ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

トールキン 旅のはじまり(ネタバレ)

2019年09月07日 | 指輪物語&トールキン
映画「トールキン 旅のはじまり」の、1回目を見た私の率直な感想を書いてみたいと思います。
本当は2回目を見てからと思ったのですが、なかなか見に行けず、まあ1回目を見た時点の感想を書いておくのもいいかも、と思って書くことにしました。

以下、もちろん映画の内容のネタバレを含みます。
あと、結構批判的な意見もありますので、そういう感想を読みたくないという方はスルーされることをお勧めします。
(そんなにすごく不満があるわけでも怒っているわけでもないのですが……)

映画を観る前に、機内上映で今更ですが「リリーのすべて」を観ました。
なかなかに衝撃的で心を打たれ、ちょっと検索してみたら、事実とはかなり改変されているのですね…まあ伝記映画ではよくあることですよね。
これを見ながら、「トールキン-」に関してもきっとこんな感じなんだろうな、とある程度覚悟しながら観に行きました。

ちょっと話が逸れますが、伝記映画って本人や遺族の許可がなくても作れるものなんですね。もちろん内容によっては名誉棄損で訴えられることもあるでしょうが、作品や楽曲の著作権の問題とは違い、作ること自体は法的に問題がないんですね。意外な穴だなと思いました…
「トールキンー」についても、公開前にトールキンエステートが「許可を出していない、内容について支持しない」と声明を出して話題になりました。
これについては、トールキンエステート側は、「作品を見ていないので作品の内容について批判しているわけではない」と言っていますし、単純に「許可を出していないから内容については(良かろうが悪かろうが)保証するものではない」という程度の意味合いなのだろうなと思っています。

そんな心の準備をしつつ観に行ったのですが…思ったよりも史実と違う、ということに違和感を持ってしまって、あまり素直に楽しめませんでした…とりあえず1回目は。先に試写会等で見た方たちも、「2回目くらいからようやく感想が言えるようになった」とおっしゃっていたので、多分2回目を観たらまた違う感想になるとは思うのですが。

1回目の率直な感想としては……美術や音楽や、言語の扱い方など、細かいところにはすごくリスペクトを感じるのに、肝心の脚本はすごい自由だな…という感じでした(^^;)あれ、なんか某映画を思い出させるぞ(大汗)
なんだかんだと脚本が一番大変なのかもしれないなと思ったり。

原作にこだわりがある人って、細かい重箱の隅をつつくようなことにこだわって文句を言う、と思われているようですが(「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」でもそんなようなことを書いてましたね…)、そうじゃないんですよね。少なくとも私は、ですが。
要は解釈違い、自分が大切に思っていて感動した部分が違う解釈で改変されていた場合に、違和感を感じてしまうのですよね。
原作と違っていても、自分が大切にしている核が同じ解釈で大切にされていれば、受け入れられるのです。

この映画に関しては、時系列や設定で史実と違う部分が多々ありますが、その全てが受け入れられないわけではないです。
個人的に一番違和感があったのは、トールキンが求めた芸術の答えが、「ホビット」、そしてそれに続くLotRであった、と思わせるような展開と演出ですかね……そんな予感はしていて、そうじゃないといいなと思っていたところだったのですが。
ご存知の方が多いと思いますが、トールキンが思い描いていた世界は今でいうところの第二紀以前の世界で、「ホビット」は最初はそれらの世界観とは無関係に偶発的に生まれたものでした。後に改訂してアルダの神話とリンクする物語になりましたが。
部屋の中に貼られたスケッチや、口ずさむ言葉などでトールキンのイマジネーションを感じさせる場面はありましたが、その行きつく先が「ホビット」LotRであるかのような脚本・演出だったので、そこが一番違和感があったところでした。
トールキンが伝説に興味を持ったのが母の影響であるかのような描写も違和感がありました。
昨年トールキン展で様々なスケッチや挿絵、地図を見たから余計に、かもしれません。彼の頭の中にある想像世界の深さに驚き、これは誰かに影響を受けたとかそういう次元ではないな、彼自身の中から湧き出てきたものなんだな、と衝撃を受けたのですよね。実はそれまでは、何だかんだ言っても言語学の教授が手すさびで書いた作品なんだろう、なんて思っていたのですが(^^;)

というところで躓いてしまったので素直に楽しめなかった部分が多いのですが、それでも良かったところもたくさんありました。
まず、トールキンの従卒の名前がサムだったこと。もちろん、サムのモデルとなった実際のトールキンの従卒たちにサムという名前の人がいたわけではないはずですが、それでもあのサムワイズ・ギャムジーそのままのような忠実で優しい従卒が「サム」と呼ばれていることになんかじわっと来てしまいました。
またとてもサムっぽい健気でかわいい従卒でしたからね…
ただ、あのジェフリーを探しに行く場面はトールキンの夢だったのじゃないかと思うし、そうであってほしいです。そうじゃないと「サムどうなったの?!」となってしまうので…(^^;)

史実と違うという点では、エディス・ブラットも相当にフィクションだろうなあと、公開前の情報から思っていたのですが、こちらは意外と気になりませんでした。リリー・コリンズ演じるエディスが魅力的だったからだと思います。
女優さんとしても演じがいのある人物を演じたいだろうと思うし、あれはあれでいいんじゃないかなと。
トールキンとエディスの絆は、もっと普通の恋愛とは違っていたのでは、と個人的には思っているのですが。

この映画が一番描きたかったと思われるT.C.B.Sの4人の友情は、戦死するメンバーがわかっているから最初から切なくて、とても良かったと思います。
出会いが階級の違いによるいじめ?とか喧嘩とか、というのはちょっとやり過ぎだと思いましたが…当時のトールキンはお金には困っていたけれど、別に下層階級ではないですしね…(上流階級でもないけど。もともとはそこそこ裕福な中産階級ですよね)
ジェフリーのお母さんとの会話は一番泣けました。

そう言えば最後に出てきたひげのおじさん誰?と思ったら、弟のヒラリーだったんですね(^^;)教えてもらってわかりました。ヒラリーのことも忘れずに出してくれたのは嬉しかったです。

映像も美しく、オックスフォードに関してはロケ地特定して次回行ったら回るぞ!と思いました(笑)

というわけでいろいろひっかかってしまって素直に楽しめなかった1回目の感想でした。
次回はもう少し落ち着いて良いところも見えて来るのではないかなと思います。早く観に行かないと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする