青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

僕の陰謀論、熱中症の原因は冷房!

2024-07-31 21:53:38 | 雑記 報告


この2週間ほどの経過報告です。



左足の親指の痛風、その後、左くるぶしの激痛が始まりました。疲労骨折なのか、痛風に拠るものなのかが分からず、レントゲンを撮ったところ、どうやら骨には異常がない。

午後なると、左脚全体が(腿の辺りまで)パンパンに膨れ上がります。まあ、朝起きてから一休みもせずに椅子に座ってパソコンに向き合っている(あるいは膨大な数のフィルムを延々と整理している)ので、その影響に拠るものであることは確かには違いないでしょうが(いわゆる「エコノミークラス症候群」?)。10年前の康定の病院での左足切断直前の時と同じ状態(でも紫色になるとかまでは行かない)。

夜就寝中に腫れは引くのですが、今度は激痛が始まる。朝は余りの激痛で身動きが取れません。医師は血栓の可能性があるというので監査をしたのですが、異常は有りません。

激痛だけならまだしも、猛烈な眩暈と吐き気(何度も吐き戻している)に襲われます。フィルムのチェックやパソコン作業を行っていると、テキメンに気分が悪くなる、そして吐いて戻す。

病院に駆け込んだら血圧が200超、点滴を打って座薬を貰って、、、と言うところまでは、この間ブログにも書いたと思います。

その激痛と吐き気による7転8倒が一週間ほど続くのです。そして突然ピタリと収まる(踝の脹れも激痛も猛烈な吐き気も)。

その後数日間は、全身の猛烈な痒み。激痛自体は収まったのですが、吐き気と眩暈のほうは、再び復活してきた。酷い時は、食べたものを全部吐きだしても吐き気は収まらず、意識が希薄になってきます。

吐き気の理由は、ルーペと(100均)眼鏡で終日パソコンに向き合っての、オーバーワークに因を発していることは間違いなさそうなのだけれど、それだけでここまで酷くなることはないと思う。



思い当たる節があります。

猛烈な吐き気に襲われるようになったのは、冷房を入れ出してからです。汗がフィルムや収納ファイルに滴り落ちて、作業がはかどりません。それで、フィルムを扱っている時にだけ冷房を入れることにした。冷房嫌いの僕としては未曾有の決断です。

どうやら、それが吐き気の引き金(もちろんオーバーワーク自体が主要因ではあるのでしょうが)となっていたようで、冷房使用を完全に止めたら、その後はかなり収まっています。

もう一つ、薬の服用も一因となっているのかも知れない。なんだかんだで医者から10種超の薬の服用を命じられている。血圧と痛風と、あとはどれがどれかよく把握していない。公表は出来ない(医者や看護婦に叱られる)のだけれど、普段は飲んでいません。でも辛くなった時は、それらを服用。すると吐き気が倍増して吐き戻してしまう。

冷房と薬の服用を止めてからは、吐き気眩暈はかなり治まり、左足の激痛も嘘のように無くなってしまっています。

でもそれに代わって、2~3日前から風邪を拗らせ、いつものごとく胸に痰が詰まって、苦しいことこの上もありません。

それに加えて、一昨日から右目の周辺が爛れるように腫れてきた。あと半端ない全身(特に手足)の痒み。

昨日からは、これまでとは逆の右足親指の痛風がスタートし、今日に至っています。

もう何年も前から(11年前の“どんぐり事故”あるいはそれよりも以前から)大体似たパターンの繰り返しのような気がします。

その都度いろんな検査を受けても、ほとんど異常はないのです。はっきりしているのは、脊椎欠損と、逆流性食道炎、痛風、高血圧ぐらい、ほかは至って正常であるようなのです。

今は医療が進んで、夫々の症状ごとに、夫々の対象機関(眼科とか皮膚科とか歯科口腔科とか耳鼻咽喉科とか呼吸器科とか神経外科とか)で別個に診察を受けねばなりません。もちろんそれはそれで意味があることは分かりますが、医療の本質と言うのは、もっとトータルに、俯瞰的に見渡す、ということにあるのではないかと、そのことが疎かにされてしまっているのではないかと、思ったりするのです。

今回の一連の苦しみの原因(その一因)は、冷房と薬です。後者については別の機会に考察を行うとして、冷房については、“諸悪の根源”と、断言しておきます。



「陰謀論」と言われれば、それでも良いです、甘んじて受け入れます。陰謀論とは、つまるところ正論に対する異論なわけで、正義の側の立場からすれば、困る存在です。都合が良いことにというか、所謂陰謀論の多くは、胡散臭く感じられるイメージを纏っているのですね。よって切り捨ててしまうに当たって違和感がない。でも、理論として成り立つか否かはともかくとして、全ての異論には(陰謀論にも)、“一片の事実”が含まれているはず。よしんば正論を推し進める上に於いても、異論は大切な存在です。切り捨ててしまうなど、勿体ない事この上もない。



熱中症の最大の要因は冷房にあります。

看護婦さんたちからはボロクソに言われますね。貴方の症状は典型的な熱中症です。冷房を付けないからこんなことになる。絵に描いたような熱中症。なのに冷房を拒否する年寄りがいる。だから年寄りは困る、と。

違うんだよね。回り回って、(老人が)冷房システムに殺されているのです。

コロナとマスク(ワクチン)の関係と同じ。マスク着用、ワクチン接種、それ自体は別に反対しません。時と状況次第では、大きな意義があると思います。問題なのは、マスク絶対、ワクチン絶対という根本姿勢。その姿勢が、本質的な問題解決を妨げているのです。

コロナはただの風邪(の強力なやつ)。そして、ただの風邪は最も怖い病気。その前提で取り組むべきで、なにも特別なものではない。

マスクで逃げて、ワクチンで排除する。それを絶対的な正論として対し続ける限り、未来は見えてきません。

熱中症。何度でも言います。夏が暑いのは当たり前です。確かに以前より暑くなったようですが、2°や3°です。暑さの性質が異なっていることも確かかも知れないけれど、我慢すれば良いのです。

それもこれも過剰冷房(あと車社会)のせい。根本を改めねば、解決はしない。目前の結果だけ、自分にとって楽な事だけをひたすら求め、全体のこと、将来のことを俯瞰的に捉える努力をしない。

皆、冷房に慣らされ、冷房を入れないとヤバい、、、冷房に頼り切っていることに拠る因果関係で、ますますおかしくなっていくことに、誰も気付いていないのです(アメリカの銃社会を批判する人が、冷房や車社会を批判しないのは不思議でなりません)。



ということで、窓を開けっ放して、庄内盆地を一望の許、風を呼び込んでいます。ベランダの手すりをシーツで覆って、真っ裸になって、汗びっしょりのまま、その都度タオルでふき取りつつ、一日何度も水風呂に使ったりして、作業を続けています。

毎朝7時起床。クマゼミの大合唱を窓から受け入れ、大谷君のドジャースや(復帰したレンヒ―フォなど)エンゼルスの結果をチェックし、トーストと麦茶で朝飯、夜2時まで途切れることなく延々と作業を続けます。

夜になって気が付くと、いつの間にか侵入したカメムシ(チャバネアオカメムシ)で天井が真っ黒に埋め尽くされている!でも、朝目が覚めたら、一頭残らず姿を消してしまっています。薄明時に外に出てしまったようです。

セミと(ウンカやヨコバイとも)同じですね。ヒグラシは朝夕の薄明時に大合唱するだけでなく、地面と樹上への上下移動をしているようです。僕の観察では、朝は東北飯豊山(エゾハルゼミ)と九州大崩山で、夜は中国成都(青城山と玉塁山)などで、大規模な乱舞に遭遇しています。



「屋久島の植物」第2巻も200頁を超しそうです。柱となるのは、ヤクシマオナガカエデ(with世界のウリカエデ類)、ヤクシマキイチゴ・リュウキュウイチゴ複合種(and世界のモミジイチゴ類)、ヤクシマスミレ(屋久島・奄美大島・沖縄本島・八重山諸島産の比較)。デジタル写真を探し出し、ポジフイルムをスキャンし、原版写真が見つからないものは、既刊の自著の写真をコピーし、様々な論文をチェックしつつ、時間が惜しいのだけれど吐き気を回避する為に一区切りするたびにベッドに横になり、何度も水風呂に使ったりして、延々と作業を進めています。8月の中旬には、何としても(せめて第二巻までは)完成に漕ぎ着けたいと、必死で頑張っている次第です。






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報告 野生レタス

2024-07-22 12:26:11 | 雑記 報告


お金が無くて(生活保護の手取り1万円前後、光熱費引くとほとんど残らない)、食事もままなりません。餓死寸前の身寄りのない老人が助けを求めても誰も(そうです、殊にブログの読者諸氏!)助けてくれない。日本人はなんて冷淡なのだろうと、毎度のことながら哀しくなってきます(“趣味”で人助けする人はいっぱいいるのに、、、被災地とかウクライナとか、、、でも目の前の困窮者には誰も手を差し伸べようとはしないのです)。

といって、餓死してしまうわけにもいきません。なんとか入手した数日分のお米、これで後10日間凌がねばならない。問題はおかずですね。毎回マヨネーズご飯では、少々辛いです(食後の後口が悪い)。そこで、無料野菜を調達することにしました。さっき、シルビアシジミをチェックに行ったのですが、そこに生えていた(秋になると一面に薄黄色の花が咲く)アキノノゲシの新葉を採って来て食べることにしました。まず熱湯に晒して、次にご飯と一緒に炊き込みます。これが期待に違わず美味しかった。生葉の猛烈な苦みが全く消えて(それはそれでちょっと不満)、トロリとした甘みが感じられ、レタス特有のシコシコ感もどことなく持ち合わせているようにも感じられます。

僕の植物関係のライフワークは、1に野生アジサイ、2に野生のレタス「麦菜」なのですが、前者は修復HDD(後7万円の支払い)を取り戻さないことには再スタートできず、後者はほぼ全資料を中国広州のモニカ宅に預けたままです(捨てられていないか心配している(-_-;))。結構重要なデータ(中国各地の人々から得た油麦菜/苦麦菜の普及度のリストなど)が入っていて、入手後には調査再開しよう思っているのです。

概要を思い出すまま箇条書きに整理記述しておきます。



アキノノゲシ属

亜属A

●アレチヂシャ(トゲヂシャ) Lactuca serriola(≒Lactuca sativa)

