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SNSと親和性が高いモノが、ヒットする?

2017-01-11 11:50:08 | ビジネス

昨日、キネマ旬報が、2016年公開映画のベスト10を発表した。
キネマ旬報:2016年 第90回キネマ旬報ベストテン

今回日本映画部門で1位に輝いたのは、「この世界の片隅に」だった。
この選出に、意外に思われた方も多いのではないだろうか?
昨年の大ヒット映画と言えば、「君の名は。」だった。
興行収益や観客動員などを考えれば、「この世界の片隅に」を遥かに上回る数字をたたき出した映画だったはずだ。
キネマ旬報そのものが、ヒットした映画だからベストテンに選出しない、という傾向は以前からあったものの、ベスト10外というのは、やはり意外な気がした。

今回1位となった「この世界の片隅に」という映画については、拙ブログでも以前紹介したことがあるので、ご存じの方も多いと思う。
映画製作費の一部を「クラウドファンディング」で集め、瞬く間に資金集めに成功した。
その後、海外での映画公開の為に、再び「クラウドファンディング」により、募集をしたところ前回よりも早い速度(というべきか?)で資金を集めた。という、これまでとは違う「資金調達」の方法で、映画製作をし公開をしてきたアニメ映画だった。

もう一つこの映画の特徴的だったことは、「君の名は。」のような封切映画館の数では無かったことだった。
単館の63館で公開が始まった上映館は、177館にまで増え、上映館が増えるに従い興行収益も増えていっている。
公開が11月13日だったコトを考えれば、急激に上映館が増えたことになる。
実は、この上映館が増えた(=観客動員が増えた)理由の一つに、TwitterなどのSNSによる反響が大きかった、と監督の片渕須直さんは、あるインタビューで答えている。
朝日新聞WEBRONZA:映画『この世界の片隅に」片渕須直監督に聞く

映画ではないが、昨年ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も、TwitterなどのSNSによる「口コミ」が、新たな話題をつくりヒットをしたのでは?という気がしている。
第1回の放送から、右肩上がりで視聴率を伸ばし、昨年の「秋ドラマ」の満足度1位というだけではなく、録画視聴などでも、圧倒的な強さを見せたドラマだった。

最初話題になったのは、エンディングで流れる「恋ダンス」だった。
その「恋ダンス」がSNSで話題になり、「恋ダンス」見たさにドラマ本編を見たらハマってしまった・・・という、普段ドラマを見ない若者層を中心に、広がっていったのでは?という、気がしている。
実際、「逃げ恥+Twitter」で検索をすると、若者を中心に「恋ダンス」映像が数多く見るコトができる。
高校のダンス部から友達同士で楽しんでいるものなど、実に様々だ。

「この世界の片隅に」も「逃げるは恥だが役に立つ」も、素晴らしい脚本や原作、監督の力、配役の妙などがあり、作品そのものが素晴らしいことには違い無いのだが、今はそれだけではヒットする時代ではない。
やはり「社会現象化」するほどのヒットを生み出すとなると、作品の良さ+αが必要になる。
その+αとなったのが、Twitterを中心としたSNSなのだ。

その理由として考えられるのは、Twitterなどの「即時性」だろう。
片渕監督もインタビューで、「以前は、話題になったとしても観客の動きなどは、1日以上かかっていた。それが午前の反響が、午後に反映されるような状況が続いていた」という趣旨のことをインタビューで話している。

情報量が多くなっている今、情報量の多さに埋没しないためには、常に「新しい情報」が発信される必要がある。
その情報発信の主役は、制作者側である必要はない。
むしろ、制作者側主導の情報発信よりも、同じ情報を共有している「仲間」からの情報のほうが、支持される場合がある。
それが「共感性のある口コミ」の力なのだ。
製作者側はむしろ「共感性のある口コミ」をフォローするコトで、より共感性を高めるコトができた・・・というのが、この2つの作品のヒットのような気がしている。