松本竣介 「Y市の橋」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
所蔵作品展
「松本竣介 - Y市の橋 - 」

東京国立近代美術館の常設展示から、松本竣介(まつもとこうすけ、1912-1948)の「Y市の橋」(1943)です。全体を覆うくすんだ青みが、無機質な都市の光景を重々しくまとめ上げています。比較的、展示機会の多い作品です。印象深い方もいらっしゃるのではないでしょうか。



Y市とは横浜市のことで、この橋も横浜駅近くの新田間川(現、派新田間川)にかかる月見橋がモデルとなっています。川の右手奥に見える大きな建物は国鉄の工場です。煤けた白の照る重厚な月見橋と、不気味に連なった国鉄の黒い跨線橋、そしてうっすらと橋を川面に写した川などが、まるでパズルをはめ込んだようにがっちりと組み合わされています。実に堅牢な雰囲気を漂わせる作品です。

私が松本の名を意識したのは、つい最近、昨年に世田谷美術館で開催された「ルソー展」を見てからのことでした。その展覧会では、メインのルソーよりも、この「Y市の橋」を含んだ数点の松本に強く感銘したことを覚えています。描かれた戦中の記憶を確かに伝えていながらも、いつの時代にも共通な賑やかな都市の影にある寂し気な光景を見事に描き切っているのではないでしょうか。橋の上などをとぼとぼと歩く、まるで影絵のような描写の人物からは、それこそ喧噪の渦にのまれつつも日々を健気に生きる都市生活者の悲哀を感じます。また、キャンバス上を削り取るような彫りの深い線描や、荒々しくも確固とした画肌も魅力的でした。作品にかけた画家の想いを感じ取れるような作品です。

「Y市の橋」は、これを含めて4バージョン(油彩)が確認されています。そのうち岩手県立美術館蔵の作品もまた有名ですが、つい先日、それとほぼ同じ構図の板絵が三重で発見されました。報道によれば、三重県立美術館蔵の「建物」(1947)をX線調査したところ、その作品の下の層から「Y市」が発見されたのだそうです。ちなみに同美術館では3月末まで、そのX線写真と「建物」を公開しています。

まだ松本の作品をまとめて拝見したことがありません。いつかは回顧展などに接することが出来ればと思います。

*関連リンク
「建物」下に別の絵あった エックス線撮影でわかる(Yomiuri online)
松本竣介油彩画《建物》の下の層から《Y市の橋》が発見されました。(三重県HP)
「橋の概要 月見橋」(横浜市西区HP)
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須田国太郎 「書斎」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
所蔵作品展
「須田国太郎 - 書斎 - 」(1937)



東京国立近代美術館の所蔵作品展に展示されています。同館所蔵の須田国太郎(すだくにたろう、1891-1961)から「書斎」(1937)です。右奥の壁には、画家の横顔が影となって大きく写り、手前の机上には書物や紙などが散乱しています。闇へしみ入る黒の迫力と、須田カラーならぬサーモンピンクも映えた傑作です。

この作品を初めて見たのは、思いがけないほど強く感銘した昨年の大回顧展のことでした。描かれているのは、画家自身による書斎の光景です。机には、写実的に描かれた書物や紙くずなどが無造作に置かれています。その質感は極めて重厚です。右手へと積み重なった分厚い書物の群れもまた、そのズッシリとした存在感を強く思わせていました。また手前にて開かれた書類や、まるでヒヨコが群れているかのような紙くずの山は、今まさに作業に没頭していたであろう時の生々しさを伝えています。書斎にて格闘する画家の気配すら感じさせる作品です。

奥の空間はかなり謎めいています。右奥に画家の影が写っていると気付くまでしばらく時間がかかりました。それに、中央部分に外へと抜けるような場が形成されているのも奇異な印象を与えます。丁寧に写実を見た机上の光景と、まるで草原に巨人の横顔が突き出しているかのような背景の対比が、この作品を謎めいた世界へと誘ってくれました。

須田は私にとってかけがえのない画家の一人です。3月4日まで展示されています。

*関連リンク
須田国太郎展(東京国立近代美術館、2006年1月-3月)

*関連エントリ
「須田国太郎展」 東京国立近代美術館 1/21
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スクロヴァチェフスキの若々しきベートーヴェン

先ほどまで放送されていたFMで楽しみました。昨年12月、初台のコンサートホールにて行われた、ザールブリュッケン放送響の来日公演です。このツアーでは、ベートーヴェンの交響曲が全て演奏されたそうですが、そのうちの1、4、5の各交響曲が取り上げられていました。

NHK-FM ベストオブクラシック(1/29 19:30 - )