中東~地中海東南岸に自生、現在は帰化雑草として世界各地に広がっている。野菜のレタスの原種のひとつ。

●レタスLactuca sativa

アレチヂシャを古代ヨーロッパで改良した野菜。サラダとして生食(中国に於ける該当野菜「生菜」は通常生食せず煮て食べる)。

●油麦菜Lactuca sativa

種(Species)としてはレタスと同じ。別経路で中国に於いて野菜として展開。かつては利用地域が南部などに限られていたようだが、現在では全土に普及して最重要野菜のひとつとなっている。多くの品種がある。

亜属B(亜属C以下は省略)

●アキノノゲシLactuca indica

東アジアに広域分布する野生種。現在では各地の人里に広く見られることから、どの地域の集団が在来種で、どの地域の集団が2次分布かの判断は困難(そのことは地中海周辺のアレチヂシャについても言える)。日本産は「史前帰化植物」とする見解があるが、その確かな根拠はない。

●苦麦菜Lactuca indica

アキノノゲシを改良したローカル野菜。つい最近までは、中国南部のごく限られた地域(広東省西部や広西壮族自治区の一部)でのみ利用されていた(他に海南島とジャワでも利用されている由の文献記録がある)。近年、中国南部を中心に急速に利用が広まり、身近な重要野菜の一つとなっている。油麦菜同様に、多くの品種がある。ちなみに日本に於いては、食用として利用されている記録は見当たらない。唯一、西表島に於いてかつて利用されていたとの報告を得ている。



なお、現在沖縄では、同じタンポポ連の別属野生種ホソバワダンCrepidiastrum lanceolatumが「苦菜」の名で食用化されていて、中国に於ける「油麦菜」「苦麦菜」同様に、スーパーなどで主力野菜として販売されている。ただし沖縄同様にホソバワダンの野生株が多く生えている屋久島を含む南九州では、食用としての利用は聞かない。

・・・・・・・・・・・・・

今日撮影した写真4枚と、2014年刊行「海の向こうの兄妹たち(上)」第4章「東洋のレタス“麦菜”の謎~野菜になった雑草アキノノゲシ」に使用した200枚近くの写真から一部をピックアップして紹介しておきます。








さっきご飯と共に炊き込んだもの。マヨネーズ付けないほうがさっぱりしていて美味しい。








これ(アキノノゲシ野生株)を摘んできた。葉の形は様々で、「苦麦菜」各品種とも軌を一にする。








中国ではこんな風にして食べている。右から「生菜(レタス)」「油麦菜」「苦麦菜」。広東省河源市のホテルにて。






苦麦菜入りの肉ドンブリ。広東省翁源県。








深圳のスーパーにて購入。

左から、生菜(レタス)、油麦菜、苦麦菜。






手前から、苦麦菜、油麦菜、生菜(レタス)。河源市。






街角でも売っている。広西壮族自治区悟州市。








皆、苦麦菜を買っていく。広東省翁源県。










苦麦菜の栽培。悟州市。














苦麦菜。広西壮族自治区融水県汪洞。様々なタイプの葉の品種が栽培されている。





苦麦菜。翁源県貴聯。






「苦菜(ホソバワダン)」を使った料理。沖縄県伊平屋島。






ホソバワダン野生株。








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報告 シルビアシジミほか

2024-07-18 21:13:11 | 雑記 報告


左足の激痛と、屋久島関連の仕事で、この一か月近く、部屋に閉じこもっていました。

でも、あれほど七転八倒して苦しんでいたのが、いつの間にやらほぼ全快、まるでキツネに抓まれたみたいに、、、。結局、脊椎狭窄症と痛風なんでしょうかね。



屋久島植物図鑑全4巻800頁に取り組んでいて、とりあえず第一巻240頁が完成、当然次は第二巻に取りかかります。

東京から移動したダンボール箱16箱に、無数とも言えるポジフィルムが入っていて、まずその中から屋久島の植物関係のポジフィルムをセレクトしなくてはなりません。これがもう大変な作業で(なんせ膨大な量の中国関係、昆虫関係も一緒に突っ込んでいる)、けれど、やらないわけに行かない。数日かけて屋久島の植物を引っ張り出して、それを科ごとに選り分けました。

ところが、そこで大変困った事態が勃発。第二巻の柱になるのは、キイチゴ属(ヤクシマキイチゴ・リュウキュウイチゴを含むモミジイチゴ種群)と、カエデ属(ヤクシマオナガカエデと奄美・台湾産近縁種を含むウリカエデ種群)で、それらの写真については、以前から纏めて選り分けていたはずなのだけれど、それが一枚も出てこない。そんなバカな、と思いつつ、3日がかりでダンボール箱16箱分の写真を、改めて一枚一枚隅から隅まで再チェック。結局出てこなかった、、、。諦めるしかありません。で、最後に隅っこにあった小さな袋をヒョイと開けてみたら、そこに保管してたのです。目出度し目出度し、と言って良いのでしょうか?



そんなわけで、激痛と屋久島は一段落、5月末のミズイロオナガシジミ以来、ほぼ2か月振りに、フィールド(と言っても徒歩5分)に出てみることにしました。まずはシルビアシジミのチェックですね。春に多数発生していた公団アパート3号館の中庭は、奇麗サッパリ芝生になってしまって、姿を消してしまった。それで、去年観察していた1号館の向かいの、公園裏口の草地に行ってみました。去年は7月初めに丸裸になっていたのですが、今年はまだ草刈りが行われていず、茫々に繁ったままです。シルビアシジミは結構沢山飛んでいました。

草原に接した水道施設の空き地にも行ってみた。新鮮な雄が葉上に泊まっていました。2~3m程離れて、新鮮な雌も葉上に。突然雌が飛び立った。雌も飛び立ちます。縺れ合って、この後目まぐるしく雄求愛→雌拒否行動が繰り広がられると思いきや、一瞬の間に交尾成立です。

それで、ここぞとばかり、写真をどっさりと写して置きました。そのあと、久しぶりに池を半周。一時間近く経って戻ってきたら、まだ同じ場所で交尾中です。この際、交尾が解けるまで観察し続けるつもりでいたら(と言ってもソーシャルオフスの方が食料持って来てくれるので夕方までには戻らねばならないので途中で断念もやむなしと思っていた)、ちょうど交尾成立から一時間後(午後1時57分→午後2時54分)、突然終了、しばしそのままの姿勢(最後から2枚目)でいたのち、ともに飛び去っていきました。





















ということで、これからまた「屋久島の植物」第二巻に集中します。









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「屋久島の植物~大和と琉球と大陸の狭間で PartⅡ」第一巻

2024-07-12 14:04:11 | 「現代ビジネス」オリジナル記事



「屋久島の植物~大和と琉球と大陸の狭間で PartⅡ」第一巻(240頁)が完成しました。前書きをブログに掲載しておきます。



はじめに



昔、TVで「アップダウンクイズ」というのがあった。正解するごとに椅子が登っていき、全問正解するとてっぺんでクス玉が割れて、ハワイにご招待!という趣向である。仲間内で都市伝説になっている回がある。当時アマチュア蝶研究者の第一人者(図鑑を沢山出していた) W氏が挑戦した。あと一問、というところまで漕ぎ着けた。番組側も出場者が蝶研究のオーソリティであることを知っているので、最後の一問は忖度して、蝶に関した(チョウ好きなら誰でも答えられるであろうはずの)問題を出した。曰く、「毛虫になるのは蝶ですか?蛾ですか?」 W氏、う~ん、と唸ったまま答えられずに時間切れ、あえなくハワイ行はおジャンになった。何処までが本当なのかは知らないが、まあそんな話である。



著者も、屋久島の植物のオーソリティであると自負している。けれど、「屋久島に固有種は何種?」と尋ねられたら、答える自信はない。敢えて言うなら、「△△大学のxx教授の見解では00種(自分は必ずしも賛同しないけれど)」と答えるしかない。「じゃあ、貴方は何種だと考えていますか?」と問われても、分からないとしか言いようがない。



野生の生物の世界は、とてつもなく多様で複雑だ。人間の都合で、そう易々とカテゴライズ出来るものではない。場合によっては、曖昧であることこそ、より責任を持った答えになることもある。屋久島の最大の魅力は、「多様性」ではなかったか? なのに、表向きは「多様性」を標榜しながら、ステレオタイプの(「縄文杉」「もののけの森」等々)対象に一極集中していく。「多様性」は、まるでファッションの一部のように、いかにも分かりやすく説明されて、深い考察は為されないままでいる。勿体ない限りである。



というわけで、本書では「固有種」という表現を出来る限り避けた(分布北限・南限の表現も曖昧に行った)。教科書的に決めつけた解釈を行うことは、「思考停止」と同義語である。様々な角度から光を当てることで、時には答えが逆転することもある。答えを示すことではなく、深く考察することに意義があると思っている。



一言で「固有」と言っても、概念は様々だ。例えば、島に隔離された生物に、多かれ少なかれ変化が齎されることは、当然ともいえる。たかだか数万年、いや、数千年、数百年、場合によっては数十年でも、安定的な形質の変異が起こることもある。そのような外圧に拠る2次的な変異集団であっても、その空間にしか存在しなければ「固有」ということになる。「固有」(他の空間の存在との相違)の程度に関わらず、厳密に「屋久島だけに固有」となれば、大いなる評価が与えられる、



一方、数百万~数千万年前から、祖先形質を引き継いだまま、他の集団との交流が為されず、現在に至っている生物もある。ただし、そのような生物の多くは、屋久島だけに固有と言うわけではなく、近隣島嶼と共通の「地域固有種」、あるいは本州や北海道、台湾や中国大陸など飛び離れた地に共通分布する「隔離分布種」である場合が多い。厳密な意味では「固有種」には相当しないわけである。



ネットで資料を調べていたら、こんな例に出会った。屋久島ではなく奄美大島なのだが、この島の(他に近縁な種が存在しない)究極の固有種であるヤドリコケモモ。確か環境庁のリストだったと思うが、カテゴリーが「広域分布種」となっていた。実は最近になって台湾の一角で、同一種と見做される集団が見つかった由。それでもって「固有種」から除外されてしまったわけだが、台湾と共通分布することに拠って価値が薄らぐわけではない。むしろ、興味が倍増するのだが、お役所的には、そのようにして「優劣」の答えを示さねばならぬのである。







