2014年 私が観た展覧会 ベスト10

年末恒例、独断と偏見による私的ベスト企画です。今年私が観た展覧会のベスト10をあげてみました。

2014年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「ジャン・フォートリエ展」 東京ステーションギャラリー



前々から惹かれていたフォートリエの回顧展にようやく接することが出来ました。初期のレアリスムに驚き、「人質の頭部」におののき、また後の抽象的な「黒の青」などに心打たれる。時間軸で追うことで画風の変遷も辿れたのも大きなポイントでした。レンガ壁の展示室とフォートリエの作品の相性も良かった気がします。また一人、かけがえのない画家と出会えました。

2.「ダレン・アーモンド 追考」 水戸芸術館



全体が一つの物語を紡ぐような構成にも魅了された展覧会でした。最初と最後でテキストと映像のメッセージが輪を描くように繋がります。また僧侶の修行を捉えた「Sometimes Still」や生命賛歌ともとれる「All Things Pass」の映像も端的に素晴らしい。展示室を何周もしては作品世界を堪能しました。

3.「さわひらき」 東京オペラシティアートギャラリー



さわひらきの新たな展開を見る展示ではなかったでしょうか。飛行機の飛び交う幻想世界のみを期待すると、良い意味で裏切られます。テーマは多面的でかつ重層的です。深化という言葉が相応しいかもしれません。オペラシティのスペースを効果的に利用していたのも好印象でした。

4.「ウィレム・デ・クーニング展」 ブリヂストン美術館



テーマ展ということで、点数こそ少なめでしたが、国内では紹介されないデ・クーニングを一定度見られただけでも満足というものです。生の画肌は図版から到底分かり得ないほど熱気を帯びていました。それにデ・クーニングだけでなく、主に現代の抽象表現をピックアップしたコレクション展との連携も見事でした。

5.「名画を切り、名器を継ぐ」 根津美術館



ある意味でタブーに挑戦した企画だったと思います。どのような意図であれ、古美術品の「切って、貼った」が、作品にどのような影響をもたらしていたのか。改変は思いの外に多様で、時に作品の価値を決めてしまいます。カスタマイズという言葉は適切かどうか分かりません。ただそれでも切り、継ぐ際における意匠の機知やアイデアに驚かされました。

6.「ヴァロットン展」 三菱一号館美術館



かつてオルセー展で見た「ボール」が忘れられなかったヴァロットンの単独での回顧展です。「夕食、ランプの光」や「貞節なシュザンヌ」など、どこか不穏でかつ人間の心理劇を捉えたかのような絵画がすこぶる面白い。裸婦像に見られる画家のフェティシズムも独特です。時に「変態」とも称されるヴァロットンの奇異な魅力に虜となりました。

7.「戦後日本住宅伝説」 埼玉県立近代美術館



派手さはありませんでしたが、50~70年代の建築のみにスポットを当てた興味深い建築展でした。一口に住宅と言っても多様、建築家の個性が如実にも表れます。自らの生活経験に引き寄せて「住みたい家」を探して歩くのも楽しいものでした。

8.「菱田春草展」 東京国立近代美術館



都内では42年ぶりとなる大回顧展です。新出を含めて全100点超もの作品が揃いました。また近年の春草の作品研究を紹介した図録の出来も特筆に値します。このスケールでの春草展はもう見ることが出来ないかもしれない。そう思ってしまうほどに質量とも充実した春草展でした。

9.「松林桂月展」 練馬区立美術館



まさか松林桂月がこれほど魅惑的な日本画家とは知りませんでした。事前にはチラシ表紙の「春宵花影」程度しか知りませんでしたが、文人画しかり、琳派を志向した作品など、画業は思いの外に多彩です。そしていずれも趣き深い。情緒的でもあります。また妻、雪貞の花卉画も殊更に美しいものでした。

10.「木島櫻谷展」 泉屋博古館分館



「このしまおうこく」。この日本画家の魅力を関東で初めて知らしめた展覧会だったのではないでしょうか。代表的な「寒月」のみならず、何と言っても狐やライオンなど、動物を描いた作品がすこぶるに佳い。いずれの動物も眼差しは優しく、見ていると思わずほっとしてしまいます。住友家に伝来した装飾的な屏風絵も雅やかでした。

次点.「光琳を慕う 中村芳中」 千葉市美術館

如何でしょうか。上位に現代美術の展覧会、以下、西洋美術、建築展と並び、近代日本画、江戸絵画展と続くランキングとなりました。

なおベストには入れなかったものの、特に印象深かった展覧会は以下の通りです。(順不同)

「デュフィ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「赤瀬川原平の芸術原論」 千葉市美術館
「鈴木康広展 近所の地球」 水戸芸術館
「輝ける金と銀ー琳派から加山又造まで」 山種美術館
「超絶技巧!明治工芸の粋」 三井記念美術館
「オルセー美術館展 印象派の誕生」 国立新美術館
「清麿」 根津美術館
「シャヴァンヌ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」 東京国立近代美術館
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
「内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館
「イメージの力ー国立民族学博物館コレクションにさぐる」 国立新美術館
「ザ・ビューティフル」 三菱一号館美術館
「ラファエル前派展」 森アーツセンターギャラリー
「メイド・イン・ジャパン南部鉄器」 パナソニック汐留ミュージアム
「白絵展」 神奈川県立歴史博物館
「第17回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館
「ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ」 原美術館
「佐藤時啓 光ー呼吸」 東京都写真美術館
「ヨコハマトリンナーレ2014」 横浜美術館・新港ピア
「ニコラ・ビュフ:ポリフィーロの夢」 原美術館
「竹尾ペーパーショウ2014」 TOLOT/heuristic SHINONOME
「Plastic?/Plastic! 高度経済成長とプラスチック」 松戸市立博物館
「観音の里の祈りとくらし展」 東京藝術大学大学美術館
「101年目のロバート・キャパ」 東京都写真美術館
「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」 DIC川村記念美術館
「野口哲哉展ー野口哲哉の武者分類図鑑」 練馬区立美術館

文化村の2つの展示、「デュフィ展」と「シャヴァンヌ展」は、制約のあるスペースではあるものの、ともに充実した作品の揃った最良の回顧展ではなかったでしょうか。「オルセー展」は毎度のことながらコレクションが充実極まりない。やはり地力があります。また一号館の「ザ・ビューティフル」と森アーツの「ラファエル前派展」は二つあわせて見ることでより内容が深まりました。こうした連携の企画展、ひょっとするとこれからも増えていくかもしれません。

山種美術館の「輝ける金と銀」は、技法サンプルなど、日本画の技術的な面について突っ込んで紹介していたのが印象的でした。また多摩美の「東北のオカザリ」と芸大の「観音の里の祈り」は、普段、なかなか目を向けにくい地域の芸術を丁寧に取り上げた展覧会でした。

三井記念の「超絶技巧!明治工芸の粋」や神奈川歴博の「白絵」は、作品の切り口や見せ方に面白さを感じました。またパナソニックの「南部鉄器」は展示空間からして目を見張るものがありました。それに日本のプラスチックの普及史を追った松戸市博の「高度経済成長とプラスチック」も異色の内容で楽しめました。

「ニコラ・ビュフ展」と「ボレマンス展」は原美術館の空間との相性も良かったのではないでしょうか。また同じく庭園美術館の「内藤礼展」も歴史ある空間を巧みに活かした展示でした。「ひと」に誘われて美術館の細部までに目を凝らす体験、ともすると今までで一番、丹念に建物の中を巡り歩いたような気がします。

「赤瀬川原平展」は千葉市美ならではの圧倒的な物量で作家の全貌に迫る回顧展でした。また水戸芸術館の「鈴木康広展」は作品はもとより、それを生み出す作家のアイデアそのものにも強く感心させられる展覧会でした。鈴木さん本人による2時間のトークも聞き応えありました。

毎年あげていたギャラリーのベスト10はお休みします。と言うのも、展示自体はそれなりに見ているつもりですが、アウトプット、つまり感想にあまり残せていないからです。

とは言うものの、ギャラリーαMの安村崇や八幡亜樹展、それに資生堂ギャラリーの加藤俊輔展や「たよりない現実展」、またアルマスの横山奈美展、カオスラウンジの「キャラクラッシュ展」などはとても印象に残りました。常に新しく、刺激的な美術に接することが出来るのは、やはりギャラリーの展示だと思うことも少なくありません。来年も足繁く通いたいです。

皆さんは今年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。印象深かった展示などについてコメントかTBをいただけたら嬉しいです。

このエントリをもって年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうか良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)
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「東山魁夷 わが愛しのコレクション展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー
「東山魁夷 わが愛しのコレクション展~美しきを知り、美を拓く」 
2014/12/26-2015/1/19



日本橋三越で開催中の「東山魁夷 わが愛しのコレクション展~美しきを知り、美を拓く」を見て来ました。

東山魁夷展とありますが、単に魁夷の絵画のみで構成された展覧会というわけではありません。

というのもタイトルに「わが愛しのコレクション」とあるように、魁夷の蒐集した美術品もあわせて展示しているのです。

出品は全114点。うち魁夷画が60点ほどです。残りは魁夷の蒐集した美術品(ほか資料含む)でした。


伝俵屋宗達 「伊勢物語図色紙 第九十八段 梅の造り枝」 江戸時代前期(17世紀)

いきなり伝宗達です。雅やかな「伊勢物語図」の色紙、そして伝光悦の「黒茶碗」と並びます。実は魁夷、ドイツ留学時に西洋と日本の美術を学びましたが、特に桃山時代の美術に大きな関心を寄せています。自身が絵を付けた「白地精好波に松島図の打掛」も「松島図」のモチーフです。白地に金泥の波しぶきがあがっています。

留学の際は旅費を節約するため、大連から貨物船に乗ってドイツへと向かったそうです。途中、シンガポールに立寄り、スエズを経由して地中海へと入る。ハンブルクまでは2ヶ月の長旅でした。


