青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

2021.12.8 日記

2021-12-09 09:00:00 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス


★12月8日の記事に、いいね!その他ありがとうございます。


読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。

【Ⅰ】
マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】
「沖縄に対する日本」
「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」
の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。

・・・・・・・・・・

古い知人との会食のため、久しぶり(駅を降りたのは5年ぶりぐらい?)に渋谷に行きました。その後スタバに寄って、駅に向かおうとしたのだけれど、ちょうど斜め向かいにタワーレコードがあったので、やはり久しぶりにちょっと覗いてみることにしました。

「ロック」は7階、店員さん(若い女性)に聞きました。ちなみに、タワーレコードの店内もそうだし、スタバもそうだし、街歩いている人もそうなんだけれど、女性ばっかりですね。男性は肩身が狭いような(;´д`)。なんか、性別にしろ、人種にしろ、どっちかに“主張”の比重が偏っていくみたいで。

僕:
>本は置いてますか?ビルボードのチャート・ブックとか。

スタッフ:
>ビルボード関係は全てありません。昔は置いてたのですが、今はローリング・ストーンズ誌(僕の大嫌いなやつ)系が中心です。

僕:
えっ?なんで?

スタッフ:
>理由は良く知らないんですが、ちょうどコロナが始まった頃から、取引を止めてしまったのです。

ひとしきりCDや本をチェックしてから(もちろん“真のオールデイズ”関連はごく僅かしか無かった)、別のスタッフ(若い男性)に、もうひとつ尋ねてみました。

僕:
>オールデイズとC&W関係は何処にありますか?

ここで驚愕の返事が。

スタッフ:
>7階と8階にありますが、、、、CDですか?レコードですか?

僕;
>えっ?えっッ??(ちょっと待って、、、意味が分からない)

スタッフ:
>CDとレコードは、別々のコーナーにあるんで。

僕:
>レコード、、、って。そんなの売ってるんですか?(なんか一瞬タイムマシーンで昔に戻ったのかと)

話が噛み合いません。よくよく聞いてみると、今はレコードのブームだそうで、新しいレコードがどんどん発売されているのだそう。

>僕:
オールデイズもあるんですか?1960年代とかの。

スタッフ:
>もちろん。60年代は特に充実していますよ。ご案内しましょう。

広いスペースに、昔懐かしい(そういえばLPアルバム探している場面がよく夢に出てくる)LPアルバムがどっさりあります。アルファベット順(日本の場合は姓名の名が先)に並んでいるのだけれど、、、、ちょっと違うような、、、。

僕:
>エルヴィスとか、60年代の前半はあるんですか?エルヴィス以外で。

スタッフ:
>もちろん。

僕:
>でも全然見あたらないですよ。

ビートルズとかボブ・ディランとかは、文字通り山のように(たぶん100枚以上)あるのだけれど、“前半”のアーティストは一つも見当たらないような、、、、。

スタッフ:
>例えばどんな歌手ですか?

僕:
>え~と、、、リッキー・ネルソン(彼なら間違いなくある!)。

スタッフ:
>Rですね。探して見ましょう。、、、、無いですね。

僕:
>ボビー・ダーリン(これはあるだろう)。

スタッフ:
>B、、、、、無かったです。

僕:
>じゃあ、コニー・フランシス(彼女が無ければ他は絶望)。コニーはCです。

スタッフ:
>、、、、見つかりませんでした。

僕:
>ということは、(これだけ沢山あるのに)60年代前半は一つも置いてないんだ。

スタッフ:
>そんなわけじゃ、、、たまたまです。

僕:
>(まあ、ある程度は予測できたことだし、仕方がないか、と思いつつ、最後にもうひとつ)これは絶対にある。パット・ブーン。

スタッフ:
>も一回言って下さい。

僕:
>パット・ブーン。

スタッフ:
>パ。Pですね。

僕:
>パット・ブーン知らないんですか?

スタッフ:
>知らないです。

なんか、脱力感、半端ないです。いや、昔の事は知らない、ってのは仕方がないんですよ。それに関しては良いのです。でも、(マイナーなジョニー・ティロットソンならともかく))リッキー・ネルソンもボビー・ダーリンもコニー・フランシスもパット・ブーンも、ビートルズやボブ・ディランやモータウン勢とかが登場する、ほんの数年前に主役だった超有名歌手たちです。それが、片一方(60年代後半)は掃いて捨てるほど充実していて、片一方(60年代前半)は存在の影すらない、、、、。この“偏り方”は、どう理解すれば良いんだろう???

前回前々回のブログにも引用した、誰かのコメント、
>ある意味、『多様性』を認めるという旗印の元、『単一性』が求められているとも言えるのが皮肉ではありますね。
>実は新時代の一様性を広めようとしているに過ぎないのでは?という疑問を持って欲しい。

本当に、そういった世界になってしまっているんだな、と改めて思い知らされた次第です。


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2021.9.18 日記2

2021-09-19 07:56:07 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス


★9月18日の記事に、いいね!その他ありがとうございました。


“女エルヴィス”ワンダ・ジャクソン(今年84歳)の新曲 
カテゴリー:「アメリカン・ポップス」

「次のブログ記事は(別の話題アサギマダラに差し替えて先送りにしていた)イチモンジセセリ」、、、と予告していたのですが、(やはり思ったよりも難しくて)すぐに取り組むとなると、かなり気が重い、、、。それで再び別の話題を差し挟んでおきます。

ジョニー・ティロットソンの「涙ながらにIt Keeps Right On A Hurting」関連。そのカバー・ヴァージョン全アーティスト紹介を目指しているのですが、まだユーチュブにアップされていないのが幾つかあります。メジャーなところでは、ボビー・ゴールスボロ―とか、ザ・ウイルボーン・ブラザースとかは、ぜひとも聴いてみたい。それらのバージョンが、もしかしたら新しくアップされているかも知れない、というわけで、年に1~2度はユーチュブをチェックしています。

今年の春、意外なところから関連ユーチュブを見つけました。エルヴィス“フリーク”らしき、若い黒人DJによって比較紹介された、「涙ながらに」のエルヴィス・プレスリー・バージョン(ロック)とハンク・ロックリン・バージョン(カントリー)の比較です。それに対する感想をブログにアップしておきました。今回、再び意外なところからの関連情報。

ついこのあいだ、今夏リリースされた、ジョニーより一つ歳上の、今年84歳になる、ワンダ・ジャクソンの新譜です。“最後のリリース”と銘打ったアルバムの中からシングルカットされたA面曲です。
Wanda Jackson - It Keeps Right On A Hurtin’ (Audio) - YouTube

「涙ながらに」をはじめとするティロットソン作品を歌った同時代女性カントリー・シンガーとしては、“ジェーン・シェパード”“スキーター・デイヴィス”“ノーマ・ジーン”“アニタ・カーター”“ジョディ・ミラー”“ロレッタ・リン”“コニー・スミス”らがいて、錚々たる面子ですが、日本での知名度で言えば、“ワンダ・ジャクソン”が、一頭抜きんでているのではないだろうかと思います。

“女エルヴィス”ですね。1954年夏に、カントリー・トップ10ヒットの「ユー・キャント・ハブ・マイ・ラブ」。エルヴィスがポップ界に旋風を巻き起こしたのが56年、カントリーではその一年前の55年。ワンダ・ジャクソンの登場は、更にその一年前なのです。

“カントリー”と言うよりも“ロカビリー”。60年には、あのジーン・ヴィンセントをバックに、ロックン・ロール・ナンバーの「レッツ・ハブ・ア・パーティ」をポップスの方のトップ40に送り込んでいます。

61年には、後にロニー・ロブでもヒットする自作曲の「ライト・オア・ロング」、翌62年にかけては「イン・ザ・ミドル・オブ・ハートエイクス」を、カントリーとポップスでクロスオーバー大ヒットさせています(C9位/P29位、C6位/P27位)。

と言う事で、本場のポップス・メジャー・ステージでは60年代に入ってからのブレイクですが、日本では50年代半ばから“女性ロカビリー歌手”、ひいては女性カントリー&ウエスタン歌手の魁として知られています(平尾昌晃とか、ミッキー・カーチスとか、小坂一也とかの時代で、僕も知りません、リアルタイムで接していた方々は今80歳代でしょう)。以前の僕のブログでも紹介した「フジヤマ・ママ」(57年)などの、日本だけの独自ヒットもあります。

その“伝説の”と評しても良い超ベテラン女性カントリー/ロック・シンガー、ワンダ・ジャクソンの「最後のリリース」にジョニーの「涙ながらに」が選ばれたわけで、感慨深いものがあります。

付け加えておくと、共同プロデュースが、若い世代(と言っても60歳オーバー)の女性ロック歌手、82年に
ポップス。チャートで7週間に亘る1位を記録した「アイ・ラブ・ロックン・ロール」のジョアン・ジェットであることでも、注目を浴びているようです。

考えてみれば、ワンダ・ジャクソンとジョニー・ティロットソンは、それぞれ自作の「ライト・オア・ロング」や「涙ながらに」が、60年代初頭のポップ&カントリーのクロスオーバーヒットの代表曲であるわけですから、60年後とは言え、改めて取り上げられても不思議ではないと思います(ジョニーは「ライト・オア・ロング」を歌ったことがあるのでしょうか?)。

ちなみに、僕が一押しの「涙ながらに」カバーは、アマチュア?歌手“Max Phillips”バージョン。彼の歌う「ライト・オア・ロング」もユーチュブにアップされています。共に非常に素晴らしいので、是非聴いてみてください。






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2019.10.31日記(上):ElvisとBeatlesの狭間で~Johnny Tillotsonの時代

2021-08-25 10:19:44 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス



A Short Story of The Cadence Record /3人の女性ポップス歌手ほか(抄』 【上】

カテゴリー:「コロナ」「差別問題と民主化運動」「アメリカン・ポップス」



Don Everly, Johnny Tillotson, Phil Everly. Hangin' out in Printer's Alley, Nashville, Tennessee.

お宝写真を見つけました! エヴァリー兄弟とジョニー・ティロットソンの3ショットです。ケイデンス時代(1958年秋~1960年春)は同僚だったわけですが、エルヴィスと並ぶナンバー・ワン歌手のエヴァリーと、駆け出しのジョニーでは、格が違い過ぎて、なかなか2(3)ショットが見つからない。やっと見つけたのがこの写真です。しかし、やや大人っぽい雰囲気から、60年にエヴァリーがワーナーに移籍し、ケイデンスに残ったジョニーも大ヒットを連発しはじめて、やっと「横綱」と「関脇」ぐらいの位置関係になった頃ではないかと思われます。3人の髪形から見て、エヴァリーが「クライング・イン・ザ・レイン」、ジョニーが「涙ながらに」の頃(1962年)ではないかと。ドン25歳、フィルとジョニーが23歳前後ですね。後ろのポスターは、C&W界の「ギターの神様」チェット・アトキンスのライブです。

https://www.bsnpubs.com/cadence/cadence45.html ケイデンス・レコード全シングル盤リスト
http://www.bsnpubs.com/cadence/cadence.html ケイデンス・レコード全アルバムリスト
↑こんなのに取り組んでいます。アーチ・ブレイヤー率いる「ケイデンス・レコード」(53年に発足し63年暮にレーベル消滅)のシングル盤とアルバムの全曲紹介です。何故かコピーが出来なくて、手書きで写し取ってます。いや、もう大変な作業です(笑)。全曲リストの作成は8割方終えているのですが、B面曲のチェックなどに手間取っているので、今回は、Billboard チャート・ヒット曲を中心に、とりあえず概要を紹介していきます。