曲 ベートーヴェン 交響曲第1番、4番、5番

指揮 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
演奏 ザールブリュッケン放送交響楽団

収録 東京オペラシティコンサートホール 2006/12/3

スクロヴァチェフスキの音楽を聴いていると、巨匠の仲間入りを果たした老齢(大変失礼な話ではありますが…。)の指揮者の演奏を、一概に「円熟」などという文言にて決めつけてはならないということが痛いほど良く分かります。ともかく古楽器演奏も真っ青なほどに激しく、スリリングなベートーヴェンです。あまり技巧には冴えないザールブリュッケン放送響を、どれほど自身の音楽のために叩き上げたのでしょうか。それこそ硬い鉄球のような鈍く、また重々しい響きが、楽譜の上を痛快なほどのスピードにて駆け巡ります。ヴァイオリンが坂道を転がり落ちるかのように進んで、チェロやコントラバスが必至に喰らいついていました。そして時折、乾いた金管とドロドロと轟くティンパニが炸裂します。と言っても、例えば第5番のフィナーレなどは、意表を突くほどにアッサリとした小気味良いテンポで終ってしまうのです。次から次へと繰り出される手品を見るかのような演奏でした。

「ベルリオーズ:幻想交響曲/スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団」

ところでご存知の通り、今年はいよいよ読響とスクロヴァチェフスキのコンビが始動します。(読響プログラム)私としては世評の高いブルックナーなどを取り上げる春の定期よりも、秋のショスタコーヴィチの方が楽しみです。彼の動的でクセのある音楽作りが、きっとショスタコーヴィチの面白さを引き出す演奏となるのではないでしょうか。是非ホールへと足を運びたいと思います。
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「都路華香展 前期展示」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館千代田区北の丸公園3-1
「都路華香展 前期展示」
1/19-3/4

何と約80年ぶりという本格的な大回顧展です。(1932年の遺作展以来。)近代京都画壇の隆盛を支えたという日本画家、都路華香(つじかこう、1871-1931)の画業を辿ります。京都国立近代美術館よりの巡回の展覧会です。



恥ずかしながら私は華香の名を初めて知りましたが、これまであまり紹介されてこなかったのは、代表作などが散逸してしまっていたことに一因があるのだそうです。(アメリカに多くの作品が所蔵されているようです。)そのためこの展覧会を開催にするにあたっては、華香作品を一つずつ洗い出すような大規模な調査が行われたとありました。非常に地道な努力の賜物です。またこれを契機に、華香の再評価が進むのやもしれません。

 

華香の作品からは、品の良さと親しみ易さを強く覚えます。多く展示されていたのは、長閑な風景を大らかに捉えた風景日本画でした。まるで粘土細工のような石橋が大河をよぎる「良夜」(1912)や、眩しいばかりの波が海を駆ける「緑波」(1911)などはその代表作です。「良夜」では墨の滲みが川の澱みを表現し、丁寧に描かれた細い線が水面の揺らぎを象っています。「緑波」は安らぎすら感じさせる広大な海の景色です。波が迫り、飛沫の舞う荒々しい光景が、実に淡いタッチにて優しくまとめあげられています。また風景画では、朝鮮にて手がけたという「萬年台の夕」(1920)も印象に残りました。芝色を纏った丘の上にはお堂が佇み、一頭の牛が草を無邪気に食べています。お堂を下から包みこむような靄もまた幻想的です。とある何気ない一風景を、まるでお伽話の中ような夢見心地の世界へと変化させています。



「松の月」(1911)でも夢の国へと誘われました。枝の大きく垂れた松の葉の合間には、真ん丸の月が控えめに照っています。墨の点描が葉を生い茂らせ、月を抱きかかえるように表現していました。ちなみに華香の作品には他にも多くの月が登場します。そのどれもが朧げに照る、さながら霧中の月と言った風情を見せていました。



風景画の他には、埴輪制作の模様をパノラマ的に表現した「埴輪」(1916)も心に残ります。中央にて座る老人の表情の何とも穏やかなこと。埴輪たち皆も嬉しそうに腰へ手を当てて立っていました。華香の描く人物に邪念はありません。全てが平穏に、それこそ今あることに感謝して生きているのです。心の洗われる絵画とは、まさにこれらのことをさすのではないでしょうか。

出品作品80点のうち、約30点ほどが途中で入れ替わります。是非もう一度足を運びたいです。(1/21鑑賞)

前期:1/16-2/12
後期:2/14-3/4
出品リスト(展示替え情報あり。)
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2007年上半期 私の気になる美術展

月刊「美術の窓」の恒例企画です。先日発売された今月号に、今年前半の展覧会情報がまとめられています。早速、その中からいくつか気になった展覧会をピックアップしてみました。

現代美術

「中村宏|図画事件」 東京都現代美術館 開催中-4/1 (名古屋市美術館7/21-9/17)
「20世紀の美術探検」 国立新美術館 開催中-3/19
「アートで候。会田誠・山口晃展」 上野の森美術館 5/20-6/19
「森村泰昌『美術の学校』」 横浜美術館 7月中旬-9月中旬 (熊本市現代美術館3/24-7/8)


日本美術

「日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで」 森美術館 1/27-5/6
「日本を祝う」 サントリー美術館 3/30-6/3
「若冲展」(仮称) 相国寺承天閣美術館 5/13-6/3
「金刀比羅宮 美の世界」 東京藝術大学大学美術館 7/7-9/9


