青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

「ギリシャと日本で対応する興味深い数種の蝶について」 2022.4.12

2022-04-13 08:21:36 | 里山、蝶、ギフチョウ




5日続けて、同じ場所に行ってきました。正確には4回目ですね、昨日は列車に乗り損ねて行けなかった。いつもは8番線から出るのに、昨日は7番線、2時間おきにしか運行していないので、行くのをやめたのです。行きは8時51分か10時51分、帰りは13時17分か15時17分、と決めています。今日は後者です。ゲストハウスからアテネ・ヴィクトリア駅まで10分、アフィドネスまでの所要時間30分(行きは2.5ユーロ、帰りは概ね無料)。



パソコンを開いたまま机に置いて出て行くので、あまり遅くに帰ってくるわけにはいきません。午後に帰ってきても、大抵僕一人ですが、夕方になると、誰かがやってきます。



さっきボストンのお婆ちゃんが僕の隣に座ってパソコン打ち始めました。しょっちゅう話しかけてくるので、落ち着いて作業ができません。悪のロシアの兄ちゃん、今夜は来るだろうか? 正義のお婆ちゃんに、また罵倒されそう。他人事ながら心配してます。



というわけで、(作業に集中出来ないので)今回のブログで書こうと思っていたモンシロチョウ(&キャベツ・ダイコン・菜の花)の話題は次回まわし。適当に今日の成果を報告しておきます。



この際、ギリシャの蝶、なかんづくcommon butterfliesを極めようと考えています。でも、ギリシャの、それも普通種の蝶などに興味のある人なんて存在するのでしょうか? 蝶マニアの人たちは見向きもしないでしょうね。あくまで普遍的な観点から、ヨーロッパ(ギリシャ)と東アジア(日本)の、身近な自然の比較(たまたま題材がチョウ)ということで。



モンシロチョウ&アブラナ科植物関連、モンキチョウ&マメ科植物関連の写真と記事は別の機会に纏めるので、ここではそれ以外の題材を紹介していきます。






駅のすぐそば、4日間通っています。















おじいちゃんが何かを探しながら歩いてきました。

僕:

こんにちは。何してるんですか?

おじいちゃん:

この草を摘んでんだよ。すごくおいしいんだよ。食べてみな!



いやもう、素晴らしく美味しい!!!

アスパラガスを100倍おいしくしたぐらい(オーバーじゃないです)。









ヨーロッパナラ、すなわち“オーク”です。日本で言えば分類上は(たぶん)ミズナラに近く、生態的地位はコナラに相当します。分布図をチェックしたら、ちょうどこの辺りが分布南限になっています。ほかのポピュラーな生物たちについても概ね同じことが言えますが、なんせ現代人類文明の発祥の地と言っても良いギリシャです。人類登場以前の背景から言っても、ヨーロッパ(地中海周縁)と中東(西アジア)のジャンクション。多くの身近な(人間生活に結びついた)生物たちが、この地における“ネイティブ(在来種)”であるかどうかを見極めるのは、非常に困難だと思います(もしかすると不可能かも*)。*“在来種”の定義に関与してくる。







ゲッケイジュ(クス科)。日本でもあちこちで植栽株が見られますが、本場での遭遇は、また格別です。





昨日も紹介した“ボロギセセリ”。なんか、我ながらこの和名(熱帯アジアのタテハチョウで“ハレギチョウ”なんてのもいる)の命名は気に入っています(笑)。よく見ると新鮮個体なんですね。でも「襤褸着」。ボロ着でも立派な衣装です。スーリンが買ってくれたジャケットは、ずっと着ています。前回ブログで説明したように、本種は「同族種」が日本に分布していない、数少ないヨーロッパ産の蝶のひとつ。それはそれでなかなか興味深いことと思います。











アトランタアカタテハVanessa ataranta。英名“Red Adomiral赤い海軍大将”。ヒメアカタテハCynthea cardui “Painted Ladyおめかしした貴婦人”とセットです。ペインテッド・レデイが(オーストラリアなど少数の地域を除き)世界中に広く分布しているのに対し、レッド・アドミラルはユーラシア大陸の西半部に分布、東半部ではインディアン・レッド・アドミラル(アカタテハVanessa indica)に置き代わります。ほかに、東南アジアの島嶼部にもう一つの近縁別種が分布、アカタテハとの間には非常に興味深い種間関係があり、僕はそれを再構築して日本鱗翅学会の総会で発表したことがあります。また、ハワイ固有種のカメハメハバタフライVanessa tamehamehaとアカタテハやアトランタアカタテハの関係も非常に興味深く、僕は「科学朝日」という雑誌で、その生態を詳しく紹介したことがあります。いずれも25年ほど前のことですが、今もって追従研究がなされていないのは、寂しく感じます(僕自身でやらねばなりませんね)。





クレオパトラヤマキチョウGoneptryx cleopatra雄。ヤマキチョウ属は日本に2種が分布しています。日本では2種とも山の蝶ですが、ポピュラーなのはスジボソヤマキチョウ。ヤマキチョウのほうは分布が極限され、多くの産地で絶滅の危機に面しています。しかし国外では必ずしもそうとは限りません。台湾や中国大陸からヨーロッパにかけても(一応別種とされてはいますが)ヤマキチョウ系統の種とスジボソヤマキチョウ系統の種が混在していて、中国大陸では、日本とは反対にスジボソヤマキチョウはかなり奥深い山間部のみに棲息、ヤマキチョウ(の近縁種)のほうが大都市近郊などにも普通に見られたりします。ヨーロッパに於いても似た状況にあるようで、ヤマキチョウの系統に属するクレオパトラヤマキチョウのほうが比較的普通に見られるようです。