東山魁夷「スエズ紀行 水汲み」 1933年

その時に描いた「スエズ紀行」が数点出ています。そして渡欧時の作品で驚くのはあのホドラーを参照していることです。

例えば「『ミューレンから見たユングフラウ山』の模写」(1934)は、魁夷がスイスの美術館で見て描いたという、文字通りホドラーの模写です。ちなみに元となるホドラーの絵画は現在、西洋美術館で開催中のホドラー展に出品中です。あのチラシ表紙を飾った力強い山岳画と言えばお分かりいただけるのではないでしょうか。

それに「秋思」(1954)も興味深いもの。白樺でしょうか。草地にのびる一本の木を描いていますが、ホドラーにも同じような構図の作品があります。「小さなプラタナス」です。それにしてもまさか魁夷展でホドラーが引用されているとは思いませんでした。

3点揃いの「自然と形象」(1941)が一つのハイライトかもしれません。「早春の麦畑」、「秋の山」、「雪の谷間」と並んでいますが、中でも一推しは「雪の谷間」です。雪の降り積もった小川の景色、トリミングしたような構図感が独特です。雪の質感も美しい。惹かれるものがあります。

戦後の出発も風景画です。「夕照」(1947)、「郷愁」(1948)、「道(試作)」(1950)と続きます。うち「郷愁」は幻想的な一枚です。魁夷の古里の景色でしょうか。山々の連なる田園風景、手前には小川も流れています。そして低い土手。誰もいません。静寂です。うっすらと水色を帯びた霞が覆っていました。


東山魁夷「冬支度」 デンマーク 1975年

魁夷は旅の画家でもあります。とりわけ知られているのは北欧への旅。「スオミ」(1963)は現地に広がる針葉樹林を俯瞰した構図で描いた作品です。流れる川の水面は銀色に輝いています。冷たく、また凍り付いたかのような空気感。その気配までをも巧みに表していました。


伝尾形乾山「梅花図黒茶碗」 江戸時代

魁夷の美術コレクションが実に多様で驚きました。古代エジプトからローマ、ペルシャ時代の考古品、そしてガンダーラ仏に中国の漢の青銅壺、さらには日本の奈良や平安期の経典までをも網羅しています。またルドンやルオーや清方に村上華岳といった絵画もコレクションしているのです。


「梨型細瓶」 シリア 1~2世紀

1~2世紀頃のシリアの細瓶と魁夷画との関連を伺う展示がありました。接点は色です。というのも魁夷の得意とした青、それが細瓶の放つ青い光と重なり合います。魁夷は青について「精神、孤独、悲哀、鎮静を示し、絶えず心の奥に秘められて、達することの出来ない願望の色である。」と語っています。


東山魁夷「秋映」 1955年

そのほか愛用のイーゼルに絵具や絵筆、また渡欧時に蒐集した民芸品なども展示されています。スケッチや小品も多く、大作ばかりというわけではありませんが、魁夷がどのような美術に関心を持っていたのかを垣間見られる展示とも言えるのではないでしょうか。意外な切り口で楽しめました。

[東山魁夷 わが愛しのコレクション展 巡回予定]
美術館「えき」KYOTO(ジェイアール京都伊勢丹) :2015年2月28日(土)~3月29日(日)

なお日本橋三越の次回展は「岡田美術館所蔵 琳派名品展」。琳派400周年のメモリアルを飾る企画です。こちらも期待しましょう。

「琳派400年記念 岡田美術館所蔵 琳派名品展~知られざる名作初公開」@日本橋三越本店 2015年1月21日(水)~2月2日(月)

「もっと知りたい東山魁夷/鶴見香織/東京美術」

元日のみ休館です。2015年1月19日まで開催されています。

「東山魁夷 わが愛しのコレクション展~美しきを知り、美を拓く」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:2014年12月26日(金)~2015年1月19日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場)
 *12月31日(水)は17:30(18時閉場)まで開場。
 *1月14日(水)~17日(土)は19:30(20時閉場)まで開場。
 *最終日は17:00(17:30閉場)まで開場。
料金:一般・大学生800円、高校・中学生600円、小学生以下無料。
 *三越M CARD、伊勢丹アイカードなどを提示すると本人と同伴1名が無料。
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分。
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映画「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」クラウドファンディング

映画「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」のクラウドファンディングが行われています。


「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」公式サイト

劇場での公開予定は2015年の夏。現在、それに向けて鋭意制作中だそうです。クラウドファンディングは映画のサポーター制度と言って良いかもしれません。下記サイトから登録することで、製作にかかる諸費用を支援することが出来ます。

「映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』の完成に是非ご協力ください!」(MotionGallery)

支援は1000円から可能です。次いで5000円、10000円と続き、最大500000円まであります。また各支援額毎に、鑑賞券のプレゼント(5000円)や試写会への招待(10000円)などの特典が付きます。



このクラウドファンディングの目標額は150万円。現在は64万円ほど集まっているようです。(12/27現在)受付期間は残りあと2ヶ月ほどあります。

[クラウドファンディングとは]
不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。 *ウィキペディアより

作家、内藤礼といえば、つい先だっての東京都庭園美術館での個展をご覧になった方も多いのではないでしょうか。館のリニューアルのお披露目と言うべき展示です。かの「場」に敬意を払うようなインスタレーションを展開していました。


内藤礼「ひと」 2014年 木にアクリル絵具 *「内藤礼 信の感情」@東京都庭園美術館より

「内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館(はろるど)

私自身、内藤の作品に強く惹かれるようになったのは、2010年に神奈川県立近代美術館鎌倉館で行われた展覧会のことです。さも結界を張るかのように置かれた小瓶の水やガラス玉に見入り、さながら「精霊」の舞った中庭の空がかつてないほど美しく見えたことを覚えています。



映画の舞台は瀬戸内海の豊島(てしま)美術館です。2年という長い時間に渡って内藤に向き合い、美術館内の作品「母型」に集まる5名の女性の物語が紡がれていくとか。「フィクションともドキュメンタリーともつかない新しい映像表現」(クラウドファンディングページより)を見ることが出来るそうです。

メガホンをとるのは中村佑子です。前作の「はじまりの記憶 杉本博司」でデビュー。その際に国際エミー賞アート部門にノミネートされました。気鋭の映画監督でもあります。

「私は内藤さんが差し出してくれる世界の光、その作品から受け取ってきたことを映像にしたいと思いました。生というものの無根拠性、その苦しみを乗りこえる能動的で、肯定的な声が、いま私たちに投げかけてくれるものがあると信じて。」 中村祐子

『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』 特報


アート関連の映画のクラウドファンディングでは、昨年の「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」もなかなか盛り上がりました。

「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」公式サイト
http://aekanaru-movie.com/

Facebookページ 
https://www.facebook.com/aekanaru

Twitter
https://twitter.com/aekanarumovie

クラウドファンディング
https://motion-gallery.net/projects/aekanaru

映画「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」のクラウドファンディング。内藤ファンの私としてもささやかながら参加したいと思います。

「O KU 内藤礼|地上はどんなところだったか/HeHe」

「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」@aekanarumovie) 2015年初春完成予定/2015年初夏劇場公開予定
監督・編集:中村佑子(『はじまりの記憶 杉本博司』)
出演:内藤礼、谷口蘭、湯川ひな、大山景子、沼倉信子、田中恭子
撮影:佐々木靖之
録音:黄永昌
助監督:大西隼
広島撮影:山田尚弥
プロデューサー:大澤一生、中村佑子
衣装協力:シアター・プロダクツ 
音楽:タラ・ジェイン・オニール
宣伝美術:有山達也
協力:公益財団法人 福武財団、ギャラリー小柳
特別協賛:真鍋康正、石田美雪、福武英明、山口孝太
助成:文化庁文化芸術振興費補助金、アーツカウンシル東京
製作:テレビマンユニオン、ノンデライコ
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「八木良太展 サイエンス/フィクション」 神奈川県民ホールギャラリー

神奈川県民ホールギャラリー
「八木良太展 サイエンス/フィクション」
2014/12/21-2015/1/17



神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「八木良太展 サイエンス/フィクション」を見て来ました。

いわゆるメディア・アーティストとして多方面で活動中の八木良太。近年にはヨコハマトリエンナーレやMOTでのグループ展、また「日常/オフレコ」(2014年、神奈川芸術劇場。)にも出展がありました。代表的な「氷のレコード」や「ヴィデオ・スフィア」などには馴染みのある方も多いかもしれません。

これほど大規模な個展は初めてではないでしょうか。延べ床面積は1300平方メートル。しかも天井高6メートルの大展示室といった、個性的な空間が持ち味のギャラリーでもあります。

会場内、撮影が出来ました。


八木良太展 Room1「Threshold/知覚の扉」

さて聴覚や視覚の細やかな部分に働きかける八木のアプローチ、それは1階冒頭の「知覚の扉」にも良く表れていたと言えるかもしれません。



台の上に置かれているのは小さな目覚まし時計や砂時計です。そこからヘッドホンが繋がっています。まずは耳に当てて聞いてみました。

いきなりネタバレになりますが、これらはいずれも時計の内部の音を聞かせているもの。砂時計の砂の落ちる音や、チクタク動く時計の針の音がクリアに聞こえてきます。


「Cicada」 2008年 蝉、真鍮、オーディオプレイヤー、イヤホン

蝉の鳴き声がしました。とは言え、ここは建物の中、蝉などいるはずもありません。やはりイヤホンです。録音された蝉の声が館内に響きわたります。構造そのものは至ってシンプル、天井から蝉の抜け殻付きのイヤホンが吊るされるだけですが、不思議と夏の情景も浮かび上がってきます。思わず目を閉じて耳を澄ませてしまいました。


「Still Life」 2013年 紙にシルクスクリーン、3Dメガネ

聴覚から視覚への展開です。備付けの二つの眼鏡を手にとりましょう。3D眼鏡です。それをかけて平面やオブジェを眺めるとどうなるのか。ずばり奥行きが生じます。かなりアナログ。どこか懐かしい感じもしますが、飛び出す絵本さながらの仕掛けです。ついつい眼鏡をかざしては見比べてしまいます。


