「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」(平常展) 東京国立博物館

東京国立博物館・本館 特別1室、特別2室(台東区上野公園13-9
「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」(平常展)
4/28-5/10

本年に国宝、重要文化財に指定された美術工芸品を展覧します。東博本館、平常展内で開催中の「特集陳列 平成21年新指定国宝・重要文化財」を見てきました。

出品リスト(縄文時代の土偶より飛鳥、鎌倉期の仏像、室町、江戸の絵画から明治の映画フィルムなど、一部写真パネルを含め、全39点が登場します。)





まずおすすめなのが、数年前に栃木で発見され、おそらく東京では初めての公開になるであろう伊藤若冲の大作図巻、「菜蟲譜」(江戸時代)です。この作品については一昨年、当地の佐野の美術館まで追っかけたことがありましたが、今回は全11メートルのうちの最後、虫の楽園の描かれた約2メートルの部分のみが公開されていました。(ちょうど上の図版部分です。現時点で巻き替えの予定はありません。)趣旨は異なるとは言え、これほどの超名品をごく一部だけ紹介にとどめるのはいささか寂しい面もありますが、まずは東京に出たということだけでもあり難く受け止めるべきではないでしょうか。薄暗い照明でやや見づらい部分もありましたが、久々の再会の感激はひとしおでした。



しかしながら若冲を除いても、見るべき点が多数あるのが本展示の侮れないところです。二点の国宝のうちの一点、対決展でも印象深かった蕪村の「夜色楼台図」は残念ながらパネルでしたが、手足の縄のような模様も克明に残り、驚くほど状態の良い「土偶」(縄文時代)には惹かれるものがありました。ちなみにこの作品は制作後、同じく縄文期に一度、修復がなされていることが分かっているそうです。手は確かに合掌していますが、まるで唄を口ずさむ歌人のようにも見えました。どことなく楽しそうです。



絵画では縦4メートル、横3メートルほどはある東福寺所蔵の「白衣観音図」(室町時代)が圧巻です。ダイナミックな墨線が岩窟と荒々しい波頭を象り、その中をさも涼し気に観音様が座る姿が描かれています。またその他では、笙を奏で、鳳凰を呼び寄せるという逸話に基づく、岩佐勝以、ようは又兵衛の「弄玉仙図」(江戸時代)も見逃せません。ソフトタッチの描線が仄かな墨の濃淡と共鳴して、頭上には鳳凰も舞う優雅な景色を巧みに表していました。うっすらとした蔦や草の様子もまた趣があります。



工芸関連では長次郎による獅子の楽焼、「二彩獅子」(安土桃山時代)と、三井記念の森川如春庵展でも出品のあった光悦の「赤楽茶碗 乙御前」が一推しです。ぐっと前屈みになり、今にも駆け出しそうな獅子の様子はコミカルで親しみが持てます。また光悦は切れ味の鋭い口縁から開かれる、ちょうど丸いおむすびを象ったような独特のフォルムが印象に残りました。光沢のある朱色の釉薬も端正です。まるで何かを包み込むマントのようでした。



このペースで書いていくとキリがありません。最後には表面に鍍金がまだ残り、法隆寺金堂壁画との関連も指摘されるという「観音菩薩立像」(飛鳥時代)、また以前、真如苑が十数億円で購入したことで話題ともなった「大日如来坐像」(鎌倉時代)などの仏像も見応えがあったことを付け加えておきます。それにしても例えばお寺の文物などは、次にいつ公開されるか見当もつきません。その点でも興味深い展示であることは間違いなさそうです。

なお本展は言うまでもなく東博平常展の一部です。入館料のみで観覧可能です。(ただし撮影は不可です。)この日(19日)も阿修羅は40分待ちでしたが、こちらは悠々と楽しむことが出来ました。

GW期間中のみの特別公開です。5月10日まで開催されています。
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「日本の美術館名品展」(Vol.2・全体の印象) 東京都美術館

東京都美術館台東区上野公園8-36
「美連協25周年記念 日本の美術館名品展」
4/25-7/5



学芸員氏のレクチャーをまとめたVol.1に続きます。私感ながら、展示で興味深かったポイントなどを羅列してみました。

・展示はフロア別に分かれています
 厳密に言うと西洋と日本の二部構成ですが、一階に西洋絵画と彫刻、二階に日本近代の洋画、三階に日本画と版画と、各階毎にジャンルの異なる作品が並べられています。

・会期途中に展示替えを挟みます
 西洋画に関してはほぼ通期で展示されますが、日本画、及び版画はその4割程度が途中で入れ替わります。ご注意下さい。(展示リスト
 前期:4/25-5/31 後期:6/2-7/5

・キャプションは必見です
 まるで娘の結婚を前にした父親の心境です。通常ありがちな学術的解説は影を潜め、「本作は一番貸し出し要請の多いものである。」や「これは当館の看板娘。」などと言った素直な作品自慢(?)から、「これ以降の画家の作品は当美術館まで足を運び下さい。」から「ご来館の際は合わせて城下町の散策も如何でしょうか。」など、思わず笑ってしまうようなセールストークまでが書かれていました。

・画家の基準作も登場します

エゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」

 もちろん全てとは言えませんが、画家の代表作として挙げ得る作品も展示されていたのではないでしょうか。ミレー「ポーリーヌ・V・オノの肖像」(山梨県立美術館)、バーン=ジョーンズ「フローラ」(郡山市立美術館)、またボナール「アンドレ・ボナール嬢の肖像」(愛媛県美術館)やエゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」(豊田市美術館)など、隣の西美常設にも負けない良作を楽しむことが出来ました。

