日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 何だか暴動ネタばかりですが勢いに乗って続けてしまいます。今回は続報ではなく速報です。

 広東省、汕尾市、東洲地区、官民衝突。

 これでピンときた人は暴動ヲチ歴最低2年以上の猛者。これに「突撃銃乱射」「3死8傷」「役人を人質に」といった言葉がスラスラ出るようなら免許皆伝です。……いや、目録ぐらいにしておきましょうか。

 余太話はともかく。現在進行形の中国における官民争議の中で最もよく知られているのがこの広東省汕尾市東洲地区の火力発電所建設をめぐる強制土地収用&官民衝突です。

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 前回紹介したケースではやはり地元当局が「官匪」としかいいようのないやりたい放題でしたが、同じ広東省でも汕尾市東洲地区の場合は地元当局が土地を奪っておいて補償金は出さないという暴虐無比。

 そこまで舐められたら農民も立ち上がります。というより耕地を奪われたため座視していれば餓死が待つのみですから立ち上がらざるを得ないでしょう。正に、

「官逼民反」
(「官」の横暴に追い詰められ窮しきった「民」が成否を問わずに蹶起する)

 を地でいくケースです。2004年にはもう揉めていましたから年季が入っています。真打ち登場といっていいでしょう。……まあ長期抗争ということなら同じ広東省内にも南海市や仏山市、順徳市などでやはり最低3年は争っている案件がありますけど、この汕尾市の東洲暴動を一躍有名にしたのはいわゆる「12.6事件」。

 御記憶の方も多いでしょうが、2005年12月6日、村民たちのデモに対し地元当局が武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)の一隊を繰り出してそれが官民衝突に発展。肉弾戦・白兵戦ならともかく、武警が村民たちに向けて何と突撃銃を乱射したのです。

 当時現場にいた農民の証言によれば乱射というより薙射。引き金を引きっぱなしで、要するに連射しつつ右から左へ左から右へと農民たちを横薙ぎにしたのです。……はい、空に向けてではなく人に向けての水平射撃です。当局発表でも農民側に「死者3名、負傷者8名」が出たとされており、香港メディアなどは「死者数十人」などとみています。

 ともあれ一県を挙げての農民蹶起に武警2個師団が投入され容赦のない武力弾圧が行われた……といわれているものの一切が闇に包まれている2004年秋の四川省・漢源暴動を別とすれば、1989年の天安門事件、そしてやはり土地強制収用に絡んだ定州事件(6死48傷)に次ぐ流血の弾圧劇となりました。もっとも定州事件での襲撃者は雇われ暴徒でしたから、「官」直々の武力弾圧としては正に六四以来なのです。

 ●官民衝突で武警が実弾射撃、農民に多数の死傷者。(2005/12/08)
 ●速報:惨劇再発の危機、「12.6事件」の村を武警が包囲!(2006/11/18)
 ●村落の変質?「官匪」化に対する自衛組織へ。(2007/04/26)

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 東洲地区の農民がこの惨事に挫けることなくいよいよ闘志を盛んにしたのは、もはや生活を賭けた戦いだからです。抵抗をやめたら生きていけないという一念が村民たちを団結させ、官への敵愾心を高めることになりました。

 当局が耕地を潰し山を崩して、その土で湖まで埋めて仕立て上げた造成地では火力発電所の建設工事が開始されているものの、農民たちのデモや作業妨害、さらに官民衝突などで工事がどれほど進捗しているのかは疑問です。

 ……いま私は「官民衝突」という言葉を使いましたが、厳密には「官が雇い上げたチンピラ」と村民たちの戦いです。戦えば場数を踏んでいる農民たちが必ず勝ちます。そこで最後に当局が警官隊を出動させて事態を収拾するといった小競り合いが断続的に発生しています。

 ただし「チンピラ」といっても実情は都市に出稼ぎに来たものの職にあぶれてしまった農民たちが駆り出されている可能性があるので小競り合いの一戦一戦がある種の悲劇といえるかも知れません。別の案件では実際に当局が出稼ぎ農民を雇い上げて地元農民と戦わせるといったケースも起きています。