「Chroma Depth」 2013・2014年 スーパーボール、クロマデプスメガネ

こうした目覚まし時計やスーパーボール、それに後に登場するレコードなど、既製品を多く用いているのも特徴です。身近な素材にアイデアを加えては思いもよらない感覚的な刺激を呼び起こす。何気ないアイデアが「場」をがらりと変化させます。タイトルの「サイエンス/フィクション」はSFの意味ですが、それを藤子不二雄は「すこしふしぎ」と解釈したとか。この「すこしふしぎ」。確かに八木の作品を表した言葉だと言えそうです。


「Mirror and Chair」 2012年 オーディオプレイヤー、ヘッドホン、椅子

鏡と椅子の「Mirror and Chair」も楽しめました。椅子に座ってヘッドホンで音を聞くだけの作品ですが、その音から意外な世界が生み出されます。是非とも試してください。


「Sky/Sea」 2007/2014年 レコード、水槽 ほか

ヘッドホンといえば暗室の「Sky/Sea」も秀逸ではないでしょうか。暗室に並ぶテーブル上には波の映像が映し出され、中央のプールにはレコード盤も浮いています。ヘッドホンを耳に当ててみました。

するとゴウゴウと波の音が轟きますが、実はそれだけではないのです。ヘッドホンを付けながら机の下の方へとしゃがんでみましょう。すると驚くことに水の中の音へと変化します。海上と海中の音を身を屈めるだけで聞き分けられる。まるで実際に海に潜ったかのような臨場感です。ある意味では音の生み出すバーチャルリアリティーと言えるかもしれません。

ラストは階段のある大展示室です。レコードをモチーフとした大型のインスタレーションを展開しています。


八木良太展 Room5「Spin/回転と撹拌」

床で回転するのは巨大なレコード。中央の部分の映像は時折、変化し、意外なものも映し出されます。そして壁面で沿ってのびるのもレコードです。盤面がジグザクに繋がっては幾何学模様を描いています。それにしても一体、何メートルあるのでしょうか。これほど巨大な「Circuit」を見たのは初めてでした。


八木良太展 Room2「Modality/感覚学」

ただ全般としてスケール感のあるインスタレーションよりも、シンプルな小品の方に惹かれたのも事実でした。個性的な展示空間とは、裏を返せば展示泣かせの難しい空間でもあります。全体を通してどう効果的に見せていたのか。その辺については判断が分かれるかもしれません。

図録が作成中でした。会場にて予約を受け付けています。(限定数)



2015年1月17日まで開催されています。*年末年始休館:12/29~1/3

「八木良太展 サイエンス/フィクション」 神奈川県民ホールギャラリー@kanaken_gallery
会期:2014年12月21日(日)~2015年1月17日(土)
休館:年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3‐1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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「リー・ミンウェイとその関係展」 森美術館

森美術館
「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
2014/9/20~2015/1/4



森美術館で開催中の「リー・ミンウェイとその関係展」を見て来ました。

1964年に台中で生まれ、現在ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、リー・ミンウェイ。2010年の資生堂ギャラリーでの個展の記憶も新しいのではないでしょうか。来場者が自由に木箱を開けてはテキストを鑑賞する「記憶の織物」を展示していました。

最大規模の個展だそうです。過去20年間の作品とともに、いわゆる「参加型」と称されるアートプロジェクトを紹介しています。

さてその「参加型」、ただしミンウェイの作品は来場者に必ずしも参加を絶対的に促すようなものではありません。

もっと穏やかです。だからこそ色々な意味で居心地が良くも感じるもの。ミンウェイの作品を切っ掛けに来場者同士、あるいはそれを超えて多様な人々と関係を持っていくことがポイントです。どういう形であれ他者との緩やかな「つながり」を志向しています。

 
「プロジェクト・繕う」2009/2014 机、椅子、糸、布製品 インタラクティブ・インスタレーション

その一つが「プロジェクト・繕う」です。一見するところ布や洋服のインスタレーション、カラフルな糸が壁面からのびています。ふと目をやるとテーブルに一人の女性が座っていました。

 
「プロジェクト・繕う」2009/2014 机、椅子、糸、布製品 インタラクティブ・インスタレーション

彼女がホストです。つまり観客は服やぬいぐるみを持ち寄り、そこでホストと会話をしながら繕ってもらうという仕掛け。ホストはアーティスト本人の代わりにボランティアスタッフがつとめています。そして繕った衣服なりが作品の一部と化すわけです。繕いを通して観客とホストの経験なりが共有されます。

「プロジェクト・手紙をつづる」も参加型のインスタレーションです。目の前にあるのは3つのブース。靴を脱いで中へと入りましょう。目の前に便箋と封筒があります。手紙を書くことが出来ました。

 
「プロジェクト・手紙をつづる」1998/2014 木製ブース、便箋、封筒 インタラクティブ・インスタレーション

内容は自由です。恋文でも感謝の手紙でも何でも良い。また宛先の有無も問われません。そして一通り好きなことを書いたら手紙を壁に挿しておきます。すると今度は別の人がその手紙を自由に読むことが出来るわけです。

つまり手紙を通して他者同士が偶然的にも関係性を持ち合う。また宛先を書いて封をすると美術館のスタッフが投函してくれます。ちなみに私の書いた手紙は封をせずに置いておきました。きっとあの日、誰かが読んでくれたに違いありません。

手に花を持った方を見かけなかったでしょうか。「ひろがる花園」です。展示室内にほぼ一列に並ぶ花、色も様々で、見るも美しい。ただこの花、単に愛でるだけではありません。一輪だけなら自由に持ち帰ることが出来ます。

 
「ひろがる花園」2009/2014 花崗岩、生花 インタラクティブ・インスタレーション

ただし約束事付きです。というのも帰り道は行きとは別ルートを使い、しかもそこで見知らぬ人に花をプレゼントしなくてはいけない。いきなり渡したら驚かれるかもしれません。しかしながらそれも思わぬ出会いとして捉えられているのです。

さて本展、何もミンウェイの作品ばかりで構成されているわけではありません。

興味深いのはミンウェイの制作を考えるために、ほかのアーティストが参照されていることです。全部で11名。ジョン・ケージに白隠、イヴ・クラインや田中功起、それに鈴木大拙に李禹煥らが取り上げられています。

作家の関心の在りかを知るかのようなラインナップ、禅への展開など、示唆に富む面も少なくありません。また田中功起の映像や李の絵画など、個々の作品もなかなか興味深いものがありました。

 
「プロジェクト・ともに食す」1997/2014 台座、畳、豆、米、ビデオ インタラクティブ・インスタレーション

ミンウェイを起点に築かれる人とのつながり。率直なところ作品としてどう捉えるかについては判断も分かれるやもしれません。ただ参加することで何かが変わるような予感を抱くことは意外とスリリングでもあります。思っていたより楽しめました。

なお同じ森タワー内、アーツセンターで開催中の「ティム・バートン」展は入場待ちの長い行列が発生していましたが、リー・ミンウェイ展に関しては混雑とは無縁です。スムーズに観覧出来ました。

 
「プロジェクト・ともに眠る」2000/2014 ベッド、ナイトスタンド インタラクティブ・インスタレーション

本展終了後、森美術館は施設改修工事のため2015年4月24日まで休館します。(森アーツセンター、シティビューも同様に休館します。)

「改修工事にともなう休館について」@森美術館
・森美術館は、施設および各種設備の修繕と展示空間の改修を目的として、2015年1月の展覧会終了時より改修工事を行います。
・休館する期間:2015年1月5日(月)~4月24日(金)

「リー・ミンウェイとその関係/美術出版社」

年末年始のお休みはありません。2015年1月4日まで開催されています。

「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」 森美術館@mori_art_museum
会期:2014年9月20日(土)~2015年1月4日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *ただし火曜日は17時で閉館。(9/23、12/23は22時まで。) 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下(4歳まで)500円。
 *入館料で展望台「東京シティビュー」にも入場可。
場所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。

注)掲載写真はいずれも「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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「小林孝亘展」 横須賀美術館 

横須賀美術館
「小林孝亘展ー私たちを夢見る夢」
11/15-12/23(会期終了)



横須賀美術館で開催されていた「小林孝亘展ー私たちを夢見る夢」を見て来ました。

神奈川の逗子を拠点に制作を続けている画家、小林孝亘。私が彼の絵画を初めて意識したのはMOTの常設展のことかもしれません。以来、日本橋の西村画廊での個展を何度か追いかけてきました。しかしながら一定のスケールで作品を見たことは一度もありませんでした。

10年ぶりの美術館での個展です。出品は絵画にデッサン、さらに資料を含めて110点。画業初期、1990年前後の作品から本年制作の最新作までを網羅します。


「Fruit」 1992年 高橋コレクション

冒頭に並ぶのは1990年代の油彩画、まず目を引くのが潜水艦のモチーフです。実は小林、30代の頃まではひたすらに潜水艦を描いていた。自分自身が潜水艦であるとも語っています。「Fruit」と題された小品の一枚、木の影から潜水艦が潜望鏡を伸ばしていました。自画像と捉えるのは言い過ぎでしょうか。さも小林が恥ずかしそうにこちらを見ているかのようです。


「House Dog」 1995年 国立国際美術館

その一方で、同じく90年代ながらも、「House」や「House Dog」などは近年の作風を思わせます。玩具のような家や犬を大きなキャンバスに描き出す。正面性の強い構図、木漏れ日が差し込み、画面に揺らぎをもたらしている。マットな質感です。にも関わらず温かみもあります。早い段階で自らのスタイルを確立したと言えるのかもしれません。

さて基本的に作品は時代別に並んでいますが、単にそれだけではないのも大きなポイントです。


「Barbed Wire」 1997年 筑波大学・石井コレクション

例えば2000年の車の連作です。タクシーや乗用車、それにトラックのテールランプに着目したシリーズですが、それとともにワイヤーに連なる照明を描いた「Barbed Wire」や赤々と燃える炭火をモチーフにした「Live Charcol」などもあわせて並んでいます。つまり何らかの光源を捉えた作品が一つの空間でまとまって展示されているわけです。