台湾と共通と言えば、屋久島に於ける究極の固有種ヤクシマリンドウもそうである。この種の近縁群は、中国の奥地や東南アジアの山岳地帯に数種が分布しているが、ヤクシマリンドウとの間には形質上相当の差異がある。ところが、台湾最高峰の玉山頂上の岩壁に、ヤクシマリンドウそのものが生えている、という情報がある(筆者も写真を確認したが、答えを出すのは控える、様々な意味で、様々な可能性が考えられる)。それについては現時点で全く検証されていないのだが、場合によっては、究極の固有種から、広域分布種に転落(?)してしまうわけだが、むろん、そのことで存在の意義がこれっぽっちも薄らぐわけではないのは「ヤドリコケモモ」の場合と同様である。



堀田満(1935~2015)は、それらをひっくるめて「固有的植物」という表現をしている(それと対応すると思われるのが「雑草的植物」)。捉え方に拠れば、屋久島産の在来植物(その判断はかなり難しいけれど)は、全てが何らかの意味で(次元の異なる)「固有的」な存在ではないかと思える。



分布南限・北限についても同様。極端な話を言えば、解釈の仕方(種全体の中での屋久島産の位置付けの切り取り方)次第で、全く逆の答えが示されること(視点Aからみれば南限とされていたものが、別視点Bからみれば北限となるなど)もあり得るわけだ。それらの可能性も踏まえて、こちらも大雑把に「南限的」「北限的」という表記をしておく。



ちなみに初島住彦(1906~2008)は、南西諸島のフロラの区分を「北琉球(屋久島・種子島・トカラ火山列島)」「中琉球(奄美群島・沖縄本島)」「南琉球(宮古諸島・八重山諸島)」に三分割した。非常に理にかなった区分であり、筆者もそれに従う(詳しくは第4巻で述べる予定)。



さて、カテゴライズは避ける、と先に記したが、全く示さないでおくのも読者に対して不親切なように思える。そこで、大雑把に、(上記堀田満氏の私的提案に拠る「~的」表現を含み)独自の判断でおおまかな基準を設置してみた。



太字種:

固有的植物/純在来種/遺存・隔離的植物/重要分布(北限域・南限域の一部)種など、人為の影響に基づくことなく屋久島に生育している種。

細字種:

雑草(雑木)的植物/新帰化種/史前帰化種/国内帰化種/広域分布種(の一部)など、人為に拠る影響を基に、屋久島に存在する種。



高:高地帯/森:山地帯(中腹)=ヤクスギ林/照:低地帯、照葉樹林/里:人里周辺/渓:渓流沿い

/海:海岸沿い/逸:園芸・栽培植物またはごく最近の帰化(逸脱?)植物



(例)カンツワブキFarfugium hiberniflorum 渓 【(APG分類に拠る)キク科サワギク連】



形質の記述は原則として割愛した。草(樹)高、花(または装飾花・頭花・密集花序)径、開花期などについては、第4巻のチェックリストに、おおよその目安で示す予定でいる。



和名は、

原則としてより古くから利用されている名を優先表記=例:ヤクザサ(ヤクシマダケ)。

主な異名を()内に示す=例:ムラサキムカシヨモギ(ヤンバルヒゴタイ)。

著しい地域特徴を示す集団には新たな和名を冠する=例:アズキヒメリンドウ(ヘツカリンドウ)。

下位分類群を優先表記した場合は〈〉内に上位分類群名を示す=例:アマクサギ〈クサギ〉。

上位分類群を優先表記した場合は[]内に下位分類群を示す=例:オオジシバリ〔アツバジシバリ〕。





科の分類はAPG分類(分子生物学的解析に拠る分類方式)第2版を基に構成し、一部第3版の情報を取り入れた。掲載順は、基幹的分類群から進化的分類群の順に為されたAPG分類とは逆に、(あくまで便宜的な事情から)進化群→基幹群の順に遡って配置した。ただし、頁構成の都合上、必ずしも厳密にAPG分類順に沿わず、適時順を組み替えながら行った。



第1巻は、被子植物中最も新しい時代に出現・繁栄したと考えられる所謂「キク類Asterids」で纏めた。

キク科やキキョウ科から成るキク目と、周辺のマツムシソウ目(スイカズラ科など)、セリ目(セリ科、ウコギ科など)、モチノキ目(モチノキ目など)。シソ科やゴマノハグサ科から成るシソ目と、周辺のナス目(ナス科、ヒルガオ科など)、リンドウ目(リンドウ科、アカネ科、キョウチクトウ科など)。および、両者の基幹的位置にあるツツジ目(ツツジ科、サクラソウ科、ハイノキ科、ツバキ科など)とミズキ目(ミズキ科、アジサイ科)が含まれる。第2巻の所謂「バラ類Rsides」との移行群として位置づけられるナデシコ目(ナデシコ科、タデ科、ヒユ科、イソマツ科など)とビャクダン目(ツチトリモチ科など)は、便宜上、第2巻に編入した。



シソ目の多くの科はAPG分類によって大幅な組み換えがなされ、本書でもそれに従ったが、科の再編(分離・併合)は為されたにしろ、(一部を除いては)目単位での移動はなく、大雑把に見れば同じ一群(単一系統上)に置かれたままである(スイカズラ目やリンドウ目、ツツジ目に於いても同様)。従って、あまり拘る必要はないものと考える。



多くの種を紹介するキク科に関しては、連ごとに纏めて示した。コウヤボウキ亜科とアザミ亜科は単独連、タンポポ亜科はタンポポ連のほかショウジョウハグマ連が含まれる。その他の各連がキク亜科に併合されることは従来の分類と基本的に変わらないが、メナモミ連、ヒマワリ連、ダリア連などに於いては幾つかの組み換え(連の新設を含む)が為されている(文献ごとに見解の相違がある)。



いずれにしろ原則APG分類に従ったが、あくまで暫定的なものであり、必ずしもその結果に拘泥するものではない。



学名は、異なる諸見解の中から、臨機応変に選択した(原則「北琉球の植物」初島住彦に従い、新たな見解を随時取り入れた)。特に基準はなく、その結果には拘泥しない。屋久島産のそれぞれの植物が、「固有種」「固有亜種・変種・品種」「広域分布種」のどの段階に相当するかについては、対象ごとに独自の判断を下した。広義の種に編入するか、独立の分類群とするか、どちらかに振り分けたが、前者の場合、原則として下位分類群(亜種・変種など)については敢えて触れないでおいた。いずれにせよ、あくまで暫定的・便宜的な処置であり、異論を排するものではない。



和名についても、複数の名(異名や上下分類単位)がある場合、上記のごとく臨機応変に選択した。

これもまた異論を排するものではない。



使用した写真は、(2006年度のデジタル撮影品を除いて)大半がポジフィルム撮影時のものである。

大量の保管ポジフィルム(そのうちの半分ぐらいは度重なるアクシデントによって失われてしまった)をデジタルスキャンし、1987年に本が完成しながら正式出版に至らなかった「屋久島の花と自然」、および2007年に刊行を予定していたが保留したままになっていた新たな企画(それに代わって2008年に岩波ジュニア新書「屋久島~樹と水と岩の島を歩く」を刊行)を基に、全面的再編を行なった。一部の写真は存在はするが見つけ出せないでいるため、既刊の拙書からのコピライト(そのため画質が極めて劣る)または写真空欄として構成した。また、写真データに関しても、別に書き写していたメモが見つけられず、「撮影データ確認中」「撮影場所確認中」「撮影年月日確認中」と空欄にした。概ねの場所や年月日の特定は可能なのだが、慎重を期して保留した。将来機会があれば、追加を行いたい。





第一巻で紹介した各種の中で、殊に重要と思われる種を無作為的にピックアップしてみた。

カンツワブキ

イッスンキンカ

ヒメキクタビラコ

ホソバハグマ

ヤクシマシオガマ

シマセンブリ

ヤクシマリンドウ

アズキヒメリンドウ

ヤクシマシャクナゲ

アクシバモドキ

ヒメヒサカキ

ヤクシマコンテリギ

等々。

興味深いことに、それら重要種の中には、和名に「ヤクシマ」の名が冠せられていない種が多い。そして、意外に低地産の種ほど、より深く複雑なアイデンティティを有しているものが多い様に思われる。

それらの実態を知るためには、周辺の地域や、大陸産の集団との関わりの解明が不可欠である。今後の研究過程の中で、漠然とでも良いので、そのことを念頭に置いて頂ければ、幸いである。



本書を、その低地産重要種であるヤクシマコンテリギ(野生アジサイの一種)で締めくくった。加えて、末尾に筆者のライフワークである、南西諸島と中国大陸産のヤクシマコンテリギ近縁種群について、特別に項目を設けた。



第二巻は、「バラ類Rosids」

第三巻は、「基幹被子植物(所謂単子葉植物を含む)」+裸子植物(シダ類とコケ類は屋久島の生態系の中で非常に大きな魅力ではあるが、その紹介は別の機会に譲る)。

第四巻は、「フィールドガイド」を中心に、屋久島および南西に於ける幾つかの生物種群について、過去報文からの転載を行った。



著者の屋久島に関する著作としては、平凡社新書「世界遺産の森屋久島~大和と琉球と大陸の狭間で」(2001)、岩波ジュニア新書「屋久島~樹と水と岩の島を歩く」(2008)がある。前者の副題「大和と琉球と大陸の狭間」の概念に、著者の屋久島に於けるコンセプトが集約されている。本書でもそれを副題として採用し、そのPartⅡと位置付けた。ほかに候補に挙げた「屋久島はどこにある?」「海の向こうの兄妹たち」の副題も、それぞれに意味を持つものと考えている(前者は「沖縄は何処にある?」「台湾は何処にある?」も準備中、後者は中国大陸産の主に蝶類について、既に3作品を上梓)。



著者は、1960年代の初めから1980年代前半にかけての約20年間屋久島をメインフィールドとし、1980年代後半から2000年代半ばにかけての20年間は屋久島周辺地域と中国大陸を行き来、2000年代半ば以降の20年間近くは中国大陸にフィールドを絞って屋久島には足を向けていない(先月18年ぶりに屋久島を訪れた)。そろそろ屋久島に回帰する時が来たのではないかと思っている。



本書は図鑑ではない(むろん教科書でもない)。従って形質の記述は原則として行っていない。それらの事や固有種や北限・南限種の種数を知りたい人は、他の書物を参照頂きたい。本書は問題提起の書である。「学びたい人」にではなく「考えたい(調べたい)人」に読んで頂ければ、と思っている。



2024年盛夏、クマゼミの声が降り注ぐ朝に、著者記す。









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祝 「屋久島の植物」第一巻(240頁)完成!