 さてこの東洲地区の農民たち。抵抗運動の主要メンバーが地元当局に拘束されたと聞いて近くの役場に殴り込んで居合わせた役人複数名を取っ捕まえ、これを人質に当局との交渉を試みるといった事件も起きているほどで、すでに百戦錬磨の戦闘集団といっていいかと思います。普段は持ち出さないものの手製爆弾なども多数密造している模様で、少数民族地域を別とすれば中国最強の武装農民。

 ……で、その東洲地区で昨日(11月5日)、再び衝突事件が発生したと「亜洲自由電台」(RFA)が報じました。

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 東洲地区の農民がRFAの電話取材に対して証言したところによると、事件の発端は地元当局を後ろ盾とする建設業者が火力発電所の送電施設の工事に着手しようとしたこと。これを近くを通りかかった農民たちが発見したのです。通りかかったのではなく定期巡察隊かも知れませんが、ともあれ農民たちの目に映じたのは工事に取りかかろうとする土木作業員と、それをガードするようにわらわらと湧いて出た「屈強な野郎ども」百余名。

 この現場が「12.6事件」の発生地点に近い因縁の場所ということもあり、即座に農民の伝令が異変を伝えるべく集落に駆け込み急報すると、心得たもので直ちに村内放送が「敵襲!」を報じました。

 以前は火の見やぐらで半鐘を打ち鳴らしていたのですがこの点でも農民たちは進化したようです。各集落内に響き渡る
「敵襲!敵襲!」の村内放送に「そら来たっ」と応じて飛び出してきた農民は約2000名(早っ)。得物を持っていたかどうかは不明ですが、一群にまとまると直ちに現場へと急行しました。見事なまでの即応力&動員力です。

 そして現場に駆けつけた農民の一群と「屈強な野郎ども」の衝突と相成ります。ここからは私の妄想ですが、人数に優る農民軍は直ちに鶴翼の陣を展開して包囲殲滅を企図。「野郎ども」はただ暴れることしか知らない連中ですし、

「どうせ百姓♪」

 と多寡をくくっていたら相手が自分たちの20倍もの大軍を繰り出してきたのを見てたちまち戦意を砕かれたことでしょう。

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 すでに及び腰となった「野郎ども」に対し、戦慣れしている農民軍はワイドに展開して左翼から一撃、右翼から一撃と相手を揺さぶっておいて、魚鱗の陣よろしく正面で対峙していた主力部隊が頃合いはよしとみて一斉に衝き入り中央突破(妄想終了)。「野郎ども」は瞬時に突き崩されて潰乱、蜘蛛の子を散らすように敗走していきました。

 パーフェクト・ゲームを達成した農民たちは「野郎ども」が残していった車両を焼き打ちにして勝鬨を上げました。ちなみにこの車両からは鉈や棍棒などの武器が発見され、農民軍の戦利品となった模様。衝突・敗北の報に接した地元当局は村内の電話を盗聴するなどして事件の情報が村外へと漏洩することを防ごうとしましたがすでに時遅し(笑)。

 怒りが収まらぬ農民たちは今日(11月6日)ゼネストを実施する計画とのこと。今回の事件、襲撃したのは農民側とはいえ、元々の原因は地元当局が前相談なしに農民たちの耕地や山や湖を勝手に潰して取り上げたうえ、まともな補償協議などに一切応じないまま発電所建設工事を強行した当局の姿勢にあります。さらには当局への不信感を決定的なものにした「12.6事件」の記憶。

 士気旺盛で「徹底抗戦」が合言葉になっている農民たちの今後の健闘にも期待したいところであります。

 ●RFA粤語(2007/11/05)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/05/china_land_clash/

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 それにしても、と皆さんお考えでしょう。私もそうなのです。死者まで出た武力弾圧や断続的に繰り返される衝突事件がこうして報じられていながら、省当局が本気で動いていない様子であることについてです。

 「12.6事件」の際には省トップの張徳江・省党委書記などが現場に乗り込んで査察の手が入ったようなのですが、事態に進展が全くみられないというのは、地元当局の背後に控える黒幕を省当局が斬って捨てていないからでしょう。

 張徳江は何かと評判の良くない男のようですが、「雇われトップ」である張徳江が省当局内に巣食った地元生え抜きの党幹部に体よく祭り上げられ懐柔されているのか、張徳江でも手を出せない相手が黒幕なのか、あるいは実は張徳江自身が黒幕なのか、よくわかりません。

