青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第51回)

2011-06-28 21:38:27 | 野生アジサイ


BⅠ③オオアジサイ亜群(→アジサイ属アジサイ節タマアジサイ亜節Subsect.Asperae)

中国の野生アジサイを代表する「アスぺラ」の仲間/オオアジサイ

中国の代表的な野生アジサイは、アスぺラ(通常、種名から「アスぺラ」と呼び習わされているが、筆者は「オオアジサイ」の名を提唱したいと考えている)。中国大陸の東部から西南部~西北部にかけての広範囲に分布し、ヒマラヤ地方・インドシナ半島北部・台湾に至る。真のアジサイに近縁なガクウツギの一群(「カラコンテリギ」「ユンナンアジサイ」)が産しない長江の北側を含む地域にも分布、同じ地域でも標高や環境ごとに多くの種に分化しているようである。

鮮やかな色彩といい、密に装飾花を纏った大きな花序といい、まさに中国の「ガクアジサイ」「ヤマアジサイ」を思わせるが、果実などの形状が大きく異なり、血縁的には、かなり遠縁の一群で、広義にはタマアジサイのグループに所属する。しかし、小花序の基部ごとに、先の尖った三角型の苞葉が多数取り巻くなどの固有の特徴をもち、開花前の花序全体を大きな苞で丸ごと球状に包むタマアジサイとは明瞭に異なることから、著者は別亜群として扱うことにした。子房は下位で上面が平坦な杯状。花柱は基部から大きく2(-3)分岐。種子は両端が括れ翼状に広がる。花弁は平開し早落(稀に帽子状に脱落)。花序基部には、しばしば葉柄を欠く一対の葉を備える(苞葉の宿存?)。葉は表裏とも密に毛に覆われ、葉縁の細鋸歯は2重鋸歯となることが多い。多数の種に細分されるが、1~数種に統合する見解もある。開花期は7~8月。台湾産のタイワンオオアジサイは同時期に咲くナガバノタマアジサイより高所(合歓山東面では標高1700~2600m付近)に見られる。





中国では最も普遍的な野生アジサイだが、なぜか日本には分布していない(四国や九州の山地に稀産するヤハズアジサイが、このグループの一員かも知れない)。台湾には、タマアジサイ亜群の「ナガバノタマアジサイ」と、オオアジサイ(アスペラ)亜群の「タイワンオオアジサイ」が同じ山に見られ、開花期も同じだが、生育する標高が明らかに異なる(合歓山の中腹では、前者が標高800~1500m付近、後者が標高1700~2600m付近、ただし下に写真を紹介した南部山地では、標高1000m余の地点に後者が見られ、必ずしも標高が生育地を決定する要因とはなっていないようにも思われる)。

開花盛期は、カラコンテリギやユンナンアジサイが、日本のガクウツギやヤクシマコンテリギやトカラアジサイ同様、初夏(4月下旬から5月にかけて)なのに対し、夏のさ中から後半(7月下旬から8月)となる。その季節に咲く中国の野生アジサイ(ジョウザンの開花盛期はもう少し早い6~7月)の主役は、標高2500m付近を境に、それより上部ではノリウツギ群のミヤマアジサイH.heteromalla、下部ではオオアジサイ(アスぺラ)のグループと言うことになると思う。




写真上:四川省西嶺雪山2009.8.6。左:四川省ミニャコンカ2009.7.4。右:四川省二朗山2009.7.27。いずれも標高1800m前後の地点。




アスペラ類の若い花序。小花序の蕾の回りを、先の尖った多数の苞葉が取り囲んでいる。苞葉は開花盛期には脱落する。
上:四川省宝興県(標高約1200m)2010.8.5、下左:四川省青城山(標高約900m)2003.8.1、下右:台湾合歓山(標高約2300m)2005.8.20。




子房は下位で、外面への顕著な盛り上がりは見られない。下列中左のタイワンオオアジサイ(台湾合歓山2005.8.5)において、その特徴がよく表れているが、上と下列中右のマルバオオアジサイ(四川省西嶺雪山2009.8.6)では、幾分タマアジサイのように子房本体の背縁が盛り上がり気味である。下列左はタイワンオオアジサイの正常花花弁(開きかけ)。下列右はホソバオオアジサイ(四川省西嶺雪山2009.8.6)の正常花と子房。

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アスペラの一群は、中国の多くの地域で、複数の種が標高や環境ごとに混在しているようである。著者は各種の区別点について正確な知識を持ち合わせていず、本書では全てを一括し、アスペラ(オオアジサイ)Hydrangea aspera COMPLEXとして扱っておく(特定できる場合に限り、ホソバオオアジサイ、マルバオオアジサイ、タイワンオオアジサイの名を記した)。さらに中国大陸の多くの地域では、垂直分布の上部付近(おおむね標高2500m以上)で、ノリウツギ群の白花種・ミヤマアジサイHydrangea heteromallaの一群に置き換わるが、花の構造などがアスペラに似ているため、意外に区別が難しい。
それらのことを踏まえ、四川省成都西方山地(西嶺雪山~二朗山、標高1200m~2900m付近)での状況を以下に紹介しておく。




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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第50回)

2011-06-27 14:36:13 | 野生アジサイ




Bタマアジサイ上群

タマアジサイ群・ツルアジサイ群・テリハタマアジサイ群・バイカアマチャ群の4群を「上群」に纏めた。この4グループの単系統性の証明については保留しておく。ノリウツギ上群~コアジサイ上群と対応するが、ノリウツギのグループをこの一群に含める見解もある。日本では少数派だが、熱帯アジアおよび新大陸産のアジサイ族の大多数の種は、この上群か次のノリウツギ上群に含まれる。

BⅠタマアジサイ群
花序または小花序の基部に、早落性の苞を持つ。子房は半下位~下位、雌蕊の柱頭は基部から明瞭に分離して左右に大きく開く。正常化の花弁は早落性。装飾花や正常花が鮮やかな色彩を持つ種が多い。

BⅠ①タマアジサイ亜群(→アジサイ属アジサイ節タマアジサイ亜節Subsect.Asperae)

花序の蕾全体が大きな球状の苞で覆われた鮮やかな花色/タマアジサイ

東京周辺の低地や山地ではヤマアジサイ以上に普通に見かけるのがタマアジサイ。おおむね白花のヤマアジサイと異なり、鮮やかな紫色を帯びているため、むしろこちらの方が、“アジサイ”的な印象を醸し出している。しかし類縁的に真のアジサイ類(コアジサイ群)とごく遠い間柄にあることは、開花前の花序が大型の苞で球状にすっぽりと覆われてしまうことからも、察しがつく。

ヤハズアジサイやオオアジサイ(アスペラ)類と共にタマアジサイ節を形成。子房は下位、基半部は丸みを帯び、背縁はやや盛り上がる程度。花柱は基部から2分岐し(変種トカラタマアジサイは3~4分岐)、強く外側に湾曲する。花柱の基部が膨張してその間に深い溝を生じ、子房本体が2分しているような印象をうける。雄蕊は通常10本。種子は両端が翼状に伸長。花弁は開花後早落、稀に先端が接着したまま帽子状に脱げ落ちることもある。花序の展開後、苞は脱落。花序軸は太く白く軟らか。花序の基部には葉を生じない。葉は極めて大型で、ざらざらとした質感を持ち、葉縁に細鋸歯が整然と並ぶ。




  タマアジサイ亜群の分布図                       ナガバノタマアジサイ 台湾合歓山

本州中部にタマアジサイ、伊豆七島にラセイタタマアジサイ、トカラ火山列島(三島列島黒島・トカラ列島口之島)にトカラタマアジサイ(後で述べる真のアジサイ類に近縁のトカラアジサイとは別種)の、3変種が隔離分布するほか、台湾の山地帯(合歓山東面では標高700~1200m付近で確認撮影)に、葉が細長くてより分厚いナガバノタマアジサイが分布する。中国大陸長江中流域(湖北省西部)産のH.sargentianaも近縁と考えられるが、詳細は不明。

タマアジサイ、ナガバノタマアジサイとも開花盛期は8月中~下旬。




ナガバノタマアジサイ。断崖絶壁とも言えそうな急斜面の山腹に、樹高5m以上ある大きな株が散在する。合歓山東面中腹。2005.8.20









合歓山東面では“アスペラ”の仲間のタイワンオオアジサイH.kawakamiiと同時期に咲くが、生育地は明らかに異なり、本種は標高1000m前後、タイワンオオアジサイは標高2000m前後かそれ以上の地に見られる。蕾の花序を包み込んでいた基部の苞葉は開花後に脱落、花序柄(正確には花序柄は存在せず、枝の最上部に相当?)は淡色で柔らかい。子房は花柱の基部が膨れて盛り上がり、左右に分離したような印象を受ける。2005.8.20(前頁上2枚のみ2002.9.6)



タマアジサイ。装飾花や正常花が紫色を帯び、(関東地方などでは)白花の多いヤマアジサイより、むしろ栽培アジサイの野生種の様な趣を持つ。しかし、血縁は大きく離れている。(左)山梨県甲武信岳山麓02.7.30。(左)群馬県榛名山85.7.14



BⅠ②ヤハズアジサイ亜群(→アジサイ属アジサイ節タマアジサイ亜節Subsect.Asperae)

特徴的な葉を持った、西日本の稀産種/ヤハズアジサイ

(略)

■BⅠ②1ヤハズアジサイH.sikokiana
本州(東海地方・紀伊半島)、四国、九州





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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第49回)