2024-07-10 13:07:57 | 雑記 報告



ここ数日、痛風と脊椎欠損が悪化し、激痛で身動き取れん(一時車椅子生活)状態が続いていたのですが、座薬を使用することで取り敢えず激痛からは脱却しています。



今日は本の売り上げ支払日なので口座チェックしたところ、まさかの結果、1円も入っていなかった!(「近所の森と道端の蝶・福岡編」は1冊も売れていない)。手持ちの2000円であと20日は、とても無理だと思います。どうすりゃ良いのか。



「週刊中国の蝶」の時は、少なくても毎月10冊以上の売り上げがあったのですね。それが「近所の蝶」になってさっぱり見向きもされなくなった。近所とならば分母は多いはずなのだけれど、どだい「近所」と「蝶(や自然)」は結びつかないわけで、いくら「身近な自然こそ大事」と声を振り上げても、誰も振り向いてはくれません。



「中国の蝶(や自然)」は、確実に需要はあるし、供給源(競争相手)も少ないので、ひとり勝ちも可能なのだけれど、いかんせん日本における分母が少なすぎます。



「近所の蝶」 “近所”と“蝶(自然)”は結びつかない。

「中国の蝶」 需要は有っても(日本における)分母は少なすぎる。



そこに行くと、「屋久島の植物」、、、、「屋久島」といえば「植物」なのです。その“多様性”の魅力が、日本のみならず世界に知れ渡っている。需要の分母は多大です。なおかつ「多様性」を標榜しているにも関わらず、具体的にその実態について言及した書物は、ほぼ皆無と言って良い(お上発表の教科書的記述が金太郎飴的に羅列されているだけ)。



全4巻、計800頁の大作と成ります。昨日、第一巻240頁の写真組みが完成、解説文も2/3ほど書き終えているので、一両日中には印刷にかかれます(販売は紙の書籍で行うのではなく、CDまたは電子本を想定)。これで打って出ます(販売ルートなどはこれから考える、、、幾つかの目安あり)。



ということで、「近所の蝶」の売り上げゼロによる虚無感と、「屋久島の植物」第1巻完成で精神的にホッとしたことが重なってか、さっき突然、こんな将来計画を思いつきました。



ジョージが、沖縄(国頭村?)か屋久島か奄美大島か西表島に移住するとした場合、近く(500mほどの歩いて行き来できる圏内)に僕用の掘っ立て小屋を建てて貰う。「あさだち庵」と名付けて、そこ(電気水道とWi-Fiが使えれば良い)に籠る。



どうせなら、「カフェ&ゲストハウス“朝だち”」を併設しましょう。メニューはコーヒー(お茶)とジュースとトーストとサラダだけ。部屋は数人のドミトリーかカプセル方式。一泊1500円(あるいはセルフ・ビュッフェ様式で2500円)ぐらい。



上記各島なら、(本来なら余り関わりたくはないのだけれど)蝶マニアのリピーターも確保できるかも知れません。中国奥地の蝶の写真とか室内にアレンジメントしたりして。



庵主外遊中は、近所に(三世やジョージ滞在中は彼らに)キーを預けておいて、勝手に利用して貰う。



まあ、(60年間)巻き戻し16歳(1964年時点)からの青春「朝だち」挑戦ということで、いろいろ取り組んでみましょう。







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レンヒーフォとレンプクソウ

2024-07-06 21:28:21 | 雑記 報告


朝起きてすぐに机に向かい、深夜までひたすらパソコンとスキャナーに向かってフィルムの整理をしている。パソコンの画面を凝視し続けているからか、猛烈な吐き気と眩暈に襲われる。それとともに、左足のくるぶしが激痛。別にどこかに打ち付けたとかではない。疲労骨折では?と思いレントゲンを撮ったが問題なし。痛風かも知れないのだけれど、どうも感じが違う。やがて左足全体がパンパンに腫れてきた。10年前のチベット高原での左足切断危機から続いている一連の症状である。余りの激痛と吐き気で病院に行った。血圧を測ったら、測れないと。上限の240?を振り切ってしまっているのだそうだ。で、3時間ほど点滴。座薬などを処方してもらい、なんとか収まったが、この一週間ほどは連日その繰り返しである。吐き気と眩暈のほうは、パソコンに10分ほど向かった後、隣のベッドで10分ほど休む、を繰り返していたら、すこしは良くなった。左足の激痛は相変わらず続いている。朝起きると激痛→痛み止めと座薬(あるいは病院での点滴)で昼間は何とか遣り過ごす、夜になるとパンパンに腫れて来る→朝方脹れは引くが激痛、その繰り返し。痛風でも疲労骨折でもなく、血栓が原因かも知れない、とのことで、一昨日総合病院で詳しい検査をしたのだけれど、それも異常なし。原因が分からないので、お手上げ状態である。まあ、いつの間にか収まるのがいつものパターンなので(今日は少しは痛みが和らいできているし)、時が経つのを待つしかない。



レンヒーフォ、やっと規定打席に達して、首位打者に躍り出たのは良いが、去年終盤のデジャブ、よくわからない手首の炎症(バットを振った途端の激痛)で、戦線離脱だ。DLに入ってしまった(復帰は一週間後)が骨折ではなかったようなので、不幸中の幸い、早期の回復を祈るしかない。今回の突然の首位打者登場は、流石に「大リーグで最も過小評価されている選手」(僕が言っているのではなくネットのあちこちでも指摘されている)といえども、相当の話題になっている様子。なんせ、ジャッジ、スタントン、(リーグは違うが)大谷ら、錚々たる超ビッグネームを従えて、打撃成績トップに名前が鎮座している。嘘みたいな話である。僕のようなコアな(まともな)ファンはともかくとして、エンゼルスファンの多くにとっては、まさか、あのヒーフォーが?と信じられない思いでいるようだ。多くのファンは、打率は低く(→実際は首位打者)、ホームランは打てず(→実際はここ数試合連発)、足は遅く(→実際は盗塁王を争っている)、守備は下手(→実際はMLB有数のユータリティ選手)、と何故か思い込んでいるわけで、その取るに足らない存在の(ほぼ大谷の遊び相手としてしか認識されていなかった)ヒーホーが、シーズン途中とは言え、なんと首位打者なのである。それも、ジャッジ、スタントン、大谷の上に、、、。エンゼルスファンとしては、驚きと戸惑いと誇らしさが入り混じったような思いであろう、あの「小間使いにしか過ぎなかったヒーホーが堂々表舞台に」「記念にランキング表をコピーしておこう」と、結構盛り上がっていたのだが、今回のアクシデントで、案の定、一瞬の「栄光」と化してしまいかねないわけだ。



「屋久島の植物」は、全4巻800頁予定(サブタイトル「大和と琉球と大陸の狭間でPartⅡ」)、結構自信作と成りそうである。第一巻が8割がた完成、ちょうど「ガマズミ属(ムシカリ/サンゴジュ/ミヤマシグレ)」を編成し終えたところである。科名は、これまでに所属していた馴染の「スイカズラ科」ではなく、聞き慣れない「レンプクソウ科」。APG分類で劇的な変動が為されたのが、被子植物中の基幹近くに位置するユリ科群と、末端近くに位置するシソ科群である。後者は、シソ科、ゴマノハグサ科、クマツヅラ科、(群は異なるが比較的近い位置付けにある)スイカズラ科等々、一般に良く知られたメジャーな科が、“ガラガラポン”で大幅な組み直しが行われている。ブログ連載一時保留中のシオガマギク属(ゴマノハグサ科→ハマウツボ科)などもその一つ。再編後の所属科が(よりポピュラーな)「シオガマギク科」ではなくて(余りなじみのない)「ハマウツボ科」に(事務的な手続き上)なったわけで、戸惑いを感じている人も多いと思う。それでも旧ハマウツボ科には、オニクとかナンバンギセルとか、ユニークな著名種も含まれていたわけで(それにシオガマギク属自体が半寄生植物であることを再確認するためにも)ハマウツボ科を科名に冠することは、それなりに意味があることと思われる。しかしながら、「レンプクソウ科」、こちらは予想だにしなかった。オミナエシ科がスイカズラ科に吸収された一方、ガマズミ属がスイカズラ科から弾き出されてレンプクソウ科に移ったわけだが、流石に違和感満載と言える。従来のスイカズラ科の中心メンバーであるガマズミ属(とニワトコ属)が、そっくり別科に移籍するわけだから、新たにガマズミ科を設置(再導入)すれば納得がいきそうに思える。それが、ガマズミ、コデマリ、ムシカリ、サンゴジュ、ヤマシグレ、、、といったスター樹木からなるガマズミ属を差し置いて、よりによって、マイナーもマイナー、ほとんどの人の脳裏にはかすりもしないであろう、1属1種(中国産を数種に細分し、ほかに近縁数属を追加する見解あり)の、究極の地味でかつ余りにちっぽけなレンプクソウを科名に戴いた「レンプクソウ科」に移籍。レンプクソウは、僕も確かにどこかで撮影した覚えがある。けれどうっかり写したことさえ忘れてしまっていて、スリーブのまま写真を切り離してさえいない(慌てて探したけれど見つからなかった)。存在を無視していたのである。なんせ学名Adoxaからして「栄光に値しない」「取るに足らない」の意味である由。十両に一場所かすっただけのほぼ無名の関取が、横綱大関人気三役力士たちを部屋付き親方に差し置いて一門の長に祭り上げられてしまったようなものである。それもこれも、「ガマズミ科」より「レンプクソウ科」のほうが(地味とは言え広くヨーロッパまで分布すること、どの科に入れて良いのか分からなくて取り敢えず独立の科が設置されていたことなどから)先に記載済みで優先権が与えられるという事務的なルールに従わざるを得ないことに拠る。似たような例が以前にもあった。ミカン科は一時「マツカゼソウ科」として示されていた。やはり違和感満載ではあったが、いつの間にか「ミカン科」に戻されている(経緯については未チェック)。こちらも「ガマズミ科」にしちゃって良いのではないだろうか。学名は事務的な呪縛から動かせないとしても、和名は自由である。細かい事を言えば、例えばアゲハチョウ科は「キアゲハ科」(もしくは「セイヨウキアゲハ科」)でなくてはならないわけで、流石にそこまではと、「アゲハチョウ(種としては東アジアに固有)科」の慣例表示が為されているわけだ。しかしながら、「ガマズミ科」はそこまでポピュラーな名ではないわけだから、お上に従うとなれば、「レンプクソウ科」でなくてはならない。教科書や図鑑の表記は、APG分類(第2版)に従って、一斉に「レンプクソウ科」と書き換えられた。ところが、この問題は、あっけなく(二転三転)解決してしまったのである。改めて調べ直したところ、「ガマズミ科」のほうが「レンプクソウ科」よりも先に記載されていることが判明し、APG分類第3版では、無事?「ガマズミ科」と表示されることが決定、教科書や図鑑は慌てて再訂正が為されるわけで、滑稽なこと極まりない。「科学的」であることなど、まあその程度の意味合いしかないのだと思う。いずれにせよ、「レンプクソウ科」は、超マイナーな存在から、突然表舞台に登場するという思いもよらぬ栄光に晒されたのち、一瞬の間に名もなきマイナーな存在に逆戻りという、なんとも皮肉な運命を辿っているわけだ。水原一平氏やレンヒーホーの航跡とも重なるような(むろん彼らにはそれぞれの再復活を期待しているが)。レンプクソウも、地味でマイナーではあっても、魅力に富んだ存在ではあるのだと思う。表舞台からの退却はちょっと残念ではあるが、一瞬と言えどもその存在が知れ渡ったわけで、それはそれで良かったのではないかと思っている。「屋久島の植物」でも、「ガマズミ(レンプクソウ)科」として、名を残して置きたい。





