年

また当時、重要であった蘭学の知識を解説した「紅毛雑話」も興味深い作品。挿絵を担当したの浮世絵師の北尾政美です。


司馬江漢「和蘭天説(太陽真形)」1796年

それに「和蘭天説」も挿絵に注目。こちらは司馬江漢による作品ですが、地動説に基づいた地球の姿や星座、また何故か岩石の転がっているような地面ある太陽などが描かれています。


「南総里見八犬伝」

そして読み物としては「東海道中膝栗毛」や安政地震を国芳が描写した「安政見聞録」なども見どころ。ちなみに安政地震関連では「地震=鯰」ということで、流行したなまず絵もいくつか展示。それに木版画では「南総里見八犬伝」の意匠に富んだ表紙にも要注目ではないでしょうか。

さらに江戸期の有力版元の蔦屋を北斎が表した狂歌本、また広重の「名所江戸百景」なども出ています。こうした工夫を凝らした木版画の数々、江戸の出版文化の多様性と厚みを知ることが出来ました。

さて維新後の日本へと進みましょう。


「太政官日誌」

明治政府は積極的に印刷を活用し、例えば官報ならぬ「太政官日誌」などを発行していきます。またこの時期は印刷も木版から活版へと変化。それにともない社会においても出版印刷がより盛んに行われるようになりました。

その頃の有名な作品としては福沢諭吉の「学問のすゝめ」も。当時の金属製の楷書彫刻活字により印刷されたという初版、稀覯本が展示されています。


「生糸ラベル(前橋生糸商会生糸)

それに経済面では、近代日本の産業を支えた製糸業から、輸出に用いられた生糸のラベルなどを紹介。そして輪転機が誕生し、出版文化を大いに牽引した新聞や雑誌なども多数出品されています。

また先に木版から活版への展開について触れましたが、明治期は様々な版の入り乱れた、言わば群雄割拠の時代でもありました。


「東洋之貴嬢」

芳年の「芳流閣両雄動」は木版ながらも明治の錦絵。それに明治中期に盛んになったという石版額絵の「東洋之貴嬢」もどこかエキゾチックな作品言えるのではないでしょうか。


月岡芳年「芳流閣両雄動」

それに芳年では「郵便報知新聞」や有名な「羅城門渡辺綱」なども展示。またいわゆる開化絵もいくつか出品されています。


「開化因循興廃鏡」

約130点の資料で辿る江戸、そして近代の東京の出版史。近代化の諸相、つまりは文化だけでなく、政治、経済にまで目を向けた厚みのある展示です。見応えは十分でした。

2013年1月14日まで開催されています。文化の日(11/3)は入場無料です!

「印刷都市東京と近代日本」 印刷博物館
会期:2012年10月20日(土)~2013年1月14日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し12月24日(月・祝)、1月14日(月・祝)は開館。12月25日(火)は休館。年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00 *入場は17:30まで。
料金:一般500円、学生300円、中高生200円、小学生以下無料。
 *20名以上の団体は各50円引き。65歳以上無料。11月3日(土・祝)は無料。
住所:文京区水道1-3-3 トッパン小石川ビル
交通:東京メトロ有楽町線江戸川橋駅(4番出口)より8分。JR線飯田橋駅(東口)、東京メトロ有楽町線・東西線・南北線・都営大江戸線(B1出口)より15分。
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「美術にぶるっ!」展の夜間特別観覧会を開催します!

東京国立近代美術館の開館60周年を記念して開催中の「美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年」展。



約2ヶ月超の改装工事を経た展示室も一新。名前も「MOMATコレクション」に変わりました。


MOMATコレクション「展示室10 日本画」

それにしても第一部、第二部をあわせ全500点もの超弩級の展覧会。一部では重文13点を含む東近美の誇るコレクション、そして二部では開館時の50年代を伝える貴重な資料などが展示されています。

東京国立近代美術館の所蔵作品展がリニューアル!(拙ブログ。リニューアルについてまとめてあります。)

実は私も内覧時に一度、伺いましたが、到底全てを見ることも出来ず、改めて出向こうと心に誓いました。


「美術にぶるっ!展 第二部 実験場」展示室風景

さてそうした何度も通いたい「美術にぶるっ!」展でのスペシャルイベントです。来たる11月7日(水)、関係各位のご好意を得て、展示の魅力を伝えて下さるブロガーさん、もしくはTwitter、Facebookのアカウントをお持ちの方100名をご招待、しかも貸し切りでの夜間特別観覧会の開催が決定しました!

【「美術にぶるっ!」ベストセレクション 日本近代美術の100年 夜間特別観覧会】
日時:2012年11月7日(水) 18:30(受付開始)~21:00
会場:東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
スケジュール 受付 18:30~
       ミニレクチャー 18:45~19:00(B1講堂にて)
       特別観覧会   19:00~21:00
定員:100名(抽選)
参加資格:ブログ、Twitter、Facebookのアカウントをお持ちの方で、本展のレビュー記事や魅力をご紹介いただける方。

時間はたっぷりの二時間です。さらに特典として以下の4点も。図録もプレゼントしていただける上、音声ガイドも無料で聞くことが出来ます。

1.参加の皆様(報道関係者含む)だけの閉館後の貸切観覧会です。
2.本展図録をプレゼントいたします。
3.音声ガイドを無料貸し出しいたします。
4.主任学芸員によるミニレクチャーにご参加いただけます。


また会場内も撮影が可能。但し作品の1点撮り、接写、フラッシュ撮影、またストロボ、三脚の使用は出来ませんのでご注意下さい。


MOMATコレクション「作品検索コーナー」

申込方法は以下の通りです。お名前、ご住所、ブログタイトルとURL、またTwitterやFacebookアカウントを記載の上、下記リンク先のフォームからお申込みください。

「『美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年』夜間特別観覧会」申込フォーム

お申し込みの締め切りは11月2日(金)の13:00まで。定員は100名ですが、抽選制です。ご当選者には11月5日(火)までにメールでお知らせがあります。


高松次郎「光と影」1970年 展示室風景

それではまたとない「美術にぶるっ!展 夜間特別観覧会」(11/7)、まずは奮ってご応募下さい!(→申込フォーム



「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2012年10月16日(火)~2013年1月14日(月)
休館:月曜日。但し12月24日と1月14日は開館。年末年始(12月28日~1月1日)。
時間:10:00~17:00 但し金曜は20時まで。
料金:一般1300(900)円、大学生900(600)円、高校生400(200)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。12/1の開館記念日は無料。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「川村清雄展」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「維新の洋画家 川村清雄」 
10/8-12/2



江戸東京博物館で開催中の「維新の洋画家 川村清雄」の報道内覧会に参加してきました。

激動の幕末から明治期、一人の男がひたすらに探求し続けた油彩の長き道のり。実は近代日本洋画表現の黎明期において大きな足跡を残したものの、今に業績が評価されているとは決して言えません。

男の名は川村清雄。黒船来航前夜の1852年、旗本の家に生まれた彼は、幼き頃から画才を現し、幕府の洋学研究機関の開成所画学局へ入門。西洋画を学ぶようになりました。

本展ではそうした川村清雄の業績を、単に残された作品のみならず、幕末の歴史資料までを紐解いて紹介しています。


右:「紺糸素懸威腹巻(川村家伝来)」江戸末期 新潟市歴史博物館

と言うわけで、単に絵画のみの並ぶ展覧会ではありません。冒頭では旗本川村家の甲冑までが登場、その生い立ちから家庭環境までを丹念に辿っていました。

さて清雄が本格的に西洋画の修業をしたのは維新後、明治時代になってからです。1871年、明治4年、徳川家の留学生としてアメリカへ渡った清雄は、その後、パリからヴェネツィアを廻り、アカデミズムの油彩画を学び続けます。


川村清雄「静物写生」明治8年(1875年) 静岡県立美術館 *10/8-11/4展示

そして修業が大変に長期、西欧で学んでいた歳月は何と11年にも及びます。その頃から早くも発揮された才能は初期のデッサン、「静物写生」を見ても明らかではないでしょうか。細部の緻密な表現だけでなく、全体の透明感は特筆に値します。