2011-06-26 15:33:23 | 野生アジサイ



なっちゃん個人講義&リアルタイム報告用に作った「野生アジサイ探索紀行」の紹介は昨日で終わりました。ちょうどこの連載の間、来年度に単行本として出版するべく、「日本および近隣地域(中国大陸・台湾)の野生アジサイ」の原稿を書き進めていて、たった今、それを書き終えたところなのです。全4章仕立てで、書き終えたのはそのうちの2~4章204頁分、第一章を併せれば計250頁程になると思います。第一章の「アジサイとは何か?」については、今回の「野生アジサイ探索紀行」をはじめ、以前「ネイチャークラブ」や「あやこ版」に連載した「日本および近隣地域(中国大陸・台湾)の野生アジサイ」の、それぞれ主に前半部分を、そのまま転用することになると思います。もちろん、2~4章の“本体”に当たる部分も、以前に発表した草稿を下敷きにしているのですが、新たな写真を加えたりして、大幅に加筆してあります。「野生アジサイ探索紀行」の連載終了というちょうど良いタイミングですから、この機会に、そのうちの一部(途中で差しこんだ「中国大陸のカラコンテリギ」もそれに相当します)を、紹介しておきたいと思います。再度取り上げるのは、タマアジサイ群(主にオオアジサイ=アスペラ亜群)、ノリウツギ群(主にミヤマアジサイ=ヘテロマッラ亜群)、およびコアジサイ群のジョウザン亜群とガクウツギ亜群(のうちのユンナンアジサイ)を予定しています。「野生アジサイ探索紀行」ほかですでに紹介済みの内容(写真・文章)と重複すること、文体が「だ・である」体のままな事を、ご了承ください。

まずは、目次から。第一章は飛ばして、第2~4章のみとしますが、その前に「はじめに」を記しておきます。以前、「あやこ版」(または「ネイチャークラブ」)で紹介したのと同じ内容です。


日本および近隣地域(中国大陸・台湾)の野生アジサイ」

(はじめに)

日本とその近隣地域に見られる、「野生」の「アジサイ」の、「種」と「分類」について、考察していきます。しかし、これまでに出版されている、アジサイについて述べられた各書物とは、「野生」「アジサイ」「種」「分類」それぞれの言葉の持つ意味が、全くといってよいほど異なることに、戸惑う方も多いのではないか、と思われます。

一言でいえば、アジサイ愛好家すなわちアジサイを愛でる人間の立場から見た、「野生」「アジサイ」「種」「分類」と、生物学的な立場、言わばアジサイたち自身の側から見た、「野生」「アジサイ」「種」「分類」の根本的な意味の違い。

他のアジサイ解説本は、アジサイを愛でる人々の為の手引き書なのに対し、本書での解説は、愛好家の立場や、情緒的な評価は全く無視して、ただただ事実のみを追求したものと考えていただいてよいでしょう。
アジサイの世界から、情緒的な興味を省いてしまえば、なにも残らないではないか、と言われそうですが、より深く情緒を楽しむためにも、基本的な事実を知っておくことは、決して損なことではないと思います。

というわけで、以下は、アジサイ愛好家の要求とは、いくぶん性格の異なると思われる、生物学的分類による「野生アジサイ」の紹介。

私は研究者ではないので、限られた知識しか持ち合わせていません。自分の足で調査し、自分の目で確かめた、断片的な資料を基にしていますが、これまでに生物学的な立場から成されたアジサイ解説本もない現在、将来に向けての“たたき台”として、それなりの意味を持つのでは、と考えています。

我慢して付き合って読んでいただけたならば、何らかの得られるところはあるはずです。

(目次)

第二章 「野生アジサイの仲間・そのⅠ」

クサアジサイ群/タマアジサイ群/ツルアジサイ群/イワガラミ群/ノリウツギ群




第三章 「野生アジサイの仲間・そのⅡ」

コアジサイ群(ガクアジサイ亜群/ジョウザン亜群/コアジサイ亜群ほか)計45頁






第四章 「野生アジサイの仲間・そのⅢ」


コアジサイ群(ガクウツギ亜群)計87頁



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各地産ガクウツギ亜群の葉の比較



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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第48回)

2011-06-25 09:05:01 | 野生アジサイ


フランスのパリで開かれているユネスコの委員会で、小笠原諸島が世界自然遺産に登録されることが正式に決まりました。





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野生アジサイ探索記(下2f)3徳之島【トカラアジサイ】2011年5月10日










葉は薄く大きく、屋久島産(ヤクシマコンテリギ)に類似するように感じられます。






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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第47回)

2011-06-24 17:27:49 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2f)2沖永良部島【トカラアジサイ】2011年5月8日~5月9日



チェック出来た生育地は、山頂の手前3か所のみ



葉は口之島産に似て、大きく幅広く、縁の鋸歯が細かいが、分厚くはならない。全体としては徳之島産に共通する。



アジサイというよりも、一見サクラの葉に似ています。







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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第46回)

2011-06-23 14:05:36 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2f)1沖永良部島・徳之島【トカラアジサイ】2011年5月8日~5月10日

トカラアジサイおよびその近縁種は、屋久島、三島列島黒島、口永良部島、口之島以下トカラ列島各島に分布し、トカラ列島南部の宝島とは呼指の距離に位置する(面積からすれば100倍近くもある)奄美大島には、なぜか分布を欠きます。

奄美大島の事を書きだせば、何100ページあっても足りません。実は全く偶然なのだけれど、いまこの文章を、徳之島から乗船した沖縄~鹿児島航路の船中で、奄美大島名瀬港に寄港中(10日夜7時30分~8時)に書いています。ああ、そうだ、今、僕は名瀬にいるのだ、と思うと感慨無量。今回は、この島に降りることなく鹿児島に向かうのです。

奄美大島は、僕自身にとっても、特別な島なのです。僕の、(30年ほど前、友子さんと出会った前後に付き合っていた)最初の彼女が奄美大島名瀬の出身。出会ったのは東京ですが、何度も名瀬に通って、デートをしていたのです。別れてからも、奄美大島に行くたびに(その後に結婚して離婚したご主人との間に生まれた)3人の娘さんたちと共に、食事などをしていたのですが、今回はパス。前回会ってから、5年余が経ちます。元気で暮らしていてくれれば良いのだけれど、、、後ろ髪を引かれる思いです。

奄美大島の生物相の魅力は、世界一だと言っても過言ではないでしょう。先日、東京都の小笠原諸島が、世界自然遺産に登録される(6月23日に登録される見通し)という情報を知ったのですが、奄美大島も、しばしば“東洋のガラパゴス”の名で呼ばれます。本家ガラパゴスの生物相は、派手でいかにも分かりやすいのですが、見方によれば、比較的新しい時代に急速に特殊化した生物(主に爬虫類と鳥類)が主体を占め、それらは必ずしも、極めて古い時代から遺存的に分布する生物であるということではありません。別の(根源的と言ってもよい)視点から見れば、奄美大島の生物相のほうが、遥かに古い時代から取り残された遺存性の上に成り立っていて、進化の基幹的な道筋を考えるに当たっては、より重要な意味を持っていると言えるのです。

遺存的・原始的ということは、他地域の集団から古い時代に切り離され没交渉のまま、狭い空間に命を繋げ、今に至っているということです。言い換えれば、それらの多くの種が、絶滅寸前の状態で現存しているということです。更に言い換えれば、現存する種はごく一部で、遺存的・原始的な種の大多数は、すでに絶滅してしまっている。

他の地域に見られない非常に特殊な種が残存する、ということは、他の地域には普遍的に存在している種が滅びてしまっている、ということと紙一重なわけです。

多様性に富んだ地形と植生環境を擁し、トータルに見れば九州~台湾間の南西諸島中最大の規模(面積は沖縄本島に次ぎ、標高は火山島を除けば屋久島に次ぐ)を持つ奄美大島なのに、なぜかこの島にだけ欠如する生物が少なからず存在する、という謎。上に記したように、本来なら存在してもいいはずの種が“存在しない”ということは、本来なら存在するはずのない種が“存在する”ということと、同等あるいはそれ以上に、大きな意味を持っているのです。

たとえば奄美大島における、クマゼミ(現在は、奄美大島にも人為的に移入帰化して一部定着)の欠如。以前は神奈川県南部付近が分布の北限だったのが、近年“北上”して東京都区内をはじめとする関東各地に定着しつつあることから、“地球温暖化”の象徴的な例として、しばしば取り上げられます。でも、それは思い込み。南から北へ分布を広げているのではなく、(おそらく庭木や都市樹の移動に伴って)周辺に広がっている、というのが実態ではないかと。

クマゼミは、単純な南方系の種ではありません。日本固有種。台湾や中国大陸には分布していません(近縁ではあっても全く別の種が分布)。関東地方などで分布を広げている集団は「日本本土タイプ」、もともとの分布域も、本州~九州、従って“北上”というニュアンスには相当しないと思われます。

以南の島々には、地域ごとに異なったタイプの集団が分布しています。沖縄本島産と八重山諸島(殊に与那国)産が対極的な特徴を示し、屋久島~トカラ列島(殊に屋久島)産は様々なタイプが出現します。変異の方向性は、空間的な順番と相同ではないのです。それぞれの地域に古い時代に隔離されたのち独自に進化したものと思われ、もし奄美大島に残っていたら、どの地域とも違った特異なクマゼミだったかも知れないのです。

これと似たパターンを示すのが野生アジサイ(トカラアジサイ)です。九州と台湾の間の島々には、小さなトカラ火山列島を含め、主な島嶼に分布しています。しかし、常識的に考えれば最も繁栄していても良いはずの奄美大島にのみ分布を欠くのです(*種子島と沖縄本島にも欠如しますが、近縁別群の種が分布、他にもスケール大きな島に何故か分布が欠如するという不思議な例は、屋久島のカラスアゲハ、西表島のナガサキアゲハなどをはじめ、少なからず知られています)。

トカラアジサイは、次ぎの徳之島、その次の沖永良部島に出現、沖縄本島で再び欠如し、隣接する小さな島の伊平屋島に生育しています。そんなわけで、トカラ列島産と伊平屋島産を橋渡しする位置付けにある、徳之島産と沖永良部島産は、是非ともチェックしておきたかったのです。



当初は、奄美群島の2か所のトカラアジサイ生育地のうち、沖永良部島はパスして徳之島に向かう予定でいたのですが、船の途中下船乗り継ぎが上手く行き、諦めていた沖永良部島の調査も追加することが出来ました。この島に上陸するのは初めて、今数えてみたら、40番目に上陸した(数え落としの可能性あり)日本の島ということになります。「40」という数が多いのかどうか、僕にはよく分りません。一般の人からすれば多いでしょうが、離島の生物を調べている人間としては、思ったより少ない気がします。別に、島に渡ることが目的なのではなく、調べたい対象がそこに生育しているので、仕方なしに訪れているわけです(船に弱い僕ですから、行かなくて済むなら行きたくない)。

今回訪れた6つの島もそうですが、島の最高峰には、大抵登っています。最高峰といっても、標高2000m近い屋久島や利尻島を別とすれば、大抵の島は500mそこいら。4000~8000m峰が大多数を占める「7大大陸最高峰」と比べると、ちゃちなことこの上も有りません。でも負け惜しみを言えば、亜熱帯ジャングルの悪路をハブやマムシにおびえつつ、何度も何度も滑って転倒しながら(今回は都合100回近く転倒している)、キイチゴやサルトリイバラの棘で体中傷だらけになって彷徨い歩くのも、それはそれでなかなかに大変なのです。

それに、目的は山登りではありません。調べたい昆虫や植物の探索のための山登りです。しかも大抵の場合、それらの昆虫や植物にどこで出会えるのかも分からない、場合によっては、その島や山に存在しているのかどうかも不確か、という状況下での登山です。楽しい山登り、というには程遠いのです。

もとより、僕は山の頂上に登るという趣味はありません。目的が果たせれば、山頂の一歩手前まで行っていても、そのまま引き返します。なかんずく、有名な山の場合は、意識的に山頂に立たないようにしている。富士山には一度も登ったことがないし、北アルプスの槍ヶ岳や奥穂高岳なども、山頂の手前でトラバースしたり引き返したりして、まだ一度も頂上に立ったことがありません。ときには、意地になって登山道の無い山腹を無理やりトラバースしたりするものですから、遭難しかかったりもします(笑)。でも、離島の最高峰は、その島の植生や生物相や生態系の全体像を把握するために、登らざるを得ない場合が多いのです。ということで、今回も、心ならずも、6つの島の最高峰(正確には西表島は第2峰)に登って来た、というわけです。

沖永良部島は、起伏の激しい山を擁する奄美大島や徳之島と異なり、単調な地形のなだらかな島ですが、一応標高250m程の最高点をもち、真っ平らな与論島などよりは、幾らか多様な自然環境に恵まれています。最高峰の大山の頂上は平坦な高原状で、航空自衛隊の基地があります。島の大多数は開墾され尽くしていますが、中腹より上部には鬱蒼とした森林も残されています。でも、トカラアジサイはなかなか見付けることが出来ません。やっと頂上の手前の林の中に発見、もう5時近くになっていたのですが、とりあえずこの株を集中撮影することにしました。

撮影終え、通りかかった車に現在地を訪ねてみました。助手席にダックスフォンドを乗せた若いおばさん(女性を安易に“おばさん”と呼んではいけないのだろうけれど、お嬢さんとか奥さんとか呼ぶのは何となく照れ臭いので、ついつい親しみを込めて“おばさん”と言ってしまう)です。撮影している花を見て、「アジサイの原種ですね」。一瞬、ギョ!としました。今回の撮影中、こんな反応は一度もなかったのです。こちらから「アジサイの原種を探しています」と言っても、
比較的自然に詳しそうな方を含め、そんなのがこの島にあるのですか?という反応がもっぱら。

“すぐ先のカーブのところにも咲いていますよ、島ではここでしか見られないので、貴重な植物では、と思っていつも通るたびに気にしているのです”、と。これは唯者ではない、相当に植物に詳しい方なのでは、、、。で、あなたは何ものですか?と訪ねたら、一介の主婦です、という答え。そういえば、ここに来るまで、車に乗せて頂いた年配の男の方(方向が分からなくなり、農作業をしていた方に道を訪ねた~案の定、逆の方向に向かってに歩いていた~ところ、暇だから送ってあげますと、林のある山の中腹まで連れて行ってくれたのです)も、趣味でカタツムリを調べている、この間新種を一つ見付けた、と。知る人ぞ知る有名研究者かもと思ったのですが、本人は“唯の元高校教師です”と言っていました。この島の人々は、気さくで、かつ謙虚な方が多いようです。

暗くなったので、明日もう一度来ることにして、とりあえず撮影を終えようとしたら、件の“一介の主婦氏(森オトノさん)”が戻って来ました。その間、通りかかった自衛隊の方にも声をかけられていて(普通このようなところで声をかけられる時は尋問に近い形となるのだけれど、この自衛隊員氏は単純に何かあったのかと心配してくれてのこと、町への戻り方などを丁寧に教えてくれました)、“野生アジサイの撮影です”と伝えたら、“この場所はもしかすると早晩造成されて無くなってしまうかも知れませんよ”と。

その話を森さんにしたところ、“どうすれば良いのでしょうね、場所を移せば厳密な意味での「野生」ではなくなってしまうのでしょう?”大抵の人は、このような場合、“ではどこかに植え変えて保護しなくてはならないですね”、というリアクションをするものです。善意の心持で言われているわけですから、(それは間違っていますと切り返すわけにいかず)返答に困ってしまいます。その点この方は、“一介の主婦”にしては本質が良く解っている、と関心したものです(ちなみに、僕と同じく、セミの鳴きはじめの日時を毎年チェックしている、と嬉しいことも)。

下の町まで車で便乗させて頂くことになったので、なっちゃん談義(攻略法の伝授、笑)をしていたら、港の町の宿舎まで連れて行って下さりました。


ノアサガオ。



リュウキュウイチゴの実。               シマアザミ。


モンシロチョウ、イシガケチョウ、ランタナとセイヨウミツバチ。

翌日、朝一番のバスで麓の町に。バスのある場所や時間帯には、なるたけヒッチをせずに公共バスを利用せねばなりません。あれあれ、7時46分発(始発)のバスが、7時40分に出発してしまったぞ! バスの運転手氏が、一人しかいない乗客の僕に気を利かせて早めに出発したのだけれど、良いのかしら?(親切にして貰っていて、それはダメです、とは言い難いです)

どこの離島でも似たり寄ったりですが、バスに乗ると乗客は僕一人ということがしばしば。利用者が少ない→本数が少なく運賃が高い、という構図になってしまいます。利用者がいないのは、皆が自家用車を持っているからです(観光地の場合ツアーバスが主体になることも一要因)。豊かになればなるほど、反比例するように地方の公共交通機関は廃れてしまう。こと公共交通機関に関しては、貧しい国ほど便利で、豊かな国ほど不便なわけです。いや、交通だけでなく、全ての事例についてもそのことは当て嵌まるでしょう。

豊かな国、というのは、結局のところ勝者が中心の世界なのです。勝者のための便利さ、取り残された人々は、必要以上の不便を強いられる構図になります。

極力自家用車の利用を無くし、より多くの人々が公共交通を利用するようになれば、長い目でトータルに見れば交通インフラの充実に繋がるはずです。

テレビも必要ない。冷暖房も要らない。最低限(T.V.ならニュースとか、冷暖房なら病院の病室とか)はあっても良いのでしょうが、今では無くては暮せないような世界になっているらしい。ファッションにしろ、グルメにしろ、日本人は、なんと贅沢なのかと、たまげてしまいます。そのような生活を続けている人達が、平等だとか、平和だとか、環境保全だとか、シンプルライフとか言っても、嘘っぱちにしか聞こえません。

慎太郎(東京知事)は嫌な奴ですが、物事の本質は分かっている。自動販売機規制は大賛成です。彼の言う、日本人は我慾の固まり、大震災は天罰、この機会に根本から思想や生活の仕組みを変えて行かねばなりません、と正しいことを言ってると思います。

さて、貸切状態のバスを終点で降りて、標高250mの最高点に登ります。登っている気配は自分ではほとんど感じないのだけれど、いつの間にか山頂に達していました。4000m峰が2つあるハワイ島では、ほとんど平坦に見える真っ直ぐな道を車で登っていたら、いつの間にか2000mほどの標高に達していたし、中国雲南省康定も、手前の濾定の町との標高差が1500m程あるのだけれど、車に乗っている限り“登っている”という感触は持ち得ないまま到着してしまいます。円錐状の大きな火山や、まっすぐに流れる川沿いの道は、気が付かぬうちに意外な標高を登っているのです。

