ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

日米合作RENTと山本マークのこと

2024年09月14日 | ミュージカル・演劇

日米合作RENT、東京公演はついに千秋楽を迎えてしまい、大阪公演もあとわずか…。

第一報を知った時から楽しみにしていましたが、想定を超える舞台になっていて、これは感想を書き残さねば…と思いました。

私は日本初演RENTがRENTとの出会いでした。作品全体が好きでしたが、特に山本マークに心揺さぶられました。

ご本人もRENTとマークのことを大事に思っていると知った時は嬉しかったなあ。

そして、いつかまた山本マークが見られることを願いながら、いつしかもう無理だろうなと諦めていたら、まさかの山本マーク復活、それもアメリカのキャストに混じって、というニュースを知って、そりゃびっくりでした。

でももう47歳…彼の演技も歌も変わりないと思っていたけれど、さすがに見た目とかどうなのか、というのは心配していました。事前の姿見てもメイク濃いな~と思ったり(^^;)

で、実際に観てみて、びっくりするくらいマークとして違和感がなかったです。日本人てやっぱり若く見えるんだな💦

1回目(2日目マチネ)に見た時は、さすがに最年長で座長っぽい貫禄がちょっとあるかな~とか思ったのですが(ちょっとですよ)、2回、3回と回数を重ねるうちに、どんどんカンパニーの中に溶け込んで行って、座長ではなく仲間の一人のマーク、になって行ってました。

歌声は昔のまま、記憶の中のそのままでした。アメリカキャストの中でも絶対聞き劣りはしないだろうと思っていましたが、本当に上手いだけでなく、全く違和感なくキャストの一員として溶け込んでいました。

英語の発音は、時々ネイティブじゃない感じはありましたが、特に歌っているとほとんど違和感なくて。何よりも、言語が英語になっても変わらずに日本語で演じていた時と同じ山本マークの演技だったのが、想定はしていたのですが、本当にすごいなと思いました。

よくある、昔一度演じた役を年を重ねた経験から違うアプローチで演じる、という感じではなく、昔演じた時から何も変わらないマークでした。彼の中にずっとマークがいたんだな、と自然に思えました。

もちろん、年を重ねたことで演技に深みが出たところもあるのでしょうが、私にとっては、昔のままのマークが帰って来た、としか思えなくて、本当に嬉しかったです。

初演から時がたつにつれて、来日公演でも、BWやOff BWの舞台でも、なんか違うな、というマークが増えていましたが、山本マークは、久々に本物のマークに会えた、そう思わせてくれるマークでした。

HalloweenとかGood bye Loveでのロジャーとのやりとりとか、What You Ownとか、Final Bの出だしとか、山本マークで見られて良かった、というのと同時に、久々に本物のマークで聴けた、という感じでした。あ、タンゴ・モーリーンも!

やっぱりRENTってマークが一番大事なんだな…ということも思いました。

昔のまま、なんて書きましたが、20数年ぶりの感慨もあってか、昔と演技が違うなと思ったところもありました。

エンジェルの葬儀のスピーチ、マークはまだ感情をあらわにする感じではなく、抑えめに話すのはずが、2回目に観に行った時からかなり感極まってしまってました。

最後(千秋楽の前日ソワレ)に見た時は、その後のHalloweenもかなり感極まって涙目になってました。いよいよ終わりが近づいていることを感じているのかな…と思いました。自分も最後だったから…

本当に、彼にとってマークは大切な役だったんだな、とひしひしと感じられました。

昔のRENTを見ていない山本耕史さんのファンの方たちが、何人も「こんなに全身全霊で演じているのを見たことがなかった」と言っていました。RENT以降の彼を見ていた私も、それはずっと思っていました。

ふと思いました。もっと早くこのような機会があったら、違う方向に可能性が広がっていたかもしれないなあと…

なぜ山本マークの復活がここまで遅くなったのか。

東宝RENTが決まった時、これで山本マークがまた見られるのでは?と思ったものですが、そういう方向にはなりませんでした。

一方で、来日公演は相変わらずの招聘公演で、山本マークの入る余地はありませんでした。

今回のような、日本のプロモーターが一からキャストを集める方式、シアターオーブはすでにやっていましたが、その実績があって初めて今回の方式での公演が実現したのかもしれないと思っています。

それに加えて、最近の彼の活躍で、「客を呼べる」と判断されたのかなあとも思います。

今だから実現できたことなんでしょうね、きっと。もちろんその裏には山本マークを復活させたいという思いを持つ方たちがいらっしゃったのでしょうけど、それが全方向に実現できる条件が揃ったのが今、だったのだと思います。

もっと早く実現していたら…という気持ちはありますが、これも宿命なのかな…

そんなことを、最後の舞台を観たあとにつらつらと思っています。

 

RENT がなぜ心を打つのか。あらすじだけ聞いても正直そんなに感動する作品とは思わないと思います。(元がオペラだし…)

RENTが心を打つのは、ジョナサン・ラーソンが実際にAIDSで亡くした友人たちへの思い、自身が抱えた葛藤、その経験の全てが物語に、音楽に込められているからだと思います。

その感動を伝えるには、やはり初演の精神を伝えるものでなければならないのだなと、今回見ていてしみじみと思いました。

時代が変わるにつれてクラシック音楽が形を変えて聴き継がれているように、もしRENTがこれから古典として上演されて行くならば、その時代に合わせたアレンジや解釈は必要になるでしょう。

でも、RENTに限って言えば、ジョナサンの思いをできる限り伝えることが一番大事なのではないかと思います。それにはやはりオリジナルの演出が一番だよな、とも思いました。

全く変えてはいけないというのではないのですが。今回も、最後にマークが映写機を客席に向けて回すなど、オリジナルと違う演出はありましたが(あれ演出なのか?山本耕史さんのアイディアではないかという気もしますが)、初演の精神を受け継いでいれば、より良い演出というのはあると思うんですよね。初演を経験していないとなかなか難しいことだとは思いますが…

そういう意味でも、初演に近い立場でのRENTを知っている山本マークがいたことは、やはり今回のカンパニーには大きかったのだと思います。

 

今回のカンパニーの印象としては、数々の来日公演やBWの舞台も何度も見てきた身としては、必ずしも今までベストのメンバーではなかったと思います。

それでも、公演を重ねるにつれてどんどんカンパニーの結束が強くなり、本物の仲間になって行く様を見ることができました。そしてそこに初演の精神を受け継いだ山本マーク。おそらく今現在、世界で一番のRENTのカンパニーだと思います。

観客の反応に育てられているんだな、ということも感じました。クリスタル・ケイさんのモーリーンも、最初からかわいかったですが、公演を重ねるにつれて、観客から愛されていることを感じることで、どんどん皆から愛されるモーリーンそのものになっていたと思います。

他のキャストでは、ジョアンのリアン・アントニオさんが良かったなあ。歌めちゃ上手いし、モーリーンに振り回される様がかわいくて。タンゴ・モーリーンの山本マークとのやりとりも本当に楽しかった。

エンジェルのジョーダン・ドブソンさんもかわいかったな。ちょっとエレガントなエンジェル。くるくるスピンしながら歩く姿がとても素敵でした。

ミミのチャベリー・ポンセさんも熱演でかわいかった。

ベニーのアーロン・ジェームズ・マッケンジーさん、最初はちょっと固いかな?と思ったけど、最後に見た時は電話でモーリーンの彼女の名前を聞いた時にやっと笑ってくれた!と思いました笑

このままお別れするのはとても寂しいと思いましたが、一期一会が舞台芸術なんですよね…

もう一度山本マークとこのカンパニーに会いたい、という気持ちはありますが、3回見られたことを思い出に、これからも頑張って生きて行こうと思いました…大げさかな(^^;)

コメント
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