右:ジャンバッティスタ・ティエポロ「聖ガエタヌスに現れる聖家族」1735-36年 ヴェネツィア、アッカデミア美術館

ちなみに会場では清雄が留学時代にとりわけ感銘を受けたティエポロの「聖ガエタヌスに現れる聖家族」を展示。これは江戸博のみの特別出品です。 (来年2月に静岡県美へ巡回。)

そして1881年、明治14年に帰国した彼は、以降、西洋で摂取した技術を元に、独自の油画表現を切り開いていきました。

さて川村清雄、彼と密接に関わった重要な人物を忘れてはなりません。


川村清雄「江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)」明治18年(1885年) 江戸東京博物館

それが誰もが知る勝海舟。実は清雄は帰国後、一時的に職を失ってしまいましたが、海舟が救いの手を差し伸べ、画家としての生活を取り戻したという経緯があります。

またその援助の仕方が並々ならぬもの。何と海舟は清雄を自邸に招き入れ、画室を建てるまでして、制作を後押しました。


左:川村清雄「形見の直垂(虫干)」明治32(1899年)以降 東京国立博物館 *10/8-10/28展示

まさに最大の恩人が勝海舟です。後に海舟が没した際には、葬儀で着用した白直垂を纏う少女を表した「形見の直垂」を制作。それを終生、手元から離すことはありませんでした。

さて清雄の絵画表現、時代によって変遷はありますが、ともかく油彩という素材への探求とともに、西洋画を規範としながらも、一貫して日本人の伝統的な美意識を見据えているところも重要なポイントです。

個々の作品をいくつか見ていきましょう。


左:川村清雄「波」大正~昭和2年(1927年)頃 静岡県立美術館

まずは得意とした水の描写、例えは「滝」や「波」では、それこそクールベを思わせるような力強いタッチが目を引きます。


川村清雄「貴賤図(御所車)」明治31年(1898年)頃 唐津市

また一転しての平安期の御所車を表した「貴賤図」では、背景の茫洋たる水辺や木立がまるでコローのよう。


川村清雄「お供え」大正~昭和初期 福富太郎コレクション資料室

さらに絹本に油彩という素材の組み合わせも興味深い「梅と椿の静物」では、雅やかな日本のお正月を表現。板に油絵具をのせた「お供え」などはもはやエキゾチックと言えるのではないでしょうか。

そして清雄画の大きな魅力として挙げられるのが画肌の質感です。写真や図版ばかり挙げておきながら言うのも心苦しいところですが、こればかりは実際に作品を見ないと分かりません。


川村清雄「建国」昭和4年(1929年) オルセー美術館

晩年の代表作で、オルセーから里帰りしてきた本邦初公開の「建国」も細部、特に鶏の尾に注意してご覧下さい。何層にも絵具が塗られ、実に力強い画肌が実現していることが分かります。

清雄は最晩年に聖徳記念絵画館の壁画制作の栄誉を得たものの、画壇から離れていたせいか、生前から忘れ去られつつありました。しかしながら残された絵画は極めて雄弁、清雄の大きな業績が確かに示されています。活気すら帯びた絵具のタッチ、まさに画像では到底伝わらない質感表現に強く感心させられました。


展示室風景

それにしても彼の独自に到達した油彩の世界、これなくして、今の日本人の油絵はどのようになっていたのでしょうか。質量ともに充実の作品と資料群、まさに一期一会。ひょっとするとこれ以上望めない回顧展かもしれません。

12月2日まで開催されています。

「維新の洋画家 川村清雄」 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:10月8日(月・祝)~12月2日(日)
休館:月曜日。但し10月8日は開館、翌10月9日は休館。
時間:9:30~17:30  *毎週土曜日は19:30まで。 
料金:一般1300(1040)円、大学・専門学校生1040(830)円、小・中・高校生・65歳以上650(520)円
 *( )内は20名以上の団体料金。常設展との共通券あり。
場所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「英国水彩画展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」 
10/20-12/9



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」のプレスプレビューに参加してきました。

元々西洋において油彩の習作、もしくは素描の色付けとして描かれていた水彩画。それを国民的芸術へと昇華させたのは、イギリスであることは言うまでもありません。

まさにファン待望の展覧会。思う存分、イギリス水彩画ならではの繊細タッチと瑞々しい色味を堪能することができました。


「巨匠たちの英国水彩画展」展示室風景

さて言わば単なる名品展になっていないところも大きなポイントです。

というのも本展では史的変遷を踏まえてイギリスの水彩画を紹介。18~19世紀、イギリスの水彩表現が一体どのように変化し、また発展を遂げていったのかを追う展開となっていました。

展示はピクチャレスクから。水彩画の隆盛した18世紀のイギリスでは、特に風景に対しピクチャレスク、つまりは起伏に富み、変化し、不揃いなものこそ、美に満ち溢れているという考えが生まれます。


右:フランシス・ニコルソン「ゴーデイル・スカー峡谷の滝、ヨークシャー」
鉛筆、水彩・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


そうしたピクチャレスクの一例として印象深いのが、ダイナミックな滝を描いたフランシス・ニコルソンの「ゴーデイル・スカー峡谷の滝、ヨークシャー」。また英仏戦争もあってかナショナリズムも高まり、イギリスを象徴する大聖堂や城砦、それに廃墟が好んで描かれます。


トマス・ガーティン「ピーターバラ大聖堂の西正面」1796-97年
鉛筆、水彩・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


トマス・ガーティンの「ピーターバラ大聖堂の西正面」の美しさと言ったら比類がありません。天を衝くかのようにそびえる大聖堂の威容、細部の精緻な描きこみも見事でした。

一通りイギリスを楽しんだ後は世界へ。いわゆるグランド・ツアーの時代が到来します。アルプス越えのルートが確立した18世紀、イギリス人画家は光を求めてイタリアへと訪れるようになりました。

ここで面白いのがサミュエル・プラウトの「ヴェネツィアの運河のカプリッチョ」、まさに光溢れるヴェネツィアの水辺を描いた一枚です。


サミュエル・プラウト「ヴェネツィアの運河のカプリッチョ」
ペンと茶色のインク、水彩に白のハイライト・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


ちなみにこの作品、タイトルにもあるようにカプリッチョ、ようは実在の建築物を取り込みながらも、架空の景色を表した景観図であることにお気づきでしょうか。

またイギリスの領土拡大により、さらに遠方、スペイン、そして中東から中国といった東方世界への関心が高まったのも同時代。


左:ウィリアム・ホルマン・ハント「岩のドーム、エルサレム、ラマダンの期間」1854-55、1860-61年
水彩、グワッシュ、紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


展示作品中、殆ど唯一の夜景のウィリアム・ホルマン・ハントの「岩のドーム、エルサレム、ラマダンの期間」は、言うまでもなく闇夜に覆われたエルサレムの風景を描いた作品です。

ちなみにハントはいち早く東方へ足を運んだ画家として知られるとか。

そしてイギリスから最も遠いのは中国、ウィリアム・アレクサンダーの「斜堤に接岸しようとする艀船、寧波、中国」も登場。その他にもベイルートにカイロにインドと、水彩を通して当時のイギリス人の見た世界を追体験することが出来ました。

さてイギリス画家といえばターナーです。もちろん今回の展覧会でも出品画家中の最大、約30点もの作品が展示されています。

ターナーはこれまでの緻密な描法を取る画家たちとは一変、細部の水彩のタッチはニュアンスに富み、どこか詩情をたたえた幻想世界を感じさせはしないでしょうか。


J.M.W.ターナー「アップナー城、ケント」1831-32年
水彩、グワッシュ・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


一際目立つ「アップナー城、ケント」も圧倒的。輝かしき夕陽が城から水辺を覆い、湾の水面には細かな船影が美しく表されています。またここでは右下の流木の傍のライフル銃にも注目。これは当時、アップナー城が火薬庫として使われていたという暗示だそうです。


J.M.W.ターナー「ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む」1841年
水彩、グワッシュ・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


それに水面と言えば、「ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む」も忘れられません。画面全体をターナー一流、透明感にも満ち溢れたエメラルドグリーンが覆っていました。

