青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 12

2024-05-31 08:07:46 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 12



今回から青山(2014)仮分類の『「舟型」の上唇を持つ種』のグループ(「舟型群」と略称)に入ります。

「中国植物志」の分類では、幾つかの種が『「嘴状」上唇を持つ種』のグループ(「嘴状群」と略称)と入り組んでいますが、便宜上、青山の検索リストの順に沿って紹介していきます。



1-2上唇は舟型(棍棒状を含む)

1₋2-1上唇は太い棍棒状で下唇は未発達、葉の基部が合着し箱状になる【Group ㉓】

1₋2-1-1黄花

斗叶群 Grex Cyathophora 华丽系 Ser. Superbae 大王系 Ser. Reges

〖56〗 P.rex 大王马先蒿

写真⓵


雲南省大理蒼山(高山稜線)alt.3500m付近. Aug.1,1995

写真⓶⓷




雲南省西北部翁水(四川省境近く)alt.3700m付近. Jul.16,2014

〖56-57-58〗は、Pedicularis属の中で特異な位置づけにある同一種群(本書では同一種とした)の色違い(黄花と赤褐色花)の種。草丈は極めて高く、数10㎝から、時には人の背丈を超えるほどになる。茎は太く毛を欠き滑らか、葉は浅い重鋸歯を伴って羽状に深裂、茎の下部から茎頂まで、多いものでは数10段に亘って、3~4枚が輪生する。葉(苞葉)の基部は互いに合着し大きな四角い箱状となる。花は「箱」の中から3~4個づつ顔を出し、萼筒部は外側からは見えない。花は、下唇が退化し、大きく発達した上唇の腹面に、痕跡的な3片が認め得る。上唇は先半の太い棍棒状で、「箱」の中から四方に突き出す。

1₋2-1-2赤褐色花

1₋2-1-2₋1上唇の毛は疎ら

〖57〗(same species as the 56)

写真⓸⓹⓺⓻⓼










四川省ミニャコンカ(海螺溝氷河末端下に発達する冷温帯原生林の林床)alt.3100m付近. Jul.2,2010

赤褐色種〖57〗および〖58〗は、基本的な構造は黄色種〖56〗と共通するが、植物体や花はより豪壮。Pedicularis属中の最大種と思われる。通常、鬱閉した暗い環境に生育し、周囲に溶け込んで、すぐ近くに生えていても見落としてしまうことがある。棍棒状の上唇の豪壮さは、並んで生えていた〖21〗Pedicularis davidiiの細い嘴状上唇と比べれば、一目瞭然。両者が同じPedicularisに所属するとは、とても信じられないほどの、印象上の差異がある。〖57〗(海螺溝産および康定産)と〖58〗(四姑娘山産)は、比較的近隣な位置関係にある3地域で撮影を行った。花色や苞葉基部の形状などには有意の差があるようにも思われるが、同じ地域、例えばミニャコンカ海螺溝の個体でも差異の幅が大きく、おそらく全て同一種と考えるべきだろう。

*ピンクの花は〖21〗Pedicularis davidii (〖57〗Pedicularis rexの茎は、写真中央上辺から、さらに上方に高く伸びている)

写真⓽⓾




四川省康定alt.3000m付近. Jul.12,2010

1₋2-1-2₋2上唇に毛を密生

〖58〗(same species as the 56)

写真⑪⑫




四川省四姑娘山(山麓の渓流沿い林縁)alt.3000付近. Jul.30,2010

〖57〗に似るが、花色が淡く、軟毛を密生し、「箱」状部の概形とその縁に流れる分離葉状部の基部の角度が、よりスレンダー。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 11

2024-05-29 21:39:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 11



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は径2㎝未満、苞葉の基部は合着しない【Group Ⅴ】

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は垂れ下がり気味で、側片の脊部は盛り上がらない

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1-1花は黄色

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 尖果系 Ser. Oxycarpae(以下24を除き25まで同じ)

〖19〗 Pedicularis semitorta半扭卷马先蒿






四川省黄龍渓谷alt.3200m付近. Jul.4,2005




四川省黄龍渓谷alt.3400m付近. Jun.24,1989

以下(前項の〖18〗Pedicularis superbaを含む)、〖1~17〗同様に嘴状の上唇を有し、ことに細長く時計と反対回りに弧を描いて湾曲するという点では〖4〗Pedicularis siphonanthaや〖5〗Pedicularis longifloraと類似するが、草丈が高く、総状に多数の花を付ける種を紹介していく。10数㎝から高いものでは1mを超す茎に、数枚の葉が互生・対生・輪生し、茎の上部の葉腋から派生した短い花茎の先端付近に、紡錘状の萼筒と筒部の短い花をつける。〖19〗Pedicularis semitortaは、茎が瓜肌模様で、数枚の葉が輪生。萼筒の上縁は細く突出する。花は下唇が淡い黄色~黄色、中央裂片は幅広く、側裂片共々やや垂れ下がってエプロン状を呈する。上唇は基部やや膨らんだ濃い黄色。

**「中国植物志」の分類では、本種の所属する半扭卷系 Ser. Semitortaeと、〖53〗密穗马先蒿Pedicularis densispicaが所属する蒿叶系 Ser. Abrotanifoliaeの2つのシリーズで、直管群 Grex Orthosiphoniaを構成する。

**写真のクオリティの関係から独立項目での紹介を控えたが、下写真右下方の濃紫色の花も、Pedicularis属の種であろう(花は小型で茎の上部に総状に密生し上唇が舟型)。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1-2花は白色(嘴状上唇は鮮紅色)

〖20〗 Pedicularis oxycarpa 尖果马先蒿




雲南省香格里拉近郊、標高2900m付近. Jul.9,2007

このあと紹介する〖23〗Pedicularis tortaと同じく、淡白~黄色の下唇と濃赤紫色の上唇を持ち、以下の各種同様に下唇の中央裂片が小型だが、側片は垂れ下がり気味で、嘴状上唇は余り上向きには巻かず、花冠上部から派出するように見える。その点では〖19〗Pedicularis semitortaと共通したイメージをもつ。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は横に広がり、脊部が上方に盛り上る

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1草丈は1m前後になる

〖21〗 Pedicularis davidii大卫氏马先蒿






四川省夹金山alt.3900m付近.Jul.30,2010












四川省ミニャコンカ(海螺溝氷河末端下)alt.3100m付近. Jul.3,2009

〖21~24〗は、下唇の中央裂片が小型で、側裂片が横上に張出し、後方にも伸長して花冠背方を覆う(そのため嘴状上唇が花冠の中央近くから突き出しているように見える)。上唇は下唇の色に関わらず黒みを帯びた紫赤色で、よりスムーズに下右回りに円を描くように湾曲する。萼筒上縁に小さな葉状片が派出する。〖22〗および〖25〗も同一種。〖21〗と〖22〗は、花の地色がピンク(一部白色)ということで共通するが、〖21〗は著しく草丈が高くなることから、一応別項目で扱っておく。〖21〗とした2地域の集団間にも、ある程度の有意差が認められるかも知れない。夹金山産は森林限界を超えたあたりの日当たりの良い山腹の路傍に生育、草丈は1mを超え、非常に多数の花を総状に密生する。ミニャコンカ産は氷河末端の渓流沿い湿性地、純白の花を含む草丈1m近くになる発達の良い株が群がって生えていた。夹金山産に比べれば小ぶりで、〖22〗との中間的な印象を持つ。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2草丈は10~数10㎝

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1花は濃紅色、花序に密につく

〖22〗(same species as the 21)

〖21〗に似るが、草丈は低く10~数10㎝。下唇は赤紫色。茎の上部と萼筒は濃紫。〖21〗および〖25〗と同一種。








四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010








四川省黄龍alt.4200m付近. Jul.6,2005

下唇上半部が白色。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2花は黄色または淡紅色、花序に疎らにつく

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1黄花

〖23〗 Pedicularis torta扭旋马先蒿






四川省夹金山alt.3700m付近. Jul.30,2010




四川省九賽溝alt.2500m付近. Jul.31,1991

〖21〗〖22〗〖23〗〖25〗Pedicularis davidiiと基本的な差はないが、花はやや疎らにつく。下唇は淡黄色。茎と萼筒は淡緑色。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2白花(ごく淡い紅色を帯びる)

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は白(淡い紅色)一色

〖25〗(same species as the 21)










四川省西嶺雪山alt.3100m付近. Aug.6,2009

下唇は白色。紫色紋はなく、茎や萼筒が濃紫色を帯びる。〖26〗Pedicularis moupinensisと混在する(第8回参照)。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇の基部が濃い紅色

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 细裂系 Ser. Dissectae

〖24〗 Pedicularis petitmenginii 伯氏马先蒿




四川省夹金山 alt.4200m付近. Jul.31,2010

下唇は白色。基部に濃紫色の2個の斑紋がある。茎と萼筒は淡緑色。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 10

2024-05-29 09:00:00 | 雑記 報告

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 10

Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 10



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2花は茎の上部や茎頂に密生する

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は波打つ【Group Ⅶ】

1-1-2-2-2-2-2-2--2-2-2-1-1上唇は白色

〖16〗 Pedicularis rhinanthoides subsp.labellate 拟鼻花马先蒿

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 拟鼻花系 Ser. Rhinanthoides

写真⓵


四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010

〖17〗と同一分類群。葉は重鋸歯を伴った羽状中裂、高さ10数㎝の茎頂に濃赤褐色の斑点をもつ淡黄褐色の紡錘状萼筒が5~10ほど束生、その先に短い花筒部を伴った花が咲く。下唇はピンク色で、3片とも幅広く広がって重なり会い、若い時点から萎れ気味に波打ち、青紫色の細脈をめぐらす。嘴状上唇は純白、基部から立ち上がり、中央が膨れて、先半は極めて細い管状となって内側へ曲がりながら下伸する。

1-1-2-2-2-2-2-2--2-2-2-1-2上唇は下唇と同じピンク色

〖17〗(same as the 16)

写真⓶-⓻












四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010

写真⓼-⑩






四川省雅江~臥龍峠間(渓流源頭部の草地)alt.3700m付近. Jun.7,2010

写真⑪


四川省塔公~八美間(日当たりの良い高山草原)alt.4200m付近. Jul.24,2010

〖16〗と同一分類群。葉は羽状中裂、重鋸歯の先端が鋭く尖る。高さ10~数10㎝ほどの茎頂に、膨らんだ紡錘状の萼片が5~10ほど束生(詰まった総状~輪状)、その先に余り長くはない花筒部を伴った花が咲く。上方から見ると、5~10程が丸く輪生する。下唇は3片が余り分離せず幅広く広がり、若い時点から萎れ気味に波打ち、ピンク~濃ピンク色、数本の赤褐色の脈があり、中央付近は白い。上唇は〖16〗に比べ、基半部の立ち上がりや中央部の膨れは顕著ではなく、先半の細い管状部は、より捻れて曲がりくねる。萼筒は、巴朗山産で最も濃く濃赤紫褐色、雅江産では疎らな斑点を生じ、塔公産では斑紋を欠き全体が淡緑色を呈する。



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は平坦

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は径3㎝超、苞葉は合着【Group Ⅵ】

〖18〗 Pedicularis superba华丽马先蒿

斗叶群 Grex Cyathophora 华丽系 Ser. Superbae

写真⑫⑬




雲南省白馬雪山alt.4200m付近. Jul.30,2015

茎の高くなる種では最も大型の花をもつ種の一つ。茎高数10㎝。葉は重鋸歯の羽状全裂、4~5枚が輪生し、基部が合着して大型の碗状となり、葉腋に4~5個の花をつける。萼筒は碗状の苞葉の内側に収まって外からは見えにくいが、苞葉と似た姿をしているように思われる。下唇は薄紫がかったピンク色で、径3~4㎝、左右に幅広く、背縁は盛り上がる。中央裂片は側裂片より小さく、重なり合わない。上唇は嘴状で、強く内側に湾曲し、尖端は濃色を帯び鋭く尖る。シャクナゲや針葉樹の灌木を交えた急斜面の高山礫地に、ぽつんと生えていた。

**大型種で、葉の基部が合着して箱状になることなど、〖56-58〗Pedicularis rexとの類似点が多い。本書では上唇の形状から両者を遠い類縁に位置づけたが、「中国植物志」では両者を(本書で紹介した他の全ての種とは異なる)同一グループ(Grex Cyathophora斗叶群、ただし別Siris)に置いている。









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 9

2024-05-28 21:03:46 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 9



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2萼片は合着して壺状

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1花は10段以上に亘り均等に基  部から茎頂に向かい大型の萼筒を持つ

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1-1萼筒や花は淡黄白色、花筒は太い【Group Ⅻ】

〖28〗 Pedicularis smithiana钩喙马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 短叶亚群 Subgrex Brachyphyllum 短叶系 Ser.Brevifoliae

写真⓵-⑤










四川省西嶺雪山(稜線上)alt.3200m付近. Aug.6,2009

茎高は1mほどに達し、細長く直立または斜上、茎の下半部には、不明瞭な重鋸歯を伴った羽状深裂の4枚の葉が輪生。茎の上半部には、長大な花序が形成され、ほぼ均等間隔に20~30段に亘り、苞葉片が対生または輪生、葉腋に、凌のある球形の萼筒を3~4 個つける。萼筒の上縁には、数枚の葉状の緑色裂片が生じる。茎・苞葉・萼筒には細毛を伴う。萼筒の開口部から、長さ 1cmほどの、他の各種に見られない太い花筒が真横に伸び、その先に花冠が開く。下唇はほぼ均等丸く3裂、上唇は太い筒状のまま伸長したあと、屈曲して細い管状となり下方に向かう。植物体の上半部は、茎・苞葉・萼筒・下唇・上唇とも白色。萼筒上縁から派生する葉状鱗片のみが緑色を呈する。

**青山(2014)を著した時点で、撮影地域が単純ミスのため誤って表記されていたことから、尹民氏による同定が保留されていた。その後、青山自身で同定を試み、表記の種であることが判明。〖14〗〖15〗(以上第7回で紹介)〖32〗〖54〗〖55〗(後述予定)とともに短葉群に所属するが、青山の仮検索に沿って、ここに記しておく。



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1-2紅花で萼筒は緑、上唇は捻じれる【Group Ⅺ】

〖27〗Pedicularis dichotoma 二歧马先蒿

多裂叶群 Grex Polyschistophyllum 二歧系 Ser. Dichotomae

写真⓺


雲南省白馬雪山(中腹の石灰岩崩壊地)alt.2800m付近.Sep.29, 2005

雲南省白馬雪山中腹の石灰岩崩壊地で撮影。茎高数10cm。葉は数枚が輪生、重鋸歯を伴った羽状全裂。茎の上部には、葉腋ごとに、狭被針状で全縁の一対の苞葉と、極めて大型で淡緑色の2個の壺状萼筒をつける。花は短い筒部があり、下唇はごく淡い紫色、裂片は余り分離せず、平板状に斜め下に広がり、中央裂片の部分が短く突出する。嘴状上唇は濃い赤紫色、基部近くで強くねじ曲がったのち、後方へ波打ちながら細長く伸長する。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 8

2024-05-28 09:00:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 8



☆Pedicularis chamissonisヨツバシオガマ




(撮影データ確認中)




北アルプス白馬鑓温泉 Aug.24,1993




北アルプス穂高岳沢 Jul.25,1986




(撮影場所確認中) Aug.3,1992




(撮影データ確認中)








岩手県早池峰 Jul.27,1993

ヨツバシオガマは日本の亜高山~高山帯で最もポピュラーなシオガマギク属の種だが、分布は日本列島(本州中部以北)と北の延長地域(サハリンなど)に限られ、中国大陸には分布していないように思われる。所属するとすれば轮枝群 Grex Cyclocladus 短唇亚群 Subgrex Brachychilaで、中国植物志のリストの中から対応種を当たってみたが、現時点では特定できないでいる。日本産のヨツバシオガマ自体も、近年のDNA解析に拠って、エゾヨツバシオガマP. chamissonisとヨツバシオガマP.japonicaに分割される傾向にある。ほかにも、レブンシオガマ、クチバシシオガマ、ハッコウダシオガマなどの下位分類群が知られているが、ここではそれらの区分は行わず、暫定的に全てをヨツバシオガマP. chamissonisとしておく。



1-1-2-2-2-2-2-2花序に粒状の塊は混じらない

1-1-2-2-2-2-2-2-1茎が多数に分岐する

1-1-2-2-2-2-2-2-1-1下唇はエプロン状に垂下する【Group Ⅷ】

〖26〗Pedicularis moupinensis 穆坪马先蒿

轮枝群 Grex Cyclocladus 短唇亚群 Subgrex Brachychila 穆坪系 Ser. Moupinenses

〖26〗穆坪马先蒿Pedicularis moupinensis


















四川省西嶺雪山alt.3200m付近. Aug.6,2009(1/3枚目写真左と2枚目写真右個体は〖25〗Pedicularis davidii)

撮影地の四川省西嶺雪山の稜線沿いでは、後ほど紹介する〖25〗Pedicularis davidiiと常にセットで生えていた。全体のサイズがほぼ共通し、花がやや歪で、一見〖25〗の異常形か、開花末期の個体のように見えるが、これが正常な姿である。直立した一本の茎に総状の花序を付ける〖25〗と異なり、茎は良く分枝する。葉は羽状に全裂し、小葉も深裂、4枚づつ茎に輪生する。葉腋から伸びた各茎の上部に、総状に10前後の花からなる花序をつける。苞葉は一対で緑色。先端が掌状に広がる。萼筒は紡錘形、茎とともに赤紫色を呈し、上縁の鋸歯はごく短い。花は筒部を欠き、薄紫色。下唇の形は特異で、3片が分離しないままエプロン状に垂れ下がり、中央裂片に当たる部分が凸出する。嘴状上唇は中央より基部に近い部分で下方に折れ、やや膨れたのち細い棒状となって前方に伸長する。個々の花の形は日本のヨツバシオガマによく似ている。



1-1-2-2-2-2-2-2-1-2下唇は平開する【Group Ⅸ】

轮枝亚群 Subgrex Cyclocladus 纤细系 Ser. Graciles Maxim.

〖30〗纤细马先蒿Pedicularis gracilis




雲南省玉龍雪山(山麓の草原)alt.3100m付近. Aug.4,2004

花は小さくて目立たないが、草丈が高く1m前後になり、茎の途中に4~5枚が輪生する羽状葉の葉腋から、輪状に4~5本の側枝が分岐し、草原の中にあってひときわ目を惹く。萼片は茶褐色。花は主茎の上半部や側枝の葉腋ごとに輪生し、淡紅色、嘴状上唇を持つ種の一般型で、下唇は丸く3裂、上唇は立ち上がったあと先端に向かって余り捻じれることなく下降突出する。



**輪枝亜群には、ほかに青山の仮分類では舟形群として扱った〖34〗多花马先蒿Pedicularis floribunda

(山萝花系 Ser. Melampyriflorae)、および日本のセリバシオガマPedicularis keiskeiが含まれる。それらについては青山の検索リストに沿って、後ほど紹介する。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 7

2024-05-27 20:42:38 | 雑記 報告

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 7

Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 7



1-1-2-2-2-2茎は立ち上がる

1-1-2-2-2-2-1花は長い筒部がある【Group Undecided】

〖14〗P.urceolata〗坛萼马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 拟短叶亚群 Subgrex Brachyphylliastrum 坛萼系 Ser. Urceolatae






四川省雅江~新都橋間(臥龍峠)alt.4400m付近. Jul.20,2009

全体としては〖4~11〗に類似するが、背の低い茎の頂に、数個の花と多数の葉を束生する。葉は羽状に浅裂、若い葉は粒状の塊となり、濃赤紫褐色、展開後は中央が緑色で縁のみが赤紫褐色を残す。花は長い筒部を持ち、濃ピンク~紫紅色。下唇の中央片は小さく、両側片が大きく広がり、中央片を覆う。両側片は背方にも突出し、基部を取り囲んで、下唇全体として円形を呈する。嘴状上唇は、一度直立した後、中央部で上下に幅広く膨らみ、先半部は細長く下方へ伸長する。



1-1-2-2-2-2-2花は長い筒部を欠く

1-1-2-2-2-2-2-1花序に未展開苞葉?が混在【Group Undecided】

〖15〗 P.confertiflora 坛萼马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 短叶亚群 Subgrex Brachyphyllum 弱小系 Ser. Debiles








雲南省白馬雪山(高山草原中の砂礫斜面)alt.4300m付近. Jul.30,2015

〖14〗Pedicularis urceolataに類似するが、花筒部を欠き、束生する茎の中部に集まった瘤状の若い葉(苞葉?)の間から、直接数個の花冠が開く。茎の基部から生じる展開した葉は、羽状に浅裂、瘤状の葉塊と同じ濃赤紫褐色。花色や形は〖22〗に類似、嘴状上唇は、やや捻れて伸長する。

**このあと、「中国植物志」の「短葉群短葉亜群に所属する種としては、青山(2014)が舟型群【グループ22とグループ18】に置いた、【32】【54】【55】が続くが、本連載では便宜上青山の検索表に沿って述べて行くため、それらの種の紹介は後ほど行い、次回は〖26〗「輪枝群 短唇亜群」の坪马先蒿Pedicularis moupinensis(および日本産のヨツバシオガマPedicularis chamissonis)に移る。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

近所の蝶 52番目の撮影種 ミズイロオナガシジミ

2024-05-26 16:19:29 | 雑記 報告



ゼフィルス(シジミチョウ科ミドリシジミ族)は、去年は一種も撮影出来ませんでした。平地産の普通種、ミズイロオナガシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミ(以上、クヌギ・コナラ食)、ミドリシジミ(食樹ハンノキ)、ウラゴマダラシジミ(食樹イボタ)あたりは、いてもおかしくはないのですが、どの種も一頭も見ることが出来ませんでした。

東京のアパートの近所でも、2021年の夏、霞丘陵の駐車場脇のコナラの樹でミズイロオナガシジミを、青梅駅の駅裏のコナラの樹でオオミドリシジミを撮影しただけで、ほかの種はどれも出会えなかった。ところが2022年の夏に(ギリシャから戻って福岡に来る直前に)再訪してみたところ、アカシジミもウラナミアカシジミもミズイロオナガシジミも、嘘みたいにドッサリ発生していたのです。著しい年次変動があるのかも知れません。

去年の福岡。近所の公園の入り口にクヌギの疎林があって、いかにもゼフィルスが居そうな環境なのです。せめてアカシジミかミズイロオナガシジミと出会えればと、ずっと注意を払っていたのだけれど、影も姿もなかった。

全国的な普通種ではあっても、九州には少ないのかも知れません。ということで、今年は端から遭遇を期待していなかったのですが、先日(5月23日)、部屋から徒歩2分の道端のクヌギとコナラの樹の下の落ち葉の上に、小さな白い蝶がとまっているのを見つけた。もしやと思って近づいて確認したら、ミズイロオナガシジミでした。

羽化直後の、出てきたばかりの個体なのでしょうか?それとも下に降りて休んでいたのでしょうか?繁みの枝や葉が邪魔になって、まともな写真が写せません。やがて飛んで行ってしまった。翌日(昨日)も、今日も、同じ所で見かけたのだけれど、すぐに飛び去ってしまって写真は写せませんでした。

今日(5月25日)、部屋から徒歩5分の公園入口で、クヌギの樹の下の枯葉の上に止まっているのを見つけました。やはりすぐに飛んで行ってしまって戻って来ません。相当に敏感なようです。

ペットボトルの麦茶を飲みながら、ふと前を見たら、湖畔のクヌギ葉上に、また一頭止まっています。でも手前の枝葉が邪魔になって、上手く写真を撮ることが出来ません。結構苦労して、左手で枝を引っ張りながら、右手の掌と指でスマホを操作して、アクロバット体制で撮影に臨みました。

スマホを使い出してから、目の前にじっとして止まっているチョウを、“どう考えても絶対に失敗するはずはない”という状況下で撮影するのですが、念のためにと100枚以上写しても、1枚もまともに写っていない(ピントが合っていない)、ということの繰り返しです。

今回は、最悪の条件下です。どうせまともには写っていないだろう、という前提で、20分余かけて200枚近く写したのですが、何故かほとんど全てがきちんと写っていた(スマホ、気まぐれですね)。

それに、枝を揺らしながら至近距離(5センチ前後)で撮影を続けたので、当然すぐに飛び去ってしまうだろうと思っていたのですが、意に介せずずっと同じ葉上にとまっていました。

その後、池を一周して、シルビアポイントのチェックをしたりして(ミズイロオナガシジミは、ほかにも数頭の個体に出会いました、去年全く姿を見なかったのが、嘘の様です)、撮影開始時点から1時間10分後に戻ってきたら、まだ同じ葉上に止まっていた。

敏感なのか、鈍感なのか、よく分からんです。



23日、最初に出会った個体も、枯葉の上をヨロヨロと歩いていたので、撮影は楽勝と思っていたのですが、飛び去ったあと戻ってこない。入れ替わるように別の蝶(サトキマダラヒカゲ)がやって来て、僕の腕にとまって汗を吸い始めました。

ミズイロオナガシジミが戻ってくるのを待つ間、それを撮影することにしました。ただ手に止まっている蝶を写すだけだと能が無いので、周りの環境を入れようと思ったのですが、スマホの角度の問題で僕の顔のほうに向いてしまいます。それもまあ良いかと、僕の顔も写し込んで撮影することにしました。

勿論主役は僕の顔ではなくて蝶のほうです。ところが、幾ら蝶にピントを合わせても、シャッターを押す瞬間に顔のほうにピントが移ってしまいます。意地になって、14分間に176枚、なんとか数枚が蝶のほうにピントが合っていました。何でもかんでも人間中心にセットされてしまう、という現代文明の宿命が如実に表れているわけです。



ミズイロオナガシジミに話を戻します。

静止時に翅を開くことはまずありません。たまにはあるのかも知れませんが僕は見たことが無い。ゼフィルスのうち、いわゆる「高等ゼフィルス」と呼ばれている、雄の翅表が金属光沢に煌めく各種(“ミドリシジミ”と名の付いた種とウラクロシジミ)は静止時に良く翅を開くのですが、「下等ゼフィルス」(雌雄の外観が類似し、雄は顕著な占有飛翔を行わない)の多くは翅を閉じたままのことが多いようです(ウラゴマダラシジミは開く)。

ミズイロオナガシジミの翅表は、雌雄とも鈍い灰黒褐色です。裏面は白地に黒帯。なのに「水色」と名が付いている。なぜに水色?と訝るのですが、実はピッタリの名前。飛んでいる時は、まさしく水色に見える(ルリシジミと区別が困難なほどです)。(灰褐色+白+黒)×飛翔で「水色」、不思議だけれど、事実なのです。

属名はAntigius(アンティギウス)。柴谷篤弘博士の命名です。僕のコードネームでもあるIratsumeイラツメ(郎女)を初め、Wagimoワギモ(吾妹)、Araragiアララギ(茂吉/赤彦/健吉)、Favonius(Zephyrusのラテン語読み)などと共に命名されました。Antigiusは、博士の恩師・杉谷岩彦教授(スギタニルリシジミに献名されている)のSUGITANIを組み替えてANTIGIUS。



典型的な東アジア分布パターンを示す、東アジアを代表する属の一つです。

日本海周辺地域(北海道₋九州と、対岸のロシア沿海州・朝鮮半島・中国東北地方)+長江流域(華東地方・華中地方を経て中国西南部)および台湾に分布するミズイロオナガシジミAntigius attiliaと、ほぼ同じ地域(ただし日本では山地性で、北海道に分布を欠き、九州では霧島山系のみ)に分布するウスイロオナガシジミA.butleriから成ります。共に食草はブナ科Quercus属(前者は主にコナラ、クヌギ、後者は主にカシワ、ナラガシワ)。

近年台湾固有種として新種記載されたA.jinpingiは、♂交尾器の基本形状に於いてウスイロオナガシジミとの間に確たる種差がなく、僕は同一種に含めても良いと考えています(裏面の斑紋も極めて発達が悪いことを除けば同一パターン)。

また、中国とミャンマーから、小岩屋敏氏による2新種(A.cheniとA.sizuyai)が記載されていますが、僕は詳細を把握していないので、言及は保留しておきます。

クルミを食草とするオナガシジミAraragi entheaとは外観がよく似ています(ことにウスイロオナガシジミ)が、類縁的には特に近くはなく、むしろダイセンシジミ(ウラミスジシジミ)Wagimo signatusやタイワンウラミスジシジミW.sulgeriと類縁が近いように思われます。

僕が中国四川省(青城山)で記録し、新属新種である可能性を示唆したシロモンオナガシジミは、後にオナガシジミ属の一種Araragi sugiyamaeとして新種記載が成されましたが、雄交尾器の形状からは、明らかに別属に置かれるものと考えます(AraragiとAitigiusの中間的形状、食草はクルミ属)。

なお、ミズイロオナガシジミは、僕は四川省北部山岳地帯(九賽溝)で撮影。日本産に於いても裏面の斑紋パターンが多様なことから、特に区別をする必要はないと思われますが、その前提で考えても、なんとなく独自の特徴を示しているように感じます。












ミズイロオナガシジミ 福岡県飯塚市 May 25,2024






ミズイロオナガシジミ(別個体) 福岡県飯塚市 May 25,2024






ミズイロオナガシジミ 東京都青梅市 Jun.1,2021






ミズイロオナガシジミ 山梨県日野春 Jul.3,1975






ミズイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






ミズイロオナガシジミ (撮影場所確認中) Jul.2,1991








ミズイロオナガシジミ 中国四川省九賽溝 Jul.31,1991








ウスイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






ウスイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






シロモンオナガシジミ 中国四川省青城山 Jul.29,1991






ダイセンシジミ 広島県冠高原 Jul.12,1993






タイワンウラミスジシジミ 中国浙江省清涼峰 Jul.12,2018






ミズイロオナガシジミ 福岡県飯塚市 May 23,2024














サトキマダラヒカゲ 福岡県飯塚市 May 23,2024







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 6

2024-05-26 09:00:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 6



【10‐11】を青山(2014)では〖4‐9〗と同じ【Group Ⅲ】に含めたが、「中国植物志」では〖1‐9〗の「根葉群」とは異なる「長茎群」に含められる。また青山が【Group Ⅳ】とした【12‐13】も、同じく「長茎群」に所属する(系の段階で異なる)。



1-1-2-2-1-2羽状葉の裂片は大きく、下唇の中央片はごく小さい

1-1-2-2-1-2-1嘴状上唇は立ち上がる

〖10A〗 Pedicularis geosiphon地管马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae






四川省黄龍渓谷alt.3300m付近 Jul.5,2005

〖10B〗 Pedicularis.macrosiphon大管马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae




四川省ミニャコンカalt.3100m付近 Jul.2,2009




雲南省梅里雪山雨崩 alt.3300m付近 Jun.12,2009

写真が不鮮明なため断言はできないが、とりあえず同一種〖10〗とした。いずれも渓流沿いの林床の湿った苔上に生える。〖4~9〗同様に草丈が低く、花筒は細長く伸び、上唇は嘴状になるが、複葉は全裂し、各小葉は幅広く、互いに離れて位置し、羽状複葉に近い状態になる。葉面は比較的滑らかで、小葉の重鋸歯は鋭い。花は余り集まって咲かず、通常一株に1~数花。花色はピンク、喉の周辺が僅かに白い。下唇は平開し、中央裂片は側裂片より小さな楕円形、側裂片は幅広い。下唇の中央線に沿った部分が盛り上がる。嘴状上唇は、一度立ち上がって中間部でやや膨らみ、順次細まって下後方へ向けて突出する。後半部は濃い赤褐色を呈する。

**〖10A〗と〖10B〗を青山は同一種としたが、尹民の指摘に従い別種とする。



1-1-2-2-1-2-2嘴状上唇は下唇の上に寝る

〖11〗 Pedicularis muscicola 藓生马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae








陝西省秦嶺山中の渓谷沿いalt.1500m付近. Apr.21,2010

全体として〖10A〗Pedicularis geosiphon/〖10B〗Pedicularis macrosiphonに似るが、植物体が頑健な印象で、全裂する羽状葉は長さ10㎝を超し、長い柄を持ち放射状に開出する。その間から数本が集まって伸びる花茎状の花筒とともに、毛を密生する。萼片・苞葉片は未確認(〖10AB〗も)。寫眞で見る限り、花筒基部には小さな葉のようなものが集まっていて、それが苞葉片に相当するのかも知れない。下唇は中央裂片が小さく、全体のプロポーションは〖10AB〗と共通するが、側弁は上下により幅広く、縁は内側へ軽くウエーブする。嘴状上唇の基部は、余り顕著には立ち上がらず、順次細まりながら、向かって右に曲がりつつ下方に伸長する。基部の膨らんだ部分から、盲腸のような小突起を派出する。上唇も下唇同様のピンク色。本種は、四川省・雲南省には分布しない。



1-1-2-2-2花は葉腋につく

1-1-2-2-2-1茎は立ち上がらず花は長い筒部を欠く【Group Ⅳ】

1-1-2-2-2-1-1花は一様にピンク

〖12〗 P.axillaris 腋花马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 腋花系 Ser. Axillares






雲南省白水台alt.2400m付近. Jun.2,2009

1-1-2-2-2-1-2花は白い斑がある

植物体の大きさは〖4~11〗と同程度、花筒は伸長せず、萼片は花冠基部の葉腋から伸びた花茎の上部に存在する(花期の後期になって花筒が伸長する可能性もあるが、チェックした個体に於いては全てが萼片から直接花冠が開いていた)。茎は地を伏せ、多毛で重鋸歯をもつ全裂した羽状葉を多数対生する。萼筒は長毛に覆われた短い紡錘状で、上縁から濃紫褐色~濃褐色の5枚の葉状鱗片が開出する。花は一様にピンク色、下唇は幅広く、中央裂片と側裂片の分離が不明瞭(互いに重なっているのか未分離なのかの判断は写真では困難)。嘴状上唇は基部から斜めに立ち上がったのち中央付近で屈曲し、細まりつつ下方に向かう。基半部の背方は濃色でやや凌状に盛り上がる。

〖13〗(same species as the 12)






雲南省麗江玉龍雪山山麓alt.3100m付近. Aug.1,1995

〖12〗に似るが下唇は白とピンクの斑で下縁が広がる扇状、全体としてやや発達が悪い。

**〖12〗と〖13〗を青山は別種としたが、尹民の指摘に従い同一種とする。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 5

2024-05-25 09:00:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 5



以下、「中国植物志」に於ける「根葉群Grex Rhizophyllum(おそらく根葉亜群 Subgrex Rhizophyllum)」に所属すると思われる日本産の種。

ミヤマシオガマ群に分類される日本産の4種は、青山(2014)の仮分類では、上唇の形状(舟型)が共通することから、タカネシオガマ群(旧・オニシオガマ群を含む)共々、「舟型グループ」に振り分けるべきものである。