・ご当地の作家、作品に注目です

牛島憲之「邨」

阪神モダニズムの長谷川三郎から「芦屋浜風景」(芦屋市立美術博物館)、府中市美の記念館でも知られる牛島憲之の「邨」(府中市美術館)、そして群馬出身の山口薫の「花子誕生」(群馬県立近代美術館)や『河童の芋銭』こそ小川芋銭の「涼気流」(茨城県立美術館)など、郷土の画家の競演も見所の一つです。

・各所蔵館の特色あるコレクションからの一点も見逃せません

オノレ・ドーミエ「ドン・キホーテとチョ・パンサ」

 ご当地の画家とも重なりますが、記念館を併設した秋田市立千秋美術館より岡田謙三、再現アトリエのある群馬県美館林美術館からポンポン、1800点を超える版画を所蔵する伊丹市立美術館よりドーミエと、各美術館の自慢となるコレクションから名品が集うのも本展ならではのことかもしれません。

・意外にも近現代の絵画、彫刻も展示されています

ジャクソン・ポロック「無題」

 こうした名品展では省かれることの多い近現代絵画が登場するのもまた嬉しいところです。まさかこの展覧会でポロックのアクションペインティングを見られるとは思いませんでした。

・未知の作家(あくまでも私にとっての)に度肝を抜かれました



 上の図版は斎藤真一の「星になった瞽女」(倉敷市立美術館)です。岡山出身の画家だそうですが、その特異な画風には驚かされるものがありました。意外な作家、意外な作品を探すのもまた楽しみ方の一つではないでしょうか。

・残念ながら巡回はありません
 もちろんこれだけの規模をそのままでというわけにはいきませんが、史上初の公立美術館名品展を上野だけで開催するのはあまりにも勿体ないように思えました。今更、東京一極集中の状況を批判しても仕方ありませんが、出品美術館への感謝の意味もこめ、有力美術館への巡回があってもしかるべきだったかもしれません。

・照明はかなり暗めです
 とりわけ西洋絵画に関しては最近流行りの暗室、強めのライトでの展示です。一部、照明が作品に反射してしまい、画肌を見るのに難儀するものもありました。

・200点超の展示品は相当にボリュームがあります
 ひょっとすると現在、上野界隈で開催中の展示で一番鑑賞に時間がかかる展覧会かもしれません。実際、私も先日、そう力を入れて見たわけではありませんが、それでも二時間弱はかかりました。

・図録、ミュージアムショップ、及び混雑の状況
 図録は辞書並みの重さで2500円です。図版はそれほど鮮明ではありませんでしたが、国内美術館所蔵品の総合カタログとして一冊あっても良いのではないでしょうか。
 また混雑については、最近の都美の展示としては比較的空いていたと思います。(会期二日目の印象として。)
 各美術館へ行かないと購入出来ないグッズもありましたが、全体としてミュージアムショップは都美の大型展としてはもう一つでした。

・記念映画会



 GW中にクリムト、ポロックなどに関する映画鑑賞会が企画されています。

もちろん名品展ということで総花的な面は否めませんが、それでも初回の試みでよくぞこれまでと感心するような内容ではなかったでしょうか。また展示も簡潔な構成ながら、関連の作家同士の作品を並べるなど、随所にメリハリをつける工夫が見られました。前もって思っていた以上に楽しめたのは間違いありません。

長くなりました。個々の作品の感想はVol.3に廻します。

*関連エントリ
「日本の美術館名品展」(Vol.1・レクチャー)/(Vol.3・マイベスト)

*展覧会基本情報*
名称:美連協25周年記念 日本の美術館名品展
場所:東京都美術館
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。
会期:2009年4月25日(土)ー7月5日(日)
時間:午前9時~午後5時(入室は午後4時30分まで)
休館:月曜休室(ただし4月25日~5月10日まで無休)
料金:一般1400円、学生1200円、高校生700円、65歳以上800円
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「日本の美術館名品展」(Vol.1・レクチャー) 東京都美術館

東京都美術館台東区上野公園8-36
「美連協25周年記念 日本の美術館名品展」
4/25-7/5



国内の公立美術館より選りすぐりの名品、全220点が集います。東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」へ行ってきました。

有り難いことにもご縁があって、展示を拝見するに先立ち、東京都美術館の主任学芸員、中原淳行氏のお話を聞くことが出来ました。まずはその内容を本エントリでまとめます。鑑賞の参考にしていただければ幸いです。

美術館連絡協議会(美連協)とは]



・1982年に公立美術館を結ぶ組織として、読売新聞、日本テレビなどの呼びかけによって出来た横断的ネットワーク。
・初代理事長は、美術評論家であり、京近美の館長もつとめた河北倫明氏。現在の理事長は世田谷美術館館長の酒井忠康氏である。
・加盟館は北海道から沖縄まで全124館。巡回、共催展の企画、学芸員の業績研究の公開、また海外への派遣研修(一ヶ月から三ヶ月)などの事業を行っている。

[日本の美術館名品展の成り立ち]

・2007年に美連協が創立25周年を迎えたことを記念して企画された。
・こうした名品展の企画は、たとえば雑誌などの誌上特集としてはあったが、実際の展示で行われたことはなかった。=初の試み。
・各館の所蔵品の状況も配慮して、絵画だけでなく、写真や工芸まで幅広く集めている。
 →各美術館推薦の数点を持ち寄る。=『国内美術館総名品展』
・加盟館124館うち100館よりの出品。一部の加盟館学芸員からはこうした名品展に対しての懐疑的な指摘もなされたが、結果的に努力は報われた内容になったと自負している。 