西洋美術

「アルフレッド・ウォリス展」 東京都庭園美術館 2/3-3/31 (横須賀市美術館7/28-9/17)
「シュルレアリスム展」 埼玉県立近代美術館 2/21-3/25 (岡崎市美術博物館4/7-5/27 山梨県立美術館6/2-7/8 宮崎県立美術館7/21-9/2 姫路市美術館9/15-10/28)
「レオナルド・ダ・ヴィンチ - 天才の実像」 東京国立近代美術館 3/20-6/17
「大回顧展モネ」 国立新美術館 4/7-7/2
「甘美なる聖母の画家 ペルジーノ展」 損保ジャパン東郷青児美術館 4/21-7/1 (ふくやま美術館7/7-9/2)
「パルマ イタリア美術、もう一つの都」 国立西洋美術館 5/29-8/26
「ルーベンスとブリューゲルの時代」 Bunkamuraザ・ミュージアム 6/15-7/22 (鹿児島市立美術館7/28-9/2)

まずはやはり何と言っても、雑誌表紙にも載った「受胎告知」で話題の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」に尽きるのかもしれません。ウフィツィ美術館の企画展を日本向けに仕立てた展覧会ということで、その充実した内容も今から十分に推し量られます。その他の西洋美術関連では、埼玉より全国各地を巡回する「シュルレアリスム展」や、意外にも回顧展は久々の感もある「モネ展」、それに「の時代」が少し引っかかりながらも、二巨匠の名前が華々しく出た「ルーベンスとブリューゲルの時代」などに期待したいと思います。

日本美術では、ミッドタウン内に新装オープンするサントリー美術館のオープニング展が楽しみです。(開館記念展は、『お宝』の出品される可能性も高いと聞きます。)また芸大美術館の「金刀比羅宮 美の世界」展は、香川・金刀比羅宮所蔵の応挙の襖絵40点(!)などが一挙に公開されるというなかなか壮大な展覧会です。これは開催に向けてさらに話題となりそうです。

横浜美術館の森村プロデュース(個展?)の展覧会も気になります。これはやはり、かつて奈良の画廊にて行われたというレクチャー(「美術の学校」)をまとめた著書、「美術の解剖学講義」に準ずる企画なのでしょうか。熊本よりの巡回を待ちたいところです。

ところで「美術の窓」には、昨年の展覧会の入場者ランキング(ベスト45)も掲載されていました。ここでは展望台の特殊要因もある森美術館をはじめ、東博や都美などのお馴染みの大美術館(ベスト10は全て東京の美術館です。1位「杉本博司展@森美術館」51万、2位「ダリ回顧展@上野の森」50万、3位「プラド展@都美」50万など。)が順に挙げられていますが、その中で興味深かったのは話題のプライス展の入場者に東西でやや差が見られるということでした。(東京:31万、京都11万)都市圏人口を鑑みれば当然かもしれませんが、例えば藤田展ではこれほどの差がありません。(東京:31万、京都:22万)既に若冲展も開催済みであった京都からみれば、昨年の東京の若冲ブームはやや加熱気味だったと言うことにもなりそうです。その他では、都美の日展を抑えて22位につけた、青森県立美術館の「シャガール展」(19万)などの健闘も目につきました。

「美術の窓 2007年02月号/生活の友社」

詳細なデータなどは紙面をご参照下さい。また、毎回のお願いではありますが、この他にも皆さんオススメの展覧会などがあればご教授いただけると有難いです。

2006年下半期 私の気になる美術展
2006年上半期 私の気になる美術展
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「新春の寿ぎ」 三井記念美術館

三井記念美術館中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
「新春の寿ぎ - 国宝 雪松図・卯花墻を中心に - 」
1/4-31



早くも会期末を迎えました。三井記念美術館で開催中の「新春の寿(ことほ)ぎ」展です。円山応挙の「雪松図屏風」を初めとする江戸絵画から、当代樂吉左衛門を含む楽焼茶碗、それに昨年に重文指定を受けた「東福門院入内図屏風」などが展示されています。見応えは十分です。





「雪松図屏風」の美しさには思わず絶句してしまいました。応挙にしては驚くほど大胆なタッチが松の力強い生命力を表現し、右へ左へ、そして奥にも伸びゆく枝葉が抜群の空間構成を生み出しています。また雪原より舞い上がり、朧げな光に照らされて金色にも灯る粉雪のざわめきと、葉にしっとりと降り積もった白銀の輝きの対比も見事です。うっすらと顔をのぞかせたなだらかな大地や、無限の広がりを見せる空もまたこの松を引き立てていました。その場のひんやりとした空気と、凛とした松の気配を感じさせる名品です。あまり近づき過ぎることなく、少し離れて見ることを是非おすすめします。



浮世絵で有名な鳥居清長の珍しい肉筆画「駿河町越後屋正月風景図」は、まさにここ日本橋で見るに相応しい作品でした。今より遡ること200年、当時の越後屋(現三越、三井本館)界隈の賑わいが、富士を背にした鳥瞰的な構図にて表現されています。その行き交う人々の生き生きとした様子は、ハレの場の華やいだ雰囲気を良く伝えていました。また越後屋の暖簾で靡く、通称「丸に井筒三」(現、三井グループの社章。)のマークも目立っています。まるで日本橋は三井のものと言わんばかりの光景です。