「Pillows」 1997年 国立国際美術館

枕のシリーズも同様です。ベット上の枕のみを描いた連作、但し年代はバラバラです。時代は90年代後半から2014年の最新作までと幅広い。いずれにせよ枕をモチーフとした作品が一つの展示室で紹介されています。

さらにポートレートと静物を交互に並べたコーナーや、ラストの最新作、森を捉えたシリーズへの展開も面白い。それらの合間をスケッチやリトグラフなどで繋げています。かなりメリハリのある展示でした。

スケッチブックなどの資料も重要です。水飲み場を描いた「Water Fountain」を挙げましょう。元にあるのは画家自身の撮影した公園の写真です。写真は斜め上から水飲み場を撮っています。しかしスケッチに起こした時にどうなのか。同じ構図のものと別のそれのものがある。結果的に絵画では正面から水飲み場を描いいています。つまりここでは制作における写真、スケッチ、絵画への流れを見ることが出来るわけです。

そもそも小林は当初の潜水艦のモチーフを脱して以降、次から次へと「浮かんだイメージを描いていった。」とか。スケッチは小林の見たもの、ようは関心の在りかがストレートに表されていると言えるのでしょう。さながら画家の頭の中を覗き込んでいるかのようでした。


「Sleeping bag(blue)」 2010年 作家蔵

いわゆる人の眠りを捉えた作品も目を引きます。そういえば入口外にある大作の「Dream,dreaming usー私たちを夢見る夢」はまるで涅槃図です。それに最新作でも人魂や鳥に引き上げられる人物などのモチーフもあります。宗教的とも言えないでしょうか。画家はバンコクに1年間滞在したことがあるそうです。その経験も何かしら反映しているのかもしれません。

皿を描いた一枚、「Dish」の展示室には驚きました。というのも作家自らが写した食卓の写真が所狭しと貼られているのです。率直なところ、かなり異質でした。


「Ventilated Case」 2010年 個人蔵

絵画はもちろんのこと、普段見慣れないスケッチや写真など、画家のアイデアの源泉や意外な側面を見られたのも収穫でした。

会期は終えてしまいましたが、公式フェイスブックページがこまめに情報を発信していました。設営時の写真などもあり、会場の雰囲気も伝わるのではないでしょうか。

「小林孝亘展」Facebookページ(横須賀美術館)

本展にあわせて青幻舎より作品集も刊行されています。いわゆる図録ではないため、本展に出なかった作品も掲載されていますが、図版、テキストともに充実。現時点での決定版と言うべき内容に仕上がっています。

「小林孝亘作品集 私たちを夢見る夢/青幻舎」

残念ながら見逃してしまった方は作品集に当たってみるのも面白いかもしれません。

小林展を見終えた後は常設展を堪能しました。中でも動く彫刻で知られる前田昌良の展示が面白いもの。またいつ見ても惹かれる須田国太郎の「河原」や山口薫の「水と畑の残雪」などの近代洋画にも見応えがあります。改めて粒ぞろいのコレクションだと感心しました。

次回の企画展の情報です。来年2月より海老原喜之助の回顧展が行われます。

「生誕110年 海老原喜之助展ーエスプリと情熱」@横須賀美術館 2015年2月7日(土)~4月5日(日)

画家の生誕110年を記念しての展覧会です。80点余の油彩をはじめ、陶彩や絵付のほか、近年発見されたデッサンなども出展されます。

海老原も単発的に作品を見ることはありますが、画業を通観して捉える展示は極めて稀。実際に首都圏では24年ぶりとなる回顧展です。ようやくチャンスがやって来ました。これは期待しましょう。



展示は終了しました。

「小林孝亘展ー私たちを夢見る夢」 横須賀美術館@yokosuka_moa
会期:11月15日(土)~12月23日(火・祝)
休館:12月1日(月)。
料金:一般900(720)円、大学・高校生・65歳以上700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *市内在住または在学の高校生は無料
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
住所:神奈川県横須賀市鴨居4-1
交通:京急線馬堀海岸駅1番乗り場より京急バス観音崎行(須24、堀24)にて「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」下車、徒歩約2分。
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「荒木経惟 往生写集」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「荒木経惟 往生写集ー東ノ空・PARADISE」
10/22~12/25



資生堂ギャラリーで開催中の「荒木経惟 往生写集ー東ノ空・PARADISE」を見て来ました。

タイトルの「往生写集」とは平安期の僧、源信による「往生要集」から着想を得たというアラーキーの造語です。「往生要集」において源信は念仏を勧め、極楽浄土の国に往生すべきことを説いています。

いわゆる死生観ということで良いのでしょうか。アラーキー自身も癌摘出手術や愛猫の死、さらには東日本大震災を経験して死を意識するようになった。そうした彼の「現在の心境を捉えた」(ギャラリーサイトより)新作群が展示されています。

会場内、撮影が可能でした。


荒木経惟 「東ノ空」・「銀座」 2014年

まず目に飛び込んでくるのがモノクロームの風景。しかも合間に余白を挟んでの上下二段での展開です。上が「東ノ空」、下が「銀座」でした。


荒木経惟 「銀座」 2014年

いつもながらに何気ない日常の一コマです。特に銀座のシリーズは、まさに人々の行き交う街角の様子を有り体に捉えています。全く飾るところがありません。

撮影は今年の夏です。若きアラーキーが電通に入社した時、昼休みに出かけては銀座を写したことがあった。それを改めて撮りおろしています。一方で上空の空はどうでしょうか。「東の空」とありますが、写真だけでは場所が分かりません。上を見据え、視界を広く、さも光のある彼方を望もうとする構図、陽は限りなく高い。時に薄い雲が靡いています。

何でも自宅の屋上から見た空だそうです。また東とは方向を指す、つまり被災地の方向でもあります。かの震災で亡くなられた方への鎮魂を願っては撮り続けています。そしてこのシリーズがきっかけに本展が開催されることになりました。


「荒木経惟 往生写集」会場風景

「花は死の一歩手前が最も官能的」とはアラーキーの言葉です。むせ返るように咲く花々、実に鮮やかで、また儚くもあります。花の馨しさと表裏一体のエロスも見え隠れしています。


「荒木経惟 往生写集」会場風景

しかしながらこれらの花々、彼の言葉にもあるように既に死を間近にしたものばかり。つまり枯れる寸前の花なのです。そして添えられた人形も血を流していたりします。確かに死の気配も感じられました。

「往生写集」は豊田市美術館、新潟市美術館、それに資生堂ギャラリーの3館による合同企画展です。それぞれ「顔・空景・道」、「愛ノ旅」、「東ノ空・PARADISE」とテーマを変え、異なる出品作で構成されています。


「荒木経惟 往生写集」会場風景

会期最後となる本展では死から再生へと向けたメッセージもこめられているとか。ちょうど節目の年末です。人生はもちろん、一年を振り返ってどうだったのか。彼方に広がる「東の空」を見ながらそうしたことも思いました。

「荒木経惟 往生写集/平凡社」

12月25日まで開催されています。

「荒木経惟 往生写集ー東ノ空・PARADISE」 資生堂ギャラリー
会期:10月22日(水)~ 12月25日(木)
休館:月曜日。(月曜日が休日にあたる場合も休館)
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「東京駅100年の記憶」 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
「東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶」
2014/12/13-2015/3/1



東京ステーションギャラリーで開催中の「東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶」のプレスプレビューに参加してきました。

まさに今日、12月20日、開業100周年を迎えた東京駅。1世紀にも渡る長い期間、多くの人たちが行き交っては、各々に記憶を残し、また思い出を作り上げてきました。

そして一昨年、創建時のデザインと同じく復元された丸の内駅舎は、まさに東京の玄関に相応しいもの。その威容はいつ見ても圧倒されるものがあります。

ずばり東京駅の歴史を紹介する展覧会です。もちろん場所は「生き証人」ともいうべき丸の内駅舎内のステーションギャラリー。創建時の建築写真や図面をはじめ、少し範囲を広げて駅界隈を取り上げた絵画や雑誌、さらには映像や文学などの150点の資料を展示しています。


「東京駅100年の記憶」展示室風景

いきなりジオラマです。舞台は東京駅丸の内口。それぞれ鹿児島大、京都工芸繊維大、日大生産工学部の各研究室(及び学生有志)の制作した500分の1スケール模型が並びます。

つまりジオラマは全部で3つあるのです。とは言え東京駅は今も昔も一つ。何故にと思う方もおられるかもしれません。答えは時代です。つまり異なる時代の東京駅のジオラマが並んでいるわけ。1914年と1964年、そして2014年の3つ。ようは開業時と50年後、そして現在のジオラマを展示しているのです。


「1964年の丸の内(ジオラマ)」 2014年 京都工芸繊維大学・木村/松隅研究室+学生有志

開業時を見て驚きました。駅周辺に何もありません。かの辰野金吾設計の駅舎のみが忽然と建っている。三菱ヶ原と呼ばれた原っぱだったそうです。それから50年、関東大震災や東京大空襲を経てどう変わったのでしょうか。高度経済成長期、1964年の東京駅周辺は実に整然、いわゆる美観地区として高さ31メートルに制限されたビルがずらりと並びます。思いがけないほど美しい。統一感のある町並みが広がっていました。


「2014年の丸の内(ジオラマ)」 2014年 日本大学生産工学部建築工学科・廣田研究室 亀井/渡辺研究室

一方で現在の姿はご覧の通りです。丸ビルや新丸ビルしかり、さらなる「空き地」を求めて大きく縦へとのびたビル群、空は狭くなりました。街の様相も大きく変わっています。

さらに模型といえばもう1点、天井から吊られた「東京駅体 模型2014」も見逃せません。


「東京駅体 模型2014」 2014年 田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科・田村研究室