Cadens(ケイデンス)レコードは、大スターの、エヴァリー・ブラザース、アンディ・ウイリアムスを擁した、“超有名”な“マイナー(弱小)”レーベルです。

1953年から10年間の間に、212枚のシングル盤をリリースしています。参加アーティストは70組ほど。53年に準備期間のような形で発足し、64年初頭には残務整理のような形で数枚の旧譜のリリースを行っているだけなので、実質的には54年~63年のちょうど10年間と言えます。

便宜上、3期に分けてみました。

第Ⅰ期:1953-1956年。Cadence 1230-1304の75枚(うち2枚はEP盤)をリリース。

1955年にカントリー界で、1956年にポップス界で、エルヴィス・プレスリー(1935~1977)が大ブレイクし、新しいポップ音楽が誕生した時代です。

(レーベル成立とともに立て続けにリリースした8枚を含め)Julius La Rosa(1930~2016)が16枚と奮闘しています(スタートした1230の番号は、ラローサの誕生日の1930.1.2から来ているとのこと)。ついで The Chordettes(リーダーでArchie Bleyer夫人のJanet Ertel:1913~1988)が 8枚、オーナーのArchie Bleyer(1909~1989)が4枚、Andy Williams(1927~2014)も 4枚。

ビルボード総合チャートNo.1ヒットにコーデッツの「Mr.サンドマン」(54年)と、ビル・ハイエスの「デビー・クロケットの唄(55年、子供向け)」があり、No.2ヒットのアーチ・ブレイアー「Hernand’s Hideaway」(54年)が続きます。他にトップ10ヒットとして、コーデッツの「ボーン・トゥ・ビー・ウイズ・ユー」(56年5位)と、アンディ・ウイリアムスの「カナダの夕陽」(56年7位)、および最初期のジュリアス・ラローサの「Anywhere I Wonder」(53年4位)と「Eh Cumpari」(53年2位)があります。

以下、1953~1956年のBillboardチャートヒット全曲。

1230 Julius La Rosa/Anywhere I Wonder(2-53, #4 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=uW0-Qesx8cc
1230(B-side)Julius La Rosa/This Is Heaven(1-53, #21 pop) 
https://www.youtube.com/watch?v=CouvPC2-4CM
1231 Julius La Rosa/My Lady Love To Dance (5-53, #21 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=3qWTOIAHZuM
1232 Julius La Rosa/Eh Cumpari (9-53, #2 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Bsg73N0eUZk
1240 Julius La Rosa/Three Coins In The Fountain(5-54, #21 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=tK7l_dgI0Mk
1241 Archie Bleyer/Harnando’s Hideaway(5-54, # 2 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=dxltk9yaBZs
1247 The Chordettes/Mr.Sandman (10-54, # 1 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=CX45pYvxDiA
1251 Julius La Rosa/Mobile(11-54, #21 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Al-OeAZNSBg
1254 Archie Bleyer/The Naughty Lady Of Shady Lane(12-54, #17 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Z713x0Ji3_g
1256 Bill Hayes/The Ballad Of Debby Crockett (2-55, # 1 pop)*1926~、俳優。曲は子供の歌。
https://www.youtube.com/watch?v=9vKSMd2SbGI
1266 Marion Marlowe/The Man In The Raincoat(7-55, #14 pop)*1929~、Godfreyショー出演。
https://www.youtube.com/watch?v=QjM9yVakayk
1270 Julius La Rosa/Suddenly There’s Are Valley(10-55, #20 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=jQ1V0IOqEM0
1273 The Chordettes/The Wedding(1-56, #91 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=NNAQwmOWG9k
1284 The Chordettes/Eddie My Love(3-56, #14 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=J7c_6ieoTDM
1286 Kay Thompson/Eloise(3-56, #59 pop)*
https://www.youtube.com/watch?v=MnjxEjbQDLI
1288 Andy Williams/Walk Hand In Hand(4-56, #54 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=JC3LOidNxBg
1291 The Chordettes/Bone To Be With You(6-56, # 5 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=bVEiUmfZ4yw
1293 Archie Bleyer/The Rockin’ Gost(6-56, #61 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=7fE2gEmYm04
1297 Andy Williams/Canadian Sunset(8-56, # 7 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=y1LqH4Aq7Rk
1299 The Chordettes/Lay Down Your Arms(9-56, #16 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=1NLkMsdlkF4
1299(B-side)The Chordettes/Teenage goodnight(10-56, #45 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=pVcoFC0IeIM
1303 Andy Williams/Baby Doll(12-56, #33 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=PtO2fNXl0us

第Ⅱ期:1957-1959年。Cadence 1305-1375の 71枚をリリース(うち57年は37枚で他の年に比べて飛び抜けて多い)。

The Chordettesが 9枚(5曲がチャートイン)、Andy Williamsが 8枚(8曲チャートイン)、The Everly Brothers も8枚(13曲チャートイン、うち一曲はC&Wチャートのみ)。

エヴァリー・ブラザース(Don:1937~/Phil:1939~2014)が大ブレークし、エルヴィスに並ぶ存在になりました。57年と58年の2年間に、3つのNo.1(「起きろよスージー」「夢を見るだけ」「バード・ドック」)と、2つのNo.2(「バイバイ・ラブ」「プロブレムス」)ヒットを放ちました。うち、「起きろよスージー」(57年)と「夢を見るだけ」(58年)は、総合、カントリー、R&Bの3つのチャートでNo.1を記録、「バイバイ・ラブ」(57年)もカントリーで1位。また、激しいロックの「バード・ドッグ」と、美しいバラードの「デボテッド・トゥ・ユー」のカプリングは、記録的な両面大ヒット(総合で1位と10位、R&Bで共に2位、カントリーで1位と7位)と成ります。

*兄弟の区別がつかない人もいるでしょうが、僕は一発で区別できますよ。(野生の獣のような)鋭い目つきのドン、(モニカの御主人に似た雰囲気の)穏やかな表情のフィル、、、まあ、ヤマキマダラヒカゲとサトキマダラの区別みたいなものですね。

この3年は、エヴァリー兄弟のヒット曲を中心に紹介していくことになりますが、アンディ・ウイリアムスも、「バタフライ」1位(57年)、「アイ・ライク・ユー・カインド・オブ・ラブ」8位(57年)、「アー・ユー・シンシア」3位(57年)、「ロンリー・ストリート」5位(59年)、「ザ・ヴィレッジ・オブ・セントバーナード」7位(59年)、コーデッツも、「ジャスト・ベットウイーン・ユー・アンド・ミー」8位(58年)、「ロリポップ」.2位(58年)と、脂が乗りきっていました。

以下、1957~1959年のBillboardチャートヒット全曲。

1306 The Harvey Boys/Nothing Is Too Good For You(3-57, #84 pop)*ポップ・ヴォーカル・グループ
https://www.youtube.com/watch?v=OS2JtXsVvKs
1308 Andy Williams/Butterfly(2-57, # 1 pop, # 14 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=NPh435KiBt4
1315 Everly Brothers/Bye Bye Love(5-57, # 2 pop, # 2 country, # 5 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=LRyrWN-fftE
1315(B-side)Everly Brothers/I Wonder If I Care As Much(5-57, flip)
https://www.youtube.com/watch?v=VrG1Yz1XDSw
1318 Joyce Hahn/Gonna Find Me A Bluebird(6-57, #84 pop)*後述
https://www.youtube.com/watch?v=9DDH5CucnwA
1323 Andy Williams/[with Peggy powers] I Like You Kind Of Love(5-57, # 8 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=kXheuEUgg8U
1330 The Chordettes/Just Between You And Me(9-57, # 8 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=cMetSnOD4A8
1330(B-side)The Chordettes/Soft sands(9-57, #73 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=l49qt4Xsq5Y
1336 Andy Williams/Lips Of Wine(9-57, #17 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=mM9elhDV078
1337 Everly Brothers/Wake Up Little Susie(9-57, # 1 pop, # 1 country, # 1 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=LojqhHnmyvc
1340 Andy Williams/Are You Sincere(2-58, # 3 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=HGI9hTLQkOw
1342 Everly Brothers/This Little Girl Of Mine(2-58, # 26 pop, # 4 country)
https://www.youtube.com/watch?v=b2jVZ8tAU-U
1342(B-side)Everly Brothers/Should We Tell Him(2-58, #10 country)
https://www.youtube.com/watch?v=IeIGAgXnVBI
1345 The Chordettes/Lollipop(3-58, # 2 pop, # 3 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=A0kd-w7Xwd8
1347 Link Wray/Rumble(4-58, #16 pop)*後述
https://www.youtube.com/watch?v=BuAD_sQUgpw
1348 Everly Brothers/All I Have To Do Is Dream(4-58, # 1 pop, # 1 country, # 1 r&b, 7-61:#96 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=tbU3zdAgiX8
1348(B-side)Everly Brothers/Claudette(5-58, #30 pop, #15 country)
https://www.youtube.com/watch?v=B9r3qZORr1Q
1349 The Chordettes/Zorro(5-58, #17 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Zd7lNxEIFcE
1350 Everly Brothers/Bard Dog(8-58, # 1 pop, # 1 country, # 2 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=I65PxlOlHA4
1350(B-side)Everly Brothers/Devoted To You(8-58, #10 pop, # 7 country, # 2 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=Gv8BaytaOPI
1351 Andy Williams/Promise Me Love(9-58, #17 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=PL8f0DTw1i8
1353 Johnny Tillotson/Dreamy Eyes(11-58, #63 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=eyGumi55aGA
1353(B-side)Johnny Tillotson/Well I’m You Man(10-58, #87 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=dwTWSx2FT4E
1355 Everly Brothers/Problems(11-58, # 2 pop, # 17 country)
https://www.youtube.com/watch?v=ZRGCeM1enhw
1355(B-side)Everly Brothers/Love Of My Life(11-58, #40 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=ll1A18OQOaY
1358 Andy Williams/The Hawaiian Wedding Song(12-58, #11 pop, #27 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=ibkB47OAt6c
1361 The Chordettes/No Other Arms No Other Lips(3-59, #27 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Zrkpryy-nWQ
1364 Everly Brothers/Take A Massage To Mary(3-59, #16 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=3ORu-sOPMVc
1364(B-side)Everly Brothers/Poor Jimmy(3-59, #22 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Y3OG1mPPqdo
1365 Johnny Tillotson/True True Happiness(8-59, #54 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=UEd9zzFCJ60
1366 The Chordettes/A Girl’s Work Is Never Done(8-59, #89 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=usEIr99xBa4
1369 Everly Brothers/Til’ I Kissed You(8-59, # 4 pop, # 8 country, # 22 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=m2ma7r23SrA
1370 Andy Williams/Lonely Street(9-59, # 5 pop, #20 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=TvRjA_BMikQ

第Ⅲ期:1960-1964年。Cadence 1376-1447の 72枚(4つが欠番で実質68枚)をリリース。 このうち5枚は1964年に入ってのリリースですが、録音は63年以前に為されています。

ケイデンスは1963年の暮、10年間の歴史を閉じてしまいます。むろん、弱体化した直接の原因は、60年春にエヴァリー・ブラザースが、61年夏にアンディ・ウイリアムスが、それぞれ「ワーナー・ブラザース」「コロンビア」という大手レコード会社に移籍したことに因りますが、根本の原因は別のところにあると思います。詳しくは機会を改めて述べますが、一言で現すと「ポリシーが良質すぎた」ということだと思います。

また、解散直後の64年春にはビートルズがアメリカに上陸し、彼らをはじめとした新しい波によって、ポップスの世界が全く新しいものに塗り替えられてしまった。アーチ・ブレイヤーには、その予感があったのだと思います。「ケイデンス」そのものが、まさに「ポップス黄金期」の象徴であったと言えるでしょう。

60~63年の中心になったのは、58年秋にデビュー・ヒットを放ったジョニー・ティロットソン(1939~)です。チャートヒット14曲のうち9曲(上位10曲中7曲)を占めていて、トップ10ヒットが3曲。「ポエトリー・イン・モーション」2位(60年)、「ウイズアウト・ユー」7位(61年)、「涙ながらに」総合3位、カントリー4位、R&B6位(62年)。自作曲「涙ながらに」は、60年代を通して3曲しかない、総合チャート、カントリー、R&Bの3ジャンルに跨ってベスト10入りした、今はカントリーのクラシックとなった名曲です。しかし彼もまた、63年秋に、大手レーベルのMGMに移籍してしまいます。

意外な健闘をしたのが、年少(1947~/61年時点で14歳)のエディ・ホッジス。61年「恋の売り込み」12位、62年「(ガールガールガール)メイド・オブ・ラブ」14位のヒットを放っています。

61年に異色のヒット曲「ウオーター・ボーイ」総合40位、AC10位を放った黒人ジャズ・ピアニストのドン・シュェリー(1927~2013)は、シングル4枚のほか、アルバム19枚をCadenceからリリースしています。

数少ない所属黒人男性歌手、レニー・ウエルク(1938~)も忘れることの出来ない存在です。60年初頭「ユー・ドント・ノー・ミー」総合45位、R&B28位で、幸先よくスタートを切ったのですが、以降の7枚のリリース曲はどれもノンヒット、しかし、63年秋のレーベル消滅直前にリリースされた「シンス・アイ・フォール・フォー・ユー」が、総合4位、アダルト3位の大ヒットを記録します。

ほぼ同時期にデビーしたジョニー・ティロットソンがヒットを連発するなか、腐ることなく歌い続けてきたレニー・ウエルクは偉いと思うし、ヒットに結びつかなくても我慢してリリースし続けたアーチ・ブレイヤーも立派だと思います。そこに「ケイデンス」の神髄を見る思いです。

1372 Johnny Tillotson/Why Do I Love You So(1-60, #42 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=nRk6sLhywLo
1373 Lenny Welch/You Don’t Know Me(2-60, #45 pop, #28 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=lowHP3gLTUs
1374 Andy Williams/The Village Of St.Bernadette(12-59, # 7 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=vYRL5sJLFfY
1376 Everly Brothers/Let It Be Me(1-60, # 7 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=zRKjTtiGQRY
1377 Johnny Tillotson/Earth Angel(4-60, #57 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=M8bqswE8L-Y
1377(B-side)Johnny Tillotson/Pledging My Love(4-60, #63 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=vkZzEupxvoU
1378 Andy Williams/Wake Me When It’s Over(3-60, #50 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=UKp24nueaoA
1380 Everly Brothers/When Will Be Loved(5-60, # 8 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=lv6L2zIk2ZQ
1380(B-side)Everly Brothers/Be Bop A Lula(7-60, #74 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=3u3jEwkG3_Y
1382 The Chordettes/A Broken Vow(8-60, #102 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=lWGDSeTsKtY
1384 Johnny Tillotson/Poetry In Motion(10-60, # 2 pop, #27r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=CvHC-NWJYWM
1388 Everly Brothers/Like Strangers(10-61, #22 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=1nG-lLo9LXE
1388(B-side)Everly Brothers/Bland New Heartache(11-61, #109 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=BwvfktBq0HI
1389 Andy Williams/(In The Summertime)You Don’t Want My Love(3-60, #50 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=E4L3lcRKSro&list=RDE4L3lcRKSro&start_radio=1#t=5
1390 Charlie McCoy/Cherry Berry Wine(2-61, #99 pop) *1941~、ハーモニカ奏者。
https://www.youtube.com/watch?v=klKAGGuSYn4
1391 Johnny Tillotson/Jimmy’s Girl(1-61, #25 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=YooOx6UBxD0
1392 Don Shirley Trio/Water Boy(7-61, #40 pop, #10 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=YR9d1l6oOxI
1397 Eddy Hodges/I’m Gonna Knock On Your Door(6-61, #12 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=uQPnwYu5zyA
1398 Andy Williams/The Bilbao Song(4-61, #37 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=tYPZYn9EDQY
1402 The Chordettes/Never On Sunday(6-61, #13 pop, # 4 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=DPNASiM8rNQ
1402(B-side)The Chordettes/Faraway Star(9-61, #90 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=c40PArno9uw
1404 Johnny Tillotson/Without You(9-61, # 7 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=wOgmx88bhgc
1408 Don Shirley Trio/Drown My Own Tears(62.1, #100 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=1AxNMfm8Vsc
1408(B-side)Don Shirley Trio/The Lonesome Road(61.12, #116 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=XNIZAeLLNY8
1409 Johnny Tillotson/Dreamy Eyes[R](2-62, #35 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=aBVejGKfgt4
1410 Eddy Hodges/Bandit Of My Dreams (1-62, #65 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=y_1nIskIv_E
1418 Johnny Tillotson/It Keeps Right On A Hurtin’(5-62, # 3 pop, # 4 c&w, # 6 r&b)
https://www.youtube.com/watch?v=Okk3ARBn2Tk
1421 Eddy Hodges/(Girl Girl Girl)Made To Love(6-62,#14 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Q0oyuM-jhC8
1422 Lenny Welch/Ebb Tide(3-64, #25 pop, # 6 AC)*62年夏リリース。
https://www.youtube.com/watch?v=2kYhjLQWYi8
1424 Johnny Tillotson/Send Me The Pillow That You Dream On(8-62, # 17 pop, # 11 c&w, # 5 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=c1-SKk6kvTg
1424(B-side)Johnny Tillotson/What’ll I Do(9-62, #106 pop,)
https://www.youtube.com/watch?v=sTnG8ZSTwX4
1426 Archie Bleyer/Moonlight Serenade(non-hit)
https://www.youtube.com/watch?v=N4_COjpT-rE
*Archie Bleyer’s Last Single from Cadence
1429 Everly Brothers/I’m Here To Get My Baby Out Of Jail(10-62, #76 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=P35_fH80S80
*The Everly Brothers’s Last Single from Cadence
1432 Johnny Tillotson/I Can’t Help It(If I’m Still In Love With You)(10-62, #24 pop, # 8 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=zwthfBBe7wI
1432(B-side)Johnny Tillotson/I’m So Lonesome I Could Cry(12-62, #89 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=zwthfBBe7wI
1434 Johnny Tillotson/Out Of My Mind (3-63, #24 pop, #11AC)
https://www.youtube.com/watch?v=q8rhVL-QPVo
1437 Johnny Tillotson/You Can Never Stop Me Lovin’ You(8-63, #18 pop, # 4 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=UGiYJDtwhlI
1439 Lenny Welch/Since I Fall For You(10-63, # 4 pop, # 3 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=U7xrQY_FLM4
1441 Johnny Tillotson/Funny How Time Slips Away(10-63, #50 pop, #16 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=o9GdfHtFXH8
 *Johnny Tillotson’s Last Single from Cadence
1442 The Chordettes/True Love Goes On And On(non-hit)[R]
https://www.youtube.com/watch?v=ZB_AXYdqwJg
 *The Chordettes’s Last Single from Cadence(1954年録音の旧譜=Cadence1329)。
1444 Julius La Rosa/Gonna Build A Mountain(non-hit)
https://www.youtube.com/watch?v=ZLB6FROXb3w
*Julius La Rosa’s Last Single from Cadence(1964年リリースのアルバム「Mainly Romantic」収録)。
1445 Don Shirley/Ol’ Man River(non-hit)
*Don Shirley’s Last Single from Cadence
1446 Lenny Welch/If You See My Love(7-64, #92 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=J6HJ-dtiUe4
*Lenny Welch’s Last Single from Cadence
1447 Andy Williams/Under Paris Sky(8-64, #121 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=l7p2M-D-P9Q
 *Andy Williams’s Last Single from Cadence(1960年にリリースしたアルバムからの旧譜)。

主なアーティストのヒット曲数を整理しておきます。
◆Julius La Rosa 発売シングル18枚(チャートヒット7曲/ベスト10入り2曲)
◆Archie Bleyer 10枚(3曲/1曲)
◆The Chordettes 23枚(13曲*/4曲)*両面hit含む
◆Bill Hayes 7枚(1曲/1曲)
◆Andy Williams 18枚(17曲/6曲)
◆The Everly Brothers 12枚(20曲*/8曲)
◆Johnny Tillotson 16枚(18曲*/3曲)
◆Lenny Welch 9枚(4曲/1曲)
◆Don Shirley 3枚(3曲/0曲)
◆Eddie Hodges 3枚(3曲/0曲)

他のアーティストは約70組、リリース数は約100枚ということになります。全部合わせて、チャート・ヒットは、6曲、ベスト10入りは、0曲です。ということは、上に挙げた10組のアーティスト以外は、ほとんどがノン・ヒット・シンガーということになるので、ユーチュブで見つけるのは大変です。

でも、それにチャレンジしよう、という思いに、突然なりました。

ノンヒット曲の中に、次々とお宝発見です。特に3人の女性歌手。

まず、ケイデンス最末期の2大ヒット曲Johnny Tillotson「You Can Never Stop Me Lovin’ You」【Cadence 1437】とLenny Welch「Since I Fall For You」【Cadence 1439】に挟まれた【Cadence 1438】に、ノンヒット・女性シンガーJean Thomasのノン・ヒット曲(したがってyou-tubeで曲を見つけるのに大変苦労した)の「He’s So Near(Yet So Away)b/w The Boy That I Want Doesn’t Want Me」。

【Cadence 1438】 Jean Thomas/He’s So Near(Yet So For Away)(non-hit)1963
https://www.youtube.com/watch?v=Oap4qNCcnAI

「He’s So Near」は日本でも63年秋「お熱をあげて」のタイトルで発売されていました。ジェーン・トーマスの自作曲です。彼女の生年は不明ですが、ジョニーやレニーと同年代(1938-40年頃生まれ)だと思います。今も健在らしいです。

【Cadence 1438B-side】 Jean Thomas/The Boy That I Want Doesn’t Want Me(non-hit)1963
https://www.youtube.com/watch?v=NYVUlj2wZNE

Jean Thomasのシングル盤がもう一枚ありました。あの名曲、「Moon Riverムーン・リバー」を、映画公開とほぼ同時期にリアルタイムで取り上げています。【Cadence 1419】ということは、Johnny Tillotson「涙ながらに」【Cadence 1418】の次のリリースですね。この曲がJean Thomas盤でヒットしなかった(ヒットヴァージョンは黒人男性歌手のJerry Butler盤、総合11位/R&B14位/Adult 3位)のは、ひとえにレーベルが弱小だったからでしょう。

【Cadence 1419】 Jean Thomas/Moon River(non-hit)1962
https://www.youtube.com/watch?v=c_hQyYbh3aI

ケイデンスから3枚のシングルを発売していますが、そのうちの一つ「Seven Roses」【Cadence 1435】は、you-tubeで見つけることが出来ませんでした。そのB面に入っている「He’s So Near」は、ケイデンス解散前の最後のシングルのひとつとして【Cadence 1438】で再リリースされるわけですから、アーチ・ブレイヤーも、何とかヒットすることを願っていたのでしょう。レニー・ウエルクが、最後の最後に【Cadence 1439】で大ブレークしたことを思えば、(レニーより後発デビューのジェーンに)あと一回か二回のチャンスがあれば、ヒットに結びついたのに、と残念でなりません。

でも、日本でも発売されたことで、僕のように記憶に留めているリスナーは少なからずいると思います。ちなみに、「He’s So Near(お熱をあげて)」は、最初の「Seven Roses」とのカプリング時に、ジョニーの当時のシングル盤同様、AB面逆さにA面として発売されています。B面に回った「Seven Roses」の邦題は「サンタモニカのバラ」。僕はよく覚えていますよ(「サンタモニカ」という地名は、その時に初めて知ったのです)。