[本展の内容と意義]

・総勢220点。相当のボリューム感。反面として手狭な都美ではタイトな展示状況となった。(展示設営時間も通常の数倍かかっている。)
 →そのため異例とも言える「展示替え」を途中に挟んでいる。
・名品を集めながら、西洋、そして日本の美術史を辿ることが可能。
・名品展と言えども、コンセプトのない、単なる「陳列」にならぬよう最大限配慮している。
・作品の持つ力を結集させる。また個々の作品をある程度の時代などで括って展示することで、その制作背景や時代性を浮かび上がらせる。
・都美の集客力と宣伝効果
 →地方の美術館は人の集まらない状況が続いているが、東京で紹介することで、観客の興味をある程度そちらへ向けることが出来る。
・キャプション、また図録解説とも所蔵館の学芸員が書き下ろしている。
 →あえて統一された規格を用いないことで、各館の生のメッセージがダイレクトに観客へ伝わるようになっている。
・今回は名品展という形だが、またテーマを変えて次回以降にも繋げていきたい。
 →今回集う名品も「氷山の一角」に過ぎない。



[見てほしいポイント]

・ジャンルと時代の多様性
 西洋と日本。油彩と日本画。そのバリエーション。差異など。
・お気に入りの一枚
 全200点超の作品から「お気に入りの一枚」を見つけて欲しい。
・各美術館への関心
 通常、キャプションの最上段は「作品名」を記すが、今回は美術館名を書いている。作品を見て各美術館そのものに興味を持って欲しい。
・門外不出作品の公開
 痛みのある作品など、普段、所蔵館より出る機会の少ないものも展示されている。
・会場の雰囲気
 作品をビンテージコレクションとして捉え、壁面の色、照明など、デザイナーとも協力して、それを見せるに相応しい展示環境を整えた。

以上です。意外にもこれまでになかった『国内所蔵総名品展』にかける強い熱意を感じました。

Vol.2以降のエントリでは、私の思う見所の他、各ジャンル毎の「お気に入り」の作品などを挙げていく予定です。

*関連エントリ
「日本の美術館名品展」(Vol.2・全体の印象)/(Vol.3・マイベスト)

*展覧会基本情報*
名称:美連協25周年記念 日本の美術館名品展
場所:東京都美術館
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。
会期:2009年4月25日(土)ー7月5日(日)
時間:午前9時~午後5時(入室は午後4時30分まで)
休館:月曜休室(ただし4月25日~5月10日まで無休)
料金:一般1400円、学生1200円、高校生700円、65歳以上800円
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「草間彌生 展」 高橋コレクション日比谷

高橋コレクション日比谷千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井ビルディング1階)
「高橋コレクション日比谷オープン記念 - 草間彌生 展 - 」
4/25-7/26



日比谷へと移転リニューアルした高橋コレクションのオープニングを飾ります。会期初日、高橋コレクションではじまった草間彌生の回顧展へ行ってきました。

まずは展示に触れる前に高橋コレクション日比谷からご紹介します。


同コレクションの入居した日比谷三井ビル。晴海通り方向から見た姿です。ちょうど日比谷映画館街の真ん中に位置します。


同ビル一階。草間展に合わせ、赤の水玉模様に彩られているのが高橋コレクションです。


展示室入口。


内部。壁面は白、床面はやや光沢のあるグレーが基本です。スペースは神楽坂時代はもちろん、白金にあった時よりも広くなっていました。

さて展示には、オーナー、高橋龍太郎氏がコレクションし続けた草間の作品が登場します。水彩からコラージュ、または立体オブジェと、最初期の50年代より2008年までの作品、約20点で構成されていました。


やはり目立つのは「マカロニガール」(1999)をメインとした「シルバールーム」ではないでしょうか。彫像の表面にはドットの代わりなのか、確かにマカロニ型の素材が一面に張り巡らされていました。


こちらは金網を用いた二点、「ジュリエット・グレコ」(1970)と「シャロン・テイト」(1970)です。女性の肖像はドットに浸食されるばかりか、外側を金網で覆うことで、さらに二重の穴、ようはドットのイメージが合わせ重なっていました。


水彩、エッチングなどの小品も並びます。

  
(上記三点はクリックで拡大します。)

ところで、現代アートの言わばトレンドを作る高橋コレクションのオープニングが何故、大御所、草間の回顧展なのかが少し疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。これはそもそも、高橋氏のコレクションをはじめる切っ掛けが、草間の油彩画であったからなのだそうです。原点に立ち返ってということなのかもしれません。





なお新たな高橋コレクションには、併設のミュージアムショップとして「ナディッフ日比谷」が入っています。かなり小規模なショップです。恵比寿やMOTのナディッフを想像すると肩すかしを喰らうかもしれませんが、書籍、グッズなど、一揃えは販売されていました。

なお日比谷へ移転後、これまでと大きく変わった点が一つあります。それは入場料金が設定されたことです。本展は300円ですが、受付の方によると、今後も基本的には有料展示を続けていく予定とのことでした。ここは率直に残念なところではありますが、規模、そして何よりも立地を鑑みれば致し方ないのかもしれません。



計20点とはいえ、草間をこれだけまとめて見られる機会などそう滅多にありません。言わば同コレクションの底力を知るにも相応しい展覧会ではないでしょうか。

次回展以降は若手作家を取り上げていくそうです。例えば藤田桃子展のようなあっと驚く企画に期待したいと思います。

銀座界隈にお出かけの際には是非お立ち寄り下さい。超ロングランの展覧会です。7月26日まで開催されています。

*写真の撮影は許可をいただいています。
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「オープニング・ビューイング」 ロンドンギャラリー(白金)