こちらは現在の東京駅のプラットホームの全てを200分の1スケールで再現したもの。一番上には丸の内駅舎と八重洲のツインタワーがそびえ、中央線から山手線ほか新幹線へ至る地上のプラットホームが並びます。そこから地下へ眼を転じれば総武・横須賀線や京葉線、さらに大手町駅のメトロ各線のホームまでもが見える。地上から地下への展開です。しかも全て通路で繋がっています。


「東京駅体 模型2014」 2014年 田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科・田村研究室

さながら東京駅の立体透視図とも言えるでしょうか。東京駅がさも手足を伸ばすようにして成長する姿。そのスケール感なども見知ることが出来ました。

さてここまでが3階展示室、1つ下へ降りましょう。お馴染みの煉瓦壁を生かしたスペースです。この壁自体がまさに「東京駅100年を記憶」するものですが、さらに興味深いのは創建や復原時の装飾建材やレリーフでした。


「旧第七階段ブラケット」 創建時 鉄道博物館

「旧第七階段ブラケット」はかつて階段の踊り場を支えたブラケットです。一時は失われていたものの、復原工事の過程で発見されました。装飾はアール・ヌーヴォー風で美しい。辰野金吾が渡欧時に描いたスケッチに良く似ているそうです。当時の人々にどのような印象を与えたのでしょうか。


「レリーフ 干支(亥)石膏原型」 復原時 鉄道博物館

一方で「レリーフ 干支(亥)石膏原型」はドームを飾ったレリーフ、今度は和風です。創建時のものは現存しませんが、復原時に写真を手がかりに作られました。八角形のドームに八つの干支がそれぞれ配されているそうです。

東京大空襲によって屋根と三階部分の殆どを焼失した東京駅舎ですが、その時に一端仮設として付けられた屋根は、結果的に2006年の復原工事まで使われることになります。


鈴木与四郎「東京駅(修復中)」 1964年頃 東京駅

戦災復旧中の東京駅の工事の様子を伝える写真なども何点か出ていました。また鈴木与四郎は終戦直後に修復中の東京駅を油彩で描いています。足場に囲まれた東京駅のドーム、向かいに見えるビルは当時の国鉄の本社だそうです。


松本竣介「駅の裏」 1942年 三重県立美術館

大好きな松本竣介から一枚、東京駅を描いた「駅の裏」が出ていたのも嬉しいところでした。裏とはつまり八重洲側、そこからホームを超えて丸の内方向を望んでいます。時代は東京大空襲前の1942年、どことなく不穏な気配を感じるのは私だけでしょうか。奥の二つのドームがシルエット状に表されていました。


安井曾太郎「八重洲口風景」 1955年 東京駅

一転して戦後です。例えば安井曾太郎の「八重洲口風景」、旧大丸のビルを右手に駅前の広場を描きます。夏の日中だそうです。明るい陽射しが差し込んでいます。


右手前:相笠昌義「東京駅風景・冬」 1993年 東京ステーションギャラリー

さらに時代が進んで相笠昌義の「東京駅風景・冬」や坂本眞一の「孤高の人」、そして元田久治の空想的な「Indication Tokyo Station」などが並びます。視点、アプローチは様々ですが、舞台はいずれも東京駅です。今も昔も問わず多くの画家たちが描き続けています。


「東京駅丸の内駅前広場」 2014年7月 東日本旅客鉃道株式会社

未来へ見据えたコーナーもありました。2017年度に完成予定の「東京駅丸の内駅前広場」の模型です。ドーム前にはロータリーも設置され、皇居を望む行幸通りと一体感のある空間が生み出されます。  


東京ステーションギャラリー館内より丸の内駅前広場

館内出口から窓の外を見やると、今工事中の駅前広場が目に飛び込んできました。まさにこの場があってからこその企画です。改めて実感しました。

さいたま市の鉄道博物館や汐留の鉄道歴史展示室でも関連の展示が行われています。

「東京駅開業100周年記念展 100年のプロローグ」@鉄道博物館
2014年11月22日(土)~2015年2月16日(月)
http://www.railway-museum.jp/top.html

「東京駅開業とその時代」@旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
2014年12月9日(火)~2015年3月22日(日)
http://www.ejrcf.or.jp/shinbashi/


「東京駅100年の記憶」展示室風景

そちらとあわせて見るも面白そうです。

「東京駅100周年記念特設サイト」@Tokyo Station City

2015年3月1日まで開催されています。

「東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶」 東京ステーションギャラリー
会期:2014年12月13日(土)~2015年3月1日(日)
休館:月曜日。但し1/12は開館。年末年始(12/29~1/1)、1/13(火)。
料金:一般900円、高校・大学生700円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は100円引。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「高松次郎ミステリーズ」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「高松次郎ミステリーズ」
2014/12/2~2015/3/1



東京国立近代美術館で開催中の「高松次郎ミステリーズ」を見て来ました。

1936年に生まれた現代美術家の高松次郎。「ミステリーズ」とはキャッチーなタイトルです。そして本展ではどこか謎めいている高松の作品を「わかりやすくていねいに読み解こう」(公式サイトより。一部改変。)と試みています。

出品はスケッチや資料を含めると150件。初期から晩年までの絵画や彫刻を網羅します。その意味では作家の全貌を見定める回顧展と言えるかもしれません。

さてその「ていねいに読み解く」、冒頭からして確かに一風変わった仕掛けがなされています。

「影ラボ」です。つまり高松の「影」シリーズの原理を体験出来るというもの。自らをモデルに、「影」に関する4つの謎を知ることが出来ます。(*「影ラボ」のみ撮影可能でした。)


「影ラボ」

光そのものはかなりシンプル、例えば二重光源であったり、逆遠近法を利用したものですが、光の前に立って姿を写せば、それこそ高松の「影」になった気分も味わえる。作品世界を知る導入としては効果的ではないでしょうか。


「影ラボ」

「影ラボ4」が変わり種です。というのも主人公は椅子、そして三次元の立体と二次元との影との関係を「回転」のキーワードで結びます。この後の高松の展開しかり、作品のコンセプトは難解というのか、取っ付きにくいところがありますが、確かに廻る椅子と影を眺めれば、何となしに高松の意図した面が感じられるというもの。悪くはありません。

「影ラボ」を抜けましょう。間仕切りを全て取っ払い、大きく開けた一つの展示室が目に飛び込んできました。ここでは高松の1960年代の「点」や「紐」から、90年代の「形」へ至る展開を紹介しています。そして作品の並びはテーマ別ではなく、基本的にはクロニクルです。作家の制作を時間に沿って追えました。

ここにも一つ仕掛けがありました。というのも展示室のほぼ中央には木製のステージが設置されています。つまりそこから作風の変遷なりを俯瞰することが出来るのです。(ちなみに会場構成はトラフ建築設計事務所が手がけています。)

ステージはかつて高松が利用していた自宅兼アトリエの大きさとほぼ同じであるとのこと。随所には高松の言葉が引用されています。残念ながらアトリエは2012年に取り壊されましたが、その前に内部を捉えた鷹野隆大の写真も展示されていました。また書棚は高松の蔵書でしょうか。ウィトゲンシュタインやフォークナーの小説などが目を引きます。


高松次郎「誕生」 1960年 三鷹市美術ギャラリー

最初期のドローイングはまるで細胞の生成を捉えたかのようです。そして一次元の点から二次元の線へと移る。さらに紐へと繋がります。完全な点を求めようとして得られたのは線、さらには紐だったということなのでしょうか。そしてこの増殖するかのように広がる線や面は、晩年の絵画にも通じるものがあります。

「影」の制作では反実在という言葉が重要かもしれません。事物の世界と人のイメージの世界を乗り越えるべくして考え出された半実在の世界。単純化するのは危険ではありますが、少なくとも実在、ようは世界の確かとは何かという哲学的な命題は、高松の制作における根本的な問いであるようです。

「カーテンをあけた女の影」が謎めいていました。作中においてビーナスが像、絵、影、さらに穴の4態に変化しています。さらに良く見ると両側にあるカーテンも事物と影の二つに表されています。見ていると一体、自分がビーナスの何を捉えようとしているのか分からなくなってしまいました。


高松次郎「複合体(椅子とレンガ)」 1972年 The Estate of Jiro Takamatsu

「レンガの単体」も奇妙です。レンガをくり抜いては、切り裂いた破片を再び埋め込んでいます。また「複合体(椅子とレンガ)」は椅子の脚に一つだけレンガを添えたもの。つまり椅子は傾き、座ることは出来ません。それに加えてレンガ自体も本来の用途を為していません。では何物なのか。言ってしまえばもはや何物でもないのかもしれません。

70年代後半以降になると再び絵画が現れます。「イリュージョンを配し、重なりを星座的に構成する。」や「無であると同時に全体であるような方向。」とはキャプションからの言葉。やはり一筋縄ではいきませんが、いくつかの作品はどこか美しくもある。「平面上の空間 No.1035」はモーリス・ルイスを連想するものがあります。


高松次郎「形 No.1202」 1987年 国立国際美術館

そして「形 No.1202」です。線は非常に揺らいでいて、ある意味では粗雑です。むしろ高松の手の自由な動きが表されているとも言えますが、良く見ると色の塗り方にパターン化した面もあり、意図的であることが分かる。やはりコンセプチュアルな傾向が強く出ています。


「影ラボ」

「読み解き」という意図からか、全体的にキャプションを含め、見るよりも読ませる展示だという印象を受けました。しかしながらそのキャプションを読んでも分からない面が多々あるのも事実です。まるで認識をはぐらかすかのような高松の作品、私の足りない頭を差し置くとしても、なかなか理解出来るものでもありません。ただこの展覧会を通して、高松が何をしようとしていたのかを知る切っ掛けにはなりました。


「高松次郎ミステリーズ」会場出口

それにしても偶然なのか、2012年の中西夏之展(DIC川村記念美術館)、また先だっての赤瀬川原平展(千葉市美術館)、そして今回の高松次郎展(東京国立近代美術館)と、ハイレッドセンターのメンバーの展覧会が続きます。


