日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

二つの「新しい」

2012-03-17 20:42:23 | マーケティング
昨日、「The New iPad」が発売された。
先日の発表会では「iPad3」のリリースでは?と期待されたのだが、「The New・・・」という、やや肩透かしのようなネーミングで、市場が少しがっがりしたようだった。
その数日前には、「iPadHD」なのでは?という、噂もあった。
ところが、発表された名前が「The New・・・」という微妙な名前だった。

そして今日もう一つ「新しい」という言葉を使った広告が、新聞に掲載されている。
サントリーの「伊右衛門」の広告だ。
こちらは、広告文を読めばなんとなく「新しい」というコトが分かるのだが、「新しい=リニューアル」という感じの広告ではないことも分かるはずだ。

今回この二つの「新しい」と銘打った商品を見て、共通点があるような気がしている。
それは、製品に対しての自信だ。
ご存知のように、サントリーの「伊右衛門」は発売以来、伊藤園の「お~い、お茶」と並んで、「ペットボトル緑茶飲料」を牽引してきた商品でもある。
キリンの「生茶」が、微炭酸や野菜をブレンドしたりして、変化球で勝負しているのに対して、この二つのブランドだけは、緑茶にこだわる直球勝負の商品でもある。
だからこそ、「新製品を出す」というコトは難しい部分もあるはずなのだ。
というのも「緑茶」は、いくら変えようとしても「緑茶」でしかない。
まして「伊右衛門」は、京都の老舗・福寿園の創業者の名前を冠としている商品だ。
新しいだけではなく、福寿園の名に恥じないような商品ではくてはならない。
だからこそ、下手なサブ名をつけること無く「新しい伊右衛門」としたのだろう。

同じ様に「The New iPad」も、既に認知度が高く、タブレット型携帯情報機器端末としてのブランドが確立している。
そしてこれまでの「iPad」のイメージを作り上げてきたのは、ジョブズ氏本人だった。
違う言い方をすれば、ジョブズ氏本人の作品だとも言えるのではないだろうか?
だからこそ、その意思を引き継いだスタッフたちがジョブズ氏に対して敬意を表しつつ、ジョブズ氏の「iPadではない」という気持ちや心意気のようなモノが「The New・・・」とさせたのではないだろうか?

既に十分にブランドとして確立している商品に、新しい名前を付けるというのは、とても難しく勇気のいることだ。
だからこそ、製品に対して敬意を表しつつ、これまでと違うことを表す意味で「新しい」という言葉を使うのだと思う。
「新しく」と謳えるのも、元々の製品に自信があり、それを上回る気持ちがあるからだと思う。