ロンドンギャラリー港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス4階)
「オープニング・ビューイング」
会期未定

白金アートコンプレックス内に、古美術専門画廊のビューイング・ルームが出来たことをご存知でしょうか。開催中の常設展を見てきました。



この画像を見てピンと来たら相当な江戸絵画通です。入口左手に見える屏風は、かの対決展にも出品のあった長谷川等伯の「四季柳図屏風」でした。それにしてもまさかここで再度、風を巧みに視覚化した等伯の佳作に出会えるとは思いません。思わぬ対面に驚いてしまいました。



もちろんケースなしの展示です。格子越しに差し込む自然光を正面より受けて、あたかもさらさらと音を出すかの如く佇んでいます。なおこの作品は来年、京博と東博で開催予定の等伯展にも出品されるそうです。



さて今度はこの光り輝く透明のガラスをご覧下さい。繰り返しの文章になりますが、これを見て感じるものがあれば、相当の杉本博司通です。ズバリ、同画廊の空間デザインは氏が全面的に行っています。道理で同ビルの最上階に杉本博司の事務所、「新素材研究所 杉本文化財団」が入ったわけでした。





外光を柔らかく取り込む縦格子の窓、また反り返った木製のテーブル、菱形の石畳、また調度品などに、全てを削ぎ落とした上での繊細な美意識を見せる杉本らしさを感じました。



あくまでもビューイングルームということで、特定の企画展を開催する予定は今のところないそうですが、いずれは現代アートと古美術の垣根を超えるべく、何らかのイベントや情報発信に取り組むつもりであるとのことです。今後はこうした仏像や屏風の前で、現代美術家のパフォーマンスなりインスタレーションを見ることが出来るのかもしれません。



内覧は一応、予約制となっていますが、私が出向いた先週の土曜日は普通にオープンしていました。山本現代などに行かれた際は、もう一つ上の4階まであがってみることをおすすめします。
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「三嶋章義 - FAMILY」 NANZUKA UNDERGROUND

NANZUKA UNDERGROUND港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス2階)
「三嶋章義 - FAMILY」
4/4-5/2



山本現代より一つ下のフロアに、高橋コレクション(注)と入れ替わる形で、渋谷より移転してきたギャラリーがオープンしました。皮革や布によって出来た「マスク」が空間を彩ります。三嶋章義のインスタレーション個展へ行ってきました。

 

言うまでもなく、主人公は様々な素材によって出来たマスク群です。角材が横切るホワイトキューブには、色も形も多様な姿を見せるマスクがあちこちに置かれています。靴のかかとが器用に鼻を象っているではありませんか。またその姿はまるで止まり木にのるオウムのようでした。



公式HPに記載されたマスク自体の意義までは見出せませんでしたが、あたかもジャングルに生息する「鳥」たちを見ている気分になったのは私だけでしょうか。人の顔をしながらも、獣の体をしたマスクは、確かに近未来的で奇妙な「複合生命体」(HPより引用)だったのかもしれません。

注)高橋コレクションは本日、日比谷へと移転しました。早速行ってきたので、後日レポートします。(高橋コレクション日比谷 オープン記念 - 草間彌生展 4/25~7/26)

5月2日までの開催です。
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「小谷元彦 - SP4」 山本現代

山本現代港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス3階)
「小谷元彦 - SP4 "the specter" in modern sculpture」
4/4-5/2

筋肉を剥き出しにした『ゾンビ』の騎士が裸婦へと襲いかかります。山本現代で開催中の小谷元彦の新作個展へ行ってきました。

ともかく見るべきはフロア中央で火花を散らす、男女の等身大の彫刻人物像の激しき戦いです。目を剥き、骸骨も露に、おどろおどろしいゾンビと化した騎士が太刀を振りかざして、今にも駆け出さんとせんとばかりに前へと屈んでいます。彼の視点の先にあるのは、全身にアラベスクのような妖艶な入墨を施した、同じくゾンビの裸婦でした。頭には百合の花を刺しながらも、手には心臓を持って騎士の前に立ちはだかっています。彼らはこの後、果たして如何なる戦いを繰り広げ、そして結ばれるのでしょうか。くたびれて朽ち果てた身体より振り絞られた最期のエネルギーが、辺り一面の空気を一変させていました。

壁面には長方形をした約10点の黒のオブジェが並んでいます。こちらは他でも目にする機会の多い皮膜状の立体作品ですが、小谷には「白」のイメージがあったので、少々驚かされるものがありました。またその表面があたかも血塗られた肉体の組織に見えたのも、前述のゾンビ武者の印象が強烈だったせいかもしれません。

気分を害される方もいらっしゃると思います。作品画像のアップは自粛します。

5月2日までの開催です。
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「ShinPA!! - 東京藝術大学デザイン科描画系作品展 - 」 佐藤美術館

佐藤美術館新宿区大京町31-10
「ShinPA!! - 東京藝術大学デザイン科描画系作品展 - 」
4/1-26



東京芸大、デザイン科描画・装飾研究室出身(在学中も含む)の作家を紹介します。佐藤美術館で開催中の「ShinPA!! - 東京藝術大学デザイン科描画系作品展 - 」へ行ってきました。



出品作家は以下の21名です。

阿部穣・泉東臣・井上越道・井上恵子・浦和志津香・岡部忍・押元一敏・金丸悠児・金木正子・川本淑子・小林英且・三枝淳・芹田紀恵・田宮話子・堤岳彦・冨田典姫・日根野裕美・深海武範・三浦知子・山本陽光・渡邊史