高松次郎「鍵の影」 1969年 *MOMATコレクションより

所蔵作品展「MOMATコレクション」に高松の「鍵の影」が出ていました。また企画展にあわせたのか、中西夏之や河原温など、1960~70年代に活動した美術家の作品が目立っています。こちらもお見逃しなきようご注意下さい。

高松の思索の旅、その片鱗だけでも触れられた気がします。

2015年3月1日まで開催されています。

「高松次郎ミステリーズ」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2014年12月2日(火)~2015年3月1日(日)
休館:月曜日。但し1/12は開館、翌1/13は休館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:10:00~17:00(毎週金曜日は20時まで)*入館は閉館30分前まで
料金:一般900(600)円、大学生500(250)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り 「奈良原一高 王国」と 「MOMATコレクション」も観覧可。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「17th DOMANI・明日展」 国立新美術館

国立新美術館
「未来を担う美術家たち 17th DOMANI・明日展」
2014/12/13-2015/1/25



国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 17th DOMANI・明日展」を見て来ました。

毎年冬の恒例、文化庁の新進芸術家海外研修制度の成果を発表するドマーニ展。テーマは「造形の密度と純度」です。計12名の作家が個展形式にて作品を発表しています。

[17th DOMANI・明日展 出品作家] 
青木克世(陶芸/アメリカ)、紙川千亜妃(ドローイング/オランダ)、小林俊哉(絵画/ドイツ)、岩崎貴宏(現代美術/イギリス)、梶浦聖子(彫刻/インドネシア)、濱田富貴(銅版画/フィンランド)、和田淳(アニメーション/イギリス)、入江明日香(銅版画/フランス)、奥谷太一(絵画/フランス)、北野謙(写真/アメリカ)、古武家賢太郎(現代美術/イギリス)、関根直子(絵画・現代美術/フランス)

会場内、一部作品を除き、撮影が出来ました。

冒頭は奥谷太一、油彩画です。いわゆる群像、しかもスーツ姿のサラリーマンなどといった、一見有り触れた日常を描いています。マスクを付けては行き交う人々。花粉症の時期かもしれません。そして耳に携帯をあててはしきりに連絡を取り合う人たち。外回りの営業マンでしょうか。確かに見慣れてもいる。それ自体に違和感もありません。


奥谷太一「CELLULAR PHONE」 2007年 油彩、キャンバス

ただ不思議とこの世ならざる風景にも映るのは何故でしょうか。よく見ると人の顔が緑や青で塗られています。また背景も時に道路こそ描かれているものの、基本的には無、何もありません。人がいるにも拘らず、不在を意識させる景色。その意味では非現実的です。またふとこちらを見やる人と眼が合うこともあります。見ているようで見られているような作品と言えるかもしれません。

出展中、唯一の写真です。北野謙はアメリカの西海岸で撮った写真を出品しています。


北野謙「A signboard of Mobil/2013」 2014年 タイプCプリント ほか

やや暗く、また青みがかった空色、夜なのでしょうか。そこに差し込む白い光は輝かしい。円い月を捉えた写真もありました。俯瞰した光景、ガソリンスタンドでしょう。モービルの看板が中央に据えられています。静寂に包まれた無人の風景。そして広く大きい空。シンプルな構図と美しい色に素直に見入りました。


関根直子 展示室風景

VOCAやアニュアル展(2011年、東京都現代美術館)でも記憶に新しいのではないでしょうか。関根直子です。出品は10点余、水彩やシャーペンで描いたモノクロームの景色が点在する。目を凝らすとまるで水の漣や大気のようにも見えます。一方で装飾的なパターンを志向した作品もありました。

面白いのは展示方法です。鑑賞者の行く手を阻むようにして並びます。まるで衝立てのように置かれていました。


岩崎貴宏「アウト・オブ・ディスオーダー」 2014年 雑巾、墨汁

テーマの「造形の密度」に最も見合う作品と言えるかもしれません。岩崎貴宏です。透明ケースに入れられたいくつもの黒いオブジェ、実のところ遠目からではよく分かりませんでした。ともかくは何であろうと近づいてみます。


岩崎貴宏「アウト・オブ・ディスオーダー」 2014年 雑巾、墨汁

すると目を見張るものがあります。ずばりコンビナートです。プラントや煙突が立ち並ぶ。タイトルに「川崎天然ガス発電所」や「東扇島LNG基地」とあるように、実際の工業地帯をモチーフにしています。それにしても細かい。鉄塔やクレーンも見事に再現されている。精緻極まりありません。

さらに素材を知って驚きました。写真でも分かるように何と雑巾、そして黒は墨汁です。それを固めています。手仕事でしょうか。思わず仰け反ってしまいました。


和田淳 展示室風景

アニメーションの和田淳も面白く見ることが出来ました。映像は「グレートラビット」と「Anomalies」の2点。それぞれ7分と3分の短い作品ですが、何やら少年たちが登場しては描く物語がコミカルで微笑ましい。とは言え、シュールな面もあります。突然踊り出したり、身体を大きくくねらせたりと、人の動きはまるで読めません。そもそもストーリー自体は奇怪です。ただそこにこそ惹かれるものがあります。


青木克世 展示室風景

青木克世のインスタレーションが映えます。また都内のギャラリーで何度か見続けてきた入江明日香の近作をまとめて見られたのも収穫でした。

ちなみに初めて「保存・修復」の分野が設けられたポイントかもしれません。書物の修復など、後世へ美術工芸品を伝えるための地道な努力にスポットを当てる。良い試みではないかと思いました。


野口悠里 書物の保存修復

[17th DOMANI・明日展 保存修復]
北野珠子(陶磁器/フランス)、野村悠里(製本・装幀/イギリス)、邊牟木尚美(金属文化財/ドイツ)

さて国立新美術館の別の展示の情報です。ドマーニ展チケットを提示すると、同じく新美術館内で開催中の「シェル美術賞」を無料で観覧することが出来ます。(12/23まで)

「シェル美術賞展2014」@国立新美術館 12月10日(水)~12月23日(火・祝)

こちらは毎年、「若手作家の登竜門」(公式サイトより)として行われている絵画の公募展です。40歳以下限定、比較的若い世代のペインターの作品がずらり。全52点です。諸々と幅もありますが、惹かれる作品も少なくはありません。


吉田晋之介「#島#メルト#うわのそら#最後の絵」 2014年 油彩・キャンバス *「シェル美術賞2014」展より

ドマーニ展は新美術館の2階のE、シェル展は1階Bの展示室です。ともに現代美術を紹介する展覧会、あわせて見ておいても面白いのではないでしょうか。


梶浦聖子 展示室風景

年末年始のお休みが長めです。(休館:12/24~1/6)お出かけの際はご注意下さい。

2015年1月25日まで開催されています。

「未来を担う美術家たち 17th DOMANI・明日展」@DOMANI_ten) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2014年12月13日(土)~2015年1月25日(日)
休館:火曜日。但し12月23日(火・祝)は開館。年末年始(12/24~1/6)。
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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「エルメス レザー・フォーエバー」 東京国立博物館・表慶館

東京国立博物館・表慶館
「エルメス レザー・フォーエバー」
12/2-12/23



東京国立博物館・表慶館で開催中の「エルメス レザー・フォーエバー」を見て来ました。



フランスを代表するファッションブランドことエルメス。母体は19世紀のパリの開いた馬具の工房です。後に鞄などの皮革製品を手がけます。以来、現在まで170年にもわたり皮革、つまりレザーを扱い続けてきました。



エルメスとレザーとの関わりを紹介する展覧会です。ずばり素材、レザーそのものから歴代の鞄製品、さらにベルトや留め具などが揃います。また盆栽をテーマとしたバックのインスタレーションもありました。



会場内、撮影が可能でした。



さて冒頭から革の独特なにおいが漂ってきました。これぞレザーそのもの、製品の原点ともいうべきサンプルです。そしてこのブースのみ手で触れられます。色も様々ですが、一口にレザーと言っても素材は異なります。その質感なりを肌で味わいながら比較出来るわけです。



鞄を作る際にどう革を切り取るのか。見本も出ていました。さらにはお馴染みのオレンジの空箱もずらり。箱の中にはモニターも据えられ、エルメスの世界を紹介しています。全体として表慶館のスペースを細かに仕切って組み立てた展示です。さすがに見せ方としてもスタイリッシュ、一歩進む度にエルメスの多様な魅力が開けてきます。



巨大なサイのインスタレーションが目を引きました。全身皮革製です。そして歴代のエルメスの製品が並びます。いずれも味わい深い。人と革が馴染むとはこのことでしょうか。「美しいレザーはけっして古びることはありません。時を重ねるたびに、美しさは熟成するのです。」とはエルメスの言葉。確かに納得させられます。



現在もエルメス製品のインスピレーションの源には馬の「鞍」があるそうです。馬をモチーフとした鞄も可愛らしい。面白いのはグローブです。お値段は想像もつきませんが、エルメス製のグローブで野球とは何とも贅沢。一体どのように手におさまるのでしょうか。



旅をテーマにした展示も雰囲気を盛り上げます。バック、トランク、トラベルキットなど、ほかにバイクや自転車まであります。



これまでに世界各地、上海、ローマ、ロンドンほか、香港を経て東京へやってきた巡回展。表慶館全体がエルメスのパビリオンと化しています。普段、エルメスに縁の遠い私ではありますが、それでも思いがけないほど楽しめました。



混雑の情報です。先だっての日曜日(12/14)に出かけましたが、会場内はかなり賑わっていました。15時頃で入場まで20分待ちです。16時過ぎに待ち時間は解消しましたが、それでも場内で度々規制がかかるほどでした。(最終入場時間は16時半です。)



入場は無料ですが、入口にて引換券の提示が必要です。以下の専用サイトより取得のうえ、東京国立博物館正門の専用窓口(正面左)で携帯・スマートフォンの画面を提示して下さい。

「エルメス レザー・フォーエバー」引換券



東博としては完全に貸しのイベントということなのでしょうか。同館のWEBサイトには本展についての情報が一切ありません。展示概要についてはエルメスの公式サイトをご参照下さい。