中国植物志では、タカネシオガマ群各種が(典型的「舟型グループ」の一つ)「之形花群」に所属するのに対し、ミヤマシオガマ群は日本産4種のうち3種が日本固有種であることから、所属群が特定できないでいる。


唯一、シオガマギク属中最も広域の全北区寒冷地(日本では北海道大雪山)に分布するキバナシオガマのみが中国に分布し、ここまで紹介してきた種〖1~7〗とともに、「根葉群」(既出各種とは別の「火焔系」)に所属するとされている。


ということは、他3種もそれに準じることになるわけだが、それにしても外観上の特徴は、嘴状上唇から成る既出各種とは著しく異なり、この処遇が妥当であるか否か、疑念を禁じないでいる。将来の訂正の可能性を含み置いたうえで、暫定的処置として、ここで紹介しておく。




☆ Pedicularis schistostegia ネムロシオガマ






北海道礼文島 .Jun.10,1993






北海道礼文島 .Jun.6,2001

北海道北部~東部固有種。



☆Pedicularis oederiキバナシオガマ

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 火焰系 Ser. Flammeae








北海道大雪山 Jul.16,1992

周北極圏地域に広域分布。日本では北海道大雪山のみ。



☆ Pedicularis koidzumiana ベニシオガマ

Non Ohoto

利尻島固有種。



☆ Pedicularis apodochila ミヤマシオガマ








岩手県早池峰 .Jun.29,1994




data確認中




南アルプス北岳 Jul.8,1993

日本(本州中部高山帯~北海道)固有種









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 4

2024-05-24 13:42:09 | 「現代ビジネス」オリジナル記事


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 4



1-1-2-2-1-1-2 嘴状上唇は立ち上がり先端は2‐3分する

1-1-2-2-1-1-2-1花色は赤

〖8〗Pedicularis przewalskii ssp.australis 南方普氏马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 低矮系 Ser. Pumilliones






雲南省白馬雪山alt.4200m付近. Jun.14,2009

〖1〗~〖7〗同様に通常5~10花が隣接し、地面に接した萼筒(合着した紡錘状で上縁に数個の小さな葉状鱗片が生じる)から高さ3cmほどの細長い花筒が直立する。花径は約2㎝。花色は一様に濃ピンク。下唇の3つの裂片は縁が重なることなく平開、中央裂片は側裂片より小さい。嘴状上唇は、一度立ち上がった後、中央付近で上下に膨らみ、先半は2本の細い管状となって下方に伸長し、その間から雌蕊の柱頭が顔を覗かせている。*〖9〗と同一種の別亜種。



1-1-2-2-1-1-2-2花色は白

〖9〗Pedicularis przewalskii ssp.micropiton 矮小普氏马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 低矮系 Ser. Pumilliones














四川省巴朗山alt.4600m付近. Jul.31,2010












四川省雅江~新都橋(臥龍峠)alt.4400m付近. Jun.6,2010

概形や大きさは〖8〗Pedicularis przewalskii ssp.australisに似るが、下唇の各裂片はより幅広く、全体が純白の円盤状となる。嘴状上唇の形状も〖8〗に準じるが、立ち上がった部分の基半は純白、中央の膨れた部分から先は、濃い鮮紫色を呈する。〖8〗ともども、葉は余り大きくならず、羽状片の切れ込みもごく浅く、裂片先端は尖らない。萼筒の形状も〖8〗同様で、花筒基部を紡錘状に覆い包む(臥龍峠産の写真個体は濃紫色の条線がある)。花筒、萼筒、葉ともに、軟毛を密生する。両撮影地とも、背の低い草を交えた高山礫地。*種レベルでは〖8〗と同一種とされる。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 3

2024-05-23 16:10:36 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 3



1-1-2-2花冠は平開

1-1-2-2-1花冠は地上から直接伸びた長い筒部の先に開く【Group Ⅲ】

1-1-2-2-1-1羽状葉の裂片は小さく、下唇の側片は盛り上がる

1-1-2-2-1-1-1嘴状上唇は捻じれる

1-1-2-2-1-1-1-1赤花、嘴状上唇は上から下に向かう

1-1-2-2-1-1-1-1-1花冠は平開し、嘴状上唇先端は単一

〖4〗 P.siphonantha 管花马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 长花系 Ser. Longiflorae

写真1—4








雲南省香格里拉近郊.alt.3800m付近 .Jul.28,2015

写真5


同alt.3400m付近 .Jul.29,2015

写真6


雲南省白馬雪山alt.4200m付近 Sep.29,.2005

雲南省香格里拉~白馬雪山にかけての高山湿性草地で撮影。地上近くに束生した重鋸歯を伴う羽状深裂葉の葉腋から、5㎝前後に達する花柄状の細長い真紅の花筒が1~数10本集まって直立する。中には上から2枚目の写真の株のように、数本がごく隣接して上伸開花するため、球形の集散花序のように見える場合もある。花筒の基部を覆う萼筒は、合着した筒状で、上縁に一対の葉状鱗片を生じる。下唇は径1~2㎝、側裂片が幅広く、中央裂片と同程度かやや大きい。花冠の基部は白い。嘴状上唇は、基部で幅広く、後方は細長い管状になって丸く内側に向かって巻く。花冠は平開する。

注:〖4/5/6&7〗は酷似するが、最近のDNA解析結果では、それぞれ遠く離れた類縁に位置付けられている。



1-1-2-2-1-1-1-1-2花冠はやや壺状に開き、嘴状上唇先端は数裂

〖4B〗Undescribed species belong series Longiflorae 长花马先蒿節の未記載種

根叶群 Grex Rhizophyllum  根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 长花系 Ser. Longiflorae

写真7


雲南省香格里拉近郊alt.3700m付近. Jun.19,2005

種としては、〖4〗 Pedicularis siphonanthaに包括されると思われるが、「Longiflorae節の未記載種」とする尹民(2017私信)に従い、ここでは分けて紹介しておく。嘴状上唇は先端が短く3鋭裂。花冠は内側に巻き気味で〖2〗Pedicularis willsoniiや〖3〗Pedicularis elwesiiのような壺状になった花冠の種への移行初期段階の状況を思わせる。



1-1-2-2-1-1-1-2黄花、嘴状上唇は下から上に向かう

1-1-2-2-1-1-1-2-1下唇側片は脊方に鋭く突出、赤紋は2個、

〖5〗Pedicularis longiflora var.tubiformas 长花马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 长花系 Ser. Longiflorae

写真8—11








雲南省香格里拉近郊alt.3500m付近. Jul.28,2015 (上2枚の紅花はP.siphonantha)

注:最近のDNA解析に拠れば酷似した〖4〗および〖6&7〗とは別グループに位置づけられ、通常別グループとされる〖20‐25〗のP.davidiiなどに近いようである。外観が著しく異なる〖3〗P.elwesiiにも比較的近縁とされている。



1-1-2-2-1-1-1-2-2下唇側片の背方は丸く盛り上がる

1-1-2-2-1-1-1-2-2-1下唇は黄一色、3個の赤紋がある

〖6〗 P.armata 刺齿马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 长花系 Ser. Longiflorae

写真12


四川省黄龍(峠上の高山礫地)alt.4200m付近. Aug.6,1995

写真13


四川省九賽溝(渓流沿い草地) alt.2500m付近 .Aug.2,1991

〖5〗Pedicularis longifloraに類似するが、下唇基部の濃赤褐色班は、中央裂片に一個、左右の裂片の縁に2個の、計3個がある。中央裂片が小型で、側裂片がより幅広く、全体として円形を呈する。嘴状上唇は8同様に上方から下方に向かって屈曲するが、その基部にも赤褐色斑が生じる。濃い黄色の上写真個体と、下写真個体のように外側が白味を帯びるものがあるが、基本形態は変わらない。



1-1-2-2-1-1-1-2-2-2下唇は基部が白く、上唇の先端は2分する

〖7〗 P.cranolopha 凸额马先蒿

根叶群 Grex Rhizophyllum 根叶亚群 Subgrex Rhizophyllum 长花系 Ser. Longiflorae

写真14


四川省雅江東方臥龍峠下の河岸草地 alt.3700m付近 .Jun.7, 2010

写真15


四川省塔公~八美間の高山草原 alt.4200m付近. Jul.23,2010

上写真個体は下写真個体に比べて葉が大きく発達、羽状部は中脈沿いを残しほぼ全裂するが、撮影地は距離的にも近く、明らかに同一種であろう。全体の概形や大きさ、細長い花筒などは〖4~6〗に似るが、花色は白で内半部が鮮黄色、下唇の各裂片は幅広く、〖6〗同様に花冠全体が円形を呈する(ただし中央裂片も幅広い)。嘴状上唇は鮮黄色、上方から下方に向かって湾曲、先端が2裂し、細長く伸長する。



種同定は尹民(2017年/私信)。

形態記述、検索体系とグルーピングは青山(2014年)試案。

*は「中国植物志(2019版)」に於ける上位分類群。









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 2

2024-05-22 08:23:37 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 2



1花冠は開く

1-1上唇は嘴型

1-1-1下唇は左右非対称【GroupⅠ】

〖1〗Pedicularis mussotii var. lophocentra 谬氏马先蒿刺冠变种


根叶群 Grex Rhizophyllum 拟根叶亚群 Subgrex Rhizophylliastrum 玫瑰系 Ser. Roseae Maxim.