では早速、数点、印象に残った作品を挙げます。


泉東臣「光の詩」
鬱蒼と生い茂るススキが月明かりを受けて大きく羽ばたいています。藍色すら帯びた背景の深い青みもまた幻想的でした。


井上越道「雷光」
闇の中を紅葉がひらひらと舞い降ります。流水紋のように描かれた線は自転車を象っていました。


岡部忍「Untitled」
雪に沈む荒野を鳥瞰的に描きます。点々と連なる家屋は静寂に包まれていました。


金丸悠児「時の使者」
巨大なシーラカンスがまるでモザイク画のように描かれます。新聞紙のコラージュや砂をまぶした画肌もまた個性的でした。


芹田紀恵「nude」
二人の裸の女性が手を取り合い、何かを確認し合うかのように見つめ合います。


川本淑子「桜の木の下で」
桜色に照る木陰をウサギがのんびりとくつろぎます。その可愛いウサギの姿に一目惚れしました。

なお本展は日本画家、中島千波の業績を紹介するおぶせミュージアム(長野)よりの巡回展です。佐藤美術館では2006年より毎年、こうしたグループ展を開催し続けています。なおタイトルの後の「!」は、展覧会の回数を表すためのマークだそうです。(「!!」の今回は第三回目に当たります。一回目は無印。)

次の日曜、26日までの開催です。なお入場は無料でした。
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「上野でアートを満喫しよう!」@ミュージアムカフェ

ミュージアムカフェ主催のブロガー座談会、「上野でアートを満喫しよう!」に参加してきました。

ミュージアムカフェ(株式会社廣済堂による美術館・博物館・展覧会情報総合サイト)
museum-cafe blog(上記サイト更新情報、及び展示内覧会の紹介など。)



参加メンバーは私を含め、以下の通りです。

『Art & Bell by Tora』(とら さん)
『つまずく石も縁の端くれ』(一村雨 さん)
『弐代目・青い日記帳』(Tak さん)
『confidential memorandum of ogawama』(ogawama さん)
『What’s up, Luke?』(さちえ さん)
『はろるど・わーど』(はろるど)

テーマが大まかな「上野のアート」とのことで、開催中、もしくは近日開催予定の展覧会の印象、または期待などを、ざっくばらんに語る形式となっています。実のところ、皆さんリアルでもお世話になっている先輩諸氏の方々ばかりなので、殆どオフ会のノリで話してしまいましたが、これをご覧になって少しでも展示を身近に感じ取っていただければ嬉しいです。

*ブロガー座談会「上野でアートを満喫しよう!」*
東京国立博物館の大型展覧会『阿修羅展』と『カルティエ クリエイション』
国立西洋美術館『ルーヴル美術館展』、国立新美術館とどちらがオススメ?
『尼門跡寺院の世界』に『日本の美術館名品展』……ほかにも注目!


記事は三日連続で更新されます。既に本日、東博の阿修羅とカルティエ展の部分がアップされました。ちなみに私はカルティエを未だ拝見出来ず、完全に場を汚してしまいましたが、皆さんの話をお聞きしてそのインスタレーション的な展示方法など、俄然と興味がわきました。近いうちに見に行きたいです。

なお取り上げられた展示は以下の6展です。またルーブルについては、対比の点より新美のルーブル展についても触れています。


「国宝 阿修羅展」 東京国立博物館・平成館(~6/7)
演出に凝った展示を含め、賛否両論もあるライティングの話題がメインとなりました。


「カルティエ クリエイション」 東京国立博物館・表慶館(~5/31)
まだ拝見出来ていないので聞き役です。なお東博で一番好きな建物については、私も法隆寺宝物館を挙げたいと思います。


「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」 国立西洋美術館(~6/14)
西美VS新美のルーブル対決です。先日、私も新美ルーブルを見ましたが、確かに物販はこちらの方が充実していました。なお記事中の図録云々については私は殆ど購入しません。


「尼門跡寺院の世界 皇女たちの信仰と御所文化」 東京藝術大学大学美術館(~6/14)*museum-cafeにてチケットプレゼントあり。
皆さん超一推しの展覧会です。これまた座談会に参加しながら未見ですが、隠れ大ヒットの多い芸大美ということで、これも早々に行きたいと思います。


「日本の美術館名品展」 東京都美術館(4/25~7/5)*museum-cafeにてチケットプレゼントあり。
ネーミングについての話題が出ました。ちなみにあちこちで目にするブログパーツは、何故かgooブログで貼れません。残念です。


「ネオテニー・ジャパン - 高橋コレクション」 上野の森美術館(5/20~7/15)
目利きの高橋氏のコレクションを見られる展覧会です。私としては一推しにしたいと思います。なお最後に「自分にとっての美術館」の話題がありますが、そこは有りがちにまとめてしまったということでご勘弁下さい。

自分の他愛ない話が記事になることはおろか、ブロガーという言葉で呼ばれることからして小恥ずかしい限りですが、改めてこうした場を設定して下さったミュージアムカフェ様には感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
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「長塚秀人 - 純粋風景 - 」 ラディウム

