青山潤三の世界・あや子版

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香港デモの現場で無知で無学な貧乏老人が遭遇した「ある違和感」

2019-07-04 13:45:20 | 雑記 報告


香港デモの現場で無知で無学な貧乏老人が遭遇した「ある違和感」


「警察は学生たちを殺すな!」 資本主義社会の許 「第二の天安門事件」が作り上げられていく

             (上)その1。2019.6.12深夜:香港国際空港にて。

I’m a stranger, a wanderer, an easy-going person, and a hard-worker,,,,, hehe !

表題の通り、筆者は無学で無知で取るに足らない貧乏老人である。卑下して言っているのではない。実際そうなのだから仕方がない。

中国に通いだしたのは32年前からで、2年後に起こった天安門事件の一連の動きには、四川省の成都で遭遇した。その年の秋から、それまで上海インだった日本~中国の往復を、香港インに切り替えた(別に事件とは関係なく、こっちのほうが便利と思ったから)。

その後30年間、少ない年でも年に2~3回、多い年では10数回、日本から香港を経て中国を往復している。総計では、香港‐中国(深圳)のイミグレーションの通過は、数100回に及んでいると思う。

筆者は、ジャーナリストでも報道写真家でも何でもない。かように、中国の奥地に向かう途上、香港や中国の各都市を、30年間、ただひたすら通り過ぎていただけである。

中国行の目的は、日本の生物相(対象は主にチョウとセミ)の本質を知ること。日本を知るためには、世界(地球)全体を俯瞰したうえで位置づけする必要がある、というのが、筆者の考えである。中でも重要なのは、日本の自然のマザーランドともいえる中国奥地との比較。

はっきり言っておくと、筆者は中国が大嫌いだ。知ってる人には言わなくてもわかるだろうが、とにかく出鱈目で、何もかも無茶苦茶な国である。民度が低く、ルールも人権もクソもない(そのことについてはここでは詳しくは触れない)。

「出鱈目で無茶苦茶なのは、昔の中国、あるいは地方のことで、現在の都会の高学歴の富裕層から成り立つ社会は、日本をはじめとする西側を凌駕するほどの、近代的な社会が構築されている」と、中国のエリートたちや日本の中国通の人たちは言う。

でも、筆者には、それは見かけだけのことで、本質は変わっちゃいない、と感じる。例えば地下鉄。乗る前の無意味とも思える荷物検査(大抵はきちんとチェックしていない)。切符の券売機は、ほぼ日常的に故障。昔(バスだけの頃)と変わらず、乗降時には乗る人間と降りる人間が押しくら饅頭(ただし筆者のような老人には速攻で席を譲ってくれる)。

バスに関して言えば、大都市の市営交通バスでも、今の日本では漫画の中でしかお目にかかれないような(道路が悪いのかバス本体が悪いのかよくわからないけれど) 、大揺れに揺れて(うっかりシートベルトを外していようものなら)飛び上がって天井に頭をぶつけそうになる状態が、何時まで経っても続いている。

もう何度も何度も繰り返し言うが、トイレ事情。豪華な新しいトイレがどんどん作られているが、相変わらず汚い。これは都会(スタバとか新幹線の中も)のトイレのことで、それに対してド田舎のトイレは結構きれい(構造が実に質素でシンプル)。

野生生物の論文とか図鑑とかも、それはもう立派な外観と超学術的ともいえる体裁を備えている。でも中身は空っぽで出鱈目(ここでは具体的には延べない)。自分で調べるしかない。

一刻も早く中国での活動を終えたい、と思い続けているのだが、中国の野生生物の世界は奥が深く、まだまだ分からないことだらけである。やりかけたからには嫌でも完遂しなくてはならない。

そんなわけで、いまだに中国通いを続けている(というよりもほとんど定住している)。ちなみに、観光地や有名な史跡などについては、全く無関心で無知。中国の隅々を訪ねているが、北京には(飛行機の乗り継ぎ以外)行ったことがない。