さて今回、私があえて一押しにしたい作品が第5章「幻想」のセクションに。それがジョン・マーティンの「マンフレッドとアルプスの魔女」に他なりません。


左:ジョン・マーティン「マンフレッドとアルプスの魔女」1867年
水彩、グワッシュ・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


まさにこれぞ拙ブログのタイトルの名付け親、詩人バイロンの劇詩「マンフレッド」を題材にした作品。洞窟の魔女とマンフレッドの対峙する様子がドラマチックに描かれています。

そしてここで興味深いのはマンフレッドの背後に何やら白い人物の影があること。これは塗り残しではなく、魔女の要求するマンフレッドの魂、ようは亡霊なのです。


右:フォード・マドックス・ブラウン「ロミオとジュリエット」1867年
水彩、グワッシュ・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


ちなみに展覧会ではバイロンをはじめ、ミルトン、シェイクスピアなどと、文学主題の作品もいくつか登場。ラファエル前派の画家フォード・マドックス・ブラウンの「ロミオとジュリエット」も目を引きました。

さて19世紀も半ば、ヴィクトリア朝時代に入ると水彩表現も大きく変化していきます。


左:アナ・ブランデン「リザード・ポイント、コーンウォール」1862年
水彩、グワッシュ・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


その一つの要因として挙げられるのが、水彩絵具に白色を混ぜて作られた不透明な色彩、ような体質顔料ともグワッシュとも呼ばれる顔料が取り入れられるようになったことです。よってアナ・ブランデンの「リザード・ポイント、コーンウォール」など、一見、油絵と見間違うような色味の濃い水彩画が登場します。


アンドリュー・ニコル「北アイルランドの海岸に咲くヒナゲシとダンルース城」
鉛筆、ペンとインク、水彩・紙 マンチェスター大学ウィットワース美術館


またこの時代には自然主義的性格の強い風景画も隆盛。イギリス各地の自然がたくさん描かれていきます。その代表例がアンドリュー・ニコルの「北アイルランドの海岸に咲くヒナゲシとダンルース城」。色鮮やかな野の花の向こうには、城の姿を望むことが出来ました。

ラストは再びターナーです。ロマン派から次の世代への新しい表現すら予感させる「濡れた浜辺に沈む夕陽」で締めくくります。



そういえば来秋には東京都美術館でターナー展開催のアナウンスも。70名のイギリス人画家による150点の水彩画、これほどまとまって見られる機会もそう滅多にないかもしれません。

12月9日まで開催されています。

「マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:10月20日(土)~12月9日(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。
料金:一般1400(1200)円、大学・高校生1000(800)円、中学・小学生700(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「田中一光とデザインの前後左右」 21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHT
「田中一光とデザインの前後左右」 
2012/9/21-2013/1/20



21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「田中一光とデザインの前後左右」へ行ってきました。

「日本を代表するグラフィックデザイナー」(公式WEBサイトより転載)として知られる田中一光(1930~2002)。既に亡くなってから10年の時が過ぎました。

この展覧会では田中一光の創作の全体像を、残された作品はもとより、各種資料から検証しています。

まずはギャラリー1、「本の世界」から。ここでは言うまでもなく一光の本の装幀の仕事です。


「Music Today 73」ポスター 西武劇場 1973年

会場にずらりと並ぶ150冊もの書籍、もしくは雑誌類。実際に一光は全部で640冊もの本の装幀などを手がけたそうですが、まさに「本が好きだ。」と語った彼の本に対する熱意、また愛情が感じられる展示ではないでしょうか。

そして一際目立つのは函入りの豪華本です。一光は平八郎、御舟、古径らの画集のデザインも担当します。表紙には各画家の筆跡が箔押しで記されていました。

またこうした日本画家の画集の他、古来の紋を集めた「日本の文様」の仕事しかり、一光の日本の伝統への強い関心は、いずれもの作品からも見ることが出来ます。

その一例として挙げられるのが琳派へのシンパシー。彼は別冊太陽の琳派特集において構成はおろか、執筆までを担当するほど、琳派を愛していたとか。


展示書籍より

それに彼のデビューを実質的に後押しした具体のリーダー、吉原治良との関係から、具体関連の書籍も多数所有していたそうです。

「本というものは、任されたら、子どもに対するように慈しまないといけない。」という一光の言葉、心にしみるものがありました。


「文字からのイマジネーション」ポスター モリサワ 1993

さて後半はポスターとグラフィックアート、そしてそこから広がった様々なディレクション活動の軌跡です。10のテーマに沿って一光の制作が紹介されています。

まずはタイポグラフィー。一光は自身で「光朝」というフォントまで作るほど、デザインと文字との関係を追求し続けました。


「JAPAN」ポスター 社団法人日本グラフィックデザイナー協会 1986年

そして先にも触れた日本の伝統、とりわけ琳派への強い関心。それは例えば「日月山水図屏風」から連山のデザインパターンを、また宗達の鹿のモチーフをポスターに使ったことでも分かります。

またいわゆる紋のセンスを企業のシンボルマークに取り込む方法も。彼の石丸電気のマークは一光が紋にヒントを得て制作しました。


「Nihon Buyo」ポスター UCLA Asian Performing Arts Institute 1981年

そして彼は日本の伝統をデザインとして世界に発信。1981年にアムステルダムで行われたジャパンディの他、1984年のモスクワの「日本のデザイン展」など、各国で行われた日本関連の展覧会にも積極的に参加しています。

またよく知られるように広告制作の分野でも多大な業績が。紋との関連として例を挙げた石丸電気ではシンボルマークだけでなく、店内のサインシステムやネオンまで手がけています。

そして資生堂にロフト、DNP、TOTO、さらには立ち上げ時からセゾンのクリエイティブディレクターとして関与した無印良品も、全て一光の仕事なのです。


「イサム・ノグチ展」ポスター 有楽町アートフォーラム 1985年

ちなみにこのセゾンとの関係では、無印の他にも、西武美術館のポスターやディスプレイにカタログ、そして舞台芸術として西武劇場などの仕事についても言及があります。こうした膨大な一光の業績を追っていくと、初めにも触れた「日本を代表するグラフィックデザイナー」という言葉、全く誇張ではないことがよく分かるかもしれません。

なお会場には本展の構成とグラフィックデザインを担当した廣村正彰によるインスタレーションも展示されています。


廣村正彰「His Colors」

これは一光が選定に携わった色紙「タント」にヒントを得て作られた作品なのだそうです。こちらは撮影可能でした。

「田中一光とデザインの前後左右/フォイル」

彼のデザインには一目見るだけで頭に焼き付くようなインパクトとともに、どこか強い矜持、そして「凛」とした佇まいがあります。

「田中一光自伝 われらデザインの時代/白水uブックス/白水社」

琳派だけでなく日本の伝統を見据え、世界へ発信し得るデザインを獲得した田中一光。その業績はまさに圧倒的でした。

2013年の1月20日まで開催されています。ずばりおすすめします。

「田中一光とデザインの前後左右」 21_21 DESIGN SIGHT
会期:2012年9月21日(金)~2013年1月20日(日)
休館:火曜日。但し10月30日、12月25日は開館。年末年始(12月27日~1月3日)。
時間:11:00~20:00(入場は19:30まで)
料金:一般1000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料。
 *15名以上は各料金から200円割引
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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「シャルダン展」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館
「シャルダン展 静寂の巨匠」
2012/9/8-2013/1/6



三菱一号館美術館で開催中の「シャルダン展 静寂の巨匠」へ行ってきました。

決して知名度は高いとは言えない18世紀フランス、ロココ時代の画家、ジャン=シメオン・シャルダン(1699-1779)。

生前は王立アカデミーの画家として地位を築き、主に静物・風俗画において業績を示したものの、死後は忘れられ、19世紀後半になってようやく再評価されました。

60年に渡る画業において残した作品は238点。(本展監修者のピエール・ローザンベールが編纂した最新の総目録による。)その期間を考えると決して多くはありません。

本展ではそうした言わば稀少、また知られざるシャルダンの軌跡を、ルーブルをはじめ、世界各地から集められた全38点の作品で辿っていきます。

構成は以下の通りでした。

第1部 多難な門出と初期静物画
第2部 「台所・家具の用具」と最初の注文制作
第3部 風俗画-日常生活の場面
第4部 静物画への回帰
シャルダンの影響を受けた画家たちと「グラン・ブーケ」~三菱一号館美術館のコレクションから


さて初めにロココと書きましたが、ともかくシャルダン、まず何をもって魅力的かと言えば、おおよそ時代から想像しうる華美さや豪奢をあえて持ちえない、ひたすらに静謐でかつ寡黙な静物画の数々です。

1699年、パリの下町、ビリヤード台職人を父に持つ一家に産まれたシャルダンは、画家を志し、当初風俗画を手がけるものの、静物画へと転向。遅咲き29歳にして王立アカデミーへ入会、動物と果物に精通した画家として評価を得ました。

冒頭で紹介されるのは、モチーフを極めて限定、身近な文物を寄せて集めては小画面へ落とし込んだ初期の静物画です。


ジャン・シメオン・シャルダン「すももの鉢と水差し」1728-30年頃
油彩、画布 44.25×56.20cm ワシントン、フィリップス・コレクション


シャルダンが生涯に好んで取り上げた銀のゴブレットの登場する「昼食のしたく」(1728年以前)や、おそらくは中国の水差しを描いたとされる「すものの鉢と水差し」(1728-30年頃)などからは、早くも画家一流の的確な表現力を見て取れるのではないでしょうか。

しかしながら単なる精緻な静物画ではないところがシャルダンの大いなる特徴。細部へ目を凝らすと塗りは意外と薄く、静物画に有りがちな物質感のみを強調しているわけではないことがよく分かります。

また彼が「用具の美」を発見し、さらにモチーフを広範囲に、いわゆる厨房画を描いた中期へ至る作品でも同様です。


ジャン・シメオン・シャルダン「肉のない料理」1731年
油彩、銅板 33×41cm パリ、ルーヴル美術館

当時、室内空間を左右対称に飾るために好まれたという対作品から「肉のない食事」と「肉のある食事」を見てみましょう。


ジャン・シメオン・シャルダン「肉のある料理」1731年
油彩、銅板 33×41cm パリ、ルーヴル美術館


ここでも確かに銅鍋の表面、また陶製の壺などは確かに細やかに描かれているものの、例えば前者における白い布、もしくは後者の肉片の白い筋などには、白のハイライトが思いがけないほど大胆に塗られていることが分かります。

シャルダンは単に細微を伺ったのみの画家ではありません。その答えこそ晩年の静物にあるわけですが、当初、チラシなどから受けていたイメージ、つまりともかく細やかな静物を描いた画家という先入観からすると、少し驚きを覚えるほどでした。

さて晩年の静物に進む前にもう一つ、シャルダンの画業において重要な風俗画も忘れてはなりません。

実は当時、いわゆる静物画家は地位が低く、収入も不安定。よって同時代の画家ジョセフ・アヴェドの勧めもあり、購入層に王侯貴族も多い風俗画を描くようになりました。


ジャン・シメオン・シャルダン「食前の祈り」1740年頃
油彩、画布 49.5×41cm パリ、ルーヴル美術館


母と姉の見守る中、小さな椅子に座った男の子が食前の祈りを捧げる「食前の祈り」(1740年頃)など、もの静かで限定された空間での風景は、言わば画中の物語性よりも一瞬間の日常を切り取った、オランダの室内画のような風情があるのではないでしょうか。

再びシャルダンが静物画へ取り組むようになったのは、風俗画を描いてから15年経ってからのことです。注文制作が増え、年金などの収入も安定した彼は、それこそ初期の頃のように静物画ばかりを描くようになりました。

そうして残された後期、晩年の静物画、一言で特徴を表せば、ともかく心に染み入る詩情すらたたえた幻想的な佇まいに他なりません。

技法としてはより熟練、塗りは柔らかくまた滑らかになり、構成も全体の調和が求められていきます。


ジャン・シメオン・シャルダン 「銀のゴブレットとりんご」1768年頃
油彩、画布 33×41cm パリ、ルーヴル美術館


得意とするコブレットを取り入れた「銀のゴブレットとりんご」(1768年)も魅惑的。奥行きのほとんどない、もはや場を特定することさえ困難な暗がりの地平へ置かれたコブレットやリンゴ。表情はひたすらに寡黙、空間に無駄もありません。


ジャン・シメオン・シャルダン「木いちごの籠」1760年頃 
油彩、画布 38×46cm 個人蔵


またちらし表紙に掲載された「木いちごの籠」(1761年頃)。何処ともつかぬ場にぽっかりと盛られた木いちご、その存在感は、思いの外に果敢な気。また見方を変えれば虚無的であるとさえ言えないでしょうか。

向き合えば向き合うほど画中の静寂に取り込まれ、いつしか瞑想すら誘われるようなシャルダンの絵画世界。出品数38点に過ぎませんが、見終えた後の充足感、そして後から訪れる深い余韻は何物にも変え難いものがありました。

ロングランの展覧会です。来年1月6日まで開催されています。おすすめします。

「シャルダン展 静寂の巨匠」 三菱一号館美術館
会期:2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は翌火曜休館。(但し12月25日は開館。)年末年始(12/29~1/1)
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「日本の70年代 1968-1982」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982」
9/15-11/11



埼玉県立近代美術館で開催中の「開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982」へ行ってきました。

タイトルにもあるように今年、開館30周年を迎えた埼玉県立近代美術館。

それを記念して、60年代末から70年代、つまりは開館の1982年から遡ること約15年間の文化、また時代性を探ろうとする展覧会が行われています。

その名も「日本の70年代 1968-1982」。ただし単に絵画だけを紹介するような美術展ではありません。

館内に所狭しと並ぶのは多種多様、70年代のデザイン、建築、演劇、漫画、音楽、そして美術など、いずれも時代を証言する資料や作品ばかり。各ジャンルを横断する展示となっていました。

はじまりは全共闘です。佐々木美智子は「日大全共闘」(1968年)において、当時吹き荒れた学生運動を写真、映像に残しました。


佐々木美智子「日大全共闘」1968年 作家蔵

また闘争といえば成田空港の開港も70年代。1962年に新空港の建設が決まると、多くの死者を出すほどの激しい反対運動が巻き起こりました。

そうした状況において赤瀬川原平がポスターに示したのが「櫻画報三里塚版」(1971)。時の首相佐藤栄作と千葉県知事友納武人の乗った飛行機を戯画的に描いた横には、「三里塚一便をハイジャックせよ。」との一文が。これは強烈なビジュアルでした。

さて70年代の最大のイベントとして有名なのが、言うまでもなく1970年の大阪万博。延べ6000万人を超える人々が入場したという、後にも先にも国内最大の博覧会に他なりません。

展示ではそのうち「せんい館」と呼ばれた繊維業界のパビリオンに注目。デザインはかの横尾忠則。赤いドーム型の建物からして一種、異様な雰囲気を漂わせていますが、内部もまた不思議。


「日本万国博覧会 せんい館」1970年

四谷シモンは「マグリットの男」において、日、英、ポルトガル語を話し、頭部からレーザーが出るという奇妙なマグリットを模した人物像を作りました。

ちなみに「マグリットの男」の音声を担当したのは湯浅譲二です。CDでその音声と、当時の「せんい館」で使われたBGMを聞くことも出来ました。

続いて70年代の雑誌文化へと進みましょう。まさにちょうど70年に創刊したのが「アンアン」。ファッションとともに観光地特集は大きな評判となり、雑誌を見ては旅に出る女性、アンノン族という言葉まで生み出しました。

そうしたアンノン族を意識したのが国鉄の「ディスカバリー・ジャパン」です。ようは各地へ鉄道を使って旅をしようというキャンペーンですが、そのポスターへ、当時としては斬新だった抽象的イメージと若い女性を取り込んでいます。


「ぴあ 創刊号」1972年8月 ぴあ株式会社

ちなみにアンアンをディレクションした堀内誠一は、「ポパイ」(1976)、「ブルータス」(1980)も手がけたそうです。また「ぴあ」の創刊も1972年。若者向けのポップカルチャー雑誌はこの時代に花開いたと言えるのかもしれません。