どっしりとした重みを感じさせながらも、その大きく歪んだフォルムの大胆な「志野茶碗 銘卯花墻」も魅力的な作品でした。まるで粗目糖を振りかけたような外観は、まさに卯の花に見立てられた白い釉薬によるものです。その他の茶碗では、それこそ刃物のようにシャープな口縁が特徴的な本阿弥光悦の「黒楽茶碗 銘雨雲」や、形に遊び心も感じさせる樂吉左衛門の新作の楽茶碗が印象に残ります。その抽象的な紋様が、器の中に山水画の幽玄な世界を作り上げていました。



展示のハイライトは、まさしく豪華絢爛な「東福門院入内図屏風」かもしれません。これは、徳川秀忠の娘和子(後の東福門院)が、後水尾天皇のもとへ入内する行列を描いた作品で、当初は約30mにも及ぶ巻物だったものを屏風に改装したのだそうです。その華麗で雅やかな行列が、右下の二条城より左上の禁裏へと延々と連なっています。ちなみに和子は、左隻二段目の右手にある二頭立ての牛車に乗っていました。後ろには供の牛車をも控えさせ、一際目立つ姿が見て取れます。実際に行列を間近で眺めているような錯覚さえ受ける、臨場感にも溢れた作品です。

日本美術の名品に酔うことの出来る展覧会です。今月末まで開催されています。(1/21鑑賞)
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2007/2008シーズン オペララインアップ発表 新国立劇場

新国立劇場の次シーズンのラインアップが発表されました。新芸術監督、若杉弘の就任一年目のシーズンです。

開場10周年記念 2007/2008シーズン全ラインアップ発表!(新国立劇場)

2007/10/8-24(6公演) ワーグナー「タンホイザー」(新制作/開場10周年オープニング公演)
 指揮:フィリップ・オーギャン 演出:ハンス=ペーター・レーマン
 キャスト:ハンス・チャマー(ヘルマン)、ヴォルフガング・ミルグラム(タンホイザー)、マーティン・ガントナー(ヴォルフラム)他
2007/10/18-27(4公演) モーツァルト「フィガロの結婚」
 指揮:沼尻竜典 演出:アンドレアス・ホモキ
 キャスト:デトレフ・ロート(伯爵)、マイヤ・コヴァレヴスカ(伯爵夫人)、ロレンツォ・レガッツォ(フィガロ)他
2007/11/25-12/9(6公演) ビゼー「カルメン」(新制作)
 指揮:ジャック・デラコート 演出:鵜山仁
 キャスト:マリーナ・ドマシェンコ(カルメン)、ゾラン・トドロヴィッチ(ドン・ホセ)、アレキサンダー・ヴィノグラードフ(エスカミーリョ)他
2008/1/20-26(4公演) プッチーニ「ラ・ボエーム」
 指揮:マウリツィオ・バルバチーニ 演出:粟國淳
 キャスト:マリア・バーヨ(ミミ)、佐野成宏(ロドルフォ)、ヴィットリオ・ヴィテッリ(マルチェッロ)他
2008/2/3-11(4公演) R.シュトラウス「サロメ」
 指揮:トーマス・レスナー 演出:アウグスト・エファーディング
 キャスト:エミリー・マギー(サロメ)、ヴォルフガング・シュミット(ヘロデ)、小山由美(ヘロディアス)他
2008/2/22-24(3公演) 山田耕筰「黒船 - 夜明け」(新制作)
 指揮:若杉弘 演出:栗山昌良
 キャスト:釜洞祐子/腰越満美(お吉)、青山恵子/天羽明惠(お松)、永田直美/坂本朱(姐さん)他(ダブルキャスト)
2008/3/10-29(6公演) ヴェルディ「アイーダ」(開場10周年記念特別公演)
 指揮:リッカルド・フリッツァ 演出:フランコ・ゼッフィレッリ
 キャスト:ノルマ・ファンティーニ(アイーダ)、マルコ・ベルティ(ラダメス)、マリアンナ・タラソワ(アムネリス)他
2008/4/10-20(5公演) ウェーバー「魔弾の射手」(新制作)
 指揮:ダン・エッティンガー 演出:マティアス・フォン・シュテークマン
 キャスト:大島幾雄(オットカール侯爵)、平野忠彦(クーノー)、エディット・ハッラー(アガーテ)他
2008/5/5-10(3公演) ツィンマーマン「軍人たち」(新制作)
 指揮:若杉弘 演出:未定
 キャスト:鹿野由之(ヴェーゼナー)、クラウディア・バラインスキー(マリー)、山下牧子(シャルロッテ)他
2008/6/5-17(5公演) ヴェルディ「椿姫」
 指揮:上岡敏之 演出:ルーカ・ロンコーニ
 キャスト:エレーナ・モシュク(ヴィオレッタ)、ロベルト・サッカ(アルフレード)、ラード・アタネッリ(ジェルモン)他

既に告知されていた「タンホイザー」やフリッツァの「アイーダ」、またはエッティンガーの「魔弾の射手」やレア物(?)の「軍人たち」などにまず注目したいところです。また指揮では芸術監督の若杉をはじめとして、沼尻や上岡らの日本人指揮者が今シーズンより多く登場します。ちなみに、キャストでは五十嵐監督時代に登場された方々の名前も散見されました。ただ、全体的に、演目もキャストもかなり控えめな印象を受けます。如何でしょうか。