ムシカリ(オオカメノキ)

屋久島花之江河-黒味岳 2006.4.26





Viburnum sp.

湖南省南山村-広西壮族自治区芙蓉村 2009.5.18





Viburnum sp.

テネシー州ラ・コンテ山中腹 2005.5.18















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現状報告

2024-06-28 22:06:17 | 雑記 報告


ほぼ毎日続けていた中国産シオガマギク属のブログを、突然ピタッと中断してしまってから、ひと月が経ちます。特に理由はない(後述する作品執筆への集中以外は)ので、どこかのタイミングで再開するか、もしくは「たまたま中断したままになっているけれど別に深い理由はありません、心配しないでください」といったコメントを入れておこうと思っていたのですが、そのタイミングを掴めないまま今に至っています。



まあ、実際ブログに当てる時間がないことは確かで、まるっきり偶然のきっかけから、ずいぶん前に企画していた「屋久島植物図鑑」約400種600頁の作成に取り組むことになって、寝る間も惜しんで膨大な作業を続けているのです。よって、シオガマギク属の再開はいつになるか分かりません。



それで明後日に月が替わることだし、ここらで現状報告をしておこうと。タイミング、と言うことで言えば、ひと月余り前、エンゼルスのレンヒーフォ選手が、規定打席に達して打撃成績上位に顔を出しそう、という話もしたのですが、トップ3に顔を出した翌日にインフルエンザに罹ったとかで登録抹消、再び規定打席不足で引っ込んでしまった。



そのレンヒ―フォ選手が、昨日再び規定打席に到達、のみならず、今日ナ・リーグの首位打者に躍り出ました。大谷選手もア・リーグの首位打者(打点がもう少しで三冠王)、いやもう、喜ばしい限りです(一平氏の事はひとまず置いて)。



ちらっと思うのですが、大谷君、エンゼルスに居れば良かったのに、と。強いドジャースで当たり前のように優勝するより、弱小チームで奮闘して、苦節〇年かけて栄光を目指した方が、ずっとやりがいがあるのではないか、と第三者として考えてしまいます。



大谷君が抜けて、トラウト選手も長期脱離中のエンゼルス、衆目の予想どうり下位を彷徨っています。といって、ダントツにチーム力が劣っているわけでもないのですね。西地域6球団中5位ですが、残り半分、首位は難しいとしても、2位には届く可能性が残されています。チームの打率も本塁打数も3位以内に付けているし、盗塁数はダントツ、投手防御率は最下位だけれど、大きく離されているわけではありません。



なによりも、個々の選手が頑張っている。27歳と、これからが油に乗り切る2番レンフィーフォを中心として、クリーン・アップは3番がエンゼルス生え抜きの29歳ウオード、4番5番が打者としてのピークに差し掛かりつつある助っ人カルフーン31歳とサノー30歳。



6‐9番と1番は、生え抜きの(またはエンゼルスに来てから頭角を現した)若手、モニアック26歳、アデル25歳、オホッピー24歳、ネト23歳、シャヌエル22歳、、、。ここのところ、メンバーが固定されて、各人それなりの成績(打率.250前後またはホームラン2桁)を残している。もう一皮剥ければ、これは相当に充実した戦力になり得ると思うのです(トラウトも戻ってくるでしょうし)。



大谷君も、彼らと一緒に頑張って欲しかったな、と思うのですが、大谷君が残っていたなら、(良きにつけ悪しきにつけ)現状は違っていたかも知れません。



でもまあ、今年はともかく、向こう数年間、ドジャースVSエンゼルスのワールド・シリーズが続く、ということも、まんざら荒唐無稽な夢ではないような気もします。期待しましょう。






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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 12

2024-05-31 08:07:46 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 12



今回から青山(2014)仮分類の『「舟型」の上唇を持つ種』のグループ(「舟型群」と略称)に入ります。

「中国植物志」の分類では、幾つかの種が『「嘴状」上唇を持つ種』のグループ(「嘴状群」と略称)と入り組んでいますが、便宜上、青山の検索リストの順に沿って紹介していきます。



1-2上唇は舟型(棍棒状を含む)

1₋2-1上唇は太い棍棒状で下唇は未発達、葉の基部が合着し箱状になる【Group ㉓】

1₋2-1-1黄花

斗叶群 Grex Cyathophora 华丽系 Ser. Superbae 大王系 Ser. Reges

〖56〗 P.rex 大王马先蒿

写真⓵


雲南省大理蒼山(高山稜線)alt.3500m付近. Aug.1,1995

写真⓶⓷




雲南省西北部翁水(四川省境近く)alt.3700m付近. Jul.16,2014

〖56-57-58〗は、Pedicularis属の中で特異な位置づけにある同一種群(本書では同一種とした)の色違い(黄花と赤褐色花)の種。草丈は極めて高く、数10㎝から、時には人の背丈を超えるほどになる。茎は太く毛を欠き滑らか、葉は浅い重鋸歯を伴って羽状に深裂、茎の下部から茎頂まで、多いものでは数10段に亘って、3~4枚が輪生する。葉(苞葉)の基部は互いに合着し大きな四角い箱状となる。花は「箱」の中から3~4個づつ顔を出し、萼筒部は外側からは見えない。花は、下唇が退化し、大きく発達した上唇の腹面に、痕跡的な3片が認め得る。上唇は先半の太い棍棒状で、「箱」の中から四方に突き出す。

1₋2-1-2赤褐色花

1₋2-1-2₋1上唇の毛は疎ら

〖57〗(same species as the 56)

写真⓸⓹⓺⓻⓼










四川省ミニャコンカ(海螺溝氷河末端下に発達する冷温帯原生林の林床)alt.3100m付近. Jul.2,2010

赤褐色種〖57〗および〖58〗は、基本的な構造は黄色種〖56〗と共通するが、植物体や花はより豪壮。Pedicularis属中の最大種と思われる。通常、鬱閉した暗い環境に生育し、周囲に溶け込んで、すぐ近くに生えていても見落としてしまうことがある。棍棒状の上唇の豪壮さは、並んで生えていた〖21〗Pedicularis davidiiの細い嘴状上唇と比べれば、一目瞭然。両者が同じPedicularisに所属するとは、とても信じられないほどの、印象上の差異がある。〖57〗(海螺溝産および康定産)と〖58〗(四姑娘山産)は、比較的近隣な位置関係にある3地域で撮影を行った。花色や苞葉基部の形状などには有意の差があるようにも思われるが、同じ地域、例えばミニャコンカ海螺溝の個体でも差異の幅が大きく、おそらく全て同一種と考えるべきだろう。

*ピンクの花は〖21〗Pedicularis davidii (〖57〗Pedicularis rexの茎は、写真中央上辺から、さらに上方に高く伸びている)

写真⓽⓾




四川省康定alt.3000m付近. Jul.12,2010

1₋2-1-2₋2上唇に毛を密生

〖58〗(same species as the 56)

写真⑪⑫




四川省四姑娘山(山麓の渓流沿い林縁)alt.3000付近. Jul.30,2010

〖57〗に似るが、花色が淡く、軟毛を密生し、「箱」状部の概形とその縁に流れる分離葉状部の基部の角度が、よりスレンダー。






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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 11

2024-05-29 21:39:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 11



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は径2㎝未満、苞葉の基部は合着しない【Group Ⅴ】

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は垂れ下がり気味で、側片の脊部は盛り上がらない

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1-1花は黄色

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 尖果系 Ser. Oxycarpae(以下24を除き25まで同じ)

〖19〗 Pedicularis semitorta半扭卷马先蒿






四川省黄龍渓谷alt.3200m付近. Jul.4,2005




四川省黄龍渓谷alt.3400m付近. Jun.24,1989

以下(前項の〖18〗Pedicularis superbaを含む)、〖1~17〗同様に嘴状の上唇を有し、ことに細長く時計と反対回りに弧を描いて湾曲するという点では〖4〗Pedicularis siphonanthaや〖5〗Pedicularis longifloraと類似するが、草丈が高く、総状に多数の花を付ける種を紹介していく。10数㎝から高いものでは1mを超す茎に、数枚の葉が互生・対生・輪生し、茎の上部の葉腋から派生した短い花茎の先端付近に、紡錘状の萼筒と筒部の短い花をつける。〖19〗Pedicularis semitortaは、茎が瓜肌模様で、数枚の葉が輪生。萼筒の上縁は細く突出する。花は下唇が淡い黄色~黄色、中央裂片は幅広く、側裂片共々やや垂れ下がってエプロン状を呈する。上唇は基部やや膨らんだ濃い黄色。