また展示は前後しますが、ポップと言えば谷川晃一の「アール・ポップ」も興味深いところ。


谷川晃一「タチカワ・ベースキャンプ」1976年

これは70年代後半、アメリカナイズされた日本的感覚を指した概念で、彼がそうした文脈に沿うもの、例えばレコードやTシャツなどを、池袋のPARCOで紹介するという展示も行いました。

ちなみにPARCO一号店が池袋に出来たのは1969年。そして1973年には渋谷にもオープン。さらに1975年に西武美術館も開館します。

当時はいわゆるセゾングループが若者向けの文化的戦略を果敢に行っていた時代でもありましたが、そうしたパルコ文化、セゾン文化も、日本の70年代後半の文化を位置づける一つの潮流として重要だと言えそうです。


関根伸夫「映像版 位相-大地」1968/2005年 制作:関根伸夫・埼玉県立近代美術館

さて次は美術へと。60年代から70年代と言えば「もの派」の時代。関根伸夫の「位相-大地」の映像版の他、李禹煥の「線より」(1980年)など、お馴染みの作品が並びます。


北辻良央「WORK -HH」1982年 個人蔵

また榎倉康二の写真、「予兆」も。彼はもの派の影響も受けていますが、今回のようにストレートフォトも手がけていたのだそうです。また写真では高松次郎の「写真の写真」(1973年)、山崎博の「鵠沼」なども目を引きました。

ラストはここ舞台、埼玉県立近代美術館建造へと至るストーリーです。言うまでもなく設計は黒川紀章。彼の描いた美術館のスケッチなどが紹介されています。


田中一光「埼玉県立近代美術館開館ポスター」1982年

また埼玉県立近代美術館のロゴタイプは田中一光が担当したとか。1982年の開館記念の「印象派からエコール・ド・パリへ」展のポスターも彼の手によるものです。

なお黒川紀章については「中銀カプセルタワー」(1972年)の資料が、また田中一光についても、例えば先ほど触れた西武美術館のオープン展のポスターなどが展示されていました。



最後に会場内に嬉しい仕掛けも。70年代の学生の部屋を模した再現コーナーが設置されているではありませんか。



ここは何とウォークイン方式、撮影も可能です。



実は私は70年代を殆ど知らないのですが、ちゃぶ台にギターにオセロを見ていると、どこか懐かしい感覚を受けました。



それに良く知られるように、北浦和公園には黒川紀章の「中銀カプセルタワー」の住宅カプセルも常時設置中。



また展示を踏まえると、美術館の建物自体も改めて新鮮に映るもの。ずばり私はこの美術館の建物が好きですが、改めて魅力的だと思いました。

出品リストはなく、キャプションも少なめです。時代を知らない私にとっては、展示を細かに追いかけるのが少しキツかったのも事実ですが、そこは図録が補完。小さめのサイズながらもなかなか秀逸。お値打ちの1300円でした。

11月11日まで開催されています。

「開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:9月15日(土)~11月11日(日)
休館:月曜日。但し9月17日、10月8日は開館。
時間:10:00~17:30
料金:一般1000(800)円 、大高生800(640)円、中学生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「リヒテンシュタイン展」 国立新美術館

国立新美術館
「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」 
10/3-12/23



国立新美術館で開催中の「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」のプレスプレビューに参加してきました。

「ようこそ、わが宮殿へ。」

数多くある展覧会のコピーの中でも、これほど内容を的確に示したことはなかったかもしれません。

早速、最大の見どころといきましょう。豪華絢爛、堂々登場の「バロック・サロン」です!


「バロック・サロン」展示室風景

これがあの新美の展示室なのか、と驚かれる方も多いかもしれません。

しかしながらここは確かに六本木の国立美術館。おそらくは美術館としてはこれ以上叶わないほどの作り込みをもって、ウィーン郊外、ロッサウ伯爵家の「夏の離宮」を模した空間を再現しています。


「バロック・サロン」展示室風景
天井:アントニオ・ベルッチ「占星術の寓意」、「彫刻の寓意」、「絵画の寓意」、「音楽の寓意」1700年頃 油彩、カンヴァス


国内美術展史上、初めて天井に展示された天井画もご覧の通り。もちろん作品は近くで見てこそ楽しめるというご指摘もあるかもしれませんが、まさに全方位でバロック芸術を体感出来る空間を前にすると、その雰囲気に圧倒されること間違いありません。

また心憎いのは調度品が露出展示されている上、ともすれば雰囲気損なってしまうキャプションが取っ払われていること。


「バロック・サロン」展示室風景
タペストリー:ヨッセ・デ・フォスの工房、ブリュッセル「収穫」1690年頃 羊毛、絹


もちろん事前に用意されたバロック・サロンの「展示コンセプト」シートを片手に、一点一点の作品と向き合うのもよし。ともかくは先入観抜きでバロック芸術をインスタレーション的に楽しめるというわけでした。

さてこの前代未聞のリヒテンシュタイン展、何もバロック・サロンで全てが終わるわけではありません。

さらにもう一つ、注目すべきは「ルーベンス・ルーム」です。

リヒテンシュタイン公爵家は全部で30点あまりのルーベンスを所有しているそうですが、うち10点が「ルーベンス・ルーム」に集結。


「ルーベンス・ルーム」展示室風景
左:ペーテル・パウル・ルーベンス「占いの結果を問うデキウス・ムス」(デキウス・ムス連作より)1616-1617年 油彩、カンヴァス


中でも縦3メートル、横4メートルはあろうかという「デキウス・ムス」は見事の一言。そもそもこの連作は8枚あり、いずれもタペストリーの下絵として描かれたものですが、到底下絵とは思えない油彩の力強い筆致、ドラマティックな構成には目を奪われます。


ペーテル・パウル・ルーベンス「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」1616年頃 油彩、板で裏打ちしたカンヴァス
LIECHTENSTEIN, The Princely Collections, Vaduz-Vienna


なおこの「デキウス・ムス」は東京会場のみの展示。小品ながらも愛娘クララを描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」もまた充実していますが、ルーベンスにこれほど圧倒されたことは少なくとも私自身、初めての経験でした。

さて続いては「名画ギャラリー」。リヒテンシュタイン公爵家のヨーロッパ絵画コレクションが54点ほど展示されています。

まずはルネサンス、来年に国立西洋美術館で展覧会も控えたラファエロの「男の肖像」です。


ラファエッロ・サンティ「男の肖像」1502/04年頃 油彩、板
LIECHTENSTEIN, The Princely Collections, Vaduz-Vienna


やや口元を引き締め、どこか涼しげな視線をこちらに向けた男性の姿。帽子と衣服の深い黒の効果もあってか、実に迫力のある作品となっています。


レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「キューピッドとしゃぼん玉」1634年 油彩、カンヴァス
LIECHTENSTEIN, The Princely Collections, Vaduz-Vienna


またバロックではレンブラントの初期作、「キューピッドとしゃぼん玉」も充実しているのではないでしょうか。レンブラント一流の光と闇の対比表現、細部も初期作ならではの精緻極まりない描きこみが目を引きました。


「名画ギャラリー」展示室風景

そしてさらに面白いのは、日本ではあまり知られていない「ビーダーマイヤー」の画家たちが紹介されていること。

これは19世紀前半から中盤にかけ、主に中欧で流行した絵画芸術様式で、新古典主義的な描法を基盤にしながらも、神話や歴史ではなく、身近な人物や風景が描かれました。

そしてリヒテンシュタイン公爵家はビーダーマイヤーをバロックに次ぐコレクションの中核と位置付けて、現在も購入を続けています。


左:フリードリヒ・フォン・アメリング「夢に浸って」1835年頃 油彩、カンヴァス

とりわけ公爵家とも交流の深かったオーストリアの画家フリードリヒ・フォン・アメリングは思いの外に魅惑的。物静かながらも、比較的明るいタッチで描いた2枚の女性の肖像、「夢に浸って」と「麦わら帽子の女」には強く惹かれました。


