都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「エコール・ド・パリ展」 松岡美術館 7/2
松岡美術館(港区白金台5-12-6)
「エコール・ド・パリ展」
4/29-9/3
松岡美術館へは今回初めて行ってきました。白金台の外苑西通りから一歩裏へ入った、閑静な住宅街に建つ美術館です。重厚感のある佇まいが印象的でした。
美術館の創立者は、現松岡グループの創業者である松岡清次郎氏(1864-1989)です。と言うことで、所蔵品はもちろん氏の蒐集したコレクション。かつては新橋の自社ビル内に美術館を設けていたようですが、2000年にこの地へ移って来ました。二階建てながらもゆったりとした広い館内には、古代オリエントからガンダーラ・インド美術、それに東洋青磁やフランス近代絵画などがズラリと並べられています。ちなみにこの「エコール・ド・パリ展」は、そのコレクションの一部であるフランス近代絵画の中から構成されたものです。キスリング、シャガール、藤田、ユトリロ、ヴラマンクなどの絵画が展示されています。常設の古美術を合わると、予想以上に見応えのある展覧会でした。
シャガールの幻想的な絵画や、乳白色の藤田にモディリアーニの女性肖像画などの落ち着いた作品も優れていましたが、まず挙げたいのはデュフィの海景画、「信号所」(1924)です。深い青みをたたえた波打つ海。波がまるで魚の鱗のように表現されています。そして海にはぽっかり汽船が浮かんでいる。画面右側の陸地には人が海を眺めている様子も描かれています。とても強いタッチにて絵具がおかれているので、水や空気の透明感はまるで伝わってきませんが、その分、海の重みがどっしりと感じられます。ズシリと心に迫るような風景画です。
最近惹かれているヴラマンクにも印象深い作品がありました。まずはこの「嵐の前の風車」(1930)です。遠目から見ると、それこそ海景画のように海が描かれているようにも思えますが、深い緑は嵐の前で風に波打っている大地です。そしてそこに浮かぶように描かれた風車。小屋か積み藁のようなものが前景に描かれています。奥から手前へ轟々と抜けていく風。まさに暗雲漂う空と、荒々しい大地。白いタッチが効果的です。また画面中央には、そんな嵐を背に背にして歩く二人の人が見えました。帰路を急いでいるのかもしれません。
非常に激しい作品なので大きく好き嫌いが分かれるかと思いますが、同じくヴラマンクの「スノンシュ森の落日」(1938)も強いインパクトを与えられます。落葉した木々が寒々と立っている。その不気味な表現にも目を奪われるところですが、ともかくその奥にて沈み行く夕陽が強烈です。ドキツい朱色にて真ん丸に描かれた夕陽。そこから発せられた強い光線が木々を侵しています。一歩間違えれば崩壊してしまいそうな危うい構図感ではありますが、ギリギリの線で絵としてかろうじてまとまっています。その夕陽の眩しさに思わず仰け反ってしまうような作品でした。
9月3日までの開催です。今後は常設展と合わせて、企画展もチェックしていきたいと思います。
「エコール・ド・パリ展」
4/29-9/3
松岡美術館へは今回初めて行ってきました。白金台の外苑西通りから一歩裏へ入った、閑静な住宅街に建つ美術館です。重厚感のある佇まいが印象的でした。
美術館の創立者は、現松岡グループの創業者である松岡清次郎氏(1864-1989)です。と言うことで、所蔵品はもちろん氏の蒐集したコレクション。かつては新橋の自社ビル内に美術館を設けていたようですが、2000年にこの地へ移って来ました。二階建てながらもゆったりとした広い館内には、古代オリエントからガンダーラ・インド美術、それに東洋青磁やフランス近代絵画などがズラリと並べられています。ちなみにこの「エコール・ド・パリ展」は、そのコレクションの一部であるフランス近代絵画の中から構成されたものです。キスリング、シャガール、藤田、ユトリロ、ヴラマンクなどの絵画が展示されています。常設の古美術を合わると、予想以上に見応えのある展覧会でした。
シャガールの幻想的な絵画や、乳白色の藤田にモディリアーニの女性肖像画などの落ち着いた作品も優れていましたが、まず挙げたいのはデュフィの海景画、「信号所」(1924)です。深い青みをたたえた波打つ海。波がまるで魚の鱗のように表現されています。そして海にはぽっかり汽船が浮かんでいる。画面右側の陸地には人が海を眺めている様子も描かれています。とても強いタッチにて絵具がおかれているので、水や空気の透明感はまるで伝わってきませんが、その分、海の重みがどっしりと感じられます。ズシリと心に迫るような風景画です。