**「中国植物志」の分類では、本種の所属する半扭卷系 Ser. Semitortaeと、〖53〗密穗马先蒿Pedicularis densispicaが所属する蒿叶系 Ser. Abrotanifoliaeの2つのシリーズで、直管群 Grex Orthosiphoniaを構成する。

**写真のクオリティの関係から独立項目での紹介を控えたが、下写真右下方の濃紫色の花も、Pedicularis属の種であろう(花は小型で茎の上部に総状に密生し上唇が舟型)。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1-2花は白色(嘴状上唇は鮮紅色)

〖20〗 Pedicularis oxycarpa 尖果马先蒿




雲南省香格里拉近郊、標高2900m付近. Jul.9,2007

このあと紹介する〖23〗Pedicularis tortaと同じく、淡白~黄色の下唇と濃赤紫色の上唇を持ち、以下の各種同様に下唇の中央裂片が小型だが、側片は垂れ下がり気味で、嘴状上唇は余り上向きには巻かず、花冠上部から派出するように見える。その点では〖19〗Pedicularis semitortaと共通したイメージをもつ。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は横に広がり、脊部が上方に盛り上る

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1草丈は1m前後になる

〖21〗 Pedicularis davidii大卫氏马先蒿






四川省夹金山alt.3900m付近.Jul.30,2010












四川省ミニャコンカ(海螺溝氷河末端下)alt.3100m付近. Jul.3,2009

〖21~24〗は、下唇の中央裂片が小型で、側裂片が横上に張出し、後方にも伸長して花冠背方を覆う(そのため嘴状上唇が花冠の中央近くから突き出しているように見える)。上唇は下唇の色に関わらず黒みを帯びた紫赤色で、よりスムーズに下右回りに円を描くように湾曲する。萼筒上縁に小さな葉状片が派出する。〖22〗および〖25〗も同一種。〖21〗と〖22〗は、花の地色がピンク(一部白色)ということで共通するが、〖21〗は著しく草丈が高くなることから、一応別項目で扱っておく。〖21〗とした2地域の集団間にも、ある程度の有意差が認められるかも知れない。夹金山産は森林限界を超えたあたりの日当たりの良い山腹の路傍に生育、草丈は1mを超え、非常に多数の花を総状に密生する。ミニャコンカ産は氷河末端の渓流沿い湿性地、純白の花を含む草丈1m近くになる発達の良い株が群がって生えていた。夹金山産に比べれば小ぶりで、〖22〗との中間的な印象を持つ。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2草丈は10~数10㎝

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1花は濃紅色、花序に密につく

〖22〗(same species as the 21)

〖21〗に似るが、草丈は低く10~数10㎝。下唇は赤紫色。茎の上部と萼筒は濃紫。〖21〗および〖25〗と同一種。








四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010








四川省黄龍alt.4200m付近. Jul.6,2005

下唇上半部が白色。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2花は黄色または淡紅色、花序に疎らにつく

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1黄花

〖23〗 Pedicularis torta扭旋马先蒿






四川省夹金山alt.3700m付近. Jul.30,2010




四川省九賽溝alt.2500m付近. Jul.31,1991

〖21〗〖22〗〖23〗〖25〗Pedicularis davidiiと基本的な差はないが、花はやや疎らにつく。下唇は淡黄色。茎と萼筒は淡緑色。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2白花(ごく淡い紅色を帯びる)

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は白(淡い紅色)一色

〖25〗(same species as the 21)










四川省西嶺雪山alt.3100m付近. Aug.6,2009

下唇は白色。紫色紋はなく、茎や萼筒が濃紫色を帯びる。〖26〗Pedicularis moupinensisと混在する(第8回参照)。

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇の基部が濃い紅色

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 细裂系 Ser. Dissectae

〖24〗 Pedicularis petitmenginii 伯氏马先蒿




四川省夹金山 alt.4200m付近. Jul.31,2010

下唇は白色。基部に濃紫色の2個の斑紋がある。茎と萼筒は淡緑色。








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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 10

2024-05-29 09:00:00 | 雑記 報告

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 10

Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 10



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2花は茎の上部や茎頂に密生する

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は波打つ【Group Ⅶ】

1-1-2-2-2-2-2-2--2-2-2-1-1上唇は白色

〖16〗 Pedicularis rhinanthoides subsp.labellate 拟鼻花马先蒿

无枝群 Grex Apocladus 无枝亚群 Subgrex Apocladus 拟鼻花系 Ser. Rhinanthoides

写真⓵


四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010

〖17〗と同一分類群。葉は重鋸歯を伴った羽状中裂、高さ10数㎝の茎頂に濃赤褐色の斑点をもつ淡黄褐色の紡錘状萼筒が5~10ほど束生、その先に短い花筒部を伴った花が咲く。下唇はピンク色で、3片とも幅広く広がって重なり会い、若い時点から萎れ気味に波打ち、青紫色の細脈をめぐらす。嘴状上唇は純白、基部から立ち上がり、中央が膨れて、先半は極めて細い管状となって内側へ曲がりながら下伸する。

1-1-2-2-2-2-2-2--2-2-2-1-2上唇は下唇と同じピンク色

〖17〗(same as the 16)

写真⓶-⓻












四川省巴朗山alt.4500m付近. Jul.31,2010

写真⓼-⑩






四川省雅江~臥龍峠間(渓流源頭部の草地)alt.3700m付近. Jun.7,2010

写真⑪


四川省塔公~八美間(日当たりの良い高山草原)alt.4200m付近. Jul.24,2010

〖16〗と同一分類群。葉は羽状中裂、重鋸歯の先端が鋭く尖る。高さ10~数10㎝ほどの茎頂に、膨らんだ紡錘状の萼片が5~10ほど束生(詰まった総状~輪状)、その先に余り長くはない花筒部を伴った花が咲く。上方から見ると、5~10程が丸く輪生する。下唇は3片が余り分離せず幅広く広がり、若い時点から萎れ気味に波打ち、ピンク~濃ピンク色、数本の赤褐色の脈があり、中央付近は白い。上唇は〖16〗に比べ、基半部の立ち上がりや中央部の膨れは顕著ではなく、先半の細い管状部は、より捻れて曲がりくねる。萼筒は、巴朗山産で最も濃く濃赤紫褐色、雅江産では疎らな斑点を生じ、塔公産では斑紋を欠き全体が淡緑色を呈する。



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2下唇は平坦

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-2-2-1下唇は径3㎝超、苞葉は合着【Group Ⅵ】

〖18〗 Pedicularis superba华丽马先蒿

斗叶群 Grex Cyathophora 华丽系 Ser. Superbae

写真⑫⑬




雲南省白馬雪山alt.4200m付近. Jul.30,2015

茎の高くなる種では最も大型の花をもつ種の一つ。茎高数10㎝。葉は重鋸歯の羽状全裂、4~5枚が輪生し、基部が合着して大型の碗状となり、葉腋に4~5個の花をつける。萼筒は碗状の苞葉の内側に収まって外からは見えにくいが、苞葉と似た姿をしているように思われる。下唇は薄紫がかったピンク色で、径3~4㎝、左右に幅広く、背縁は盛り上がる。中央裂片は側裂片より小さく、重なり合わない。上唇は嘴状で、強く内側に湾曲し、尖端は濃色を帯び鋭く尖る。シャクナゲや針葉樹の灌木を交えた急斜面の高山礫地に、ぽつんと生えていた。

**大型種で、葉の基部が合着して箱状になることなど、〖56-58〗Pedicularis rexとの類似点が多い。本書では上唇の形状から両者を遠い類縁に位置づけたが、「中国植物志」では両者を(本書で紹介した他の全ての種とは異なる)同一グループ(Grex Cyathophora斗叶群、ただし別Siris)に置いている。









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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 9

2024-05-28 21:03:46 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 9



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2萼片は合着して壺状

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1花は10段以上に亘り均等に基  部から茎頂に向かい大型の萼筒を持つ

1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1-1萼筒や花は淡黄白色、花筒は太い【Group Ⅻ】

〖28〗 Pedicularis smithiana钩喙马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 短叶亚群 Subgrex Brachyphyllum 短叶系 Ser.Brevifoliae

写真⓵-⑤










四川省西嶺雪山(稜線上)alt.3200m付近. Aug.6,2009

茎高は1mほどに達し、細長く直立または斜上、茎の下半部には、不明瞭な重鋸歯を伴った羽状深裂の4枚の葉が輪生。茎の上半部には、長大な花序が形成され、ほぼ均等間隔に20~30段に亘り、苞葉片が対生または輪生、葉腋に、凌のある球形の萼筒を3~4 個つける。萼筒の上縁には、数枚の葉状の緑色裂片が生じる。茎・苞葉・萼筒には細毛を伴う。萼筒の開口部から、長さ 1cmほどの、他の各種に見られない太い花筒が真横に伸び、その先に花冠が開く。下唇はほぼ均等丸く3裂、上唇は太い筒状のまま伸長したあと、屈曲して細い管状となり下方に向かう。植物体の上半部は、茎・苞葉・萼筒・下唇・上唇とも白色。萼筒上縁から派生する葉状鱗片のみが緑色を呈する。

**青山(2014)を著した時点で、撮影地域が単純ミスのため誤って表記されていたことから、尹民氏による同定が保留されていた。その後、青山自身で同定を試み、表記の種であることが判明。〖14〗〖15〗(以上第7回で紹介)〖32〗〖54〗〖55〗(後述予定)とともに短葉群に所属するが、青山の仮検索に沿って、ここに記しておく。



1-1-2-2-2-2-2-2-2-2-1-2紅花で萼筒は緑、上唇は捻じれる【Group Ⅺ】

〖27〗Pedicularis dichotoma 二歧马先蒿

多裂叶群 Grex Polyschistophyllum 二歧系 Ser. Dichotomae

写真⓺


雲南省白馬雪山(中腹の石灰岩崩壊地)alt.2800m付近.Sep.29, 2005

雲南省白馬雪山中腹の石灰岩崩壊地で撮影。茎高数10cm。葉は数枚が輪生、重鋸歯を伴った羽状全裂。茎の上部には、葉腋ごとに、狭被針状で全縁の一対の苞葉と、極めて大型で淡緑色の2個の壺状萼筒をつける。花は短い筒部があり、下唇はごく淡い紫色、裂片は余り分離せず、平板状に斜め下に広がり、中央裂片の部分が短く突出する。嘴状上唇は濃い赤紫色、基部近くで強くねじ曲がったのち、後方へ波打ちながら細長く伸長する。