ヨアヒム・フリース「ぜんまい仕掛けの酒器(牡鹿に乗るディアナ)」1610-12年 銀、鋳造、打ち出し細工、彫金、鍍金、コールドエナメルによる彩色装飾

さてラストは工芸、先にバロック・サロンを見ても明らかですが、実は本展、驚くほどに彫刻作品が充実しています。

その代表例こそが、マティアス・ラウフミラー作のその名も「豪華なジョッキ」です。


マティアス・ラウフミラー「豪華なジョッキ」1676年 象牙

モチーフには古代ローマの「サビニの女たちの略奪」の物語を取り入れ、ともかく細かでデコラティブな装飾に目を見張りますが、これが象牙であるのことを知るとまた一層驚かされるのではないでしょうか。

ドイツ・バロック象牙芸術の最高傑作とも呼ばれる名品、ひょっとすると一点としては本展のハイライトであるかもしれません。


「エントランス」展示室風景
手前:マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ「メディチ家のヴィーナス」1699-1702年 ブロンズ、赤褐色の色付け


今年の西洋絵画の大規模展の中では最も重厚感のある展覧会です。噂の天井画には驚かされましたが、上にも触れたようにそれだけではありません。ルーベンスに豪華な調度品など、実に見どころの多い内容となっていました。

12月23日までの開催です。強くおすすめします。

「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」@Liechtenstein_J) 国立新美術館
会期:10月3日(水)~12月23日(日・祝)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00 *金曜日は20時まで開館。
料金:一般1500(1300)円、 大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は団体料金。10月と11月の土・日・祝日は高校生無料観覧日(要学生証)。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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東京国立近代美術館の所蔵作品展がリニューアル!

今年、開館60周年を迎えた東京国立近代美術館。

7月末より所蔵作品展のリニューアル工事が行われていましたが、この度無事終了。いよいよ10月16日(火)からの「美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年」展でお披露目されます。



というわけで早速、リニューアルのポイントをご紹介。

まずはその1、名前から。所蔵作品展の名前が「近代日本の美術」から「MOMATコレクション」に改称。実は近代の日本美術の他にも海外作品のコレクションが多い同美術館、この点を踏まえての名称変更となりました。


4階「MOMATコレクション」入口

まずは順に沿って4階の入口から。ともかく目に飛び込んで来るのがオレンジ色のカーペット。そこには検索端末の他、フロアガイドなどが設置されています。


4階「作品検索コーナー」

これがかつて3階にあった作品検索コーナー。4階の入口に移設されました。


4階「所蔵作品検索コーナー」

さてカーペットの敷かれた空間に沿いながら、もう一歩奥へと進みましょう。これぞリニューアルのポイントの2つ目、インテリアも一新された休憩スペース、名付けて「眺めのよい部屋」に他なりません。


4階「眺めのよい部屋」

もちろん前も同じように皇居を望む見晴らしのよい休憩コーナーがありましたが、如何せん奥まった場所だったので、あまり目立っていなかったとのこと。

それを入口からのオレンジのカーペットで動線を作り、さらに「眺め」を強調することで、より親しみやすく利用しやすい場へ生まれ変わったわけです。

さて今度は展示室に戻り、順路冒頭から。初めの暗がりの空間がリニューアルポイントの3、新設の「ハイライトコーナー」です。


4階「展示室1 ハイライト」

ここでは常時、所蔵作品の中から特に重要な作品がピックアップして展示されます。まずは一目で東近美のコレクションの中核をおさらい出来るようになりました。


4階「展示室3 人を表す」

さてさらに展示室の奥へ。すぐに気がつくのは、かつてのガランとした廊下のようなスペースがあるのではなく、いくつもの小部屋が連続していることです。


3階「展示室9 写真」

これがポイント4。細かく分けられた部屋による「テーマ展示」。これにより大小様々なテーマが連続しながら、全体のMOMATコレクションを形成していくというイメージが出来上がりました。

そして3階へ廻るとポイント5。新設の「日本画コーナー」が出現。


3階「展示室10 日本画」

これまでも日本画は3階に集中していましたが、リニューアル後は「日本画コーナー」のみの展示です。これまでの洋画と日本画の混在する展示スタイルも興味深いものがありましたが、外国のお客様からの日本画だけを見たいというリクエストにも答えたのだとか。


3階「展示室10 日本画」

照明を落とし、あえて黒に包まれた空間を作ることで、日本画の魂とも言える「色」を引き出す工夫がとられています。


3階「日本画10 日本画」

ちなみにケースや照明は基本的に既存のものが使われています。ただし床のテカリ、ようは光の反射を低減する仕掛けが。その効果か、全体的に作品がくっきりと際立っているような印象を受けました。日本画の展示環境は間違いなく向上しています。


3階「建物を思う部屋」

またかつて菅木志雄の「景留斜継」が設置されていた空間は「建物を思う部屋」に改称。建設当時の姿をそのまま残す窓とサッシに向き合いながら、谷口建築を偲ぶというスペースへと生まれ変わりました。


「展示室5 風景を描く」解説パネル

サインシステムも一新しています。作品解説に外国語表記が加わりました。


2階「展示室12 疑うことと信じること 2」

リニューアルを手がけられた建築家、西澤徹夫氏の言葉です。(リリースより転載)

「この美術館には、長い歴史の間に、さまざまな要素が入り込んでいます。そして、今はそれらが何ともいえない自然さで共存しています。ですからそれらの要素を全部キャンセルして谷口のオリジナルに近づけるのではなく、もちろん谷口を離れてまったく新しくするのでもなく、大小の改変の積み重ねが今後より豊かな空間に結びつくよう、今あるものをニーズに合わせて整理整頓する、というあたりを目指しています。

この「自然さの共存」、「豊かな空間」、「整理整頓」こそ、まさに今回のリニューアルの重要なキーワードではないでしょうか。


2階「展示室12 疑うことと信じること 2」

従来の重厚な佇まいはそのままにしながらも、空間を区切ることで展示のテーマ性を際立たせ、また日本画やハイライトコーナーなど、コレクションをある程度整理して提示すること。それに木のベンチやケース、そしてロープを用いた停止線など、細かな部分に「温かみ」や「優しさ」が感じられるのも嬉しいポイントでした。



初めにも触れましたがオープニングは全館規模で開催される「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」。一部、二部あわせて出品数500点を超える一大所蔵品展です。


3階「展示室6 前衛の登場」

実のところ内覧時の短い時間では作品を殆ど見ることが出来ませんでした。よって改めて出向き、展覧会の様子をブログへまとめたいと思います。

さらに長らくクローズしていたレストランもようやく復活。三國清三シェフのレストラン「ラー・エ・ミクニ」が10月16日よりオープンします。



展示に初参加、田中功起さんのインスタレーションがまた楽しいことになってます!

60周年のリニューアルオープン、美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」は、10月16日(火)からはじまります。

「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2012年10月16日(火)~2013年1月14日(月)
休館:月曜日。但し12月24日と1月14日は開館。年末年始(12月28日~1月1日)。
時間:10:00~17:00 但し金曜は20時まで。
料金:一般1300(900)円、大学生900(600)円、高校生400(200)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。12/1の開館記念日は無料。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「中西夏之展」 DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館
「中西夏之 韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑」
2012/10/13-2013/1/14



DIC川村記念美術館で開催中の中西夏之展、「韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑」のプレスプレビューに参加してきました。

1950年代より半世紀に渡って「絵画とは何か。」を問い続ける画家、中西夏之(1935~)。

かつてパフォーマンスから舞台芸術を手がけていたという経歴からしても、その全貌を俄かに知ることは困難かもしれませんが、今、DIC川村記念美術館にて、中西の主に絵画へ焦点を当てた展覧会が行われています。


202展示室風景

展示と作品の時間軸は3つ。まさにタイトルにもあるように初期、1950~60年の「韻」と1960年代の「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」、そして2010年前後の近作、「擦れ違い/遠のく紫/近づく白斑」です。