チケット料金は以下の通りです。かなり強気(?)の設定です。

「アイーダ」:S 28350 A 23100 B 15750 C 10500 D 5250 Z 1500
「タンホイザー」:S 26250 A 21000 B 14700 C 8400 D 5250 Z 1500
「カルメン/魔弾の射手/軍人たち」:S 23100 A 18900 B 12600 C 7350 D 4200 Z 1500
「フィガロの結婚/ラ・ボエーム/サロメ/椿姫」:S 21000 A 15750 B 10500 C 6300 D 3150 Z 1500
「黒船」:S 15750 A 12600 B 8400 C 6300 D 3150 Z 1500

キャスト等については記載ミスがあるかもしれません。詳細は公式HPをご確認下さい。
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「千住博展」 山種美術館

山種美術館千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「千住博展 - フィラデルフィア『松風荘』襖絵を中心に - 」
2006/12/2-2007/3/4

山種美術館で開催中の「千住博」展を拝見してきました。来年5月にフィラデルフィアの「松風荘」へ寄贈される新作の襖絵、全20点を中心に構成されています。お馴染みの滝をモチーフとした大絵画の連作が、展示室を一周、ぐるりと取り囲んでいました。



「松風荘」とは1954年、吉村順三の設計によってフィラデルフィア市内に建てられた、書院造りの日本建築です。かつてはその襖絵に東山魁夷の水墨画が飾られていましたが、何とその全てが損傷してしまい、この度千住が新たな襖絵を制作する運びとなりました。(いくら気候条件などが違うにせよ、展示されていた全ての襖絵をダメにしたというのには驚かされます。一体どのような管理をしていたのでしょうか。)ちなみに彼はこの新作の襖絵を無償で提供するそうです。強い意気込みも感じられるエピソードです。



千住の滝は文字通り上から下へと流れています。キャンバスの上部から白い絵具を垂らして生み出された水の流れは、時にレースのカーテンのように絡み合い、また鍾乳洞の如く折重なり合い、さらにはオーロラのように瞬いて、下へと降りて行きました。そして滝壺の部分では、ブラシによって表現された真っ白い水しぶきが大きく舞っています。ベージュ色のシンプルな背景の上に流れ続ける、まるで細い糸のような水の筋。それが幾重にも重なって一つの滝が生み出され、さらには何枚も連なることで巨大な滝が形成されているのです。

少し作品から離れて見ると、滝壺部分に微妙な奥行き感があることが分かります。手前から順に一段ずつ奥へと繋がり、まるで左右にカーテンを開けた時のような光景も出現していました。私には、これらの作品に滝のダイナミックな情景を見ることよりも、むしろ記号化された、抽象的なミニマリズムの気配を感じますが、そこに滝の飛沫を見て、冷ややかな清涼感を味わった方が楽しめるのかもしれません。

フィラデルフィアの気候に耐え得る素材ということもあるようです。使われている絵具は全てアクリルでした。これが日本画の顔料を用いるとどう変わってくるのかが気になります。(有名な大徳寺聚光院別院の襖絵はどうなのでしょうか。)ちなみに新作はもう一点、カラフルな「フォーリングカラーズ」も展示されていましたが、その美しさは私には全く分かりませんでした。

いつもより照明も落とされ、襖絵の雰囲気に配慮した展示が行われています。ロングランの展覧会です。3月4日まで開催されています。(1/21鑑賞)

*千住博の「博」は、右肩の`(点)を取った字です。
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「巴里憧憬 - エコール・ド・パリと日本の画家たち - 」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館さいたま市浦和区常盤9-30-1
「巴里憧憬 - エコール・ド・パリと日本の画家たち - 」
1/6-2/12

数ある「エコール・ド・パリ」と銘打たれた展覧会の中でも、これほど多くの日本人画家にスポットを当てた企画はそうありません。パリを目指した画家たちの足取りを作品で概観します。有名どころの藤田嗣治や佐伯祐三を初めとして、里美勝蔵や結城素明、それに埼玉にも所縁のあった斎藤豊作らの作品が揃っていました。(全展示数161点のうち、125点が日本人画家の作品です。)



この展覧会では、いわゆるエコール・ド・パリの時代にパリと関わった日本人の画家を5つに分類しています。(カッコ内は各章のタイトルです。)

1 「目指せ!エコール・ド・パリの頂点 - 藤田嗣治とその追従者たち - 」
 エコール・ド・パリの画家として最も知名度の高い藤田嗣治と、彼を追う形でパリへと繰り出した、海老原喜之助、高野三三男、板東敏雄、高崎剛、小柳正など。
2 「テクニク・オリアンタル! - エコール・ド・パリの日本画家 - 」
 パリにて日本画を描いて生活していた画家。出島春光、古城江観、蕗谷虹児、金子光晴など。
3 「芸術の都パリ - 画家たちの聖地巡礼 - 」
 既に日本で地位のあった大家らのパリ遊学。田中保、清水登之、黒田重太郎、土田麦僊、結城素明など。
4 「美術思潮の伝道者 - 留学生が見たエコール・ド・パリ - 」
 一時、数百人にも及んだパリ美術留学生から、里美勝蔵、前田寛治、佐伯祐三、荻須高徳、坂田一男など。
5 「ヴェヌヴェルの静寂のなかで - 斎藤豊作の交友 - 」
 渡仏しながらもパリに背を向けて制作を続けた斎藤豊作と、彼と交遊のあった長谷川潔や岡鹿之助。