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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 8

2024-05-28 09:00:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 8



☆Pedicularis chamissonisヨツバシオガマ




(撮影データ確認中)




北アルプス白馬鑓温泉 Aug.24,1993




北アルプス穂高岳沢 Jul.25,1986




(撮影場所確認中) Aug.3,1992




(撮影データ確認中)








岩手県早池峰 Jul.27,1993

ヨツバシオガマは日本の亜高山~高山帯で最もポピュラーなシオガマギク属の種だが、分布は日本列島(本州中部以北)と北の延長地域(サハリンなど)に限られ、中国大陸には分布していないように思われる。所属するとすれば轮枝群 Grex Cyclocladus 短唇亚群 Subgrex Brachychilaで、中国植物志のリストの中から対応種を当たってみたが、現時点では特定できないでいる。日本産のヨツバシオガマ自体も、近年のDNA解析に拠って、エゾヨツバシオガマP. chamissonisとヨツバシオガマP.japonicaに分割される傾向にある。ほかにも、レブンシオガマ、クチバシシオガマ、ハッコウダシオガマなどの下位分類群が知られているが、ここではそれらの区分は行わず、暫定的に全てをヨツバシオガマP. chamissonisとしておく。



1-1-2-2-2-2-2-2花序に粒状の塊は混じらない

1-1-2-2-2-2-2-2-1茎が多数に分岐する

1-1-2-2-2-2-2-2-1-1下唇はエプロン状に垂下する【Group Ⅷ】

〖26〗Pedicularis moupinensis 穆坪马先蒿

轮枝群 Grex Cyclocladus 短唇亚群 Subgrex Brachychila 穆坪系 Ser. Moupinenses

〖26〗穆坪马先蒿Pedicularis moupinensis


















四川省西嶺雪山alt.3200m付近. Aug.6,2009(1/3枚目写真左と2枚目写真右個体は〖25〗Pedicularis davidii)

撮影地の四川省西嶺雪山の稜線沿いでは、後ほど紹介する〖25〗Pedicularis davidiiと常にセットで生えていた。全体のサイズがほぼ共通し、花がやや歪で、一見〖25〗の異常形か、開花末期の個体のように見えるが、これが正常な姿である。直立した一本の茎に総状の花序を付ける〖25〗と異なり、茎は良く分枝する。葉は羽状に全裂し、小葉も深裂、4枚づつ茎に輪生する。葉腋から伸びた各茎の上部に、総状に10前後の花からなる花序をつける。苞葉は一対で緑色。先端が掌状に広がる。萼筒は紡錘形、茎とともに赤紫色を呈し、上縁の鋸歯はごく短い。花は筒部を欠き、薄紫色。下唇の形は特異で、3片が分離しないままエプロン状に垂れ下がり、中央裂片に当たる部分が凸出する。嘴状上唇は中央より基部に近い部分で下方に折れ、やや膨れたのち細い棒状となって前方に伸長する。個々の花の形は日本のヨツバシオガマによく似ている。



1-1-2-2-2-2-2-2-1-2下唇は平開する【Group Ⅸ】

轮枝亚群 Subgrex Cyclocladus 纤细系 Ser. Graciles Maxim.

〖30〗纤细马先蒿Pedicularis gracilis




雲南省玉龍雪山(山麓の草原)alt.3100m付近. Aug.4,2004

花は小さくて目立たないが、草丈が高く1m前後になり、茎の途中に4~5枚が輪生する羽状葉の葉腋から、輪状に4~5本の側枝が分岐し、草原の中にあってひときわ目を惹く。萼片は茶褐色。花は主茎の上半部や側枝の葉腋ごとに輪生し、淡紅色、嘴状上唇を持つ種の一般型で、下唇は丸く3裂、上唇は立ち上がったあと先端に向かって余り捻じれることなく下降突出する。



**輪枝亜群には、ほかに青山の仮分類では舟形群として扱った〖34〗多花马先蒿Pedicularis floribunda

(山萝花系 Ser. Melampyriflorae)、および日本のセリバシオガマPedicularis keiskeiが含まれる。それらについては青山の検索リストに沿って、後ほど紹介する。







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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 7

2024-05-27 20:42:38 | 雑記 報告

中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 7

Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 7



1-1-2-2-2-2茎は立ち上がる

1-1-2-2-2-2-1花は長い筒部がある【Group Undecided】

〖14〗P.urceolata〗坛萼马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 拟短叶亚群 Subgrex Brachyphylliastrum 坛萼系 Ser. Urceolatae






四川省雅江~新都橋間(臥龍峠)alt.4400m付近. Jul.20,2009

全体としては〖4~11〗に類似するが、背の低い茎の頂に、数個の花と多数の葉を束生する。葉は羽状に浅裂、若い葉は粒状の塊となり、濃赤紫褐色、展開後は中央が緑色で縁のみが赤紫褐色を残す。花は長い筒部を持ち、濃ピンク~紫紅色。下唇の中央片は小さく、両側片が大きく広がり、中央片を覆う。両側片は背方にも突出し、基部を取り囲んで、下唇全体として円形を呈する。嘴状上唇は、一度直立した後、中央部で上下に幅広く膨らみ、先半部は細長く下方へ伸長する。



1-1-2-2-2-2-2花は長い筒部を欠く

1-1-2-2-2-2-2-1花序に未展開苞葉?が混在【Group Undecided】

〖15〗 P.confertiflora 坛萼马先蒿

短叶群 Grex Brachyphyllum 短叶亚群 Subgrex Brachyphyllum 弱小系 Ser. Debiles








雲南省白馬雪山(高山草原中の砂礫斜面)alt.4300m付近. Jul.30,2015

〖14〗Pedicularis urceolataに類似するが、花筒部を欠き、束生する茎の中部に集まった瘤状の若い葉(苞葉?)の間から、直接数個の花冠が開く。茎の基部から生じる展開した葉は、羽状に浅裂、瘤状の葉塊と同じ濃赤紫褐色。花色や形は〖22〗に類似、嘴状上唇は、やや捻れて伸長する。

**このあと、「中国植物志」の「短葉群短葉亜群に所属する種としては、青山(2014)が舟型群【グループ22とグループ18】に置いた、【32】【54】【55】が続くが、本連載では便宜上青山の検索表に沿って述べて行くため、それらの種の紹介は後ほど行い、次回は〖26〗「輪枝群 短唇亜群」の坪马先蒿Pedicularis moupinensis(および日本産のヨツバシオガマPedicularis chamissonis)に移る。







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近所の蝶 52番目の撮影種 ミズイロオナガシジミ

2024-05-26 16:19:29 | 雑記 報告



ゼフィルス(シジミチョウ科ミドリシジミ族)は、去年は一種も撮影出来ませんでした。平地産の普通種、ミズイロオナガシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミ(以上、クヌギ・コナラ食)、ミドリシジミ(食樹ハンノキ)、ウラゴマダラシジミ(食樹イボタ)あたりは、いてもおかしくはないのですが、どの種も一頭も見ることが出来ませんでした。

東京のアパートの近所でも、2021年の夏、霞丘陵の駐車場脇のコナラの樹でミズイロオナガシジミを、青梅駅の駅裏のコナラの樹でオオミドリシジミを撮影しただけで、ほかの種はどれも出会えなかった。ところが2022年の夏に(ギリシャから戻って福岡に来る直前に)再訪してみたところ、アカシジミもウラナミアカシジミもミズイロオナガシジミも、嘘みたいにドッサリ発生していたのです。著しい年次変動があるのかも知れません。

去年の福岡。近所の公園の入り口にクヌギの疎林があって、いかにもゼフィルスが居そうな環境なのです。せめてアカシジミかミズイロオナガシジミと出会えればと、ずっと注意を払っていたのだけれど、影も姿もなかった。

全国的な普通種ではあっても、九州には少ないのかも知れません。ということで、今年は端から遭遇を期待していなかったのですが、先日(5月23日)、部屋から徒歩2分の道端のクヌギとコナラの樹の下の落ち葉の上に、小さな白い蝶がとまっているのを見つけた。もしやと思って近づいて確認したら、ミズイロオナガシジミでした。

羽化直後の、出てきたばかりの個体なのでしょうか?それとも下に降りて休んでいたのでしょうか?繁みの枝や葉が邪魔になって、まともな写真が写せません。やがて飛んで行ってしまった。翌日(昨日)も、今日も、同じ所で見かけたのだけれど、すぐに飛び去ってしまって写真は写せませんでした。

今日(5月25日)、部屋から徒歩5分の公園入口で、クヌギの樹の下の枯葉の上に止まっているのを見つけました。やはりすぐに飛んで行ってしまって戻って来ません。相当に敏感なようです。

ペットボトルの麦茶を飲みながら、ふと前を見たら、湖畔のクヌギ葉上に、また一頭止まっています。でも手前の枝葉が邪魔になって、上手く写真を撮ることが出来ません。結構苦労して、左手で枝を引っ張りながら、右手の掌と指でスマホを操作して、アクロバット体制で撮影に臨みました。

スマホを使い出してから、目の前にじっとして止まっているチョウを、“どう考えても絶対に失敗するはずはない”という状況下で撮影するのですが、念のためにと100枚以上写しても、1枚もまともに写っていない(ピントが合っていない)、ということの繰り返しです。

今回は、最悪の条件下です。どうせまともには写っていないだろう、という前提で、20分余かけて200枚近く写したのですが、何故かほとんど全てがきちんと写っていた(スマホ、気まぐれですね)。

それに、枝を揺らしながら至近距離(5センチ前後)で撮影を続けたので、当然すぐに飛び去ってしまうだろうと思っていたのですが、意に介せずずっと同じ葉上にとまっていました。

その後、池を一周して、シルビアポイントのチェックをしたりして(ミズイロオナガシジミは、ほかにも数頭の個体に出会いました、去年全く姿を見なかったのが、嘘の様です)、撮影開始時点から1時間10分後に戻ってきたら、まだ同じ葉上に止まっていた。