さて、今回の目的地、雲南省の最西北端に位置する「独龍江」。世界自然遺産に登録されている「三江併流」(長江、メコン河、サルウイン河の各上流が踵を接して流れる辺り)のさらに西に接して、ミャンマーの大河として知られるイラワジ河の源流が、チベットからミャンマーへ流れ下る間、一瞬雲南省最西北部を横切っている。

そこに、筆者のライフワークの一つである、野生アジサイの一種、それも私たちに馴染みの園芸植物としての「あじさい」の祖先形とも言えそうな集団が生えているらしい。しかし、まともな資料はない。自分で確かめに行くしかない。

このエリア(雲南西北部・チベット東南部・ミャンマーカチン州など)での調査行は、通常100万円から200万円ほどの予算をかける、と聞いている。貧乏な筆者には、とてもじゃないが捻出できる額ではない。

といって、71歳の著者には時間は余り残されていない。開花期を6月と予測し、今年こそ探索を実行しようと、東京のアパートの家賃を踏み倒して4万円の予算を作った。

中国の田舎に住むアシスタントMに、いつものように格安チケットを購入して貰ったら、成田から韓国(仁川)回りの香港行き。朝一番に出発して真夜中に到着である。年寄にはかなり辛い。

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6月12日の深夜、香港空港に着いた。

パソコンを開いたら、担当編集者U氏からのメールがあった。

実は、天安門がらみの記事を、3日前に「現代ビジネス」に発表したばかりなのである。筆者が遭遇した当時の出来事を、民主化運動の人々の行動を美化することなく、見たまま感じたまま記述した。どちらかといえば中国政府寄りの記事といってもよい。しかし、中国では、この事件を話題に挙げること自体ご法度である。「あなたたちの気持ちもわかります」とか言っても、通じないだろう。

「青山さん、入国拒否になるかも知れませんよ」 出発前に、そう驚かされていた。

今ほどネット環境が整備されていなかった10周年20年目周年の時と違って、今は当局に筒抜けだ。巷の情報では、監視体制は徹底されているらしい。それを考えれば、確かに入国拒否を食らってもおかしくない。30周年の記事は、多くのライターがメディアに寄稿している。ただし、まだ数日しか経っていない。30周年の記事を書いた人間が中国に入国するのは、もしかすると筆者が最初になるのかも知れない。今のところ前例がないので、問題なく入国できるのか、入国を拒否をされるのか、見当がつかない。

同じように事件について書いている他の大半のライターには、バックボーン(所属や経歴)がある。全くない筆者だけが入国拒否にあう、という可能性もあろう。逆に、多くの記者が拒否にあっても、何のバックボーンもない、いわば存在が無視され数のうちに入っていない筆者だけがセーフということもありうるかも知れない。

もし入国拒否ということになれば、それはそれで手記が書けて元をとれる、とポジティブに考えることにした。

ただ、正直な気持ちを言えば、「監視体制が徹底されている」という巷の情報には、どうも胡散臭いものを感じている。
「イミグレーションでは写真認定と指紋捺印が要求され、入国後に行動を追跡される」とか、「30周年を前にして、グーグルやユーチュブの閲覧が出来なくなってしまった」とかいった記事を見かけるが、前者(指紋捺印)に関しては昨年の一時期そうなったものの、現在は為されていないし(*)、後者に関しては20年ほど前から同じ状態が続いている。

*注:筆者に関してはフリーパスだが、捺印が義務付けられている人もいるようだ。過去に一度済ませておけば必要ないということなのだろうか? ちなみに、顔認証や指紋認証(任意)は日本でも行われているので、別に中国特有の現象ではない。

「天安門」の今回の記事だって、中国の田舎に住む、元婚約者のSや、弟子兼アシスタントのMは、筆者が送信した添付メールを、普通に見ている(中国ネットの「百度」を通じて、簡単に「現代ビジネス」の天安門記事を検索できる)。巷の情報は、なんか実際とは異なるような気がするのである。

筆者は、中国の資源(野生の昆虫や植物)を調べて撮影して発表(マニアやコレクターではないので標本を持ち帰ったりはしない)しているわけで、それは見方によっては国家機密の漏洩であり、大変な犯罪に相当するのかも知れぬ。ある意味相当に際どい行動を30年間続けてきているのだが、(2度の誤認逮捕を除き)これまで政治的な問題に巻き込まれたことはない。

なんにも無かったり、何でもありだったり、要するに中国は、出鱈目、適当なのだ。

U氏は、「それ以前に香港にスムーズに入れないかも知れませんよ、6月6日に大規模デモがあって、その後も大きな騒ぎが続いているようですから」という。まあそれはないだろうけれど、今回初めての韓国経由、香港はともかく中国入国に際しては、余計な詮索をされないか、ちょっと気にかかる(ちなみに、二度の誤認逮捕のうちの一度は、台湾経由で入国したことが引き金になった)。

さて、深夜に香港に着き、朝まで空港に滞在し、朝一番のバス深圳に出て、深圳のホテルに泊まるか、Mが借りてくれている広州のアパートに一泊したのち雲南に向かうつもりでいた。

空港で受け取ったU氏からのメール。
「青山さん、香港揉めているどころか、大変なことになっています」「何時まで香港にいるのですか?もしまだ滞在しているようだったら、撮影に向かって見ては?歴史的な事件を目撃するチャンスですよ」

騒ぎが起こっているのは香港島の中心部らしい。時計を見ると深夜12時半。まだ空港ライナーが動いている。飛び乗って現場に行けなくもない。と言って、リュック担いだまま寝ないで動き回るのは、体力的にほぼ不可能だ(年寄には徹夜がメチャ堪える、若い人には分からないだろうけれど)。

仮に取材に行くにしろ、一度中国に出て、深圳のホテル(香港の1/5くらいの宿泊費)か広州のアパートで一晩眠り、荷物を置いて空身で香港を往復することにした。

情報によれば、このあと16日に本番のデモがあるらしい。独龍江行きを数日ずらして、ゆっくりと取材するのが良いだろう。

筆者の想いは、「第二の天安門事件」を、阻止することである。たぶん、みんなの考えていることとは正反対の意味で、、、。

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筆者は、香港大好き人間だった(過去形にして良いのか、現在形に留めておくのか、迷うところなのだが)。地獄の中国、天国の香港。四川や雲南の山中での調査を終え、広州駅で(イミグレ手続きをして)香港行き直通列車に乗った瞬間、生きて帰ってきた、という想いになったものである。

ちなみに直通列車は30年前にも既に存在していた。去年、直通列車が香港中心部まで延び、香港の主権に影響が、、、とかの記事が見受けられたけれど、実際は、切符の買い方とかプラットホームとか使用車両が改正されただけである。

30年間、香港イン・アウトで何百回と日中を往復しているのわけだが、いつの頃からか想いが変わってきた。最近は、香港にいる間はうんざり。むしろ深圳に出るとホッとするのだ。いったい何故なんだろう。

むろんその間にあった中国への返還(1999年)が、大きな要因であることには違いなかろう。香港の文化が中国クオリティに侵されつつある。

でも、それだけでは説明がつかない、もっと別の嫌な感じ。

そのことが、今回、解ったような気がする。

返還前は、いわばイギリスの「使用人」、敢えて言えば(欧米に)見下ろされる存在の弱者だった。

しかし、返還後は「主人」(欧米とは建前上対等)になって、中国本土やアジアを見下しだした。

香港の市民は、基本的に「エリート」「富裕層」である。

返還後、中国共産党政策が香港に侵入、と一般には理解されているが、実際は香港の資本主義社会が、中国に侵入しているのである(イミグレでの人の流れをみていると、そのことがよくわかる)。

得をするのは力を持った側だ。

ひとことで「力」と言っても、いろんな次元における「力」関係がある。

権力(例えば中国の共産党支配)という力。

空気に支配された無意識の同意(正義)に基づく力。

僕は中国共産党を否定する立場でいるが、「もしかするとあの時の海老、、、」さんの意見を聞くにつれ、後者の「力」のほうがずっと始末に悪い、と感じ出している。

(「上」その2に続く)




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