そしてそれぞれのシリーズを「共振」(展覧会概要より引用。)させることによって、表現の根底を探る内容となっていました。

さて展示はT字型のモチーフが印象的な「韻」から始まります。


右:「韻 '60」1959-60年 ペイント・エナメル・砂、合板 広島市現代美術館 他

ともかくはその重厚な質感、砂を混ぜた塗料を盛ったマチエール、そして言うまでもなくT字型のモチーフに注目です。

中西は活動の当初、絵画において形の全てを線で捉えることには違和感を覚え、やがて線を破線に、さらには連なる点へと変化させていくようになりました。

その破線、もしくは点は、線によって分けられる内と外の関係を曖昧にし、どこかアンフォルメル的な画面を生み出していきます。

その中で現れたのがT字型です。それはスプレーガンと筆でT字を型取り、画面上をさながら細胞、皮膜的に覆っていくものですが、中西は一貫してT字を周縁へ拡散していくような表現をとっています。

また拡散のキーワードは時代が進んでの「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」でも重要です。


「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」1963/93年 洗濯バサミ、紐、カンヴァス(5点組) 個人蔵

中西はこの頃、洗濯バサミを体に挟むといったパフォーマンスも行っていましたが、そのハサミを今度は絵画上へ展開。ハサミの密な部分と粗な部分が反復し、そこに光の陰影が加わることで、独特の質感を帯びた「絵画」を作ることに成功しました。

ちなみに中西は元々、人間の身体に関心があり、根本的に画家は人を描くものだと考えていたそうです。


「ドローイング」1959-60年 インク、紙 個人蔵

その一つの表れとして残っているのが、最初期のドローイング。確かに人の姿が描かれていました。

さて二番目のメインの大きなフロア、203展示室へ進むと、そこはまさに紫と白の斑点の浮遊する世界。中西の近作の絵画が一堂に展示されています。


203展示室風景

まず興味深いのは展示の仕方、壁に掛けられている作品を除けば、何れもがキャスターの付いたイーゼルの上に設置されているではありませんか。

近作の「擦れ違い/S字型還元」もご覧の通り。これは人がすれ違う瞬間、行き来する人の未来と過去を対照的に捉え、それを一つの絵画へ立ち上げた作品とのことですが、確かに起立する面はそうした時間や空間を繋ぐ接点、ようは窓であると言えるのかもしれません。


手前:「擦れ違い/S字型還元」2012年 油彩、カンヴァス 個人蔵

またその起立する作品群はまさに空間を仕切る屏風絵のよう。見る側の立ち位置によって風景は大きく変化していきます。

中西は本来的に自然に存在するのは水平面であって、人間が介入することで初めて垂直面が生じ、その垂直へどう介在するのかが絵画制作であるとも考えています。そうした垂直性を強く意識した展示も、見るべきポイントなのかもしれません。


手前:「背・白 edge-2009 c」2010年 油彩、木炭、カンヴァス 個人蔵

さて絵画を特徴付ける紫と白と地のグレー、その塗り方にも興味深いものがあります。中西は絵を描く上で長い筆の先に刷毛を付け、なるべく垂直に筆を置くようにしているそうですが、確かに白い斑点は絵具を上から垂らしたように盛り上がっています。

また地のグレーは上から塗ったものではなく、一度下地として白を塗った後、拭き取ることで表れた色だそうです。

なおこのグレーに関連し、いくつかの絵画において興味深い関係が。


「中央と後方」、及び「中央と後方 地塗反転」 2009年 油彩、カンヴァス いずれも個人蔵

と言うのも壁に掛けられた「中央と後方」の4点の作品。実は一番左と左から三番目、そして左から二番目と一番右が、それぞれのイメージ、さらには白とグレーの関係においても『反転』しているのです。

つまり前者の例を挙げると一番左の「中央と後方 地塗反転-1」は左から三番目の「中央と後方-2」を写して描いています。


「中央と後方-2」2009年 油彩、カンヴァス 個人蔵

また写真ではわかりにくいかもしれませんが、塗りにおいても、本来的に拭き取って生まれるグレーの部分へにあえてグレーを加えています。つまり下地が絵具の層へと転換しているのです。


「中央と後方 地塗反転-1」2009年 油彩、カンヴァス 個人蔵

もちろんトレースなりして描いているわけではないので、厳密な写しではありませんが、このように作品同士を連鎖、反復させていくことで、言わば連続性を生み出させるとともに、全体として共鳴する何かを探っているというわけでした。

さて千葉市美との提携企画の情報です。10月末から始まる須田悦弘展にあわせ、両展会期中の土日、相互を結ぶ無料のシャトルバスが運行されます。

[DIC川村記念美術館~千葉市美術館無料シャトルバス]
運行日:11/3(土)~12/16(日)までの毎週土・日曜日。
時刻表:千葉市美術館発12:00/14:00 → DIC川村記念美術館着、DIC川村記念美術館発13:00/15:00→千葉市美術館着

また半券を提示するとそれぞれの割引サービスを受けられます。

[千葉市美術館「須田悦弘展」(10/30-12/16)との連携]
チケット半券(有料券)を提示すると入場料を割引。
千葉市美術館:一般1000円→700円、大学生700円→490円
DIC川村記念美術館:一般1200円→1000円、学生・65歳以上 1000円→800円

天井から陽の光も差し込む空間で向き合う白やグレー、そして紫の浮遊する絵画。その中を縫うように歩く体験は思いがけないほどに豊かです。


203展示室風景

移りゆき、また共鳴し合いながら連鎖する絵画の生み出した美しき世界、是非とも体験して下さい。

カタログの発行は11月初旬になるそうです。(それまでは館内で予約受付。)

2013年1月14日まで開催されています。

「中西夏之 韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:2012年10月13日(土)~2013年1月14日(月・祝)
休館:月曜日。但し12/24、1/14は開館。年末年始(12/25-1/1)。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展」 パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム
「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展」 
10/6-12/16



パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展」のプレスプレビューに参加してきました。

ルオーが子どもの頃から身近に親しんでいたというサーカス。

1872年、パリ郊外に生まれ、裕福とは言えない家庭に育ったルオーは、唯一の楽しみがサーカス鑑賞、とりわけ興行としての移動サーカスを見に行くことでした。

そうしたルオーは、画家になってからも終生、サーカスを描き続けます。その数、全作品のうちの3分の1。

本展ではルオーのサーカスを描いた作品と、当時のサーカスまたキャバレー文化を紹介しています。構成は以下の通りでした。

第1幕 悲哀‐旅回りのサーカス 1902~1910年代
第2幕 喝采‐舞台をひと巡り 1920~30年代
第3幕 記憶‐光の道化師 1940~50年代


始まりは貧しき少年時代、ルオーの憧れでもあった移動サーカスの道化たちです。

ここで見るべきは例えば「操り人形を持つ道化師」(1902-1909)のように道化師らが楽しそうにしていないこと。実はこうした移動サーカスに参加していた人々はいわゆるジプシー。決して裕福ではありません。


右:ジョルジュ・ルオー「操り人形を持つ道化師」(1902-1909) 油彩、紙(カンヴァスで裏打ち) ギャルリーためなが

ルオーはサーカスの人々の有りのままの姿を見つめたからこそ、時に悲しげな面持ちをした道化師を描いたというわけでした。

また道化師にはもう一つポイント、つまり道化師へルオーが自身を投影していたというところも重要です。


「自画像コーナー」展示室風景

とりわけ初期の道化に扮した自画像には、ルオーの内面の葛藤も反映されています。展示では比較的初期の頃の自画像をいくつか紹介。いずれも日本初公開でした。

さてルオーが画家としての一定の地位獲得すると、今度は移動サーカスではなく、常設のサーカス劇場へ出入りするようになります。 貧しいサーカスから一転、言わば社交界としてのサーカスへの進出です。


「第2幕 喝采‐舞台をひと巡り」展示室風景

画商ヴォラールとも親交のあったルオーは、彼の所有していたボックス席でサーカスを鑑賞。次第により鮮やかな色彩を用いて踊り子や曲馬師たちを描いていきます。

会場ではルオーの描いたサーカスのキャラクター毎に作品を展示。そしてここではモチーフによって一定の様式とも言える特徴があるのも面白いのではないでしょうか。


左:ジョルジュ・ルオー「小さな女曲馬師」(1925年頃) 油彩・紙(カンヴァスで裏打ち) 出光美術館

例えば曲馬師。ルオーはいずれもその姿を馬に乗った真横からの構図で描いています。

またお馴染みの道化師も実は全てメイクを取った姿。背景も楽屋裏を思わせる室内で、舞台上ではありません。ようはここでもルオーはあくまでも人間としての道化を見つめていたわけなのです。