敏感なのか、鈍感なのか、よく分からんです。



23日、最初に出会った個体も、枯葉の上をヨロヨロと歩いていたので、撮影は楽勝と思っていたのですが、飛び去ったあと戻ってこない。入れ替わるように別の蝶(サトキマダラヒカゲ)がやって来て、僕の腕にとまって汗を吸い始めました。

ミズイロオナガシジミが戻ってくるのを待つ間、それを撮影することにしました。ただ手に止まっている蝶を写すだけだと能が無いので、周りの環境を入れようと思ったのですが、スマホの角度の問題で僕の顔のほうに向いてしまいます。それもまあ良いかと、僕の顔も写し込んで撮影することにしました。

勿論主役は僕の顔ではなくて蝶のほうです。ところが、幾ら蝶にピントを合わせても、シャッターを押す瞬間に顔のほうにピントが移ってしまいます。意地になって、14分間に176枚、なんとか数枚が蝶のほうにピントが合っていました。何でもかんでも人間中心にセットされてしまう、という現代文明の宿命が如実に表れているわけです。



ミズイロオナガシジミに話を戻します。

静止時に翅を開くことはまずありません。たまにはあるのかも知れませんが僕は見たことが無い。ゼフィルスのうち、いわゆる「高等ゼフィルス」と呼ばれている、雄の翅表が金属光沢に煌めく各種(“ミドリシジミ”と名の付いた種とウラクロシジミ)は静止時に良く翅を開くのですが、「下等ゼフィルス」(雌雄の外観が類似し、雄は顕著な占有飛翔を行わない)の多くは翅を閉じたままのことが多いようです(ウラゴマダラシジミは開く)。

ミズイロオナガシジミの翅表は、雌雄とも鈍い灰黒褐色です。裏面は白地に黒帯。なのに「水色」と名が付いている。なぜに水色?と訝るのですが、実はピッタリの名前。飛んでいる時は、まさしく水色に見える(ルリシジミと区別が困難なほどです)。(灰褐色+白+黒)×飛翔で「水色」、不思議だけれど、事実なのです。

属名はAntigius(アンティギウス)。柴谷篤弘博士の命名です。僕のコードネームでもあるIratsumeイラツメ(郎女)を初め、Wagimoワギモ(吾妹)、Araragiアララギ(茂吉/赤彦/健吉)、Favonius(Zephyrusのラテン語読み)などと共に命名されました。Antigiusは、博士の恩師・杉谷岩彦教授(スギタニルリシジミに献名されている)のSUGITANIを組み替えてANTIGIUS。



典型的な東アジア分布パターンを示す、東アジアを代表する属の一つです。

日本海周辺地域(北海道₋九州と、対岸のロシア沿海州・朝鮮半島・中国東北地方)+長江流域(華東地方・華中地方を経て中国西南部)および台湾に分布するミズイロオナガシジミAntigius attiliaと、ほぼ同じ地域(ただし日本では山地性で、北海道に分布を欠き、九州では霧島山系のみ)に分布するウスイロオナガシジミA.butleriから成ります。共に食草はブナ科Quercus属(前者は主にコナラ、クヌギ、後者は主にカシワ、ナラガシワ)。

近年台湾固有種として新種記載されたA.jinpingiは、♂交尾器の基本形状に於いてウスイロオナガシジミとの間に確たる種差がなく、僕は同一種に含めても良いと考えています(裏面の斑紋も極めて発達が悪いことを除けば同一パターン)。

また、中国とミャンマーから、小岩屋敏氏による2新種(A.cheniとA.sizuyai)が記載されていますが、僕は詳細を把握していないので、言及は保留しておきます。

クルミを食草とするオナガシジミAraragi entheaとは外観がよく似ています(ことにウスイロオナガシジミ)が、類縁的には特に近くはなく、むしろダイセンシジミ(ウラミスジシジミ)Wagimo signatusやタイワンウラミスジシジミW.sulgeriと類縁が近いように思われます。

僕が中国四川省(青城山)で記録し、新属新種である可能性を示唆したシロモンオナガシジミは、後にオナガシジミ属の一種Araragi sugiyamaeとして新種記載が成されましたが、雄交尾器の形状からは、明らかに別属に置かれるものと考えます(AraragiとAitigiusの中間的形状、食草はクルミ属)。

なお、ミズイロオナガシジミは、僕は四川省北部山岳地帯(九賽溝)で撮影。日本産に於いても裏面の斑紋パターンが多様なことから、特に区別をする必要はないと思われますが、その前提で考えても、なんとなく独自の特徴を示しているように感じます。












ミズイロオナガシジミ 福岡県飯塚市 May 25,2024






ミズイロオナガシジミ(別個体) 福岡県飯塚市 May 25,2024






ミズイロオナガシジミ 東京都青梅市 Jun.1,2021






ミズイロオナガシジミ 山梨県日野春 Jul.3,1975






ミズイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






ミズイロオナガシジミ (撮影場所確認中) Jul.2,1991








ミズイロオナガシジミ 中国四川省九賽溝 Jul.31,1991








ウスイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






ウスイロオナガシジミ 岡山県新見市久保井野 Jun.26,1986






シロモンオナガシジミ 中国四川省青城山 Jul.29,1991






ダイセンシジミ 広島県冠高原 Jul.12,1993






タイワンウラミスジシジミ 中国浙江省清涼峰 Jul.12,2018






ミズイロオナガシジミ 福岡県飯塚市 May 23,2024














サトキマダラヒカゲ 福岡県飯塚市 May 23,2024







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中国大陸(附:日本列島)のハマウツボ科(シオガマギク属を中心に) 6

2024-05-26 09:00:00 | 雑記 報告


Orobanchaceae (mainly Pedicularis) from China (and Japan) 6



【10‐11】を青山(2014)では〖4‐9〗と同じ【Group Ⅲ】に含めたが、「中国植物志」では〖1‐9〗の「根葉群」とは異なる「長茎群」に含められる。また青山が【Group Ⅳ】とした【12‐13】も、同じく「長茎群」に所属する(系の段階で異なる)。



1-1-2-2-1-2羽状葉の裂片は大きく、下唇の中央片はごく小さい

1-1-2-2-1-2-1嘴状上唇は立ち上がる

〖10A〗 Pedicularis geosiphon地管马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae






四川省黄龍渓谷alt.3300m付近 Jul.5,2005

〖10B〗 Pedicularis.macrosiphon大管马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae




四川省ミニャコンカalt.3100m付近 Jul.2,2009




雲南省梅里雪山雨崩 alt.3300m付近 Jun.12,2009

写真が不鮮明なため断言はできないが、とりあえず同一種〖10〗とした。いずれも渓流沿いの林床の湿った苔上に生える。〖4~9〗同様に草丈が低く、花筒は細長く伸び、上唇は嘴状になるが、複葉は全裂し、各小葉は幅広く、互いに離れて位置し、羽状複葉に近い状態になる。葉面は比較的滑らかで、小葉の重鋸歯は鋭い。花は余り集まって咲かず、通常一株に1~数花。花色はピンク、喉の周辺が僅かに白い。下唇は平開し、中央裂片は側裂片より小さな楕円形、側裂片は幅広い。下唇の中央線に沿った部分が盛り上がる。嘴状上唇は、一度立ち上がって中間部でやや膨らみ、順次細まって下後方へ向けて突出する。後半部は濃い赤褐色を呈する。

**〖10A〗と〖10B〗を青山は同一種としたが、尹民の指摘に従い別種とする。



1-1-2-2-1-2-2嘴状上唇は下唇の上に寝る

〖11〗 Pedicularis muscicola 藓生马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 藓生系 Ser. Muscicolae








陝西省秦嶺山中の渓谷沿いalt.1500m付近. Apr.21,2010

全体として〖10A〗Pedicularis geosiphon/〖10B〗Pedicularis macrosiphonに似るが、植物体が頑健な印象で、全裂する羽状葉は長さ10㎝を超し、長い柄を持ち放射状に開出する。その間から数本が集まって伸びる花茎状の花筒とともに、毛を密生する。萼片・苞葉片は未確認(〖10AB〗も)。寫眞で見る限り、花筒基部には小さな葉のようなものが集まっていて、それが苞葉片に相当するのかも知れない。下唇は中央裂片が小さく、全体のプロポーションは〖10AB〗と共通するが、側弁は上下により幅広く、縁は内側へ軽くウエーブする。嘴状上唇の基部は、余り顕著には立ち上がらず、順次細まりながら、向かって右に曲がりつつ下方に伸長する。基部の膨らんだ部分から、盲腸のような小突起を派出する。上唇も下唇同様のピンク色。本種は、四川省・雲南省には分布しない。



1-1-2-2-2花は葉腋につく

1-1-2-2-2-1茎は立ち上がらず花は長い筒部を欠く【Group Ⅳ】

1-1-2-2-2-1-1花は一様にピンク

〖12〗 P.axillaris 腋花马先蒿

长茎群 Grex Dolichomiscus 长茎亚群 Subgrex Dolichomiscus 腋花系 Ser. Axillares






雲南省白水台alt.2400m付近. Jun.2,2009

1-1-2-2-2-1-2花は白い斑がある

植物体の大きさは〖4~11〗と同程度、花筒は伸長せず、萼片は花冠基部の葉腋から伸びた花茎の上部に存在する(花期の後期になって花筒が伸長する可能性もあるが、チェックした個体に於いては全てが萼片から直接花冠が開いていた)。茎は地を伏せ、多毛で重鋸歯をもつ全裂した羽状葉を多数対生する。萼筒は長毛に覆われた短い紡錘状で、上縁から濃紫褐色~濃褐色の5枚の葉状鱗片が開出する。花は一様にピンク色、下唇は幅広く、中央裂片と側裂片の分離が不明瞭(互いに重なっているのか未分離なのかの判断は写真では困難)。嘴状上唇は基部から斜めに立ち上がったのち中央付近で屈曲し、細まりつつ下方に向かう。基半部の背方は濃色でやや凌状に盛り上がる。

〖13〗(same species as the 12)






雲南省麗江玉龍雪山山麓alt.3100m付近. Aug.1,1995

〖12〗に似るが下唇は白とピンクの斑で下縁が広がる扇状、全体としてやや発達が悪い。

**〖12〗と〖13〗を青山は別種としたが、尹民の指摘に従い同一種とする。





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