青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

シルビアシジミの正体

2023-09-13 21:22:24 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然

シルビアシジミの正体

カテゴリー:身近な自然



相変わらず次から次へとアクシデントが勃発、カメラが完璧にクラッシュし(修理費用の見積もり3万5000円)、3500円叩いてネットで中古を購入、しかしバッテリー充電器やCFカードは既に作ってない由、カメラがあっても使えない状況、詳細略すが苦労してそれらを入手。でも使い方(パソコンへの写真の取り込み方)が分からず、マクドの向かいのベスト電器スタッフにアドバイスを求め、結果写真を取り込めたのは良いのだけれど、スタッフの方がいじってる間にパソコンの機能が変わってしまい、パソコン作業が出来なくなるという一大事に。理不尽ではあるのだけれど更に3500円(偶然35の数字が並びます)支払って1日前の設定に戻して事なきを得た、、、、とホッとしたら、更に究極の災難が。その過程で、全く自分のうっかりで、徹夜で書き上げたシルビアシジミに関する論文(畢生の大作)をゴミ箱に捨ててしまった。ゴミ箱内部を消去した瞬間に気が付いたのだけれど、時すでに遅し。もう一度書き直す気力はないので、やけくそで(論文は止めて)ブログの記事にします。



3500円支払って、990円のトンカツ御膳を食べたら、残金は4000円弱、これで後25日間過ごさねばなりません。マクドのバイトの面接待ちなのだけれど、こちらも雲行きが怪しい。年齢、保証人なし、携帯無し、、、がネック。あと2つは、三世頼りなんだけれど、ギリシャ経由の連絡を、店側が認めてくれるかどうか、、、。

*その後、スシローなどでも面接にトライしたけれど、全て不採用。



・・・・・・・・・・・



さて、「シルビアシジミの正体」。



●極めて限られた空間にだけしか見られない、しかしそこには確実に棲息する。



現時点で確認できているのは3か所。



⓵刈り残し草地。5m×10m。

実質その中の半径3mほどの空間。

⓶金網とセイタカアワダチソウ群落を隔てた①に隣接する水道施設用地。5m四方。

車道側のコンクリート台と、刈り残し空間側のセイタカアワダチソウ群落の間(コンクリートに土が重なりその上にミヤコグサを含む雑草が生えた)半径1mほどの空間。

⓷両地から100m弱離れた池の堤防上。路傍3‐4mほどにミヤコグサの群落。



鳥羽公園とその周辺部(庄内、柏の森などを含む)の僕が歩いた(実質的なルートセンサス)ほぼ全ての地域(全体の99%以上に相当)では、ヤマトシジミのみしか検出できなかった。シルビアシジミを確認し得た上記3か所は全体からすれば僅か1%にも満たない空間である。継続調査を行った全ルートの距離は凡そ3km、シルビアシジミ確認地は距離にして約15m。全体の0.05%にしか相当しない。



むろん、シルビアシジミ発生地は他にもあるはずだ。しかしその存在を確認するためには、「絶対にここにいる」という前提での、ピンポイントでのチェックが必要である。



刈り残し草地では、シルビアシジミに遭遇した7月2日以降、(産卵場所一帯を残して周囲が刈り取られた7月6日を挟み)継続して観察している。



実は、それ以前(2023年4月~6月)も定期的に(2~3日に一度)チェックを行っていた。概ね公園内の調査開始時および終了時に、この草地を横切っていたのである。



4~6月(シルビアシジミに遭遇以前≒刈り取り以前)のこの草地には、ベニシジミが非常に多く、次いでツバメシジミ。ヤマトは余り多く見かけることは無かった。



ヤマトシジミは、昨年の10月~11月、今年に入って3月~4月には、公園一帯で数多く見られたのだが、5月~6月には余り見かけないでいた。それで、出来る限りヤマトシジミのチェックを行っておこうと、出会う個体を全て撮影していた。



7月2日も、その日の撮影を終え、最後にこの草地を横切って自宅に向かおうとしたとき、一頭の“ヤマトシジミ”がいたので、カメラに収めた。その時、あれ?もしかしたら、、、と気になって斑紋をチェックしたら、シルビアシジミだった。もしこの時(シルビアシジミが見られる数mの間に現れた“ヤマトシジミ”を)撮影していなかったら、半永久的にシルビアシジミと出会えていなかった可能性がある。



シルビアシジミが発生する3地点は、著しく狭い区域である。繰り返すが、“そこにいる”と分かったことで、その後のピンポイントでの継続観察が成し得ているわけだ



この余りにも狭い3か所の発生地で個体群を維持し続けることは不可能だと思う。隣接した⓵⓶はもとより、100m弱しか

離れていない⓷を含めた各個体群間の移動と交流は、充分に為され得ているはずだ。問題は、それ以外の地域個体群との交流である。未確認の発生地が断続的に~面でも線でもなく点状に~連なっていると思われるが、その確認は至難の業である。



年次発生パターンについて。



7月上旬の観察では、汚損個体・新鮮個体ともに見ることが出来た。数は多くないが、以降もほぼ途切れることなく、現在(9月中旬)に至るまで姿を見せ続けている。



では、存在に気付く前は、どうだったのだろう。シルビアシジミの第1化の出現は、通常4月~5月と考えられている。それは見落としていたのだろうか?(たぶん見落としていた)



ちなみに7月上旬の出現個体は、第2化もしくは第3化であろう。第3化以降は、一部全世代と重複しながら発生している可能性もある。



興味深いのは、ヤマトシジミなど3種との出現パターンの比較である。北方系の2種、ルリシジミとツバメシジミは、春先の3月‐4月に第1化が出現したのち、間を空けずに初夏5月に入っても第2化と思われる個体が多数出現する。ことにツバメシジミは、当地に於ける5月‐6月(同じく北方系のベニシジミに次いで)最も数多い蝶であろう。



一方暖地性のヤマトシジミは、春先には(むしろ北方系2種に先駆けて)多数の個体が出現する*が、初夏には数が減ってしまう。ことに6月は明らかにツバメシジミよりも数が少ない。

*早春のヤマトシジミは、新年度第一世代というより、前年度の最終世代に相当すると考えた方が良いかも知れない。



そして7月‐8月の盛夏には、それまで多数いたツバメシジミ共々、ほとんど姿を見なくなってしまう。単純計算上は第3化に相当すると思われる世代が、姿を消してしまうのである。



運が良いのか悪いのか、ちょうどその季節(盛夏)にカメラが完全破壊して撮影が出来ないでいたわけで、おそらく9月になれば (遅れて出現する第3化なのか、第4化なのかはともかく)再出現するであろう、その頃にはカメラもなんとかなるのではないか、と思っていた。



実は今日(2023.9.6) 久しぶりに、新鮮なツバメシジミに出会った。一昨日から、ベニシジミも新鮮個体が出現し始めた。

ちなみに、5月まで(1‐2化)は非常に多く見られたモンキチョウも、その後ほとんど姿を消してしまっていたのだが、今日久しぶりに非常に新鮮な個体に出会った。これら(ツバメシジミ、ベニシジミ、モンキチョウら)は、おそらく第4化に相当するのであろう。



日本の(北と南を除く)大多数の地域では、Blue3種(ヤマトシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミ)+ベニシジミの基本周年発生経過は、ざっくりと見渡して次の様であると考えられる。

第1化:3‐4月

第2化:5‐6月

第3化:7‐8月

第4化:9‐10月

(第5化:11‐12月?)

*第2化以降は世代の重なりも考えられる。



問題は7‐8月の盛夏に出現する第3化。東京の観察地に於けるモンキチョウの例でいえば、春先と初夏の第1化‐2化は豊産する(草地上を群がり飛んでいる)のに、6後半以降の暫くの間、第3化に相当するはずの個体は、嘘のように全く 姿を消してしまう。次に姿を現すのは、秋になってからである。それは第4化なのだろうか? それとも遅れて発生した第3化なのだろうか?



>盛夏の間、第3化は発生しない(いずれかのステージで休眠?)。

>一応発生はしているが、人の眼につかないところに潜んでいる。

>どこかに移動し、第4化世代になって戻ってくる。

>>それらの複合パターン。



東京の観察地(青梅市霞丘陵)ほど極端ではないけれど、福岡の観察地(飯塚市鳥羽池)でも、状況は似たり寄ったりだ。そしてモンキチョウのみならず、他の多くの蝶達も、同様の問題を内包しているように思える。



東京や福岡の都市近郊低地帯の普通種ブルー3種に関しては、上掲のごとく年4~5世代で、第3化出現期に相当する盛夏に数が減り、9月に入って次の世代が出現するわけだが、昨年晩秋(10月末~11月)に確認出来たのはヤマトシジミのみで、ツバメシジミとルリシジミには出会っていない。



第3化問題はひとまず置くとして、日本産の(年に複数世代が出現する)普通種の蝶たちは、基本的に日本の大多数の地域では年4回(または5回、むろん重複している可能性も)発生、北方系のルリシジミやツバメシジミでは第1‐2世代(春・初夏)の比重が、南方系のヤマトシジミでは第4(‐5)世代の比重が強い。



ルリシジミ、ツバメシジミ同様に北方系種の代表的存在であるベニシジミは、秋遅くにも出現する(第5化に相当?)。ヤマトシジミにとって第1化が出現する早春は、実質的に秋の延長に相当するのかも知れないというのとは逆に、ベニシジミにとっての晩秋は、前倒しの春に相当すると考えることも出来る(実際、晩秋のベニシジミは“春型”的外観を示す)。



ヤマトシジミより更に南方的な性格が色濃いウラナミシジミとクロマダラソテツシジミは、年に前半はほぼ全く姿を現さず、

夏の終わり以降、一気に数が増える(そのメカニズムはよくわかっていない)。



ウラナミシジミは、この刈り残し草地に於いても、8月に入ってから数多くみられるようになった。この“刈り残し”空間(今は蔓性マメ科の雑草で覆われている)で出会うブルーは、シルビアシジミかウラナミシジミのどちらかで、たまにツバメシジミ、ヤマトシジミ、クロマダラソテツシジミが混入する。ちなみに、草地末端のクヌギ林に隣接する空間にはルリシジミも現れる。



クロマダラソテツシジミは、昨年晩秋に極めて多数の個体を観察(12月中旬には市街地で遭遇)した後、今年に入って全く姿を見なかったが、8月中旬に市街地で1頭確認、9月になってこの刈り残し草地周辺にも現れるようになった(昨日には僕のアパート隣家のソテツの周りを群がり飛ぶ様に遭遇、詳しくは後述)。



以上(年の前半はほぼ皆無で後半なって極端に数が増えるウラナミシジミとソテツシジミを別とすれば)、シルビアシジミを含むブルー各種は年4(‐5)回の発生であろうが、それぞれ南または北の蝶という性格が明確なヤマトシジミ、ツバメシジミ、ルリシジミが、世代ごとの発生量に大きな揺れ幅がある(春または秋に偏る)のと違って、シルビアシジミには、どうやらその傾向が見られないような気がする。



もとよりシルビアシジミの場合、他3種ブルーと違って発生空間が圧倒的に限られているので、同一次元での比較には無理があろうが、年間や世代を通しての出現が春や秋に偏ることがないようなのは注目に値する。



改めて「普通種ブルー3種+シルビアシジミ」の地理的な次元でのアイデンティティを、大雑把に見渡しておこう。



ルリシジミ

グループ(セクション)としては南方系、種(種群)としては北方系。



ツバメシジミ

グループ(セクション)、種(種群)とも北方系。



ヤマトシジミ

グループ(セクション)、種ともに南方系。



シルビアシジミ

グループ(ヤマトシジミと同一セクション)としては南方系、種群(広義の種シルビアシジミZizina otis)としても南方系、種(狭義の種シルビアシジミZizina emelina)としては中間温帯に結びついた遺存的な存在。



多化性の種のうち、中間温帯に結びついた、東アジア地域に固有の(他地域に姉妹分類群が存在しない)、本来は遺存的種でありながら現時点では繁栄の極にある、アゲハチョウ、キタテハ、ヒメウラナミジャノメなどは、どれも発生量が年間を通して 偏らないという共通点を持つ。狭義のシルビアシジミも(非繁栄という違いはあるにしろ)同様である。



・・・・・・・・・・



6月下旬からカメラの調子が最悪状態になり、8月に入って完全壊滅、撮影自体が出来なくなってしまった(修理に出している)。でも、シルビアシジミは一応チェックし続けている。東京でもそうだった(むしろ東京の方が顕著だった)が、盛夏 には嘘のように蝶影が途絶えてしまう。上記のごとく、どの蝶も第3化相当の世代が姿を現さないわけで、幸か不幸か、その時期とカメラ不在の時期が重なってしまったわけだ。猛烈な高温や、6末から7はじめにかけての一斉の草刈りも、複合的に作用していると思われるが、因果関係は不明。



しかし、その期間も、他の蝶はともかく、シルビアシジミは(新鮮個体・汚損個体が混じって)出現し続けていた。



9月になって、3500円で中古カメラを入手、撮影再開したのだが、偶然かどうかはともかく、そのタイミングに合わせるように(シルビアシジミ以外の)蝶達も、一斉に再出現(第4化に相当)、ヤマトシジミが明らかに増え、ツバメシジミやベニシジミも再び姿を見せ始めた。



ここ数日は、朝と夕に、刈り残し草地とそれに隣接する水道用地で、シルビアシジミのチェックを行っている。ちなみに、7月下旬にシルビアシジミが最も多く見られた池堤上の路傍のミヤコグサ群落は、8月に入って草刈りが行われ、丸裸になってしまっている。



刈り残し草地の方は、現在は再び草(マメ科の蔓植物)に覆われて刈り取られた部分と区別がつかなくなってしまっている。シルビアシジミが生育するための環境条件は以前よりも悪くなったように思えるのだが、それでも相変わらず全く同じ場所(半径2~3mの区域)に姿を見せる。



隣接した(刈り残し草地とは金網とセイタカアワダチソウ群落で隔てられている)水道用地でも、貧弱なミヤコグサの株が生える著しく狭い範囲(半径1mほど)に姿を見せる。老若雌雄が日ごとに入れ替わって。



9月4日の夕刻も、午前中雌が産卵を行っていた同じ空間の草穂上に休息(そのまま睡眠?)中の個体を撮影。

翌朝、同じ草穂をチェックしたら、同一個体(雌)がとまったままだった。そのすぐ隣にはヤマトシジミもとまっていた(写真参照)。



翌朝も、同じ草穂から20㎝ほど離れた葉上に、別の新鮮な雌がとまっていた。ヤマトシジミの雄も近くを飛び回っていたが、シルビアシジミの存在に気付かない。一度だけ接近して、瞬間的に縺れ合ったが、すぐに解けて、ともに葉上に静止した。



・・・・・・・・・・・・・・



9月に入って、完全に秋のメンバーに入れ替わっている。毎朝あれほど騒がしかったクマゼミの鳴き声が、ぴったしと止んだ。代わってツクツクボウシ。



思えば、僕の人生とツクツクボウシは、切っても切り離せない関係にある。東京の部屋のダンボールには、何10本もの録音テープが収まったままだ。



ツクツクボウシの鳴き声のシャワーを浴び、久方ぶりに撮影。目の前 (たぶん数10㎝)で鳴いているのに、どこにとまっているのかサッパリ分からない。そんな馬鹿な、、、、と思いつつ、苦労して姿を探し出す。やっぱり目の前にいた。それも何頭も。木肌に(光と影を伴って)それは見事に溶け込んでいるのである。樹液に集まるタテハチョウ類もそうなのだが、今更ながら凄い能力だと思う(全ての生物が隠れる能力を身に着けているのだと思う)。



むろん、典型的な日本本土タイプの鳴き声パターン。前半「ホーシツクツク」が20数回、後半「フイーヨーシー」(鳴き声表記は人によって異なる)が3または4回。その様式は、日本全国(東北南部~九州大隅半島)で極めて安定している。稀に5回ないしは2回があるが、何万例チェックして0回は皆無(外圧により突然鳴き終えた場合を除く)。



6回以上も滅多にない。ただし、種子島(南部)とトカラ列島(口之島、中之島、横当島でチェック)は、安定的に6回やそれ以上鳴く(前半部とのバランスも本土産とは異なる)。

(*今回、この公園で7‐8回の個体を2例チェックしたが、全体のバランスは本土産の典型)



ちなみに、屋久島と三島列島は100%の個体が0回、例外はない(全体の基本構成も更に異なる)。近年本土からの(園芸樹木に伴う)人為移入が為されている可能性があり、今後の状況が懸念される。



中国大陸産(北は朝鮮半島から台湾を経て広州近郊やベトナム北部まで)は、日本本土とも屋久島ともことなる独自の鳴き声パターン(全地域で共通)。



ツクツクボウシ属は、南西諸島や中国大陸南部などに数種が分布しているが、その中でもツクツクボウシは独自の存在(僕は中琉球=奄美諸島と沖縄本島周辺部固有のオオシマゼミが対応種であるとみなしている)。



上述したように明確に3集団に分けることが出来る。

日本本土(種子島、トカラ列島を含む)

屋久島(三島列島と口永良部島を含む)

中国大陸(朝鮮半島、台湾、インドシナ北部を含む)

具体的の比較は別の機会に。



擬人的に例えていえば、

●屋久島産

「新しいものなんて覚えないもんね!」と最初から諦めてしまっている『落ちこぼれ』。

●中国産

不器用で必ず途中でトチってしまい、しかし絶対に諦めずに2部を唄いぬく『努力家』。

●日本本土産

すらりと取得し、失敗は全くしない『エリート』。



それぞれは遺伝的に極めて安定していて、基本的な鳴き声構造が明確に異なり、かつそれぞれの集団内で例外はない(前述のごとく、日本本土タイプのうち種子島とトカラ列島で独自の特徴を示すが、その特徴の方向性が、隣接する屋久島や三島列島とは正反対の方向にあることは興味深い)。



2023年9月6日:記(9月13日:一部加筆)



・・・・・・・・・・・・・・・・・



写真⓵

シルビアシジミ

2021.9.9 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓶

ヤマトシジミ

2021.9.6 刈り残し草地に隣接した水道用地 



写真⓷

シルビアシジミ産卵

2021.9.4 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓸

ヤマトシジミ産卵

2021.9.4 水道用地の脇



写真⓹

シルビアシジミ雌

2021.9.4 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓺

シルビアシジミ

2021.9.4 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓻

シルビアシジミ(左:青丸)とヤマトシジミ(右:赤丸)

シルビアシジミは前日夕刻と同じ個体が同じ草株にとまっていた。

両種の中間地点の下方に産卵が行われているミヤコグサの株が見える。

2023.9.5 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓼

⓻の拡大:シルビアシジミ

2023.9.5 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓽

⓻の拡大:ヤマトシジミ

2023.9.5 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⓾

シルビアシジミ

⓻‐⓽の翌朝、同じ場所。しかし個体は別。

2023.9.6 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⑪

シルビアシジミ雌

2023.9.6 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⑫

ヤマトシジミ雌

2023.9.6 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真⑬

ツバメシジミ

2023.9.6 刈り残し草地と隣接した水道用地の間に生えるコマツナギ



写真⑭

クロマダラソテツシジミ

2023.9.7 刈り残し草地

クロマダラソテツシジミは今年最初の世代、この後10月に次の世代が発生するが、その関係について非常に興味深い事実が判明した。それについては、機会を改めて紹介する。



写真⑮

クロマダラソテツシジミ

2023.9.7 刈り残し草地



写真⑯

クロマダラソテツシジミ

2023.9.9 僕のアパートの隣家

ソテツに群がっていた



写真⑰

クロマダラソテツシジミ

2023.9.9 僕のアパートの隣家



写真⑱

ウラナミシジミ

2023.9.3 刈り残し草地



写真⑲

ウラナミシジミ斑紋異常型

2023.9.13 刈り残し草地



写真⑳

シルビアシジミ

2023.9.9 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真㉑

シルビアシジミ

2023.9.9 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真㉒

シルビアシジミ

2023.9.9 刈り残し草地に隣接した水道用地



写真㉓

ルリシジミ

2023.9.3 刈り残し草地の水道用地と反対側の縁



写真㉔

ルリシジミ

2023.9.9 刈り残し草地の水道用地と反対側の縁の路傍



写真㉕

ツバメシジミ産卵

2023.9.10 刈り残し草地と隣接した水道用地の間に生えるコマツナギ



写真㉖

ヤマトシジミ産卵

2023.9.11 刈り残し草地と隣接した水道用地の間



写真㉗

シルビアシジミ

2023.9.12 刈り残し草地



写真㉘

シルビアシジミ

2023.9.12 刈り残し草地





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大変です!

