拙ブログでファッション関係の話題で取り上げることが多いWWD Japan。
WWD JapanのWEBニュースに「後継者」という問題は、ファッションの世界でも無関係ではない、と思わせる記事があった。
WWD Japan:「ソニアリキエル」、身売り先なく清算へ 店舗も即日閉店
ソニアリキエルが亡くなったのが、2016年の夏だった。
「ニットの女王」と呼ばれるだけではなく、日本では「黒」を基調としたデザインでも人気が高かった。
人気ブランドとは言え、デザイナーであるソニアリキエルが亡くなったことで、事業そのものも縮小し最終的には清算ということになってしまったようだ。
この見出しにある「身売り」という言葉そのものは、とてもセンセーショナルなイメージを与えるが、ファッションブランドにおいては珍しいことではないという気がする。
一時期、LVMH(モエ ヘネシー ルイヴィトン)は、短期間の間に経営不振に陥っていたかつての名門ファッションブランドをいくつも買収をした時期があった。
名前を見てお分かりだと思うが、LVMH社はシャンパンのモエ、ヘネシーコニャック、そしてルイヴィトンが一緒になった企業グループだ。
このLVMH社の傘下には、クリスチャン・ディオール、セリーヌなどラグジュアリーなデザインを得意とするファッションブランドがある。
特にセリーヌなどはLVMH社が買収をした頃は、ラグジュアリーブランドではあったが、ブランドそのものが時代に乗り遅れた感が否めない、という状況だったような記憶がある。
「身売り」と言う言葉のイメージは決して良いものではないが、LVMH社の買収というのは既存のブランドイメージを一新し、新しい顧客を獲得することに長けた戦略のものに行われていた、というものだったように思う。
そう考えると、LVMH社にとってソニアリキエルというデザイナー亡き後、ブランドの魅力そのものが無くなったというだけではなく、ソニアリキエルブランドのイメージを継承できるデザイナーもいない、という判断をしたのでは?という気がする。
言い換えれば、ソニアリキエルに変わる後継者がいなかった、ということだ。
シャネルやクリスチャン・ディオールなど、創業者となったデザイナーは既に亡くなっていても、ブランドそのものは生き残っている場合がある。
生き残った大きな理由は、創業者の創り上げたブランドイメージを継承できるデザイナーがいた、という点だろう。
クリスチャン・ディオールの場合は、故イブ・サンローランだった。
シャネルの場合は、ココ・シャネルが亡くなってしばらくは低迷した時期もあったようだが、今年亡くなったカール・ラガーフェルドを迎え入れたことで、顧客層を一気に若返らせることに成功した。
このような「ブランドイメージを引き継ぐことができる後継者の有無」が、ファッションブランドにおいては企業の存続の要になってくるのだ。
しかし、このような「後継者問題」は、ファッションブランドに限ったコトではない。
ただ、ファッションブランドと同じように、後継者となる人物は継承する企業の事業だけを継続させるのではない。
それまで創り上げてきたブランドイメージや社会的信用なども引き継ぐのだ。
その覚悟を持てる人材を育てることもまた、企業として必要なことなのだ。
残念ながら、ソニアリキエルの場合後継者となるデザイナーがいなかったことや、ブランド展開をする企業が、ソニアリキエルのブランドイメージなどを十分理解していなかったのでは?という気がしている。