四川省巴朗山(四姑娘山南面)alt.4600m付近. Jul.31,2010

一株に10本前後の茎が束生、高さ5㎝ほどの茎の頂部に、径3㎝程の大きな花が単生する。葉は羽状深裂し、重鋸歯となり、細毛を密生する。花筒部は生じず、茎頂に幅広く折りたたまれ上縁に緑色の葉状裂片を備えた萼片の上に直接花冠が開く。花は特異で、左右不対象、下唇の向かって右側の側裂片は下方へ移動し、幅広い本来の中央裂片の様相を呈し、本来の中央裂片は左の側裂片の位置に、左側裂片は上方にそれぞれ移動する。上方から右側に移動した嘴状上唇upper lipは、強く折れ曲がって細長く左方に伸び、先端は不均等に2分して鋭く尖る。

注:1枚目と2枚目の写真は、同じ日の数十分違いの撮影。日が陰るとリンドウ科の花だけが花冠を閉じる。



1-1-2下唇は左右対称

1-1-2-1花冠は壺状 【GroupⅡ】

1-1-2-1-1花筒は細長い

〖2〗Pedicularis willsonii 魏氏马先蒿

*根叶群 Grex Rhizophyllum 拟根叶亚群 Subgrex Rhizophylliastrum 魏氏系 Ser. Wilsoniae






四川省ミニャコンカ(氷河末端部)alt.3100m付近. Jul.2,2009

前種同様、一株に10本前後の茎が束生、葉は羽状に深裂し、先端が丸みを帯びた重鋸歯となる。萼片は花筒の基部に生じ、合着した平滑な筒状で、上縁から葉と同じ形の一対の鱗片が派出する。花冠は長さ2~3㎝、横向きに咲き、花弁の左右側裂片は基部で強く内側に折りたたまれ、両側片の後方に中央裂片が重なる。嘴状上唇は花冠の基部から後方に向かって伸びた後、強く折れ曲がって内側に向かう。先半は細く鋭く尖る。



1-1-2-1-2花筒は短い

〖3〗Pedicularis elwesii subsp.elwesii 哀氏马先蒿

*根叶群 Grex Rhizophyllum 拟根叶亚群 Subgrex Rhizophylliastrum 假大花系 Ser. Pseudomacranthae








雲南省白馬雪山alt. 4200m付近. Jun.14,2009

Pedicularis willsoniiに似るが、willsoniは萼筒部から花茎状の花筒が長く伸び、elwesiiは細長い花筒部を欠き、萼筒部のすぐ上に花冠が生じるという、顕著な違いがある。葉の色や小葉の切れ込み程度などにも差異がある






Pedicularis willsoniiとPedicularis elwesiiのスケール



種同定は尹民(2017年/私信)。

検索とグルーピングは青山(2014年)試案。

*は「中国植物志(2019版)」に於ける分類群。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) ①

2024-05-21 21:10:57 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) ①



2015年に作成・刊行(自費出版)した、『Wild Plants of CHINA 中国的野生植物 Orobanchaceaeハマウツボ科(シオガマギク属Pedicularisを中心に)』を再編紹介していきます。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






表紙写真:Pedicularis mussotii






扉写真;Pedicularis przewalskii



シオガマギク属は、APG分類が組まれる以前は、ゴマノハグサ科に分類されていた。

分子生物学的な手法によるAPG分類では、シソ科・スイカズラ科・クマツヅラ科など、シソ目の大規模な再編成が成され、その結果、シオガマギク属は、従来のゴマノハグサ科から腐肉植物から成るハマウツボ科に移行された。

このことは、APG分類に頼らなくても、すでに予測されていた結果であった。寄生または半寄生植物であること、花をはじめとした植物体の大部分の構造の共通性から、両者を統合しようという考えは多くの研究者が持っていたのだが、分類に於いて最も重視されるべき、子房の基本構造に顕著な差があることから、実行するには至らなかったのである。

その形質の相違を、本質的なものと捉えるか、2次的に発生した例外的現象として捉えるかで、結論は違ってくるのである。分類学の常識に沿った、安全策を採ったわけである。

APG分類のお墨付きを得て、目出度く両者は合体され、以前のハマウツボ科の数属(ハマウツボ属のほか、オニク属、ナンバンギセル属など)と、シオガマ属、および近縁のコシオガマ属・ママコナ属・コゴメグサ属・ヒキヨモギ属など、全て半寄生~寄生からなる、新たなハマウツボ科が出現した。

旧ハマウツボ科のメンバーはもとより、新たに加わった大部分の属も、僅かな種から成る小属である。100種を超す種を擁するのは、コゴメグサ属と新大陸のCastilleja属。そして、科全体の約半数の種を占める最大の属が、シオガマギク属で、ユーラシア大陸温帯域から北米大陸にかけ約600種が知られている。そのうち中国産は約350種、100以上の節(series)に整理される。

筆者は、これまでに100種前後を撮影し、手元に約60種(90地域群)が存在、これに、コシオガマ属、ママコナ属(おそらく誤認)、コゴメグサ属、ハマウツボ属の各1種を併せて紹介する。

原典では、種名の決定は将来の課題とし*、暫定的な独自の仮分類に従って、属名の後に数字を記して「種」の名称に代えた。また、種名数字の後に、該当の種に含まれると思う地域ごとの集団を、[ ]内に数字(と地域名)で記した。

上唇の形状が、細い「嘴型」で、途中でねじ曲がりながら針状に突出する種と、上下に幅広く、左右にやや扁平な「舟型」になる種に、大きく2分し、前者は、一見花茎に見える著しく細長い花筒を地上付近から直接叢生する矮小種と、草丈が高く、花序に複数の花をつける種に分けて並べた。

この仮分類が、系統的な自然分類を反映しているか否かは不明である。しかし、大まかなグルーピングの目安にはなるだろうと思っている。

*シオガマギク属の全掲載個体について尹民氏による種同定を添えた(2017年時点での知見)。

**巻末に「中国植物志」によるsection分割と、本書における仮分類の対照リストを示しておく。

***本書原典刊行後に「中国植物志」のチェックと尹民氏による種名同定が為されたが、種番号(一部同一種が複数表示)および解説は原則として原典のまま示しておく。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



本ブログに於いては、(字体などの表示が困難なため)検索表を省略、写真掲載は青山による仮分類の順に並べ、それぞれ「中国植物志」による分類単位との対応を示し、日本産各種を追加紹介した。

種の同定は、尹民氏の私信に従った。改めて氏に連絡を取りたいと思っているが、ヤフーメイルのアカウントのパスワードが(本人確認が出来ずに)凍結されてしまっているため、連絡が取れないでいる。読者の方で尹民氏とコンタクトを取れる方がいらっしゃれば、仲介を願いたい。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



28C 33.19(←APG分類第2版) Orobanchaceae列当科

 シオガマギク属(半寄生)


 ハマウツボ属(全寄生)


 コゴメグサ属(半寄生)


 コシオガマ属(半寄生)




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






Pedicularis属を、上唇の形状から、暫定的に2つのグループに大別した。

◆細い管状で、先端が鋭く尖る「嘴型」となる種(写真右:下唇は水平に丸く広がる)。

◆上下に幅広く、左右にやや扁平「舟型」となる種(写真左:この種の場合、下唇は上唇の下方に接着して僅かに認められる)。




【Pedicularis 1~44:「嘴型」の上唇を持つ種】




【Pedicularis 45以下:「舟型」の上唇を持つ種】

検索表 ⇒省略






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一将功成りて万骨枯る

2024-05-20 16:48:44 | 雑記 報告


ユリ科(狭義)がやっと終了し、このあと、ハマウツボ科(メインはシオガマギク属)をはじめようと思っているのですが、、、。

APG分類に拠って、植物界有数のメジャー・ファミリーから、一気に弱小ファミリーに相成った(狭義の)ユリ科とは対照的に、全くの弱小ファミリーだったハマウツボ科は、(旧クマツヅラ科の多くの種との併合によって)メジャー・ファミリーと化してしまいました。中国産シオガマギク属だけでも、ユリ属の10倍ほどの数100種、僕の写真だけでも70~80種あるのです。それをどのように紹介していくか、それを思うと頭が痛い。スタートを、ちょっと躊躇しています。

いずれにせよ、次回からは、生物の話題に限定して紹介していきたい、と考えています。人間社会絡みの話題(「大谷と白鵬」など)は、「社会の窓から」のほうで行っていきたいと考えていますので、そちらへの訪問もよろしくお願いします。