クレオパトラヤマキチョウの産卵。





クレオパトラヤマキチョウの雄の翅表は、鮮やかなオレンジ色を呈しています。しかし(キチョウやモンキチョウなど他のキチョウ族の種同様に)静止時に翅を開くことがないので、飛翔時にしかそれ見ることができません。









静止後ちょうど一分間、同じ角度から25コマの写真を撮影しました。2秒ちょっとで一コマの計算です。これは最後のほうの3枚(20~22コマ目)。赤いダニの位置に注目してください。約5秒間。ほとんど瞬間移動です。





午後3時47分、アテネ中央駅に戻ってきました。




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「ギリシャと日本で対応する興味深い数種の蝶について」 2022.4.11

2022-04-11 20:51:01 | 里山、蝶、ギフチョウ





ベニシジミLycaena philaeas











パロス島 2022.3.16

パロス島滞在40日間で、唯一撮影した蝶。オリーブ畑の下に咲き乱れるお花畑の中ではなく、その脇の土塊の上にとまっていた。







アテネ近郊アフィドネス 2022.4.9

線路の脇(昨日アップした写真と同じ)の草叢にいた。









アテネ近郊アフィドネス 2022.4.9

昨日と全く同じ場所に出現。





 
中国と東アジアの蝶 キンイロフチベニシジミ



ベニシジミの仲間の全体像については、↑「週刊中国の蝶1月1日号“キンイロフチベニシジミ”」を参照してください。



ベニシジミ族は世界に広く分布、南米、アフリカ、オセアニア(ニューギニア)には少数種が知られるのみだが、ヨーロッパ、中国大陸、北米大陸、熱帯アジアなどには、多数の種が繁栄している。ただし日本には1種(ベニシジミ)しか分布せず、台湾にも1種(ウラフチベニシジミHeliophorus epicles)のみが分布する。



いくつもの小グループ(属またはそれに準ずるタクサ)に分割され、狭義のベニシジミ群(亜属Lycaena)は、ヨーロッパからアジアを経て北米大陸に至る北半球温帯域に広域分布するベニシジミLycaena philaeasと、アフリカ東部のアビシニア高地に分布するヒイロベニシジミLycaena abbottiiの2種からなる。ヒイロベニシジミは外観がベニシジミとは著しく異なるが、雄交尾器の形状には全く差異がなく、従って種としてはベニシジミに含める見解もある。



最も狭義のベニシジミ群はベニシジミ一種のみから構成されるという見解がある一方、(ヒマラヤ地方産や中国西南部産を独立種と見做すなど)いくつかの種に分割される可能性もある。



日本では北海道北端から九州南端まで分布し、各地で普遍的に見られるが、屋久島以南には在来分布していない。ひとつの法則があるように思われ、ユーラシア大陸温帯域に広く分布する種は屋久島以南には分布せず原則九州本土止まり、周日本海分布様式の種の多くは屋久島まで至り、屋久島産は多少なりとも特化している。ベニシジミは前者の典型で、屋久島には分布していなかったが、著者は2006年に移入個体を確認、現在は定着しているようである。



中国大陸の状況は、日本列島とはかなり異なる。北部(中国東北地方など)では、日本同様に普遍的に見られるようだが、中~南部では必ずしも普遍的な種ではないように思われる。



おそらく異なる由来の集団が2極分布していて、東部、例えば上海の近郊では都市周辺を含む低地にも見られ、外観や生活様式も日本産に似ているよう思われるが、多くの同族種が棲息する中国西南部では、種ベニシジミは、どうやら高標高地に限られる希少種のようである。中国南西部高標高地産はおそらく年1化、春型のみが出現し、外観の印象は、日本産や中国北‐東部産よりもヨーロッパ産に似ているように思われる。



北米大陸産も興味深い。中国大陸同様に2極分布している可能性があり、東部(低標高地を含む)産はヨーロッパ産と関連が深く(人為移入ともされるが必ずしも絶対的な結論ではない)、中‐西部の高標高地に希少分布する集団は、 地史的な時間レベルでは比較的新しい時代まで東北アジア産と交流を持っていた集団であろうと考えられる。



日本でもギリシャでも普通種だが、興味深いテーマを数多く内包していて、今回出会うことが出来て嬉しかった蝶の

一つである。



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春の女神 日本のギフチョウの姉妹種ギリシャのモエギチョウ







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春の女神ギフチョウの姉妹集団としての“モエギチョウ萌葱蝶(旧名:シリアアゲハ、ニセアポロ、ムカシウスバ)Archon apollinus”について

2022-04-11 14:27:12 | 里山、蝶、ギフチョウ




春の女神ギフチョウの姉妹集団としての“モエギチョウ萌葱蝶(旧名:シリアアゲハ、ニセアポロ、ムカシウスバ)Archon apollinus”について

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