ラディウム-レントゲンヴェルケ中央区日本橋馬喰町2-5-17
「長塚秀人 - 純粋風景 - 」
4/3-25



「海」と「空」をモチーフに独自の写真表現を追求し続けます。レントゲンで開催中の長塚秀人の個展へ行ってきました。

青と白とがせめぎあう細かに砕けた波頭をはじめ、白砂とエメラルドグーリンの混じる美しい水の質感を、あたかも宝石を散りばめたような光で取り込む「海」こそ今回の主役です。時に接写風に波へ近寄り、また一転して全体を捉えながらも、その構図からして非現実的で抽象的な景色を生む写真は、とかく語られがちなジオラマ云々以前に極めて洗練されていました。言ってしまえば長塚をジオラマ写真の作家として捉えると、彼の制作の方向性を大いに見誤るのに相違ありません。苔を洗って岩場へと流れ込む波は、まるで裾野の広がる山脈を空から覗き込むイメージとも重なりました。作家の目は対象のミクロのレベルにまで行き届いています。たゆたう波や海原から、それ自体の美感を超えた繊細極まりない未知の景色が引き出されていました。

次の土曜日、25日までの開催です。
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「深海武範 - みるみるあげてみる」 GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo Ryogoku墨田区亀沢1-7-15
「深海武範 - みるみるあげてみる」
4/11-5/2



作家の自身の「身近な世界」を、時に「アングル」(カッコ内は画廊HPより引用)を変えてユーモラスに描き出します。1975年生まれのペインター、深海武範の個展へ行ってきました。



一番身近な対象とは何かと問われた時、誰もが答えとして挙げ得るのはやはり家族ではないでしょうか。実際、深海も近作では妻、もしくは最近生まれたという子どもを切っ掛けに、派生するプライベートな空間を清潔感のあるタッチで描いています。瞳を大きく開き、人懐っこい様でこちらを覗き込む女性こそ、まさに深海の最愛の妻に他なりません。独特のトリミングした構図は、また作家自身の視点とも重ね合わさります。まるで会話する二人の間に立ち入るかのように親密でした。



元々はシュールな表現にも基盤があったとは言え、思わず見ていて戸惑ってしまうほど深海の画風は多様です。コップに映る赤ん坊を描いたアニメーション的な連作などは好き嫌いが分かれそうですが、変わった「アングル」より開ける世界も、また笑って楽しむべきものなのかもしれません。

なお深海は今、佐藤美術館で開催中の「東京芸大デザイン科描画系作品展 - ShinPA」(~4/26)にも出品しています。



5月2日までの開催です。
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「アーティスト・ファイル 2009」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「アーティスト・ファイル 2009 - 現代の作家たち」
3/4-5/6



同館の学芸スタッフが注目する作家、計9名の制作を個展形式で紹介します。(ちらしより引用。一部改変。)国立新美術館で開催中の「アーティスト・ファイル2009」へ行ってきました。

本年の出品作家は以下の通りです。

ペーター・ボーゲルス(1956~)
平川滋子(1953~)
石川直樹(1977~)
金田実生(1963~)
宮永愛子(1974~)
村井進吾(1952~)
大平實(1950~)
齋藤芽生(1973~)
津上みゆき(1973~)

では早速、会場の展示順に沿って、各作家の印象を手短かに書いていきます。

大平實
南国の家屋を思わせるような巨大な木製のオブジェ。「自然を思い起こさせ」(解説冊子より。)るかどうかは難しいところだが、その気配よりも、表面をハリネズミのように覆う木材自体の質感に目が向いた。壁から突き出す「サンタ・アナの風」はまるで水道の蛇口のよう。ただし真っ白で無機質な新美展示室にはあまりにも唐突な印象が否めなかった。

カメラの謂れは→(ともに拡大します。)

石川直樹
SCAIの個展や目黒のグループ展でも出ていた作品が集大成的に揃う。私としては写真よりも、アートナイト関連で屋外に展示されていたカメラ(上写真)の方が興味深い。長時間漂流して朽ち果てたカメラは、まるで化石のようだった。



金田実生
ぼんやりとした色彩に斑紋のようなモチーフがたゆたうペインティング。目を閉じた時に頭に浮かぶような夢心地の景色が広がっていた。



齋藤芽生
アクの強い画風は好き嫌いが分かれそう(私は苦手)だが、インパクトにかけては間違いなく本展覧会で一番ではないだろうか。不気味な花輪やくたびれた団地の景色が、精緻な描写でかつドギツイ色彩にてシュールに表されていた。ただ怖いもの見たさという点においても、もう少しコンパクトな展示に接したい。

津上みゆき
絵具の色面が水の上を自由に流れて混じり合うような絵画群。一見、抽象にも思えるその画面の向こうには、作家自身の見た風景が包まれているとのこと。しかしながらそれを共感するのは極めて困難だった。

村井進吾
直方体の黒御影石のオブジェが広々とした空間に点在する。これまた新美の展示室に入るとイマイチ良さが伝わらないように思えるが、切り込まれた石の中でたまる水は、あたかも添水を受ける石の器のようだった。それにしても借景が欲しい。



ペーター・ボーゲルス
スクリーンを格子状の曲線に区切り、時間と場所に異なった映像を並列的に映し出す。斎藤のみくじからのギャップが激しく、その作品世界へ入り込むことは出来なかった。

宮永愛子
古びたたんすや化粧箱を堆く積み上げ、その引き出しの中に鉄道模型から小物までを用いたナフタリンのオブジェを隠して見せる。空間を埋める力は流石。もう一点は音をテーマにした作品。新作との記載があったが、私には以前、浅草の個展で聞いたものの焼き直しにしか見えなかった。

屋外の光合成の木

平川滋子
新美屋外のテラスなどに設置した「光合成の木」をスクリーンに映し出す。それにしても何故に映像の展示なのか。外の木をメディアで捉えることの意義がまるで分からなかった。

