日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

抗夫 夏目漱石

2021-03-07 07:23:39 | 読書

 

起承転結を良い意味で無視した漱石初の、ルポルタージュ!

これは斬新でした!

しかも漱石お得意の心理描写が素晴らしい~! 主人公が若干19歳で女性問題及びに家庭問題で世捨て人となり、自殺するつもりで家出をしたら…

いきなり見知らぬ男に、「お前さん、抗夫にならないか? 儲かるよ!」と声を掛けられ、どうせ死ぬ身だから、と一つ返事でついていくんですねぇ。

裏表紙に説明してある通り、見知らぬ青年が漱石に語った実体験を小説にしているのです! そういえば、以前、NHK総合で放送された長谷川博己さん演じる漱石も、こんなシーンがありました。ドラマ『漱石の妻』の妻役は尾野真千子さん! お二人とも適役で名演技でしたね! 大河ドラマ麒麟がくる、でも共演していましたよね。麒麟ロスです…とほほ…

人間、死ぬ気になりゃ何でも出来る!と幼い頃から結構、耳にしてきましたが、(一体、どういう家庭環境⁉)現代のコロナ禍で自殺を選んでしまうほど苦しんでいる人々に何らかのエールとなりはしないか…と思いながら読みすすめました。

主人公は一つ返事で「はい」と受けたものの、抗夫にまで成り下がるのか…という潜在意識も見え隠れします。なにせ元は教育も受けたお坊ちゃんですから。 鉱山に辿り着くまでの長き道のりを どのような心境で、また、一緒に歩く3人(最終的には)や、途中で出会う人間を観察しながらの、心理学者顔負けの精神、或は思考分析。これは読ませます!

人間、生きていれば、お腹が空く、という事実を今更のように実感する主人公。そりゃそうでしょう。これだけ歩かされれば…途中、何軒も飯屋の前を 案内人が通り過ぎます。

次は入るかも、いや次か…腹が減っていると自分からは言い出せない主人公。最後の飯屋を通り過ぎればあとは山道の奥深くへ…今度こそ…と期待して覗くも、案内人は飯屋の中にいた男に 「抗夫にならないか? 儲かるよ」と声を掛け… なんだ、自分だけが特別じゃなかったのか、全く同じ台詞で勧誘する様子を見て、自分が第三者となり自分を眺めている気になるのですね。上手いな、漱石!と感心しつつ、(上から目線で御免なさい、明治の文豪、漱石先生!)と謝り、本から目が離せなくなりました。前回の読書体験とは正反対!(グレート・…)

このあと、勇気を出して腹が減ったと訴えた主人公は芋屋で買ってもらった芋を夢中で食べ…その様子が「喉に詰まらせるよ」とツッコミを入れたくなるような勢い。余程、空腹だったのね。そういえば、食欲不振の殿に、一休さんは次々と仕事を与え働かせたのち、いつもの小僧メシを殿に提供!それを「おいしい!この世で一番うまい!」と殿に言わせたシーンが頭をよぎり… ひたすら歩けば(働けば…家事でも庭仕事でも何でも)お腹が空く。食欲も出る! 思い悩む暇はないのでは?と、いかに精神を健全な方向へ向けるか? 悩める現代人へウォーキングの勧めをして頂いたような気分。 勿論、漱石はそんなつもりはなく、このシーンを書いていることは分かりますが。

山の中の牛小屋レベルの場所で一晩を明かし、朝飯も食べず、先を急ごうという案内人。「朝飯は? 顔を洗う場所は? 他の二人はそのような生活習慣はないとみえる。このように朝起きて、顔を洗わないことが普通となっていき、底へと落ちていくのか… と。主人公でなくても、当たり前の習慣がどうでもよくなる心理って、いわゆる鬱鬱な気分になりかけていく過程と似ていて、「これじゃいけない!」と必死に床を磨いたり、2時間ウォ―キングして気分すっきり!再び健康になったり… まっ、人間生きていれば必ず試練はあります、っていうか試練は繰り返させるもの。どう対処するかは自分次第。 自殺なんて考えるのは良しましょう。

 

しかし主人公は地獄の穴の中へ…散々からかわれ、南京虫に刺され、抗夫たちに「帰れ!」と言われたのに。では、一体、どうやって生還したのか!? そこには、ある出会いがあったのですね。この先はここには書きませんが、漱石が訴える痛烈な社会批判も含めて… 

そこは読んでのお楽しみ、ということで♪ 

これにて筆をおきます。

もう~本当に役立つことが詰まったルポです。

Comments (20)
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