2023-05-05 11:05:20 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然



【Ⅰ】

マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】

「沖縄に対する日本」

「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」

の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。



・・・・・・・・・・



困った事態になってしまいました。



10日前に75歳、後期高齢者になったわけですが、おかげで大変な目に会っています。生活保護費がまたまた大幅に減らされた。昨年11月に支給が始まってから、3月まで3万円台だったのが、4月からは夏季ということで(光熱費上乗せ分の)5000円減額、さらに5月からまた5000円の減額で、支給金2万ちょっとになってしまいました(基本金マイナス年金+家賃:年金は東京の資料保管家賃とバーター)。電気ガス水道代を支払うと、3000円ほどしか残りません。次の「週刊中国の蝶」の売り上げ金1万5000円(この程度の額までの収入は支給金調節から免除される)が入るのは5月10日なので、あと1週間、1日500円の計算。



減額の理由は、年齢。後期高齢者は、食費などが少なくて済む、という認識に基づき、その分支給金が減っていくわけだそうです。なんだかなぁ~、と思います。役所の人も一応は同情してくれていて、不満ならば国を訴えれば良いと。でも、そんな面倒なことに関わっている余裕はないです。



日本国全体が「若者賛美」「老人排除」に向かいつつある気がするのですが、これ(若者=善/老人=悪)が「差別」とは見做されず、当然のことのように解釈されていることに、強い違和感を覚えます(ひいては無意識的右傾化に繋がっていくわけですが、それについては改めて)。



さて、ここしばらく天候が悪いので、朝からジョイフル。モーニングトースト(ドリンクバー付き税込み328円)からスタートしたほうが、午後にお代わりライス大盛り(110円)とキャベツサラダ(110円)の追加注文でトータル500円台で済むので助かります。好天の日は朝からフィールドに出て、午後一食だけだと安上がりで済みそうなのだけれど、(ゴールデンウィーク中は日替わりランチがないことも有って)結局割高で量が少ないという結果になってしまう。



丸一日Wi-Fiと格闘(論文などのチェック)しても、それでも延々と終わらない。最後の最後のセセリチョウ科で悪戦苦闘しています。よくわからない部分は適当に胡麻化して進めようと取り組み始めるのだけれど、やっぱりきちんと責任もって作品を作りあげねば、と思い直し、いつまで経っても終わらないわけです。とはいえ99%完了で、あとは「アカセセリの仲間」と「イチモンジセセリの仲間」を残すだけ。上手く行けば今日中、遅くとも明日にはゴールです。もっとも、シジミとセセリは、まだ半分ぐらい英訳・中国語訳を終えていない。それに一週間。字体を揃えたりとか構成のチェックに一週間、最後にもう一度訳文のチェック。あと一か月ですね。(殊に論文チェック時や翻訳時に)何度も心が折れそうになるので、集中力を途切らさない、それが全てです。



ブログ

「コロナとマスクと民主主義」(マスク解禁に関する本質的な問題を再考する)

「ゴールデンエイジofアメリカンポップス」(ここんところ女性シンガーに入れ込んでいる)

「近所の森と道端の蝶」(福岡編、今年に入って35種)

、、、、、書きかけの原稿がどんどん溜まっていくのですが、まだ当分は「中国蝴蝶野外観察図鑑」に全力を注ぎます。



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Blue 補遺Ⅱ(初ツバメシジミ、初ヤマトシジミ)

2023-03-19 21:02:07 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然



「週刊中国のチョウ」再々スタートしたのですが、売上金の大半の振り込みは4月まわしで、今月の収入は一冊分802円だけです。所持金併せて2500円ほど。あと2週間、毎日ほうれん草(218円)一食で過ごさねばなりません。腹ペコでふらふら、眩暈がします。



「ブルー」は前編と補遺のみをアップして、結局、いつものごとく後編に取り掛かれずにいます。補遺をもう一つ追加。



今日(3月19日)もう一つの「北のブルー」、ツバメシジミ登場(「南のブルー」ヤマトシジミも昨秋に続いて再登場)。



これで、本来のブルー・トリオ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミ勢揃いです。昨年秋の新ブルー・トリオの、ウラナミシジミ、クロマダラソテツシジミと併せて、ブルー・クインテッド。それにベニシジミが春秋に跨って出現、ということになります。



ツバメシジミについては、「ブルー(ルリシジミの)後編」を終えてから、詳しく書いていきたいと思っています。


















ツバメシジミ









ツバメシジミ雌産卵

ボロ個体、ということは、だいぶ前から出現していたことになります。









ヤマトシジミ

ベニシジミ同様、秋にも春にも発生。









ツバメシジミとヤマトシジミは良く翅を開きますが、ルリシジミはなかなか開かない。





ベニシジミ

求愛行動があちこちで行われています。









スイバに産卵する雌









ベニシジミ






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Blue (前編)

2023-03-12 20:54:58 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然



Blueとは、

★青(国によっては緑との境が曖昧)。

★寂しい。

★Patsy Clineのヒット曲、、、じゃなかった、、、録音の直前に亡くなったので、本人のバージョンは有りません。後に13歳のLeAnn Rimesのデビューヒット(Billbord26位/C&W10位/Album3位)となりました、、、彼女も、もう40歳ですね。そういや今日3月12日は三世(チエちゃん)の40歳の誕生日です。

★“Mr.Blue”はBobby Vinton(「Blue On Blue」「Blue Velvet」etc.) それとも Roy Orbison(「Blue Angel」「Blue Vayou」「California Blue」etc.)どっちなのかな?、、、Neal Diamond「Song Sang Blue」もお忘れなく。

、、、とまあ、いろいろあるのですが、以前アメリカに行ったとき、蝶の名前(一般名称)はほとんど通じなかったのだけれど、“ブルー”だけは、みんな分かってくれた。



★Polyommatini(シジミチョウ科ヒメシジミ亜科ヒメシジミ族)の総称ですね。

ルリシジミは、その代表的存在です。



一昨日、突然ルリシジミが出現しました。ベニシジミ(「コッパー」「ルビー」または「サファイア」)と並ぶ「北の蝶」の両横綱。菜の花畑(というかアパートの前の路傍に雑然と生えている)に群がって飛んでいます。





去年の秋には、一頭も見ることが出来なかったのですが、「南の蝶=秋」「北の蝶=春」の図式通り、期待を裏切らず現れてくれたわけです。秋に沢山飛んでいた「南のブルー」代表のヤマトシジミ・ウラナミシジミ・クロマダラソテツシジミ(新規参入)は、今のところまだ姿を現しません。あとは「北のブルー」のもう一種ツバメシジミの出現待ち(村上選手の復調待ちみたく)。それを思えば、秋にも沢山いたベニシジミは大したものです(大谷君みたいです)。







もっとも、なかなか良い写真が撮れない。沢山飛んでいると、意外に良い写真が撮れません。もうひとつ集中力に欠けるということも有るのでしょうが、なかなか止まってくれない。翅を開くと奇麗な空色なのですが、開いてくれません。目の前をブルーの翅表を煌めかせながら、これ見よがしに飛び交っているので、余計にイライラします。結果、焦ってしまって、思うように撮影出来なくなって、ドツボに嵌ってしまう。まるで大谷選手の後を打つ村上選手みたいに(昨日の最終打席でやっとヒットが1本出ました、これでだいぶ気が楽になったと思います)。





複数頭(概ね雄同士)が縺れ合って樹木(ヒサカキ)の上を飛び交っているのだけれど、標準レンズだけなので指をくわえて見ているだけです。金網のところに雌がいました。













菜の花にも止まって蜜を吸っているのですが、翅は閉じたまま。














ちなみにベニシジミも。こちらは良く翅を開きます。





キチョウ類とかキマダラヒカゲとかは静止時に絶対に翅を開かない。飛翔時や透視光で表の色と模様が分かります。

モンキチョウ(北の蝶代表選手のひとつ)とキチョウ(南の蝶代表選手のひとつ)の追飛翔、結構気に入った写真です。





ルリシジミも必ず翅を開くので、根気よく開くまで待つしかありません。でも翅を閉じたまま微動だにしない。48分待ち続けて、諦めて指でつついたら飛んで行ってしまいました。



一体、いつ翅を開くのでしょうか?

考えてみましょう。



まず日齢との関係。

ルリシジミの場合、卵から親蝶になって一生を終えるまで、一世代平均2~3か月ほど(冬を挟んだ世代はもう少し長い)でしょうか。そのうち蝶の姿で過ごすのはマックス1か月(雌の方が長めのはず)ぐらいだと思います。外敵とかによる外圧を考えれば、平均10日から半月程度(調べたわけではなく適当な類推)。その、蝶になってからの「幼年」「少年」「青年」「中年」「老年」にそれぞれ相当する時期で、雌雄それぞれ行動パターンが異なるわけです。 



翅を開くのも何らかの意味があるのかも知れず、主なところで、「占有」「日浴」等が思い浮かびますが、吸蜜中などに特に意味なく開くということも有り得るような気がします(それで言えば絶対に翅を開かないキチョウなどの場合により特殊な意味があるのかも知れない)。



日齢は蝶になってからの一生の日割ですが、一日毎の時間割も重要な意味を持っているはずです。なんせ、蝶の一日は人間に例えれば一年を遥かに上回る時間単位なので。分単位で、行動の状況は大きく変化します。朝から夕方のそのどこかのタイミングで(むろん日齢との組み合わせの上で)翅を開くということなのでしょう。



組み合わせということで言えば、他にも様々な状況の組み合わせが考えられます。環境、気象条件、あるいは外敵との関係、そして特に重要なのが雌(雌の場合は雄)との関わり、、、状況次第で、行動様式は大きく変わってくるのです。本来ならば、それらを把握したうえで、撮影に当たっての対処を行わねばならぬのですが、現実問題としては、まず不可能です。一応の経験値を基に、(より確率の高い)偶然のチャンスを待つ。



といって、毎日毎日、終日待ち続けるわけにもいかない。一昨日も昨日も、日替わりランチを注文したまま外に出て観察を続けている。適当なところで切り上げざるを得ません。



今日は天気も余り良くないし、原稿執筆(その合間にこのブログも)に専念しようと、モーニングトーストを食べつつ、ここまで書いて、、、、ふと思い立って、やっぱり一応チェックしておくことにしました。



朝8時に菜の花を通りかかった時は、まだ十分に陽も差していず蝶の気配もなかったのですが、今は9時半、そろそろ活動を始めているかも知れない。



すでに飛び回っていました。ヒサカキの樹冠を数頭の雄が縺れ合って追飛しています。葉上で翅を開いて占有姿勢をとっている雄も見えます。悔しいことに標準レンズでは撮影できません。





と思っていたら、一頭が舞い降りて、菜の花の下に止まって、一瞬翅を開きました。標準レンズなので十分には近寄れず良い写真は撮れなかったですが、一応撮影はしました。昨日の最終打席の村上選手のヒットみたいなもので、とりあえずは肩の荷が下りた。





その後、別のもう一頭が舞い降りてきたけれど、やはり良い写真は撮れなかった。でも、現時点では、翅を開くのが朝であることが分かったわけで、それはそれで大きな収穫です。その後何頭も地面を這うように多数の雄が(明らかにメスを探して)飛び交っていたのですが、なかなか止まりません。明日以降、求愛、交尾、産卵に出会えるかも知れないので、期待して待ちましょう。





1頭の雄がヒサカキの下の方の花に止まって吸蜜していました。何とか撮影成功。





ヒサカキは、屋久島固有(ただの固有種というだけでなく多くの問題提起を備えた非常に魅力的な存在)のヒメヒサカキとの絡みもあって僕の好きな植物ひとつです。中国でもこの仲間に出会うたびに撮影しています。しばらくしてから花の拡大写真を写しておこうと思い立ち、手で花序をつまんだら、ちょうどそこにもう一匹が止まっていて、飛び去って行ってしまいました。大失敗です。



天気も下り坂になってきたし、お昼前に観察を切り上げて、ジョイフルに戻って、執筆を再開しています。全く偶然ではあるのですけれど、実はちょうど今「中国胡蝶野外観察図鑑」のルリシジミの項を纏めているところなのです。



でもって、このブログでも、ルリシジミについて、もう少し書いていきます。長くなるので、2回に分けます(部屋に帰ってオーストラリア戦見なきゃなりません、今日の先発は山本由伸)。



・・・・・・・・・・・



冒頭に書いた、リアン・ライムス13歳が、78歳のエディ・アーノルドとデュエットした時のライブ映像がユーチュブで公開されていました。これが素晴らしいです。

「キャトル・コール」







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無題(補遺)またはベニシジミの奇跡!

2022-11-04 08:37:10 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然





読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。



【Ⅰ】

マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】

「沖縄に対する日本」

「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」

の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。



・・・・・・・・・・



相変わらず、毎日朝8時から夜10時までジョイフル40番テーブルでパソコンと格闘、お昼過ぎ頃に、10分間ほど、ぶらっと撮影に出ます。アパートの部屋まで4分間の道程の途中、2分間ぐらいは道脇が草叢です。そこに飛んでいる蝶を、無作為に適当に撮影しています。



メンバーは同じで、メインは「ブルー・トリオ」です。「ブルー・トリオ」といえば、もちろん「ルリシジミ」「ツバメシジミ」「ヤマトシジミ」ですが、今現在での当地に於けるブルー・トリオは、「ヤマトシジミ」「クロマダラソテツシジミ」「ウラナミシジミ」です。ルリシジミとツバメシジミは全く姿を見ていません。



まあ、季節が晩秋だけに、(春の世代に偏って出現する)いわゆる北方系の前2者は数が少なくても当然なのかも知れませんが、去年の東京(霞丘陵)でも年間を通して多くはなかった(ことにルリシジミは少なかった)ですし、温暖化の影響で暖地性の種の勢力が増しつつある、という見方も成り立ちそうではあります。とはいっても、同じような分布パターン(北方系)のベニシジミは「暖地性ブルー・トリオ」に負けずに沢山飛んでいる。それらのことも併せ考えれば、単に「温暖化」が要因とも言えないような気もします。



北方系代表種ベニシジミがんばれ!と声援を送りたいですね。



ベニシジミといえば、10月20日に撮影した同じ個体を10月30日にも撮影していて、その偶然に驚いたものです。出会った蝶は無作為に一応全部写しているので、今日もベニシジミは何枚か撮影しました。また同じ個体だったら面白いのだけれど、さすがにそれはないよね、と思いながら、、、。で、ジョイフルに戻って撮影写真をチェックしたら、まさかの同じ個体です。15日間(翅の破損具合から見て更にその数日前から)、ほぼ同じ時間帯に、ほぼ同じ場所で、雌がやってくるのを待ち続けているわけですね。



写真⓵

ベニシジミ(今日)。



写真⓶

ベニシジミ(今日)。



写真⓷

ベニシジミ(4日前)。



写真⓸

ベニシジミ(15日前)。



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以下(写真⓹~㉗)「今日のブルー・トリオ」




















































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続・無題

2022-11-03 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然




読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。



【Ⅰ】

マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】

「沖縄に対する日本」

「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」

の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。



・・・・・・・・・・



いつもの事なんですけれど、「上」「下」2回に分けて書くと、「上」をアップした時点で、安心してしまって「下」をアップしないまま時間が過ぎて、結局お蔵入りになってしまいます。それで、(写真を選んでいると混乱してしまうので)余り考えずに、残りの分をアップしちゃいます。



昨日の分はあや子さんに送信した時点でタイトル書き忘れていて、指摘されて慌てて「無題」ということでアップしました。「続・無題」です。



僕の記事は、蝶や植物の話でも、コロナやロシアの話でも、中身は同じなんですね。

「俯瞰的に対する」

「“かのように”という前提に立っていることの自覚」



だから、「無題」でも良いかと思っています。



・・・・・・・・・・・・・・・



写真⓵~⓼

















ベニシジミ



昨日紹介した“ブルー”3種は、それぞれポジションが異なるにしろ、暖地性の、いわゆる南方系の蝶です。日本の各地でポピュラーな“ブルー”としては、他にルリシジミとツバメシジミがいて、ともに(どちらかと言えば)北方系の蝶です。このうち特にルリシジミの存在感がなんとなく薄れつつあるような気がしていて、、、単なる思い込みなのでしょうが、環境云々とは関わりなく「種」としての勢力が弱まりつつあるのではないかと、去年このブログに書きました。一方で、ルリシジミ(やツバメシジミ)と世界的な視野でほぼ一致する分布圏を持つベニシジミは、“北方系種”の代表として大健闘しているように思います。3種とも北から南にじわじわと分布を広げている(ルリシジミは頭打ちですが)ことも興味深いです。



写真⓸は産卵。地表に茂る草の中に潜り込むので産付現場を写すのは結構難しい。



夏は高温期型(翅表が黒鱗に覆われる)、春に低温期型(翅表は鮮紅)が出現し、晩秋に再び低温期型に置き代わるようです。今の季節は、両タイプを見ることが出来ます。





写真⓵と⓹に注目してください。10月20日と10月30日の撮影、同一個体です。鱗粉の鮮度が10日間でこれくらい落ちるという実証モデルです。



写真⓽~⑰



















チャバネセセリ



こっちは、暖地性(南方系)の種の代表ですね。この時期には通常イチモンジセセリと一緒にいることが多いのですが、今回出会った個体(毎日多数)は、全てチャバネセセリでした。そのあたりのことについての感想は昨日書きました。早計に答えを出しちゃいかんでしょうが、南方系北方系に関わらず、(温暖化とか環境変化とか以前の要因を基にして)栄枯衰勢が繰り返されているような気がします。⓽⓾は産卵。



写真⑱~㉖



















キチョウ(キタキチョウ)



蝶は(全ての野生生物は、と言って良いかも知れない)は“忍者”です。キチョウの逆光静止時は、完全に周囲に溶け込んで存在が分からなくなりますが、普通に(順光で)止まっていてもなかなか分からんですね(㉖)。半面、飛翔中は鮮やかな黄色が非常に目立ちます。何頭かがチラチラ飛んでいれば(⑳㉔)、その繁みの中に別個体(雌とは限らない)が止まっているわけですが、それが分かっていても、なかなか見つけ出すことは出来ません(㉑-㉓㉕)。



写真㉗

ツマグロヒョウモン



こいつも(昔はともかく今は)どこにでもいる蝶で、いわゆる「駄蝶」の代表種でもあるのですが、駄蝶No.1のヒメアカタテハ(今日11月1日に一頭撮影)ともども、実に美麗な種です。もっともそれは雌。雄はつまらんですね。でもよく見ると結構美しい。実は、通常は雌ばかり見かけるのですよ。でもこの一週間、ここで出会った個体(群がるように飛んでいる)は全て雄。雌には一回も出会っていない。不思議です。



熱帯アジアのほぼ全域に分布していて、地域変異は全く無いようです。ただし唯一の例外として、インド南部(デカン高原およびおそらくセイロン)産は、他とは違う翅型をしていて魅力的です。近縁種が他に無く、1種だけが広い地域に普遍的に(かつ共通形質を保って)分布している蝶といえば、次に紹介する東アジア広域分布種のアゲハチョウ、前に紹介した北半球広域分布種ベニシジミ、それに(蝶で唯一の)ほぼ世界共通分布種ヒメアカタテハなどがありますが、どれも不思議な共通項があって、広い分布圏の片隅に棲む特定の地域集団(通常唯一の近縁別種とされる)だけが、思いっきりユニークな外観をしている、ということです。アゲハチョウはルソン島のベンゲットアゲハ、ベニシジミはアビシニア高地(エチオピアなど)のヒイロベニシジミ、ヒメアカタテハはオーストラリアのミナミヒメアカタテハ、、、、。このような組み合わせは、むしろ生物地理上の「基本パターン」なのかも知れません。



写真㉘

アゲハチョウ



去年の霞丘陵では一枚たりともアゲハチョウ(アゲハ、ナミアゲハ)のまともな写真を撮ることが出来なかったのですが、今回は一発で撮れました。どこからか飛来して一瞬止まって翅を開き、すぐまた飛び去って行った。今んところ、出会ったのはこの一頭きりです。



これまでにも何度か書きましたが、種としてのアゲハチョウは、それはもう大変に(生物地理学的視点からみて)重要で魅力的な存在なんですよ。いろんな意味で、東アジアを代表する生物を一種挙げる、となると、このアゲハチョウになるかと。究極の“遺存種”で、究極の“繁栄種”。



話は変わる(これも前にも書いた)けれど、アゲハチョウの仲間は、いわゆる“パピヨン”であり、「蝶の中の蝶」のわけですけれど、実は、特定の視点から厳密な意味で捉えれば、「蝶」ではないとも言えるのかも知れないのですね。



ちょっと前までの教科書には、こうなっていたはずです。いわゆる「蛾」(鱗翅目、またはチョウ目あるいはガ目)には、様々なグループがあって、そのうちの「セセリチョウ上科」と「アゲハチョウ上科」を合わせた一群を、便宜上「蝶」と呼んでいる。その他すべてを併せて、便宜上「蛾」と呼ぶ。大半の蝶は「アゲハチョウ上科」に所属し(アゲハチョウ科のほか、シロチョウ科、タテハチョウ科、シジミチョウ科など)、バタフライとかパピヨンとか呼ぶ。「セセリチョウ上科」はセセリチョウ科のみから成り、(外観的にも血縁的にも)どちらかと言えば他の蛾との類似点が多く、バタフライとは別のスキッパーとして認識されている。



それで、なんとなく、地味で目立たないセセリチョウは「原始的な一群」、派手で良く目立つアゲハチョウは「進化した一群」として認識されているように思います。でも、それはちょっと違うんじゃないの?と疑問を持ち続けてきました。



だって、アゲハチョウ科の多くの種の食草は、被子植物の中では最も原始的な、モクレン目やウマノスズクサ目で、セセリチョウ科の大多数の種の食草は、最も新しい時代に繁栄を遂げたイネ科などの禾本科植物。それを考えれば前者が原始的で、後者が進化の末端にあることは一目瞭然のはずなんだけれど、「地味なものが原始的」「派手なものが新しい」という先入観念は、そう簡単には覆らない。



教科書にそうなっているのだから受け入れるしかなかったわけですが、近々、教科書記述自体が変わりそうですね(笑)。「蝶の代表であるアゲハチョウの仲間は実は典型的な蝶ではない」「むしろいわゆる蝶ではないとされてきたセセリチョウの仲間こそが典型的な蝶の一員」。



面白いことになって来そうです。





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無題

2022-11-02 09:36:07 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然





読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。



【Ⅰ】

マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】

「沖縄に対する日本」

「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」

の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。



・・・・・・・・・・



10月が終わりました。結局、丸々ひと月間、毎日完璧同じパターンで過ごしました。全くのサラリーマン状態です。いや、土日関係なしなので、サラリーマン以上。もちろん幾ら働いても(将来はともかく)一銭も給料は入りません。



繰り返し記しておきますね。7時半起床。7時56分に部屋を出て、4分後の8時ジャストにジョイフル。うち2分間は、大学の駐車場の脇を歩きます。これが車車車、、、。人車共用道路なのですが、この時間帯に限っては実質車専用で、脇に舗道がないため、悲惨な状態です(アルプスの稜線歩きどころではない危険さ)。