もう一人、意外な女性歌手の名を見つけました。あの「エンジェル・オン・マイ・ショルダー」(自作、1961年にBillboard pop 22位)のシェルビー・フリント(1939~)が、初ヒット(と言っても他に63年に「Little Dancing Doll」pop 103位と、66年に「風のふくまま」pop 61位/Adult 11位のヒットがあるだけですが)を放つ前に、Cadenceから「I Will Love You」でレコードデビューしています。

【Cadence 1352】 Shelby Flint/I Will Love You(non-hit)1958
https://www.youtube.com/watch?v=K7ayw_sGmbs

【Cadence 1352】ということは、ジョニー・ティロットソンのデビュー曲「夢見る瞳」【Cadence 1353】の一つ前で、同じ時のデビューと言ってよいでしょうね。数年後に別レーベルに移籍し、ほぼ一発ヒットと言ってよい、しかし不屈の名曲の「エンジェル・オン・マイ・ショルダー」を著すのですが、この「アイ・ウイル・ラブ・ユー」(やはり自作)もそれに負けない素晴らしい曲です。シェルビー・フリントは、この曲のカバーで知られる、ザ・カスケーズ同様、ほぼ一発屋に近い存在ですが、一部のポップス・ファンには、絶大な人気を誇っています。

ちなみに、エヴァリー兄弟にしろ、ジョニー・ティロットソンにしろ、レニー・ウエルクにしろ、ジェーン・トーマスにしろ、シェルビー・フリントにしろ、皆多くの曲を自作しているのですね。彼らは「ティーン・アイドル」には違いないのですけれど、少なくとも「日本のティーン・アイドル」とは、種類が異なる存在なのだと思います。

Shelby Flint 「Angel Of My Shoulder」 
https://www.youtube.com/watch?v=M_5kjg4Awj4

話がケイデンスから逸れますが、この曲(エンジェル・オブ・マイ・ショルダー)は、リアルタイムではザ・カスケイズ盤で聴いていた人も多いのではないでしょうか?カスケーズの「悲しき雨音」は、アメリカを含む世界中で大ヒットしました。ことに日本では、1963年前半のほぼ半年間、No.1に君臨し続けました。日本で最もヒットしたアメリカン・ポップスと言えるでしょう。僕も「悲しき雨音」のLPを買いました。最も好きだったのが「エンジェル・オブ・マイ・ショルダー」です。ただし、この曲は、古くからのスタンダード・ナンバーだと思い込んでいました。カスケーズがカバーするすぐ前の、若い女性シンガー・ソング・ライターのヒット曲だと知ったのは、ずっと後になってからです。

The Cascades 「Angel Of My Shoulder~Was I Dreaming?」
https://www.youtube.com/watch?v=fxvgQdkLu3s

ジョン・グモー(カスケーズのリーダーで「悲しき雨音」の作者)、このライブ当時77歳。決して美人じゃないけれど、現地(東南アジアのどこか)の可愛らしい少女歌手Ninaとのディエットです。唄い終わって、次の曲、エヴァリーの「夢を見るだけ」に移ります。と思いきや、最初の一小節を歌い終えたところで、おそらくカスケーズのオリジナル・ナンバー(アルバム「悲しき雨音」収録曲)でしょう、「夢を見たのかな?」に切り替わります。いろんな意味(10種類ぐらい)で、もう、涙が溢れて、、、、、、。三世、助けてよ!涙に溺れてしまいます。

さて、上記2人の女性歌手の曲はノンヒットなのですが、1957年にリリースされたこの女性歌手の「私の青い鳥Gonna Find Me A Bluebird」は、上記したように総合チャートの84位にランクされています。これが素晴らしい! 【Cadence 1318】ということは、エヴァリー兄弟の「バイバイ・ラブ」【Cadence 1315】の3つあと。ちなみにケイデンスからは、このヒットの前後に、ノン・ヒット曲「The Grass Was Greener」【Cadence 1298】と「Did You Close Your Eyes」【Cadence 1332】(共にユーチュブでは見つけることが出来なかった)もリリースしています。B面の「I Saw You, I Saw Tow」と併せて「Gonna Find Me A Bluebird」を再紹介しておきます。 

【Cadence 1318】Joyce Hahn/Gonna Find Me A Bluebird(6-57, #84 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=9DDH5CucnwA
【Cadence 1318B-side】Joyce Hahn/I Saw You, I Saw Tow(non-hit)
https://www.youtube.com/watch?v=zPiDPG92l8A

Joyce Hahn(どう発音するのだろう?ジョイス・ハン?)という名前は、聞いたことがあるような、ないような、、、。でも、総合チャートにランクされているということは、ビルボードのチャートブックを見れば、最低限出身地と生年は分かるはずです。しかし、なんと、(名前と唯一のヒット曲であるこの曲が記されているだけで)全く付記がない(そのような例は他にほとんどありません)。そこで、日本で以前発売されていたアメリカン・ポップス本の中の「一発屋列伝」の1957年度のリストをチェックしてみることにしました。ところが、なぜかそこにも紹介が為されていない(意図的なものではなく、この著者の単純な見落としなのでしょう)。

結局インターネットで色々と調べて、やっと1929年生まれのカナダSaskatchewan出身の女性歌手であることが分かりました。上記2人の女性歌手より10歳年長で、この57年には28歳ですね。カナダでは結構有名な歌手らしく、ユーチュブに動画もいくつか紹介されています。

「Moment To Remember」 (1950’ Canadian Hit parade #5)
https://www.youtube.com/watch?v=vK6c9vzwA2k
この曲は1955年以降、何組かのアーティストでヒットしています。僕はブライアン・ハイランド盤(Album収録)が好きです。

Joyce Hahn盤の「Gonna Find Me A Bluebird」は、いわゆる女性歌手アンサー・ソングといっても良いのだろうと思います(ただのカバーとアンサー・ソングの違いがどこにあるのか、今一つよくわかりませんが)。原曲と異なるところが一つ。曲の中間辺りに突然男性コーラスが入って「〽ジョイス・ハーツ・ブローケン」と本人の名前で(笑)状況説明があるところ。

「Gonna Find Me A Bluebird」の原曲はカントリー・ソングで、アメリカでは同年に男性歌手のMarvin Rainwater(1925~2013)盤が、総合18位、C&W 3位の大ヒットを成しています。

Marvin Rainwater 「Gonna Find Me A Bluebird」
https://www.youtube.com/watch?v=HDrCIEte_T8&list=RDHDrCIEte_T8&start_radio=1&t=34

マーヴィン・レインウオーターは、チェロキー・インディアンの血をひき、ジョン・D ラウダーミルク作品で最大のヒット(彼の作品で唯一のNo.1ヒット)「Indian Reservation」の、オリジナル・リリース歌手でもあります。

再びケイデンスとは直接関係のない話になりますが、「Indian Reservation」の4ヴァージョンを、リリース順に並べてみます(この話題を語る理由は、リンク・レイ「ランブル」のところで述べます)。

Marvin Rainwater 「Indian Reservation(Pale Faced Indian)」1959
https://www.youtube.com/watch?v=-fNLCULhNpE
John D. Loudermilk 「Indian Reservation」1966
https://www.youtube.com/watch?v=RNcwdeFKUmA
Don Fardon 「Indian Reservation」1968
https://www.youtube.com/watch?v=wWVEM1idBj0
https://www.youtube.com/watch?v=m2_bW5vV28k
Paul Revere & The Raiders 「Indian Reservation」1971
https://www.youtube.com/watch?v=21ixwIaN7qw

2度大ヒットしています。68年に、イギリスのカントリー歌手?「ドン・ファードン」(1943~)盤で、Billboard pop(countryチャートではない)で20位(イギリスで3位)。

そして、71年に、いわゆる“新時代”のロック・バンド、「ポール・リヴィア&ザ・レイダース」盤でpop No.1ヒットとなっています。

実は、この2枚の前の66年に、ラウダーミルク自身が唄っていて、更にその前の59年に、マーヴィン・レインウオーターがシングル発売しています。しかし、ともにヒットチャートには登場していません(レインウオーター盤のタイトルは「Pale Faced Indian」)。

ラウダーミルク盤には、「ふんにゃふんにゃヘ、ふんにゃふんやホ」の穏やかな掛け声が入り、レインウオーター盤にも「ハイアハイアハイ、フンニャフンニャフン」と謳われています。

しかし、ドン・ファーゴ盤では、その部分が姿を消し「Cherokee people, Cherokee tribe, so proud you lived, so proud you died,,,,」 に替わります。静かに、一度だけ謳われます。

レイダース盤になると、それが一転して叫び声となります。「チェロキー・ピープル!チェロキー・トライブ!ソオ・プライド・リ~ブ!ソオ・プライド・ダ~イ!!!」

まさに、「反抗」「カウンター・カルチャー」の叫びです。

そのことが、更なる大ヒットに結び付いたのは、明らかでしょう。

世の中が、そういった(「分かりやすい」と言って良いのでしょうか)「空気」への同調を、要求しているからです。世の中が、そういった「空気」の上で、成り立っているのです。

香港の「正義」の構造と、似ている気がします。

僕は何も、ポール・リヴィアPaul Revere (1938~2014)やマーク・リンダセイMark Lindsay(1942~:レイダースのボーカル)が「悪い」「嫌い」と言っているのではありません。例えばボビー・ヴィー(1943~2016)は彼らのことを親友と言っていて、ということは、多分ジョニー・ティロットソンとも仲が良いのでしょう。年代的には同じですが、時代的には異なります(「ティーン・ポップ」の時代をスルーして、「反抗のロック」の時代に登場したわけです)。

僕が嫌なのは、それ(後発主張への同調)が正しくて、そうじゃない(同調から外れた古い)ものは間違っている、という「空気」の形成です。

(「香港デモ」への批判の話を差し挟みますが)僕は、香港が嫌いなのではありません。「正しい」とされることに対して、有無を言わせず「同調」を求める「空気」を作り出す、メデイアや(無意識的にその扇動に応じてしまう)大衆に、我慢がならないのです。

ラウダーミルクは、確かに「抵抗」の歌として、この曲を作ったはずです。静かな「抵抗」の歌、秘めた「怒り」の歌です。

もちろん「抵抗」は、叫んで表現しても良いでしょう。でも、叫ばなければならない、という訳でもないと思います。静かなままの、秘めたままの抵抗でもいい、と僕は思います。

なお、「Indian Reservation」の歌詞には「日本」(made in Japan、、、懐かしい言葉ですね) が登場します。No.1ヒットで日本や東京が出てくる曲は、他にあったでしょうか?(リッキー・ネルソンの「トラヴェリン・マン」には、香港は出てくるけれど、日本や東京は出て来なかったと思う)。

ところで、マーヴィン・レインウオーターは、ある意味、ケイデンス(アーチ・ブレイヤー)とも関係はあるみたいですね。アーチ・ブレイヤーが、アーサー・ゴッドフリー(1903~1983)と意見が合わず(半ば喧嘩別れという形で)ジュリアス・ラローサやコーデッツを引き連れてショーを脱離したのが53年、その後、コーデッツの代わりに、マクガイア・シスターズが、ショーの中心スターになりました。レインウオーターも、略歴を見ると、55年にゴッドフリー・ショウに参加しています。ラローサの代役的存在、と言えるのかも知れません。

レインウオーターはまた、別の意味でポップス界に足跡を残しています。ポップ・ヒットとカントリー・ヒットが5曲づつあるのですが、1曲だけ組み合わせが違っていて、そのポップス側の曲「Majesty Of Love」がデュエット曲。

あの、コニー・フランシス(1938~)、50年代末から60年代にかけて56曲のBillboard hot 100チャート・ヒットを放った“ポップス黄金期の女王”の初ヒット曲が、レインウオーターとのデュエットだったのです。

