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女性マーケターから見た日々の出来事

アスリートとしてのプライド

2012-01-15 20:30:09 | スポーツ
フィギアスケートの浅田真央選手の本が、急遽出版中止となった。
そのことに対して、浅田選手は「宣伝などの方法が、自分の意図しないものであった」という内容のコトを話している。
その後出版を予定していた出版社からも、新聞に同様の内容の出版中止のお知らせを掲載している。

2月上旬発売を予定していた本なので、もしかしたら一部は刷り上ってしまっていたかも知れない。
それでもあえて、浅田選手が出版中止を申し入れたのは出版内容と宣伝の内容が、大きく違っていたからだろう。
しかし、出版社側としてはその「宣伝内容」を使うことで、より高い宣伝効果がある、と考えていたというコトだ。

その問題となった宣伝内容とは、昨年暮れ亡くなられた浅田選手のお母様を使ったものだった。
何気なくその宣伝内容をみると「亡くなったお母さんにささげる内容なのかな?」と、思ってしまうもの。
しかし、実は1年以上の時間をかけ準備をしてきた本だった。
だからこそ、浅田選手は「亡くなった母を出してまで、本を売ろう」という姿勢に、疑問を感じたのだろう。

ただ今回のようなケースは、とても稀のような気がする。
出版社側としては、お母様が亡くなられたのは事実だし、そのことに触れているいないではなく、話題の一つとして使いたい、という気持ちはあるだろう。
いくら浅田選手とは言え、作家が本業ではない。
だからこそ、出版社の多大なサポートを必要として作られたはずの本だったはずだ。
その「多大なサポート」を盾に、出版社がややもすると強引なカタチで本を出すということは、これまであったのではないだろうか?
だからこそ、あのような広告宣伝文を掲載したのでは?
ところが浅田選手側から、出版中止の申し入れがあった。
それも浅田選手側が先手を打つようなカタチで、発表をした。
そのことが、とても稀なケースのように思うのだ。

そして一つ思い当たるのが、浅田選手をマネジメントしている企業の存在だ。
浅田選手がマネジメント契約をしている企業というのは、米国のスポーツ専門のマネジメント会社だったと思う。
それも単にマネジメントをするだけではなく、有望と思われる選手を育成することにも力を入れている。
そのため、選手に対するイメージ管理なども厳しくしているだろうし、何より選手がアスリートとして、余分なコトを考えなくても良い環境を作り出す努力をしているはずだ。
だからこそ、浅田選手が亡くなったお母様のコトまで持ち出して宣伝をする、という出版社側の姿勢に対して、強く言うことができたのではないだろうか。

残念ながら日本では、これほどまでに強いマネジメント会社は無い。
選手のイメージを守るというのは、マネジメント会社にとって当然のことなのだが、「売れるが勝ち」的なムードをマネジメント会社側も作りがちになっているのが現状だろう。
そのように考えると、浅田選手の本の出版中止というのは、単に「宣伝」の問題だけではなく、アスリートのあらゆる面のマネジメントとは何か?というコトを、考えさせられるモノのように思う。

そして、それは一般の企業についても同じことが言えると思う。
すなわち「社会が自分たちをどう見ているのか?」という、第三者的な視点を企業内で持つ重要性というコトだ。


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