 ちなみにナンバー2の黄華華・広東省長は地元出身ながら胡錦涛直系の「団派」(共青団人脈)に属しているものの、北京に強く訴えたりしていないのか、中央が介入したという噂も流れてきません。

 広東省といえばお隣は香港。パパラッチ的取材が得意な香港人記者がうろうろしていますし、地元で起きた事件を香港在住の親戚に電話で知らせた情報が香港メディアにタレ込まれるといったハンディがありますけど、数年以上を経ながら未だに解決していない土地収用に関する問題案件がちょっと多過ぎるように思います。

 ともあれ続報待ちですね。




コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (チンネ)
2007-11-06 09:24:59
官民衝突のありそうな地域の農民にインマルサットの使い方を教えて生中継するような海外マスコミはいないんでしょうか。

カルピスを片手に、ポテチをつまみながら高みの見物がしたい!
 
 
 
Unknown (Unknown)
2007-11-06 12:27:37
リアル北斗の三国志ワロタ
 
 
 
遠くの火事・・・本当? (五香粉)
2007-11-06 17:09:51
日本に住んでいる人にとっては所詮隣国の出来事。自分には関係ないもん!なんて思っているんでしょうね。でもね、中国が撥ねたら、15億人がどう動くか、予測が出来ません。人としても、苦しむ人たちに対して、笑って高みの見物というのは恥ずかしいと思いますが如何?

さて本題。中国崩壊論が囁かれたかれ始めてからもうすぐ10年が経ちます。なんで崩壊しないか?空っぽ頭ながらも、最近の出来事を思い出して考えてみました。世界中に散らばる華僑と中国本土の人民は15億人です。持っているお金はいくらあることやら。国家体制瓦解の際には何が起こりか解りません。だから世界の大国は、表からも裏からも支援をするという確約を取り付けているのではないかと思っています。実際温家宝は、中国にいついるんだろう<と思うぐらい世界中を飛び回っています。ダルフール虐殺問題では、どこの国もオリンピックボイコットを表明していません。こんなことは、前例が無いでしょう。台湾独立の動きもイラン軍事侵攻も全てが中国の計画内で進められていることと思えてなりません。小生、先日中国国内を旅しました。気がついたことがあります。ラマ教の坊さんが空港にも街中にもあちこちで見られるようになったということです。ブッシュのダライラマ表彰も、中国とアメリカが書いた絵図ではないか。今朝のCCTVでは、アメリカと中国の軍事ホットラインが開通したことを報じていました。それと、温家宝のロシア訪問の報道。なんだかんだと言われながらも、中国は東西体制・イスラム世界へと順調に手を伸ばしています。あらゆる外交手段を講じて潰しえない国にしておけば、勝手に潰れ得ない国になって行きます。和諧社会といいつつ、実は世界への調和(調和と言うよりも寄生化が正しいでしょう)に成功しつつあるのではないでしょうか。キーワードはオリンピックです。オリンピック後に世界は大きく動きます。序文に戻りますが、くれぐれも人事と思うこと無かれ。そうそう、中国の世界地図の日本には、柏崎が載っています。他の都市は東京・大阪・福岡ぐらいなものなのに。なんでかな?
柏崎名物は、モズクとお米と地震と・・え~!!
 
 
 
みなさんコメントありがとうございます。 (御家人)
2007-11-06 21:07:08
>>チンネさん
 この東洲地区の農民部隊の鮮やかな進退ばかりは私も映像でみてみたいです。ところでなぜカルピス?私ならコーヒーでなければ凍檸樂。


>>Unknownさん
 笑ってはいけません。でもこういう話題は私の心も筆致も躍ります(笑)。実に鮮やか。惚れ惚れするほど鮮やかです。問題が長期化するほど農民側が戦闘集団としてプロ化していきますね。
 しかしこういう問題が解決しないのは、たぶん土地転がしで得た売却益が役場の金庫ではなく誰かの懐に入ってしまっているため、ちゃんと補償金を出せといわれても「ない袖は振れない」ってことなんでしょうね。


