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コピーライティングの妙

2022-03-26 11:47:42 | マーケティング

雑誌・プレジデントに「コピーライティングの妙」を感じさせる記事があった。
プレジデント: 「この靴なら疲れません」と「疲れるのは靴があっていないから」、生活者に刺さるコピーはどっち?

記事については、しっかり読んでいただきたいのだが、コピーライティングというと糸井重里さんが書かれたような「おいしい生活」のようなモノを思い浮かべられる方は多いと思う。
確かに「おいしい生活」は、キャッチコピー(あるいは「キャッチフレーズ」)といわれるモノで、人を引付させる為のコピーだ。
「え!何?何?」と、広告そのものに人を引付させる為に作られるモノ、というとわかりやすいかもしれない。

とはいっても、今「おいしい生活」というコピーを出しても、生活者は「は?何言ってんの?」となってしまうかもしれない。
事実、西武百貨店がこのコピーを使った広告が出たときには、「何を言っているのかわからない」という声もあった。
「わかる・わからない」のではなく、「おいしい生活」という言葉のイメージから生活者一人ひとりが、「自分にとっておいしい生活って何だろう?そもそもおいしい生活って何?」という問いかけで、答えは生活者一人ひとりの中にある、というそれまでとは違うコピーライティングだった。

それに対して、記事に使われている「この靴なら疲れません」とか「疲れるのは靴があっていないから」というコピーは、具体的で生活者の感性に訴えかけるモノではない。
何より、この2つのコピーは「疲れると靴」という共通のキーワードを使いながら、対照的な印象を与えるコピーでもある。
「疲れない靴」は、コピー対象となっている「靴を勧めている」のに対して、「疲れるのは靴があっていない」は、違う靴への買い替えを勧めるコピーになっている、ということがわかるはずだ。

この2つのコピーが同じ靴を対象としたコピーだとしても、コピーを読んだ人に訴えかけるモノが違う、ということなのだ。
そして面白いコトに、使う媒体によって同じ商品であってもコピーを変えることで、より広い生活者層に訴え掛けることができる、ということがある。
特にこのコピーのように、生活者にとって具体的で「問題解決」を感じさせる(この場合は「靴と疲れ」という関係の問題を解決することを目的としている)コピーは、生活者にとって直接的に感じられるモノとなるので、コピーそのものも直接的で具体的な言葉を使う必要がある。

記事の中には980円と1,000円という表現の違いによって、人は「安さ」を感じたり・感じなかったりする、という例が挙げられている。
この事例は、随分前から言われている「消費者心理をつかむ価格設定」として、商学などを学んだ方はご存じだと思う。
人の持っている「何かと対比したときの損・得感」という値ごろ感は990円ではなく、980円という20円の差額なのだ。

このように、コピーライティングには、生活者の気持ちをいかに掬い上げ・気持ちに訴えかけ・考えさせることができるのか?ということが、必要なのだ。
まして、長々とした文ではなく、パッと見たときに読み切れるだけの短さも必要なキャッチコピーには、様々な作り手となる思いを伝える必要がある。
技術的なコトだけではなく、常に言葉に向かい時代感を読み取る力もまた、コピーライティングには必要であり、マーケターは「日々言葉をブラッシュアップする」必要があるということでもある。



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