最近惹かれているヴラマンクにも印象深い作品がありました。まずはこの「嵐の前の風車」(1930)です。遠目から見ると、それこそ海景画のように海が描かれているようにも思えますが、深い緑は嵐の前で風に波打っている大地です。そしてそこに浮かぶように描かれた風車。小屋か積み藁のようなものが前景に描かれています。奥から手前へ轟々と抜けていく風。まさに暗雲漂う空と、荒々しい大地。白いタッチが効果的です。また画面中央には、そんな嵐を背に背にして歩く二人の人が見えました。帰路を急いでいるのかもしれません。
非常に激しい作品なので大きく好き嫌いが分かれるかと思いますが、同じくヴラマンクの「スノンシュ森の落日」(1938)も強いインパクトを与えられます。落葉した木々が寒々と立っている。その不気味な表現にも目を奪われるところですが、ともかくその奥にて沈み行く夕陽が強烈です。ドキツい朱色にて真ん丸に描かれた夕陽。そこから発せられた強い光線が木々を侵しています。一歩間違えれば崩壊してしまいそうな危うい構図感ではありますが、ギリギリの線で絵としてかろうじてまとまっています。その夕陽の眩しさに思わず仰け反ってしまうような作品でした。
9月3日までの開催です。今後は常設展と合わせて、企画展もチェックしていきたいと思います。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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TBさせていだきました
わたしも先日、初めて行ってきたのですがここはキレイで雰囲気もよくまた行こうと思いました。
今回タイミング的に断念したのですが、階段の下の縁台のところで500円で抹茶とお菓子がいただけるよう。
これは是非とも試してみようとおもいます。
しかし、これだけ作品があると記事に嗜好性がすごく出て面白いですよね。
ヴラマンクの「スノンシュ森の落日」、本当にインパクト強いです。あの夕陽、木々、地面・・・。絵の前で、見入ってしまいました。
こんにちは。
早速のコメントとTBをありがとうございました。
>ここはキレイで雰囲気もよく
そうなのですよね。
行く前はあまり美術感のイメージが沸いてこなかったのですが、
予想以上に素敵なところでした。
>階段の下の縁台のところで500円で抹茶とお菓子がいただけるよう。
お抹茶を!
それは素敵ですね。中庭を眺めながら美味しくいただけそうです。
次に行った際には私も試してみようと思います。
@yukoさん
こんにちは。コメントありがとうございます!
>「エコール・ド・パリ」の画家の好作品
結構揃っていましたよね。シャガールなども見事でした。
>ヴラマンクの「スノンシュ森の落日」、本当にインパクト強い
人気はなさそうですが、
少し気になる画家なもので取り上げてみました。
タッチが、思わず顔を背けたくなるくらい強烈です!
「エコール・ド・パリ」の画家が目的だったのに、1階のインドな仏像たちに釘付け。めちゃくちゃ彫りが深くてイケメンのブッダとか、豊満ボディーで明るくせくしーなインドの神達にクラクラしてしまいました。なにせ元が仏像好きなので。
松岡の仏像達にまた会い行こうと思います。
コメントありがとうございます!
>私も先日はじめて行って来ました。「ぐるっとパス」利用
それは!ぐるっとパスの効用ですね!
>1階のインドな仏像たちに釘付け。
いやはや実は私もこのエントリでは触れなかったのですが、
企画展よりも仏像の方をじっくりと見ておりました。
ムーアから、仰る通りインドのセクシー(エロス!)な仏像まで、
本当に見応え満点ですよね。
どれも足が止まります。
今度は私も仏像だけ拝見してこようかと思います!
仏像の企画展と言うのもあれば良いですね。
私も行ってきました松岡美術館。シロガネーゼとは無縁だぜっと息巻きながら外苑西通りを歩きました(笑)
はろるどさんはヴラマンクお好きなんですね~確か他の展覧会でもよくチェックされていらっしゃいますものね~
こちらが気をつけていないと、飲み込まれてしまいそうな勢いがあります。なにやら画家の情念といったものを感じます。
私は、というとモディリアーニのなかば記号化した女性像が気に入りました。特に肌の色合いなど、とても美しかったです。
コメントとTBをありがとうございました。
>はろるどさんはヴラマンクお好きなんですね~確か他の展覧会でもよくチェックされていらっしゃいますもの
はい、どうやらそのようです!
色遣いが強烈過ぎてちょっとどうかと思う部分もあるのですが、
それでもやはりあの世界観には吸い込まれてしまいます。
>モディリアーニのなかば記号化した女性像
記号化と仰るのに同感です。
確かにどの女性を見ても類型的に描いた感がありますよね。
藤田の、特に乳白色の女性に通じる部分があるでしょうか。