>>五香粉さん
 ヲチというのは高みの見物が基本姿勢だと私は考えています。きれいないい方だと「俯瞰する」てなところでしょうか。俯瞰しつつ、ときに視点を変えてみたり観察対象にぐっと近づいてみたり、近づきすぎて私服に追われたり(笑)。……ただし俯瞰するに当たって自分の中に一本筋が通っていないと事態の変化に対していたずらに振り回されることになります。私などはその好例のようなものです。でも「15億人がどう動くか、予測が出来ません」というほど見通しなくぼんやりと中国を眺めている訳ではありません。

 以前のエントリーかコメント欄でも書きましたけど、国際社会における中国は「世界の工場」であることを逆手にとって、居直り強盗というか大手海賊版業者の開き直りのようなスタンスを色濃くしていくことになると思います(海賊版を排除して正規品を普及させるいちばん手っ取り早い方法は最大手の海賊版業者と組むことです)。その点において、

>あらゆる外交手段を講じて潰しえない国にしておけば、勝手に潰れ得ない国になって行きます。
>和諧社会といいつつ、実は世界への調和(調和と言うよりも寄生化が正しいでしょう)に成功しつつあるのではないでしょうか。

 という五香粉さんの見方には私も同感です。ただし常々当ブログで報じている通り、中国は内憂が深刻なために国そのものが大きく揺らぐ日が訪れることは避けられないでしょう。それでも中国が「世界の工場」であり、つまり先進諸国の「人質」をたくさんとっているため、国際社会としても潰れそうになるのを傍観してはいられないでしょう。それに際し、中国が核保有国であることが事態の展開を考える上でのカギのひとつになっていくかも知れないと私は考えています。

 私たちはいま歴史劇をリアルタイムで眺めている、といっていいでしょう。煮詰まりつつある状況にあって国内的には可燃度の高い起爆剤がいくつもあります。北京五輪はその中にあって可燃度がやや低めな起爆剤のひとつだと私は考えています。

 私は1989年の天安門事件当時に先の読めない混乱した状況下で、留学生の安全、食糧確保、また修了証書の発行といった処遇問題から帰国する留学生の食堂券の換金に至るまで、留学先の大学とあれこれ面倒な交渉をさせられる破目になりました。

 以下はその体験に照らして言うのですが、いざというときになれば、退路を確保しておかなかった危機管理体制が甘い外資企業は泣きをみることになるでしょう。……とは余りに凡庸かも知れませんね。では突き放した物言いにしましょう。そうした企業やその従業員が断末魔の叫びを上げていくのも私たちが目にする歴史劇のほんのひとコマにすぎません。しかも主題とは無関係なエピソードに過ぎないでしょう。

 中国など所詮は「ちょっとオシャレした北朝鮮」なのです。現地在住の皆さんはとっくに身に沁みてそのことを認識していることでしょうが、自分を雇用している会社が深入りしてしまっている場合は覚悟を決めるしかないでしょう。「八國聯軍」状態が現出しなければ、あとは神頼みということになります。たっぷり身に沁みている筈なのに、それでもなお中国が半端でない国であることをそのときに再認識させられることになると思います。南無八幡大菩薩。

 これは真剣な話ですが、五香粉さんは積極的で行動力あふれるタイプとお見受けしています。飛び出し過ぎてオフサイドトラップにかからないよう万万お気をつけ下さい。平時においても、です。むしろ平時の方が目立ってしまうためにより危険だったりしますから。本当ですよ。

 
 
 
御心配ありがとうございます (五香粉)
2007-11-06 23:17:27
実は今回のエントリーを開ける時に、一瞬開いた後にシステムダウンすると言う現象を数度繰り返しました。久々のGREATWALL発動か?これでチナオチも見納めかな?などと思って一時間ほど放置したら繋がった次第です。公安当局では、僕のコメントを見て”釣れた!”なんてほくそえんでいるのかも知れません。スパイの手駒にカウントされているかも。今回の暴動の一件はご近所ということもあり、少し謹慎した方がいいですね。誤認逮捕・拉致監禁は御免です。そうそう、僕はいらないトラブルに首を突っ込んでしまう癖があります。御家人さんご指摘どおりです。親父の教育が”義を見てせざるは優無き也”でした。三つ子の魂百までも。今更どうにもなりませんね。
 
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