MGMレコードで55年から57年にかけて9枚のシングル盤をリリースしたものの、全てノン・チャートに終わっていました。初めてのチャート・インが、58年2月 「Who’s Sorry Now」(Billboard pop 4 位)の大ヒットを放つ直前の、57年12月にリリースされた、この「Majesty of love」です。Hot 100の93位に、一週間だけ、チャート・インしています。この曲におけるレインウオーターとのディエットの(まずまずの)成功が、すぐ後の大ブレイクのきっかけとなった、と考えて良いと思います。
Marvin Rainwater & Connie Francis「Majesty Of Love」
https://www.youtube.com/watch?v=ACSh_fz9ZEM

【下】に続く。






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2019.10.31日記(下):ElvisとBeatlesの狭間で~Johnny Tillotsonの時代

2021-08-25 10:13:15 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス



A Short Story of The Cadence Record /3人の女性ポップス歌手ほか(抄) 【下】


ところで、「ケイデンス」「女性」と言えば、もちろんコーデッツですね。話が随分ケイデンスから外れてしまったので、元に戻しましょう。60年の映画「日曜はダメよ」の主題曲は、日本ではコニー・フランシス盤でヒットしましたが、アメリカでのヒット・シングルはコーデッツ盤です。 

コーデッツは、年齢的には「ポップス黄金期」の一時代前の、おばさん歌手達(全盛期は40歳前後)、と捉えられがちですが、最初のリリースでナンバー1ヒットの「ミスター・サンドマン(54年)」を除くチャートヒット13曲は56年~61年なので、「ポップス黄金期」を代表する女性ヴォーカルグループといってよいでしょう。白人女性ヴォーカルグループとしては、マクガイア・シスターズと並び、この時代(ゴールデン・ポップス初期)のNo.1かも知れません。

「ロリポップ」とか「日曜はダメよ!」とかの超有名曲をはじめとしたチャート上位ランクの曲は良く知っているつもりでいたのですが、今回、改めてチャート下位の曲やノンヒット曲を聴き直してみたら、これがもう、素晴らしいのですね。

【Cadence 1319】 The Chordettes/Echo Of Love(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=_KPJhQDvYjI 
*Joyce Hahnの「私の青い鳥」の次のリリース。

【Cadence 1425】 The Chordettes /In The Deep Blue Sea(non-hit)1962
https://www.youtube.com/watch?v=_KPJhQDvYjI 
*Johnny Tillotsonの「夢の枕を」の次のリリース(おそらく旧録音?)。

この機会に、今まで余りきちっと聴いてこなかった、アンディ・ウイリアムスの曲も、改めて聴き直してみることにしました。

これまで僕は、一時代前からのスケベな中年歌手という認識でいたのですが(その認識自体は変わらないけれど、笑)、単に甘いだけではなく、独特の渋みを帯びたの聲の、なかなか癖になる魅力を持っていることが、再確認できました。聴けば聴くほど「女たらしのオッサン」という印象は、今まで以上に強くなるのですけれど、まあ、歌が上手なら、それも良いと思います。57年の大ヒット曲の一つで、ペギー・パワーズ(*注)という女性歌手とのデュエットによる【Cadence 1323】「I Like You Kind Of Love(57年pop 8位)」なんて、もう最高です!

そのアンディのおかげで(?)ジョニー・ティロットソンは「優等生」に位置づけられています(“女たらし”という点では似たようなものなのですが、、、実態を暴いてはいけないことになっています、笑)。

ところで、アンディ・ウイリアムスと言えば「ムーン・リヴァー」、「ムーン・リヴァー」と言えばアンディ・ウイリアムス、と印象付けられているように思います。先にも記したように、ヴォーカルでのヒット・ヴァージョンは、黒人バラード歌手(元、The Impressionsのメンバー)Jerry butler(1939~)の大ヒット曲です。ヒットには至りませんでいたが、同じ頃、ケイデンスから女性歌手Jean Tomas盤もリリースされています(ジョイス・ハンのアルバムにも収録)。「Moon River=Andy Williams」の思い込みは、日本だけの現象と思っていたのですが、アメリカでの認識も同様らしく、ビルボード・チャート・ブックの、アンディ・ウイリアムスの項目にも、“アンディの歌として有名なムーン・リヴァーは、62年に録音されているが、シングル・リリースは為されていない”という訳注が、わざわざ入っています。

Andy Williams/Moon River(from an Album【Moon River and Great Movie Tame】)1962
https://www.youtube.com/watch?v=L_jgIezosVA
移籍したColombiaからのリリースで、これが彼の初トップ10チャート(3位)のアルバムとなります。

*「ケイデンス・レコード・リスト」を見たら、ケイデンスからリリースされた全てのアーティストの曲の紹介の後に、特別訳注の形で、こんな覚書が附されていました。「“アイ・ライク・ユー・カインド・オブ・ラブ”を(アンディ・ウイリアムスとのディエットで)歌っている“ペギー・パワーズ”とは誰のことか?」。かなり長くなるので結論だけ紹介しておくと、(たぶん、たまたま録音時に居合わせた?)レコード会社かスタジオの名もなき(一応本名は判明しているらしい)スタッフの一人らしいです。それがトップ10入り大ヒットとなって、60年以上経った現在でも知られているわけですから、面白いですね。

ケイデンス・レコードの代名詞と言えば、そのアンディ・ウイリアムスよりも、コーデッツよりも、何といってもエヴァリー兄弟でしょう。

最初にも記したように、56年のエルヴィスに次いで、57年から58年にかけてのエヴァリーの快進撃は、それはもう凄いものでした。

しかし、大ブレークした後、普通なら一気に総攻勢をかけて、数多くのシングル盤やアルバムを短期間の間にリリースします。

例えば、リヴァティ・レコードにおけるボビー・ヴィーは、60年から63年の4年間に11枚のアルバムをリリースしています。

アーチ・ブレイヤーの方針は、それとは違ったのだと思います。上に例を挙げたBobby Veeとほぼ同じ時期のケイデンスに於いては、例えばジョニー・ティロットソンは在籍5年間にリリースしたアルバムは3枚だけです。最後の一枚は移籍が決まってからの寄せ集めですから、実質2枚。デビューヒットから丸3年間余、トップ10ヒット2曲を含む8曲のチャートヒットがあるのにも関わらず、正規のアルバムは一枚もリリースしていません(各6曲入りの「リトル・アルバム」が2枚)。

最初のアルバムが、61年暮の「ベスト・ヒット集」、相次いで62年に、意表を突く、全曲カントリー・ナンバーのアルバム「It Keeps Right On A Hurting」(ケイデンス・レコードのレーベル全体を通じて、始めてのトップ10アルバムです)をリリース。

エヴァリー・ブラザースも、在籍中の60年までにリリースされたアルバムは4枚(移籍後の63年に再発を含む2枚追加)に留まっています。そして、58年にリリースされた2枚目のアルバムは、これも意表を突く(人気絶頂のポップ・アイドルらしからぬ)アイルランドの古い歌を集めた、(一般受けという視点からは)ある意味非常に地味な「Songs Our Daddy Taught Us」(兄弟の父親が昔、故郷のアイルランドで馴染んでいた歌、というコンセプト、62年に別タイトルで再発売)。このアルバムからは、(レーヴェル移籍後の62年に)「I’m Here To Get My Baby Out Of Jail」がシングル・カット(pop76位)されています。

もっとも、リアル・タイム(エヴァリー・ブラザースがケイデンスに在籍していた57~60年当時)には、日本においては彼らのレコードはリリースされていないはずです。今ではポップス・ファンなら知らぬ人はいないだろう、「バイ・バイ・ラブ」や「夢を見るだけ」などの超有名曲も、ごく一部の日本人の知るところだけだったと思われます。しかし現在では、後発のビートルズやビーチ・ボーイズが触発されたということで、教祖的な存在に祭り上げられているわけです。もちろんのこと(ビートルズらの出現と関わりなく)それに値するに相応しい存在であることは確かなのですが。

むろん、ジョニー・ティロットソンの初期(58年~61年)ヒット曲も、日本で(リアルタイムでは)発売される事はありませんでした。もっとも、彼の場合、全盛期と言える62年~63年には既に「日本キング・レコード」からリアルタイムで本国ヒット曲のリリースが為されていたのですが、それらは全てカントリー&ウエスタン調のバラード曲、日本でのヒットは望めません。

そのまま、「日本ではヒット曲のない“伝説のティーン・ポップス歌手”」になるところだったのですが、63年の秋になって、旧録のB面曲「キューティ・パイ」を日本独自発売したら、これが大ヒット。

以降、片っ端から、旧録のB面曲をリリースし、数か月後に現れたビートルズら「新時代の音楽」の日本における対抗馬になります。

【Cadence 1384B-side】 プリンセス・プリンセスPrincess, Princess(non-hit)1960
https://www.youtube.com/watch?v=srOVTsVKLKQ
アメリカでは「ポエトリー・イン・モーション」のB面。自作。日本では63年暮から64年初めにかけてヒット。

【Cadence 1404B-side】 キューティ・パイCutie Pie(non-hit)1961
https://www.youtube.com/watch?v=2Bb6RJzJ7p4
アメリカでは「ウイズアウト・ユー」のB面。A面共自作。1963.6.8付けのアルゼンチンのチャートでNo.1に。

【Cadence 1437B-side】Judy, Judy, Judyジュディ・ジュディ・ジュディ(non-hit)1963
https://www.youtube.com/watch?v=ibjZpPNY2z4
アメリカでは「ユー・キャン・ネヴァー・ストップ・ミー・ラヴィング・ユー」のB面。作者の一人。日本では大したヒットにならなかったが、東南アジア各国やオーストラリアなどで大ヒット。

【Cadence 1441B-side】 素敵なガールハントA Very Good Year For Girls(non-hit)1963
https://www.youtube.com/watch?v=WHSUDdvnTDA
アメリカでは「ファニー・ハウタイム・スリップス・アウエイ」のB面曲。日本では64年春にヒット。

というように、62年に「涙ながらに」で変身?する前のジョニー・ティロットソンは、典型的な「ティーン・ポップス歌手」だったのです。

一方、エヴァリー・ブラザースは、デビュー当時(57年)から、一貫してC&Wのスタイルを取っていました(とは言っても、ジョニーの「ティーン・ポップス」は「カントリー・フレヴァー」満載でしたし、エヴァリーの「カントリー」も「ティーン・ポップス」度数は限りなく高かったので、客観的には大して変わらないような気はしますが)。 したがって、仮にエヴァリー兄弟の一連の本国大ヒット曲がリアルタイムで日本で発売されていたとしても、ヒットには結びついていなかった可能性もあります。

ちなみに、エヴァリー兄弟とジョニー・ティロットソンが所属するレーベルということで、ケイデンス・レコードと言えば、「ポップ・カントリー」という印象があると思いますが、実際のところは、この2組以外には、カントリー系のアーテイストは、ごく僅かしか見当たりません。

C&W系歌手のヒット曲は、前出のジョイス・ハンの「二人の青い鳥」(57年、pop 84位)があるくらいです。

ほかに、数少ないC&W系の歌手として、ノンヒットながらケイデンスから5枚のシングル盤をリリースしている、ゴードン・テリーGordon Terry (1931~2008)がいます。
【Cadence 1317】Gordon Terry/Black mountain Rag(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=tbgysEVchnQ
【Cadence 1334】Gordon Terry/Wild Honey(non-hit)1958
https://www.youtube.com/watch?v=Hz1y95xECVs
【Cadence 1343B-side】Gordon Terry/Lost Her Somebody New(non-hit)1958
https://www.youtube.com/watch?v=JOM7EvmuulE
1316、1317は典型的な古い時代の典型的C&W音楽(ブルー・グラス?)。逆に1334、1343は現代的なカントリー・ロックで(1343はB面の自作のバラードを紹介)、エヴァリーやジョニーとも被るのですが、ちょっと時代に乗り遅れてしまったように思われます(後に、唯一のチャート・ヒットとして70年C&W 62位「The Ballad Of Johnny Cash」)があります。