昨日と同じ株を、たっぷり時間をかけて撮影。徳之島行き船便の時刻に併せて港に戻ったのですが、このあと、大変みっともない出来事を起こしてしまいました。カメラを撮影現場に置き忘れてしまって、親切な自衛隊の方が、わざわざ港まで届けに来てくれていたのです。面目ないことこの上も有りません(詳しい顛末はそのうちに紹介予定)。

午後2時30分沖永良部和泊出港、午後4時30分徳之島亀徳入港。港近くの素泊まり旅館に投宿。船内で見たT.V.で
台風1号の発生を知ります。12日には奄美地方に到達するとのことで、すでに風雨が強まっています。明日10日午後4時半発の鹿児島へのフェリーの出港も覚束来ません。よしんば、11日鹿児島に辿りつけたとしても、帰京便の12日夕刻は、ちょうど台風(もっとも勢力は衰えて熱帯低気圧になってはいるはずですが)が鹿児島に再接近している頃、なっちゃんへの電話連絡可能時間は、午後9時ジャストのみ、と本人から言い渡されています(笑)、船中から電話は出来ないでしょうから、今のうちに、変更の可能性を伝えておかねばなりません。公衆電話のあるコンビニ前まで行って、9時ジャストに電話、でも残念!繋がりませんでした(留守電に入れました)。まあ、電話が繋がらなかったからと言って度々落ち込んでいるわけには行きません。ついでにジン君に電話して、気を紛らわして(笑)、ここはグッと我慢の子です。

翌朝7時出発。林道をしばし歩き、徳之島最高峰・井之川岳(622m)に、トカラアジサイの最終探索行。暴風雨の中、道標も目印も何もない急斜面を、ハブを気にしつつ、ひたすら登ります。途中、トカラアジサイ群落出現。これで、フィリッピン・ルソン島を除く、この一群の主な生育地全てのチェックを終えたことになります。


山頂で昼食(宿のおばさんが無料で作ってくれたおにぎり)。右:山頂の手前にあった、大半が朽ち果てたプレート。



徳之島のカンアオイは興味深いテーマ満載。       冬にはこの植物(ヘツカリンドウ)の調査に再訪します。


あとは、12日になっちゃんに会うことだけ。何だか僕の人生全てが、“なっちゃんと会う一瞬”に集約されてしまっているようです。

なっちゃんの方は、忙しい最中に、さぞ気が重いことだろうけれど、それも一瞬の間だよね。僕と会ったあとは、彼氏とデートとかしてるんだろうなあー、いいなあー、、、、

その、僕にとっては一年に何回か(もしかしたら一生に一回きりとなってしまうかもしれない)の、“なっちゃんと一緒にコーヒーを飲む一瞬の間の幸せの時間”が、“毎日何時間も彼氏と過ごしている(のかも知れない、笑)なっちゃんの沢山沢山の幸せの時間”に挟まれた一瞬の間の“気の重い時間”と均等なのかぁ~。神様は不公平過ぎるよなあー。
【注:読者の皆様へ。“なっちゃん”がらみの話は、ほとんどジョークですから、真に受け止めなきよう、くれぐれもお願いします。】

限りなくヒガんでいる、今日この頃であります(いかんいかん!)



徳之島井之川岳山頂 2011.5.10




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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第45回)

2011-06-22 15:28:55 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2g)沖縄本島【リュウキュウコンテリギ】2011年5月7日

ガクウツギ~トカラアジサイ~カラコンテリギの一群は、屋久島やトカラ火山列島に分布するも、奄美大島では欠如し、次ぎの徳之島とその次の沖永良部島および伊平屋島に現れ、沖縄本島で再び欠如、飛んで石垣島・西表島に再び現れるのですが、沖縄本島には、それに代わる“リュウキュウコンテリギ”という種が分布しています。

リュウキュウコンテリギは、ある意味、謎の植物です。花序はいわゆる花(装飾花)を欠き、小さな正常花のみで構成されているのですが、原記載ではなぜかコガクウツギの地方型として扱われています。

そもそもコガクウツギという種自体が良く解らない部分があり、本州の西半部から九州にかけて(大局的に見れば)同所分布するガクウツギとの関係も良く解っていません。のみならず、意外なことにヤマアジサイとの間にも交雑個体がしばしば生じるなど、不思議な存在なのです。

コガクウツギの分布南限は屋久島の高地帯で、低地帯に分布するヤクシマコンテリギや以南の島々に分布するトカラアジサイなどが本土のガクウツギに対応するとすれば、コガクウツギに対応する種が、沖縄本島に現れるということも、何となく辻褄が合うような気がします。

確かに、アジサイの仲間らしからぬ小さくな葉の形や、雌蕊を中心とした正常花の構造なども、写真を見た限りではどこかコガクウツギと共通するようにも思えます。とは言っても、装飾花を欠くことをはじめ、他の各種とは余りにイメージが異なります。自分の目で確かめたうえで、判断しなくてはなりません。

ヤマアジサイ・ガクアジサイに近いグループで、装飾花を欠く種と言えば、リュウキュウコンテリギの他、日本本土の固有種・コアジサイ、中国大陸南部に知られる(おおむねカラコンテリギと分布の重なる)幾つかの種、および別属として扱われるジョウザンの仲間があります。それらの種とリュウキュウコンテリギの関係も考えてみたいのです。

実は、リュウキュウコンテリギの分類上の位置付けについては、非常に興味深いデータがあります。葉緑体DNAの解析による系統考察では、広義のヤマアジサイのグループが、ヤマアジサイ・ガクアジサイのブランチと、カラコンテリギ・ガクウツギのブランチに分かれる(この報文ではジョウザンは未調査)ことまでは予想通りなのですが、リュウキュウコンテリギは、カラコンテリギのブランチではなく、ヤマアジサイのブランチに含まれ、一方もう一つの日本産無装飾花種コアジサイは、ヤマアジサイのブランチではなく、カラコンテリギのブランチに含まれるという、一般に予想されたものと逆の結果が示されているのです。

野生の姿を見れば何かヒントが掴めるかも知れません。沖縄本島にはこれまでも度々訪れていますが、主な対象はツクツクボウシの仲間(オオシマゼミとクロイワツクツク)の鳴き声録音で、夏の後半が中心です。野生アジサイの花の時期としては、少し遅すぎるのです。逆に今回は開花盛期にはやや時期が早すぎるのですが、この機会にチェックしておくことにしました。もしかしたら伊平屋島のトカラアジサイとも、外観の極端な相違とは裏腹に、意外に類縁上のつながりが見出されるかもしれないですし。となれば、リュウキュウコンテリギはトカラアジサイの代置的な存在になるわけです。

日程的に、探索可能日は一日だけ。うろうろと探し回ってタイムアウトとなってしまわぬよう、前もって生育場所を、琉球大学から環境庁やんばる自然保護センターに出向している中田氏(専門はマングースだけれど、植物にも詳しく、何よりもとても親切なナイスガイ)に電話連絡して、確認しておこう、としたのですが、名刺が出て来ない。

数日前、なっちゃんの名刺を探そうとしたら、幾ら探しても出て来ない。探している途上、何度も繰り返し中田氏の名刺が出てきて、なんで必要のないものが何度も出て来るのだ、と苦々しく思っていたのです。ところが、いざ必要となって中田氏の名刺を探そうとしたら、神隠しにあったように出て来なくなってしまった。逆に、(3種類ある)なっちゃんの名刺ばかり、これ見よがしに現れるのです。

というわけで、自分で適当にあたりをつけて、与那覇岳(沖縄本島最高峰503m)山頂周辺を探索することにしました(中田氏の名刺は、必要の無くなった探索行翌日に、ポロリと出てきた)。いつも通り、リュックを駅の道の観光案内書に預け、午後2時出発(この日はなっちゃんと電話で口論になり、予定を変更して帰京しようと思っていたのですが、思い直して空港からの直行バスで辺土名にやってきたのです)。山頂までは歩いて往復4時間、探索に1~2時間、最終バスは7時50分とのことですから、何とか間に合いそうです。途中の森林公園に寄ろうかとも考えたのですが、時間に限りがあります。一直線に与那覇岳を目指すことにしました。むろん、途中でリュウキュウコンテリギが見つかれば、それに越したことはありません。

実のところ、途中の道すがらすぐに出会えるだろうとタカをくくっていたのです。でも、そうは問屋がおろさず、結局、正月にヘツカリンドウを観察した、山頂手前のトラバースルートの一番奥まで行く羽目になってしまいました。目を皿のようにして探し回ったのですが、それらしき植物はどこにも見当たりません。




リュウキュウイチゴの葉のチェックも。下右2枚は、ナガバノモミジイチゴ型の葉のリュウキュウイチゴと思っていたのですが、全く別群のタイワンウラジロイチゴかも知れません。



左2枚:シリケンイモリ。泥だらけの登山道に、踏みつけてしまいそうになるほど沢山いた。
右:ヘツカリンドウの若葉。花期の冬に訪れた時はなかなか見付けられなかったのだけれど、今回は打って変わって数多く見られました。


そろそろタイムリミット、今日は諦めて、明日の徳之島行きを中止し、海洋博の阿部氏か環境省の中田氏に生育場所を聞いて、改めて出直すしかない、と覚悟しかけた時、気になる植物が目に留まりました。小さな葉と咲きかけの花序を見る限り、とてもアジサイの仲間とは思えないのだけれど、他に咲いている花をほとんど全く見かけないこの辺りでは、第一候補と言わざるを得ない。ぽつぽつと現れるのですが、どの株も花は咲いていません。やがて一輪だけ小さな花を見つけました。

ルーペを取り出して、花の構造を確かめます。どうやら理論上は間違いなくアジサイの仲間のようです。それが分かってはいても、アジサイの仲間であるとは到底信じられないような、予想を遥かに超える異様さです。

少なくとも、トカラアジサイやカラコンテリギには全く似ていない。花序も葉も、対極的なイメージです。発見時に同一種と考えられていたコガクウツギにも似ていません(でもそう言われれば幾らかは共通点があるような気も)。葉緑体DNA解析による系統考察ではより近縁とされるヤマアジサイやガクアジサイにも全然似ていない(こちらもそう言われれば、どことなく共通の雰囲気が見出されるようにも思いますが)。

いずれにしても、他の野生アジサイ各種とは大きく異なった、特異な種です。あえて最もイメージが共通する種と言えば、同じ無装飾花種のコアジサイです。大きさはともかく、葉の概形、生育環境などに、なんとなく類似点があるように思えるのです。思うに、リュウキュウコンテリギもコアジサイも、真正のアジサイ類(ヤンマアジサイ・ガクアジサイの一群+カラコンテリギ・ガクウツギの一群)の中では、最も祖先的な形質を引き継いだ、遺存性の強い種で、それぞれがヤマアジサイのブランチやカラコンテリギのブランチにと進化を始める初期の段階で、形質の進化がストップしたままになっているのではないだろうか?と。

ただし、装飾花の欠如は、アジサイの仲間の進化の道筋の中では、後天的な出来事のはずです。それを考えれば、それぞれのブランチで並行的に特殊化した進化の末端にある存在、とも言えるのかも知れません。

のちに、鹿児島で堀田満先生に伺った話では、リュウキュウコンテリギは、絶滅寸前の状況にある、大変な稀産種であるとのこと。見付けることが出来ただけでも運が良かったのかも知れません。




リュウキュウコンテリギの花





一枚目の写真、左上に見えるのがリュウキュウコンテリギの葉。






下2枚は、蘭の一種(ユウコクランの仲間?3段目右は葉)とリュウキュウコンテリギ。




僕はランのことは良く知りません。







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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第44回)

2011-06-21 15:11:48 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2f)2石垣島・西表島【ヤエヤマコンテリギ】2011年5月2日~5月5日

以下、石垣島(オモト岳)のヤエヤマコンテリギ。標高200m辺りから山頂にかけて見られます。






最後に、石垣島(オモト岳)と西表島(カンピレーの滝/テドゥ山)のヤエヤマコンテリギを紹介しておきます。伊平屋島のトカラアジサイに比べて、葉が極めて厚く革質、まるで照葉樹の葉を思わせます。オモト岳山頂付近では、葉が著しく小さな株も。台湾産や中国大陸産カラコンテリギにも似ていますが、葉はより革質で、全体として三島列島黒島産のトカラアジサイと類似します(渓流沿いの株は葉が比較的大きく、山上尾根筋では小さくなることなども共通)。

以下、西表島(浦内川カンピレー滝)のヤエヤマコンテリギ。


浦内川河口


林内の渓流沿い







以下、西表島(テドゥ山)のヤエヤマコンテリギ。


下流の川岸にも僅かに生えていた。右下にコンロンカ。


山頂近くの湿地帯にて。








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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第43回)

2011-06-20 09:36:58 | 野生アジサイ


野生アジサイ探索記(下2f)1石垣島・西表島【ヤエヤマコンテリギ】2011年5月2日~5月5日


これまでにも何度か説明したように、一言で沖縄(あるいは琉球・南西諸島)と言っても、沖縄本島以北と、先島諸島(宮古+八重山)は、生物地理学的な視点から見て、全く異なる地域です。




それぞれ地図の左下、台湾の右隣りが、石垣・西表島。

北琉球(屋久島・種子島・トカラ火山列島)の生物相は、九州などの日本本土に強い関連を持っています。中琉球(奄美大島・徳之島・沖縄本島)の生物相は、著しく特徴的で、あえて言えば中国大陸の奥地などに、(非常に古い時代の共通祖先を介しての)共通性が認められます。そしてどちらかと言えば、南回りでなく北(日本本土)回りで大陸と繋がっているのです。南琉球(宮古島・石垣島・西表島・与那国島)の生物相は、台湾や中国大陸南部と強い共通性を持ちます。

九州本土から沖縄本島にかけては、最長でも70㎞以内の間に、島々が連続して連なっています。しかし、沖縄本島と宮古島の間は250km以上も離れていて、しかも深さ1000mを超す海溝が切れ込んでいるのです。宮古島から先、台湾までは、再び可視距離の間に島々が連なります。

宮古島は、高い山のないなだらかな地形のため、島の成立後も度々水没を繰り返してきたためか、古い時代から遺存分布する生物は生育していません。一方、石垣島や西表島は、離島としては比較的標高が高く、多様性に富んだ地形と植生環境を有し、様々な(台湾や大陸南部に姉妹集団をもつ)固有種が生育しています。ということで、ここ(石垣島・西表島)にも、ガクウツギ群の野生アジサイ=ヤエヤマコンテリギ(トカラアジサイと同じ種に含めたり、台湾や中国大陸産のカラコンテリギと同じ種としたり、あるいは遺伝的に他とは全く異なる種とするなど、様々な見解があって、今のところまだ結論は出ていません)が分布しているのです。

僕は、20数年前から、石垣・西表両島固有種とされ、国指定の天然記念物でもあるアサヒナキマダラセセリを、10年ほど前からは、やはり石垣・西表両島固有種のイシガキヒグラシの、それぞれ系統的な分類を調べていて、この両島には深い縁があります。それらの調査の過程で、ヤエヤマコンテリギも両島で撮影をしてはいるのですが、片手間の撮影だったり、時期的に花の盛期が過ぎていたりして、思い通りの撮影や調査には至っていず、改めて開花盛期に訪れようと考えていたのです。

むろん今回、訪れる予定でいました。ところが、野口さんに沖縄行きを告げたところ、旧知のガンケオンム(内藤ひろむ)氏が沖縄に住んでいるので、ぜひ訪ねてほしい、との要請を受け、となれば時間と予算の関係から、石垣島・西表島に行く余裕が無くなってしまいます。当初内藤さんの住所が解らなかったのですけれど、野口さんと手分けして調べた結果、石垣島在住であることが判明しました。で、最初の予定通り石垣島・西表島に赴くことになったのです。

 
 
 
 
元ガンケオンムの内藤ひろむ氏と、御子息夫婦やお孫さん、それに近所の若夫婦一家。上段右は、僕の寝泊まりしたガンケ氏手作りの離れ、2段目右は、その玄関。一晩中鶏が玄関前で“コケコッコー”と鳴いていた。

石垣島では内藤氏のお宅(農場)に2日間お世話になりました。とても楽しかった。でも、同時に辛い思いもしました。何組もの家族の集いに招かれて、、、、連夜遅くまで酒盛りと相成ったのですが、、、、家族の団欒に加わるのは、帰るところのない一人身の僕には、切なすぎます。

僕も内藤氏も“旅人”。でもその立場は正反対です。

若い頃、遊び尽くして、永い放浪の後、日本の果ての離島の農場に定着して、やがて家庭を持ち、どこにも向かわない“旅の途上”にあるガンケ内藤氏。

若い頃は何一つ積極的な行動が出来ない“登校拒否児”。中年を過ぎてからの、一人ぼっちの、どこにも戻らない“旅の途上”にある僕。

基本的な思考は共通します。今の日本で、普通であること、常識と思われていること、それらを全く信用していない。 “空気”を乱さず、皆と同じであることを正義とし、楽で気持ちの良いことだけを安易に求めようとする時代の流れに組せずに、自分の生きる道を貫き通して、地球の将来のあり方を示したい。

野口さんの生き方とも共通するはずです。でも、terranovaの方向性とは、微妙に異なるような気が。この間のイベントのパンフなどをお見せして、そのうちにガンケさんも講師として参加なさったら?と話題を向けたところ、猛烈な批判的返事が返って来ました。絶対に嫌だそうです。感覚的に相容れないのでしょう。早川さんやジョンさんと、ガンケさん、その生活スタイルやビジョンは、一見似てはいるのですが、似て非なるもののような気がします。

本当の意味での“リアル”の追求が、いかに苦しく困難なものか、汗を流し、血を流し、身を持って示しているのです。貧乏(金持ちになること自体、“悪”であるというのが、僕とガンケさんの共通認識)を覚悟し、一般社会からはドロップアウトし、従って(早川さんのように)若い世代から持て囃されたりすることもありません。定年親父や都会の若者のファッションめいた“田舎暮らし”ブームなどとは、対極の存在なのです。

時たま勘違いで、若い女性が訪ねて来ることがあるそうです。ガンケ氏曰く、僕はモテるのです、と。何度か言い寄られたこともあるそうです。ガンケ氏のほうも、まんざらではないようで、その気おおアリなんだそう。今までは何にも起こらなかったらしいのですが、次にチャンスが訪れた際には、真剣に考えてみたいと。でも、浮気は嫌、むろん離婚も絶対に嫌、沖縄出身の奥さんと、3人の御子息を深く愛していらっしゃるのです。

その上で、若い女の娘とも、一緒に暮らせたらと(いわば第二夫人ですね)真剣に夢見ておられる。問題は、奥さんや息子さん達が、絶対に認めてくれそうもないということ(そりゃあそうだ)。何か良い方策はないものでしょうかと、のたまっておられました。

2日目はオモト岳(沖縄県最高峰526m)へ。ところが、登山口に市の職員が待ち受けていて通せんぼ!途中、道が決壊していて危ないので、登山禁止にしているのだと。無視をして先を進みます(別に大した決壊ではなかった)。途中、知らせを受けた責任者と思しき人が駆けつけてきた。たまたまその方(トンボのアマチュア研究者、直接の面識はなし)が僕のことを知っていて、“市の職員には会わなかったことにしておいて下さい”ということで一件落着。“登山禁止”は早い話が責任逃れなんだよね。いかにも八重山の人がとりそうな安易極まりない方針だと思います。

先島諸島を、宮古諸島と八重山諸島に分けるのは、意味があるのだそうです。ガンケ氏曰く、八重山(石垣)は実に嫌な所だ、変にクールで人間味が全くない。閉鎖的で一種のエリート意識があり、部外者が溶け込むのは困難。中央(東京)の悪い所をそのまま引き継いだようで、鼻もちならない。その点、(ぐうたらで、いい加減で、大酒のみで、沖縄本島や八重山の人々からは嫌われ馬鹿にされているけれど)宮古島の人々は、開けっぴろげで、人間味たっぷりで、僕は好きなのです、と。石垣島でも、ガンケ氏の住む「吉原」地域は、宮古島の開拓集落なのだそうです。




上左:コンロンカ、上右:クチナシ、下左:ギョクシンカ(いずれもアカネ科キナノキ亜科)。
下右:サキシマヤマツツジ(ツツジ科、奄美・沖縄のケラマツツジや、屋久島のヤクシマヤマツツジに近縁)。




浦内川河口付近(左)とカンピレーの滝(右)。カンピレーの滝は、滝と言ってもナメリの連続。20年ほど前、岩上に座っていた時、西表島沖群発地震があって、岩ごと大きく揺れた。今までで一番怖かった地震体験です。10年ほど前、ヒグラシの声の録音(日没後と夜明け前にしか鳴かない)に訪れた時には、テントの布と支柱の組み合わせを間違えて持って来て、仕方なく直接地べたに寝て情けない思いをしたことを思いだします。


八重山3日目は、フェリーで西表島へ。一泊の予定だったのですが、連夜の酒盛りで極度の寝不足。カンピレーの滝の探索行を簡単に切り上げ、最終バス(何と午後3時!幾らなんでも早すぎます)で島の南の大原に向かい、2日間滞在することにしました。

何しろ、ゴールデンウイークの真っ最中です。観光的には無名の伊平屋島と違って、西表島は超有名観光地です。会う人会う人、若いアベックか、出なければ子連れのヤングファミリー。気が滅入ります。当初、2日目もカンピレーの滝周辺を探索する予定でいたのですが、観光客に合わない所に行くことにしました。

カンピレーの滝は、島の南に抜ける滝から先の “横断登山道”が魅力的なのですが、このコースを行くには、許可が必要です。許可が下りる最低条件は“2人連れ(実質アベック)”であるということ。お一人様は、ここでも差別の対象です。知識・経験の豊富なプロのアドヴェンチャーの単独行より、山道を歩いたこともないアベックの2人連れのほうが、(手続き上)優先的に信頼されるのです。もちろん、責任逃れの、お役所感覚の処遇であることは言うまでも有りません。
ということで、西表島に来た登山愛好家や自然愛好家は、暗黙の了解で、“単独登山禁止”の有名コースの何十倍・何百倍も困難で危険な、地図に道も載っていないような、ヴァリエーションルートを目指します。遭難の確率は、“単独登山禁止コース”よりも遥かに高いわけですが、万が一遭難しても、“禁止コース”ではないので、誰も責任を取らなくて済むのです。遭難を防ぐのが目的なのではなく、責任逃れが真の目的、という構図です。

西表島最高峰の東部の古見岳(460m)や、第2峰の北部のテドゥ山(447m)も、一般の地図には登山ルートが示されていません。たまたま宿に、昨日テドゥ山に登ったという関西からの単独旅行者が泊まっていたので、彼に道を聞いて、2日目はテドゥ山に登ることにしました。山頂にリュウキュウチクの群落があるとのことで、アサヒナキマダラセセリを撮影出来るかも、と期待していましたが、悪天候のためか、久しぶりの再会は叶いませんでした。




一時間余歩いてそろそろ山頂?と思ったら、「あと2時間半」の道標。今回最もハードな山行でした。山頂は展望なし。




左:途中、目的のヤエヤマコンテリギが現れます。右:山頂に生えていたシダの一種のヤブレガサモドキ。



 
下山は午後6時過ぎ。最終バスは3時に出ていたので、南へ行く車をヒッチ。ヤギの餌を積んだ荷台に寝転がって。

夜、宿舎近くの食堂で、前日カンピレーの滝で出会った九大の昆虫学教室の学生3人組と偶然再会、うち一人が、ナガサキアゲハのDNA解析による系統考察に取り組んでいるとのこと。夜遅くまで、ナガサキアゲハ談義。30年ほど前、僕が最も力を注いでいたのが、♂♀外部生殖器の構造比較によるナガサキアゲハグループの系統分類なのです。完成に至らないまま保留の状態が続いていたのですが、30ぶりに封印を解いて、再開しようと、新たな決意をした次第であります。




マサキウラナミジャノメ(上段右は産卵中の♀)とヒメジャノメ(リュウキュウヒメジャノメ=右下)。マサキウラナミジャノメも八重山固有種ですが、体の基本構造は、日本や台湾のウラナミジャノメやエサキウラナミジャノメと同じです。




リュウキュウウラボシシジミ カラスアゲハ(ヤエヤマカラスアゲハ)

翌5日、船の時間までの間、宿の近くにある新しく出来たばかりの瀟洒なレストランで昼食。どんぶりを注文したら、なんとニガナ(ホソバワダン)がたっぷりと添えられています。どうやらここでは完全な野菜扱いのようです。ついでにアキノノゲシの事を尋ねたら(写真を見せました)これも食べると、意外な答え。ウサギノミミの名で、そこいらに生えているのを、昔から食べているのだそうです。次回訪れた際には、用意して料理してくれるとのこと。アキノノゲシを人間の食用としているという確実な情報は、中国南部の麦菜に次いで、始めてのことです。

ためしに石垣の空港の売店でも、アキノノゲシについて尋ねてみました。ここでは売ってはいないけれど、確かに食べている、とのこと。那覇に戻り、中川嬢を伴って沖縄タイムスを表敬訪問した帰りに、スーパーの野菜売り場を覗いてみました。ニガナ(ホソバワダン)が野菜の棚に堂々と。野生のものよりは大きめのようにも思えますが、といってたいして変わらないようにも思えます。栽培しているのでしょうか? 苦菜・麦菜、ますます面白くなってきそうです。




ドンブリの中にニガナ(ホソバワダン)が。野生のものよりずっと大きいようです。栽培しているのかも知れません。




那覇の高級スーパーにて。陳列棚にニガナを見つけました。中川嬢が携帯で写し始めたので僕も。生でも食べられます。





石垣島にて(背景はオモト岳)。畑の畔にトウのたったアキノノゲシが。勝手に生えているのか、それとも一応栽培しているのでしょうか?





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「朝と夜のはざまで(第40回「中国大陸/カラコンテリギ」)」の訂正

2011-06-19 20:23:19 | 野生アジサイ



手違いで同じ写真が2列重なって入っています。それにより次に入るべき写真がカットされてしまっているので、改めて編成し直しておきました。



(ついでに、この機会に改めて)
装飾花の縁の鋸歯の有無や、装飾花弁数の多少は、個体変異に過ぎません。マニアックな愛好家の人々が名付ける“品種名”は、生物学的な分類とは全く無関係なので、間違いなきよう。葉の形質に関しても同様のことが言えますが、ただし、基本的な“傾向”は、(種以下の分類群に対しての)分類指標として、それなりに意味があるものと思われます。




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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第42回)

2011-06-19 13:26:34 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2e)2伊平屋島【トカラアジサイ】2011.4.26~5.1

伊平屋島のへツカリンドウについて(詳細はブログ参照)。
屋久島産(新称「アズキヒメリンドウ」)との共通点を多く持ち、「ヘツカヒメリンドウ」の名を仮称しておきます。至近距離にある沖縄本島産(別称「オキナワセンブリ」)と最も異なり、遠く離れた屋久島産(アズキヒメリンドウ)、石垣・西表島産(シマアケボノソウ)、台湾産(シンテンアケボノソウ)などとの関連が考えられます。系統上の位置付けについては、今年の11~12月から来年1~2月、(なっちゃんとともに!)北限(九州大隅半島と甑島)から南限(台湾)に至る生育が予想される全ての島々で再チェックを行った上で、最終結論を出すことにしています。



左端:屋久島、2枚目と3枚目:伊平屋島、右2枚:沖縄本島。


伊平屋島のトカラアジサイについて
へツカリンドウの伊平屋/沖縄本島産の組み合わせの場合と同様に、(この後に紹介する予定の)沖縄本島産リュウキュウコンテリギとはまるっきり縁が遠く、トカラ列島などのトカラアジサイとも顕著に相違し、距離の遠い、屋久島産(ヤクシマコンテリギ)や、台湾・中国大陸産(カラコンテリギ)との間に、むしろ類似点が認められます。こちらも系統関係の最終結論は、各地産のDNA解析による比較などをトータルに行ったのち行う予定でいます。



三島列島~トカラ列島産や石垣島~西表島産に比べて、葉の質が著しく薄い(屋久島産と共通)のが特徴です。全体として、台湾および中国大陸産カラコンテリギに最も類似点が見られます。







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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第41回)

2011-06-19 13:16:47 | 野生アジサイ

野生アジサイ探索記(下2e)1伊平屋島【トカラアジサイ】2011.4.26~5.1

以下、今回の取材行(伊平屋島→石垣島→西表島→沖縄本島→沖永良部島→徳之島)をリアルタイムで報告して行きます。

栽培アジサイの原種(ガクアジサイやヤマアジサイ)に近縁のもう一つの一群、ガクウツギ・カラコンテリギの仲間は、分布や分類について未解明の問題点が数多く残されています。文献もほとんどなく、自分の足で調べるよりありません。それでもって、この10年間ほど、日本本土のガクウツギ・コガクウツギ、南西諸島のトカラアジサイ(ヤクシマコンテリギ・ヤエヤマコンテリギを含む)、台湾・中国大陸のカラコンテリギ(ユンナンアジサイを含む)の実態を知るべく、各地を調べ歩いてきました。

ほとんどの産地を訪ねてはいますが、花の季節では無かったりして充分な観察が出来ないでいるところも、かなりあります。それでも、大抵の場合は、近隣地域産との関連や、他の人が写した写真をチェックするなどして、おおよその判断は出来るのです。しかし他の産地から孤立して分布し、ほとんど全く情報のない沖縄県伊平屋島産については、正体が謎のままとなっていました。

この一群の大雑把な分布様式は、本州・四国・九州(ガクウツギ)、屋久島(ヤクシマコンテリギ)、三島列島・口永良部島・トカラ列島の後、奄美大島に欠如して、徳之島、沖永良部で現れ(以上トカラアジサイ)、沖縄本島で再び欠如、石垣島・西表島に再び現れ(ヤエヤマコンテリギ)、台湾・ルソン・中国大陸(カラコンテリギ)と続きます。ただし、2つの注約が必要です。沖縄本島と隣接する伊平屋島に、トカラアジサイが分布すること。沖縄本島(北部のヤンバル地区)には、この一群とやや類縁の離れたリュウキュウコンテリギが固有分布すること。

沖縄本島北部の国頭半島(ヤンバル地域)と伊平屋島は、目と鼻の先の距離の位置にありますが、その生物相は、かなりの相違点が見られます(ちょうど屋久島と口永良部島の関係と良く似ています)。伊平屋島へは、昨年年末から今年正月にかけて、ヘツカリンドウ(アズキヒメリンドウ、イヘヤヒメリンドウ)の調査に訪れていました。詳しくはブログで紹介しているので、そちらのほうを(途中で中断中)ご覧下さい。

沖縄県伊平屋村。
沖縄本島周辺の離島では、久米島に次いで大きい。
人口約1300人。
県内の主な離島中、唯一飛行場がない。
県内の主な離島中、唯一大きなホテルがない。
県内の主な離島中、ふるさと交付税が最も少ない(県外における知名度に比例)。
県内の主な離島中、観光客(なかんづく若いキャピキャピした女の子)が最も少ない。
沖縄県の島の中では、最も山が多く、多様な地形を持つ島のひとつ。
最高峰は賀陽山294m、沖縄県で、「山(サン)」の語尾を持つ唯一の山(大抵は「岳」) 。
北緯27°以北が鹿児島県で、沖縄県は北緯27°以南、というのが常識ですが、この島は27°線よりも北に位置し(鹿児島県与論島の真西で島の北部は与論島よりも北)、島の南端に27°線が横切っています(テントを張っている場所は、ほぼそのライン上)。
要するに、沖縄らしくないイメージの沖縄の島、ということが出来るかも知れません。
(ただしサンゴ礁の海は、他のどの島にも負けぬほど素晴らしい)



 用意して頂いたテントと、差し入れの弁当。
役場から無料で提供された宿舎は、前回(昨年末~今年正月)は屋内の大ホールを独占して使っていたのだけれど、海開きの季節の今回は、さすがにそうもいきません。というわけで、7~8人は寝泊まりの出来そうな大テント。電気も使用出来き快適ではあったのだけれど、暴風雨に見舞われた2日目の夜は、物凄い音が一晩中テントを揺るがし、一睡も出来ませんでした(雨は漏って来なかったです)。

自炊をするのは面倒だったので、スーパーで調達した弁当を3つほど購入しておいたのだけれど、テントに戻ったら役場の方々からの差し入れも2つ3つあって、とても食べ切れません(写真上右、モズク入り餃子など)。

 


 

テントの回りの海辺は、最高の景色です。でも、それでなくとも少ない観光客が、東日本大震災の影響からか今年は特に少ないようで、ゴールデンウイークに突入したというのに、人一人っ子いない。僕が一人で独占、というわけですが、嬉しくもないし、何の感慨もありません。なっちゃんと一緒になら、もっと素直に堪能出来たことでしょうけれど。

浜辺をそぞろ歩きながら様々な海岸性植物を撮影しました。殊に数多かったのがシマアザミ。屋久島周辺の近縁種オイランアザミは紅花ですが、こちらは白花です。以前、三島列島黒島の海岸でも撮影した覚えがあるので、その辺りが分布北限だと思います。ノアサガオ(下左)とハマヒルガオ(下右)も砂浜一帯で良く見かける花。前者は内陸の路傍などでも普通に咲いていますが、後者は砂浜の中だけに生育します。

 





上2枚:野生のクチナシ。この季節が開花盛期の純白の花のクチナシとコンロンカ(共にあかね科)は、遠目には野生アジサイに良く似ています。甘い香りが素晴らしく、風に乗って遠くまで漂ってきます。初恋の人に最初に贈る花、だそうです。2段目右:ホウロクイチゴ。リュウキュウバライチゴやリュウキュウイチゴの多い屋久島などでは余り美味とは感じないのですが、それらの少ないこの島では、とっても美味しく感じます。2段目左2枚と3段目左:シロオビアゲハ。♀には♂同様の白帯型と、♂にない白紋型がありますが、今まで見たところでは、この島のメスはどれも♂タイプ(白帯型)のような気がします。3段目右:クロアゲハ、4段目左:ジャコウアゲハ、4段目右:リュウキュウベニイトトンボ。

伊平屋島にトカラアジサイが分布することは、古い文献記録があります。しかし、具体的な記述や図の載った報文を見つけ出すことは出来ず、あるいは誤報告の可能性もあるかもと、5年前の晩夏、自分の目で確かめようとこの島を訪ねました。非常に稀な植物らしく、あちこちを探し歩いた末に、最高峰の賀陽山の登山口付近で見付けることが出来ました。すでに花の季節は終えていて、枯れ残りの葉をチェックしただけですが、間違いなくカラコンテリギやガクウツギの一群、
ただし、トカラ列島などのトカラアジサイとは、かなり趣が異なるようにも思えました。正確なことを確かめるには、花期に訪れて枯れる前の葉をチェックしなくてはなりません。

次に来る時のために、植物に詳しい村役場の伊礼清課長(現副村長)に、他の生育場所を調べておいて貰うように頼んでおいたところ、ダムの一角の林で見かけたとのこと、今回、まずはそこに向かうことにしました。



左がいつもお世話になっている伊礼清さん。4年前や、今年1月に来た時には、みな「清さん」と呼んでいたのですが、今回は「副村長」と呼んでいました。慣れるまで僕も暫く時間がかかりました。右のおばさん(お姉さん?)は、薬膳料理などに造詣の深い、伊平屋村商工会の大見謝るみ子さん。トカラアジサイの生育場所は、彼女のほうが副村長より詳しかったです。写真右は案内して頂いたダムの堰堤近くのトカラアジサイが生える林。




その大見謝さんに、港の待合室で、ニガナ(ホソバワダン)の様々な料理を即席で作って貰いました。左はサラダ、右は和え物。ともに苦味が抜け、と言ってもほのかに残ってもいて、えもいえぬ美味しさです。




写真左:登山口に生えていたホソバワダン(左、地元名ニガナ)とヘツカリンドウ(右=イヘヤヒメリンドウ)の若い葉。ホソバワダンの葉もヘツカリンドウと同程度の大きさ・形になります。写真右:1月に写したホソバワダンの花。



写真左:上左写真の右隣に生えていたアキノノゲシの葉。葉が切れ込むタイプと、切れ込まないタイプがあります。この島では食用とする習慣はないようです。写真右:1月に写したアキノノゲシの花。



以前にブログで紹介済みの、深センのスーパーで購入した、右から生菜(レタス)、苦麦菜&油麦菜(栽培アキノノゲシ?)。




次の日は、来島時に同じ船に乗り合わせた若い女性(京都の阿地さん32才)と、彼女と同じ宿に宿泊しているもう一人の若い女性(横浜の河野さん30才、、、、早い話、純粋な観光客はこの2人だけ?)を伴って、賀陽山登山と相成りました。途中、キノボリトカゲが出現。




賀陽山山頂に辿り着く(霧の中で展望なし)。写真左は、山頂に生える野生ミカンのシークァーシャーの木を背に。賀陽山は標高300m弱だけれど、相当にハードな登山を強いられます。青い服の女の子(河野さん、)は、完全にへばってます。


 
でも食事タイムで笑顔が(横浜から来た河野さん)。右のカッコいい女の子は、なっちゃんと同業者(京都から来た阿地さん)、フードや飲食店のPR雑誌などの編集を経て、現在はフリーの編集者(平たく言えば失業中?)よし。






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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第40回)

2011-06-18 21:19:04 | 野生アジサイ


野生アジサイ探索記(下2d追加)中国大陸【カラコンテリギ】




先日、昨年・一昨年に撮影したカラコンテリギの写真が大量に見つかりました。たまたま今日、それを纏めた原稿が出来上がったので、この機会に紹介しておきます。*今日アップした写真と重複するのはそのまま入れています。*直す時間がないので文章の末尾そのままです。*なっちゃんにはまだ送っていません。ちなみに、今日6月17日はジン君24才の誕生日。これからライブとパーティーがあります(大幅に遅刻!)。なっちゃんの誕生日は7月20日(25才)だから、1カ月だけ追いつきます。6月と7月は日本にいる予定ではなかったので、ジン君の誕生日をうっかり忘れてしまっていたのです。ちなみに僕は今年20才(2008年から再起算!)、ジン君は4才お兄さん、なっちゃんは5才お姉さんですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中国大陸では、広西壮族自治区治区北部の、貴州省や湖南省に接した山地帯の標高800~1700m付近に、比較的普通に見られる。分布域は、いわゆる“南嶺”に相当するが、その東の延長である福建・広西・浙江の山地帯に及んでいるものと思われる。「雲南植物志」によると、雲南省にも分布が及び、ユンナンアジサイの分布域をほぼカバーするごとく示されている。

「中国植物志」や「雲南植物志」では、カラコンテリギとユンナンアジサイの区別点を、「果実全体に対する上端部の長さの比率」に求めているが、著者の検した限りに於いては、有意な安定的指標形質ではないように思われる。ユンナンアジサイに於いては、雄蕊の葯や小花序柄や果実などが強く紫色を帯びること以外は、両者の客然たる区別点は見出されない。ユンナンアジサイのうち、雄蕊の葯などが紫色を帯びずに、葉の軟毛が少なく平滑な個体は、カラコンテリギと区別し難く、それらの個体をカラコンテリギとしているのかも知れない。しかし群落全体として見れば、大半の個体は葯をはじめとした各部位が紫色を帯び、植物体に軟毛が多く、固有の形質を備えた独立種ユンナンアジサイとして一括して良いのではないかと思われる。

カラコンテリギは、広西壮族自治区北部の、龍背、花坪原生林、芙蓉村、および湖南省側の南山で撮影を行った。生育地での個体数は多いが、必ずしも一様に生えているわけではないようで、隣接した猫児山や興堂山では未確認、これまで確認し得た地域は蛇紋岩地質帯の周辺であり、猫児山はそれとは異なる花崗岩地質地帯であることと関係しているのかも知れない。なお、カラコンテリギ生育地では、巨視的に見れば同所的分布しているはずの、ヤナギバハナアジサイHydrangea kwangsiensisと思われる種は確認していない。




広西壮族自治区花坪原生林。2010.6.26




湖北省南山~広西壮族自治区芙蓉村。2009.5.19




 
右の地質図の、上右半部は石灰岩地帯(猫児山以東)、上左半部は蛇紋岩などを交えた地帯(花坪・龍背・芙蓉村・南山)



 
夕映えの花坪原生林。2004.8.1             龍背棚田(谷を挟んだ林内にカラコンテリギを豊産)2009.1.24






広西壮族自治区龍背県芙蓉村。2009.5.20。この季節、分布下限付近で開花最盛期、上限付近では蕾からちらほら開きかけ(ガクウツギ、ヤクシマコンテリギ、トカラアジサイ等と、ほぼ等しい状況)。





 
芙蓉村。2009.5.20




南山~芙蓉村。カラコンテリギ生育上限付近(標高1500m以上)では、ガマズミ属の種と混在する。開花はカラコンテリギのほうが遅く、ガマズミ属の花が純白なのに対し、花序が開ききっていないカラコンテリギのほうは、黄色っぽく見える。



 レンプクソウ科ガマズミ属の一種





南山~芙蓉村。2009.5.19。ピンクの花は、バラ属の野生種。







広西壮族自治区花坪原生林。2010.6.25-26








広西壮族自治区花坪原生林。2010.6.25-26








広西壮族自治区花坪原生林。2010.6.25-26






広西壮族自治区:(下3枚)花坪原生林2010.6.26/(中左)龍背2006.5.13/(中右)龍背2004.4.24/(上2枚)芙蓉村2009.5.20/(中3枚)南山[湖北省南端部]2010.5.19
下右2枚:花序柄を欠く(=花序の基部に一対の宿存性苞葉を有する)という「ガクウツギ亜群」の特徴は、ほとんどの個体で表現される。




広西壮族自治区:花坪原生林2010.6.26/龍背2010.6.18/芙蓉村2009.5.21)/南山[湖北省南端部]2009.5.19





葉質(軟毛の密度、葉脈に沿った凹凸の程度、ほか)や、概形、色調(しばしば裏面が紫色を帯びる)、装飾花の大きさや概形などは、極めて変異が多いが、全て個体変異の範疇に入ると思われる。正常花雌蕊(果実)の子房や柱頭の形状は極めて安定している(ユンナンアジサイ、ヤエヤマコンテリギ、トカラアジサイ、ヤクシマコンテリギ、ガクウツギなど、ガクウツギ亜群の各種を通じて共通)。広西壮族自治区:(下2枚)花坪原生林2010.6.18/(上左)龍背2000.0.00/(上右)芙蓉村2009.5.20/南山[湖北省南端部]2009.5.19



平均的形状の葉。概形はヤクシマコンテリギに似て細長いが、通常、縁の鋸歯は浅く、先端の伸長もそれほど顕著ではない。葉脈沿いの凹凸が顕著で、細脈が明瞭に表れ、裏面には軟毛を密生する個体が多い。広西壮族自治区花坪原生林2010.6.26




広西壮族自治区:花坪原生林2010.6.26/芙蓉村2009.5.21/南山[湖北省南端部]2009.5.19




広西壮族自治区:花坪原生林2010.6.26/芙蓉村2009.5.21/南山[湖北省南端部]2009.5.19



葉裏に軟毛を密生し葉脈の細脈が顕著に出現する個体、葉裏が紫色を帯びる個体、やや革質で毛が少なく平滑(細脈は不明瞭)な個体など、様々なタイプが見られる。広西壮族自治区:花坪原生林2010.6.26/芙蓉村2009.5.21/南山[湖北省南端部]2009.5.19




カラコンテリギの花を訪れた、オオヤマミドリヒョウモンとクモガタヒョウモン。広西壮族自治区龍背県芙蓉村(観光地として有名な湖南省の“通称”「芙蓉鎮」とは全く別の、広西/湖南省境の農村)。2009.5.21




カラコンテリギの花で吸蜜中。ゼフィルス(ミドリシジミ族)? それともカラスシジミ族? 芙蓉村。2009.5.20




Qercusの葉上で占有中のメスアカミドリシジミ属の一種(♂) 芙蓉村。2009.5.21





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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第39回)

2011-06-17 09:12:58 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2d)台湾・中国大陸【カラコンテリギ/ユンナンアジサイ】

国外産のガクウツギ・トカラアジサイの仲間は、台湾、フィリッピン・ルソン島北部(台湾とルソン島は、生物相に幾許かの共通性を示し、非常に興味深い)および中国大陸南部(主に広西壮族自治区北部の、貴州省や湖南省に接した山地帯)産のカラコンテリギがあり、トカラアジサイとも、ヤクシマコンテリギとも、ガクウツギとも、それぞれ共通点を持っていて、僕は全てひっくるめてカラコンテリギあるいはガクウツギとしても良いのでは、と考えています。狭義のカラコンテリギ分布圏の西に隣接する、雲南省西部から、おそらくミャンマー北部・ヒマラヤ地方東部にかけては、やや特異な形質を持つ近縁種、ユンナンアジサイが分布しています。

この10数年来、南西諸島と並行して、というよりむしろこちら(中国大陸&台湾)を主体に探索行を続けています。というわけで、やはり書きたいことが山ほどあるので、詳細は改めて述べることにし、今回は写真とごく簡単なコメントを示すに留めます。

■カラコンテリギH.chinensis
台湾(撮影地:北部山地合歓山の標高2000~2500m付近と、南部山地鶏頭山の標高1500m付近)
ルソン(北部山地から記録がありますが、冬期に訪れたため未調査)
中国大陸南部(撮影地:広西壮族自治区/湖南省境付近の南嶺山地の標高700~1500m付近)

■ユンナンアジサイH.davidii
中国大陸西部(撮影地:雲南省西部/ミャンマー国境付近の高黎貢山の標高1800~2300m付近)



カラコンテリギ 広西壮族自治区南嶺山地(右は野生バラの一種)






カラコンテリギ 広西壮族自治区南嶺山地




カラコンテリギ 広西壮族自治区南嶺山地





カラコンテリギ 台湾合歓山



 
ユンナンアジサイ 雲南省高黎貢山

 






ユンナンアジサイ 雲南省高黎貢山



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朝と夜のはざまで My Sentimental Journey (第38回)

2011-06-16 14:29:59 | 野生アジサイ



野生アジサイ探索記(下2c)4口永良部島産トカラアジサイHydrangea kawagoeana











口永良部島は屋久島と目と鼻の先(最短距離12km)にありますが、屋久島産(ヤクシマコンテリギ)とは著しく異なります。葉は厚い革質で、色が濃く、縁の鋸歯の切れ込みは細かく、葉裏が紫色の幻光を帯びることはありません(代わりにしばしば葉表が紫色になる)。全体として、黒島産と口之島産の中間的な様相を呈します。




口永良部島は、装飾花がしばしば赤味を帯びます。







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