藤田に憧れてパリを目指した者から、逆に彼に反発しながら制作を続けていた画家、或はアメリカよりパリに移住して拠点を構えたり、またあえてパリから離れて絵に没頭した画家など、その生き様は実に多種多様です。またもちろん彼らの作風もそれぞれに異なっています。複雑に絡み合っていたエコール・ド・パリの日本人画家を辿るのは、一筋縄ではいかないようです。

まずは、19歳にて渡仏し、藤田に師事した経歴もある海老原喜之助の二点に見応えがありました。澄み切った青空の下に広がる真っ白なゲレンデを描いたその名も「ゲレンデ」(1930)と、厚みのあるタッチがヴラマンク風の雪景色を生み出した「冬」(1928)は対照的な作品です。前者が晴天の眩しい雪原を、まさに颯爽と冷風を切るかのような心地良い雰囲気でまとめ上げているのに対し、後者は油彩をキャンバスに厚く塗り付け、雪の重みがズッシリとも伝わるような、半ば寂寥感も思わせる冬の光景を描いています。私の趣向はその「冬」にありますが、ともに表現力に優れていました。甲乙付け難い作品です。



有りがちな主題の並ぶ日本画の中では、技巧にも冴えた蕗谷紅児の「柘榴を持つ女」(1927)が印象に残りました。チューリップ柄の衣服を纏った女性が、胸に柘榴を持ちながら構えて座っています。テーブルクロスなどに描かれた洒落た装飾と、控えめでありながらもやはり艶やかなその振る舞いには惹かれました。ネックレスやイヤリングなどもなかなか魅惑的です。

佐伯祐三や里美勝蔵らの重厚な作品が並んだ、「美術思潮の伝道者」(4)のコーナーが展示のハイライトかもしれません。ここでは力強いグレーの支配する中で果実や花の佇む、里美勝蔵の「静物」(1924頃)が一番心に残りました。ペンキを塗るかのような大胆なタッチで塗られた灰色を背景に、紅白のバラ(?)や葡萄、それにグラスが端正に置かれています。佐伯祐三に見るようなダイナミックな情感こそありませんが、静謐でありながらもその存在感がしっかりと感じられる作品でした。



埼玉県越谷市出身で、パリ南西部のヴェヌヴェルの古城(何と購入したものだそうです…。)にて悠々自適な画業生活を送っていたという斎藤豊作も忘れてはなりません。決して器用な画家ではありませんが、パステルの淡い質感と時に点描の技法を巧みに利用しながら、長閑な田園風景を伸びやかに描いています。ちなみに斎藤の作品は、常設展示にも数点展示されていました。(私はあまり彼の作品に惹かれる部分が少ないのですが、どちらかと言えばそちらに魅力的な作品が多いようです。)これは地元作家ならではの充実したコレクションと言えそうです。(また斎藤と交友関係にあった長谷川潔や岡鹿之助の作品は優れています。特に版画家で知られる長谷川の大きな油彩画が展示されていたのには驚きました。これはおすすめしたい作品です。)

パンフレットにも挙げられているモディリアーニなど、まさにエコール・ド・パリを代表する画家の作品も約40点弱ほど展示されています。その中では二点の彫刻、モディリアーニの「頭部」(1911-12頃)とブランクーシの「うぶごえ」(1917)に惹かれました。その他ではユトリロ、ローランサン、シャガールらのお馴染みの名が連なっています。

一点豪華主義でも、また決して名品揃いの展覧会でもありませんが、地味ながらも目立たない画家をじっくりと見せた良い企画だったと思います。(出来ればパンフレットの表紙にも、日本人画家の作品を載せて欲しかったところです。)来月12日までの開催です。(1/22鑑賞)
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国立新美術館で開館記念式典

国内で5番目の国立美術館であり、また史上最大(?)の貸し館運営ともなる国立新美術館が、明日オープンします。今日、記念式典や祝賀会などが行われたそうです。

国立新美術館で記念式典、両陛下や首相が出席・21日開館(nikkei.net)
国立新美術館が21日開館 記念式典に両陛下出席 東京(asahi.com)

明日のオープンは午前10時からです。公式HPにはオリジナルグッズのプレゼント(限定)なども記載されていました。早速、明日にも出かけられる方が多いのではないでしょうか。ちなみにオープン当日より開催が予定されているのは、以下の3つの展覧会です。

 

「20世紀の美術探検 - アーティストたちの三つの冒険物語 - 」
会期:1/21-3/19(火曜休館)
時間:10:00 - 18:00(毎週金曜日は20:00まで)
料金:1100円(大人)/600円(大学生)/400円(高校生)/中学生以下無料

「文化庁メディア芸術祭10周年企画展 - 日本の表現力 - 」
会期:1/21-2/4(30日は休館)
時間:10:00 - 18:00(金曜日は20:00まで)
料金:無料

「黒川紀章展 - 機械の時代から生命の時代へ - 」
会期:1/21-3/19(火曜休館)
時間:10:00 - 18:00(毎週金曜日は20:00まで)
料金:無料