女性C&W歌手が、ジョイス・ハンのほかに2人。

Martha Carson(1921~2004)という「謎?」の歌手。
【Cadence 1356】Martha Carson/Light Of Love(non-hit)1958
https://www.youtube.com/watch?v=IEppD9OYHds
Martha Carson 「Crying Holy Unto The Lord」
https://www.youtube.com/watch?v=U2ajOeFUXG8
Martha Carson 「This Ole House」
https://www.youtube.com/watch?v=Vi2MNJ9eQUo
カントリー・ゴスペル?白人女性で、60年代以降に別レーヴェルから数曲をリリースしています。デイスコグラフィーをチェックしたら、確かに56年にケイデンスからも一枚だけ(この曲を)リリースしています。しかし、全然カントリーとは関係なさそうな曲。下2枚はTV番組から。三つとも、曲を聴いたり、姿を見たりするだけでは、とても同一人物とは思えないのですが、多分同じ人なのでしょう。もっとも、ジミー・ヴェルヴェットの例(そのうち書きます、かなり悍ましい?話です、ちなみに最初に挙げたジョニーとエヴァリー兄弟の3ショットは、ジミー・ヴェルヴェットの情報を探しているときに、偶然見つけたものです)もあるので断定はできませんが。

もう一人は、正真正銘のメジャー(と言うよりも知名度の高い)歌手、C&W界の名門、The Carter Familyの一員で三姉妹の末妹のAnita Carter(ジョニー・キャッシュの奥さんJune Carterの妹:1933~)も、ケイデンスからシングル盤を一枚リリースしています。別レーベルでは、カントリー・チャートで51年に両面トップ5 に入ったHank Snowとのディエット曲があり、60年代後半以降も活躍を続けています(62年のTV番組ではジョニーの「涙ながらに」も歌っている)。
【Cadence 1333】Anita Carter/Blue Doll(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=zhVrt1RWrcM

ということで、ケイデンスにおけるC&Wが系の曲が占める割合は、印象とは違って意外に少ないのですが、ではロック(R&R)はどうでしょうか。62年前後にカントリー調ポップ・バラード、いわゆるナッシュビル・サウンドが押し寄せる前、50年代後半から60年頃にかけて(すなわちケイデンスの絶頂期)、ロックが全盛でした(エルヴィス、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス、チャック・ベリー、リトル・リチャード、ジーン・ヴィンセントetc.)。しかし結論からいうと、ケイデンスには、(いわゆる不良っぽい)ロック・アーティストもごく少ないのです。

ほぼ唯一の例外と言ってよいのはリンク・レイで、彼については後程改めて述べます。

むろん、エヴァリー兄弟もロックを唄います(見方によっては大半の曲がロックです)。でも、彼らのは「品のあるロック」、、、ロックに品があっちゃいけないのです。ジョニー・ティロットソンも、ライブにはロック系の曲にかなりの時間を割いているのですが、録音となると、典型的なロック・ナンバーはほとんど見当たりません。明らかにロックと言えそうなのは、デビュー曲(1958年)の「ウエル・アイム・ユア・マン」と、現時点でのラスト・リリースである(2010年)「ノット・イナフ」ぐらいのように思います。

「キューティ・パイ」はどうでしょうか?確かにロックと言えば典型的なロックであるようにも思うのですが、ロックに漂うべき不良っぽい雰囲気が微塵も感じれない。明るく、健全?過ぎるのです。この曲を「“ポップン・ロール”の名曲」と言った人がいます。「ポップン・ロール」、、、、言い得て妙ですね。もっと広く一般的に使えわれて良いのではないでしょうか?(リッキー・ネルソンとかフレディ・キャノンとかチャビー・チェッカーとか、C&WにもR&RにもR&Bにも何となく括りにくい対象が、「P&R」に相当するように思います)

例えば、エヴァリー兄弟の「起きろよスージー」(リアルタイムでは、、、といっても日本ではワーナー移籍後の再発でしょうが、、、「スージーちゃん起きなさい」の邦題)。何しろ凄いのは、Pop/R&B/C&Wの3チャート#1。「涙ながら」のところで何度も述べていますが、この(P/R/C)組み合わせでの3チャートのクロスオーバーヒットは、60代に入ってピタリと消え去ります。50年代には結構あったのですが、でも3チャート1位というのは、どれほど凄い事か。

この曲なども、現在は「ロックン・ロール」として扱われているのだと思われますが、やや違和感があります。また、それぞれのジャンルで1位と言っても、典型的C&WでもR&Bでもないことは確かです。「ポップン・ロール」というジャンルがあれば、一番ピッタリ来ます。

もちろん、よりロックンロール的な曲も歌っていました。60年にレーベルを移籍した後しばらくは、旧所属 ケイデンスからも、新所属のワーナー・ブラザースからも、ともにシングル盤のリリースが為されていました。

移籍したワーナー・ブラザースでは、早速2年ぶりの(通算pop4曲目の)#1ヒット「キャシーズ・クラウン」を放ちます。ほぼ同時期にケイデンスからも旧録曲の「When Will Be Loved」【Cadence 1380】が発売され、こちらもpop 8位を記録する大ヒットとなります。なにより凄いのが、その両方ともが両面ヒットとなっていることです。ちなみに、ケイデンスからリリースされたシングル盤212枚中、両面hot 100入りは11枚(エヴァリー・ブラザース6枚、ジョニー・ティロットソン3枚、コーデッツ2枚)。このうち、エヴァリーの「バード・ドック/デボテッド・トゥ・ユー」(58年)は両面とも3大ジャンル(Pop/C&W/R&B)に跨ってtop10入りするという偉業を成し遂げています。

その両シングルのB面。ワーナーが「ルシール」。ケイデンスが「ビー・ヴァップ・ルー・ラ」。前者がリトル・リチャード、後者がジーン・ヴィンセントの(黒人と白人の違いはあっても)R&Rのルーツに位置づけされる名曲(ともに自身の作)です。この2曲に関しては、典型的なR&Rと言っても良いでしょうね。

ということで、エヴァリー兄弟の位置づけは、全体を通してみればポップ・カントリー(より正確には「カントリー・ポップ」)で、「ポップン・ロール」から純粋な?ロック系にも及んでいる、という事でしょう。全盛期は57年~62年ですが、ビートルズ出現後の64年暮れには「ゴーン・ゴーン・ゴーン」(pop 31位)で、一時復活を成し遂げています(この曲はカッコいいロックです!)。

ただし日本では、同じ64年に、本国ではヒットしなかった「素敵なデイトThat's What You Do to Me」が、数少ないリアルタイムでのヒットを記録しています。
https://www.youtube.com/watch?v=dChJATPkaoA

ケイデンス在籍は60年春までですから、ビートルズらが台頭しだしたころには既にワーナーに移籍していたのですが、62年に、ケイデンスの少年歌手、エディ・ホッジスによってリリースされ大ヒット(pop 14位)した「(Girl Girl Girl)Made To Love」は、エヴァリー兄弟の未発表曲(フィル・エヴァリーの作詞作曲)です。

ちなみに、エディ・ホッジスの日本でのヒット曲は2曲あり、最初が62年春の本国ヒット曲(pop 65位)「Bandit Of My Dreams」のB面曲「コーヒーデイトMugmates(Sue Wrightという女性歌手とのデュエット)」。
https://www.youtube.com/watch?v=xazlcRuUoOA
「恋の売り込みI’m Gonna Knock On Your Door」は本国61年春(pop 12位)、日本では62年になってリリースされ、共に大ヒットしています(僕が最初に買ったレコードの一つで、数少ない最後まで歌える曲)。

ケイデンスのアーティストで、日本に於いてリアル・タイムで最初のヒット・シンガーとなったのは、ジ・エヴァリー・ブラザースでも、ジョニー・ティロットソンでも、アンディ・ウイリアムスでも、ザ・コーデッツでもなく、エディ・ホッジスということに成ります。

「コーヒー・デイト」「恋の売り込み」「ガール・ガール・ガール」どれも典型的なティーン・ポップスです。ジョニー・ティロットソンの日本でのヒット曲や、エヴァリー兄弟やコーデッツの一部の曲も「ティーン・ポップス」なので、印象的には「ケイデンス=ティーン・ポップス」との印象もあります。

しかし、カントリー系のアーティストやロック系のアーティストが意外に少ないのと同様、ティーン・ポップス系のアーティストも意外なほど少ないのです。チャートヒットは上記4組の曲だけです(ノンチャートでは、Don Carrollの「Seven Up & Ice Cream Soda」【Cadence 1405】や、エディ・ホッジスに続く2匹目の泥鰌を狙った子役歌手Barry Gordonの「You Can Lie To A Liar」【Cadence 1431】など)。

C&W系も、ロック系も、ティーン・ポップス系も、受ける印象に比べて意外に少ないわけですが、じゃあR&B系は、となると、それもごく少ないのですね。黒人アーティスト自体、チャート・ヒットを持つのは、レニー・ウエルクとドン・シェリーだけ(両者については改めて後述)。もう一人、ノンヒットながら、ケイデンスから3枚をリリースしている後の有名歌手に、Ocie Smith(O.C.Smith 1932~2001)がいます。
【Cadence 1304】 Ocie Smith/Slow Walk(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=XVcbkBA3XZ0
【Cadence 1312】 Ocie Smith/If You Don’t Love Me(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=sSHojx9s52w&spfreload=10
【Cadence 1329】 Ocie Smith/Lighthouse(non-hit)1957
https://www.youtube.com/watch?v=_Aq1K1VzNk4

ケイデンス時代にはチャート・ヒットは有りませんが、O.C. Smithの名で、60年代後期から70年代にかけて10曲以上がpop/r&b/adult各ジャンルでチャート・インしています。中でも良く知られているのが68年の「Little Green Apples」(pop 2位/r&b 2位/adult 4位)。
https://www.youtube.com/watch?v=B6UJOb4oVfU
Bobby Russellの作で、やはり同年にボビー・ゴールスボロで大ヒットした(pop/c&w/adultで1位)Russell作の「ハニー」とそっくりな曲調。スミス自身はR&B歌手なのですが、何故か68年グラミー賞の「Country Song of the Year」に選ばれています。同じ68年に、カントリー歌手のロジャー・ミラー(1936~1992)や、パティ・ペイジ(1927~2013)でもヒットしている(前者はPop39位/C&W 6位/Adult 5位、後者はPop96位/adult 12位)ので、その関係で代表してO.C.Smith盤が受賞したのではないかと思われます。

それにしてもアーチ・ブレイヤーは(57年に3枚リリースのO.C.Smithはともかく)、レニー・ウエルクに関しては、60年初頭に初ヒット(「You Don’t Know Me」Pop45位/R&B28位)を放ってから、レーベル解散後の64年初頭に「Since I Fall For You(Pop 4位/Adult 3位)」の大ヒットを放つまで、丸4年間に亘り7枚のノンヒット・シングルをリリースし続けたわけで、その我慢強さは(アーチ・ブレイヤー/レニー・ウエルク共々)素晴らしいと思います(数少ない所属黒人歌手だからこそ寵愛したのかも知れません)。

レーベル解散後にチャートインした3曲を合わせケイデンスから4曲、その後にも5曲のチャート・ヒットを持っていますが、レニー・ウエルクでネットを検索すると、それらのチャート・ヒット曲よりも、62年のノン・ヒット曲「A Taste Of Honey蜜の味」ばかりが検索に引っかかります。素晴らしい曲なので、それはそれで嬉しいことなのですが、その由来を思うと、なんか納得が出来ません。