以前から(東京近郊を探索していた時にも)実質生活道路(人の歩ける道)がなくて困ってしまったことが多々あります。町の中心部はともかく、ちょっと郊外に出ると、車車車、、、そりゃもう半端な交通量じゃない。郊外の移動は車で行うもの、迷惑だから人は歩いちゃいけない、そう暗黙の了解で決まっているんですね。まるで犯罪者を見るような眼差しを浴びて精神的に参っちゃいます。降り注ぐ弾丸を避けるようにして精神を擦り減らしつつ何時間も歩いて、やっと「道」(いわゆる路)に出れば、そこは「ハイキングコース」とか「自然観察周回路」」とかの、限られた目的に沿った「歩く」道です。生活道路じゃないので、勝手にどこかに行くことは出来ない(辿り着くところは大抵駐車場)。



車がないと生活できない、(冷房とかもそうだけれど)悪循環です。人間としての権利を放棄してしまっていることに、誰も気付いていない。自由の放棄です。自由であることと、便利である(楽しく暮らす)ことは、相同ではない。



自分だけ楽をする、それが個人だと、自己中、我儘ということになるのですが、全ての人が集団で行えば(皆が“自分だけ楽すること”に徹すれば)それが基準となってそこから外れた行為や思考は逆に“自己中”と見做されてしまうわけです。資本主義の病巣の根源なのですが、その話は置いときましょう。



話が大きくなってしまいましたが、ここはまあ1~2分の我慢なので、どうってことはありません。8時ジャストに「ジョイナス」到着。隅っこの40番のコード席で、目玉焼モーニングトースト(ドリンクは終日飲み放題)326円をオーダーして、ネットを開きます。



韓国とインドで痛ましい事故がありました。ハロウインなんかは本来特定の宗教に基づいた伝統的催しであって、我々には一切関係ないはずなんですが、空気に乗っかって、(大衆が求めて企業とかメディアとかが煽る、どっちが先かは分からないけれど)大衆の共通認識としてのお祭りイベントになって、皆が同じように、、、ということなんですね。



そして皆が皆一定方向に向かう。ホモが正義でヘテロが悪だと。一定方向への集結、僕には理解が出来ないんですが、人間もウンカやヨコバイやカメムシ(そのほか大多数の生物)同様の潜在的集合特性を維持しているのだとすれば、仕方がない事なのかも知れません(そういえば最近は、半翅目はセミ目=ヘミプテラで統一されて、ホモプテラ同翅目とヘテロプテラ異翅目の区別はされなくなってるのかな?)←本題とは無関係。



おそらく、みんなが考えている以上に、人類にとっての一大事だと思います。トータルな視野から見れば、大変な問題なのです



日常的にどこかへ収斂していく(自分もその一員である)ということの恐ろしさ。それはコロナにしてもロシアにしても統一教会問題にしても、同根です。善悪の問題じゃないですよ!具体的な思想とかでなく(もちろんその衣は纏っているわけですが)、空気に基づく大衆の先導(扇動または洗脳)によって、それが特別な状況の許ではなく、無意識的に、スムーズに為されている、ということ。普遍的な、ごく当たり前の問題(人間の本質でもあります)というのは、実に複雑で多様な要素を内包している。宗教絡みのほうがまだ分かり易くて、ましなような気もします。



この話題(人間の本質としての集団志向)は面倒なので、これ以上は踏み込みません。



で、8時開店と同時にモーニング・エッグ・トーストをオーダーして、それを食べる前に、8時半、向かいの江藤医院で毎日血圧を測ります(何故か命令されている)。先日(3日前)は上が187。かなり高いのだそうで、なぜか怒られてしまった。翌日は114で、違い過ぎるじゃないか!と思うのですが、まあ結果オーライということで、でも昨日はまた170台に戻っていた。測り直して貰ったら140台になっていた(僕の場合は低め?)。その時々の(薬を飲んだ時間とかタイミングなどで)結構数値が変わるんだそうで、だったら、毎日いちいち測る意味ないと思うんですけれどね。



ジョイフル戻って、10時過ぎにカメラを持って駐車場わきの草地にぶらりと出かけます。ここのところ快晴の日が続いていて、一日中ファミレスに籠ってるのは、何か罪悪感を感じてしまう。10分でも20分でも撮影しとけば、自らへの言い訳にもなります。



日替わりランチ(無料大盛り)500円を食べた後、午後2時過ぎに再度カメラ持参で散歩。朝とは違って、車は全くと言って良いほど通らない。その代わり学生たちが大挙して通行しています。



ロクな蝶はいません。もっとも、いかに駄蝶であっても、ボロ蝶であっても、いるだけで嬉しいです。10月末ならば、むろん碌な蝶はいないけれど、天気さえ良ければ数だけはいます。い



とりあえずの目的は、ヤマトシジミの撮影と、イチモンジセセリの実態チェック。共に駄蝶中の駄蝶ではありますが、それなりに魅力的でもあります。ことにヤマトシジミは、結構美麗な蝶(殊に雄の翅表のブルー)なのに、撮影に気合が入っていないためか、いつも中途半端な写真しか撮れていない。この際、チャレンジしておこうというわけです(とはいっても「時間つぶしに」という気分が抜け切れずに本気にはなれないので結果として碌な写真が写せないでいる)。



ヤマトシジミの雄は、いたるところで飛んでいるのだけれど、なかなか止まらんのですね。小っちゃな蝶が見えないだろう道を行きかう学生たちからすれば、「このジジイこんなところでカメラ持って何してんの?」と不信に思っていることでしょう。車に対しても人に対しても、後ろめたい気持ちにならざるを得ない。



蝶の行動(周日活動)は、種によって、時間帯によって、個体の日齢によって、気象条件によって、、、様々な要因で決まっています。60年余蝶を追っかけてきたのだけれど、いまだにきちんと把握は出来ていません。この上もなく奥深い、複雑多様な組み合わせで成り立っているのです。



ヤマトシジミに関しても、蝶の飛ぶ時間帯は(そのパターンごとに)決まっていて、もう暫く待てば止まり始めるかも知れません。少なくとも午前中はひたすら雌を探して?飛び続けている場合が多いようです。



その目まぐるしく飛び交っているヤマトシジミ雄の中に、一頭だけ止まって翅を開いている個体がいた。しめしめ、とシャッターを押します。何枚か押していて、ヤマトシジミじゃなくツバメシジミらしいことに気が付いた。こちらも、(やはり普通種ゆえ余り真剣に撮影してこなかったので)この機会に沢山移しておくことに。でも、ツバメシジミともちょっと雰囲気が違う。(翅裏が確かめれず)消去法からいうと、タイワンツバメシジミかも、、、。だとしたら、まだ1枚も撮影したことのない種のゆえ、とりあえずどっさり撮影しておくことにしました。



一通り撮影し終えて、画像をチェックしようとしたら、「カードが入っていません」という表示。体調も(何度もしつこく言うように)滅茶悪くて意識朦朧、眼もほとんど見えない状態、それでよくまあ写真など写せるものだと我ながら呆れている次第ですが、体調以上に酷いのはカメラの状態、そりゃもう生半跏なクラッシュ状態じゃないです。ちゃんと撮れるのは宝くじのぐらいの確立ですね。でもこんな表示が出るのは初めて(実際に入れ忘れて撮影していたことはこれまで何度かあったけれど)今度こそ万事休すです。それで一度ジョイフルに戻って、ダメもとで叩いたり振り回したりしていたら、突然直った。



せっかくタイワンツバメシジミかも知れない種に出会った(空撮影した)のだから、同じ所に戻って、再登場してくるまで執念で待ち続けて撮影し直さなきゃ、と思っていたら、すぐに姿を現しました。でも、違った。クロマダラソテツシジミ。この種は数日前にも撮影しています。(同じ新帰化種の東京のアカボシゴマダラ同様)やたらといるみたいです。バリエーションが豊かな種でしょうから、さっきのをタイワンツバメシジミと間違えても不思議じゃない。でも断言するわけにもいかないので、一応片っ端からチェックしておくことにしました。結局、まず間違いなくクロマダラソテツシジミ。ヤマトシジミに見える蝶は、半々ぐらいでヤマトシジミとクロマダラソテツシジミ。大型のウラナミシジミを除くとブルーは全てこの2種です。



ヤマトシジミは、本当に感心するほど、どこにでもいる蝶です。その意味では「大和(日本)のシジミチョウ」の和名は、ピッタリなのだと思います。でも、北海道にはいません。アジアの暖地全域に最も普通にいる蝶の一つで、どちらかと言えば日本では比較的新しい時代に繁栄した種と思われますが、といって特に近年になって勢力を広げているというわけでもなく、その素性は意外によくわかっていません。雲南省北部の梅里雪山の氷河下などにも沢山いる(僕の見た限りでは日本産との有意差はない)ので、様々な角度から日本産との比較を行ってみても面白いと思います。



ちなみに、種全体の分布域は、第二次大戦時の大日本帝国の勢力範囲とほぼ重なりますね。それこそ、ヤマトシジミたる所以かな? ちなみに中国名は「カタバミシジミ」で、もちろん唯一の食草がカタバミであることに拠ります(ヤマトシジミのアイデンティティの追求は、カタバミのそれを知ることでもあります)。



限られた植物への依存、というのは、意外に稀なんですね。例えばベニシジミのメイン食草はスイバですが、タデ科の種の多くに亘っています。ベニシジミのグループの大半の種も同様です。アゲハチョウやその仲間はミカン科、モンシロチョウやその仲間はアブラナ科、セセリチョウ類やヒカゲチョウ類はイネ科、等々、そのパターンです。更にルリシジミなど多くの植物の科に亘って食草とする種もいる。ヤマトシジミのように、一種だけが、別の近縁種と異なる特別に限られた植物だけを食草とする、という例は、そう多くはなさそうです。



そういえば、クロマダラソテツシジミも、その特殊な例の一つですね。食草はソテツ。同じグループ(ヒメシジミ族ヒメシジミsection)の各種の食草とは全く異なる(注:ソテツシジミに関しては後述)、特殊な植物です。



ということで、ここ数日にアパートから2分弱のところのこの道端で出会った蝶は、ヤマトシジミ、クロマダラソテツシジミ、ウラナミシジミ、ベニシジミ、チャバネセセリ、ツマグロヒョウモン、キチョウ(キタキチョウ)、モンシロチョウ、アゲハチョウの計9種(最後の2種は一度だけ遭遇)。



イチモンジセセリがいないですね。これは意外です。チャバネセセリはごく普通に見ることが出来るのですが、イチモンジセセリは一頭もチェックできなかった。



そういえば、昨年も書いたのですが、東京青梅の霞丘陵でも、思っていたほどイチモンジセセリは多くは無かった。僕のこれまでの(数十年前の日本における)印象から言えば、秋に圧倒的に多い蝶がイチモンジセセリ、その次がヤマトシジミ、、、、といったところだったのですけれど。なにしろ数10億頭の大群となって不思議な移動をしていたという、突出して謎だらけの蝶だったのですが、その謎が解明されないまま、「普通の蝶」になってしまっているような気がします。



一般論として、生物の種の絶滅の前には、大発生が見られることが多いような気がします。僕の直接知るところでは、近代日本第一号の絶滅種(そのことに対しては幾つかの指摘したい点があるのですが、機会を改めて)オガサワラシジミ。中国杭州市内のチュウゴクギフチョウなどもその一例に相当するように思います。



僕は、オガサワラシジミに関しては、いわゆる「母種」に位置づけされるルリシジミとの関連で、相当真剣に取り組み始めたのですが、途中で挫折してしまいました。まさか絶滅してしまうとは思っても見なかったので、そのうちに、と楽観していたのです。



それとセットで取り組み始めていたのが、もう一つの小笠原固有種オガサワラセセリ。こちらはイチモンジセセリとの関連です。やはり(様々な事情で)挫折してしまったのだけれど、こちらも頑張って続けていればよかったのに、と今になってつくづく悔やんでいます。



(このことはこれまでにも何度も書きましたが)当時、東大農学部の千葉演習林において蝶の観察(ルートセンサス)と撮影を始めた時、最初に提出した計画書が、

「水田耕作の発展に伴うイチモンジセセリの生態的変遷」

今でも気に入っていて、時間的経済的体力的に許されるものであれが、これからでも再トライしたいと思う程、魅力的なテーマなのです。

(僕がやるのは実質不可能なので誰か若い人に引き継いで貰いたいですね)



二つのアプローチ。

チャバネセセリ(同居繁栄)との比較

オガサワラセセリ(残存祖先)との比較

異なる次元から光を当てていくことで、アイデンティティの実態を浮かびあがらせる。



常に俯瞰的に、異なる視点(時空)からのアプローチを行う。



衰退-繁栄-衰退。。。。の繰り返し(その過程が“進化”にも結び付いて行く)。



イチモンジセセリは、生物の種とは何か?生命とは、進化とは、集団とは、個とは何か? それらの問題提起のエキスを秘めた稀有の存在だったのですが、いつの間にか忘れ去られて、今は人々の興味の対象はアサギマダラに置き代わっています。



いや、アサギマダラだって、魅力的なテーマを無尽蔵に秘めた存在なのです。でも困ったことに、いろんな意味で“見栄え”がする。そして一見分かり易い。大衆に先導された「空気」に乗っかって、「答え」を導くことが出来そうに思える。プロフェッショナルもアマチュアも一丸となって重箱の隅をつつくような作業を重ね、情報が増えれば増えるほど、実態が見えなくなって行く。僕に言わせれば、方法論が間違っているのです。それ以前に、「方法論に沿って解明していく」という姿勢が間違っている。俯瞰性の欠如。



イチモンジセセリの、あの数十億頭の大移動の実態は、何だったのでしょうね。今は、普通の蝶になってしまっているような気がしますが、アサギマダラにしろ、世間の興味に惑わされず、腰を落ち着けて実態を探っていくことが出来れば良いですね。



ちなみに僕個人的には、「繁栄」よりも「衰退」という現象に、魅力を感じています。「危惧」ではなく「興味」です。

(「自然保護」と「絶滅危惧」という言葉が大嫌いなものですから)



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今日は、生活保護金の支給日でした。手取り約2万5000円。原則6万円貰っていた青梅市とは金額的には天国と地獄の差ですが、実質的には、こちらのほうが天国です。布団もあるし電気もつくしシャワーも浴びれるし病院での診察も受けられる。たっぷりと食事も出来る。なによりも、周りの人々の支援態勢が素晴らしい。土壇場でここに決めたのは、チエちゃんの大手柄です。もっとも、それ以外の事では、いろいろと頭が痛いですが(-_-;)



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撮影種の紹介(全て福岡県飯塚市有安近畿大学駐車場脇の同一場所で撮影)は2回に分けます。今日はブルー3種。明日ベニシジミ、チャバネセセリ、キチョウを予定。



写真1~12

クロマダラソテツシジミ

Polyommatus (Chilades) lajus


思い切って、属名をPolyommatusとしておきました。日本本土産の主要ブルーは、(エリオットの)ルリシジミ節をLycaenopsis、ツバメシジミ節をCupido、ヤマトシジミ節をZizeeria、カバイロシジミ節をGlaucopsycheとそれぞれ統合しておいたので、ヒメシジミ節はPolyommatus。



ヒメシジミ、アサマシジミ、ミヤマシジミ、カラフトルリシジミのユーラシア温帯勢に対する、熱帯性のヒメシジミ類ということになります。



むろん狭義で解釈しても良いので、その場合はソテツシジミはChiladesです。もっとも、Polyommatus-sectionの中に於けるChiladesはかなり祖先的な位置から分岐しているようなので、一律にPolyommatusに併合するのは、問題なしとは言えない様にも思います。



日本では、クロマダラソテツシジミが侵入する以前(今から60年ほど前)に、一度八重山諸島でソテツシジミChilades lajusが大発生した記録があります。最初につけられた和名は「キヤムラシジミ」で、僕などにはこちらの名の方がなじみ深いですね。ソテツシジミのほうは、それっきり発生が途絶えてしまい、入れ替わるように侵入してきたクロマダラソテツシジミのほうが、その後継続して発生を繰り返し、今では日本本土のかなり広い地域に定着してしまっているわけですが、その(繁栄と消滅)の分かれ目は、どこにあるのでしょうか?



ちなみに、今ネットで検索をしたら、ソテツシジミの属名がEdales、クロマダラシジミのほうがChiladesと分けて示されている文献をいくつか見受けます。その根拠は、どこにあるのでしょうか?



雄交尾器の形状は、両種の間に全く有意差はありません。ここに示した写真(ほぼ同じ日の同じ場所で撮影した個体)だけでも、相当にバリエーションがあります。2つの種の最も大きな差は、尾状突起を備えるか欠くかということだと思いますが、シジミチョウ科の多くの種に関しては尾状突起の有無は分類上余り大きな意味を持っていず、同一種でもあったりなかったりします。それどころか(今回撮影していて気が付いたのだけれど)同一個体でも、尾を伸ばしたり引っ込めたり?することが可能なみたいです。クロマダラソテツシジミの著しい変異パターンを考えると、ソテツシジミとの関係も再考を要するのではないかと思います。



写真13~18

ヤマトシジミ


属名をハマヤマトシジミと同じZizeeriaとしておきます。最近の傾向では細分する場合もPseudozizeeriaを使わずにZizeeriaで統一しているみたいですが、その場合はZizina(シルヴィアシジミ属)も統合すべきだと思います(雄交尾器の特化は本質的な差ではなく表現の程度差)。もっともその場合、ZizeeriaとZizinaは同じ著者によって同日に同じ文献で記載されているので、どちらに先取権があるのか、僕にはわかりません。個人的には「プセウドゼゼリア・マハ」という語感が好きですね。



写真19~24

ウラナミシジミ

Lampides boeticus



ほぼ世界中(ただし新大陸を除く)どこにでもいる蝶で、変異もほとんどなく、他に近縁種もいないという、もっともつまんない蝶の一つではあるのですが、その先入観さえ無くして対したら、姿も性格も、なかなか魅力的な蝶なんですね。他に近縁種が見当たらないということは、言い換えれば非常に特殊(二次的特化ということではなく祖先的残存ということで)なわけで、本来なら衰退絶滅のほうに向かうはずが、何かのきっかけで、爆発的に繁栄を遂げているわけです。この後どうなるのか。まるで人類の盛衰と軌を一にしているような。



写真1 クロマダラソテツシジミ 2022.10.29 12:32



写真2 クロマダラソテツシジミ 2022.10.31 10:55



写真3 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 14:49



写真4 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 14:49



写真5 クロマダラソテツシジミ 2022.10.29 12:30



写真6 クロマダラソテツシジミ 2022.10.29 12:30



写真7 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 14:29



写真8 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 14:32



写真9 クロマダラソテツシジミ(雌) 2022.10.30 14:30



写真10 クロマダラソテツシジミ(雌) 2022.10.30 15:10



写真11 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 15:11



写真12 クロマダラソテツシジミ 2022.10.30 15:11



写真13 ヤマトシジミ 2022.10.30 15:05



写真14 ヤマトシジミ 2022.10.29 15:29



写真15 ヤマトシジミ 2022.10.30 15:01



写真16 ヤマトシジミ 2022.10.31 14:22



写真17 ヤマトシジミ 2022.10.30 15:14



写真18 ヤマトシジミ 2022.10.31 15:04



写真19 ウラナミシジミ 2022.10.29 15:38



写真20 ウラナミシジミ 2022.10.29 15:38



写真21 ウラナミシジミ 2022.10.30 15:16



写真22 ウラナミシジミ 2022.10.31 11:01



写真23 ウラナミシジミ 2022.10.31 15:04



写真24 ウラナミシジミ 2022.10.31 15:03






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近所の森の蝶 第三部 (下巻)「海の向うの兄妹たち」 :予告

2021-12-16 20:14:57 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


近所の森の蝶 第三部 (下巻)「海の向うの兄妹たち」 :予告

日本の蝶の本質を知るためには、“種”全体を俯瞰的に見渡さねばならない。中国大陸産を中心に、日本産と同じ種、或いはその姉妹種が、どのように分布しているのか、日本産全種の対応種について、探って行く(ここでは数組を適当にピックアップして紹介)。

■ ツマキチョウ Anthocharis scolymus  【海の向うの兄妹たち】


Anthocharis bieti 雪融戸尖襟粉蝶 雲南省香格里拉 2005.6.21


Anthocharis bieti 雪融戸尖襟粉蝶 四川省雅江 2010.6.7


ツマキチョウ属は、前翅先端が丸味を帯びるタイプが主流で、ユーラシア大陸に広く分布するクモマツマキチョウ(日本では高山蝶の一種)を始め、北半球温帯域に多数の種が分布している。その中にあって、前翅端が鉤状に尖るツマキチョウは異質のタイプ。日本を含む東アジアに分布するツマキチョウ、中国西南部の高山帯に分布するユキワリツマキチョウAnthocharis bieti、北米大陸東海岸産のアメリカツマキチョウAnthocharis midea、メキシコ高地産のAnthocharis limoneaの4種が、このタイプに属している。

■ ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas  【海の向うの兄妹たち】


ヒオドシチョウとキベリタテハNymphalis antiopa は外観(色彩斑紋)が著しく異なるが、雄交尾器をはじめとする体各部の構造(翅裏に剛毛を生じることなど)が共通し、極めて近縁な関係にある。ヒオドシチョウが ユーラシア大陸の主に東半部に分布する(西半部には外観のよく似た別種が分布)のに対し、キベリタテハは全北区に分布、日本では亜高山帯の蝶だが北米大陸では低地にも分布し、中米から南米北部にまで至る。キベリタテハの色彩パターンは我々から見れば特異だが、北米大陸には同様の色パターンの種が多く(ダイアナヒョウモン、アオイチモンジ、クロキアゲハなど)その極がキベリタテハ。著者は、キベリタテハは新大陸で特化し旧大陸に再渡来した“ヒオドシチョウ”であると捉えている。メキシコ南部~グァテマラ北部にはNymphalis cyanomelasという両者の中間のようなイメージの種が分布する。広義のヒオドシチョウ属に含まれるシ-タテハの一群にも、例外的に熱帯アジア山岳地中心を中心にルリタテハが分布していることは興味深い。その暗示も合わせ、この種に対し近年使用されている「アオヒオドシ」という(ありきたりな)名称よりも、古くから使われて来た「メキシコルリタテハ」の名を採用したい。

