日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 久しぶりに少々キナ臭い話を。

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 うれしいことに、コソーリ活動をやっているうちに相手方とだんだん親しくなってきました。詳しくは書けませんが、複数の編集部のデスクとか編集長クラスです。

 むろん、消息筋というほどのものではありませんけれど、いまでは電話やメールで質問すると大抵のことは気安く答えてくれます。……もっとも私の場合、

「この辺一帯を田畑にしたいんだけど、水はどこからどうやって引けばいいかな?」

 というような茫漠めいたことしか尋ねませんので、生臭い話が出ることはありません。やや具体的にいうと、人事情報などよりも新華社電の読み方や当局発表のしきたり、などといったことを教えてもらう方が私のためになりますので。

 実際、新聞や月刊誌などによるいわゆる「香港情報」や消息筋情報に比べれば、何の面白味もない新華社や『人民日報』の報道の方が何十倍も役に立ちますし、頼りになるものです。現地で取材活動のできるプロの方々なら別でしょうけど、私のように素人が東京にあぐらをかいて中国観察の真似事をしている分には、そういうことになります。

 そうした香港・台湾サイドとやり取りをするようになった一方で、音信不通になっていた中国にいる昔の仲間や知人との連絡が復活しつつあります。

 私の周囲にいた連中は生真面目で求道者の如く勉励するタイプばかりだったので、いまでは年相応に、あるいは不相応な出来過ぎたポジションで輝いている奴らばかり。すっかり崩れてしまったのは私くらいのものです(笑)。

 先月末にはいまはカリスマ学者となった兄貴分の中国人と再会を果たしました。求道者ですからひとときの語らいといっても非常に濃密な時間となります。私などは久しぶりで免疫を失っていたので知恵熱が出てしまいました。orz

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 それから一昨日、やはり仕事で来日した留学時代に仲の良かった中国人学生のひとりと18年ぶりに会うことができました。こいつは悪友で、たまたま生起した民主化運動(1989年)の時期に私のガイド役となって有志系スポットなどに案内してくれたうちのひとり。他大学での情報網構築に際しても色々と手伝ってくれました。

 ええ、政治的な「悪友」という訳です(笑)。沿海部の某省出身なのですが要領がよく、大学卒業後も上海に残ることに成功。いまでは某部門で年齢相応のポストに就いています。

 ……ちなみにいうと、私が留学していた当時はまだ計画経済時代の名残があり、エリートである大学生は国家の示す選択肢の中から職場を選ぶのが一般的で、自由な就職活動は困難でした。「選択肢」は往々にして出身地の職場になりますから、上海であの部門に就職できたのは学業優秀なだけでなくよほど上手く立ち回ったのでしょう。

 仮にA君とします。悪友ですから、こいつとは生臭い話題に落ちざるを得ません(笑)。再会早々、

「江沢民の親戚が、やられたみたいだ」

 などという香港の月刊政論誌に出てきそうな物騒きわまる情報が飛び出しました。

 元々のきっかけはあの「政変」です。上海閥の地元大番頭格で独立王国を守っていた陳良宇・上海市党委書記(当時)が一昨年に胡錦涛によってぶった斬られました。陳良宇は上海閥のお世継ぎとも目されていたので、その失脚によって上海閥自体も次世代の有力者を失うこととなり、御家断絶も同然となりました。

 陳良宇を取っ捕まえた胡錦涛は北京から「進駐軍」を送り込んで上海を大掃除。陳良宇系の幹部を次々に討伐していきました。この間、上海のナンバー2で習近平が市党委書記として赴任してくるまでその代理を務めていたのが韓正・市長です。習近平の後を継いだ兪正声・党委書記の現体制においても市長。

 この韓正は胡錦涛直系の「団派」(共青団人脈)とされています。陳良宇の治世下に胡錦涛が打ち込んだくさび役ともいえるでしょう。もっともそのポストプレーはあまり機能しなかったようですし、トップの代理を務めていた時期の仕事ぶりも中央が期待したほどではなく、そのため昨秋の「十七大」(第17回党大会)を節目に行われた大幅な世代交代でも昇格できず、上海市長のまま据え置かれた、という見方があります。

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 A君によると、「江沢民の親戚」の追い落としを仕掛けたのがこの韓正なのだそうです。昇格のチャンスは逸したものの、元々地元一筋でキャリアを積んできたこともあり、状況が一変した現在の上海において勢力を広げつつあるそうです。……あくまでもA君の解説ですけど。

「韓正って、『団派』だろ?」

 と聞くと、

「うーん。まあそうなんだけどさ」

 とA君は口を濁しました。韓正は共青団人脈に属するものの、浙江省出身で一貫して上海で働いてきたため、いまをときめく李克強、李源潮、汪洋など共青団中央で活躍した面々と比べれば、胡錦涛との縁はさほど深いものではないそうです。いわば上海系の「団派」という傍流で、もちろん外様ではなく歴とした譜代ではあるものの、親藩や直参旗本ほどの近さではないとのこと。

「つまり韓正は『上海青年報』という訳か」

「そうだ」

 というのは例え話。仮に胡錦涛が『中国青年報』(共青団中央の機関紙)の社長をしていたとすれば、李克強や李源潮はその時期に同紙編集部の責任者だった、といったようなものです。当然ながら仕事で直に接触する機会が多々あります。