この曲は、もともとインストルメンタル用に作られた由(後にハーブ・アルバート楽団で大ヒット)、当時ボーカル歌唱はレニー・ウエルク盤しかなかったようです。それが(まだアメリカに上陸前の)ザ・ビートルズのポール・マッカトニーの耳に留まり、彼らの米初アルバムにチョイスされました(ジョン・レノンは反対した由)。その際ポールは、レニーの歌唱を基に、忠実に歌った故、後にそのことが広く知られるようになったのです。現在、一般的な意味では、レニー・ウエルクの評価は、彼自身の実績よりも「ポール・マッカトニーがお手本にした」という一点に集約されてしまっているきらいがあります。とても残念でもあります。

【Cadence 1416】It’s Just Not That Easy(non-hit)
https://www.youtube.com/watch?v=Xxa4SyynPIc
↑レニー自身の作詞作曲です。

【Cadence 1428】A Taste Of Honey蜜の味(non-hit)
https://www.youtube.com/watch?v=4glzb5lVnzA

後の「空気」による評価、という事では、もう一人のケイデンス所属黒人アーティストDon Shirleyについても言えそうです。彼のバイオグラフィーを調べようと、ネットであちこち探していたのですが、詳しい情報はなかなか得れないでいました。それが一年ほど前のある時点で、一気に(溢れかえるごとく)ネットに上がってきた。彼を主人公にした映画が、アカデミー賞を受賞したのだそうな。今まで一般的な知名度が無かったのが、一気に知られるところになったわけです。

レニー・ウエルクにしろ、ドン・シェリーにしろ、「空気」だけで、大衆の評価や認知度が決まってしまう。なんかムカつきます。

*Lenny Welch、Don Shirleyの日本語表記は、現在はそれぞれ「レニー・ウエルチ」「ドン・シャーリー」とされていますが、僕はリアルタイムでは「レニー・ウエルク」「ドン・シェリー」と発音してきたため、間違いを承知の上で(腹が立つため、笑)従来の通りの表記をしておきます。

それはともかく、僕だけでなく、多分多くの人(アメリカン・ポップス愛好家)が感じているだろう「ケイデンス・レコード」のイメージは、ティーン・ポップだったりポップ・カントリーだったりするのですが、そのジャンルのアーティストは、意外に限られている。といって、ロックやR&Bという訳でもない。

じゃあ、ケイデンスの特徴は何か、と言えば、、、、最も比重が置かれているジャンルを敢えて探すならば、ポップス黄金期とは全く関係な、モダン・ジャズであるような気がします(アーチ・ブレイヤーは「ケイデンス」とは別に「キャンディックス」という、ほぼジャズ専門のレーベルも持っていた)。

ドン・シェリー(エヴァリー兄弟やアンディ・ウイリアムスらの大スターでさえケイデンスからは余り多くのアルバムをリリースしていないのにも関わらず、20枚近いアルバムをリリースしている)は、どちらかと言えばジャズの分野の人ですね。でも、ポップスとの親和性も非常にあるように思います。61年のヒット曲(pop 40位、adurt 10位)「ウオーター・ボーイ」は、囚人(たぶん死刑囚)のワーク・ソングだそうです。そう想ってこの曲を聴くと、心に染み入るものがあります。むろん後付けでしょうが、ユーチュブに紹介されている映像も秀逸です。一枚一枚の画像が、やはり心に染み入ります。

改めて、紹介しておきます。
【Cadence1392】 Don Shirley Trio/Water Boy(7-61, #40 pop, #10 AC)
https://www.youtube.com/watch?v=YR9d1l6oOxI

結局のところ、ケイデンスレコードの特徴は、突出した特徴がないことが特徴、もう少しポジティブに言うならば、いろんなジャンルがごちゃまぜ、という事なのかも知れません。あくまで僕が感じた雰囲気的なものですが、「売るため」にレコードを出しているというより、楽しんで、皆で遊んでいる、といった雰囲気。何気に、Johnny Ray【Cadence 1387】「Let’s Forget It Now」(non-hit)とか、Liza Minnelli【Cadence 1436】「You Are For Living」(non-hit)とか、良く知られた名前があったり、いろんなジャンルがごちゃまぜで、結果としてポップス黄金期を象徴するようなレーベルになっているわけです。

ジョニー・ティロットソンの「ポエトリー・イン・モーション」において、ブーツ・ランドルフのサックスが重要な役割を占めているのと同じく、アルバム「涙ながらに」収録の数曲も、チャーリー・マッコイのハーモニカが彩を添えています(ちなみにチャーリー・マッコイはCadenceから、pop 99位のチャート・ヒットを含む2枚のシングルをリリースしていて、それらはハーモニカでなく自身の歌唱です)。

また、御大アーチ・ブレイヤーの「Harnando’s Hideaway」も、カスタネット(演奏者:Maria Albaの名もクレジットされている)が主役ですし、他にも、様々なアーティストの曲に、ピストル音とか、手拍子とか、口笛とか、指パッチンとか、頬っぺたポンとか、様々な効果音が取り入れられていて、遊び心が感じられます。

アーティストの国籍も多岐に亘ります。例えば、Yiddish(旧ソビエト連邦の西部)の姉妹ディオ、Barry Sisters[Minnie Bagelman 1923~1976)/Clara Bagelman1920~2014]は、54年から57年にかけて、ノンヒットながら、5枚のシングル(Reckless And Romantic【Cadence 1248】-The Door Is Open【Cadence 1326】)をケイデンスからリリースしています。

無国籍といえば、Archie Bleyerの「Mustafa」なども、その典型で、幾つかの国の言語が、ごちゃまぜで歌われているようです(坂本九/パラダイス・キングの初ヒットとなった「悲しき60歳」は、このバージョンを参考にしていると思われます)。
【Cadence 1383】(non-hit、60年Johnny Tillotson「Poetry In Motion」の一つ前のリリース)
https://www.youtube.com/watch?v=qrPmHAv6ci8

というわけで、出来れば様々なアーティストの「何でもあり」ごちゃまぜノンヒット曲を紹介していきたいところですが、それらの音源を遂一探していれば、何時になったら本項を書き終えられるか目途が付きません。で、一曲だけ、僕のお気に入りを紹介しておきます。

【Cadence 1375B-side】Commander Shea School Boy Choir/White Christmas(non-hit)1960
https://www.youtube.com/watch?v=JQ9TGPVK9O0

Archie Bleyer名義の曲は、見方によっては支離滅裂ですね。本人?歌唱曲があると思えば、シレっと、イージー・リスニング楽団、といった風に、ごちゃまぜ感満載です。
【Cadence 1320】Archie Bleyer/Amber(non-hit)1954
https://www.youtube.com/watch?v=YAECqe4MVcU 
【Cadence 1426】Archie Bleyer/Moonlight Serenade(non-hit)1962
https://www.youtube.com/watch?v=N4_COjpT-rE

アーチ・ブレイアーは、自信名義の曲だけでなく、大半の曲を自ら企画・構成し、バックのオーケストラ演奏を受け持っています。ジャズであろうがロックであろうがカントリーであろうがR&Bであろうが子供の唄であろうが、お構いなしです。なおかつ、50歳越えようとする御大自身が、若いアーティストに混じって次々とリリースしているわけです。

スタート時自体が(それまで司会を努めてきたTV局と喧嘩別れして?)20歳以上年下のジュリアスを引き連れての独立ですし、同時にそのTV番組の看板女性ヴォーカル・グループ(コーデッツ)を引き抜いて、リーダーを奥さんにしてしまった。のみならず、彼女が前夫との間に授けた娘さんを、自社の看板アーティストのエヴァリー兄弟(フィル)の奥さんにして、、、と、家族経営でなるアーチ・ブレイヤーの個人商店の面目躍如というところです。

良いものは(古い/新しいに関わらず、ジャンル・人種・性別等々に関わらず)何でも取り入れる柔軟な姿勢、、、でも(良きにつけ悪しきにつけ)リミットはあったのです。いかに柔軟と言えども、ブレイアーは50歳台半ばの大人です。急激な時代の流れには、最後(63-64年)にはついていけなかった。

前に、寄り道してJohn D.Loudermilkの「Indian Reservation」の話題を述べました。それと直結する、「空気」の“流れ”についての話です。

リンク・レイ(1929~2005)のトップ20(pop16位)ヒットにして、唯一ケイデンスからリリースされた「Rumble」を、もう一度紹介しておきましょう。それと共に、ケイデンスからレーベルを移籍して一年も経たぬ間に、同じ曲を全く異なる構成(曲名も変えて)で再び大ヒットさせた「Raw High」も。
【Cadence 1347】Link Wray/Rumble(4-58, #16 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=BuAD_sQUgpw
Link Wray 「Raw High」(1-59, #23 pop)
https://www.youtube.com/watch?v=Fn5hl2IA7_s [59年「Raw High」の曲名で別レーベルから発売(pop23位)]

「ランブル」の大ヒット放ちながら、ケイデンスからはそれ一枚しかリリースされませんでした。その理由は、アーチ・ブレイヤーの怒りを買ったから、と言われています。ブレイヤーは元々この曲のリリースには乗り気じゃなかったようです(娘さんがファンだったので渋々リリースした、という話もあります)。

(おそらく曲と共に紹介された)この「ランブル」の映像を見ても分かるように、あるいはディック・クラークのアメリカン・バンドスタンドでリニューアル紹介された「ローハイ」のライブを見ても分かるように、「不道徳」的極まりない曲です。アーチ・ブレイヤーにとっての、“健全なロック”とは、エヴァリー・ブラザースが唄うような曲(例えば「バード・ドッグ」とか「起きろよスージー」とか)であって、のち(60年代中期)にポップス界の主流となるブリティッシュ・ビートやフォーク・ロックやソウル・ミュージックなどの「反抗的」音楽は、邪道と考えていたのだと思います。

後に評価は逆転します。不良っぽい音楽こそロックなのだ、と。いわゆる「カウンター・カルチャー」とかいうやつです。リンク・レイは、ジミー・ヘンドリックスとかジミー・ペイジ(僕は彼らについては良く知らないのですが)とかいった、新時代の旗手たちから「教祖」的な存在に祭り上げられます。そして、アーチ・ブレイヤーの目指した「楽しい音楽」は、「つまらない取るに足らない存在」「お子様の文化」として、やがて忘れ去られてしまうのです。

単にケイデンスの問題(リンク・レイに対するアーチ・ブレイヤーの想い)、あるいは音楽全体の問題のみならず、世界の若者の価値観や文化的志向が一変してしまったわけです。

それはそれで、否定も肯定も出来ないでしょう。ただ確かなことは、「新しい文化」を受け入れることで、「古い文化」が否定されるようになってはいけない、という事です。

*書き終えているのはここまで。以下、書きかけの草稿が延々と続きます。その記述を整えていたら、それこそいつに成ったら完結するのか、わかったものじゃありません。(僕は彼らについては良く知らないのですが)おいうことで、書き終えている分を、全く手を加えずにアップしておくことにしました。

最後に、以前、あや子版の「狭間の世代24人衆+1組」の“補遺”として紹介した、レニー・ウエルクのインタビューの中から、彼の語ったアーチ・ブレイヤーの話を再録しておきます。