さて展示のハイライトはルオー作品では異例の大きさ、高さ2メートルにも及ぶ大作の油彩画3点に他なりません。

そもそもルオーは制作においてキャンバスを立てず、あくまでも机の上に紙を敷いて描くことを好んでいました。それ故に机に収まるような小ぶりの作品が多いわけですが、この3点は全く別物。それにしても何故にこうして大きな作品を描いたのでしょうか。


中央:「傷ついた道化師」(1929-39) 油彩、紙(カンヴァスで裏打ち) 個人蔵、ジュネーブ

答えは簡単。実はいずれもタペストリーの原画として描いたからなのです。

だからこそ絵画の周囲部には縁取りも描写。また「傷ついた道化師」(1929-1939)に関しては日本初公開、さらに3点揃って展示されるのも日本で初めてです。

また一番右の「踊り子」(931-32)の画面左下にちょっと注意して見て下さい。何かもやもやとした部分があることが分かるのではないでしょうか。

これはかつて作品がナチスによって接収された際に傷ついてしまったため、その表面を削った跡なのだそうです。

それに日本初公開と言えば珍しい動物のみを描いた「ライオン」(1931)も注目作ではないでしょうか。


右:ジョルジュ・ルオー「ライオン」(1931) 油彩、インク、グワッシュ、紙(カンヴァスで裏打ち) 個人蔵(ルオー財団協力)

今回の展示では国内の美術館はもとより、パリのルオー財団、またポンピドゥーなどからも作品がやって来ています。

日本でも比較的見る機会多いルオーですが、サーカスに焦点を絞った構成、また新鮮味のある作品など、色々と発見の多い展覧会でもありました。

さて本展ではこうしたルオーと並び、もう一つ大きな見どころが。


サーカス資料展示コーナー

それがルオーと同時代、まさに彼が見ていたであろうサーカスの資料展示です。


サーカス資料展示コーナー

会場にはサーカスの楽屋、またキャバレーを模したセットも登場。当時のパリはあらゆる通りに劇場があると言われたくらいサーカスが盛んだったそうですが、そうした華やいだ雰囲気を味わうことが出来ました。

ラストは晩年の道化師シリーズが。こにはかつての有りのままの人間でもなく、また自身の投影でもない、つまりはキリスト的存在としての道化師が描かれています。


「第3幕 記憶‐光の道化師」展示室風景

サーカス、とりわけ道化師を通して辿るルオーの目指した人間像、その到達点が示されていました。

青幻社から一般書籍として発売中の図録が良く出来ています。

「ジョルジュ・ルオー サーカス 道化師/青幻舎」

付録にはキャバレーのポスターも。まずはお手にとってご覧下さい。

また10月21日には日曜美術館(Eテレ。9:00~)の本篇で取り上げられるそうです。こちらも楽しみにしたいと思います。

12月16日まで開催されています。

「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:10月6日(土)~12月16日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~18:00
料金:一般800円、大学生600円、中・高校生200円、小学生以下無料。
 *65歳以上700円、20名以上の団体は各100円引。
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.5 小西紀行」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.5 小西紀行」
9/21-10/20



ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.5 小西紀行」へ行ってきました。

人、あるいは家族をモチーフに、独特の激しい筆致で描く小西紀行(1980~)。

その特徴的なストロークはもちろん、眼の赤く光る人物の肖像はこれまでにも強い印象を与えてきました。

そして今回、モチーフこそ変わらないものの、表現においては確かに何かが大きく変わっています。


小西紀行「女1」2012年 油彩・キャンバス 他

ともかく驚かされるのは、以前から個性的であったうねるようなストロークが人物だけでなく、画面全体の背景にまで及んでいること。

これまではどちらかと言えば暗い背景に人物の顔なりが浮き上がるようなイメージがありましたが、本展出品のそれらの殆どは一変。背景と人物とが渾然一体、線と面で複雑に混じり合っていく様子が見て取れます。

もちろん画中の子どもたちは時に笑みを浮かべ、あどけなく可愛らしい表情を見せてはいますが、ともかくストロークはもはや暴力的なまでに勢いを帯びて画面中を交錯。


小西紀行「二人」2012年 油彩・キャンバス 他

その力強いまでのライブ感、激しい生気を感じると同時に、どこか儚さも。しばらく向き合ってると今にもモチーフが溶け出してしまうかのような恐怖感を覚えました。


小西紀行「untitled」2012年 油彩・キャンバス 他

なお作品の配置にも興味深い点があります。最奥部の一点をシンボリックなまでにやや高い位置へ掲げ、左右の壁面に作品を床面すれすれ、もしくは床面から少し上の部分に展示しています。その赤い目の親子像の取り囲まれた空間は何やら神秘的でさえありました。

「想いから産まれる形をもう少し信用する。描くということを手に戻してあげる。(中略)絵が生きている間に現状をぶち込む。線からフォルムへ、色からヴァルールへ、ラインは、軌道は繋がって行ける。可能だ。まるで彫刻を彫るような手応えと脳内色彩感覚。視たいことと描けること、手が描きたいことと出来ること。それらを同時に放つ。抑制せず、修正せず、許す。」
*2012年7月21日の制作日誌から。小西紀行展解説シートより転載。


なお小西は現在、白金のアラタニウラノのドローイング展を小品をまとめて展示中です。あわせてご覧ください。

「Drawings 加藤泉、衣川明子、小西紀行、小西真奈」@アラタニウラノ 10月6日(土)~11月3日(土)

10月20日まで開催されています。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.5 小西紀行」 ギャラリーαM@gallery_alpham
会期:9月21日(金)~10月20日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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「内山聡 Soaked Paintings」 eitoeiko

eitoeiko
「内山聡 Soaked Paintings」
9/21-10/20



eitoeikoで開催中の内山聡個展、「Soaked Paintings」へ行ってきました。

「私はキャンバスを塗料に浸けた。」



この言葉から始まる展覧会、遠目、もしくは写真では何のことか分からないかもしれません。

と言うわけで出来る限り作品の近くへ寄ってみましょう。



すると下の方に絵具が氷柱のように垂れているではありませんか。



ずばり簡単に言ってしまえば、これらの作品はキャンバスに絵具を塗るのではなく、浸すことで作られています。

つまり横へストライプ状に重なる色は絵具を横に引いたわけではなく、何度も絵具を浸しては乾かし、また浸すという行為を繰り返したもの。

絵具の数は全部で約20種類。その浸す順番によって別々のストライプが生まれていきます。



とすると何度も浸された下部はやや厚みが生じるもの。横から見ると確かに下の方が若干厚くなっていることが分かりました。

また裏から見れば一目瞭然、絵具がキャンバス裏側にも断層を描くように固まっていることが確認出来ます。



ちなみに絵具は色によって乾く時間が異なり、特に白は一番乾きにくいととか。時には二日くらい乾かしてから、次の絵具を浸すこともあるそうです。

一般的にキャンバスへ絵具を塗ったり置いたりする絵画制作おいて、あえて浸すという行為に向き合った作品、シンプルながらも意外性に溢れていました。

なお作家がこの浸すことに何故、取り組んだかについても重要です。

きっかけは東日本大震災です。実は作家が被災地のボランティア活動に参加した際、建物の壁に残った津波の痕跡に強い衝撃を受け、その「逃れられない質量のボリューム」(DMより引用、一部改変。)を絵画に表せないかと考えたことから始まりました。

そう捉えると一見、ポップにも見える色の層が、どこか重みを持ってズシリと響いてきます。

実験的な表現に潜んだ強い動機。その社会的な意味合いもまた注視すべきと言えそうです。

10月20日まで開催されています。

「内山聡 Soaked Paintings」 eitoeiko@eitoeiko
会期:9月21日(金)~10月20日(土)
休廊:日・月・祝日
時間:12:00~19:00
住所:新宿区矢来町32-2
交通:東京メトロ東西線神楽坂駅より徒歩5分、都営地下鉄大江戸線牛込神楽坂駅より徒歩10分。
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