■ ツバメシジミ Cupido argiades 【海の向うの兄妹たち】

 


Cupido huegelii薄墨藍灰蝶(Cupido argiades huegelii) 雲南省香格里拉 2013.5.5


北半球温帯域に広く分布し、幾つかの種に分けうる可能性もある。中国大陸産は通常日本産と区別されないが、雲南省西北部産に関しては、明らかに日本産とは異なる外観を示している(裏面地色がやや灰褐色を帯び季節によっては雄翅表の縁の黒色部が広いことなど)。ただし雄交尾器の形状は相同。一応日本産と同一種と見做したうえで「ウスズミツバメシジミ」の和名を仮称しておく。ヨーロッパにはツバメシジミのほか近縁2種が分布、北米大陸産は東西に棲む2種がそれぞれ独立種とされる。ユーラシア大陸には、より小型で尾状突起を欠く狭義のCupido属数種が分布し、ツバメシジミを含む従来のEveres属の種もこれに移した(雄交尾器など基本構造は共通)。外観がツバメシジミに似た暖地性のタイワンツバメシジミは、ツバメシジミとそれほど近い類縁にはない。他にクロツバメシジミ属の種なども広義のツバメシジミ類の一員である。

■ ミヤマチャバネセセリPelopidas jansonis 【海の向うの兄妹たち】


前翅先端が尖った褐色地に白斑を配する典型的“スキッパー” 「Gegenes類」は、東南アジアとアフリカ大陸を中心に多くの属と種を擁し、ヨーロッパではGegenes pumilioなど数種が、東アジアではイチモンジセセリやチャバネセセリが南方から引き続き分布している。その中でオオチャバネセセリと共に最も北に分布するのがミヤマチャバネセセリ(日本本土、朝鮮半島、中国北部、及び山東半島)。外観がチャバネセセリと顕著に相違するが、雄交尾器の基本構造は変わらず、ことにタイワンチャバネセセリ(台湾と北部を除く中国大陸に分布)とは酷似する。タイワンチャバネセセリの白紋は小さいが配置は共通し(ただし雄翅表に顕著な白い性標を持つ)、共に基部の一個の白斑が明瞭。山東半島の西延長線上の秦嶺にはミヤマチャバネセセリがいずタイワンチャバネセセリが見られるので、両種は分布圏が明確に別れた姉妹種関係にあると思われる。

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あとがき

2年前に緊急帰国し、そのまま中国に戻れないでいる(それで「近所の森の蝶」の探索を始めたわけだが)。その前後にパソコントラブルを繰り返し、ことに複数のHDDがクラッシュしてしまった。古くは2011ー2012年度に撮影した全原版写真。それ以外のHDDに収録されている資料を使って作業を進めてきたところ、2020年暮れになって使用中のHDDがクラッシュしてしまった。幸い、なんとか修復は叶った。しかし、修復費用が47万円。著者にとっては途方もない金額である。毎月数万円を支払い、やっと半分程度。重要な資料の大半はその中に入っているので、それが無くては仕事が出来ない。一刻も早く取り戻すべく資金調達しかない。

著者は老齢である。大きな持病はないものの、背骨を痛めていて重いものを持てない。天涯孤独で、日本には家族はもとより友人もほとんどいない。仕事を得るにあたって必要な「保証人」もいないし、クレジットカードや携帯電話も持つことが出来ない(その理由は不明、なぜか中国はじめとした国外では可能)。当分中国に戻ることが出来ないと悟った1年前の年末年始には、日本で皿洗いや便所掃除の仕事にありつこうと、求人の貼り紙があるたびに片っ端から申し込んだ。しかし、「老齢/保証人なし/携帯電話なし」“うちでは無理なのでお引き取り下さい”となってしまう。インターネットを通じての求人は更に悲惨で、電話やカードがない等、最初の時点で先に進む事さえ出来ない。ハローワークやシルバーセンターにガードマンやチラシ配りの仕事をリクエストしても、最終的には回って来ない。ちなみにクラウドファンディングにも何度か挑戦したのだけれど、一銭も入って来ない。

そうこうしているうちに、パソコンもクラッシュしてしまった。途方に暮れて、日本では数少ない知人の昔の彼女の父上(90歳近く)に助けを求めた。彼も困窮生活の只中にいるのだが、 「パソコン程度なら買ってあげよう」と申し出てくださった。そして彼曰く「青山さんは昔は日本の蝶のフィールド図鑑などを沢山出版していたではないか、一から撮影し、昔のようにメディアと交渉して、新たな本を出版しなさい」と。今更、そんなのは無理、でも、しばらくは中国には戻れないことだし、この機会にやるだけはやってみよう、と取り組んだのが、このフィールド図鑑「(アパートの)近所の森の蝶」なのである。

本書は、既存メディア(出版社など)にプレゼンレーションを行うために試作したものである。首尾よくどこかで出版を引き受けてくれたなら、印税(原稿料)を入手してHDDも取り戻せる。今の出版業界不況の時代「中国の山奥の蝶」をテーマに刊行することはほぼ100%不可能だろうけれど、「日本の都市の蝶」なら僅かながら可能性が残っているように思っている。

しかし、第3章までを整え、既存の出版社から「商業作品に足る」として認めて貰うクオリティに達することは、修復HDDに収納された写真や資料が手許に戻って来ない限り不可能に近い。その資金を捻出するべく、第一章の一応の完成段階で、「特製版」としての「近所の森の蝶/図鑑編」を作成し、資金援助を募ることにした。

どうか、ご協力を頂きたい。

2021年12月吉日
                                             
「近所の森の蝶」(上巻:フィールド図鑑編)

著者 青山潤三
発行 Photo-office 萌葱(MOEGI)
発行日 2021.12.10



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近所の森の蝶【発売予告】

2021-12-13 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


★いいね!その他、ありがとうございました。

近所の森の蝶【発売予告】


第二部 (中巻):東京都青梅市 『霞(かすみ)丘陵』 フィールド日記 抄

2021年3月23日から11月25日にかけて、著者の自宅(アパート)から徒歩で行くことの出来る4つの丘陵を探索した。総計約70回、うち霞丘陵が約50回。そのフィールド探索日記を綴っていくことにする。およそ200~300頁ぐらいを予定している。ここでは、その一端(下書き)を紹介しておく。




1a拡大地図
A:著者のアパートを経て河辺駅に/B:七国峠を経て岩倉温泉に/C:白髭神社を経て小木曽街道へ
1:塩船観音正門/2:ハイキングコース入口/3:観音寺境内/4:草地の斜面/5:樹液の出るコナラ/6:最初の峠/7:第1パル草地/8:コル/9:第2パル草地/10:駐車場/11:愛宕山/12:雑木林の尾根1/13:コリアス草原/14:雑木林の尾根2/15:雑木林の尾根3/16:雑木林の尾根4/17:簡易トイレ前の茶畑/18:グランド横の尾根道/19:グランド東の坂道/20:ダム横の坂道/21:アメリカ草原(鶏小屋の続き)/22:ウグイスの谷(鶏小屋の手前)/23:ウグイスの谷への上り下り(尾根道)/24ウグイスの谷への上り下り(谷道)/25:白髭神社への上り下り(谷道)



1-4周辺地図
1a:霞丘陵(中核部)/1b:霞丘陵(北側低地)/1c 霞丘陵(七国峠‐岩倉温泉)/1d:霞丘陵 (吹上菖蒲公園)/2a:青梅丘陵東部(青梅の森入口付近)/2b:青梅丘陵東部(永山公園の尾根)/3:青梅市・日ノ出町・あきるの市境の尾根/4a:狭山丘陵西部(瑞穂町側)/4b:狭山丘陵西部(みどりの森)/4c:狭山丘陵西部(野山北・六道山公園)




JR青梅線河辺駅から北方を望む。ビルの間から丘陵が僅かに姿を現している。



霞丘陵から市街地を俯瞰する。




2021.3.23 青梅市霞丘陵
1a/1‐3-6‐4-2-1 9:50出発-12:55帰着
11:40 ⑥(やや③寄りの地点から) コナラ主体の雑木林は芽生え始めたばかりのぼんやりとした霞色。




2021.4.10 11:11 ⑥



2021.4.20 10:44 ⑥


2021.5.6 10:20 ⑥



2021.11.20 11:47 ⑥




2021.4.10 青梅市霞丘陵
1a/1‐2-5-6―13―15―13―6‐5-4-2-1 10:00出発-15:00帰着
11:46 ⑧の上部




カントウタンポポ2021.4.22/11:31 ④



オニタビラコ2021.4.22/11:32 ④



ジシバリ2021.4.22/11:35 ④ 



ニガナ2021.4.22/11:36 ④

キチョウの同じ個体が、キク科タンポポ連各種の花に吸蜜に訪れていた。キチョウ(キタキチョウ)の学名については、(別項目でも書いたように)敢えて特定しない。またタンポポ連各種の属名についても特定を避けて置く(タンポポがTaraxacumなのは確かだと思うが)。ちなみに霞丘陵でチェックしたタンポポ連の種は、カントウタンポポ、セイヨウタンポポ、ニガナ、ジシバリ(イワニガナ)、オオジシバリ、アキノノゲシ、ヤクシソウ、オニタビラコ、コウゾリナ、および未撮影のタビラコ(コオニタビラコ)。セイヨウタンポポ以外は一応在来種ではあるが、史前帰化植物、(国内)出戻り帰化植物などの概念とも関わる、複雑な問題を有している。


写真15

2021.3.27/12:41 

写真16

2021.5.25/9:32

写真17

2021.11.20/11:28

モンキチョウの産卵。コリアス草原⑬にて。産卵植物はいずれもマメ科のスズメノエンドウ(左写真は奥の植物、右写真はカラスノエンドウの可能性もあり)。




カワトンボ(詳細種名は特定せず) 2021.5.6/14:47 ④の下方



ミヤマカワトンボ2021.6.8/11:40 (1c) カワトンボの仲間は他にオハグロトンボやアオハダトンボもいる。

*霞丘陵で出会った蝶以外の生物も出来る限り紹介していく。




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近所の森の蝶5

2021-12-12 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


セセリチョウ科Hesperiidae 挵蝶科 Skipper

小型で褐色の、蛾のような蝶。翅は先端がとがり、胴体は太く、頭は大きくて左右の複眼が離れている。他の幾つかの科の蝶とは別系統に属していて、欧米ではバタフライと区別してスキッパーSkipper(水先案内人)と呼ばれている。花の蜜をせせる(口吻でつつきまわす)姿からつけられたと思われる漢名の「挵蝶」とともに、すばしこく飛び、せわしく動きまわるこのグループの印象をよく表している。

大半の種が単子葉食で、翅色が主に茶褐色であることなど、類縁的に遠く離れたタテハチョウ科ジャノメチョウ亜科の種と共通する点が多い。

卵は饅頭型、蝶の体が小さい割に大型で、よく目立つ。幼虫は頭でっかちで、つるつるした体の芋虫型。大多数の種が食草の葉で巣を作り、普段はその中に潜む。蛹は細長く、やはり巣中にいることが多く、しばしば周辺に糸や蠟状の物質を配して粗末な繭を作る。

世界に約4000種、日本産は約35種。大きく3群に分けられる。アオバセセリ亜科(アオバセセリ族)は色彩がカラフルで大型、翅を閉じてとまり、幼虫は双子葉食。チャマダラセセリ亜科(ミヤマセセリ族、ダイミョウセセリ族)は翅型が丸く、常に翅を開いてとまり、幼虫の食草は双子葉食と単子葉食にまたがる。チャバネセセリ亜科(その他の各族)は典型的なスキッパーで、前翅を立て、後翅を水平に開く独特の姿勢で静止し*、幼虫の食草は全て単子葉食である。

*ただし、タカネキマダラセセリ族(本書ではギンイチモンジセセリを紹介)では、この姿勢をとらず、翅を開く場合は前後翅を揃える。




イチモンジセセリ(上)とチャバネセセリ(下)
東京都青梅市野上町のマクドナルド青梅店の駐車場にて 2018.10.3






平均的なサイズ やや大きめの小型


セセリチョウは、その限りなく地味な外観からして、一般の蝶愛好家には人気がない。しかし、筆者は大好きなのである。著者が蝶に本格的に興味を持ちだしたのはイチモンジセセリからだった。その現在の分布様式の成立が「稲作」という人類(ことに日本人)の文化と強い結びつきがあり、イネの収穫期の秋に爆発的に個体数が増え(春にはほとんど見られない)、一説には推測18憶頭にも及ぶ黒雲のごとき大群となって移動し、その方向が必ずしも南から北ではない、、、といった、不思議な生態。稲作に結びつく前は、どんなだったかを知りたい。

同所的に分布する近縁属のよく似た生態を持つ、しかしイチモンジセセリとは違ってイネとの結びつきはそれほど強くはないチャバネセセリと比較することで、あるいはまた、種のレベルでイチモンジセセリにごく近縁で、ある意味その祖型を保ち持った小笠原固有種のオガサワラセセリと比較することで、イチモンジセセリの持つアイデンティティのようなものが浮かび上がってくるのではないか、と考え、取り組み始めた。さらに中国に渡って、全体像としての実態を俯瞰しよう、と目論んでいたのだが、目的を果たせぬまま挫折して今に至っている。

以前「イチモンジセセリ研究会」というのがあった。後に、似た問題提起を示す、しかし圧倒的に外観が派手な「アサギマダラ研究会」に事実上置き換わって、イチモンジセセリの探求は、 今もって進まないままでいる(もっともアサギマダラのほうも、愛好家的な興味に終始して、本質的な部分での解明はちっとも為されていないように思えるのだが)。

セセリチョウ科の多くの種(セセリチョウ亜科に所属するほぼ全種)は、イネ科を中心とした単子葉植物食である。アゲハチョウ科の項でも述べたが、イネ科にしろセセリチョウ科(やタテハチョウ科のジャノメチョウ亜科)にしろ、その地味な外観から、雰囲気上なんとなく「原始的」な生物群と捉えられているのではないか思う。しかし、実は最も進化した群なのである(一般に考えられているように「セセリチョウ上科」は、それ以外の科の集合分類群の「アゲハチョウ上科」に必ずしも対応するわけではない)。ジャノメチョウ亜科同様に、島嶼を始めとする隔離地域の分類群(種など)の分化の速度が早いことも、その表れのひとつである。

筆者は、40年余り前から永い間「アサヒナキマダラセセリ」という八重山諸島固有種の分類上の位置づけについて国外産各種との比較を続け、中国大陸に普遍的に分布する「ウスバ キマダラセセリ」と種レベルで同一であるということを突き止めた。石垣島と西表島の山頂の、照葉樹林の上部にぽっかり開いた空隙地の矮性ササ群落に取り残されて発生し続ける(外観が母集団から幾らか変化した)個体群である。見方によれば究極の遺存種なわけだが、別の見方からすれば、この環境は「人里環境」の母型である、ということも出来る。都市周辺などに繁栄する多くの「普通種」は、もとはと言えば、どこか限られた空間に残存し続けていた(他の多くの種よりも祖先的形質を保ち持った)種が、人間の活動に伴って(結果として)再現形成された好適な環境に一気に広がった、、、。アゲハとかキアゲハ、あるいはイチモンジセセリのような「身近な種」の多くが、それに相当する可能性がある。いつの日にか、アサヒナキマダラセセリが、何かのきっかけで「全国的普通種」にならないとも限らない。

逆の見方をすれば、そのような立場にある種は、(これも何らかのきっかけで)一気に衰退に向かう可能性もあるのではないだろうか。里山の雑木林に結びついた種、山地草原に結びついた種(例えばヤマキチョウ)、あるいは荒漠とした環境に結びついた種(例えばチャマダラセセリ)、それらの種の多くが日本の各地から姿を消しつつある一方、中国の都市周辺部では案外普通に見られたりもする。「遺存」と「繁栄」は、紙一重、裏表一体の関係にあるのでは?と思ったりもするのである。

・・・・・・・・・・・・・・・

ミヤマセセリ Erynnis montanus 深山珠弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.24 メス

シロチョウ科のツマキチョウ、シジミチョウ科のコツバメと共に、身近な“スプリング・エフェメラル”トリオの一角を形成する。著者は“春の淑女”と名付けている(英名はDusky-wing)。ギフチョウ、ツマキチョウ、コツバメが、蛹で冬を越すのに対し、本種は幼虫越冬。ということは、卵が孵化した晩春から、夏、秋、冬を経て翌年春まで、ほぼ一年間を幼虫の状態で過ごす、日本で最も幼虫期間が永い種、というわけである。食樹はブナ科のコナラ、クヌギなどで、葉に粗雑な巣を作って中に潜む。大きめの小型種。体つきも、翅も、頑丈なイメージ。よく花を訪れ、吸蜜時や日浴時には、翅を開いていることが多い。上下翅を互い違いに開くセセリチョウ亜科の種とは異なり、本種やダイミョウセセリなどチャマダラセセリ亜科の種は上下の翅を揃えて開く。北海道~九州に分布。フィールド日記3.24/3.27/4.8/4.23/4.27。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ダイミョウセセリ Daimio tethys 黑弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.14

霞丘陵で最もポピュラーな蝶のひとつ。しかし、この蝶ほど、東日本と西日本で明確な外観差がある種は他にいないと思う。関ケ原付近を境として、東日本(北海道南部以南)産は後翅に白帯が殆ど出現せず、西日本(九州中部以北)産には明瞭な白帯が出現する。子細に見れば幾つかの例外はあるとしても、巨視的にはごく明瞭な差異である。また、種全体で見渡せば後翅に顕著な白帯を備えるほうが基本で、台湾産や中国大陸産も顕著な白帯を持つ。大きめの小型種。翅を180°全開し、しばしば葉裏にへばり付くようにして静止する。雄は、葉表にとまっている時は、他の雄が近くに来ると猛烈なスピードでその個体を追いやり、また同じ場所に戻って、その行動を繰り返す。雌は産卵時、卵に腹端の毛を付着させる。食草はヤマノイモ科。花にもよく訪れるが、鳥糞で吸汁することがきわめて多い。年3化、幼虫越冬。幼虫は巣を造り中に潜む。フィールド日記4.27/5.1/5.6/5.14/5.25/5.30/6.8/6.9/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


アオバセセリ Choaspes benjaminii 绿弄蝶
霞丘陵では未撮影(霞丘陵周辺部での分布情報あり)。小さめの中型種。体つきも、翅も、頑丈なイメージ。セセリチョウ亜科のように翅を互い違いにせずに、常に4枚を閉じて止まる。食草はタテハチョウ科のスミナガシと同じアワブキ科で、棲息環境なども概ね共通する。よく花を訪れ、鳥糞などで吸汁し、湿った地で吸水する。年2化前後、蛹越冬。本州北部から南西諸島のほぼ全域にかけて分布。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ギンイチモンジセセリ Leptalina unicolor 小弄蝶
霞丘陵では未撮影(霞丘陵周辺での分布は不明)。世田谷区、狛江市、府中市などの多摩川流域には棲息する。小型種で、セセリチョウ科としては最もスリムな印象。年2化。春型は後翅裏面の銀色の帯が明瞭に表れ、夏型ではぼやける。幼虫越冬。食草はイネ科。翅を開く時は前後翅を互い違いにはしない。セセリチョウ亜科に属するがタカネキマダラセセリ属などと共に独立の亜科とすることも有る。北海道~九州にやや局所的に分布。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ホソバセセリ Isoteinon lamprospilus 旖弄蝶
霞丘陵では未撮影(霞丘陵における分布情報あり)。やや大きめの小型種。セセリチョウ亜科に属するが、他の種とは違ってマイルドな翅型を持つ。静止時、前後翅を互い違いに開く。本州(北部を除く)~九州に分布。食草はイネ科の主にススキ。幼虫越冬。雌は、腹端を葉に押し付け後ずさりしながら産卵する。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


コチャバネセセリ Thressa varia 日本陀弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.23

北海道~九州に分布する日本固有種。台湾産キスジチャバネセセリThoressa horishanaにごく近縁で、中国大陸にも幾つかの近縁種が分布するが、属の範囲には研究者による異なる見解がある(Pedesta、Praethoressaほか)。小型種。一見、チャバネセセリやイチモンジセセリに似ているが、翅脈沿いが黒く、地色や斑紋が黄色味を帯び、系統的にもかなり離れた位置づけにある。通常年2化とされるが、霞丘陵では秋にも新鮮な個体が見られることから、第3化も発生しているものと思われる。春型と夏型でやや顕著な差異があり、春型は翅の縁毛が一様に淡色、夏型では翅脈端ごとに濃色となる。雄は前翅表の白斑が小さめで、性標を持つ。食草はイネ科のササ・タケ類。幼虫越冬。幼虫は巣を作ってその中に潜む。フィールド日記5.1/5.23/7.11/7.17/7.18/7.20/7.22/8.27/9.7/9.8。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒメキマダラセセリ Oclodes ochracea 宽边赭弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.8.20

40年ぶりの東京近郊の蝶探索で、(一応低地にも棲息することは知ってはいたが)通常は山地帯の蝶と思っていたのに、意外に多く出会ったのが本種。たまたま著者が知らなかっただけで、以前から低地にも普通にいたのか、実際に増えているのか、その辺りは未詳。花を好んで訪れ、鳥糞などで吸汁する。今回撮影した61種中、前後に紹介するセセリチョウ科2種とシジミチョウ科のヤマトシジミやツバメシジミと共に、最も小型の蝶。北海道(稀)~九州に分布。山地帯では年1化とされるが、霞丘陵では5月から9月まで新鮮な個体が見られるので、年2回以上発生しているものと思われる。幼虫越冬。系統的には、キマダラセセリ類よりアカセセリ類に近い。食草はイネ科の草本種やカヤツリグサ科。雌雄は外観上かなり異なり、雄は黄色斑が濃く連続して繋がり、太い性標を有し、雌は黄斑が淡く、断続する。フィールド日記5.23/5.29/5.30/6.1/6.8/6.16/8.11/8.19/8.20/8.27/9.7/9.8/9.10。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


キマダラセセリ Potanthus flavus 曲纹黄室弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.6.8

ヒメキマダラセセリは同属種のコキマダラセセリや近縁属のアカセセリなどと共に北半球の温帯域に分布する蝶だが、キマダラセセリの仲間(日本にはキマダラセセリのほか八重山諸島にネッタイアカセセリが分布)は主にアジアやアフリカの熱帯地域に繁栄する蝶である。しかし日本に於いては両者間の分布パターンにさほど差はなく、霞丘陵でも同時期に同じ場所で見かけることも多い(本種のほうがやや少ない)。ヒメキマダラセセリを撮影していた時、一瞬カメラのファインダーから目を外したら、いつの間にかキマダラセセリに入れ替わっていたこともあった。ほぼ同サイズの小型種。年2化。季節変異は少なく、雌雄差も僅少。大雑把に言って雌雄差が顕著なヒメキマダラセセリの雄と雌の中間的な印象。裏面は地色部と明色黄斑部とのコントラストが明瞭。日本での分布域はヒメキマダラセセリより広く、北海道からトカラ列島に至る。食草はイネ科草本やササ・タケ類。フィールド日記6.16/6.18/6.26/9.7/9.8/9.10/9.19。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ミヤマチャバネセセリ Pelopidas jansonis 山地谷弄蝶


千葉県君津市折木沢 1977.4.28

そのうち撮影出来るだろうと思いつつ、とうとう出会えなかった種のひとつが、このミヤマチャバネセセリ。理由は概ね判明している。著者が霞丘陵を訪れた最初の頃は丘の上(尾根)だけを探索していて、5月になって初めて麓(養鶏場のある谷間)に下った。ミヤマチャバネセセリは年2(~3)化だが、この一帯でのメインの発生時期は春、そして生育環境は、河原や比較的開けた渓流沿い。養鶏場近くの草地には、6月以降はオオチャバネセセリ、8月後半からはイチモンジセセリやチャバネセセリが多産する。その中にミヤマチャバネセセリも混じっているはずと注意し続けていたのだけれど、どうやら第2化以降はほとんど発生しないらしい(4月には多数発生していたことを後で知った)。類似各種とは後翅裏面の基部寄りに大きな白紋を有することで区別は一目瞭然。やや大きめの小型種。雌雄は類似(雄は性標を持つが暗色で目立たない)。食草はイネ科ススキ。蛹越冬。近似各種と異なり、日本海を取り巻く地域に分布。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


チャバネセセリ Pelopidas mathias 隐纹谷弄蝶



東京都青梅市霞丘陵 2021.8.22

概ね、イチモンジセセリとセットで認識されていると思う。似たような環境に棲息し、秋口なって急に個体数が増えることも同様。しかし、イチモンジセセリのように、強くイネに結びついて大量に発生することはない。後翅裏面の白斑が多数あり一つ一つがごく小さいことで区別される。イチモンジセセリ同様に首都圏周辺では春にはほとんど姿を見ないことから、年を通しての定着はしていない可能性が考えられている。一応幼虫越冬で、秋遅くにはイネやススキの葉に巣を造って潜む幼虫を確認しているが、その個体が翌春どうなるかについては未詳。本州南半部から南西諸島を経てアジアの南部に広く分布。大きめの小型種。類似各種同様花蜜を好み、鳥糞や湿地で吸汁・吸水する。食草はイネ科各種(イネも含むがイチモンジセセリのように依存はしていない)やカヤツリグサ科。雄は、前翅表の白斑が小さく、白い棒状の性標をもつ。フィールド日記8.22/8.27/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28/10.11/10.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


イチモンジセセリ Parnara guttata 直纹稻弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.7

日本産の蝶の中で、最も人間の生活に結びついた種であろう。食草のひとつであるイネが、「水田耕作」という形で全国に展開、それに伴って、種本来の生態や生理を変換して行った。その結果、イネが育つ秋口に大量発生し、謎の大移動を行う。冬や春には暖地に移動して、イネ以外の植物を食べ世代を継いでいくのかも知れないが、その実態はよく分かっていない。もとより南西諸島やアジアの南部にそれほど多い種では無い。そして左下の写真に示すように、日本の都市近郊などでも、少数の個体が春に発生している。ちなみに中国大陸西南部でも、日本同様に秋口に個体数が激増するが、その中にはイチモンジセセリのみではなく、ごく近縁な別種も混じっている。もうひとつ、霞丘陵周辺での今回の観察で意外に感じたのは、思っていたよりもずっと夏から秋にかけての個体数が少なかったこと。その辺りのことをどう捉えれば良いのだろうか?フィールド日記5.23/6.28/8.20/8.22/8.27/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


オオチャバネセセリ Polytremis pellucida 透纹孔弄蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.8

前種に似るが、翅型がやや幅広く、後翅の白斑がジグザグに並ぶことで区別できる。しかし、その特徴が上手く適応できずに“この個体はどっちだったっけ?”と、混乱してしまう事もある。その時は頭を見ればよい。頭部が図抜けて大きいのがイチモンジセセリ、小さい(他のセセリチョウ類と同程度)のがオオチャバネセセリ。前者は触角が短めでやや湾曲し、後者は蝶の中でも最も長い口吻を持つ。イチモンジセセリやチャバネセセリの分布が南方寄りなのに対し、本種の分布は日本本土(北海道~九州)を中心としたやや北方寄り。イチモンジセセリやチャバネセセリのように秋に集中せず、6月頃から第一世代が出現する。秋遅くまで発生を繰り返し、今回の観察ではイチモンジセセリを上回る個体数をチェックした。大きめの小型種。食草はイネ科ササ・タケ類。ハナセセリの異名があるように花を好むが、鳥糞や湿地で吸汁・吸水もする。フィールド日記6.17/6.22/6.24/6.26/8.20/8.27/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28/10.2/10.11。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。





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近所の森の蝶 4

2021-12-11 10:22:12 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


近所の森の蝶 4

シジミチョウ科Lycaenidae 小灰蝶科 Blue/Copper/Hairstreak

小型の蝶。もう一つの小型群セセリチョウ科は一見蛾のようだから、翅の差し渡し2㎝ほどの小さな蝶を見たら、シジミチョウ科の種と思えばよい。漢名は「小灰蝶」だが、意味は「蜆蝶」で、翅を開いたヤマトシジミやルリシジミを貝のシジミに見立てたもの。

翅の裏表、雌雄による色彩・斑紋の差は大きく、一般に雌の前翅表は褐色で地味。後翅端に糸のように細い尾状突起を備えた種があり、翅を閉じると頭部にある点状の細い触角と対応して、前後の区別がつきにくくなる。また、尾状突起の付け根には派手な目玉模様があり、これも本物の眼(パッチリとして可愛らしい)と対応している。よく後翅の2枚の翅をこすり合わせているのは、そこに敵の目を引き付けて欺く(敵の思惑とは逆の方向に逃げて行く)為かも知れない。

雌は腹端を擦り付けて食草上を歩きまわり、好ましい産卵位置を探す性質が著しいが、その割には卵(扁平で表面は堅く凸凹)はあちこちに産付されている。幼虫は扁平な蛆虫型で食草の蕾や葉肉などを食べ、体から出す蜜を求めて集まる各種の蟻と何らかの共棲関係が
成り立っているようだ。中には蟻から養分を得たり、蟻の幼虫やアリマキなどを食べて育つ種もある。蛹は帯蛹で、太短いダルマ型。 

世界に約6000種。日本産の70余種は5亜科10族に分けられる。ゼフィルスと呼ばれるミドリシジミ族(25種前後)は濃色で翅型は角ばり、樹上を活発に飛び、花を訪れることは稀。雄は近づいた個体を追って飛ぶ占有性が著しい。ブルーと呼ばれるヒメシジミ族(35種前後)は淡色で翅は丸く、草地を可愛らしく飛び、好んで花を訪れる。コッパーと呼ばれるベニシジミ族は我が国には1種だけだが、何処にでもいて、なかなかに美しい蝶である。




ツバメシジミの産卵(カラスノエンドウ) 
東京都青梅市霞丘陵コリアス草原にて 2021.4.22




シジミチョウ科の幼生期など(「里の蝶」から一部をコピー)。




平均的なサイズ 小型


科の解説にも、日本産のシジミチョウ科は3群(+α)に分けられる、と記した。“ブルー”(小さな空色の蝶)と“コッパー”(ルビー&サファイア)と“ゼフィルス”(西風の精)、およびその他の種である。ただし“ゼフィルス”(ミドリシジミ族)としての纏め方は、どうやら日本だけの「特例」のように思われる。ミドリシジミ族は、日本に25種前後、対してヨーロッパには3種、北米には2種。ミドリシジミ族以外のミドリシジミ亜科(=カラスシジミ亜科)は、日本に10種、ヨーロッパに約15種、北米に70種余。日本ではゼフィルスが主体になり、欧米では(それを含む)ミドリシジミ亜科全体が基準となって、それに与えられた一般名称が“ヘアーストレイク”というわけなのである。

ミドリシジミ亜科を構成する、ミドリシジミ族、カラスシジミ族、トラフシジミ族(および暖地性のムラサキシジミ族)は、基本形質から見て互いに左程遠い類縁関係にあるとは思えない。ゼフィルスを特別視するのではなく、“ヘアーストレイク”として一括する欧米の扱いが、順当なのかも知れない。それで再集計をすると、“ブルー”も“ヘアーストレイク”も、日本産は共に35種前後、“コッパ―”は1種、そのほかが、ウラギンシジミとゴイシシジミの2種(あるいはキマダラルリツバメを加えた3種)という事になる。

改めて纏めておくと、Aヨーロッパ/B北米/C日本産の各々の地域の種数は、“ヘアーストレイク”がA15種前後/B70種前後/C35種前後、“ブルー”がA70種余/B35種前後/C35種前後、“コッパ―”がA10種余/B15種前後/C1種。日本の“ヘアーストレイク”は大半を“ゼフィルス”が占め、“ブルー”は日本も欧米と拮抗し、“コッパ―”は日本が圧倒的に少ない、という構図である。

然るに、「日本の都市近郊の身近な蝶」として捉えた場合、様相がやや異なる。ゼフィルス各種を含む日本の“ヘアーストレイク”の多くの種は、特に「希少」なわけではないが、といって特に「普遍的」と言うわけでもない。どの種も「身近」という観点に於いては微妙な位置づけにある(出会えるチャンスもあるが簡単には出会えない)。

その点、“ブルー”は極めて明確だ。北部や南部を除く日本の都市近郊では、ヤマトシジミ、ツバメシジミ、ルリシジミの3種(それと秋に急激に数が増えるウラナミシジミを加えた4種)が突出して普遍的で、その他の種は山地や寒冷地、或いは南の地域に行かねばお目にかかれない。言い換えれば、この3(4)種を押さえて置けば事足りる(かつ確実に出会える)のである。

ただし、今回(2021年)のアパート裏山探索では、その“普通種ブルートリオ”の出現頻度に著しい差異が見られた。マクロな視野では南方系種のヤマトシジミは極めて数が多く(特に秋に激増)、マクロな視野では北方系種のルリシジミは春に少数が見られた後、夏~秋には全く出会っていない(同様に北方系普通種のツバメシジミとベニシジミは、年の後半には数が少なくはなるけれども、一応確認は出来た)。そのことは、一年を通して発生し殊に秋以降に数を増す「南方系種」キチョウと、春には爆発的発生をしながら夏以降(晩秋になって再登場するまで)一気に姿を消す「北方系種」モンキチョウの関係と軌を一にするようで、興味深い。

ちなみに暖地性のヤマトシジミ(やウラナミシジミ)が数多く見られ、北方系のルリシジミ、ツバメシジミ、ベニシジミが少ないという状況は、「温暖化が原因」と考え得るが、そう単純な話ではないようにも思う。ベニシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミは、近年になって、以前はいなかった(あるいは極めて少なかった)屋久島やトカラ列島や奄美大島などに「南下拡散」傾向が見られるのである。

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ツバメシジミ Cupido argiades 蓝灰蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.7

都市近郊でも普遍的に見られる“ブルー”トリオのうち、ルリシジがどちらかと言えば春の世代で多く見られ、ヤマトシジミがどちらかと言えば秋の世代で多く見られるのに対し、ツバメシジミは一年を通して各世代が比較的安定して出現しているように思える。細い尾状突起を持つことと、後翅裏面後角部にオレンジ紋を持つ(翅表にも出現する)ことで他2種と区別できる(裏面斑紋はウラナミシジミの様に波状にはならない)。雄は翅表全面が明るい空色、雌は濃黒褐色(ときに狭い範囲に空色部が出現する)。年4~5回発生(幼虫越冬)。食草はマメ科で、カラスノエンドウ、ハギ類、シロツメグサなど多岐に亘る。成蝶は花蜜を好み樹液には来ない。小型サイズ。日本本土のほぼ全域に分布。北半球に広域分布し、中国大陸、ヨーロッパ、北米大陸産などには近縁な複数種が存在している。属名をEveresとすることも多い。フィールド日記4.10/4.22/5.23/6.9/6.15/6.16/6.28/7.18/8.11/9.7/9.20/9.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヤマトシジミ Pseudozizeeria maha 酢浆灰蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.7

“大和蜆”の和名でも分かるように、日本の多くの地域において最もポピュラーな蝶のひとつ。ただし北海道などの寒冷な地で分布を欠き、温暖地域に偏っている。秋口から冬のはじめにかけて特に多く見られる。翅裏面の地色は、ルリシジミのような純白ではなく、多少なりとも 薄っすら灰褐色を帯びる。黒斑の並びもルリシジミとは異なる(中央上から2個目の紋がずれない)。翅表は、雄は一面の空色、雌は黒褐色で、しばしば基半部に青色鱗を伴う。高温期に幼生期を過ごした世代は、雄翅表の縁の黒帯部が幅広くなる。複眼が灰色を帯びることは他のブルー各種に見られない特徴である。年5回前後の発生(幼虫越冬)。食草はカタバミ科のカタバミ。成蝶は花蜜を好み樹液には来ない。小型サイズ。本州以南の全土に分布。属名をZizzeriaとすることもある。フィールド日記3.23/3.24/4.8/4.10/4.20/4.27/5.6/5.14/6.13/6.24/8.20/9.7/9.8/9.10/9.19/9.28/10.11/10.20/10.23/10.24/10.30/11.11/11.13/11.20/11.25。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ルリシジミ Celastrina argiolus 琉璃灰蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.23

多くの蝶では幼虫の食草は単一の種やグループに限られている(その典型がヤマトシジミ)が、本種の食草は例外的に多くの科の植物(マメ科、バラ科、タデ科ほか)に亘っている。卵は蕾や若い花序に産付され、幼虫は花や葉の肉質部を食し、しばしば蟻と共生関係を持つ(大半のシジミチョウ科の種と共通)。小型種(ヤマトシジミやツバメシジミに比べ翅が幅広く感じる)。早春に数多く見られ、秋まで数世代が引き続いて出現するが、何故か霞丘陵周辺では春一番に出会った後、一度も姿を見ていない。雄の翅表は一面の明るい空色、雌は地色が黒褐色で中央に空色部が広がる(春季の雌は空色部が翅表の2/3以上を占めることもある)。裏面の地色は純白。後翅の黒斑列は、上から2個目が内側にずれる。花蜜を好み通常樹液には来ない。吸水性が顕著。日本のほぼ全土に分布するが、南西諸島では分布を欠くかごく稀。北半球に広域分布する(種を細分する見解もある)。フィールド日記3.23/6.1/6.10。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ウラナミシジミ Lampides boeticus 亮灰蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.8

イチモンジセセリなどと同様に、一年の後半に(夏の終わりから秋遅くにかけて)個体数が激増する。季節的な南北移動を行っている可能性もあるが、実態は定かではない。年間を通して発生(5回前後?)しているのは、本州の南半部以南と考えられている。しかし、秋には3000mを超す高山帯などにも表れる(中国雲南省での観察)。翅裏面に灰褐色の密な波状の斑がある。後翅裏面後角にオレンジ斑を有し、長い尾状突起を持つ。雄の翅表は、淡い紫色を帯びた青色。雌翅表は、内側が空色で周囲が濃灰褐色。翅のサイズは、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミより一回り大きく、翅型が四角っぽい。食草はマメ科のエンドウ、フジマメ、クズなど。幼虫は豆の鞘に潜り込んで実を食べる。成蝶は花蜜を好み、敏捷に飛翔する。都心の花壇などでも秋にはよく見かける。フィールド日記9.8/9.19/9.28/10.2/10.5/10.11/11.11/11.25。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ベニシジミ Lycaena phlaeas 红灰蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.1 低温気型 メス

日本各地の都市近郊で最もポピュラーな蝶のひとつ。ベニシジミの仲間はヨーロッパ、北米大陸、中国大陸などには数多くの種が分布するが、日本産はベニシジミ一種のみ。種としてのベニシジミは北半球の温帯域に広く分布し、日本でも北海道~九州のほぼ全域に分布する。南西諸島には産せず、屋久島では著者が2006年に撮影した個体が最初の記録(食草に付随しての二次移入と考えられるが現在では定着している由)。中国大陸(中~南部)では余り普遍的な蝶ではない。北米大陸産は東部と西部でルーツが異なる。やや大きめの小型種。年4~5化(蛹越冬)。高温期に幼虫を過ごした個体は翅表が黒ずむ。食草はタデ科のギシギシ属など。他の多くのシジミチョウ科の種が食草の蕾や若芽を好んで食するのに対し、本種は主に成長した葉を食べる。また、シジミチョウ科としては例外的に幼虫は蟻との関係性が薄い。フィールド日記3.24/4.8/4.10/4.22/4.27/5.1/5.25/6.15/6.26/9.10/9.19/9.20/9.28/11.11/11.12/11.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


コツバメ Callophrys ferrea 梳灰蝶 


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.23

著者が数十年ぶりに挑戦した東京近郊の一年を通しての撮影行の初日に、最初に出会ったのがこの種(しかしその一頭だけでその後出会っていない)。ツマキチョウ、ミヤマセセリと共に、春にだけ成蝶が出現する、かつ身近な“スプリング・エフェメラル”の代表種である。“春の女神”ギフチョウに対し、著者はツマキチョウを“春の乙女”、ミヤマセセリを“春の淑女”、本種を“春のオテンバ娘”と見做している。目まぐるしく飛び、花を訪れたり、地上の枯葉にとまったりする。また、屡々翅を閉じたまま横倒しにして日浴する(本種を含むカラスシジミ族の特徴)。小さめの小型種。北海道~九州に分布。食草はツツジ科のアセビやネジキなどの蕾や新芽。蛹越冬。尾状突起はない。雌雄は酷似するが、翅表の色合いが異なる(雄は一様に濃い青色、雌は黒褐色で中央部に明るい青色部分がある)。属名をAhlbergiaとする見解もある。フィールド日記3.23。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


トラフシジミ Rapala arata 宽带燕灰蝶


東京都青梅市霞丘陵2021.6.18 リョウブの葉に産卵

春型と夏型で、翅の色彩が最も顕著に相違する種のひとつ。すなわち(年二回出現する)春型は白と濃褐色の虎斑模様、夏型では地色も帯の部分と同じ(帯の色よりも淡い)褐色を呈する。翅表は、雄は一様の濃紺色、雌は褐色地にオレンジ色の斑紋を配する。北海道~九州に分布。朝鮮半島、中国大陸、台湾などに分布する近縁種のウスムラサキシジミ(アカトラフシジミ)Rapara caeruleaなどは、雄も雌同様、翅表にオレンジ色の大きな斑紋を持つ。やや大きめの小型種。雄は後翅表基部に性標を表す。食草はマメ科、バラ科、アジサイ科(ウツギ類)、リョウブ科など多岐に亘る。幼虫は花や蕾を食し、色彩は多様で、食草の花色に似る。蛹越冬。成蝶は花を好んで訪れ、しばしば吸水も行う。敏速に飛び、すぐに葉上にとまる。フィールド日記6.18。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲


ミズイロオナガシジミ Autigius attilia 青灰蝶


東京都青梅市霞丘陵2021.6.1

霞丘陵などの都市近郊に分布するゼフィルス(=ミドリシジミ族)は6種、うち最も普遍的に見られるのが本種である。北海道~本州に分布。年一回、6月に出現。卵越冬。食草はブナ科のコナラなど。やや大きめの小型種。他の大多数のゼフィルス同様、後翅に尾状突起を備える。成蝶は葉上の水分を吸うほか、クリなどの花で吸蜜し、時に樹液で吸汁する。日中はほとんど活動せず、朝夕に樹上を飛ぶが、雄はミドリシジミやオオミドリシジミのように顕著な卍巴飛翔は行わず、アカシジミのような黄昏落下飛翔も示さない。翅表も翅裏の条線も濃灰色なのにも関わらず、和名に“ミズイロ”と名付けられているのは、飛翔時には濃灰褐色と翅裏地色の白色とが溶け合って、確かに“水色”に感じるからであろう。雌雄は酷似する。裏面の褐色条には変異が多い。フィールド日記6.1/6.18。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ミドリシジミ Neozephyrus japonicus 日本翠灰蝶


埼玉県入間市宮寺 2021.6.13 産卵

丘陵の谷戸の湿地に生えるハンノキ林に棲む。霞丘陵にも以前は多産していたようだが、ハンノキの生える湿地が人為的な菖蒲公園になってからは、ほとんど姿を消してしまった。それで、隣接する狭山丘陵西部のハンノキ林まで、歩いて2時間かけて足を伸ばした。大きめの小型種。雄の翅表は濃い緑色。裏面は淡褐色。6月に出現。夕刻、5時を過ぎた頃、食樹のカバノキ科のヤマハンノキやハンノキから成る雑木林の樹上を何頭もの雄が卍巴に絡み合って追飛する。下に降りてくるのは日が暮れてからで、早朝に訪れると屡々朝露に濡れた下草にとまっている(ときには日中に降りてくることもある)。雌は翅表地色が褐色で、4つの斑紋型(A型=青紋)、B型(赤紋)、AB型(青/赤紋)、O型(無紋)がある。北海道~九州(山地)に分布、台湾には近縁種のタカサゴミドリシジミNeozephyrus taiwanusが分布する。フィールド日記6.13/6.14/6.15。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


オオミドリシジミ Favonius orientalis 艳灰蝶


東京都青梅市青梅丘陵 2021.6.10 オス

雄が緑色に煌めく低地産のゼフィルスは、本種とミドリシジミの2種。ミドリシジミの雄翅表が濃い緑色なのに対し、本種は明るい青縁色で、縁の黒帯が細い。雌翅表は褐色で青斑や赤斑は生じない。裏面の地色は灰色。大きめの小型種(「オオ」と名付けられているがサイズはミドリシジミとほぼ同じ)。6月に出現。卵越冬。食樹はブナ科のコナラなど。雑木林の空隙地や小高い丘頂の落葉樹などに棲息、雄は午前9時前後に占有行動を示し、梢の周辺を雄同士が卍巴飛翔する。成蝶は主に葉上の水分を吸い、時に花や樹液を訪れることもある。北海道~九州に分布。本種を含むオオミドリシジミ属は日本に7種(本種以外は主に山地帯に棲息)とされ、よく似た別属のミドリシジミ属やメスアカミドリシジミ属が台湾‐中国西部‐ヒマラヤ地方に繁栄するのに対し、本属はそれらの種が余り見られない日本海周縁地域に多くの種が繁栄している。フィールド日記6.10/6.11/6.13。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ウラゴマダラシジミ Artopoetes pryeri 精灰蝶


岡山県哲多町 1986.6.26 メス

翅型が丸く、翅表は淡い空色、翅裏は白地に黒点列、尾状突起を欠き、ぱっと見はミドリシジミの仲間というよりも、ルリシジミの仲間のように見える。しかし本種もゼフィルス(ミドリシジミ族)の一員である。落葉樹林の低木の木陰を一定のコースに沿って緩やかに飛ぶ様は、ゼフィルスとしての風格のようなものを感じる。食草はイボタ科のイボタノキなど。成蝶は花を訪れることも多い。北海道~九州に分布。6月に出現。卵越冬。大きめの小型種(よく似たルリシジミの雌よりも一回り大きい)。雌は、翅表に白斑が発達する。東アジアを中心に100種以上が分布するゼフィルスのうち、翅が横長で丸く尾状突起を欠く種としては、本種の他、翅の表裏ともオレンジ色のチョウセンアカシジミCoreana raphaelis、翅表面が紺色で裏面が赤褐色のヨーロッパ(地中海西部)産のLaeosopis roborisなどがあり、大半がブナ科食のゼフィルスの中にあって、モクセイ科食であることも共通している。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


アカシジミ Japonica lutea 黄灰蝶


埼玉県入間市宮寺 2021.6.14

6月の夕刻、雑木林の樹上から、まるで赤い小さな紙切れが舞い落ちてくるような“黄昏落下飛翔”を行う。牡丹雪のごとく、次から舞い降りてくる様は見事である。クリの花で吸蜜していることが多く、ときに大集団を形成する。大きめの小型種。雌雄は酷似する。卵越冬。食草はブナ科のコナラ、クヌギ、アラカシなど。北海道~九州に分布。北日本には、カシワを食草とするキタアカシジミJaponica onoiを産し、アカシジミとは交尾器など形態的にも差異がある。また、広島県北部のごく限られた地域(ロシア沿海地方にも分布)には、やはり雄交尾器に安定的な独自の特徴をもつ集団がいて、筆者は別の独立種ミナミアカシジミJaponica mizobeiと考えている。ほかに台湾、中国大陸西部などに、それぞれ個別の近縁種が分布している。フィールド日記6.14/6.15/6.17。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ウラナミアカシジミ Japonica saepestriata 栅黄灰蝶

文字通り「黒い裏波状」斑が特徴的なアカシジミ。アカシジミと共に雑木林に分布するが、その棲息環境はやや異なり、人里では地域によってはむしろ本種のほうがより普通に見られる場合もある。ただし今回の霞丘陵周辺探索行で撮影し損ねた種のひとつでもある。食草はブナ科の主にクヌギ、アベマキ(紀伊半島産はウバメガシを食し別亜種とされる)。北海道、本州、四国に分布し、九州には分布を欠く(アゲハチョウ科のウスバシロチョウと同パターン)。6月に出現。卵越冬(ミドリシジミ族やカラスシジミ族の越冬態は正確には孵化したまま卵の中に潜んだ一齢幼虫)。大きめの小型種。雌雄はよく似るが、雌は前翅表の翅頂付近に黒色部が広がる。クリの花などで吸蜜し、夕刻に緩やかに飛翔する。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ムラサキツバメ Arhopala bazalus 百娆灰蝶

霞丘陵では一度だけ出会った。雑木林の中の道を歩いていた時、突然目の前に飛来、ササの葉上にとまって、慌てて一枚だけシャッターを切ったところで飛び去って行った。以前は近畿地方の南部や沿岸部が北限だったが、近年は関東地方まで勢力を広げている。クロコノマチョウの場合とほぼ同パターンで、日本の暖地や中国南部や台湾などに分布し、従来は中琉球(奄美大島、沖縄本島など)には居なかった。それが現在では、北方への分布の拡大とともに、南へも分布を広げているようである。大きめの小型種。尾状突起を備える。雌は翅表一面が濃い紫、雌は地色が褐色で内側に明るい紫色部分を持つ。食草はブナ科マテバシイ 属。年数化。成蝶越冬。越冬中は一か所に集まってしばしば大来な集団を形成する。成蝶は葉上の水分を摂取し、時に花を訪れ、腐果や樹液で吸汁する。フィールド日記8.11。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ムラサキシジミ Arhopala japonica 日本娆灰蝶


東京都青梅市青梅丘陵 2021.6.28 メス

ムラサキシジミ族はミドリシジミ族に比較的近縁で、東アジアの温帯域に分布が集中するミドリシジミ族と置き換わるように、アジアの亜熱帯~熱帯地域に極めて多くの種が繁栄している。日本産は、ムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ルーミスシジミPanchara ganesaの3種。うちムラサキシジミは本州以南に普通に見られ、時には食樹のひとつである住宅街に植栽されたアラカシなどに発生していたりもする。他の食草は同じブナ科のアカガシやコナラなど。年3化。成蝶越冬。冬の前後の暖かい日には、葉上で翅を開いて日浴する個体をよく見かける。やや大きめの小型種。前翅頂が尖り、後翅には尾状突起を欠く。雌雄は類似するが、雄は翅表の紫色部分が広く色が濃い。成蝶は葉上の水分を摂取。属名をNarathuraとすることもある。フィールド日記6.9/6.24/6.28/7.18。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ウラギンシジミ Curetis acuta 尖翅银灰蝶


東京都青梅市霞丘陵2021.8.20

ムラサキシジミと共に、冬の前後の照葉樹林の林縁などでよく見る種。民家の生垣などで、数頭が集まって越冬していることも有る。ムラサキシジミより一回り以上大きな、シジミチョウ科の最大形種。ほかのシジミチョウ科とは異なる系統に所属、胴体も太く、一見セセリチョウ科のようなイメージでもある。何よりも他の全ての蝶にない翅裏一面の銀色が本種独自の特徴で、飛翔時には極めて良く目立つ。しかし、翅を開いての静止中は、枯葉などの周囲に溶け込んで、その存在に意外に気が付かない。翅表の中央部は、雄が銀白色、雌が朱色。年2~3化で成蝶越冬。どの世代も前翅の頂が突出するが、越冬世代では殊に鋭く尖る。食草は、マメ科の主にクズ。本州以南に分布。成蝶は腐果を訪れ吸汁し、湿地で吸水する。フィールド日記6.9/6.24/6.28/7.18。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ゴイシシジミ Taraca hamada 蚜灰蝶


神奈川県川崎市麻生区 1977.9.1

今回の探索では、霞丘陵周辺では確認できなかったが、首都圏を含む都市近郊でもやや普通に見られる。しかし生育環境はササ(メダケ属、ササ属)の群落に限られ、その葉裏のアブラムシ(半翅目)の集団中に卵を産み付け、幼虫はアブラムシ(ササコナフキツノアブラムシ)を食べて育つ。小型種。翅型や大きさは“ブルー”各種と変わりは無いが、名のように碁石を並べたような翅裏の斑紋は独特(翅表は黒墨色)で、他のシジミチョウ科各種とは異なる系統(ゴイシシジミ亜科)に位置づけられる。年3~4化。幼虫越冬。成蝶もアブラムシの分泌物を吸汁する。北海道~九州に分布。雌雄は類似するが、雌の翅型はより丸味を帯び、翅表にぼんやりした白斑部が広がる。飛翔は緩やかだが、夕刻近くに雄は占有行動を示す。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。





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近所の森の蝶 3(下)

2021-12-10 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


近所の森の蝶 3(下)

タテハチョウ科Nymphalidae つづき(ジャノメチョウ亜科Satyrinae)

ジャノメチョウ亜科についての補足。小さめの中型種が多い。大きさ、翅の輪郭など、全体的印象はシロチョウ科に似る。主に草本イネ科を食し、比
較的緩やかに飛ぶジャノメチョウ型の種と、翅先が尖り敏速に飛び回るタケ・ササ食のヒカゲチョウ型の種がある(系統分類とは必ずしも一致し
い)。ジャノメチョウ亜科は、日本でも世界でも種数が多く、タテハチョウ科全体の1/3ほどを占める。種分化が進んでいる、ということである。
往々にして、食草のイネ科植物共々地味な外観から、印象的に“原始的な存在”に結びつけがちだが、その実態は、イネ科植物同様に(生物年代的
に見れば)近年になって一気に展開した、新しいグループの生物である。ジャノメチョウ科の多くの種に離島や高山などでの特化集団が数多く見ら
れるのは、そのことに起因する。

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クロコノマチョウ Melanitis phedima 睇暮眼蝶


東京都青梅市霞丘陵2021.9.7

本州の都市近郊に40年前にはいず、今は普通に見るようになった蝶の代表的存在はアカボシゴマダラとクロコノマチョウだろう。本種に関しては温暖化による現象と一般に捉えられている。しかし(ナガサキアゲハなどの項でも同様の意見を述べたが)必ずしもそうとは言い切れないのでは?本種の本来の分布南限は屋久島。中琉球(奄美群島、沖縄本島)を挟んで、次は八重山、台湾、中国南部など。日本に於ける分布圏はさほど広いわけではない。南の地域から北上した、というよりも、拡大した、と捉えた方が良いのではないか?近年奄美大島や沖縄本島にも見られるようになっていることは、それを示唆しているように思える。大きめの中型種。食草はイネ科各種。より南の地域に広範囲に分布し以前から北方への飛来が数多く観察されているウスイロコノマチョウに(ことに越冬個体で)酷似する。雌雄差は微小。裏面斑紋は著しく多様。年数化。成蝶越冬。フィールド日記5.14/6.14/9.7/9.8/9.28/9.29/10.11/10.28/10.30。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ジャノメチョウ Minois dryas 蛇眼蝶


兵庫県上郡町1987.9.25

今回の探索行で出会えなかった蝶のひとつ。どうやら、ちょうどこの蝶の棲む環境(河原や林縁の草叢や荒れた空き地など)に、同じサイズのクロコノマチョウが置き換わって増えているような気がする。クロコノマチョウは、アジアの南半部に分布し、ジャノメチョウはユーラシア大陸に広域分布する種。例えば、キチョウとモンキチョウ、ヤマトシジミとルリシジミの関係にもよく似ている。その理由が「温暖化」ひとつに集約されるとは著者は考えていないが、何らかの気候変動に関連することは確かなようだ。大きめの中型種。北海道~九州に分布。台湾の高山蝶ナガサワジャノメは本種にごく近縁な種である。食草はイネ科各種。年1化、夏の盛りに出現する。幼虫越冬。花を訪れるほか、樹液や腐果での吸汁も行う。雌はより大型で色彩が淡い。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒメウラナミジャノメYpyhima argus 东北矍眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.22

霞丘陵で最もポピュラーな蝶のランキングをつけてみた。1位候補にはキチョウやヤマトシジミも挙げられるが、出現時期が年の後半に偏っている。早春と晩秋を除く一年を通して途切れることなく、かつ様々な環境で数多く姿を見かける、ということで、ヒメウラナミジャノメを最普通種として推したい。やや大きめの小型種。翅裏の波模様で他種と間違えることはない。遠目にはシジミチョウ科の種とやや紛らわしいが、独特のリズミカルな飛翔から、すぐに本種と分かる。分布圏が極めて限られる同属種のウラナミジャノメとは、後翅裏面の眼状紋が本種では上に2個(ウラナミジャノメでは1個)、下方に3個(同2個)であることで区別できる。雄は前翅表基部の脈が膨らみ、雌は眼状紋周辺が淡くなる。北海道~屋久島に分布。年数化。食草はイネ科やカヤツリグサ科の各種。花を好んで訪れる。フィールド日記4.20/4.22/4.24/5.6/5.14/5.23/5.29/5.30/6.1/6.8/6.15/6.26/7.10/7.17/8.11/8.27/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28/10.2。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


サトキマダラヒカゲNeope goschkevitschii 日本荫眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.14 春型オス

ジャノメチョウ亜科は、外観上ジャノメチョウ型の種とヒカゲチョウ型の種に分かれる。前者は翅型が丸く緩やかに飛び、明るい環境を好んで花をよく訪れる。後者は翅柄が角張り敏速に飛び、林内を好んで樹液に集まる。前者の代表的種がヒメウラナミジャノメ、後者の代表的種がサトキマダラヒカゲ。両種とも最普通種であるに関わらず「ヒメ」とか「サト」とかを冠した長い和名を持つことは興味深い。キマダラヒカゲ属は広く捉えればヒカゲチョウ族に含まれるが他の各属の種が静止時に翅を開くことも多いのに対し、本属の種は静止時には絶対に翅を開かないという、日本産の蝶の中でも数少ない特殊な性質を持つ。大きめの中型種。雄は翅表に性標を持ち、雌は翅型がやや広い。裏面の斑紋は世代や地域によって多様。年2化。幼虫越冬。食草はイネ科のメダケ属。北海道~九州に分布する日本の固有種。フィールド日記5.14/5.23/5.25/5.30/6.1/6.8/6.9/6.14/6.15/6.18/6.20/6.24/8.11/8.19/8.20/8.22/9.7/9.8/9.10/9.19。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒカゲチョウ Lethe sicelis 日本黛眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.6.8

厳密な意味では蝶類中唯一と言ってよい正真正銘の日本固有種。他にも日本固有種は何種か存在するが、“種群”単位で見れば対応種が大陸などに分布している。本種は対応種(姉妹種)が世界の何処にも存在しない。そのような意味では日本の“国蝶”としても良い。が、いかんせん余りにも地味である。本州、四国、九州北部に分布。大都市近郊でも普通に見られるが郊外に向かうにつれ数が少なくなるように思える。しかし日本アルプスの深い渓谷などには豊富に棲息し、分布の二極化の傾向が見て取れる。食草はイネ科の主にメダケ属(山間部ではササ属)。年2化。第1化は同所に混在するサトキマダラヒカゲより半月ほど遅く、第2化も僅かに遅い。幼虫越冬。成蝶は樹液に集まる。やや大きめの中型種。後翅裏面中央の濃色条が眼状紋の下辺で大きく屈曲しないことがクロヒカゲとの確実な区別点。雄は翅表が濃く基半が特殊鱗で覆われる。フィールド日記5.30/6.1/6.8/6.9/6.24/8.20/8.27/9.7/9.10/9.19/9.28/9.29。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


クロヒカゲ Lethe diana 黛眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.14

都市近郊を含む低地から山岳地帯まで密に棲息、北海道(北限はサハリン)から九州南端まで広く分布するが、何故か千葉県には産せず、霞丘陵を含む東京の西郊にも普通に見られるのにも関わらず、多摩川以東には分布しない。日本海側の島嶼には分布、太平洋側の島嶼には分布を欠き、伊豆御蔵島には特化集団が隔離分布する。南西諸島や台湾にも分布せず、大陸部での詳細は不明。姉妹種は台湾産オオシロオビクロヒカゲLethe mataja、大陸産ではLethe laodamia(共に雄の性標と鱗粉や眼状紋の関係が非常に興味深い)。食草はイネ科ササ属。ヒカゲチョウやサトキマダラヒカゲ(山地帯ではヤマキマダラヒカゲやヒメキマダラヒカゲも加わる)と混棲するが、より暗所を好む。年3化。幼虫越冬。樹液、腐果で吸汁。翅をよく開く。後翅裏最上部眼状紋の下縁の暗色条線が強く屈曲。雄は性標を持つ。フィールド日記5.14/5.23/6.1/6.8/6.9/6.16/6.18/6.24/7.10/7.17/9.8/9.10/9.19/9.28/10.2/10.3/10.6/10.11/10.20/10.30。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒメジャノメ Mycalesis gotama 稻眉眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.29

日本の各地で極めてポピュラーな蝶のひとつだが、何故か霞丘陵では秋が深まるまでは一度も出会わなかった(写真下の個体は住宅街で撮影)。小さめの中型種。コジャノメに酷似するが、全体の色が淡く、黒味を帯びない。また、翅裏面を縦に貫く白帯はコジャノメのように紫色を帯びず、帯の外側と内側の色調が均質。雌雄差は僅少だが、雄は後翅基方の翅脈が膨れ、特殊鱗粉の塊を有し、その位置や形状がコジャノメとは異なる(後翅表前縁基部寄りの長毛束は余り目立たないが、その周辺が顕著に変色する)。コジャノメとは対照的に明るく開けた環境を好む。雄はしばしば卍巴飛翔を行う。北海道の大部分を除く日本各地に分布、奄美大島以南の南西諸島産は別種リュウキュウヒメジャノメとされる。食草はイネ科やカヤツリグサ科各種草本。通常花には来ず、樹液や腐果を好む。東京周辺ではおそらく年3化(幼虫越冬)。フィールド日記6.1/9.28/9.29/10.11/10.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


コジャノメ Mycalesis francisca 拟稻眉眼蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.23

霞丘陵で最も多い蝶のひとつで、鬱閉した雑木林や照葉樹林の内部でも見ることの出来る数少ない蝶である。小さめの中型種。ヒメジャノメに酷似するが、翅地色全体が濃黒褐色で、裏面中央を縦に貫く白帯が薄っすら紫色身を帯び、その外側の部分は内側の部分とやや色調が相違する。雌雄差は僅少だが、雄は後翅基方の翅脈が膨れ、特殊鱗粉の塊を有し、その位置や形状がヒメジャノメとは異なる(前翅表内縁中央付近に黒色鱗粉塊、後翅表前縁基部寄りに良く目立つ明色の長毛束を有す)。本州~九州に分布。南西諸島には分布しない。食草はイネ科の各種。花には来ず、樹液や腐果を好む。年3化(幼虫越冬)。第1化はヒメジャノメよりやや早く出現。後翅裏面の眼状紋は、第1化でより小さく、第2化以降でより大きい。第3化は白帯がやや太く、内側と外側の地色の差が比較的少ない。フィールド日記4.23/5.6/5.14/5.25/5.29/5.30/6.8/6.11/6.16/6.24/6.28/7.12/7.20/9.7/9.8/9.10/9.20/9.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


≪参考≫ウラナミジャノメ Ypthima motschulskyi 东亚矍眼蝶
Ypthima属は日本に2種が分布し、ひとつが最普通と言えるヒメウラナミジャノメ。もうひとつが“ヒメ”が付かない(しかし大きさには差がない)ウラナミジャノメ。こちらは多くの地域でほぼ絶滅状態に陥っている。首都圏でも神奈川県西部などに棲息していたが、現在は絶滅。京阪神地域でもかつては都市周辺に多くの産地があったが、絶滅または激減している。九州南部や対馬には多産地する地もある。本土産雄の前翅表に性標があるが対馬産ではそれを欠く。大きめの小型種。年の発生回数は地域によって異なる。生態はヒメウラナミジャノメに準じるが、中国大陸の多くの地域では、ヒメウラナミジャノメよりむしろ本種(近縁別種とする見解もある)のほうがポピュラーである。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。





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近所の森の蝶 3(中)

2021-12-08 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


近所の森の蝶 3(中)

タテハチョウ科 Nymphalidae (つづき)


アサギマダラ Parantica sita 大绢斑蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.11.13

美麗な大型種。渡りをする蝶として有名。各地でマーキングされた個体の“リリース&リキャッチ”により、数多くの長距離移動例が報告されている。南から北への記録もあるが、北(東)から南(西)への移動例が圧倒的に多い。北への移動は散発・断続的、南への移動は集中的に為されていると思われる。東京周辺では、夏の後半以降に移動途上の個体が訪花に訪れ、キク科のヒヨドリバナ類が特に好まれる。アザミやコウヤボウキにも訪れる。樹液には来ない。意外なことに、ほぼ日本の固有分類群(亜種または種)。国外で継続して記録があるのは台湾の一部地域。ほかに上海、香港などで移動後の個体が捕獲されている。中国内陸部(北部を除き南部沿海山地を含む)産は日本産とは異なる分類群に所属する。雄は後翅下方に濃色部がある。食草はガガイモ科各種。(一応)幼虫越冬。フィールド日記9.28/10.3/11.13。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ツマグロヒョウモン Argynnis hyperbius 斐豹蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.19 メス

現在東京の市街地で最もポピュラーな蝶は、小型種ではヤマトシジミ、比較的大型の種ではツマグロヒョウモン(属を細分したときはArgyreus)ではないだろうか?ヒメアカタテハ、ウラナミシジミ、イチモンジセセリなど同様に個体数が年の後半に極端に偏るが、本種の場合は、一応年間を通して姿は見られる。都市部での急速な増加といえば帰化種のアカボシゴマダラだが、まだまだ本種には及ばない。東京で増えだしたのは20年ほど前頃から、50年ほど前までは関西でも稀であった。大きめの中型種で、蝶としては珍しく雌が鮮やか。外観が似た(相互擬態?)別グループの種に、カバマダラとスジグロカバマダラ、メスアカムラサキ雌、ハレギチョウなどがいるが、いずれもツマグロヒョウモン同様の熱帯アジア広域分布種であるに関わらず、日本本土には進出していない。食草はスミレ属各種(卵は地表や他植物などに産付)。フィールド日記4.23/5.1/7.18/9.10/9.19/9.20/9.28/9.29/10.2/10.11/10.20/10.24/10.28/11.11/11.12/11.25。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


クモガタヒョウモン Argynnis anadyomene 云豹蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.5.14 オス

いわゆる「大型ヒョウモンチョウ類」の一員。都市近郊でも見られる大型ヒョウモンは7種で、霞丘陵に於いては、前頁で紹介した暖地性のツマグロヒョウモンを除く6種のうち最初に出会ったのがクモガタヒョウモンである。しかし余り普遍的な種ではないようで、そのとき一度切りしか出会えていない。大きめの中型種。後翅裏面の斑紋が他の大型ヒョウモンチョウ類各種よりもぼんやりしていて、前縁部に生じる白斑が目立つ程度、全体が曖昧なウグイス色に覆われている。和名の「雲形」も、そのイメージに因る。写真の個体は雄で、前翅表に一条の黒い性標を持つ。雌は翅表の地色がやや黒ずむ。北海道~九州に分布。一種で独立属Nepharginnisとされることもある。年一化、5月に出現し、他の大型ヒョウモンチョウ類同様に(夏眠期を挟んで)秋口まで生きていることが多い(一齢幼虫越冬)。食草はスミレ属。成蝶は主に花を訪れる。フィールド日記5.14。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ミドリヒョウモン Argynnis paphia 绿豹蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.8 メス

「大型ヒョウモンチョウ類」は、日本に9種(近年のDNA解析に因れば更に多くの種に分けられている)が分布し、通常7つの属に分割されるが、本書ではArgynnis一属に纏めておく。
ミドリヒョウモンは狭義のArgynnisに属し、その模式種である。北海道~九州のほか、ヨーロッパに至るユーラシア大陸に広く分布している。年一化、初夏に現れ、夏眠後、秋に再活動する(一齢幼虫越冬)。霞丘陵では秋口から見られ、ツマグロヒョウモンを除く大型ヒョウモンチョウ類の中では最も個体数が多いように思われる。大きめの中型種。雄は翅脈に沿った3本の黒い横条を成す性標を持つ。雌は翅表地色が黒ずみ、赤味が欠けてやや深緑色を帯びる。後翅裏面の地色は、ぼんやりした鶯色、縦に3本の太い白条が走る。食草はスミレ属各種。樹木の太い幹の上部の樹皮に卵を散付する。成蝶は各種の花で吸蜜する。フィールド日記9.8/9.10/9.19/9.21/9.28/9.29/10.2/10.3/10.6/10.20/10.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


メスグロヒョウモン Argynnis sagana 青豹蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.19 メス

本書ではArgynnis属として1属に纏めた「大型ヒョウモンチョウ類」各種は、通常それぞれ1~数種ごとに固有の属に分割され、その見解に従えば本種も1種でDamora属となる。その根拠は雄交尾器の特徴が(狭義の)属ごとに顕著であることに因るが、ヒョウモンチョウ類の雄交尾器の末端形質は地域集団ごとの変化が著しく(本種も日本産と中国大陸産で安定的な差異を示す)、大型ヒョウモンチョウ類に限っては本質的な分類指標にはならないと筆者は考えている。雌は雄とは全く異なる外観で、一見イチモンジチョウ類に似る。雄は他の大型ヒョウモンチョウ類に類似し、特に(狭義の)ウラギンスジヒョウモン属2種に似るが、裏面の地色がやや赤味を帯び、縦の細い褐色条線が下方で繋がることで区別できる。大きめの中型種。年1化、初夏出現し、夏眠後秋口に活動する(一齢幼虫越冬)。食草はスミレ科。成蝶は花を訪れる。北海道~九州に分布。フィールド日記9.19/9.20/9.28/9.29/10.2/10.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ウラギンヒョウモン Argynnis adippe 灿福蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.28

暖地性の多化性種ツマグロヒョウモンと、5月に出会って以来その後姿を現さないでいるクモガタヒョウモン以外の大型ヒョウモン類は、夏の間一種も出現しないでいた。しかし、秋口になってミドリヒョウモンが登場して以来、次々と姿を現し、ことに9月の下旬には、メスグロヒョウモン、ウラギンヒョウモン、オオウラギンスジヒョウモンが、日替わりで同じアザミの花を訪れたのである。いずれも汚損した個体、夏の間は一体どこに潜んでいたのだろうか。霞丘陵でウラギンヒョウモンを見たのはこのときだけ。近年、従来のウラギンヒョウモンは3種に分割されることになったが、著者は「種」の定義の概念に異論をもっていることもあり、従来通り1種として纏めておく。大きめの中型種。分布域、出現期、食草なども他の大型ヒョウモン類と概ね同じ。近縁種オオウラギンヒョウモン(ウラギンヒョウモンと共に狭義にはFabriciana属とされる)ほどではなくても、本種も明らかに減少しているようである。フィールド日記9.28/10.2。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。

オオウラギンスジヒョウモン Argynnis ruslana  红老豹蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.29

本書では大型ヒョウモン類を全てArgynnis1属に纏めたが、必ずしもその処遇が妥当と言うわけではない。その理由の一つは、本種とウラギンスジヒョウモンが属する狭義のArgironomeは、雄交尾器の形状などが(通常大型ヒョウモンに含めない)ヒョウモンチョウ属Brenthisと共通する部分もあり、1属に纏める場合はその帰属も(ひいてはいわゆる小型ヒョウモン類との類縁上の関係も)考慮しなくてはならぬからである。狭義のウラギンスジヒョウモン属は本種とウラギンスジヒョウモンの2種からなり、本種のほうがより大型で、前翅端が突出し、その部分の裏面が濃色、前翅基半の地色は一様に茶褐色で、その部分には白斑が出現しない。写真の個体は雌だが、前翅表1~2脈に沿って、雄の性標とほぼ同位置に黒条が出現する。雌は前翅端近くに白斑を備え、地色の赤味を欠くことなど、他の大型ヒョウモン類と共通。分布域、出現期、食草なども他の大型ヒョウモン類と概ね同じ。フィールド日記9.29/10.2。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


≪参考≫ウラギンスジヒョウモン Argynnis laodice 老豹蛱蝶
日本産の「大型ヒョウモン」中、高標高地に棲息するギンボシヒョウモンと、ごく限られた山地草原にのみ分布するオオウラギンヒョウモンを除く7種(8~9種とする意見もある)は、低地帯にも広く分布しているはずだが、本種には一度も出会えなかった。どうやら東京西郊の低地帯には分布を欠くらしい(正確なところは未詳)。生態そのほかは他の大型ヒョウ

東京都青梅市霞丘陵 2021.4.27

タテハチョウ科のなかで、最も普遍的に見られる種のひとつ。静止時には名の通り、白斑が完全な横三筋になる。横長の翅を持つやや小さめの中型種。中室の白条が2つに分かれるのが特徴。ミスジチョウ属やイチモンジチョウ属など、イチモンジチョウ亜科の各種は、上下の羽ばたきと水兵滑空を交互に繰り返す、独特の飛び方をする。コミスジはヨーロッパに至るユーラシア大陸全土に分布し、英名では、その水兵の制服のような模様から「セイラ―」と呼ばれている。日本では北海道から屋久島まで分布、奄美大島以南では酷似する別種リュウキュウミスジNeptis hylasに置き換わる。年4~5回発生し、春~秋を通して均等に姿が見られる(終齢幼虫越冬)。雌雄差は僅少、雌は黒色部がやや淡い。食草はマメ科の各種で、ハギ類やフジ、クズなど、主に灌木や背の高い草本。成蝶は花を訪れるほか、鳥糞などを好んで吸汁する。フィールド日記4.22/4.23/4.27/5.25/5.29/6.8/8.19/9.7/9.10/9.19/9.20/9.21/10.5。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ミスジチョウ Neptis philyra 啡环蛱蝶


東京都青梅市青梅丘陵 2021.6.10

筆者は数十年ぶりに日本の都市近郊の蝶の撮影を再開したのだが、よく見る蝶のメンバーが以前とは少し異なっているように感じた。コムラサキやゴマダラチョウなど、一度も観察できなかった種がある一方、かなりの希少種と思っていた幾つかの種が案外数多く見られたりもした。後者の例の一つが、(写真に写していない霞丘陵での目撃例を含む)周辺の丘陵地で度々出会ったミスジチョウ。横長の翅を持つ大きめの中型種で、中室の白紋条はコミスジとは異なり2分割されない。雌雄差は僅少で、雌はやや白色帯が幅広い。北海道~九州に分布。年一化、初夏に出現(幼虫越冬)。食草はカエデ科。成蝶は吸水性が顕著で、鳥糞などでも吸汁する。樹木の葉上に静止することが多く、花には余り訪れないように思われる。フィールド日記6.10/6.15。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


≪参考≫ホシミスジ Neptis pryeri 链环蛱蝶
ミスジチョウ属の中でフタスジチョウと共に一群を形成する。フタスジチョウがユーラシア大陸に広く分布(日本では本州中部以北の寒冷地)するのに対し、ホシミスジ(種群)は東アジアにのみ分布、複数種に分割される。関東では山の蝶で都市部には見られないが、関西では都市近郊で比較的普通。小さめの中型種。年1~数化。後翅裏面基部に黒点群がある(フタスジチョウは後翅外縁寄りの白帯列を欠く)。食草はバラ科シモツケ属。近年関西からユキヤナギと共に移入したと考えられる集団が東京都心部でも発生中。


イチモンジチョウ Limenitis camilla 隐线蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.6.8 メス

イチモンジチョウ亜科は、ミスジチョウ類とイチモンジチョウ類に大別できる。ともに「黒地に白帯」ということは共通するが、名前の通り、ミスジチョウは帯が横3列、イチモンジチョウは縦一本、と分かり易い。翅型も前者は横長で後者は縦長。日本本土産に関しては、ミスジチョウ類の5種も、イチモンジチョウ類の3種も、それに当て嵌まる(ミスジチョウ類のうちフタスジチョウは2列)。ただし、日本本土やヨーロッパ(イチモンジチョウとコミスジはユーラシア大陸に広く分布)に於いてという前提で、種数の多い中国大陸や熱帯アジアでは当て嵌まらない種も多い(八重山諸島にも分布するヤエヤマイチモンジは雌がミスジ型、シロミスジは雌雄ともにミスジ型)。食草はスイカズラ科スイカズラ属。年数化(幼虫越冬)。中型種。ミスジチョウ類と同様に滑空とはばたきを交互に繰り返し、飛翔時には意外にコミスジと紛らわしい。フィールド日記5.25/6.8/6.9/6.15/6.17/6.18/9.20/9.21。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


アサマイチモンジ Limenitis glorifica 日本线蛱蝶

日本の本州固有種。イチモンジチョウに酷似するが、血縁上はやや離れていて、日本海の対岸地域に分布するデリースイチモンジLimenitis doerriesi、台湾~中国大陸(北部を除く)に分布するタイワンホシミスジLimenitis sulpitiaなどにより近縁と考えられる。霞丘陵では未見だが、首都圏をはじめとした都市近郊の低地帯にも分布していると思われる。中型種。年数化(初夏~秋)。食草はスイカズラ科スイカズラ属。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。

アサマイチモンジとイチモンジチョウの区別点≪『里の蝶基本50』青山潤三(森林書房1988)から転載≫
翅表:斑紋1と2を結んだ線はイチモンジ(雄は時に1を欠く)では3の内側、アサマイチモンジでは外側へ。翅裏:Aの白斑は上下の斑とあまり差がない(イチモンジでは際立って目立つ)。Bの黒斑は下半分の基部も点状(イチモンジは下半分4個が線状に並行)。Ⅽの複眼は無毛(イチモンジは毛で覆われる)。
〈挿図:省略〉


オオムラサキ Sasakia charonda 大紫蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.8.20 メス

このフィールドガイドブックは、一般の人たちを対象に、より広く読んで貰えればという想いで  企画した。その為には人目を惹く鮮やかな蝶の写真も加えたい。まず思いつくのがオオムラサキだ。しかし著者は霞丘陵にオオムラサキがいるかどうかは知らない。そこで、インターネットで調べたり人に聞いたりして、近隣のポイントを何か所か訪ね歩いた。結果は惨敗。どの場所でも撮影出来なかった。出現期を過ぎ撮影を諦めた8月下旬、いつも行き帰りに通る丘陵入口のコナラの樹に、突然雌が飛来した。あちこち探し歩かずに最初からここで待っていればよかったのである。残念ながら雌は派手な色彩はしていない。それでも独特の色合いと雄を上回る大きさは風格に満ちている(雄は以前山梨で撮影した写真を使用)。大型種。年一化。幼虫越冬。食樹はニレ科エノキ属。樹液を吸汁し、湿地で吸水する。北海道~九州に分布。日本の「国蝶」とされている(台湾や中国大陸などにも分布)。フィールド日記7.20/7.21/8.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


アカボシゴマダラ Hestina assimilis 黑脉蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.8.11 夏型

著者は永らく中国を拠点としていたので、日本の都市近郊の蝶に接する機会が無かった。帰国時、アパートと最寄り駅の途上で、何度か(日本の蝶としては)著者の頭にインプットされていない白い蝶に出会った。スジグロチョウにしては大きすぎる。やがてアカボシゴマダラであることに気が付いた。近年移入帰化しているとは聞いていたが、これほど増えているとは思いもしなかった。以前は日本での分布は奄美群島のみ(奄美大島産の分類上の位置づけについては著者の「中国のチョウ」に詳細記述)。しかし朝鮮半島や台湾や中国大陸などには広く分布し、上海や香港の都心部でも普通に見られることから、日本本土にいなかった事がむしろ不思議である。年数化。春型と夏型で色調が著しく異なる。大きめの中型(夏型)~小さめの大型(春型)。食樹はニレ科エノキ属。幼虫越冬。樹液に訪れる。下写真個体は住宅街の生垣のエノキに発生、上写真は前頁のコナラと同じ木の樹液。フィールド日記7.18/8.11/8.20/9.29。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ゴマダラチョウ Hestina persimilis 拟斑脉蛱蝶


埼玉浦和市 1981.6.30 エノキの枝に産卵

日本産のコムラサキ亜科は4種。本来は奄美にしかいなかったアカボシゴマダラを除く3種(ことにゴマダラチョウとコムラサキ)は都市近郊にも普通に見ることが出来た蝶である。それが、いつの間にか情勢が変わってしまっていた。見かけるのは新参者のアカボシゴマダラばかりである。ゴマダラチョウとコムラサキには一度も出会えなかった。ゴマダラチョウの食樹はオオムラサキやアカボシゴマダラと同じニレ科エノキ属。同じように樹液に訪れるはずなのだが、本種は減少しつつあるのだろうか。オオムラサキのような卵塊は作らず、一卵ずつ卵を産み付ける(ちなみに中国産オオムラサキも卵塊を作らない)。大きめの中型種。年2化。幼虫越冬。春型は白味が強く、雌は雄よりやや大きい。北海道~九州に分布。朝鮮半島産や中国大陸産は日本産とは斑紋パターンなどがやや異なる。西(西北限はヒマラヤ地方)に向かうほど白色部が多く翅型が横長となり、日本産をそれらから分けてHestina japonicaとすることもある。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


コムラサキ Apatura metis 细带闪蛱蝶


長野県上高地 1986.7.26 オス

コムラサキも今回出会えなかった蝶のひとつだ。ただし、丘陵探索時に知り合った地元の蝶愛好家氏の話では、筆者がいつもその手前で引き返してしまう民家の庭によく来ていた、とのこと(発生シーズンを終えた秋になって知った)。食草はヤナギ科。そのヤナギ類をはじめとした樹木の樹液を訪れ、腐果で吸汁、湿地で吸水する。翅型が丸味を帯びる他の同亜科3種と違って、アカタテハなどに似た凹凸部を持つ。雄の翅表は構造色で、鮮やかな紫色に煌めく。しかし角度によっては紫鱗が目立たず、雌同様の暗褐色となる。翅表に明色の帯状斑があり、通常はその部分が明黄褐色だが、地域によっては白色になる個体も出現する。大きめの中型種。北海道~九州に分布。年2~3化。幼虫越冬。ヨーロッパなどには近縁種のチョウセンコムラサキApatura irisを産し、英名を“パープル・エンペラー(紫の皇帝)”と呼ぶ。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


スミナガシ Dichorragia nesimachus 电蛱蝶


神奈川県津久井町1979.6.2(左はサトキマダラヒカゲ) 

特に珍しい種と言うわけではないが、といって簡単に出会えるわけでもない、という蝶のひとつ。食樹のアワブキが付近にあれば、出会えるチャンスはある。実は筆者も、今回の探索行では(いることは確認したのだが)写真は写せていない。大きめの中型種で、名前通りの深い味わいのある翅の色合いに加え、体全体がずっしりとした重みを感じる。何よりも、ストローが鮮紅色であることが、他の蝶にない特徴。タテハチョウ科の中で、他の各種と異なる独自の位置づけにある。幼虫が食草の葉に複雑な形の食痕を作ることでも知られる。年2化(蛹越冬)。樹林の周辺に棲息し、樹液や果汁で吸汁する。撮影中、汗を吸いに来ることも多い。本州以南に分布し、南西諸島産を複数の亜種に分割することもある。フィールド日記7.21。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。




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近所の森の蝶 3(上)

2021-12-07 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


★12月6日の記事に、いいね!その他ありがとうございました。


近所の森の蝶 3(上)

タテハチョウ科 Nymphalidae 蛱蝶科 Tortoiseshell/Fritillary/Brown etc.

「4本脚」の蝶。前脚2本は退化し、髭状となって歩行機能を失い、触覚、嗅覚などを司る。一般に体は頑丈で、翅型、斑紋、色彩は多様。種によっては翅縁に凹凸が多かったり、眼玉模様の斑紋があったり、表面は派手でも裏面は地味な枯葉模様だったりする。雌雄や季節により全く別の種の様に見えるものもある一方で、雌雄の区別が困難な種もある。翅を開いた差し渡しは5㎝前後の中型種が多いが、オオムラサキの雌やアサギマダラの様に10㎝を超す種や、サカハチチョウやヒメウラナミジャノメのように大きめのシジミチョウ程度の種もある。

日本産は80種余、世界に約6000種。形態や生態の異なる多様なグループから成っていて、多数の亜科に分割され、その中には以前は独立の科に置かれていたテングチョウ亜科やマダラチョウ亜科やジャノメチョウ亜科なども含まれる。

多くの種が蛾のように翅をべったりと開いて止まるが、キマダラヒカゲ属の様に静止時に絶対翅を開かない種もある。ミスジチョウ属やウラナミジャノメ属の種は、はばたきと滑空をミックスした独特の飛び方をする。

成虫の餌は、花蜜、水、樹液、腐果など様々で、近縁な種間でも異なることがある。棲息環境も樹林、草地など広範囲に亙り、ごく暗い林内でのみ見られる種もある。マダラチョウ亜科やヒョウモンチョウ亜科、ヒオドシチョウ亜科の種には、長距離移動をする種も多い。

幼虫は、ヒオドシチョウ亜科、ヒョウモンチョウ亜科は毛虫、コムラサキ亜科、ジャノメチョウ亜科、マダラチョウ亜科などでは芋虫。食草は多様で、ニレ科、クワ科、ヤナギ科、イネ科(ジャノメチョウ亜科)などを食する種が多い。蛹は尾端を葉や枝につけ、真下にぶら下がる垂蛹。



陽だまりのルリタテハ
東京都瑞穂町 2021.10.6



タテハチョウ科の幼生期など(「里の蝶」から一部をコピー)。



平均的なサイズ 中型

タテハチョウ科は、科単位ではシジミチョウ科と並び世界で最も繁栄する蝶である(両科で世界の蝶の8割を占める)。以前はジャノメチョウ科、マダラチョウ科、モルフォチョウ科など幾つかの独立科に分けられていたものも含まれる。ここでは、主要(メイン項目で取り上げた種数の多い)5亜科について述べる(他にマダラチョウ亜科、テングチョウ亜科、スミナガシ亜科の各1種を本文に紹介)。数字は霞丘陵周辺に分布する種数。()内は日本産の種数。

ヒオドシチョウ亜科。5種(20種前後)。霞丘陵周辺にはキタテハが圧倒的に多い。次いでルリタテハ。ヒオドシチョウは越冬後の個体を数多く見たきり、新世代個体は一度も見ていない。アカタテハ、ヒメアカタテハは、通常は最普通種だが、丘陵内では少数の個体にしか出会っていない。サカハチチョウは未確認だが、この一帯にも分布している可能性がある。

ヒョウモンチョウ亜科。6種(15種前後)。近年都市部で激増中のツマグロヒョウモンが秋に新世代新鮮個体に数多く出会った一方、年一化性の他の各種はクモガタヒョウモンのみ5月に一頭だけ撮影(その後出会っていない)、ミドリヒョウモン、メスグロヒョウモン、オオウラギンヒョウモン、ウラギンヒョウモンの各種は、出現していたはずの夏の前半には全く見られず、秋口になって汚損個体が数多く出現。夏の間、移動を行っていた可能性がある。ウラギンスジヒョウモンは未確認、この一帯には分布していないのかも知れない。

イチモンジチョウ亜科。4種(11種)。コミスジは最普通種のひとつで、年間を通して見られる。これまで希少種だと思っていたミスジチョウは、発生期には少なからず見られた。イチモンジチョウも普遍的。アサマイチモンジは未確認だが、おそらく分布しているものと思われる。

コムラサキ亜科。4種(4種)。エノキ食の3種のうち、移入帰化種のアカボシゴマダラが最も多い。オオムラサキは今年は少なかったそうで、著者は樹液の出る3本のコナラとクヌギで見たのみ。ゴマダラチョウは未確認。ヤナギ食のコムラサキは霞丘陵でも場所によっては多産するそうだが、著者は出会っていない。

ジャノメチョウ亜科。8種(28種前後)。早春と晩秋を除く全期間、全地域で、途切れることなく最も普遍的に見られた蝶がヒメウラナミジャノメ。一方で本来は最普通種ながら秋が深まるまでほとんど姿を見せなかったのがヒメジャノメ。逆に、鬱閉した林内だけに棲息するコジャノメが意外に数多く見られた(林内の蝶としては最も多かった)。サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、クロヒカゲの3種は、樹液に来る主要種。クロヒカゲは第3化が秋遅くまで見られた。以前は首都圏には産しなかったクロコノマチョウが林縁の草地に少なくなかった半面、同じような環境に棲むはずのジャノメチョウには全く出会えなかった。

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テングチョウ Libythea celtis 朴喙蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.24 越冬個体

かつては独立のテングチョウ科とされていた。現在では一応タテハチョウ科の一員に含められているが、極めて原始的な形質を保ち持った一群であることは確かなようである。現存種に関してはマイナーなグループではあるが、化石は数多く産出している。小さめの中型種。翅型はヒオドシチョウ族の幾つかの種に似るが、前後に細長い。和名のごとく、頭部の下方に下唇鬚が突出する。成虫越冬。年1(~2)化。越冬世代と非越冬世代の間の外観的な差も、雌雄差も少ない。翅を閉じると枯葉のように見える。北海道~南西諸島に分布。食樹はニレ科エノキ属。成蝶は好んで吸水し、地表にとまっていることや腐果などで吸汁していることも多く、花にも訪れる。フィールド日記3.24/5.25/10.28。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒメアカタテハ Vanessa carudui 小红蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.9.7

蝶の中で唯一とも言ってよい“コスモポリタン”種。英名は“Painted Lady”。世界各地の都市近郊を始め、熱帯樹林やサバンナ、高山の雪嶺や寒冷地、絶海の孤島、砂漠の周辺、、、どこにでも姿を見せる(各地に定着しているかどうかは不明で、秋以降に増える地が多い)。地域に関わらず変異がないことから、おそらく共通の遺伝子を持つ比較的最近になって拡散繁栄した種であることが推察される。ただし、オーストラリア東部とニュージーランドでのみ、ごく近縁の別種が置き換わり分布。また、南北アメリカでも複数の近縁種が産することから、起源は新大陸にあると思われる。やや小さめの中型種。「姫」の名前が付くように、アカタテハに比べて、より華奢な印象を受ける(前翅縁の湾曲がまろやかで色調が明るい)。雌雄は酷似。東京近郊での化性や越冬態は未詳。食草はキク科のアザミ族(特にゴボウを好む)がメインとされるが、より多岐に亘っている可能性がある。成蝶は花蜜を好む。フィールド日記8.22/9.7/10.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


アカタテハ Vanessa indica 大红蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.10.2

ヨーロッパなどに広く分布する近縁種のアトランタアカタテハVanessa atarantaは、ヒメアカタテハの“Painted Lady(お化粧した貴婦人)”と対になるように、“Red Adomiral(赤い海軍大将)”と名付けられている。日本や中国を含むユーラシア大陸東半部産のアカタテハは“Indian Red Adomiral”と呼ばれる。アジアの各地では、ヒメアカタテハ同様に、最もポピュラーな蝶のひとつで、都市近郊、辺境を問わず、様々な環境に姿を見せる。何故か、霞丘陵ではヒメアカタテハ共々数が少なく、(越冬後の)1個体を探索初日に撮影した後、秋が深まるまで姿を現さなかった。おそらく年3~4化(成虫越冬)。食草はイラクサ科、クワ科、ニレ科。成蝶は腐果を好み、花や樹液にも訪れる。中型種。雌雄は酷似し、最も見分けるのが困難な蝶のひとつである。フィールド日記3.23/10.2/10.30。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


キタテハ Nymphalis c-auleam 黄钩蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.24 越冬後

日本の最普通種の蝶のひとつ。食草のカナムグラが全国至る所に生えていることが、普遍性獲得の一因となっているものと思われる。日本では山地帯のみに分布するシータテハが北半球に広く分布・種分化しているのと対照的に、本種は世界的視野ではごく狭い範囲の東アジアにのみ分布し、深い類縁性をもつ種が存在せず、かつ種内での変異が少ない「遺存的繁栄種」である(アゲハと共通)。中型種。年3~4化。非越冬型と越冬型で外観が異なる。雌はやや翅地色が淡い。様々な形質でシータテハとは相違し、通常は本種を含めて独立属とされるシータテハ属Polygoniaの中では特異な位置づけにある。ルリタテハを独立属とするならば、本種も同様の処置を採るべきであろう。シータテハとの外観上の区別点は、中室基部に黒紋を有し、翅縁の各突出端が鋭く尖ること。花蜜を好み、腐果や樹液にも来る。フィールド日記3.24/4.27/5.14/5.23/6.1/6.13/6.14/8.20/8.27/9.7/9.8/9.10/9.28/10.2/10.11/10.20/10.28/10.30/11.11/11.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ルリタテハ Nymphalis canace  琉璃蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.8.11

「あらゆる表象は“隠れている”ことが本質である」という真実?を、今回の蝶探索で確信した。どの蝶の場合も当て嵌まるが、中でもルリタテハは典型、翅を閉じると完全に姿を消す。真上から見ると樹皮の裂け目と同じ一本の線に、横から見れば翅裏の模様が樹皮に見事に溶け込んでしまう。そして翅を開くと一瞬鮮やかな瑠璃色が現れる。魔法を見ているようである。翅色や模様、食草、分布域などが特殊なことから、通常一属一種のルリタテハ属Kaniskaとされるが、本質的にはシータテハ属Polygonia(本書では共に広義のNymphalis属に含めた)の一員。食草は単子葉植物のユリ科ホトトギス属やシオデ科。熱帯アジアに広く分布、地域変異が顕著で日本産は前翅表中室の紋が白色(北海道南部~八重山諸島まで共通)。やや大きめの中型種。樹液や腐果を好み稀に訪花する。年数化、成蝶越冬、季節や雌雄による差は少ない。フィールド日記3.24/3.27/4.8/4.23/6.22/8.11/8.20/8.22/8.27/9.7/9.8/9.9/10.6/10.20/10.24/11.11。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas 朱蛱蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.23 越冬後

霞丘陵周辺で撮影した蝶は61種。その中で蝶の姿で最も長生きなのが、ヒオドシチョウである(他に日本産では同属の2種とヤマキチョウ属の2種)。越冬雌が春に卵を産み、初夏に次世代が現れて夏秋を過ごし、蝶の姿のまま冬を越す。ほぼ年間に亘り一つの個体が蝶の姿のまま生き続けていることになる。しかし、不明な点も多い。多くの地で盛夏に姿を消す。新世代成蝶は、寒冷地に移動している可能性、あるいは同じ場所の涼しい空間に留まっている(生理調節=夏眠)可能性が考え得る。いずれにしろ人里周辺では目に触れなくなってしまう。秋が深まると低地や温暖地での活動を再開、冬は再度活動を停止する(冬眠)。ちなみに霞丘陵では越冬後の個体にしか出会っていない。大きめの中型種。食草はニレ科、ヤナギ科など。北海道~九州に分布。北半球冷温帯域に広く分布するキベリタテハは、色彩斑紋など外観が著しく異なるが、血縁上は本種に非常に近い。フィールド日記3.23/4.10/4.22/4.23。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


サカハチチョウ Araschnia burejana 布网蜘蛱蝶


(データ確認中) 春型

霞丘陵での分布の可否については未確認。本来は山地性の蝶(北海道~九州と日本海の対岸地域に分布)だが、以前、八王子の近郊で撮影したこともあるので、霞丘陵周辺にも分布している可能性が高いと思う。大きめの小型種。タテハチョウ科の中では、ウラナミジャノメ属などと共に最も小さな種のひとつである(北海道産の同属種アカマダラAraschnia levanaは更に小さい)。大多数の種が成蝶で越冬するヒオドシチョウ亜科の種としては、例外的な蛹越冬(ほかに本属に比較的近縁のヒョウモンモドキ類が幼虫越冬)。年2化。春型と夏型で最も色彩斑紋が異なる蝶のひとつである。ただし、中国大陸産の近縁種キマダラサカハチチョウAraschinia dorisやアカマダラモドキAraschnia prorosoidesでは春型と夏型の中間的な個体も見出されることから、本種も厳密には区別できないのかも知れない。花を好んで訪れ、獣糞や腐果などでも吸汁する。食草はイラクサ科。卵を数珠の様に何段も重ねて産み付ける。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。




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近所の森の蝶 2

2021-12-04 09:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 身近な自然


近所の森の蝶 2

シロチョウ科Papilionidae 粉蝶科 White/Yellow/Orange-tip

翅は白か黄色で黒条や黒斑があり、縁には凸凹が少なく、穏やかな感じがする。大きさは中型~やや小型。世界に約1000種、日本産は20数種(種の細分や迷蝶のカウント次第で10種ほど増える)、大きく3亜科に分けられる。

モンシロチョウ亜科(モンシロチョウ族、ツマキチョウ族)の種は、幼虫が主にアブラナ科を食べ、成虫は静止時に翅を開いていることも多い。モンキチョウ亜科(モンキチョウ族、キチョウ族)の種は、主にマメ科を食草とし、静止時には常に翅を閉じたままである。ヒメシロチョウ亜科の種は、日本では山地や寒冷地にのみ棲息している(新大陸に繁栄する)。なお、モンシロチョウ亜科とモンキチョウ亜科は、統合してシロチョウ亜科とする見解もある。

活動時間は日中で、日のよく当たる所や明所と暗所の境界に沿って、緩やかに、いかにも蝶々らしくひらひらとはばたきながら飛ぶ。アゲハ類のような明瞭な蝶道は作らないが、ツマキチョウは直線的に同じコースを行き来する性質が著しい。

花の蜜を好み、雄は吸水にも訪れるが、樹液や腐果には来ない。交尾の済んだ雌は、地上に止まり腹部を持ち上げて雄の求愛を回避するが、そのパターンは種によって様々で、モンキチョウやキチョウの場合は極めて特徴的である。

卵は紡錘形。幼虫は典型的なアオムシ。蛹はアゲハチョウ科と同じ帯蛹で、上向きにとまり、背に糸をかけ、胸が出た鳩胸型と背が盛り上がったセムシ型がある。

霞丘陵産は5種。参考として、山地や寒冷地でポピュラーな3種、亜熱帯の都市周辺で普通に見られる2種、および以前は首都圏の近郊にも産したが現在はほぼ姿を消したツマグロキチョウを追加紹介しておく。




モンシロチョウ(上)とスジグロチョウ(下)
著者のアパートから霞丘陵に行く途中の路傍にて 2021.5.30
【同じ場所で揃って見られるが2ショット撮影のチャンスをものにするのは意外に難しい】




シロチョウ科の幼生期など(「里の蝶」から一部をコピー)。




平均的なサイズ 小さめの中型


霞丘陵周辺に分布する蝶は、ほかの科では少なくとも10種以上を数えるが、シロチョウ科は5種だけである。日本産全体から見ての割合でも明らかに少ない。首都圏に限らず、北日本と南日本を除く各地の都市近郊でも、そのメンバーは変わらない。

しかし、早春一度だけ姿を見せるツマキチョウ以外の4種、モンシロチョウ、スジグロチョウ(スジグロシロチョウ)、モンキチョウ、キチョウ(キタキチョウ)は、いずれも身近な蝶の代表的存在である。そして、いずれの種も、興味深い未知のテーマをどっさりと隠し持っている。身近なシロチョウ科の種数は限られるが、どれも中身は濃く深い。

これまで著者は、どちらかと言えばモンシロチョウやスジグロチョウの白蝶類のほうに関心があって、日本産や中国産、ヨーロッパ産や北米産など、機会があるごとにチェックをし続けてきた。食草のアブラナ科(野菜となったキャベツやダイコンなどを含む)における、日本と海外との関わりも面白いテーマである。

一方、モンキチョウやキチョウなどの黄蝶類については、漠然とした知識や興味しかなかった。主解説でも触れたように、キチョウ亜科の種は常に翅を閉じてとまる。モンキチョウは北方要素の種で、明所の草原的環境に棲み、クローバーなどのマメ科草本を食草とし、幼虫越冬で年の前半に個体数が多く、メス→オスの長時間追飛翔を行う。キチョウは南方要素の種で、やや暗所の繁みの周辺に棲み、同じマメ科でも低木のハギなどを食草とし、成虫越冬で年の後半に数が増え、産卵中のメスの上をオスが停空追飛し続ける。その辺りのことは大雑把に把握していた。

しかし改めて観察を始めたら分からないことだらけ。例えばモンキチョウと言えば、メス→オスの不思議な追飛翔なのだが、それがほとんど観察できなかった(詳細については第二章で)。主要食草のクローバーやウマゴヤシ類は外来植物である。まさかとは思うが、それらと共に侵入した個体の遺伝子が混じり異なる生態を示している?ちなみに中国産(中国では山地性)は外観も交尾器の形状も日本産と変わらず、日本産同様メス→オス追飛翔を行う。
霞丘陵の観察地の“コリアス草原”では早春の第一化と初夏の第二化は大発生するのだけれど、夏以降には忽然と姿を消してしまう。そして11月になって再び姿を現す。その間、別の場所に移動しているのか?ここで発生はしているけれど人目のつかないところに潜んでいるのか?それとも生理的な機能を調節して夏の間(幼虫などで)休眠しているのか? 

キチョウ(キタキチョウとミナミキチョウの種分割については著者が捉える種の概念に基づく様々な意見があるため暫定的に分割を保留しておく)にも謎が多い。こちらは、(モンキチョウの大発生時にも周辺部に見られるが)どちらかと言えば年の後半、秋になって個体数が増える。春や初夏のモンキチョウのように大群とはならないが、他の蝶が少ない冬季を含む一年中、盛夏を除き切れ目なく姿を見せる。越冬型と非越冬型があって、春や秋には、両タイプが混在しているように思えるのだが、その関係性がよく認識出来ないでいる。越冬前後の交尾(求愛)や産卵の実態も、分からない部分が多い。

モンシロチョウ(日本産は旧い時代の帰化種、、、ではオリジンの地は?)、スジグロチョウ(ほぼ日本固有種、大陸産の広義のエゾスジグロチョウとの関係は?)共々、ごく身近な存在ながら、実は未解明な実態が数多く残されているのが、シロチョウ科の“普通種”4種なのである(それらについては、第二章、第三章で述べる)。

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モンシロチョウ Pieris rapae 菜粉蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.10 春型オス 

日本で最もポピュラーな蝶。ヨーロッパでも普遍的だが、英名では“Small Cabbage White(小型キャベツ白蝶)”の名で呼ばれるように、オオモンシロチョウが主で本種はサブ的位置づけ。日本産が在来種かどうかは不明で、古い時代に移入帰化した種である可能性が強い(高山に発生する集団は2次的由来だろう)。そもそも中国産の実態も分かっていない。おそらくキャベツの原種共々、中央アジアから地中海西南岸付近に起源があるように思われる。スジグロチョウがアブラナ科の野生種を好むのに対し、本種は栽培種、殊にキャベツを好む。小さめの中型種。春型は黒斑が淡く、裏面がくすんだ色合い。雌は黒斑部が褐色味がかる。シロチョウ類は常に翅を閉じて止まるキチョウ類と異なり、翅を開いて止まることが多い。年4~5化(蛹越冬)。訪花し吸水するが樹液には来ない。フィールド日記3.24/3.27/5.23/5.25/5.29/5.30/6.1/6.10/9.10/10.20/10.30/11.11。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


スジグロチョウ Pieris melete 黑纹粉蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.22 春型オス 

最近は“スジグロシロチョウ”と呼ばれることが多いが、本書では古くから呼ばれていた“スジグロチョウ”の名で記す。モンシロチョウよりもやや暗い環境に棲息し、建造物の多い都市部周辺では本種の方が多く見られる傾向がある。野生のアブラナ科、殊にイヌガラシを好み、キャベツなどの蔬菜の薹の立った葉にも卵を産付する。やや小さめの中型種。年4-5化(蛹越冬)。春型の雄翅表は個体により黒色斑を全く欠く。雄は強い香り(発香鱗)で雌を誘引する。京阪神圏では都市周辺には分布せず、場所によっては(首都圏ではかなりの山奥に行かねば見られない)酷似したエゾスジグロチョウPieris napiが棲息している。Pieris napiの分布域は北半球温帯全域に亘り、幾つもの異なる種で構成され、日本産も2種(ヤマトスジグロチョウとエゾスジグロチョウ)に分割するという見解もある。フィールド日記3.24/3.27/4.8/4.10/4.22/4.23/5.29/5.30/6.1/6.8/6.10/6.11/6.15/6.18/7.12/7.18/8.19/8.20/9.7/9.10/9.20/9.28/10.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


モンキチョウ Colias elate 斑缘豆粉蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.6.1 メス-オス

霞丘陵の草原(仮称:コリアス草原)に於いて一年の前半で最も数多く見られる蝶。第1化(3月中旬~4月中旬頃)と第2化(5月中旬頃~6月中旬頃)の発生期には、草原上を覆うように群飛し、交尾中の雌雄や産卵中の雌も数多く見られる。6月後半以降はこの草原から一斉に姿を消し、次に現れるのは11月。場所を移動しているのかも知れない。年4~5化(蛹越冬)。食草はマメ科草本のスズメノエンドウ、シロツメグサなど。キチョウ亜科の種はシロチョウ亜科の種と違い(近くに別個体が来た時などを除き)静止時に翅を開くことはない。雄は黄色、雌は白色と黄色で地域により出現率が異なり東京近郊では白色型が多数を占める。翅縁が紅色を帯びる。やや小さめの中型種。ほぼ日本全土に分布。開けた環境を好む。タンポポなど草本の花で吸蜜し樹木の花に来ることは稀。樹液には来ない。フィールド日記 3.24/3.27/4.8/4.20//4.22/4.27/5.23/5.25/5.30/6.1/6.6/6.9/6.15/6.18/7.18/9.8/9.10/11.11/11.12/11.13/11.20。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


キチョウ(キタキチョウ) Eurema hecabe 宽边黄粉蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.4.8 越冬個体

近年分子生物学的な手法による分類が進み、日本産のキチョウは「キタキチョウ」と「ミナミキチョウ」の2種に分割されることになった。しかし「種」の定義は未解決な部分も多く、本書では便宜上一種として纏めて置く。小さめの中型種。モンキチョウ同様、静止時には翅を開かない。モンキチョウ属が主に北半球温帯域に広く分布し開けた草原的環境を好むのに対し、キチョウ属の分布は主に熱帯地域、森林の周辺部に棲息する。キチョウは最も北方まで分布(北海道南部以南)。食草はモンキチョウと同じマメ科だが、低木のハギ類などが主体。多化性、成蝶越冬。周年経過については未解明な部分が多い。非越冬型は前翅表縁に広く黒帯を生じ、越冬型では黒帯を欠く。越冬後、雄は産卵中の雌の上方を停空飛翔する。近縁種タイワンキチョウと異なり卵塊は作らない。フィールド日記3.24/3.27/4.8/4.10/4.20/4.22・4.23/4.27/5.6/5.28/6.1/6.9/6.13/6.15/6.16/8.11/9.7/9.8/9.10/9.19/9.20/9.28/9.29/10.2/10.11/10.20/10.24・10.28/10.30/11.11/11.12/1120。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


ツマキチョウ Anthocharys scolymus 黄尖襟粉蝶


東京都青梅市霞丘陵 2021.3.24 オス

年一度早春出現。ギフチョウが「春の女神」なら本種は「春の乙女」といったイメージ。もっとも、“乙女”らしさ印象づける翅先のオレンジ色を備えているのは雄だけで、雌はその部分が白い。ごく小さめの中型種。飛翔時にはモンシロチョウやスジグロチョウの小さめの個体と紛らわしいが、一直線に飛び続け、突然花に止まって、またすぐに飛び立って行く。キチョウ類のように静止時に必ず翅を閉じるということはなく、シロチョウ類同様に開くが、訪花中などは半開きの事が多い。翅を閉じた休息時には後翅裏面の唐草模様が周囲に溶け込む。食草はタネツケバナ類などアブラナ科野生種。都心の公園や家庭菜園にも発生し、菜の花への産卵も確認している。蛹越冬。屋久島以北のほぼ日本全土、中国大陸に分布。北半球温帯に広く繁栄するAnthocharis属のうち翅先端が鎌状に尖るのは4種で、他3種は、中国西南高山帯、北米東海岸、およびメキシコ山地に分布。フィールド日記3.2/4.10。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。


≪参考≫ツマグロキチョウ Eurema laeta 尖角黄粉蝶

かつては首都圏の低地帯にも多数の産地があったが、棲息地の河原敷の消滅に伴う食草のカワラケツメイ(マメ科)の減少により、現在ではほとんどの産地で絶滅状態にある。ただし西日本などでは今も健在な地域もある。多化性で成蝶越冬、越冬世代(写真)は前翅端が鋭く尖り、後翅裏面に褐色の条線が生じる。非越冬個体はややキチョウに似て、翅頂は尖らず、後翅裏面の褐色条を欠く。大きめの小型種。熱帯アジア各地などに広く分布し、ホシボシキチョウEurema brigittaと共に、近縁種は南北アメリカに繁栄している。国外分布は「海の向うの兄妹たち」に別掲。



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