大好き! 素敵な、素敵な、素敵な男。彼は商売を知っている。私が彼に出会ったとき、彼は50歳代か60歳代だった。彼はオフィスに来る前にジムに通っていた(He used to go to the gym before he would come to the office)。彼はケイデンスレコードの社長で、アレンジャーであり、プロデューサーでもあった。彼は彼自身も含め、全てを取り仕切った。僕の場合、まるで子供のようだった。僕がまだ大きな旅をしたことが無かったときに、彼は僕を旅に連れ出してくれた。彼は(TVの)アーサー・ゴッドフリー・ショー(The Arthur Godfrey Show)のミュージカル・コンダクターだった。そのショーが終わり、彼がそこから去ったあと、自らのレコード会社“ケイデンス”を立ち上げた。彼は、コーデッツのメンバーの一人と結婚した。そして共に作成した“Mr. サンドマン"は、彼のレーベルでの大ヒットとなった。そして、ジュリアス・ラ・ローサとアンディ・ウイリアムスを配下に擁した。数多くのアンディの大ヒット曲は、彼と共に成された。そしてまた、エバリー・ブラザースを発掘した。彼らの大ヒット曲群もまた、彼と共に作成された。彼の元を去ってから後は、彼と共に成されたときのような、真の意味での大ヒット曲は持ち得ていない。彼はまた、ジョニー・ティロットソンを擁した。ジョニーと僕は、今素敵な友達だ。ジョニーもアーチ・ブレイヤーのことを、僕と同じように“世界一の男”と思っているだろう(Johnny thinks the world of Archie Bleyer and so do I)。



Johnny Tillotso , Fill Everly and Don Everly 1960年頃/Johnny Tillotson with Archie Bleyer 1962年/  Johnny Tillotson with Lenny Welch 2000 ‘s(右2枚はJohnny Tillotsonの旧Home pageより引用)



Cadenceレコード1962年度、CLP-3052からCLP-3059のラインアップ。僕にとっては、、、、奇跡の宝物、としか言いようがありません。

ジョニーと、僕の神さまである、ドイツのベルト・ケンプフェルトは、もちろん(音楽の性格やジャンルとかが全く異なるので)何の接点もないのだけれど、実はジョニーの初アルバムの「Johnny Tillotson’s Best」【CLP-3052】の次の【CLP-3053】が、ドイツの複数のアーティストをベルト・ケンプフェルトが紹介したアルバムなんですね(このアルバムに収録されたアーティストの曲は、今のところユーチュブで見つかりませんが、いつか是非聞いてみたいもの、と思っています)。

【CLP-3054】がアンディ・ウイリアムスのケイデンスに於ける最高傑作「Andy Williams’s Best」。【CLP-3056】がコーデッツの最後の大ヒット曲「日曜はダメよ」をフィチャーしたアルバムで、「さらば故郷」「ハイ・リ・リ・ハイ・ロー」「ケ・セラ・セラ」「トゥルー・ラブ」「」「夏の日の恋」と、選曲が、もう、、、。それを挟んだ【CLP-3055】【CLP-3057】に、ケイデンスの「アルバム・スター」ドン・シェリーの作品、前者は彼がプロデュースしたマーサ・フォロワースの唄、後者は彼自身のピアノによるヒット曲集。

【CLP-3058】がジョニー・ティロットソンの最高傑作であるポップ・カントリー・バラード集「涙ながらに」(ジョニーは、まあ言えば、下手くそなティーン・アイドルに過ぎないわけですけれど、このアルバムだけは、ファンとして自信を持って皆に勧められる素晴らしい作品です)。

そして【CLP-3059】が、2年前に別レーベルに移籍したエヴァリー・ブラザースの、(これも最高傑作と言ってよい)ケイデンスから2枚目にリリースされたアイルランド民謡集の(タイトルと曲順を変えた)再発売盤。、、、、これらのアルバムの並びを眺めているだけで、楽しい気分になってくるのです。








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B.J.Thomas追悼

2021-06-01 20:41:52 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス


★5月31日の記事に、いいね!、応援、その他ありがとうございます。


“追悼”記事を入れようかどうか、迷ったのです。
迷った理由はただ一つ。
彼の大ヒット曲の一つである、バート・バカラック・ソングの「雨に濡れてもRaindrops Keep Falling On My Head」の、(少なくても日本に於ける)余りに突出した知名度の高さ。どの追悼記事も「雨に濡れても」で知られる、、、、です。なら僕はやめておこうと。

でも、昨夜寝る前に、B.J.トーマスの曲を幾つか聞いて、やっぱり追悼しておかなきゃ、と思った次第です。

ビルボード・ホット100に26曲、トップ10に5曲、ナンバー・ワン2曲。70年代以降も活躍し、カントリーで3曲、アダルトで4曲のナンバー1ヒットも持ちます。なぜに「雨に濡れても」だけが特別視されるのか、どうにも解せないのです。

ちなみに1977年には、ビーチ・ボーイズのあの不朽の名曲「ドント・ウオーリー・ベイビー」をホット100の17位(アダルト2位)に送り込んでいます。1964年、本家ビーチ・ボーイズ盤が24位。1996年にカントリーで73位(Lerrie Morganのボーカルをフィチャー)。ちなみにBeach Boys with Everly Brothers盤もシングル発売されているけれど、チャートインしてません。

B.J.Thomasは、1942年生まれ。年齢的には、ポップス黄金期の多くの歌手と被ります(ビーチ・ボーイズのブライアン・ウイルソンやアル・ジャーディンも同年)。しかし、活躍年代は、見事に入れ替わります。

ジョニー・ティロットソンで言えば、ホット100チャート曲数は同じ26曲ですが、ジョニーが1958年から1965年12月にかけてなのに対し、B.J.の最初のランクインは1966年2月。

ジョニーを含む、50年代末から60年代前半(ビートルズ出現以前)に活躍した“ポップス黄金期”のアイドル歌手たちと、60年代後半(ビートルズ出現以降)に活躍した、B.J.トーマスやニール・ダイアモンドやグレン・キャンベルやトム・ジョーンズやエンゲルベルト・フンパーディング、、、らは、年齢的に同世代(1930年代後半~40年代前半)と言うだけでなく、デビュー自体の時期は、さして変わりません(1960年前後)。しかし、後発の人たちは、“黄金期”に表に現れなかったことが、かえって幸いして(“アイドル”の色がつかなかった)、より長く活躍することが出来たのです(むろん実力もあった)。

下済み時代を経ての初ヒットが、ビルボード・ホット100第8位の、ハンク・ウイリアムス・ナンバー「泣きたいほどの淋しさだI’m So Lonesome I Could Cry」。

B.J.とジョニーは、(格から言えば比べ物にならないほどB.J.のほうが上ですが)被る部分が多くあります。「泣きたいほどの淋しさだ」の最初のチャート・ヒットはジョニー盤で、1962年、ホット100に一週間だけ89位(ハンク本人盤は1966年にシングル・カットされて、C&W43位)。そのA面が、やはりハンク・ウイリアムス・ソングの「どうにも出来ないI Can’t Help It If I’m Still In Love With You」(ホット100の24位、アダルト8位)。

その「どうにも出来ない」の、B.J.盤は、彼が「泣きたい~」でブレイクする前の1965年のリリースで、1967に再リリースされ、ホット100にやはり一週間だけ94位にランクされています(カントリー・チャートでは、 ハンク自身が1951年、リンダ・ロンシュタッドが1975年に、共に2位を記録)。

B.J.トーマスは、ジョニー・ティロットソンより遥かに大物ですが、縁はあるのです。

ちなみに、“B.J.”の名の由来は、最初は本名のBilly Joe Thomasにしようと思っていたのだけれど、「泣きたい~」でブレイクする直前に、よく似た名前のBilly Joe Royalがブレイクしたので、紛らわしいと思って“B.J.”としたとのこと。




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Johnny Tillotsonの時代~Hank Locklin VS Elvis

2021-04-30 14:38:40 | コロナ、差別問題と民主化運動、アメリカンポップス


★4月29日の記事に、応援ありがとうございます。

 ブログ用に作成したまま未発表になっている「大作」に、『「夢の枕を」「涙ながらに」怒涛の50連発』というのがあります。ジョニー・ティロットソンの自作で、1962年夏に本人の歌でヒットした「涙ながらに」と、C&Wの大御所ハンク・ロックリンの作品で、同じく1962年秋にジョニー盤でヒットした「夢の枕を」。
 
それぞれ(両人を含め)100人以上のアーティストがカバーしているので、その一部をユーチュブからピックアップして、それぞれの歌手の紹介や感想を加えながら解説して行こうという試みです。99%(100%と言っても良い)完成しているのですが、なんだかんだでアップを躊躇しています。うだうだしているうちに新しいバージョンを発見したりして、アップのタイミングを逃していくのです。
 
両曲とも、ポップ・テューンであるとともに、典型的なC&Wバラードでもあるのですね。と言うよりも、現在では古典となっています。「19世紀の作品」と紹介されていることも有ります。
 
あと、「涙ながらに」の作者がハンク、「夢の枕を」の作者がジョニー、と取り違えられていることも度々ある。ちなみに、ハンクはジョニーよりも21歳年長、先生格です。
 
昨日、ハンク・ロックリン盤の両曲を再チェックしようとしたら、非常に興味深いのを見つけました。4月26日にアップされたばかりの新しいユーチュブです。
 
「ブラック・エルヴィス」さんという、若い黒人のラッパー?(DJ?)の方による、「Hank Locklin Vs Elvis Presley "It's Keeps Right On a Hurtin"

 「涙ながらに」のカバー・バージョンとして、圧倒的に有名なのが、エルヴィス盤です。1969年、エルヴィスが本格的にカムバックしたとされるアルバム「メンフィス・フローム・エルヴィス」の収録曲。ユーチュブに紹介されているアマチュアのカバー盤も、「エルヴィスのカバーのカバー」というのが数多く見られます。
 
ハンク・ロックリンは、典型的なC&Wシンガーですから、ジョニー盤を忠実にカバーしていますね(自分の「夢の枕」をヒットさせてくれた“お礼”みたいな気持ちもあるのでしょう)。でも、「涙ながらに」のカバー全体で見れば、ハンクのような“素直な”再現は少数派です。この曲のカバーの特殊な所は、同世代歌手のカバーが少なく、ベテラン大御所歌手によるカバーが多いということ。そして、それらのカバーが、それぞれ独自のスタイルを強調している。素直に歌うと詰まんないのかも知れない(あるいは歌うのが難しい?)この曲の魅力を、どうやって表すか、実力派歌手の力の見せ所、と言うわけでしょう。
 
エルヴィス盤(ただし数少ない同世代でジョニーとは3つしか違わない)は、その典型とも言えます。感情を抑えたジョニー盤やハンク盤とは対照的に、感情を爆発させています。
 
因みに、ジョニー本人盤の「涙ながらに」は、1960年代を通して3曲しか存在しない、ビルボード誌の「ポップス」「C&W」「R&B」の3ジャンルでトップ10に入った曲です。ポップ・ヒットではあるのですが、現在ではカントリー・クラシックとなっていて、カバーしているのも、大半がC&W系の歌手たちです。現時点では、黒人(R&B系)歌手によるカバーは見つけていません。
 
なので、このユーチュブの紹介が、若い黒人男性、ということも興味深いです(タバコ?吸ってコーヒー?飲みながら楽しそうに紹介しています)。もちろん、エルヴィス“上げ”なのですが、特にハンクの方を蔑視しているわけでもなさそうです。「同じ歌を唄ってもエルヴィス以外の(昔の)歌手はまるで単純で詰まんないね、やっぱりエルヴィス凄い!」と素直に言ってるだけのようで。たぶん、(人種性別を問わず)今の若者にとっては、ハンク・ロックリンらに代表される「昔の時代の単純な歌唱」というのは、存在する事自体が不思議なのかも知れません。
 
まだ3日ほどしかたってないけれど、コメントが100近く来ています(多くは白人のおばあちゃんたち?)。大抵は同じ意見で「圧倒的にエルヴィスの方が素敵、もう一人の人の歌は、全然感情籠ってないじゃない」というところです。「両方共良いよ」という意見もチラホラ。「ハンク・ロックリンさんは昔のC&W専門の歌手なので、エルヴィスとは守備範囲が全く違うのです」と諭す意見もありました。60年前というのは、現代人にとっては、「大昔」なんでしょうね。





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