「いい日、朝立ち」 “Good day. Leaving in the early morning to a strange country, far away,,,,,” - 社会の窓から (hatenablog.com)

といって、ブログを管理してくれているコンデンスミルク三世のほうも、いろいろと困難に直面し続けている現状(現在日本各地を放浪中)なので、スムーズに進まないかも知れません。時折、こちらの方に記事を載せることもあるかと思います(今回の記事も重複掲載しておきます)。



↓こちらのほうもよろしくお願いします。

ギリシャでプライベートツアーやゲストハウスをしたりなブログ (ameblo.jp)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



最初に断っておきます。僕は大谷君の大ファンです。毎日、彼の活躍に一喜一憂しています。今年は三冠王のチャンス、それどころか、もしかしたら夢の4割打者、ホームラン80本だって、荒唐無稽とは言えないかも知れない、来年はサイヤングも、、、夢はとめどもなく膨らんでいきます。

その前提で、以下“大谷批判”を展開していきます。

水原一平氏の違法賭博・窃盗事件、大谷君は100%無関係(全面的被害者)、ということになっています。異論をさしはさめば、有無を言わさず人間性を断罪されます(マスク・ワクチンの同調圧力が、そのまま乗り移ってきた感じです)。

日本の、あるいは民主主義・資本主義社会の構造は、自分たちに都合の悪い話は全て「陰謀論」で排除してしまう、と言うところに顕著に表れています。正義の敵は悪ですね。



昨日トップに挙げたニュース、フレッチャー選手であることに、大きな意味があります。エンゼルス時代、たぶん日本人に最も人気があった選手。大谷の友達だから、です。いや正確には、日本人大衆(メディアが介在)により「大谷の親友」と“勝手にされていた”。

しかし、問題の「主語」は、フレッチャーではなく、彼の偶像を作り出した日本人大衆(およびメディア)にあります。



暫く前にレンヒホー選手の話題を書きました。ちなみにその翌日、規定打席数に到達して、突如、打撃成績3位に登場した。しかし日本のメディアは一言も報道しません(結構エンゼルス絡みの話題は出て来るにも関わらず)。

喜んでいたら、翌日また消えてしまった。どうやら試合に出場していないのです。絶好調なのに何で?と思ったのですが、ウイルス感染で10日間故障者リストに入っていたのです。

昨日、10日ぶりに出場。延長13回の投手戦(結果はナオエ)で、ヒーホーも6打数ノーヒットでした。それでも余裕で3割を維持しているので、今は1打席でも多く打席に立つことが最優先事項ですから、十分に意義があったと思います(今日は決勝の三塁打を放ちました、ちなみに大谷君も4年ぶりのさよならヒット)。

大谷がエンゼルスに入団して以来の同僚、ここ数年間では、大谷に次いでコンスタントな成績を残しています。まだ27歳だし、将来の伸び代もあります(内外野守れる左右両打のユータリティプレイヤーなのでエンゼルスはなかなか離さない)。

しかし、彼の話題が日本のマスコミに取り上げられることはほとんどありません。小柄で黒人(ベネズエラ人)で髭もじゃで、いわゆるエリート選手ではない。日本のプロ野球でもそうですが、大リーグに於いても(日本の視点からは)プロは実力、と言うわけではないのです。タレントですね。“空気”によって作り上げられた虚像が、一人歩きしていく。



で、結果として(ドジャースのベッツぐらい圧倒的成績の選手は別とすれば)実績は大したことなくても、いかにも日本の大衆受けする、スマートで甘いマスクのイケメン選手が、勝手に“大谷の親友”として祭り上げられることになります。過剰に持て囃される。

フレッチャー、イグレシアス(白人打者のほう)、、、、、ある意味、水原一平氏も。

そして、その3人が、いずれも今回の違法賭博に絡んでいる、という皮肉。

WBC(僕は、胡散臭さの極致、ひいては大衆を戦争高揚に導くプロパガンダの一種だと思っています、それについては改めて)の準主役たち、正義の味方が一転、池に落ちて叩かれまくって、(山川、一平、フレッチャーと)登場人物がどんどん消されて、継ぎ接ぎだらけの画像になり果てる喜劇。



大谷信者(大多数の日本人大衆)は言います。

>一平もフレッチャーも以前は大谷の友達だったけれど、今は友達ではない。彼らは悪人で、大谷は彼らに騙された100%被害者、全く無関係で、法的にも罪が無い事を証明されている。

>大谷は彼ら悪人たちとは次元が違う世界にいる。悪い友達の誘いなど頭から無視して、野球の事だけにひたすら取り組んでいる、完璧な人格者。

それはそうだと思います。

しかし、だからこそ、言います。

彼の生き方は間違っている。



崇拝信者たちは、少しでも大谷に批判めいたことを言うと、露骨に上から目線で(まるで汚いものにでも対するように)威圧してきます。ストイックに、わき目も振らずに野球道に邁進している、完全無欠な人格者に対して、失礼極まりない、と。

回りが何をしていようが、大谷は無関心、一切関わっていない。

そのこと自体が問題の根源なのですね。

関わっていない(“見て見ぬふり”も含めて)、ということは、果たして称賛すべき事なのでしょうか。

しかも“発端”は、大谷君にあるのです。大谷(という巨額の富を動かすトリックスター)がいなければ、起こらなかった(ここに登場する“悪人”たちもターゲットにされて罠に嵌ることはなかった)。

ごく身近な(世話になりまくっている)回りの人々が、(自己責任ではあっても)様々な形での悪戦苦闘を強いられている。

非合法悪人は、そこを狙ってくるわけですね。

直接大谷君をターゲットに定めるのではなく、彼の近くにいる、立場や意思の弱い人達を誘惑して切り崩そうとする。(実は、大谷本人だって、合法的資本主義社会から直接付け込まれているのですが)。

そして、弱い人達は、まんまと誘惑に乗って切り崩される。自己責任。大谷君はノータッチなので、無関心を通す。



しかし、大谷君自身は全く“法に触れる”悪いことはしていなくても、いやしていないからこそ、結果として彼の存在によって、かき回されている人たちが、身近に大勢生み出されるのです。

自分のやりたいことを貫き通す、他の事には一切無関心、世間通俗とは別次元にある、、、それが本当に高潔な事なのでしょうか。

それを言えば、僕だって全く同じなんですよね(笑)。

酒・煙草・ギャンブル・薬・女遊び・金儲け、、、全く興味なし、ファッションやグルメとかにも無頓着、旅に出ても街の中を出歩くことなど滅多にない。

大谷君は、誰よりも早いボールを投げ、誰よりもバットでボールを遠くにかっ飛ばし、そのことに全力を挙げている(成果を残していることで皆に称賛されている)。

僕は、日本、アジア、ひいては地球に生きる、それぞれの生物の本質と互いの相関を知るために、全力を尽くしている(ほとんど誰も評価してくれませんが)。

どっちが尊くどっちが卑しいということではないと思うのですが、大谷君の行動は、世の中に膨大な経済効果を齎すのですね。それによって社会(大衆)が恩恵を受ける。その次元で「優劣」を考えれば、僕のほうは丸っきり社会に貢献していないので(でも人類の未来には貢献していると信じています)、勝負は明白です。



大谷君の収入1000億に対し、一平氏は、数百・千分の一の収入だと思います。絶妙の通訳、身の回りの世話、対外的な交渉、、、大谷君の“速いボールを投げて遠くにかっ飛ばす”ことと、優るとも劣らない業績だと思うのですけれど、直接的な評価は、天と地の差です。理不尽ではあっても、仕方がない。

大谷君は、自分の道を全力で邁進する、その事だけに集中して、それ以外の事には一切無関心。それが何故“高潔”とされるのでしょうか? 単に(吉井コーチの言うように)“ジャイアン”に過ぎないのではないかと(必ずしもそれが悪い事だとは思わないけれど、褒め称えられることでもない)。



“一将功成りて万骨枯る”



そもそも、契約金の1000億円は、見方に拠れば「はした金」です。世の中、大谷君を巡って、とんでもない巨額な金が動いているのです(のみならず結果として民族意識高揚にも繋がっている)。大谷君が稼いでいるわけではありません、世の中(の空気)が、大谷君に稼がせているのです。そこには巨大な組織が存在します。そしてその組織の裏にいるのは、、、大衆です。

大谷君が、「お金に無頓着」ということに対して、世間は褒め称えます。でも、光の当て方を変えれば、(お金に対して)「無責任極まりない」、と言い換えることもできます。

日々お金に苦労している貧乏人(彼らが貧乏なのは必ずしも努力が足りないわけではないと思います、置かれた環境、稼ぐ手段の選択結果、、、)からすれば、とんでもない浪費、見方に拠れば、気まぐれにお金をばらまいているようにも思えても不思議ではありません。