アートナイト開催日に無料で入場したので細々とした文句は言いません。ただしカロンズネットの桝田氏のレビューに賛成であるということだけを付け加えておきます。

まずは図録を分冊で発売することからはじめなくてはならないのかもしれませんが、一層のこと入場料金も作家別にとれば良いのではないでしょうか。個々の作家に面白さはあるとは言え、キュレーションの殆ど存在しない本展覧会に「全体」がない以上、入場料を一つの括りで固定するのにもはや意味はありません。

5月6日までの開催です。
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「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」 川村記念美術館(Vol.2・レクチャー)

川村記念美術館千葉県佐倉市坂戸631
「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」
2/21-6/7



ロスコ展が始まってから早くも二ヶ月が経とうとしています。少し時間があいてしまいましたが、展示風景を写真でお伝えしたVol.1に続き、今回はプレスプレビュー時に行われた同館学芸員、林寿美氏によるレクチャーの様子を簡単にまとめてみました。

[今展覧会の開催について]

・テートモダンとの協力によって成り立った一期一会のロスコ展
 →それぞれ門外不出の「シーグラム壁画」を両館が貸し出し合うことで企画が実現。
  1970年、シーグラム壁画がテートに収められて以来、40年経って初めてその半数が邂逅した。
・ロスコの子息、クリストファー・ロスコ氏の全面協力を受けている。著作権の問題も比較的容易にクリアした。


(作品の前で語るクリストファー・ロスコ氏)

[展覧会の構成]

1.シーグラム以前と「赤の中の黒」

「赤の中の黒」(1958)

・「赤の中の黒」(1958)
 シーグラム壁画と同時代の作品。50年代に到達した典型的なスタイル。大画面の中に抽象性の高い色面がシンプルに配置される。
・ロスコの画業の変遷
 ロシア生まれのロスコは当初、シュールレアリスムの影響を受けるが、画業後半を迎えるにつれて具象的な形は消え、色面構成に力点を置いた作品を描くようになった。
・『色の力』とインスタレーション的志向
 ロスコの色には見る者の心を捕まえて離さない力がある。絵の中に吸い込まれる感覚を味わうのではなかろうか。
 ↓
 とは言え、ロスコ自身は色の「良さ」のみを言われるのをあまり好まなかった。
 =当初、ロスコは黄色やオレンジなどの明るい色を用いていたが、色の奇麗さを賞賛されるあまり、逆に暗い黒や茶色を使うようになった。それが後、精神性という言葉でも括られるようになる。
 ↓
 また色の変遷とともに、空間を絵画でコントロールすることを望むようにもなった。その時期にちょうどシーグラム壁画の注文が舞い込んできた。

2.シーグラム壁画~前史より~

・シーグラムビルからテートへ
 NYのシーグラムビル内、フォー・シーズンズレストランの壁面を飾るための作品の制作を依頼される。=コンセプトは料理とともに、「一流」の芸術を紹介するというもの。
 ↓
 ロスコは自分のための空間を作れると注文を受諾。1958年秋より翌年秋の約一年間にて構想、そして完成へと至った。しかしうち30点ほど描き終えた時点でレストランを下見したロスコは、自分がイメージしていた場所と違うと展示を拒否。他の場所で展示することを模索するようになる。
 ↓
 約7年後の1965年、ロンドンのテートに作品が収蔵。展示が実現。



・ノーマン・リード(テート館長)との書簡集
 作品収蔵のため、約4年間にもわたってロスコとリードの間に手紙のやり取りがあった。
 手紙からは揺れるロスコの心のうちを読み解くことが出来る。
 60年代後半は健康状態も芳しくなかったせいか、筆の乱れたものも多い。


「テート・ギャラリーのシーグラム壁画展示のための模型」(1969)

 模型はロスコが構想したテートの一室。シーグラム壁画と同時期のスケッチも展示。
・収蔵、そして謎の死
 1969年、テートの一室にシーグラム壁画を寄贈したその日、ロスコは腕を斬って自殺した。

3.シーグラム壁画展示室


(c) Kawamura Memorial Museum of Art 2009

 シーグラム壁画全30点のうち15点が展示されている。
 テートモダンよりの巡回展であるものの、その展示方法はあえて変えている。ロスコのイメージにより近い形を理想とした。
 高さ
  通常より展示位置が高い。床面より約120センチの場所に設置。
 幅
  作品同士を5センチの距離に近づけた。(ロスコの残した構想によっている。)上への繋がりよりも横へのそれを意識していたのではないか。



 天井の窓:自然光を取り込む工夫。外の天気によって照度が変わって来る。
 中央の椅子:腰掛けてじっくりとロスコの作品を味わって欲しい。
 音声ガイドに収められたロスコの愛したモーツァルトの音楽を聴きながら見るのもおすすめしたい。

4.もう一つの「ロスコ・ルーム」(1964)



 ヒューストンの「ロスコ・チャペル」に極めて近い。
 これらが注文を受けて作られたものでもなく、またそもそも連作(全9点が確認され、うち4点が展示されている。)であるのかすら分かっていないが、空間を黒で支配しようとしたロスコの意識を垣間見ることが出来る。
 「シーグラム壁画」であった窓のような外枠の面はなく、シンプルな黒が静かに迫り来る作品。
  黒の中にはマットな部分とツヤのある部分に分かれ、一概に黒とは言えども複雑な表情を見せている。
 この時期席巻していたポップ・アートの動向に対し幾分迷いもあったというロスコは、改めて自らの精神性についてこれらの作品で問い直していたのではないだろうか。

5.最晩年の「無題」(1969)

「無題」(1969)

 ロスコが非業の死を遂げた1969年作の一枚。
 上部に黒と深い茶色が、また下部にグレーの色調が配され、周囲に白い縁が描かれている。
 この時期のロスコは健康上の問題から、大作の制作を医者にとめられていた。その中で描かれた作品でもある。
 黒とグレーというと暗く否定的なイメージもあるが、今作に関しては必ずしもそうはとれないのではないか。奥へ伸びゆく広がりも感じられる。ロスコの新たな境地を示した作品かもしれない。

以上です。



 「MARK ROTHKO」

なお本展示の図録でもあり、日本で初の本格的作品集でもあるという「マーク・ロスコ」(淡交社)が、先日より全国の書店で発売されました。シーグラム壁画を中心に全100点の作品図版、及び資料、また上のレクチャーを担当した林氏の論文やロスコの評伝などが全200ページ超のボリュームで掲載されています。ロスコファン必見の一冊です。まずは書店でご覧下さい。

「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」は6月7日まで開催されています。

*展示基本情報*
「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」
場所:川村記念美術館
交通:京成、JR佐倉駅より無料シャトルバス。(バス時刻表)無料駐車場あり。
会期:2009年2月21日(土)~6月7日(日)
時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館:月曜日(ただし5/4は開館)、5/7(木)
料金:一般1500円、学生・65歳以上1200円、小中高校生500円。

*写真の撮影、掲載については全て主催者の許可をいただいています。

*関連エントリ
「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」 川村記念美術館(Vol.1・プレビュー):報道内覧会時の会場写真など。
春うらら@川村記念美術館:川村記念美術館付属の庭園風景。
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youtubeシンフォニーオーケストラ、カーネギーホールライブを公開

企画はもちろん、オーディションまでyoutube上で行われたという「YouTubeシンフォニーオーケストラ」が、つい先日、カーネギーホールで記念のライブを行いました。今、その模様がyoutubeに公開されています。ご覧になられたでしょうか。

YouTube Symphony Orchestra @ Carnegie Hall - Act One

現在のところ前半部分、はじめの1時間だけがアップされています。

プロアマを問わず、全世界より3000件以上の応募から選抜された90名の音楽家たちが、かの俊英マイケル・ティルソン・トーマスのタクトの元に集まりました。オープニングを飾る華々しい音楽は、ブラームスの第4交響曲から第3楽章です。コンサートは短い曲を中心に15曲、またメインは今回のために作られたというタン・ドゥンのその名も「インターネット交響曲第1番『エロイカ』」だったそうですが、それは後半の第二部の映像で流されるのではないでしょうか。一部の最後のワルキューレのリズムは軽やかでした。

団員のオーディション映像やメッセージがバックに流れるステージの演出も華やかです。桜の映像から始まるのは、マリンバの高藤摩紀さんでした。ちなみに同オケには、一般企業勤務のアマチュアの方などを含め、日本人が三名参加しているそうです。もちろんyoutubeオーケストラ日本版サイトで、それぞれの方の演奏の様子も聞くことも出来ます。

youtubeシンフォニーオーケストラ日本版

通常のコンサートではまずあり得ませんが、観客のビデオの持ち込みも許可されていたそうです。今後はyoutube上に、観客視線によるコンサートの様子なども投稿されるのかもしれません。

追記:第二部がアップされました。5分過ぎよりタン・ドゥンが登場します。
Act Two: YouTube Symphony Orchestra @ Carnegie Hall
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春うらら@川村記念美術館

春というよりも初夏のような陽気が続きますが、草花も活気づく今の季節はちょっとした小旅行にも最適です。ロスコ展を再び見るべく、佐倉の川村記念美術館へ行ってきました。(写真は全てクリックで拡大します。)

 
入口インフォメーション付近で咲く桜。一番の撮影スポットです。

 
当然ながらソメイヨシノはほぼ終わってしまいました。桜色に変わってまだ若い黄緑色が目に飛び込みます。

 
ロータリーより直進し、鬱蒼とした林に囲まれた散策路を歩きました。


右を向くと木立越しに美術館が見えます。


アート広場。多目的に使える芝生広場です。

 

 
園内最奥部、菖蒲園、蓮園の側にしだれ桜が咲き誇ります。見頃ではないでしょうか。華麗です。


千葉の原風景を再現したのかもしれません。園内は里山風です。


園内にはテニスコートもあります。利用されているのは地元の方でしょうか。

 
インフォメーション近くのフラワーショップでは鉢植えも販売中でした。花には事欠きません。


駐車場ではチューリップもお出迎え。

なおこのところの天候にも誘われてか、つつじが咲き始めたようです。今週末より、普段は立ち入れない(研究所敷地内のため)「つつじ山」が開放されます。そちらと合わせてのお出かけも良いのではないでしょうか。(開放日一覧。見頃は25、26日だそうです。)

*つつじ山の見事な写真がTakさんのブログに掲載されています。
「ツツジ山」@川村記念美術館(弐代目・青い日記帳)


こちらは白鳥池です。

車を使いましたが、川村の後に廻った上野(阿修羅)まで、東関道、首都高経由でちょうど1時間でした。電車も言われるほど時間はかかりませんが、(例えば京成線の快特なら日暮里から佐倉まで50分です。)佐倉インターからも近く、駐車場も無料なので、空いていればやはり車の方が便利かもしれません。


美術館入口とステラの超大作「リュネヴィル」。

ロスコ展についてはプレビューの記事をご参照いただきたいところですが、同日開催されたレクチャーの様子をまとめるのを忘れていました。次回アップします。(追記:以下にアップしました。)

「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」 川村記念美術館(Vol.2・レクチャー)
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