 

さらに来月からは「異邦人たちのパリ」展、そして4月からはモネの大回顧展などが予定されています。私は明日のオープンは遠慮させていただきますが、少し落ち着いてから行ってみるつもりです。

*関連リンク
国立新美術館(そろそろHPの再リニューアルが望まれます。)
館内レストラン「ひらまつ」運営 pdfファイル
ミュージアムショップ(スーベニアフロムトーキョー) 
異邦人たちのパリ展
文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」
黒川紀章展(黒川本人による新美術館の案内あり。)

*関連エントリ
国立新美術館の開館記念展覧会
国立新美術館が完成
門外不出の名品がともに初来日! 「受胎告知」(ダ・ヴィンチ)と「牛乳を注ぐ女」(フェルメール)
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「山口晃『ラグランジュポイント』」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2階、5階)
「山口晃『ラグランジュポイント』」
2006/12/5-2007/1/20

会期末になってしまいましたが、先日拝見してきました。ミヅマアートギャラリーでは二年ぶりの開催という、山口晃の個展です。5階と2階の2つの展示室を使い、単なる絵画の展示だけにとどまらないインスタレーションが展開されています。画廊内の動線すら変えてしまいました。さすがの貫禄です。

展示は5階より始まっています。ここでは「四天王立像」と「六武人圖」が計10点ほど堂々と待ち構えていますが、キャンバスに油彩や水彩、それに墨まで用いて描いたという「四天王立像」、中でも「廣目天」が圧巻でした。舌を出しながら、何やら間抜けな姿にて振り向く犬(邪鬼とは思えません。)を踏み台にしながら、ペンを大きく横に振り上げて颯爽と立っています。その衣からは炎が舞い上がり、さらには波をも沸き立てて巻き上げる様子は、まさに妖艶という言葉がピッタリです。また不気味なほど白んだその顔の表情からは、幾分物憂げな心持ちも感じ取れました。即興的なタッチの線と丁寧な彩色の交錯によって生まれる、生々しいほどの色気もまた見事だと思います。

2階の展示はもはやインスタレーションと言って良いでしょう。トンネルのような通路を抜けて、白いカーテンを恐る恐る開いてみると、そこに待ち構えていたのは、数えることすら出来ないほど無限大に集う武将の群れでした。それこそ「六武人圖」に登場したかのような、モノクロ武将たちの大パノラマです。遠くを見渡すと、武将たちが蟻の大軍のようにひしめき合って地平線を描き、近くには大見得を切った彼らの立像が何体もこちらを見つめています。その迫力にたじたじとなってあっさり引き下がるのか、それとも彼らを指揮するために我が身を引き締めるのか。そんな選択が鑑賞する側に問いかけられているような作品でした。「さあどうする!」と言わんばかりの眼差しです。

さらに奥の展示室へ進むと、山口氏本人が「四季休息図」を制作していらっしゃいました。椅子に軽く腰をかけながら、作品をやや険しい表情で眺めつつ、大胆に色を付けていく姿がとても印象に残っています。ここはお邪魔しないよう、静かに退出させていただきました。

明日まで開催です。お帰りの際は非常階段にくれぐれもお気をつけ下さい。(?!)(1/17鑑賞)



*関連リンク
「会田誠/山口晃」展 上野の森美術館(5/20-6/19)
現代美術家・山口晃「あるべき出会い」模索(Sankei web)

*関連エントリ
「山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈」刊行記念トークショー 丸善丸の内本店
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「小川信治『French Milk Crown,2001』」 ヴァイスフェルト

ヴァイスフェルト港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3階)
「小川信治『French Milk Crown,2001』」
1/9-1/27

マックス・ヘッドルーム展(2005年10月開催)では、ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」から聖母を鮮やかに消し去った小川信治が、今回、全く趣の異なった絵画を展開しています。ミルクの滴が落ちる瞬間に出来るミルククラウンを、さながら時間を切り取ったかのようにキャンバスへと写し描いていました。それが展示室をグルリと一周、取り囲むように配されています。



どれもほぼ同じ形態のミルククラウンが描かれていますが、良く目を凝らして一枚ずつ拝見すると、王冠の先端の部分に一つだけ、極小の白いビーズのようなミルクの粒が飛び出していることが分かります。それが展示順に、あたかも王冠の上を回転するかのように描かれているのです。その存在が、個々のミルククラウンに異なった表情を与え、絵画全体に流れや動きをもたらしていました。飛び回るように跳ねるミルクの粒を追って見ることに、何やら喜びすら感じさせてしまうような作品です。

ミルククラウンはまさにミルク色の柔らかな温もりに包まれていますが、またすぐに消えてしまうような儚さをも表現しています。王冠の一つ一つは、それが出来た瞬間だけに残る僅かな記憶です。まるで彫像を象ったかのような質感(液体のミルクが迸っているというよりも、もっと粘性の帯びたような感触が感じられます。)と、丁寧に施された陰影、そして宙を凛と舞う粒が静かに佇んでいました。

小川に、古典絵画をモチーフとした「WITHOUT YOU」のイメージがあった私にとっては、少々面食らってしまう展示でもありました。今月27日までの開催です。(1/17鑑賞)

