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ユーザーのニーズは重要ですが・・・ 「楽びん!」サービスに対する疑問と懸念

2015-08-20 19:46:47 | ビジネス

Yahooのトピックスに、楽天が最短20分、24時間対応の宅配サービスを始める、というニュースが取り上げられていた。
Yahoo:ImpressWatch「楽天、最短20分、24時間対応の即時配送サービス「楽びん!」

東京の中でも4区に限ったサービスのようだが、このサービス本当にどれだけの人が必要としているのだろう?
確かに、注文をしてから20分で注文をした商品が届く、というのは便利なサービスだと思う。
思うのだが、このようなサービスそのものは、既にある。
しかも、随分前からあるサービスだ。
しかし、そのサービスそのものは、時代の趨勢により、すっかり見かけなくなってしまったサービスでもある。
「御用聞き」というサービスだ。
食べ物でいえば「出前」というサービスだ。

「御用聞き」というサービスの基本は、実店舗があり、常にある程度の在庫を抱えている必要がある。
何より、定期的にお客様のところへ伺い注文を受け、配達をする必要がある。
いうなれば、在庫管理と人の労力がかかっている商売なのだ。
当然のことながら、このような商売を楽天が始める、という事は4つの区内で楽天に出店している事業者が確保できている、という事。
そして注文を受けた商品をお届けする配達専用スタッフの確保ができている、という前提が必要だ。

以前の「御用聞き」であれば、実店舗で商売をしながら(しかも多くの場合は、家族経営だった)手を空いている人が、商品をお届けする、ということが可能だった。
働く人そのものが、配達のために待機しているわけでもなく、商売の合間に限られた商区内で配達をする、というのが基本だった。
しかし「楽天」の場合、参加店の多くが商品を販売するだけで、配達となると宅配業者に委託をする、という形態をとっている。

一番の問題は、配達を任される宅配業者にそれだけの余剰人員がいるのか?という点だ。
実際、宅配事業者は人の確保がなかなかできず、慢性的な人手不足となっている。
それに拍車をかけているのが、1個当たりの配達単価(?)が安い、という指摘がされている。
まして、一般的な宅配事業者の配達時間は、大体夜の9時までになっている。
それを24時間にするとなると、当然のことながらこれまで以上に宅配事業者に大きな負担がかかる、という事になる。
いつ注文が入るのかわからないため、商品を提供する出店企業も商品出しのための人材を確保しておく必要がある。
当然、深夜の仕事は「割増」の賃金を出す必要がある。
そのためには、通常よりも3割増し以上の価格設定が必要のはずだ。

確かに、ユーザーのニーズは重要だと思うのだが、過剰なサービス提供はどこかで破たんするのではないだろうか?
「楽天」そのものは、宅配事業者でもないし、出店企業でもないので、痛い思いをすることはないかもしれないが、事業者としてパートナーとなる相手の事業のことも、十二分に考える必要があるのではないだろうか?
それが事業者間の信頼を生むことにもなるだろうし、互いに信頼して仕事を任せられるような関係になると思う。

ビジネスのスタートというのは、そのような信頼関係がなくては、できないと思うのだが・・・。