 ところが上海市共青団の機関紙『上海青年報』なら編集長でもそうはいきません。また同じ北京であっても、北京市共青団機関紙の『北京青年報』であれば、『中国青年報』にはやはり距離感がありますし、格の違いもあります。

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「で、親戚って誰だよ」

「呉思明。上海市の公安局長だよ。知ってるだろ?」

「知らない」

「お前、道楽で中国観察をやっているんならそのくらい覚えておけよ」

 と笑われてしまいました。A君によると、親戚といっても江沢民の妻の血筋で、外戚(義理の甥)ということになるそうです。

「そいつが韓正に潰されるのか」

「潰されるほどではないけど、公安局長からは下ろされるらしい。その後釜が韓正の子分なんだ」

「へー」

 ああ、おれはいまゾクゾクするような話をしている。こいつ(A君)が消息筋ってことになるんだな。……とわくわくしながら、他に上海政界の余談めいた話もいくつか仕入れさせてもらったり、共通の友人の近況を教えてもらったり、またお約束の昔話などと、実に楽しい一夕となりました。

 生臭い話ですから、知恵熱は出ません(笑)。

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 そして遅くに帰宅して、午前1時から日課の記事漁りにかかったのですが、偶然なのかどうなのか、上海市の人事異動が一斉に行われたとの報道が「新華網」に出ていました。いつもならロクに読むこともなくとりあえず保存するのですが、A君と話した直後ですからどれどれと目を通してみました。

 驚きました。異動の行われた13名の中に、本当に市公安局長が含まれているではないですか。ただしこの記事では就任者名しか出ていないので、呉思明の名前は登場しません。新任の公安局長は張学兵でした。A君の話が正しいなら、これが「韓正の子分」ということになるのでしょう。

 ●上海市政府、新任期の要職23名を任命(新聞晨報-新華網 2008/02/26/08:56)
 http://news.xinhuanet.com/local/2008-02/26/content_7670313.htm

 ところが、「新華網」にはこの記事に続いてもう1本、上海の人事異動関連記事が並んでいました。

 ●上海市政府は半数が新顔、公安局長には浦東区長が就任(新民網-新華網 2008/02/26/13:20)
 http://news.xinhuanet.com/local/2008-02/26/content_7672280.htm

 おおおお。タイトルから公安局長にピンポイントです。この記事で新任公安局長の張学兵の前職が浦東区長であり、呉思明は公安局長の座は譲ったものの、市党委常務委員、市党委政法委員会書記という肩書はなお維持していることがわかりました。党務はそのままなれど、政務からは退かされたということになるのでしょう。

 それにしてもこの2本目の記事にはうならされました。異動ポストが13もありながら、記事のタイトルでは「公安局長」と狙い撃ち。「呉思明は江沢民の義理の甥っ子」という常識が地元にはあるでしょうから、これだけで意味ありげな人事が行われた、ということがわかるようになっています。もしA君の言うように「浦東区長だった張学兵は韓正の子分」ということも上海では常識なのであれば、様相がより明確になる訳です。

 そう考えると、「新華網」が上海の人事異動を伝える記事(1本目)の隣に「江沢民の外戚が下ろされた」ことを示唆する記事(2本目)を並べてみせたのも、たぶん意図的なものなのでしょう。
上海で「プチ政変」が行われた、という話題が全国ニュースに昇格したことになります。もちろん、事情通だけがニヤリとする内容ではありますが。

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 この新公安局長の張学兵が本当に韓正の子分なのかどうかは私にはわかりませんが(事情を御存知の方は是非ご一報下さい)、
国営通信社による「当局発表」の妙を見せつけられた気分で、久しぶりに興奮させてもらいました。……ええ、ヲタはこうしたことに喜びを見出すものなのです(笑)。

 翌日(27日)、早速A君の携帯に電話すると、

「へー、やっぱりそうなったのか」

 という反応でした。

「お前、知っていたんじゃないのか?」

「そこまでは知らないよ。でも噂になっていたから」

 とのこと。もっとも、こういうやり取りはA君が東京に来ているからできることであって、上海にいる相手との電話やメールではとても言及できる内容ではありません。……いや、私は一向に構わないのですが、A君の前途が失われかねませんので(笑)。

 A君は明後日に帰国するので、明日は私が秋葉原を案内する約束になっています。といってもアキバ系ではないのでメイド喫茶とは無縁ですから気が楽です。ついでに上の記事をプリントアウトして持っていって、他にも注目する人事があったかどうか解説してもらうつもりです。




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コメント
 
 
 
段ボール肉まん (せは゜たくろう)
2008-02-29 11:57:17
秋葉原に出かけるならば、ぜひこちらの肉まんを食べるのはどうでしょうか?

段ボール肉まん
http://www.akiba-maririn.com/index.html
 
 
 
公安局長 (警察マニア)
2008-03-09 21:50:15
こんにちは?
二年間上海の大学生活中断してしまいましたが、今年
久々に戻ります。
上海市市公安局長(大阪府警本部長に相当か?)交代は驚きませんでした。
せめて二年周期位で変えるべきなんです。
日本の警察みたいに。
定期的に異動させれば癒着、汚職を防げると思います。
市の幹部も同様に異動周期を短くすべきです。


 
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