*関連エントリ
「マックス・ヘッドルーム -頭上注意の絵画- 」 ヴァイスフェルト 10/27

*関連リンク
小川信治展(国立国際美術館・大阪) 2006/9/30-12/24
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「平野薫『エアロゾル』」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
「第1回 shiseido art egg 平野薫『エアロゾル』」
1/12-2/4

資生堂の公募展「shiseido art egg」より入選した、計3名の作家を順番に紹介する展覧会です。その第一弾として、糸を使ったインスタレーションを手がける平野薫の作品が展示されています。



上から眺めるだけではあまり良く分かりませんが、下から見上ると実に壮観です。天井からは、とある使い古しのワンピースの布地を一本一本の糸にまでに解して出来た、まるで巨大な人形のような網状のオブジェが悠然と吊るされています。そしてそのスカートの先には、まだ解されていない布地も残っていました。どうやら、展示と制作が同時に進み、また提示されている作品でもあるようです。

その過程を見るには、奥の展示室にあるタイムカードが有効です。ここには、平野が制作に費やした時間の経過が事細かに記録されています。その時間はまちまちですが、中には深夜3時や4時などの印字も見ることが出来ました。この銀座の真ん中の地下空間にて、深夜一人、黙々と糸を解していたのでしょうか。そう考えるだけでも、恐ろしいまでに根気のいる作業です。(一つだけお願い出来れば、その制作の様子を記した映像や写真などの展示があると尚良かったと思います。)

現在進行形ということで、作品はまだ完成していません。また、毎週土曜日には公開制作も行われているそうです。最終日にはさらに進化した姿になっているのでしょうか。出来ればもう一度拝見したいです。



「第1回 shiseido art egg」
平野薫(1/12-2/4)
水越香重子(2/9-3/4)
内海聖史(3/9-4/1)

4月下旬には、今回のアートエッグの大賞も選出されるそうです。毎回の展示を追っかけていきたいと思います。(1/17鑑賞)
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「杉本博司『本歌取り』」 ギャラリー小柳

ギャラリー小柳中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
「杉本博司『本歌取り』」
2006/11/8-2007/1/27

ギャラリー小柳で開催中の杉本博司の個展です。ピューリッツァー財団にあるリチャード・セラの彫刻を撮影した「JOE」が、日本で初めて公開されています。

コンクリート床が剥き出しになった、半ば無機質とも言える小柳の展示空間には、杉本の「JOE」が良く似合っています。お馴染みの数式を立体化したオブジェ「観念の形」と合わせて、静謐かつ、非感傷的な美の空間が形成されていました。

 

それにしても、この被写体がセラの彫刻であることにはまず気がつきません。形は光と影との交錯に解体され、オブジェの存在感はうっすらと湿り気を帯びたようなモノクロの画面に溶け出しています。ここにセラのオリジナルを謎解き的に見出すことより、まさにそこから「本歌取り」された写真の美感に浸る方が楽しめるのではないかと感じました。その点この展示から受ける、不明瞭で、何やら良く分からないが美しいという感覚は、それこそ杉本の言う「写真が発明された時の『原初の驚き』が体験できるはず。」(asahi.comより。)のイメージに近いようです。確かに、オブジェの本来持っていた意味を微かに保存しながら、それを殆ど未知の新しい美意識にて提示してしまうところには驚きすら感じます。



今月27日までの開催です。(1/13鑑賞)

*本歌取り:すぐれた古歌や詩の語句、発想、趣向などを意識的に取り入れる表現技巧。転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼ぶ。(Hatena:Keywordから。)
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「加藤美佳展」 小山登美夫ギャラリー

小山登美夫ギャラリー江東区清澄1-3-2 7階)
「加藤美佳展」
2006/12/16-2007/1/20

横浜美術館の「アイドル!」展にも出品があった、加藤美佳の個展です。新作の油彩3点と、木炭画数点、それに人形1点が展示されています。そのポップな画風に潜む、冴えた技巧もまた見応え十分でした。



「海辺に打ち寄せられたグラスビーズを使って作られたオブジェをモチーフとした」(パンフレットより。)という「みんなのお墓」(2006)からして魅力的です。リアリティーを追求せず、むしろそのガラスの放つ妖し気な光沢感を多分に表現した作品のようですが、そのパステル調のマチエールと、遠目から見るとさながら印象派を思わせるような温かい雰囲気が優れています。(タイトルは謎めいていますが…。)また、ビーズの塊が床に反射して写った姿や、右上のガラス玉に降り注ぐ光の筋(あたかも粒子が描き込まれているかのようにキラキラと舞っています。)が輝いていました。これは引き込まれます。

木炭画も充実していました。こちらは油彩よりもリアリズムに富んでいて、どれもその高いデッサン力を垣間みられる作品ばかりです。モノの質感が軽やかに、しかしながら鮮明に伝えられていました。素直に美しいと思います。

「アイドル!」展に出ていた作品とはまた趣きが異なっていたそうです。おすすめしたいです。(1/13鑑賞)

*関連リンク
「アイドル!」展(横浜美術館):出品作家・作品紹介
五島記念文化賞美術新人賞(H13)受賞
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