会期末に向けてさらに待ち時間などが発生するかもしれません。時間に余裕をもってお出かけ下さい。

12月23日まで開催されています。

「エルメス レザー・フォーエバー」 東京国立博物館・表慶館(@TNM_PR
会期:12月2日(火) ~12月23日(火・祝)
時間:9:30~17:00。但し12月3日(水)~7日(日)は午後8時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:無料。要入場引換券。公式サイトより取得のうえ、東京国立博物館正門の専用窓口で携帯・スマートフォンの画面を提示すること。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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TNM&TOPPANミュージアムシアターで「檜図屏風と狩野永徳」が上演されます

東京国立博物館のTNM&TOPPANミュージアムシアター。かつては資料館内にありましたが、昨年に東洋館地下1階へと移設。様々な美術品をTOPPANの誇るバーチャルリアリティ映像で紹介しています。移設後は有料となりましたが、その分、内容に時間ともスケールアップしました。



そのTNM&TOPPANミュージアムシアターで狩野永徳の「檜図屏風」が上演されます。

TNM&TOPPANミュージアムシアター 国宝「檜図屏風と狩野永徳」
上演期間:2015年1月4日(日)~4月26日(日)
土・日、祝・休日 11:00/13:00/15:00
水・木・金曜   13:00/15:00
○所要時間40分 ○各回定員90名

永徳の「檜図屏風」はおそらく絵師の晩年に描かれた大作。1590年に創設された八条宮家の御殿を飾ったといわれ、当初は襖絵だったものの、後に何らかの意図で改装。現在の形である屏風絵として伝わってきました。

金碧の中を天を突くようにのびる檜は力強いの一言。一方で枝を左右に振り分ける姿は、まるで何者かが苦しみながら暴れているようでもあります。迸るエネルギーに、もはや破綻を恐れまいとするかのような圧倒的な画面構成。それも魅力の一つでしょう。実のところ永徳好きの私ですが、この屏風を初めて見知った時も衝撃的なまでに惹かれたことを覚えています。


*写真は2011年に東博総合文化展で撮影した「檜図屏風」

近年では2007年の京博「永徳展」にも出品、その後には2008年の東博の「対決展」にも出ました。また2011年には東博で本館の一部をリニューアルして行われた「初もうで展」でもお披露目がありました。ご記憶の方も多いかもしれません。

ただ屏風は傷みが激しい。確かに絵具などの剥落など目につきました。よってこの度、計1年半に及ぶ修理を実施。傷んでいる箇所を直すとともに、絵の裏面から「五七桐紋」(八条宮家ゆかりの紋様)が出てくるなど、新知見も得られたそうです。

ミュージアムシアターではそうした新たな「真実」(チラシより)についても紹介されます。お馴染みの超高精細、4K映像で見る「檜図屏風」、興味深い内容になるのではないでしょうか。


狩野永徳「檜図屏風」 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館

なお実物の「檜図屏風」ですが、同じく来年、2月から総合文化展の「国宝室」(本館2室)で公開されます。

実物展示「国宝 檜図屏風」 本館2室「国宝室」 2015年2月17日(火)~3月15日(日)

修復を経ておそらくはより鮮やかさを増したであろう「檜図屏風」。実物の展示にも期待したいと思います。


TNM&TOPPANミュージアムシアター

TNM&TOPPANミュージアムシアター「国宝檜図屏風と狩野永徳」は2015年1月4日から上演されます。

「もっと知りたい狩野永徳と京狩野/成澤勝嗣/東京美術」

TNM&TOPPANミュージアムシアター「国宝檜図屏風と狩野永徳」 東京国立博物館・東洋館(@TNM_PR
会期:2015年1月4日(日) ~4月26日(日)
時間:水木金[13:00/15:00] 土日祝休[11:00/13:00/15:00]
 *所要時間約40分。各回定員90名。
料金:高校生以上500円、小学・中学生300円、小学生以下無料。
 *別途要博物館入館チケット。
 *総合文化展セット券あり。(一般1000円、大学生800円)
 *開演時間までにチケットを購入する必要あり。(当日券のみ)購入場所はシアター前、及び正門チケット売場。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
「内藤礼 信の感情」
11/22-12-25



東京都庭園美術館で開催中の「内藤礼 信の感情」を見て来ました。

約3年間にわたり本館の改修、及び新館建設工事のため休館していた東京都庭園美術館。去る11月22日、全ての工程を終え、全面リニューアルオープンを迎えました。

そのオープニングを飾るのが現代美術作家、内藤礼の個展です。1961年に広島で生まれ、1997年にはヴェネツィア・ビエンナーレの日本館で作品を発表。近年には2010年に神奈川県立近代美術館鎌倉館でも個展を行いました。私もそれは未だ強く印象に残っています。


東京都庭園美術館本館「正面玄関ガラスレリーフ」

さて時に既成の事物を用いつつ、細微な造形物を配置することで空間を静かに変容させる内藤の手法。今回は歴史ある庭園美術館という「場」に、半ば敬意を払うかのようなインスタレーションを展開しています。


「次室」(香水塔:アンリ・ラパン)

というのも本館部分、改修はあくまでも創建当初の姿に近づけることを目標としている。何も所狭しと絵画なりが飾られていることはありません。


「大客室」(照明「ブカレスト」:ルネ・ラリック)

例えば大客室もご覧の通り。ラリック制作のシャンデリアの元に広がる長方形の客室、扉や暖炉のレジスターには装飾が施され、南窓からはテラスを見下ろすことが出来ます。ここに何ら作品があるようには見えません。


「大食堂」

それにしても何度見ても美しいもの。大食堂です。張り出した円形の窓を背に広がる空間、こちらも照明はラリックです。ガラス扉には果物のモチーフが刻まれています。円いテーブルには会食用に使われた食器でしょうか。ガラスの器が置かれていました。


「大食堂」テーブル

このように一見するだけでは「作品」として何もないように見える展示。それに加えて入口受付では内藤礼展の作品配置図が配布されません。つまり作品はどこにあるか分からないわけです。


「第一階段」(部分)

何も知らなければただ単にリニューアルした美術館を公開しているだけにも映る。もちろんそれだけでも十分に楽しめるのは庭園美術館の「場」の力に他なりませんが、しばし建物を巡っては細部の意匠、アール・デコの趣きを味わってみましょう。その何とも言い難い愉悦感。何せ3年ぶりです。久々に感じる方も多いかもしれません。

しかしながらさらにさらに建物の細部へと目を凝らしてみて下さい。すると誰かしらの気配があることに気がつきはしないでしょうか。


内藤礼「ひと」 2014年 木にアクリル絵具

「ひと」です。木彫、思わず見落としてしまうほどに小さい。いずれも立っている。そして鏡を前にしています。


内藤礼「ひと」 2014年 木にアクリル絵具

突き詰めてしまえば、この「ひと」こそ内藤の作品ですが、さも美術館が朝香宮邸の時から住んでいるかのように溶け込んでいる姿、違和感はありません。何とも愛おしくはないでしょうか。

そして「ひと」を探さんとばかりに美術館の細微な空間へより目を凝らすようになる。とすると「ひと」また現れるのです。まるで我々を待ってましたと言わんばかり。しかもほぼ必ずと言っていいほど鏡を前、あるいは背にして立っています。


内藤礼「ひと」 2014年 木にアクリル絵具

「鏡の国のアリス」ならぬ鏡の向こうの異世界を連想しました。この「ひと」は長らく鏡の向こうの世界にいて、このオープンという祝祭のためだけにひょっこり出て来たのかもしれない。サイズはまちまち、しかも微妙に体つきが異なっています。同じようで、誰一人同じではありません。

「ひと」に誘われて本館を一巡した後は、新たに建てられた新館へ移動しました。


東京都庭園美術館「新館」へのアプローチ

美しいのは新館へのアプローチ、波板ガラスです。設計のアドバイザーは新館と同じく杉本博司。光の角度如何では影が蝶やハートマークに見えるとか。アール・デコからホワイトキューブへの移行。このチューブで時代を超えていくような気にさせられます。

新館での内藤の展示はホワイトキューブ一室です。メインはアクリルのペインティング10点余。白く、朧げに、そして豊かに空間を包み込む光。僅かな虹色をしています。眼をとじて再び開けばもう光は消えているかもしれない。色と光は空間に溶け込んでいく。あくまでも微かに浮かび上がっています。


東京都庭園美術館「新館」全景 (ミュージアムショップとカフェが併設されました)

そして新館にも「ひと」はいた。ただし一人です。ただ一人だけ光を浴びにやってきた「ひと」。ともすると住処、あるいは本館と行き来する移動装置でしょうか。鏡のついた箱を背にしています。

「この展覧会を準備しているうち、いつの頃か『地鎮祭』という言葉が筆者の頭に浮かんできた。」 *内藤礼展カタログより

地鎮祭、まさしく言い得て妙ではないでしょうか。さらに今回ほど展覧会の「会」という言葉を意識させることもない。「ひと」と人が出会い、人と空間が出会い、空間と「ひと」が出会う。作品と鑑賞者と美術館という場の全てが関係性を持ちえます。そしてそのつなぐ存在にこそ「ひと」がいるわけです。


「書斎」

端的に内藤の個展として捉えると、私はかつての鎌倉館の時の方が楽しめたかもしれません。ただ今回は節目の時、歴史ある空間の魅力をさらに高めるような内容です。本館での瞑想的な展開はもちろん、光の満ちた新館の構成も含め、実に練られていると感心しました。


東京都庭園美術館「本館」館内

作品の性格上、なるべく人の少ない時間帯が良いかもしれません。なお平日に限り、本館部分の撮影も可能です。(一部、制限事項があります。)年末の慌ただしい時、なかなか難しいかもしれませんが、ここはあえて平日をおすすめします。


「殿下寝室」(展示は旧朝香宮邸資料)

なお本展は同美術館のこれまでの修復活動などを紹介する「アーキテクツ展」(本館のみ)と同時開催中です。通常展示されない家具やオリジナルの壁紙などもあわせて紹介されています。


