日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

LVMHが、ティファニーを買収したい理由を考える

2019-10-27 18:36:38 | ビジネス

Yahoo!のトピックスにもあった、LVMHのティファニー買収の話。
ブルーム―バーグ:仏LVMH、米宝飾品事業の拡大に向けティファニー買収を探る

このニュースを見た時、「ティファニーの財務状況が悪いのだろうか?」という、気がした。
日本のバブル経済が崩壊する前の1980年代、財務面でティファニーを支えていたのは三越百貨店だった。
意外な印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれないが、三越百貨店とティファニーの関係は、随分古いと聞いている。
だからこそ、三越の一番良い場所にティファニーが入り、バブル景気の頃はティファニーのアクセサリーを購入する人の賑わいが、三越全体の賑わいを創り出していたような印象を持っていた。

LVMHが、ティファニー買収に乗り出したのは、米宝飾品事業拡大だけの問題ではないという気がしている。
というのも、LVMHは過去に経営不振に陥っていた仏高級ファッションブランドを次々と買収した、ということがあったらからだ。
LVMHの買収によって、息を吹き返したブランドもあるが、かつてのようなラグジュアリー感があるのか?と、「売れ線だけど・・・」という印象を持ってしまうようになってしまった。
デザイナーの冒険心のようなものよりも、トレンドを押さえ売りやすいラグジュアリーブランドという、印象になったように感じるからだ。
このような買収劇を繰り返してきたLVMHだからこそ、「宝飾事業の拡大」という名目とは別にティファニーそのものの財務状況があまり良くないのでは?という、気がしている。

フランスの企業でありながら、米の宝飾店・ティファニーの買収を考えている理由には、欧州の宝飾店の買収が難しいからなのでは?という気もしている。
欧州の宝飾店から見れば、米国のティファニーは「新興宝飾店」に過ぎない。
仏のショーメは、ナポレオンの戴冠式の王冠をつくり、日本でも人気の高いヴァンクリーフ&アーペルやカルティエなども、欧州の王室御用達の宝飾品の企業だ。
歴史も顧客も、ティファニーとは歴然とした差がある、プライドの高い宝飾品の企業なのだ。
いくら資金力のあるLVMHであっても、単に財務状況だけを見て買収相手をさせてもらえるような企業ではないのだ。

それだけではなく、米国における宝飾品市場の拡大というよりも、アジア市場の拡大という目的のほうが大きいような気がするのだ。
特に中国などは、米国、日本に次ぐ市場規模を持っている。
先日の「右目を隠す広告」が、香港で起きているデモを支持していると、批判され早々に広告を取り下げた、という話題を覚えている方も多いと思う。
それだけ、ティファニーにとって中国市場は大切にしたい市場である、ということになる。
とすれば、買収を考えているLVMH側も中国市場を考え、ティファニーを切っ掛けに傘下にあるブランドの展開も考えているのでは?ということなのだ。

LVMHのティファニー買収が上手くいくか、否かは分からない。
ただ、このような話題となるモノを理解する必要があると思う。