大衆の“空気”によって“健全”“美徳”と認定されているのに過ぎないのです(“不健全”だと認定された人は切り捨てられる)。



これほどの金と人を、ドロドロの世界に巻き込んでしまっている責任の所在は大谷君にあります(正確には、その半ば虚実の舞台を拵えている資本主義社会と大衆ですが)。

大谷君に気骨があるならば、自ら泥の中に手を突っ込んで、崇拝信者にダメ出しをして欲しい、と望んでいる次第です。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国および日本のユリ科(狭義)植物 19 ホトトギス属(タケシマラン亜科ホトトギス連)

2024-05-18 16:30:59 | 雑記 報告



大谷翔平の元同僚フレッチャー 水原一平被告の胴元通じて賭博していたとESPN報道 知人は野球賭博


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

高知東生 報道陣の質問に一切答えない水原一平被告に理解「言いたいことも山ほどあったはず」 (msn.com)

短い内容なので、以下そのまま転載しておきます。

俳優の高知東生(59)が16日、自身のX(旧ツイッター)を更新。ロサンゼルスの連邦地裁に出廷した水原一平被告について投稿した。

ドジャース・大谷翔平投手の元通訳だった水原被告は、大谷の口座から約1700万ドル(約26億4400万円)を盗んだとする銀行詐欺などの罪を認め、司法取引に応じた。

水原被告は日本時間15日、カリフォルニア州ロサンゼルスの連邦地裁に出廷したが、集まった報道陣の問いかけには一切応じなかった。

高知は「水原さんの出廷する姿に胸が痛くなった。隠していた色んな嘘がばれて、自分を恥じていると思う」と指摘した。

続けて「衆人環視の中歩くことは消えてなくなりたい気持ちにもなっただろう。言いたいことも山ほどあったはず。でも『わかるよ』とエールを送った人間もいる。それが自助グループの仲間。米国で繋がってくれよな」と投稿した。



水原一平被告の次回出廷が6月4日で決定 形式上の「無罪」から一転…罪を認める答弁に変更の予定 (msn.com)



水原一平被告出廷「Not guilty」形式的に無罪主張 女性判事に「Yes, ma’am」 (msn.com)



一連の動画で、僕の心に刺さるのがあったので、クリックしようとした瞬間、消え去ってしまって二度と現れません。仕方はないので、関連動画をあげておきます。

はっきり言います。この一連の事件の根源に遡れば、悪いのは大谷君です。

むろん、あらゆる点で大谷君に非は有りません。非はないけれど、一平氏にたいする責任があります。その部分が、全く欠落しているのです。



・・・・・・・・・・



全然関係ない話。僕は“あのちゃん”押しなのだけれど(メディアに登場してきた初期から注目している)、ここしばらくの情報氾濫度には、少なからずの危惧を覚えています。

草なぎ(やっぱり漢字出て来ん(;´д`))君とかも、ずいぶん前から注目していて、でも最近は必要以上に持ち上げられ過ぎているようにも思えるので、ちょっと心配です。



・・・・・・・・・・・



これも関係ない話。

僕が中国人を評するとき、いつも言う表現。

>とにかく酷い、何もかもが出鱈目、民度最低、○○虫以下、、、、。

>全てにおいて日本人が(当たり前のことだけれど)桁外れに勝っている。

>ただ一つだけ中国人のほうが優っているとすれば、日本人には感じたことのない(ほんのちっぽけかも知れないけれど)心の温かさ、、、、、。



・・・・・・・・・・・・



白鵬、遡れば日馬富士、、、、。露骨な虐めじゃないですか。なんで皆そう思わないのだろう?

これだけ徹底して罵倒の声を浴びせられても、本人たちは素直に謝罪して(僕からみれば謝罪する必要などないと思うのですが)、一言の言い訳もせず、かつ投げやりにもならずに一から頑張っている。



・・・・・・・・・・・・



遡れば20年ほど前の秋田の事件。

滅多にTVを見ない僕が、たまたまホテルのTVで一連の報道を見たのです。

ショックでした。事件そのものではなく、メディア(報道陣)の余りの醜さが、、、人間、ここまで醜くなれるものだと。

自分の子と近所の子供を殺害した、悪魔の母親。

僕は、このお母さんの気持ちが、痛いほどわかります。

なのに、なんで罵倒の声を浴びせ続けるのか。

なんで寄り添ってあげないのか。

不思議でなりません。

僕が日本人に愛想が尽きたのは、ここからです。



正義と悪。

戦争は無くならないですよ。

そして人類は滅びる。



・・・・・・・・



ユリ科の話

Tricyrtis ホトトギス属 油点草属



やっとユリ科の最終回に漕ぎつけました。

僕の欠点の一つ(あまりに沢山有り過ぎて半ば埋没しているけれど)は、物事が完結する手前で停滞してしまうこと。

これで良いのかな?と振り返ったら、全然不備だらけに思えて、最後の締めが躊躇してしまうのです。せめて最後ぐらいは、新しい情報も取り入れて、意味のあるものにしたい、とか思っていると、だらだらと時が過ぎて、そのまま放り出してしまう結果に相成ります。

今回も、新たな情報(種の同定などにおいて)があるのです。久山敦氏(咲くやこの花館元名誉館長)から御教示頂いた、写真の種(中国広西産と台湾産)の同定。それを記した資料が何故か見つからない。そんなバカな、とHDDを片っ端からチェックしているのですが、出てこない。

いつまで経ってもアップ出来なくなります。仕方がないので、今回は諦めて、以前記した内容をそのまま紹介していきます。

ポジフィルムからスキャンした日本産の写真も付け加えて紹介する予定でいたのだけれど、肝心の(中国産や台湾産に類縁があると考えられる)典型ホトトギスの写真が探し出せない。それでとりあえず見つかった黄花の数種を紹介しておきます。



以下、旧記事からの再編。



ホトトギス属Tricyrtisは、外観的イメージが他の(広義の)ユリ科植物とは著しく異なります。しかし、APG分類によって、狭義のユリ科の一員であることが証明されています。

東アジアに25種前後、その大半が日本列島に分布し、一部の種が、中国大陸や、台湾、ヒマラヤ地方、フィリッピン、朝鮮半島に及びます。

中国本土では、主に東部‐中部‐南部の山岳地帯から幾つかの種が記載されていますが、著者は全体像を把握し得ていません。

日本列島などとの共通種T. macropodaが福建省などの東南部山地に、ヒマラヤ地方などとの共通種のT. maculataが雲南省などの西南部山地に分布するほか、近年になって幾つかの種が、南嶺山地や秦嶺山地などから記録(新種記載)されている由。

広西壮族自治区北部の花坪原始森林の亜熱帯雲霧林(標高1200~1800m付近)に生える写真の集団は、近年記載された中国固有種のひとつT. viridula緑花油点草ではないかと思われますが、日本のホトトギスT. hirtaにも類似し、それと同一種に含まれる可能性もあるようです(「中国植物志」ではヤマホトトギスT. macropodaに併合しています) 。

台湾から3~6種ほどが記録されていますが、著者は詳細を把握していません。ここで紹介する個体は、この写真が撮影されたのと同じ年にTricyrtis formosana.に近縁な新種として記載された Tricyrtis lavenii に相当するものと思われます。





















広西壮族自治区花坪原始森林. alt. 1400m付近. Aug.7,2015










広西壮族自治区花坪原始森林. alt. 1400m付近 Aug.16,2004








台湾関山alt.2700m付近. Sep.9,2002

南部横貫公路の最高点、山肌が特殊岩石に煌めく南部脊梁山脈を貫いた「関山トンネル」の東側入口付近。










台湾合歓山alt.2800m付近. Sep.2,2006






チャボホトトギス T.nana

屋久島辻峠 撮影日付け確認中






タマガワホトトギスT.latifolia

山梨県甲武信岳Jul.31,2003






タマガワホトトギス

撮影場所確認中 Jul.31,2001






タマガワホトトギス(だと思う)

北アルプス白馬鑓温泉 Aug.24,1993




・・・・・・・・・・・



ホトトギス属は、日本を代表する植物です。以前は、ほとんどの種が日本固有種と考えられていましたが、近年になって、台湾や中国大陸からも、新たな種の発見が続いています。日本・東アジアの生物相の成り立ちを考える上に於いて、非常に重要な問題提起が含まれているように思われます。

ホトトギス属同様に、著しく特異な花の構造を持ち、分布が日本列島に集中している属に、ユキノシタ科のチャルメルソウ属があります。屋久島のコチャノメルソウと奄美大島のアマミチャルメルソウの関係、中国産の対応種、北米大陸に隔離分布する姉妹群との関係、等々、興味深いテーマが多々あり、次回シリーズはチャルメルソウ属をと考えていたのですが、資料(写真)が僅かしか集まらなかったため断念しました。

ということで、次回シリーズは、以前にも何度か紹介したシオガマギク属(ハマウツボ科)を予定しています。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする