はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part42 升田幸三 “南海の月”

2015年09月30日 | しょうぎ
 1943年「升田幸三-木村義雄戦」朝日番付戦決勝。その100手目2二角打の局面図。
 升田は99手目に2一飛と打った。これが木村の2二角打をうっかりした“敗着”だと解説書に升田自身が書いている。
 しかし、ここは、ほんとうは「先手優勢」である。

    [幸三か、ほんまに幸三か]
 浮浪者そこのけの姿で「ただいま」といったら、母が奥から出てきて息をのんだ。
「幸三か、ほんまに幸三か」
それっきり声が出ない。どういったらいいか、私にも言葉がない。
「てっきり幽霊かとおもったがのう」
 母の口から明るい笑いがもれたのは、それから一時間あまりたって、兄や親戚の者がつめかけてからでした。

                            (升田幸三『名人に香車を引いた男』から)



升田木村戦100手
 ここから先手には少なくとも4通りの勝ち筋があると、我々の研究では判明している。
 次の4つである。
  【さ】6三歩成
  【し】5一金
  【す】5三歩成
  【せ】1四歩
 ただし、この将棋は、つくりが逆転しやすいようにできているようだ。どのルートを選んでも、正確に指し続けないと逆転してしまう。つまり形勢は実質的には“微差”なのだ。「激指」では+1100となっているが、感覚的には+600というような感じ。1、2回の小ミスで逆転する差である。
 以下、4つの手を一つづつ見ていく。

【さ】6三歩成

変化6三歩成図1
 【さ】6三歩成。 これには同銀だが、そこで3一飛成、同角、4一角。

変化6三歩成図2
 4一角の狙いの王手角取りが実現する。ただし、それで即先手良しかどうかはまだわからない。
 3二銀、6三角成。そこで1七歩(次の図)がある。

変化6三歩成図3
 これが悩ましい手だ。
 5三歩成、1八飛、2九玉、6八と、8九飛、7八と、5四馬、8九と、2八銀、8五歩、4五桂、2四桂(次の図)

変化6三歩成図4
 こうなると、これは逆転してしまって、後手良し。
 こんな具合に、この将棋のつくりは、逆転しやすいようにできているのである。
 いったいどこがいけなかったのか?

変化6三歩成図3 再掲
 もう一度1七歩と歩を垂らされたところまで戻る。
 さっきはここで5三歩成としたが、実はこの手が問題だった。ここは、4五桂か、または1七同玉が正着となる。1七同玉はしかし、危険な筋も多いので、ここは4五桂のほうを見ていこう。

変化6三歩成図5
 4五桂(図)として、3七に逃げるスペースをつくる。
 4五桂、1八飛、3七玉、4五桂、同歩、5五桂、3五桂、2四玉、5三歩成、4七桂成、同銀、6八と、5四馬(次の図)

変化6三歩成図6
 これで「先手良し」になった。次に3二馬となれば先手勝ちなので、後手は2二金とするだろうが、4三桂成でやはり先手が勝てる将棋。

変化6三歩成図7
 今度は後手が工夫する。先手の4五桂で後手が悪くなるなら、その前に4六歩と取り込んでおけば、4五桂の筋はなくなる。で、先手6三角成に、4六歩(図)。
 これは同金。この「4六歩、同金」の交換は後手にとっても怖い。
 こうしておいて、1七歩。
 ここで5三歩成としたいが、それは検討の結果は先手負けになった。
 どうやら1七歩には、今度は2九銀と受ける手が正着。(1七同玉もあるかもしれない)

変化6三歩成図8
 ここで7五角なら、3五銀で先手良し。図から6八と以下を調べる。
 6八と、5三歩成、6九と、4三銀、6八飛、4八歩、4四金、3二銀不成、同玉、4二銀(次の図)

変化6三歩成図9
 4二同角、同と、同玉、5三角、4三玉、3五金(次の図)