東京都庭園美術館「本館」全景

余韻の深く残る展示です。実際、私も今回は夕方前を狙って行きましたが、館内を彷徨うこと2時間、殆ど人のいなくなった閉館間際になっても、このままずっと「ひと」と一緒に居たくなってしまいました。


内藤礼「ひと」 2014年 木にアクリル絵具

今「ひと」は何を考え、何を見て、誰に出会っているのでしょうか。

「庭園美術館へようこそ:旧朝香宮邸をめぐる6つの物語/河出書房新社」

12月25日まで開催されています。遅くなりましたがおすすめします。

「内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館@teienartmuseum
会期:11月22日(土)~12月25日(木)
休館:毎月第2・第4水曜日(11/26、12/10)。但し12/24は開館。
時間:10:00~18:00。12/22(月)~25(木)は20時まで開館。*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円 、大学生560(440)円、中・高校生・65歳以上350(280)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
 *「アーキテクツ/1933/Shirokane」(本館)と共通入館券。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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「誰が袖図 描かれたきもの」 根津美術館

根津美術館
「コレクション展 誰が袖図 描かれたきもの」
11/13-12/23



根津美術館で開催中の「コレクション展 誰が袖図 描かれたきもの」を見て来ました。

「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」 古今和歌集

いわゆる衣桁(室内で衣類を立て掛ける道具)や屏風に多くの衣装を掛けた姿を描いた「誰が袖図」。おそらくは遊里の室内空間をモチーフとしていた。主に江戸時代のはじめ、17世紀の前半に多く制作されたそうです。

その「誰が袖図」を紹介する展覧会です。表題の屏風3点を含む全17点余。いずれも館蔵の近世風俗画を展示しています。

さて3点のうちの1つの「誰が袖図屏風」、6曲1双の金地の大画面です。大きな衣桁に男女の衣服が掛けられています。そして無人です。ゆえに誰の袖かも分かりません。静物画の様相すら呈しています。


「誰が袖図屏風」(左隻) 江戸時代 17世紀 根津美術館

まず感心するのは衣装の模様の多様さです。桜や亀甲のつなぎと艶やか。いずれの描き込みも精緻極まりありません。また背景も面白い。障子です。そこには朝顔の垂れる様が描かれています。手前は畳でしょう。緑色の面が横に広がっています。そしておもむろに置かれた机には硯箱や冊子が並んでいる。右には双六盤もありました。無人ながらも、どこか人の気配を感じさせる面も否めません。

もう一つの「誰が袖図屏風」は趣きが異なりました。と言うのも背景は一面の金地、先の屏風に描かれていたような障子や机もありません。ただ衣桁にかかる袖のみが描かれています。(ただし桁に関しては先の作品と同様、右が蒔絵的なもの、左が青竹です。)言わば人工的世界、より抽象的とするのは言い過ぎでしょうか。袖なりの模様が際立ってきます。一つのデザインとして捉えても興味深いものがあります。


「誰が袖美人図屏風」(左隻) 江戸時代 17世紀 根津美術館

3点のうち唯一、人の描かれているのが「誰が袖美人図屏風」です。右隻は無人ですが、左隻に二人の人物がいます。禿と遊女です。互いに細い手を差し出していますが、これは禿が遊女に文を渡す仕草とのこと。また本作では香炉や香合、それに男性の刀などの小道具が多いのも特徴です。しかも視点はほか2作とは異なり、吹抜け、つまり斜め上から覗いています。さらに松や桜、それに野山といった自然も介入しています。構図からしても明らかに異なっていました。

そもそも「誰が袖図」において人物が登場する作品は少ないそうです。袖の持ち主しかり、場の背景しかり、どこか謎めいた「誰が袖図」。まさに三者三様です。互いの差異に注意して比べるのも鑑賞のポイントになりそうです。


「風俗図」 江戸時代 17世紀 根津美術館

「誰が袖図」のほかには「風俗図」に惹かれました。遊女と禿、さらには二人を伺う男のみが描かれた三幅対の作、人物の軽快な動きも魅惑的ですが、とりわけ遊女の小袖の意匠が面白い。文字でしょうか。それに水流の紋を組み合わせている。派手でもあります。

また背景の金地、金砂子でしょうか。人物の周囲だけでなく、さも何らかの情景を作るように散っています。特に一番左の場面です。左斜め上から下方向へ直線が引かれ、そこで金が分断しています。まるで風が強く吹き込んでいるかのようでした。

角度を変えて下から見ると金が美しく光りました。ここは着物だけでなく、背景にも目を向けてみてください。

同時開催の「婚礼衣装」も見事です。旧竹田宮家より寄贈された江戸から明治期の婚礼衣装がずらり。武家だけでなく町人用の花嫁衣装も展示されています。


「桜下蹴鞠図屏風」 江戸時代 17世紀 根津美術館

「これは誰の袖なのか。」色々と持ち主に関しての空想を膨らませるのも楽しいかもしれません。

12月23日まで開催されています。

「コレクション展 誰が袖図 描かれたきもの」 根津美術館@nezumuseum
会期:11月13日(木)~12月23日(火・祝)
休館:月曜日。但し11月24日(月・休)は開館し、翌日休館。
時間:10:00~17:00。入場は16時半まで。
料金:一般1000円、学生(高校生以上)800円、中学生以下無料。
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
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「新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 
9/27-2015/1/4



東京都現代美術館で開催中の「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」を見て来ました。

ダンス、演劇、スポーツなどの身体的表現を、いわゆるアートの文脈から問い直そうとする展覧会です。総合アドバイザーに狂言師の野村萬斎を迎えています。

会場内、一部のみ撮影が出来ました。

さて冒頭は野村萬斎、狂言の映像が観客を誘う。そこを抜けると長い回廊です。ダムダイプの大型インスタレーション、「Trace/React」が控えていました。


ダムタイプ「Trace/React」 2014年 サウンド・インスタレーション

縦に連なる5本の黒い柱、実は回転する超指向性のスピーカーです。過去のパフォーマンス作品からとられたという音、例えば人の呼吸や足の擦れる音などが断片的に流れる。つまり目の前にいないはずの人の動きの痕跡が音として立ち上がるわけです。

椅子に座りノイズに耳を傾けると何故か波の音を聞いているような錯覚をおぼえました。音の波、身体の波動。そのイメージを耳で追いながら感じる作品と言えるかもしれません。

振付家のノア・エシュコルが出展したテキスタイルに惹かれました。色鮮やかな端切れが抽象的な紋様を描いて組み合わさったもの。「身体に美学を見出す」(公式サイト)というエシュコル独自の感性が光ります。

平面としては具体も面白いのではないでしょうか。まさに身体の一部分、足を用いて描いた白髪一雄の絵画が鮮烈に立ちあがる。展示ではさらにポロックが介入します。一つの空間にアクションペインティングとドリッピングの作品が並んでいる仕掛け。身体性が両者の橋渡しをしています。


エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」 2014年 テキスタイル、木、板

ハイライトと言えるかもしれません。ネトの「人々は互いを横切る風である」は一際大きなインスタレーションです。お馴染みのウォークイン方式、中に入ることが出来ますが、モチーフ自体はアマゾンの先住民の知恵の泉を象徴する大蛇だとか。先は思いの外に長い。一本道にも関わらず、歩いていると不安感にすら襲われる。出口は見えません。トンネルはくねくねと曲がっています。


エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」(内部) 2014年 テキスタイル、木、板

半透明の布が身体を常に包み込みます。また布に触れるとさらさらと風を切るような音も発生しました。自らの身体を投げ入れてこそ初めて成り立ちうる作品。抜けた先には何が待ち構えているのか。確かに「儀式」(公式サイトより)に参加しているようでもありました。


チェルフィッチュ「4つの瑣末な 駅のあるある」 2014年 4チャンネル映像インスタレーション

チェルフィッチュの映像が秀逸です。タイトルは「4つの瑣末な 駅のあるある」。前には4面のスクリーンです。そこで若者が何やら身体を揺らし、一見、踊っているようにも映ります。はじめはダンサーによるパフォーマンスだと思いました。

しかしながら上部のスピーカーの音に耳を傾けると違います。動きと台詞が乖離しているのです。実は彼ら彼女らはただ単に駅などで見聞きしたことを話しているだけ。日常的なコミュニケーションに過ぎません。つまり会話における身振り手振りです。それがさもダンスのように見えます。


金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」
 
金氏徹平の「家電のように解り合えない」も興味深いもの。何やら摩訶不思議なタイトルではありますが、これは2011年にチェルフィッチュの主宰、岡田利規が演出した舞台装置。その際に金氏が美術を担当しています。


金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」

モチーフはずばり家電です。テレビに扇風機に照明。それらが思いがけない素材で出来ていました。しかも面白いのは時に家電自体が動くことです。伸縮自在。まるで生きた身体のように踊り出します。

ほかにはダグラス・ゴードン&フィリップ・パレーノの「ジダン21世紀の肖像」も目を引きました。レアルでの試合、ジダンのみを17台のカメラで追った映像作品です。おもむろに動き、急に止まり、今度はにわかに走ったかと思うと、力強く跳ねる。その無駄のない動きは美しくもあります。スポーツは究極の身体的表現であることに改めて気づかされました。


「新たな系譜学をもとめて」展示室風景

身体という括りからすれば曖昧な面があるかもしれませんが、少なくともバラエティに富んだ作品のセレクトです。飽きさせません。

会期中には各種パフォーマンスイベントも行われます。そちらに参加するとより楽しめるのではないでしょうか。

「12月はパフォーマンス月間。パフォーマンスプログラムのラインナップ」@東京都現代美術館

「新たな系譜学をもとめて アート・身体・パフォーマンス/フィルムアート社」

2015年1月4日まで開催されています。

「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:9月27日(土)~2015年1月4日(日)
休館:月曜日。但し10/13、11/3、11/24は開館。10/14、11/4、11/25は休館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:10:00~18:00。*入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大学生・65歳以上900(720)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。「ミシェル・ゴンドリー展」とのセット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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