変化6三歩成10
 これで先手の勝ちになっている。図で5四金には、6二角成。

 このように、正確に指せば、先手が勝ちになると、結論したい。1七歩に対する応手が勝負どころだった。

【し】5一金

変化5一金図1 
 【し】5一金(図)も有力。 この5一金は「激指」が第1候補手としている手でもあり、遊んでいる金を活用するので、これで勝てるならこれを選びたくなるところでもある。
 しかし、これも、雑に指すと逆転負けする目がある。
 5一金に、8五歩、5二金、2四桂(次の図)

変化5一金図2
 ここで先手の選択肢が多い。〔s〕5三歩成、〔t〕4二銀、〔u〕4一金、〔v〕4五桂、〔w〕1七銀など。いずれも有力。
 逆にいえば、ここは先手が間違えやすい場面である。

変化5一金図3
 我々が調査した結果では、勝ちやすい手は〔w〕1七銀である。5二で得た銀をここで使う。
 ここで1七に銀を打つのは、もし後手に歩が十分にあると、1四歩、同歩、1五歩、同香、1六歩でまずいのだが、この場合は大丈夫。これで2四桂の攻めを受け止めた。
 1七銀に、後手は5二銀と金を取る。それには、6三歩成、同銀、3一飛成、同角、4一角でどうか。
 以下、3二歩、6三角成(次の図)

変化5一金図4
 これで「先手良し」と思われる。しかしまだはっきりしないので、進めてみよう。
 6八と、5三歩成、6九と、4三銀(次の図)

変化5一金図5
 これは3四銀成、同玉、3五金の攻めと、4一馬の2つの狙いがある。
 4四金、4一馬、2一金、4二とと進むと次の図になる。

変化5一金図6
 先手が勝てる将棋。1七銀としっかり受けたのが成功した。
 ここから、4二角、同馬、1六桂、同銀、1七歩には、2五桂(次の図)

変化5一金図7
 1八飛と打たれても、3七玉で、先手は怖いところがない。
 
 この【し】5一金の変化は、後手の2四桂に対し、しっかり〔w〕1七銀と受ける手が指せれば、あとは問題なく先手が勝てる道となるようだ。

変化5一金図8
 今度は、8五歩~2四桂では後手が勝てなかったので、後手が工夫して、先手5一金に、4六歩、同歩、1七歩(図)と来た場合を考えてみる。
 5二金、同銀、そこで3五歩が急所の一手。以下、1八金、3九玉、2四金、5三歩成で次の図となる。
 手順中、3五歩に、4四金なら、5三歩成、同銀、4五歩とし、4三金に3四銀という要領で攻めていく。

変化5一金図9
 5三歩成(図)とするのが良い手となる。これを〔L〕5三同角なら、3四銀、3二玉、5一飛成。
 〔M〕5三同銀と、〔N〕6八とを見ていく。
 〔M〕5三同銀、3一飛成、同角、4一角、3二歩、4三銀(次の図)

変化5一金図10
 飛車しかない後手は受けに窮している。2二飛なら、5二角成だし、4二飛には、同銀成、同銀、5九飛で、先手優勢。この形は、先手3五歩が急所で、あとはトン死しないように十分注意して攻めていけば、先手が優位にすすめられるのは間違いない。

変化5一金図11
 5三と(変化5一金図9)に、〔N〕6八との場合。以下、5二と、6四角、1四歩となって、この図である。5二の銀を取らせてそのかわり6四角と飛び出すのが後手の狙いだったが、この1四歩が決め手で先手勝ちになる。4六角なら、3二銀、同玉、4一飛成、2三玉、3二銀、1二玉、2一竜まで詰み。1四歩に1五歩と受けたいが、それは二歩の禁じ手。
 したがって後手は1四同香しかなさそうだが、それには1一銀がある。先手勝勢。
 なお、〔N〕6八と、5二との時に、6九となら、4二銀として、やはり先手良しである。

 【し】5一金で、先手勝ちになる、が結論。


【す】5三歩成

升田木村戦101手 5三歩成
 【す】5三歩成(図)は実戦で升田幸三が指した手だが、この順で勝ちがあったことは前回の報告「part41」で述べすでに解説済みである。ただし、≪訂正≫する箇所がある。
 ここから同銀、6三歩成、5四銀直と進んだが、そこで1四歩とすれば、先手の勝ち筋に入る(次の図)

変化5三歩成→1四歩図1
 6三のと金の存在と、2一の飛車と、そして1筋の攻め。この組み合わせがとてもよく、図以下は、6八と、1三歩成、同香、同香成、同玉、1四歩(次の図)が予想されるが――

変化5三歩成→1四歩図2
 この1四歩を同玉なら5三と、1二玉なら、2二飛成、同角、1九香として、いずれも先手勝ちになると、解説した。(1四歩に2三玉には3五香と打つ)

 しかしここで≪訂正≫をしなければならない。この図から1二玉、2二飛成、同角、1九香、1六歩と進めて―ー(次の図)

変化5三歩成→1四歩図3
 ここで1六同香とし、以下4六歩、同金、1七歩、2九銀以下を先手良しと「part41」では解説した。
 ところが、この図で1六同香に、“1五歩”という手があった。以下、同香に、8五歩と桂馬を取って――(次の図)

変化5三歩成→1四歩図4
 「1六」の空間をつくって、8五歩で桂馬をとる。こういう手段があった。これで次の1六桂の攻めがあって、これは後手良しである。1三歩成、同角、1七歩とそれを防ぐ手はあるが、1六歩、同歩、2四桂となって、やはり後手1六桂は実現する。
 この変化は先手いけない。

変化5三歩成→1四歩図5
 後手の1六歩には、同香では先手がわるいと判明し、結論がひっくり返った。 
 なので、ここで先手の別の手を勝ち筋として示さねばいけなくなった。

 そこで後手1六歩に、“5三と”を新たなる「正着」として示す。この手には、しかし1五香(図)がある。
 これが嫌なので、前回解説では1六同香としたのだったが、もう嫌だとか言っていられない。5三との変化は怖いところもあるのだが、正しく応じれば先手が良くなると思われる。以下その確認をしていく。
 1五香に、5四と(こちらの銀をとる)、1七歩成、同香(3九玉は先手不利)、同香成、同玉、1五香、2八玉(次の図)

変化5三歩成→1四歩図6
 これが怖い変化で、できれば避けたかった。(升田幸三も対局中、この変化をここまで考えて、1四歩を選ぶのをやめたのかもしれない)
 ここで後手は、<g>1九飛と、<h>1八飛が考えられる。
 <g>1九飛、2九銀打(4五桂もある)、5八と、1八香(次の図)

変化5三歩成→1四歩図7
 これで「先手良し」。 この1八香で、先手はあの1九の飛車をとってしまおうというつもり。1七歩が怖いが、1九玉、1八歩成、同銀、同香成、同玉、1五香、2八玉で、大丈夫。

変化5三歩成→1四歩図8
 <h>1八飛(図)には、3九玉だが、そこで(1)1九飛成と、(2)6九と、がある。
 (1)1九飛成には、この場合は2九香とする。(2九銀打でもよいが、5四銀と手を戻された時にちょっと攻めが細いのが不安)
 以下、1八香成、4三と、5八と(次の図)

変化5三歩成→1四歩図9
 これは“受けなし”に見える。だが、大丈夫だ。
 5八金、同銀成、1三銀、同角、6二飛成、とこういう手がある。
 以下、2二銀、1三歩成、同玉、2五桂(次の図)

変化5三歩成→1四歩図10
 これを2五同桂は、2二竜、同玉、3三銀、同金、3一角、同玉、4二角以下、詰む。
 2五同金も、2二竜、同玉、3一角以下詰み。
 よって、1四玉だが、先手は1五歩。
 そこで「同玉」と「2五玉」がある。どちらも“詰み”はないのだが――
 1五同玉には、3七角がある。以下、2六歩、1九角(次の図)

変化5三歩成→1四歩図11
 竜を取って、先手玉の詰みを解除。先手の勝ちだ。

変化5三歩成→1四歩図12
 「2五玉」と逃げた場合も、2二竜、2四桂、2六歩、1六玉、2七銀打、1七玉、1八銀、同竜、2八銀となって、この図になる。以下、同竜、同香、1八銀、1九香で、やはり先手勝ちとなる。
 時間がなければとても指せない順だが、確かに「先手勝ち」になるのだ。

変化5三歩成→1四歩図13
 戻って、この図から(2)6九との変化。これは次に1九飛打と打って二枚飛車で攻めようという意図。
 先手は4三ととするが、1九飛打に、2九銀打(次の図)

変化5三歩成→1四歩図14
 ここは「銀合い」がよい。理由は手を追えばあとでわかる。
 5九と、同金、1七香成、3二角、2八成香、4八玉、3八成香、5七玉、1四飛成、1八香(次の図)

変化5三歩成→1四歩図15
 これで先手優勢。(1四飛成となったときに、この1八香を打つための2九銀打だった)

 ということで、≪訂正≫はあったが、結論は同じで、【す】5三歩成→1四歩は、「先手良し」。
 しかし、≪訂正≫によって、ずいぶん勝ち方が難解になった。正確な読みがないと選びにくい順である。
 が、100手目2二角打の図で、【す】5三歩成を選ぶと、理論的には105手目に1四歩とする以外に、先手の勝ちはないようである。


【せ】1四歩

1四歩図1
 最後に、【せ】1四歩(図)。
 この図を、上の【す】5三歩成、同銀、6三歩成、5四銀直からの→1四歩の場合ととくらべてみると、と金ができていないので、この図は攻略しにくいかとも見える。しかし、この場合は相手に「歩」がないので、そこが重要なポイントとなる。1三歩成と攻めると歩を一枚渡すが、一枚と二枚とではこの場合はえらく違うのだ。
 図以下は、8五歩、1三歩成、同香、同香成、同玉、1九香、1六歩、同香、2三玉(次の図)

1四歩図2
 1六歩の歩の犠打で同香と吊り上げて、2三玉。後手の次のねらいは、もちろん2四桂だ。
 後手に歩がないので、1四歩が絶好に見える。ところがそれは1一香と受けられると、1三歩成、同香、同香成、同玉、1九香、1六歩、同香、2三玉…、つまり「千日手」になってしまうのだ。
 では、どう攻めるか。
 5一金があった。以下、2四桂に、1七歩(次の図)

1四歩図3
 先手は、銀を取って1三銀が次のねらいとなる。4六歩、同金と進んで――
 そこで、<j>4四香、<k>1四歩を考えてみた。
 <j>4四香には、5二金でよい。

1四歩図4
 この5二金(図)は、この瞬間、1二銀、3二玉、3一飛成以下“詰めろ”になっている。
 よって後手は5二同銀。
 そこで先手は3一飛成とする。同角なら、1四角があるので、後手は、1六桂、同歩として、それから3一角とする。
 そこで先手の手番だが、3五桂と打つ(次の図)

1四歩図5
 先手の勝勢である。3二玉には2三角~3四角成だし、3五同金なら、同金。
 後手の4四香は、4六香と金を取る余裕がなく空振りとなった。

1四歩図6
 次に<k>1四歩(図)と受けた場合。これは先手の1筋の攻めを防いでおいて、後手は5六銀成という攻めに期待している。同金と取らせて、3六桂がねらいである。
 5二金、5六銀成、同金、3六桂、1八玉、5二銀、3九金と進む。
 なお、この手順中、5二銀と金を取らずに、3二銀と飛車を取りに行くのもあるが、3一飛成、同角、3九金、5八飛、4七銀で、先手優勢となる。
 5二銀、3九金の後は、4八金、2九金、2八香(次の図) 

1四歩図7
 ここは2八同金で清算しても先手が良いが、4六金が優る。この手は次に3五銀など攻める手を狙っている。後手の3四の金を攻めるのがこの場合急所なのだ。
 以下は一例だが、4六金、3八金、同金、2九銀、同飛、同香成、同玉、4九飛、3九銀、4六飛成、4七銀、6六竜、1四香(次の図)

1四歩図8
 1四同玉なら、3二歩。このままなら1三金から攻めていく。1三歩は、同香成、同玉、3二銀。
 先手優勢である。この変化も「2一飛」が有効に働いている。

1四歩図9
 1四歩に、“3二玉”という手も考えられ、これは先手迷いやすい変化である。まずここで3一飛成と2二飛成で迷う。どちらでも先手勝ちがあるかもしれないが、2二飛成がわかりやすい。
 2二飛成に同角なら、6三歩成、同銀、5三歩成があるので、後手は同玉。
 2二飛成、同玉、6三歩成、同銀、5三角、1五歩、同香、8五歩(次の図)と進む。

1四歩図10
 後手に飛角を持たれた上で1六桂と打たれると、先手は負けになる。
 だからここで1三歩成、3二玉、1七歩と受けておくのが正着手。
 以下、5四銀右、3一角成、同玉、5三角(次の図)

1四歩図11
 5三角(図)に、「4二桂」なら、6七飛、同と、5一金で先手勝勢。
 なので後手は「4二角」とするが、同角成、同玉だと先手まずい。「4二角」には2二ととする。これに4一玉なら、6二角成、1五香、5二歩、1七香成、同玉、1三香、2八玉、5二銀、6七飛で先手勝ち。
 よって、2二とには後手同玉と応じ、4二角成、1五香、3一角、2三玉、4五桂(次の図)

1四歩図12
 ここで4五桂(図)が好手である。桂馬を交換して3五に打つのがねらいだ。
 後手は色々な対応があるが、いずれも先手が勝てそうだ。以下、一例として4四銀とした場合の変化をを紹介しておく。
 4四銀、3三桂成、同銀、3五桂、同金、同歩、4二銀、同角成、1七香成、同玉、1二飛、1三金(次の図)

1四歩図13
 後手は1二飛で“両取り”を掛けたが、1三金(図)があった。同飛に、1六香で、先手勝勢である。

 こんな感じで、【せ】1四歩でも先手が勝てる。


升田木村戦100手
 このように、100手目の図では、次の4つの「先手の勝ち筋」があった。
  【さ】6三歩成
  【し】5一金
  【す】5三歩成
  【せ】1四歩
 総合的に判断すると、【し】5一金がいちばん勝ちやすいかと思う。

 升田幸三が著書に「敗着」と書いている「99手目2一飛」は、ほんとうは失着ではなかった。
 むしろ、勝ちを決めるための一着として、好手だった。今、そのことを証明した。

 升田が「2一飛」を解説書の中で「敗着」としているのは何故だろうか。
 本当に、この100手目の図で、もう先手に勝ちがないと思っているのであろうか。
 いや、それは信じがたい。

 『名人に香車を引いた男』の中で、升田幸三は次のように書いている。
 
〔 島での生活が長びき、気持ちにゆとりが生まれると、名人と指した香落ち、平手の二局を、私は徹底的に分析し、研究した。そして得た結論は、「木村将棋といったって、たいしたことはないじゃないか」ということだった。〕

 この文章は、〔もう一度、木村名人と指して見たい。月が連絡してくれるなら、通信将棋で戦ってみたい〕という有名なエピソードのすぐ後にある文章だが、升田はこの将棋を「私は徹底的に分析し、研究した」というのだ。
 それほどまでに悔しかったこの敗戦、それほどまでに分析、研究したというこの将棋である。
 ならば、升田が、「2一飛、2二角打」の局面図で、先手が勝てる将棋だったことをわからないはずはないと、思うのである。4つも勝ち筋がある局面で、しっかり研究してその勝ち筋が見えないなんてことは、升田レベルの棋士ならばありえない。
 我々アマ棋士でさえ、「先手に勝ちがないのかなあ」と疑問に思う図なのだから。
 ましてや、升田はこの将棋を指した本人なのである。

 つまり、「2一飛が敗着」というのは、升田の吐いた“ウソ”なのだ。


              part43につづく。
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